(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】超音波センサおよび物体検知装置
(51)【国際特許分類】
H04R 17/00 20060101AFI20250311BHJP
【FI】
H04R17/00 330G
(21)【出願番号】P 2021198458
(22)【出願日】2021-12-07
【審査請求日】2023-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小山 優
(72)【発明者】
【氏名】中俣 景太
(72)【発明者】
【氏名】上月 康平
【審査官】稲葉 崇
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0209501(US,A1)
【文献】国際公開第2018/139194(WO,A1)
【文献】特開2009-065380(JP,A)
【文献】特開2003-174695(JP,A)
【文献】特開2001-258879(JP,A)
【文献】特開平11-155863(JP,A)
【文献】特開平11-266497(JP,A)
【文献】実開平04-112598(JP,U)
【文献】特開2021-078126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00-1/44
H04R 3/00、7/00、9/00
H04R 13/00、15/00
H04R 17/00、17/10
H04R 19/00、23/00、29/00
H04R 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波センサ(1)であって、
指向軸(DA)に沿った軸方向における一端部である基端部(41)と他端部である先端部(42)とを有し、超音波振動と電気信号との変換機能を奏する、変換素子(4)と、
前記変換素子における前記先端部よりも前記基端部に近接するように設けられ、前記変換素子を固定的に支持する、固定部(3)と、
前記変換素子の前記先端部と振動伝達可能に接続された、振動部を一次振動モードとする振動変換部(5)と、
を備え、
前記変換素子に前記電気信号である駆動信号
の印加により前記変換素子にて発生した超音波振動が前記変換素子から前記振動変換部に伝達して前記振動変換部が超音波振動することで、前記振動変換部から前記変換素子よりも前記基端部から前記先端部に向かう送信方向に存在する外部空間(SG)に超音波である送信波を送信する送信機能
および/または
前記外部空間から
の超音波の受信により励振された前記振動変換部から前記変換素子に伝達した超音波振動を前記変換素子にて前記電気信号である受信信号に変換する受信機能
を奏するように構成さ
れ、
前記振動変換部は、導体材料によって形成され、所定電位に設定された、
超音波センサ。
【請求項2】
前記振動変換部は、円錐台形状を有する、
請求項
1に記載の超音波センサ。
【請求項3】
前記指向軸に沿った板厚方向を有し、前記指向軸と交差する面内方向における中心部(24)が前記指向軸に沿って移動する態様で超音波振動可能に設けられた、振動板(21)をさらに備え、
前記振動板は、前記外部空間側の表面である外表面(21a)とその裏面である内表面(21b)とを有し、
前記振動変換部は、前記振動板の前記内表面と接合される接合面(52)と前記内表面との外径の差の半値が前記送信波または前記超音波振動の波長の半値未満となるように、前記内表面と接合された、
請求項
1または2に記載の超音波センサ。
【請求項4】
前記指向軸に沿った板厚方向を有し、前記指向軸と交差する面内方向における中心部(24)が前記指向軸に沿って移動する態様で超音波振動可能に設けられた、振動板(21)
をさらに備え、
前記駆動信号の印加により前記変換素子にて発生した超音波振動が前記変換素子から前記振動変換部を介して前記振動板に伝達して前記振動板が超音波振動することで、前記振動板から前記外部空間に前記送信波を送信する前記送信機能
および/または
前記外部空間からの超音波の受信により励振された前記振動板から前記振動変換部を介して前記変換素子に伝達した超音波振動を前記変換素子にて前記受信信号に変換する前記受信機能
を奏するように構成された、
請求項
1に記載の超音波センサ。
【請求項5】
前記振動変換部は、前記振動板の硬さ以上の硬さを有する、
請求項
4に記載の超音波センサ。
【請求項6】
前記振動変換部は、前記変換素子の前記先端部に近接する第一対向面(51)と、前記第一対向面の裏面であって前記振動板に近接する第二対向面(52)と、を有する、
請求項
4または5に記載の超音波センサ。
【請求項7】
前記振動変換部は、前記第二対向面の方が前記第一対向面よりも面積が大きくなるように形成された、
請求項
6に記載の超音波センサ。
【請求項8】
前記振動変換部は、前記第二対向面が前記振動板の面積に対応した面積を有することで前記振動板におけるスプリアス振動を抑制するように形成された、
請求項
6または7に記載の超音波センサ。
【請求項9】
前記振動板の前記指向軸と交差する面内方向における外縁部(25)を支持する、支持部(26)をさらに備え、
前記振動板は、前記支持部の前記軸方向における寸法よりも小さな板厚を有する、
請求項
4~8のいずれか1つに記載の超音波センサ。
【請求項10】
前記振動板は、前記支持部よりも柔らかい材料で形成された、
請求項
9に記載の超音波センサ。
【請求項11】
前記振動板は、移動体(V)の外板(V3)の一部であり、
前記振動板は、前記指向軸を取り囲むように前記指向軸を囲む周方向について一体的にまたは複数に分割して設けられる制振部(V8)と前記外板とを接合した場合における、前記制振部の内側の部分である、
請求項
4~10のいずれか1つに記載の超音波センサ。
【請求項12】
前記振動板は、移動体(V)の外板(V3)の一部である
前記振動部(V7)と振動伝達可能に接続され、
前記振動部は、前記指向軸を取り囲むように前記指向軸を囲む周方向について一体的にまたは複数に分割して設けられる制振部(V8)と前記外板とを接合した場合における、前記制振部の内側の部分である、
請求項
4~10のいずれか1つに記載の超音波センサ。
【請求項13】
前記振動板の構造に関する情報である構造パラメータと前記振動板の環境に関する情報である環境パラメータとのうちの、少なくともいずれか一方に基づいて、前記送信波の周波数を調整するように構成された、
請求項
4~12のいずれか1つに記載の超音波センサ。
【請求項14】
前記変換素子として、前記送信機能を奏する送信素子(451)と、前記受信機能を奏する受信素子(452)と、が設けられた、
請求項1~
13のいずれか1つに記載の超音波センサ。
【請求項15】
前記送信素子は、積層型圧電素子である、
請求項
14に記載の超音波センサ。
【請求項16】
前記受信素子は、単層型圧電素子である、
請求項
14または15に記載の超音波センサ。
【請求項17】
前記受信素子は、前記送信素子よりも小さい面積で形成された、
請求項
14~16のいずれか1つに記載の超音波センサ。
【請求項18】
前記送信素子と、前記送信素子と前記受信素子との間に挟持された連結部(453)と、前記受信素子とが、前記指向軸上にてこの順に配列された、
請求項
14~17のいずれか1つに記載の超音波センサ。
【請求項19】
前記変換素子は、前記軸方向に厚さ方向を有する板状に形成された圧電素子としての構成を有し、
前記固定部は、前記変換素子が前記指向軸と交差する面内方向における中央部(431)を節または腹として屈曲振動する態様で超音波振動するように、かかる方向における前記変換素子の端部である固定端部(432)を固定的に支持する、
請求項1~
13のいずれか1つに記載の超音波センサ。
【請求項20】
前記変換素子は、モノモルフ型またはバイモルフ型の圧電素子としての構成を有する、
請求項
19に記載の超音波センサ。
【請求項21】
前記変換素子は、前記軸方向に厚さ方向を有する板状に形成された圧電素子を有するランジュバン型振動子としての構成を有する、
請求項1~
13のいずれか1つに記載の超音波センサ。
【請求項22】
前記送信素子と前記受信素子とのうちの少なくともいずれか一方は、前記軸方向に厚さ方向を有する板状に形成された圧電素子を有するランジュバン型振動子としての構成を有する、
請求項
14~18のいずれか1つに記載の超音波センサ。
【請求項23】
前記送信波の周波数を調整することで、所望の指向性を得る、
請求項1~
22のいずれか1つに記載の超音波センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体に搭載される超音波センサ、および、かかる超音波センサを備えた物体検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波センサを用いて車両等の移動体の周辺の障害物を検知する技術が、従来種々開示されている。この種の超音波センサにおいて、所定の指向性が設定されることがある。具体的には、例えば、超音波センサを車両に用いた場合、路面や路面上の駐車用縁石は、障害物として検知したり警告したりしないことが望ましい。よって、この場合、水平方向における超音波の送受波範囲が広い一方で上下方向における超音波の送受波範囲が狭くなるような指向性、すなわち、水平方向の指向性に対して上下方向の指向性を絞ることが好適である。
【0003】
この点、特許文献1に記載の超音波センサは、センサ筐体と、圧電振動子とを備えている。センサ筐体は、横断面形状がほぼ円形であり、その内部は中空部が形成され、一面が開口されている。圧電振動子は、センサ筐体の底面上の中心位置に接着剤等により固着されている。振動面は、圧電振動子を固着したセンサ筐体の底面の一部で与えられる。センサ筐体の開口側は、その左右が円弧状に切り落とされて、横断面形状が小判状の外形となっている。また、中空部は、センサ筐体の開口側の小判状の外形線に沿う形で形成され、その横断面形状が同様に小判状となっている。これにより、センサ筐体の底面の一部で与えられる超音波センサの振動面が、センサ筐体の開口側の外形線に沿った形で形成される。また、センサ筐体の開口側の外形線が曲率を有し、振動面の外形線がこれと同一の曲率を有する。また、搭載車両の路面垂直方向に寄与する側の振動面の外形線が、センサ筐体の振動面側の外形線の曲率と同一の曲率を有する。また、搭載車両の路面垂直方向に寄与する側の振動面の最も薄い部分の外形線が、センサ筐体の振動面側の外形線に沿った形で形成され、振動面の最も薄い部分の外形線とセンサ筐体の振動面側の外形線とが同一の曲率を有する。これにより、超音波の指向性を狭くすることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の超音波センサにおいて、所望の指向性をより安定的に実現したり、送受信特性をよりいっそう向上したりする試みがなされている。具体的には、例えば、特許文献1に記載の超音波センサにおいては、圧電振動子と振動面との接合構造によって決まる共振周波数以外の振動周波数では、極端に効率が低下する。よって、かかる構成においては、広帯域化が困難である。また、振動周波数の変化により、振動モードが変化する。さらに、温度変化によっても、振動モードが変化する。振動モードが変化すると、指向性も変化する。
【0006】
本発明は、上記に例示した事情等に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、例えば、超音波センサにおいて、所望の指向性をより安定的に実現したり、送受信特性をよりいっそう向上したりすることが可能な構成を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の超音波センサ(1)は、
指向軸(DA)に沿った軸方向における一端部である基端部(41)と他端部である先端部(42)とを有し、超音波振動と電気信号との変換機能を奏する、変換素子(4)と、
前記変換素子における前記先端部よりも前記基端部に近接するように設けられ、前記変換素子を固定的に支持する、固定部(3)と、
前記変換素子の前記先端部と振動伝達可能に接続された、振動部を一次振動モードとする振動変換部(5)と、
を備え、
前記変換素子に前記電気信号である駆動信号の印加により前記変換素子にて発生した超音波振動が前記変換素子から前記振動変換部に伝達して前記振動変換部が超音波振動することで、前記振動変換部から前記変換素子よりも前記基端部から前記先端部に向かう送信方向に存在する外部空間(SG)に超音波である送信波を送信する送信機能
および/または
前記外部空間からの超音波の受信により励振された前記振動変換部から前記変換素子に伝達した超音波振動を前記変換素子にて前記電気信号である受信信号に変換する受信機能
を奏するように構成され、
前記振動変換部は、導体材料によって形成され、所定電位に設定されている。
【0008】
なお、出願書類中の各欄において、各要素に括弧付きの参照符号が付されている場合がある。この場合、参照符号は、同要素と後述する実施形態に記載の具体的構成との対応関係の単なる一例を示すものであるにすぎない。よって、本発明は、参照符号の記載によって、何ら限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第一実施形態に係る超音波センサを搭載した車両の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示された超音波センサの概略構成を示す断面図である。
【
図3】
図2に示された超音波センサの動作概要を示す断面図である。
【
図4】
図2に示された超音波センサの動作概要を示す断面図である。
【
図5】第二実施形態に係る超音波センサを搭載した車両の外観を示す斜視図である。
【
図6A】
図5に示された超音波センサの概略構成の一例を示す断面図である。
【
図6B】
図5に示された超音波センサの概略構成の他の一例を示す断面図である。
【
図8】
図7に示された超音波センサの一変形例に係る概略構成および動作概要を示す断面図である。
【
図9】
図7に示された超音波センサの他の一変形例に係る概略構成および動作概要を示す断面図である。
【
図10】
図7に示された超音波センサのさらに他の一変形例に係る概略構成および動作概要を示す断面図である。
【
図13】
図2、
図6Aまたは
図6Bに示された超音波センサのさらに他の一変形例に係る概略構成を示す断面図である。
【
図14】
図2、
図6Aまたは
図6Bに示された超音波センサのさらに他の一変形例に係る概略構成を示す断面図である。
【
図15】
図2、
図6Aまたは
図6Bに示された超音波センサのさらに他の一変形例に係る概略構成を示す断面図である。
【
図16】
図2、
図6Aまたは
図6Bに示された超音波センサのさらに他の一変形例におけるセンサ筐体および振動変換部の構成例を示す背面図である。
【
図17】
図16に示されたセンサ筐体および振動変換部を備えた超音波センサの動作概要を示す断面図である。
【
図18】
図16に示されたセンサ筐体および振動変換部を備えた超音波センサの動作概要を示す断面図である。
【
図19】
図2、
図6Aまたは
図6Bに示された超音波センサのさらに他の一変形例に係る概略構成を示す断面図である。
【
図20】
図2、
図6Aまたは
図6Bに示された超音波センサのさらに他の一変形例に係る概略構成を示す断面図である。
【
図21】
図2、
図6Aまたは
図6Bに示された超音波センサのさらに他の一変形例に係る概略構成を示す断面図である。
【
図22】
図2、
図6Aまたは
図6Bに示された超音波センサのさらに他の一変形例に係る概略構成を示す断面図である。
【
図23】
図2、
図6Aまたは
図6Bに示された超音波センサのさらに他の一変形例に係る概略構成を示す断面図である。
【
図24】
図2、
図6Aまたは
図6Bに示された超音波センサのさらに他の一変形例に係る概略構成を示す断面図である。
【
図25】第三実施形態に係る超音波センサの概略構成を示す断面図である。
【
図26】
図25に示された超音波センサの一変形例に係る概略構成を示す断面図である。
【
図27】第四実施形態に係る超音波センサの概略構成を示す断面図である。
【
図28】第五実施形態に係る超音波センサの概略構成を示す断面図である。
【
図29】
図28に示された超音波センサの一変形例に係る概略構成を示す断面図である。
【
図30】第六実施形態に係る超音波センサの概略構成を示す断面図である。
【
図31】
図30に示された超音波センサの一変形例に係る概略構成を示す断面図である。
【
図32】
図30に示された超音波センサの他の一変形例に係る概略構成を示す断面図である。
【
図33】
図30に示された超音波センサのさらに他の一変形例に係る概略構成を示す断面図である。
【
図34】第七実施形態に係る超音波センサの概略構成を示す断面図である。
【
図35】本開示に係る超音波センサを用いた物体検知装置の一構成例を示す機能ブロック図である。
【
図36】変形例に係る超音波センサの概略構成を示す断面図である。
【
図37】変形例に係る超音波センサの概略構成を示す断面図である。
【
図38】変形例に係る超音波センサの概略構成を示す断面図である。
【
図39】変形例に係る超音波センサの概略構成を示す断面図である。
【
図40】変形例に係る超音波センサの概略構成を示す断面図である。
【
図41】変形例に係る超音波センサの概略構成を示す断面図である。
【
図42】変形例に係る超音波センサの概略構成を示す断面図である。
【
図43】変形例に係る超音波センサの概略構成を示す断面図である。
【
図44】変形例に係る超音波センサの概略構成を示す断面図である。
【
図45】変形例に係る超音波センサの概略構成を示す断面図である。
【
図46】変形例に係る超音波センサの概略構成を示す断面図である。
【
図47】変形例に係る超音波センサの概略構成を示す断面図である。
【
図48】変形例に係る超音波センサの概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第一実施形態:車載構造)
以下、
図1および
図2を参照しつつ、第一実施形態に係る超音波センサ1の概略構成について説明する。まず
図1を参照すると、超音波センサ1は、移動体としての車両Vに搭載されることで、かかる車両Vの周囲の外部空間SGに存在する物体(例えば障害物)の存在状態に対応する検知信号を生成および出力するように構成されている。すなわち、超音波センサ1は、車両Vを取付対象とする車載型のクリアランスソナーとしての構成を有している。
【0011】
車両Vは、典型的には、いわゆる四輪自動車であって、箱状の車体V1を備えている。車体V1は、外板を構成する板状のボディ部品である、車体パネルV2およびバンパーV3を備えている。バンパーV3は、車体V1の前端部および後端部のそれぞれに設けられている。本実施形態においては、超音波センサ1は、バンパーV3に取り付けられるように構成されている。超音波センサ1がバンパーV3に取り付けられることで車両Vに搭載された状態を、以下「搭載状態」と称する。
【0012】
具体的には、搭載状態にて、フロントバンパーすなわち車体V1における前面側のバンパーV3には、複数(例えば4つ)の超音波センサ1が取り付けられている。フロントバンパーに取り付けられた複数の超音波センサ1は、それぞれ、少なくとも車幅方向について異なる位置に配置されている。同様に、搭載状態にて、リアバンパーすなわち車体V1における後面側のバンパーV3には、複数(例えば4つ)の超音波センサ1が取り付けられている。本実施形態においては、バンパーV3には、超音波センサ1の取り付け用の貫通孔である取付孔V4が設けられている。
【0013】
図2は、バンパーV3に取り付けられた複数の超音波センサ1のうちの1つを、搭載状態にて示している。なお、図示の簡略化のため、
図2において、互いに接合状態にある隣接構成要素同士を固定的に結合するための、接合層(例えば接着剤層等の接着層や溶着層等)あるいは固定具(例えばボルト、テープ等)は、特段の言及なき限り、図示が省略されているものとする。ここで、「接着層」は、接着剤層(すなわち接着剤を固化することで形成された合成樹脂層)の他に、両面テープ層(すなわち両面テープにおける表裏両面から剥離紙を剥離することで出現する粘着層)等を含む。
【0014】
図2を参照すると、超音波センサ1は、超音波を送信および/または受信可能に構成されている。すなわち、超音波センサ1は、超音波である送信波を指向軸DAに沿って外部空間SGに送信する送信機能、および/または、送信波の物体による反射波を外部空間SGから受信する受信機能を奏するように構成されている。「指向軸」とは、超音波センサ1から送信波の進行方向に沿って延びる仮想直線であって、指向角の基準となるものである。「指向軸」は「指向中心軸」あるいは「検出軸」とも称され得る。「指向角」は「半値角」とも称され得る。また、超音波センサ1は、車両Vの周囲に存在する物体による送信波の反射波を含む受信波を外部空間SGから受信して、受信波の受信結果に応じた検知信号を生成および出力するように構成されている。
【0015】
ここで、送信波の進行方向に沿った方向、具体的には、指向軸DAと平行な方向を、「軸方向」と称する。より詳細には、軸方向は、送信方向DTと受信方向DRとを含む。送信方向DTは、軸方向と平行で、且つ、超音波センサ1から外部空間SGに向かう方向である。すなわち、送信方向DTは、指向軸DA上にて、送信波が進行する方向である。一方、受信方向DRは、送信方向DTとは反対に、軸方向と平行で、且つ、外部空間SGから超音波センサ1に向かう方向である。すなわち、受信方向DRは、指向軸DA上にて、受信波が進行する方向である。また、或る構成要素の「軸方向における先端」は、当該構成要素の送信方向DT側における端をいうものとする。これに対し、或る構成要素の「軸方向における基端」は、当該構成要素の、受信方向DR側における端をいうものとする。また、軸方向と直交する任意の方向を「面内方向」と称する。「面内方向」は、指向軸DAを法線とする仮想平面と平行な方向である。また、或る構成要素の、当該仮想平面に投影した形状を、「面内形状」と称する。なお、面内方向は、「径方向」を含む。「径方向」は、上記の仮想平面と指向軸DAとの交点を起点として当該仮想平面内に半直線を描いた場合に、当該半直線が延びる方向である。換言すれば、「径方向」は、上記の仮想平面と指向軸DAとの交点を中心として当該仮想平面内に円を描いた場合の、当該円の半径方向である。
【0016】
図2を参照すると、バンパーV3は、バンパー外表面V5とバンパー内表面V6とを有している。バンパー外表面V5は、車両Vの外側の空間である外部空間SGに面するように設けられている。バンパー内表面V6は、バンパー外表面V5の裏面である。取付孔V4は、バンパー外表面V5およびバンパー内表面V6にて開口するように設けられている。取付孔V4は、指向軸DAを中心軸とする円孔として形成されている。
【0017】
(第一実施形態:センサ構造)
本実施形態に係る超音波センサ1は、センサ筐体2と、固定部3と、変換素子4と、振動変換部5とを備えている。以下、本実施形態に係る超音波センサ1における各部の具体的構成例について説明する。
【0018】
センサ筐体2は、筒状の側壁の軸方向における先端を底壁で閉塞する一方で基端を開放した形状を有する、有底筒状に形成されている。センサ筐体2は、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金等の金属材料、ポリプロピレンやポリアセタール(すなわちPOM)やアクリル樹脂等の合成樹脂材料、CFRP等の複合材料、等によって構成され得る。POMはPolyoxymethyleneの略である。CFRPはCarbon Fiber Reinforced Plasticsの略である。
【0019】
(振動板)
本実施形態においては、センサ筐体2は、振動板21を有している。振動板21は、指向軸DAに沿った板厚方向を有する板状に形成されている。すなわち、振動板21は、有底筒状のセンサ筐体2における、指向軸DAと交差する底壁により形成されている。振動板21は、円形、楕円形、多角形、等の、任意の面内形状を有している。振動板21は、搭載状態にて外部空間SGに露出する外表面21aと、外表面21aの裏面である内表面21bとを有している。なお、
図2においては、本開示の内容を簡略に説明するため、振動板21は、典型的な構成例として、一定の板厚を有する平板状の形状を有しているものとする。よって、本具体例においては、外表面21aおよび内表面21bは、振動板21における一対の主面として設けられている。「主面」とは、板状の部分あるいは部材における、板厚方向を法線方向とする表面である。すなわち、外表面21aおよび内表面21bは、指向軸DAと直交するように設けられている。しかしながら、本開示がこのような構成に限定されないことは、後述の各変形例の記載からも明らかである。
【0020】
振動板21には、非接続部22と接続部23とが形成され得る。非接続部22は、振動板21の径方向における外縁側の部分であって、振動板21の内表面21bと振動変換部5とが対向しない部分である。これに対し、接続部23は、内表面21bと振動変換部5とが対向する、振動板21の径方向における非接続部22よりも内側の部分である。
【0021】
振動板21は、面内方向における中心部24が指向軸DAに沿って移動する態様で超音波振動可能に設けられている。具体的には、センサ筐体2は、振動板21の面内方向における外縁部25を支持する支持部26を有している。すなわち、支持部26は、有底筒状のセンサ筐体2における、指向軸DAを囲む側壁により形成されている。振動板21は、支持部26の軸方向における寸法よりも小さな板厚を有している。振動板21は、支持部26よりも柔らかい材料で形成され得る。振動板21の外縁部25は、支持部26の軸方向における先端部と結合されている。なお、振動板21と支持部26とが同一材料によって形成される場合、センサ筐体2は、継ぎ目なく一体に成形され得るが、後述するように、本発明は、かかる態様に限定されない。そして、振動板21は、面内方向における外縁部25を節とし且つ中心部24を腹とする一次振動モードで超音波振動可能に設けられている。支持部26は、外周面27と内周面28とを有している。外周面27は、円柱面状に形成されている。外周面27の少なくとも軸方向における先端部は、搭載状態にて、取付孔V4の内側に収容されている。振動板21が円形状を有している場合、内周面28は、指向軸DAに面する円筒内面状に形成されている。
【0022】
(固定部)
固定部3は、センサ筐体2の軸方向における基端側の開口を閉塞するように設けられている。固定部3は、金属材料、合成樹脂材料、複合材料、等によって形成され得る。固定部3は、固定面31と背面32とを有している。固定面31は、振動板21の内表面21bと対向するように設けられている。固定面31は、支持部26の軸方向における基端部と、接着剤等の接合層を介して接合されている。かかる接合層は、送受信波の波長に対して充分小さい(例えば100μm以下あるいは波長の8分の1未満となるような)厚さに形成されている。背面32は、固定面31の裏側に設けられている。なお、
図2においては、本開示の内容を簡略に説明するため、固定部3は、典型的な構成例として、一定の板厚を有する平板状の形状を有しているものとする。よって、本具体例においては、固定面31および背面32は、固定部3における、指向軸DAと交差する(すなわち具体的には直交する)一対の主面として設けられている。しかしながら、本開示がこのような構成に限定されないことは、後述の各変形例の記載からも明らかである。また、背面32側には、振動変換部5と電気接続された不図示の回路基板が設けられている。
【0023】
支持部26の軸方向における基端部と固定面31とを接合することでセンサ筐体2と固定部3とによって囲まれる空間内には、変換素子4と振動変換部5とが収容されている。変換素子4と振動変換部5とは、指向軸DA上にて、互いに隣接配置されている。具体的には、固定部3と、変換素子4と、振動変換部5とが、この順に、送信方向DTに沿って配列されている。センサ筐体2と固定部3と変換素子4と振動変換部5とによって、超音波スピーカおよび/または超音波マイクとしての、いわゆる超音波トランスデューサが構成されている。
【0024】
(変換素子)
変換素子4は、軸方向に沿った超音波振動と電気信号との変換機能を奏する、電気-機械エネルギー変換素子によって構成されている。具体的には、変換素子4としては、圧電素子や、モノモルフ型あるいはバイモルフ型の振動子や、ランジュバン型振動子、等が用いられ得る。モノモルフ型あるいはバイモルフ型の振動子は、圧電素子を板材に貼り合わせた構成を有している。ランジュバン型振動子は、軸方向に厚さ方向を有する板状に形成された圧電素子を一対のブロックで挟み込んだ構成を有している。
【0025】
変換素子4は、軸方向における一端部である基端部41と、他端部である先端部42とを有している。基端部41は、固定部3における固定面31に、接着剤層等の接合層を介して固定されている。かかる接合層は、送受信波の波長に対して充分小さい(例えば100μm以下あるいは波長の8分の1未満となるような)厚さに形成されている。先端部42は、固定部3から軸方向における先端側すなわち送信方向DTに向かって突設されている。このように、固定部3は、変換素子4における先端部42よりも基端部41に近接するように配置されつつ、変換素子4を固定的に支持するように設けられている。そして、超音波センサ1は、変換素子4に電気信号である駆動信号が印加されることで変換素子4よりも送信方向DT(すなわち基端部41から先端部42に向かう方向)側に存在する外部空間SGに送信波を送信する送信機能を奏するように構成されている。あるいは、超音波センサ1は、受信波の受信により外部空間SGから変換素子4に伝達した超音波振動を変換素子4にて電気信号である受信信号に変換する受信機能を奏するように構成されている。
【0026】
(振動変換部)
振動変換部5は、振動板21と変換素子4との間に設けられている。振動変換部5は、変換素子4の先端部42と振動伝達可能に接続されている。また、振動変換部5は、振動板21と振動伝達可能に接続されている。すなわち、振動変換部5は、変換素子4における超音波振動(例えば軸方向に沿った伸縮振動)と振動板21における超音波振動(例えば膜振動)とのうちの一方から他方への振動変換機能を奏するように設けられている。そして、超音波センサ1は、駆動信号の印加により変換素子4にて発生した超音波振動が変換素子4から振動変換部5を介して振動板21に伝達して振動板21が超音波振動することで振動板21から外部空間SGに送信波を送信する送信機能を奏するように構成されている。あるいは、超音波センサ1は、外部空間SGからの受信波の受信により励振された振動板21から振動変換部5を介して変換素子4に伝達した超音波振動を変換素子4にて受信信号に変換する受信機能を奏するように構成されている。
【0027】
振動変換部5は、変換素子4の先端部42に近接する第一対向面51と、第一対向面51の裏面であって振動板21に近接する第二対向面52とを有している。本具体例においては、第一対向面51および第二対向面52は、指向軸DAと交差する(すなわち具体的には直交する)平面状に形成されている。すなわち、第一対向面51と第二対向面52とは、互いに略平行に設けられている。第一対向面51は、変換素子4の先端部42と、接着剤層等の接合層を介して接合されている。第二対向面52は、振動板21の接続部23における内表面21bと、接着剤層等の接合層を介して接合されている。これらの接合層は、送受信波の波長に対して充分小さい(例えば100μm以下あるいは波長の8分の1未満となるような)厚さに形成されている。
【0028】
本実施形態においては、振動変換部5は、第一対向面51と第二対向面52とが互いに異なる面積を有することで、振動面の面積変換機能を奏するように形成されている。具体的には、
図2に示されているように、本具体例においては、振動変換部5は、第二対向面52の方が第一対向面51よりも面積が大きくなるように形成されている。このため、第一対向面51と第二対向面52との間に設けられた端面53は、直線状の母線を有し送信方向DTに向かうにつれて面内形状が大きくなる部分錐体面状に形成されている。
【0029】
超音波センサ1は、振動板21における振動モードが振動変換部5により上記の一次振動モードに限定されるような構成を有している。具体的には、振動変換部5は、送信機能にて変換素子4により送信方向DTに付勢された場合に、振動板21の接続部23を効率的に送信方向DTに押し出せるように、振動板21の硬さ以上の硬さを有している。ここにいう「硬い」とは、密度および/またはヤング率が高いことをいうものとする。一般的に、密度が高く、ヤング率が高い場合、音響インピーダンスが高い。すなわち、振動変換部5は、振動板21と変換素子4との間の振動伝達に際して剛体的に振る舞うように構成されている。換言すれば、振動変換部5は、変換素子4の超音波振動に伴って、第二対向面52がほとんど撓まず(すなわち面内形状をほとんど変化させず)に軸方向に平行移動するような態様で超音波振動するように設けられている。
【0030】
振動変換部5は、振動板21と変換素子4との間の振動伝達効率を高めるように構成されている。具体的には、振動変換部5は、音響インピーダンスが振動板21以上且つ変換素子4以下となるような材料で形成されている。但し、変換素子4の音響インピーダンスは、振動板21の音響インピーダンスよりも大きいものとする。例えば、振動変換部5は、アルミニウムやアルミニウム合金やマグネシウム合金等の金属材料、PBTやガラスエポキシ樹脂等の合成樹脂材料、CFRP等の複合材料、等によって構成され得る。PBTはpolybutylene terephthalateの略である。振動変換部5は、金属等の導体材料によって形成されている場合、所定電位(例えば接地電位等の基準電位)に設定され得る。
【0031】
また、振動変換部5は、第二対向面52が振動板21(すなわち内表面21b)の面積に対応した面積を有することで振動板21におけるスプリアス振動を抑制するように形成されている。すなわち、振動変換部5は、第二対向面52の外径が内表面21bの外径以下であって両者の差が可及的に小さくなるような形状を有している。そして、振動変換部5は、非接続部22の径方向における幅、すなわち、内表面21bの外径と第二対向面52の外径との差の半値が、送受信波の波長の半値未満となるように、振動板21に接合されている。
【0032】
(効果)
以下、上記構成を有する、本実施形態に係る超音波センサ1の動作概要を、同構成により奏される効果とともに、
図2~
図4を用いて説明する。なお、説明を簡略化するため、以下の動作概要説明においては、超音波センサ1は、少なくとも送信機能を有しているものとし、変換素子4は、軸方向に伸縮するような態様で超音波振動するタイプの構成を有しているものとする。そして、主として、送信機能の発現時、すなわち、超音波センサ1が送信波を外部空間SGに送信する送信時の動作について説明する。
【0033】
送信時において、変換素子4に、駆動信号が印加される。これにより、変換素子4は、軸方向に伸縮するような態様で超音波振動する。具体的には、正電圧印加時において、変換素子4は、
図2に示された状態よりも軸方向に伸長される。ここで、変換素子4の基端部41は、バンパーV3に固定的に支持された固定部3に固定されている。このため、
図3に示されているように、変換素子4が軸方向に伸長されることで、変換素子4の先端部42は、送信方向DTに移動する。すると、振動変換部5は、変換素子4の先端部42により、送信方向DTに付勢される。このとき、振動変換部5は、振動板21に接合された第二対向面52の平面状態を保持したまま、送信方向DTに移動する。これにより、振動板21における接続部23は、第二対向面52との接合面形状を維持したまま、送信方向DTに押し出される。
【0034】
一方、負電圧印加時において、変換素子4は、
図2に示された状態よりも軸方向に圧縮される。ここで、変換素子4の基端部41は、バンパーV3に固定的に支持された固定部3に固定されている。このため、
図4に示されているように、変換素子4が軸方向に圧縮されることで、変換素子4の先端部42は、受信方向DRに移動する。すると、振動変換部5は、変換素子4の先端部42により、受信方向DRに付勢される。このとき、振動変換部5は、振動板21に接合された第二対向面52の平面状態を保持したまま、送信方向DTに移動する。これにより、振動板21における接続部23は、第二対向面52との接合面形状を維持したまま、受信方向DRに引き込まれる。
【0035】
このように、変換素子4への駆動信号の印加により、振動板21は、外縁部25を節とし且つ中心部24を腹とする一次振動モードで超音波振動する。そして、振動板21における振動モードは、振動変換部5により、上記の一次振動モードに限定される。これにより、一次振動モードよりも高次の振動モードの発生による指向性の崩れが、良好に抑制され得る。特に、振動板21を、支持部26の軸方向における寸法よりも小さな板厚に形成したり、支持部26よりも柔らかい材料で形成したりすることで、振動板21と支持部26とからなるセンサ筐体2において、実質的に振動板21のみを振動させることができる。これにより、良好な送受信特性、すなわち、高出力化および/または高感度化を図ることが可能となる。
【0036】
また、振動板21における上記のような態様の振動は、非共振で実現可能である。このため、任意の送受信周波数を実現することが可能となる。すなわち、例えば、送信周波数を可変として、指向性を調整することが可能となる。具体的には、一次振動モードの場合、指向角∝波長/振動長の比例の関係が近似で成り立つことが知られている。このため、周波数を高くすることで、狭指向性が実現される。一方、周波数を低くすることで、広指向性が実現される。あるいは、温度変化による指向性の変動の影響を、良好に抑制することが可能となる。特に、温度変化により物性値変化が生じやすい合成樹脂系材料でセンサ筐体2すなわち振動板21や支持部26を構成した場合であっても、所望の指向性をより安定的に実現することが可能となる。
【0037】
また、従来技術においては、狭指向性と広帯域化とは、トレードオフの関係にあった。すなわち、例えば、振動板21の外径を大きくすると、狭指向性となるとともに、共振周波数が低くなる。一方、振動板21の外径を小さくすると、広指向性となるとともに、共振周波数が高くなる。そして、送受信可能な周波数帯域は、振動板21を含むセンサ筐体2と圧電素子との接合体における電気-機械エネルギー変換特性に依存していた。これに対し、本実施形態によれば、振動発生部としての変換素子4と、指向性設計部としての振動板21とが分離されるため、指向性と帯域とのトレードオフの関係が解消され、設計自由度が向上する。具体的には、例えば、狭指向性で且つ広帯域の超音波センサ1を実現することが可能となる。また、広指向性で且つ広帯域の超音波センサ1も実現可能となることは明らかである。
【0038】
また、振動変換部5を金属等の導体材料によって形成し、これを所定電位(例えば接地電位等の基準電位)に設定することで、変換素子4が良好に電磁的にシールドされ得る。これにより、バンパーV3に取り付けられることで様々なノイズ環境に曝される超音波センサ1において、優れたEMC特性を実現することが可能となる。EMCはElectromagnetic Compatibilityの略である。特に、センサ筐体2を非導電性材料(例えば合成樹脂)で一体に形成した場合における、好適なEMC対策が実現され得る。
【0039】
このように、本実施形態は、振動板21を面で押し出したり引き込んだりする態様で超音波振動させる構成を採用している。これにより、所望の指向性をより安定的に実現したり、送受信特性をよりいっそう向上したりすることが可能となる。なお、必ずしも引き込む必要はなく、「押したり、戻したり」でもよい。
【0040】
(第二実施形態)
以下、第二実施形態について、
図5、
図6Aおよび
図6Bを参照しつつ説明する。なお、以下の第二実施形態の説明においては、主として、上記第一実施形態と異なる部分について説明する。また、第一実施形態と第二実施形態とにおいて、互いに同一または均等である部分には、同一符号が付されている。したがって、以下の第二実施形態の説明において、第一実施形態と同一の符号が付された構成要素に関しては、技術的矛盾または特段の追加説明なき限り、上記第一実施形態における説明が適宜援用され得る。後述の第三実施形態以降の他の実施形態についても同様である。
【0041】
図5に示されているように、本実施形態においては、バンパーV3には、
図1に示された取付孔V4は設けられていない。すなわち、本実施形態に係る超音波センサ1は、かかる取付孔V4をバンパーV3に形成しなくてもバンパーV3に取り付け可能である。換言すれば、かかる超音波センサ1は、これを搭載しない状態で一旦工場出荷された車両Vである非搭載車のバンパーV3に対しての「後付け」を容易に行うことが可能である。かかる構成を有する本実施形態に係る超音波センサ1は、搭載状態にて、取付孔V4を有しないバンパーV3により外側から覆われる。よって、かかる構成を、以下、「インビジブルソナー構成」と称することがある。
【0042】
具体的には、本実施形態に係る超音波センサ1は、バンパーV3の一部を振動板21として、かかる振動板21における超音波振動を用いて超音波を送信および/または受信するように構成されている。
図6Aは、かかる構成の一例を示す。
図6Aに示されているように、振動板21は、バンパーV3の一部の振動部V7によって構成されている。具体的には、振動板21すなわち振動部V7は、指向軸DAを囲むように配置される筒状、リング状、塀状、あるいは壁状の部品である制振部V8を、接着剤層等の接合層を介してバンパー内表面V6に接合することによって形成されている。すなわち、制振部V8は、指向軸DAを取り囲むように、指向軸DAを囲む周方向について一体的にまたは複数に分割して設けられている。指向軸DAを囲む「周方向」とは、指向軸DAと交差する(すなわち典型的には直交する)仮想平面上に、指向軸DAを囲む単一閉曲線を描いた場合の、当該単一閉曲線上の点が当該単一閉曲線上を動く軌跡の方向である。「単一閉曲線」とは、3次元ユークリッド空間内において、自身と交わらない閉じた曲線のことであり、単純閉曲線あるいはジョルダン曲線とも称され得る。「単一閉曲線」は、矩形等の多角形を含む。換言すれば、制振部V8は、指向軸DAを取り囲むように配置された、少なくとも1つの部品によって構成されている。後述するように、制振部V8を、周方向に配列された複数の部品によって構成する場合、隣接する部品間には、スリットあるいは隙間が設けられ得る。このように、制振部V8は、周方向ついて指向軸DAを断続的にあるいは不連続的に囲むように設けられ得る。同様に、制振部V8を、周方向ついて指向軸DAを連続的に囲む筒状に形成する場合も、周方向について1つあるいは複数のスリットや開口部が設けられ得る。そして、振動部V7は、バンパーV3と制振部V8とを接合した場合における、制振部V8の内側の部分である。かかる接合層は、送受信波の波長に対して充分小さい(例えば100μm以下あるいは波長の8分の1未満となるような)厚さに形成されている。超音波センサ1は、搭載状態にて、制振部V8の内周面である保持面V9内に、
図6Bに示された後述する支持部26に対応する制振部V8と、振動変換部5と、変換素子4と、固定部3で構成されるセンサ筐体2とが、バンパー内表面V6に固定されている。
本実施形態においては、振動変換部5は、バンパーV3の一部である振動板21と振動伝達可能に接続されている。具体的には、振動変換部5の外表面である第二対向面52と、振動板21におけるバンパー内表面V6とは、隙間すなわち空気層が生じないように、当接あるいは接合されている。この場合、振動変換部5は、
図6Bに示された後述する音響整合層61をも兼ねるものである。なお、振動変換部5の外表面である第二対向面52と、振動板21におけるバンパー内表面V6との間には、隙間すなわち空気層が生じないように、上記の音響整合層61が設けられていてもよい。すなわち、この場合、かかる音響整合層61は、振動変換部5と振動板21との間で挟持されている。具体的には、例えば、かかる音響整合層61は、振動変換部5と振動板21とのうちの一方に固定されている。
振動変換部5とバンパーV3すなわち振動板21との間に介在する音響整合層61は、両者の間の振動伝達効率を高めるように設けられている。すなわち、音響整合層61は、振動変換部5と振動板21との間の振動伝達効率が可能な限り高くなるように構成されている。具体的には、音響整合層61は、音響インピーダンスが振動板21つまりバンパーV3以上且つ振動変換部5以下となるような材料で形成されている。但し、振動変換部5の音響インピーダンスは、振動板21すなわちバンパーV3の音響インピーダンスよりも大きいものとする。音響整合層61は、例えば、エポキシ樹脂等の硬化型合成樹脂により形成され得る。あるいは、音響整合層61は、50μm以下の厚さに形成され得る。
かかる構成を有する本実施形態の超音波センサ1は、送信時に、バンパーV3の一部を振動板21として振動させることで、送信波を送信する。また、受信機能が発現される受信時に、受信波により励振された振動板21の振動を電気信号に変換して、受信信号を生成する。そして、本実施形態においても、上記第一実施形態と同様の効果が奏され得る。なお、
図6Aに示された構成例は、以下に説明する
図6Bに示された構成例を簡略化したものである。具体的には、
図6Aに示された構成例においては、
図6Bに示された構成例に設けられていたセンサ筐体2における、振動板21とバンパーV3とが一体化され、且つ、支持部26と制振部V8とが一体化されている。
図6Bは、
図6Aに示された構成の別例を示す。具体的には、本実施形態に係る超音波センサ1は、バンパーV3の一部を振動部V7として、かかる振動部V7における超音波振動を用いて超音波を送信および/または受信するように構成されている。
図6Bに示されているように、振動部V7は、指向軸DAを囲む筒状、リング状、塀状、あるいは壁状の部品である制振部V8を、接着剤層等の接合層を介してバンパー内表面V6に接合することによって形成されている。すなわち、制振部V8は、指向軸DAを取り囲むように、指向軸DAを囲む周方向について一体的にまたは複数に分割して設けられている。換言すれば、制振部V8は、指向軸DAを取り囲むように配置された、少なくとも1つの部品によって構成されている。そして、振動部V7は、バンパーV3と制振部V8とを接合した場合における、制振部V8の内側の部分である。かかる接合層は、送受信波の波長に対して充分小さい(例えば100μm以下あるいは波長の8分の1未満となるような)厚さに形成されている。超音波センサ1は、搭載状態にて、制振部V8の内周面である保持面V9内にセンサ筐体2が収容されつつ、バンパー内表面V6に固定されている。
【0043】
本実施形態においては、振動板21は、振動部V7と振動伝達可能に接続されている。具体的には、振動板21の外表面21aと、振動部V7におけるバンパー内表面V6の間には、隙間すなわち空気層が生じないように、音響整合層61が設けられている。すなわち、音響整合層61は、振動板21と振動部V7との間で挟持されている。音響整合層61は、振動板21と振動部V7とのうちの一方に固定されている。
【0044】
振動板21とバンパーV3すなわち振動部V7との間に介在する音響整合層61は、両者の間の振動伝達効率を高めるように設けられている。すなわち、音響整合層61は、振動板21と振動部V7との間の振動伝達効率が可能な限り高くなるように構成されている。具体的には、音響整合層61は、音響インピーダンスが振動部V7以上且つ振動板21以下となるような材料で形成されている。但し、振動板21の音響インピーダンスは、振動部V7すなわちバンパーV3の音響インピーダンスよりも大きいものとする。音響整合層61は、例えば、エポキシ樹脂等の硬化型合成樹脂により形成され得る。あるいは、音響整合層61は、50μm以下の厚さに形成され得る。
【0045】
かかる構成を有する本実施形態の超音波センサ1は、送信時に、バンパーV3の一部を振動部V7として振動させることで、送信波を送信する。また、受信機能が発現される受信時に、受信波により励振された振動部V7の振動を電気信号に変換して、受信信号を生成する。そして、本実施形態においても、上記第一実施形態と同様の効果が奏され得る。
【0046】
(振動変換部の構造)
図7~
図10は、超音波センサ1における、振動変換部5の構造を変更した場合の指向性の変化の様子を示す。各図において、振動板21における外表面21aの振動変位、および、これによる送信波の伝播の様子が、点線で示されている。また、指向性が、二点鎖線で概略的に示されている。なお、
図7~
図10の例においては、いずれも、第一対向面51の面積よりも第二対向面52の面積の方が大きい、すなわち、第一対向面51の外径よりも第二対向面52の外径の方が大きいものとする。また、
図7~
図10の例において、固定部3および変換素子4の構成は同一であるものとし、振動板21および振動変換部5の面内形状すなわち外径も同一であるものとし、外縁部25における振動板21の板厚も同一であるものとする。
【0047】
図7の例においては、
図2や
図6A等に示された構成と同様に、振動板21は、一定の板厚を有する平板状に形成されている。また、第一対向面51および第二対向面52は、互いに平行な平面状に形成されている。さらに、端面53は、直線状の母線を有し送信方向DTに向かうにつれて面内形状が大きくなる部分錐体面状に形成されている。この例においては、
図7に示されているように、中心すなわち指向軸DA付近で進行波に凹みが生じ、サイドローブが発生する。
【0048】
図8の例は、
図7の例における、振動変換部5の端面53の形状を、凸面状に変更したものである。この例においては、
図8に示されているように、中心すなわち指向軸DA付近における進行波の凹みが解消され、平面波が放射される。また、サイドローブも良好に抑制される。
【0049】
なお、平面状の第一対向面51および第二対向面52を、互いに平行とすることで、変換素子4から振動板21への振動伝達効率が高められ得る。但し、これらの平行度や平面度は、所望の指向性や送受信特性が得られる範囲で、適宜変更され得る。すなわち、製造誤差や許容偏差の範囲内で、平行度や平面度は、所定程度変動し得る。あるいは、所望の指向性や送受信特性を達成するため、これらの平行度や平面度が、意図的に調整される場合もあり得る。
【0050】
図9の例は、
図8の例における、振動変換部5の第二対向面52の形状を、凸面状、すなわち、送信方向DTに向かって凸となる曲面状に変更したものである。この例においては、
図9に示されているように、中心すなわち指向軸DA付近における進行波の凹みが解消され、送信方向DTに向かって凸の球面波が放射される。なお、指向性は、
図8の例よりも広がる。また、サイドローブは、
図8の例よりも、さらに良好に抑制される。
【0051】
図10の例は、
図8の例における、振動変換部5の第二対向面52の形状を、
図9の例とは逆に、凹面状、すなわち、送信方向DTに向かって凹となる曲面状に変更したものである。この例においては、
図10に示されているように、中心すなわち指向軸DA付近で進行波に比較的大きな凹みが生じる。そして、正面方向すなわち指向軸DA周辺における送信波の音圧が、干渉によって低減される。かかる指向性によれば、路面段差や天井突出物を良好に検知することが可能となる。
【0052】
(低コスト化)
図11および
図12は、
図2や
図6A等に示された超音波センサ1を低コスト化した構成を示す。
図11に示されているように、振動変換部5を振動板21と一体に形成することで、低コスト化が可能となる。具体的には、例えば、振動変換部5は、振動板21と、同一材料で継ぎ目なく一体に形成することが可能である。また、
図12に示されているように、変換素子4を薄板状の圧電素子とすることによっても、低コスト化が可能となる。
【0053】
(送受信特性)
上記の通り、振動板21の外径を大きくすると狭指向性となる一方、振動板21の外径を小さくすると広指向性となる。このため、振動板21の外径により、指向性が調整され得る。
【0054】
また、上記の各具体例のように、振動変換部5を第二対向面52の方が第一対向面51よりも面積すなわち外径が大きくなるように形成することで、変換素子4の径方向サイズを小型化することが可能となり、コストダウンが図られ得る。また、受信時すなわち受信方向DRの振動伝達において、振動変換部5により、面積を縮小させる態様での面積変換機能が奏される。このため、面積と圧力との積が一定となるというパスカルの定理によれば、面積縮小により圧力増加が生じ、これにより受信感度の向上が図られ得る。逆に、振動変換部5を第二対向面52の方が第一対向面51よりも面積すなわち外径が小さくなるように形成することで、送信時すなわち送信方向DTの振動伝達において、振動変換部5により、面積を縮小させる態様での面積変換機能が奏される。これにより、送信時における出力すなわち音圧の向上が図られ得る。
【0055】
このように、振動板21の外径と、振動変換部5の形状とを調整することで、所望の指向性および送受信特性が実現され得る。具体的には、例えば、
図2や
図6A等に示されている構成は、高受信感度且つ狭指向性に対応する。すなわち、かかる構成は、狭指向性の受信用センサに適用することが好適である。「受信用センサ」とは、送信機能を有さず受信機能を有する超音波センサ1をいうものとする。これに対し、受信機能を有さず送信機能を有する超音波センサ1を「送信用センサ」と称する。また、送信機能と受信機能との双方を有する超音波センサ1を「送受信一体型センサ」と称する。
【0056】
これに対し、
図13に示されている構成は、振動板21の外径を小さくし、且つ、振動変換部5を第二対向面52の方が第一対向面51よりも面積すなわち外径が大きくなるように形成したものである。かかる構成は、広指向性の受信用センサに適用することが好適である。なお、かかる構成においては、変換素子4の径方向サイズの小型化を維持しつつスプリアス振動を抑制するため、支持部26は、軸方向における先端側すなわち送信方向DTに向かうにつれて、厚さすなわち径方向寸法が大きくなるように形成され得る。具体的には、
図13においては、支持部26は、外周面27が円柱面状に形成される一方で、内周面28が直線状の母線を有し送信方向DTに向かうにつれて径が小さくなる円錐台面状に形成されている。
【0057】
図14に示されている構成は、振動板21の外径を大きくし、且つ、振動変換部5を第二対向面52の方が第一対向面51よりも面積すなわち外径が小さくなるように形成したものである。かかる構成は、高送信出力且つ狭指向性に対応する。すなわち、かかる構成は、狭指向性の送信用センサに適用することが好適である。なお、かかる構成において、スプリアス振動を抑制するため、支持部26の軸方向における先端部には、テーパ部261が設けられ得る。テーパ部261は、軸方向における先端側すなわち送信方向DTに向かうにつれて、厚さすなわち径方向寸法が大きくなるように形成されている。
【0058】
図15に示されている構成は、振動板21の外径を小さくし、且つ、振動変換部5を第二対向面52の方が第一対向面51よりも面積すなわち外径が小さくなるように形成したものである。かかる構成は、高送信出力且つ広指向性に対応する。すなわち、かかる構成は、広指向性の送信用センサに適用することが好適である。なお、かかる構成においても、スプリアス振動を抑制するため、支持部26の軸方向における先端部には、テーパ部261が設けられ得る。
【0059】
(偏指向性)
図16~
図18は、水平方向と上下方向とで指向性が異なる、いわゆる「偏指向性」を実現するための構成を示す。
図16に示されているように、振動板21は、第一面内方向(すなわち図中左右方向)に長手方向を有し第二面内方向(すなわち図中上下方向)に短手方向を有する面内形状(例えば、楕円状、長円状、長方形状、等)を有している。第一面内方向と第二面内方向とは、互いに直交する面内方向である。また、振動変換部5も、振動板21の面内形状に対応する面内形状を有するように形成されている。
【0060】
かかる構成によれば、
図17および
図18に示されているように、長手方向と短手方向とで異なる指向性が実現される。すなわち、変換素子4の形状や構造を変更しなくても、振動板21および振動変換部5の面内形状により、水平方向の指向性と上下方向の指向性とを設計することが可能となる。周波数つまり波長を固定とした場合、振動板21の振動長が大きい場合、指向性は狭くなる。また、振動長を固定とした場合、周波数が高いつまり波長が短い場合、指向性は狭くなる。その逆はでは指向性は広くなる。
【0061】
(センサ筐体構造)
図19および
図20に示されているように、振動板21は、いわゆる「フロート構造」により支持されていてもよい。具体的には、かかる構成においては、支持部26は、剛体部262と弾性部263とを有している。剛体部262は、支持部26の軸方向における弾性部263よりも基端側の部分であって、金属等の剛体材料により形成されている。弾性部263は、支持部26の軸方向における先端部であって、シリコーンゴム等のエラストマ材料により形成されている。剛体部262と弾性部263とは、接着剤等の接合層により接合され得る。
【0062】
板状部材である振動板21は、その径方向における外側の端部にて、弾性部263と、接着剤等の接合層により接合されている。すなわち、振動板21は、剛体部262により、弾性部263を介して弾性的に支持されている。かかる構成によれば、振動板21を面で押し出したり引き込んだりする態様の超音波振動が、良好に実現され得る。なお、
図20に示されているように、剛体部262は、振動板21の径方向における外側の端部を収容する凹部264を有していてもよい。
【0063】
図21~
図23に示されているように、センサ筐体2には、スリット265が設けられていてもよい。これにより、送受信特性、すなわち、送信出力や受信感度が向上され得る。具体的には、例えば、
図21に示されているように、スリット265は、支持部26の内周面28にて指向軸DAに向かって開口するように、支持部26の軸方向における先端部に設けられ得る。あるいは、例えば、
図22に示されているように、スリット265は、振動板21の内表面21bにて受信方向DRに開口するように、振動板21の径方向における端部に設けられ得る。あるいは、例えば、
図23に示されているように、スリット265は、支持部26の軸方向における基端面にて受信方向DRに開口するように、指向軸DAに沿って設けられ得る。
【0064】
図24に示されているように、センサ筐体2と固定部3とを締結ボルト266により締結することで、変換素子4を振動変換部5に向けて付勢する方向の初期荷重が加わるようにしてもよい。かかる構成によれば、送信時の振動板21の変位量が増大することで、送信出力が向上する。また、接合層が省略され得る。さらに、負電圧印加時に、初期荷重が打ち消される位置まで振動板21が変位した後、振動板21の弾性エネルギーの勢いでさらに受信方向DRに変位する。したがって、負電圧印加時の電圧が良好に低電圧化され得る。あるいは、負電圧を印加しなくても、良好な駆動が実現され得る。
【0065】
(変換素子構造)
上記の通り、変換素子4として、様々な種類の電気-機械エネルギー変換素子を用いることが可能である。例えば、上記の各具体例においては、説明の簡略化のため、変換素子4は、軸方向に沿って伸縮振動するタイプのものとした。しかしながら、本発明は、かかる態様には限定されない。
【0066】
図25は、変換素子4として、撓み振動する板状の圧電素子を用いた例を示す。かかる変換素子4は、固定部3における固定面31にて送信方向DTに突設された突設部331により支持されている。具体的には、ブロック状に形成された突設部331には、支持突起332が設けられている。支持突起332は、突設部331の軸方向における先端面から送信方向DTに突設されている。また、支持突起332は、突設部331の径方向における外側の端部に設けられている。
【0067】
変換素子4は、軸方向に厚さ方向を有する板状に形成された、モノモルフ型の圧電素子としての構成を有している。具体的には、変換素子4は、支持板401と圧電薄板402とを有している。支持板401は、軸方向に厚さ方向を有する板状部材であって、金属等により形成されている。支持板401は、断面視にて、面内方向における両端部が支持突起332によって支持された、いわゆる両持ち梁としての構成を有するように設けられている。圧電薄板402は、支持板401と略同一の面内形状に形成された圧電素子板であって、支持板401と接合されている。
【0068】
変換素子4は、面内方向における中央部431を節または腹として屈曲振動する態様で超音波振動するように設けられている。すなわち、固定部3は、変換素子4の面内方向における端部である固定端部432を固定的に支持するように構成されている。かかる構成によれば、変換素子4の共振設計により、高い送信出力あるいは高い受信感度を得ることが可能となる。
【0069】
図26も、
図25と同様に、変換素子4として、撓み振動する板状の圧電素子を用いた例を示す。本例においては、突設部331は、筒状に形成されている。そして、変換素子4は、軸方向に厚さ方向を有する板状に形成された、モノモルフ型またはバイモルフ型の圧電素子としての構成を有している。なお、
図26においては、図示の簡略化のため、変換素子4は、一枚の板状に示されている。
図26に示された構成においては、よりいっそうの高出力化あるいは高感度化のため、変換素子4の面内方向におけるサイズが、
図25に示された構成よりも大きくされている。
【0070】
かかる構成によれば、変換素子4の撓み量に対応して、振動変換部5すなわち第二対向面52の軸方向における変位量が生じる。すなわち、変換素子4の屈曲運動による振動が、振動変換部5により、第二対向面52の平行移動による軸方向の振動に変換される。
【0071】
(送受信一体構造)
ところで、送信用センサに設けられる変換素子4としては、例えば、積層型圧電素子、モノモルフ振動子、バイモルフ振動子、ランジュバン振動子、等が好適に用いられ得る。一方、受信用センサに設けられる変換素子4としては、例えば、単層型圧電素子、モノモルフ振動子、バイモルフ振動子、等が好適に用いられ得る。
【0072】
図2や
図6A等に示されている具体例のように、軸方向に沿って伸縮振動するタイプの変換素子4を用いる場合、送信出力の観点からは積層化すなわち多層化することが好ましく、受信感度の観点からは単層化することが好ましい。このため、この場合、送受信一体型センサを実現する際に、送信出力と受信感度とがトレードオフになることが想定される。
【0073】
この点、
図27は、かかるトレードオフを回避するため、1つの変換素子4の機能を、積層型圧電素子と単層型圧電素子とで切り替え可能とした構成を示す。すなわち、
図27に示されているように、変換素子4は、複数の圧電層441と、少なくとも1つの絶縁層442と、1つの基準電極層443と、1つの駆動電極層444と、少なくとも1つの内部基準電極層445と、少なくとも1つの内部駆動電極層446と、を有している。
【0074】
圧電層441は、チタン酸ジルコン酸鉛(すなわちPZT)等の圧電材料により形成されている。複数の圧電層441は、軸方向に配列されている。絶縁層442は、絶縁性の非圧電材料(例えばアルミナセラミックス等)により形成され、軸方向について隣接する2つの圧電層441の間に配置されている。圧電層441および絶縁層442は、軸方向に厚さ方向を有する層状あるいは膜状に形成されている。
【0075】
基準電極層443は、変換素子4の軸方向における先端面、すなわち、複数の圧電層441のうちの最も軸方向における先端側に配置されたものの軸方向における先端面に設けられている。駆動電極層444は、変換素子4の軸方向における基端面、すなわち、複数の圧電層441のうちの最も軸方向における基端側に配置されたものの軸方向における基端面に設けられている。内部基準電極層445は、複数の圧電層441のうちの最も軸方向における先端側に配置されたもの以外のものの軸方向における先端面と絶縁層442との間で挟まれるように設けられている。内部駆動電極層446は、複数の圧電層441のうちの最も軸方向における基端側に配置されたもの以外のものの軸方向における基端面と絶縁層442との間で挟まれるように設けられている。基準電極層443、駆動電極層444、内部基準電極層445、および内部駆動電極層446は、例えば、銀ペースト等を用いて、軸方向に厚さ方向を有する層状あるいは膜状に形成されている。
【0076】
かかる構成によれば、基準電極層443および内部基準電極層445は、基準電位に設定される。そして、送信時においては、基準電極層443と内部駆動電極層446との間や、内部基準電極層445と内部駆動電極層446との間や、内部基準電極層445と駆動電極層444との間に、高周波の駆動電圧が印加される。これにより、変換素子4は、積層型圧電素子として動作する。一方、受信時においては、例えば、複数の圧電層441のうちの最も軸方向における先端側に配置されたものの両面に設けられた、基準電極層443と内部駆動電極層446との間の電圧に基づいて、受信信号が生成される。これに対し、その他の内部駆動電極層446や駆動電極層444は、基準電位に設定される。これにより、変換素子4は、単層型圧電素子として動作する。
【0077】
このように、かかる構成によれば、1つの変換素子4の機能が、かかる変換素子4に電気接続された不図示の制御回路におけるスイッチング動作により、積層型圧電素子と単層型圧電素子とで切り替え可能となる。したがって、高い送信出力と高い受信感度とを両立可能な、送受信一体型センサを、簡略な構成で実現することが可能となる。
【0078】
(送受信素子別体構造)
図28は、変換素子4として、送信機能を奏する送信素子451と、受信機能を奏する受信素子452とが、別個に設けられた構成を示す。すなわち、変換素子4は、送信素子451と、受信素子452と、連結部453とを備えている。
【0079】
送信素子451としては、例えば、積層型圧電素子、モノモルフ振動子、バイモルフ振動子、ランジュバン振動子、等が用いられ得る。受信素子452としては、例えば、単層型圧電素子、モノモルフ振動子、バイモルフ振動子、等が用いられ得る。連結部453は、送信素子451と受信素子452との間に挟持されている。送信素子451と、連結部453と、受信素子452とは、指向軸DA上にて、この順に配列されている。本例においては、送信素子451は、変換素子4の基端部41側に設けられている。また、受信素子452は、変換素子4の先端部42側に設けられている。
【0080】
連結部453は、送信素子451に対向する主面である送信素子対向面454と、受信素子452に対向する主面である受信素子対向面455とを有している。送信素子対向面454および受信素子対向面455は、指向軸DAと略直交し互いに平行な平面状に形成されている。連結部453は、送信素子対向面454にて、送信素子451と、接着剤層等の接合層を介して接合されている。連結部453は、受信素子対向面455にて、送信素子451と、接着剤層等の接合層を介して接合されている。これらの接合層は、送受信波の波長に対して充分小さい(例えば100μm以下あるいは波長の8分の1未満となるような)厚さに形成されている。
【0081】
本例においては、受信素子452は、送信素子451よりも小さい面積で形成されている。これに対応して、連結部453は、受信素子対向面455が送信素子対向面454よりも面積すなわち外径が小さくなるように、略錐台形状に形成されている。連結部453は、振動変換部5と同様に、送信素子451と受信素子452との間の振動伝達に際して剛体的に振る舞うように構成されている。すなわち、連結部453は、送信素子451または受信素子452の超音波振動に伴って、送信素子対向面454および受信素子対向面455がほとんど撓まずに軸方向に平行移動するような態様で超音波振動するように設けられている。
【0082】
送信素子451は、面積すなわち外径を大きくすることで、送信出力が向上する。これに対し、受信素子452は、面積すなわち外径を小さくすることで、受信感度が向上する。この点、かかる構成においては、例えば、
図28に示されているように、送信素子451を大径の積層型圧電素子とし、受信素子452を小径の単層型圧電素子とすることが可能となる。これにより、高い送信出力と高い受信感度とを両立可能な、送受信一体型センサを、簡略な構成で実現することが可能となる。また、面内形状が相違する送信素子451と受信素子452とを連結部453により良好に接続することで、送信素子451と受信素子452との間の振動伝達ロスが良好に回避され得る。
【0083】
ここで、
図28は、振動板21の外径を大きくした狭指向性向けの構成を示している。すなわち、かかる構成は、高送受信特性且つ狭指向性に対応する。これに対し、
図29は、振動板21の外径を小さくした広指向性向けの構成を示している。すなわち、かかる構成は、高送受信特性且つ広指向性に対応する。なお、かかる構成において、スプリアス振動を抑制するため、
図29に示されているように、支持部26は、第一側板部267と、第二側板部268と、段差部269とを有する、段付き形状に形成され得る。
【0084】
第一側板部267は、支持部26の軸方向における基端側の部分であって、大径の送信素子451に対応する大径の内径を有している。第二側板部268は、支持部26の軸方向における先端側の部分であって、小径の受信素子452に対応する小径の内径を有している。段差部269は、第一側板部267における大径の内径と第二側板部268における小径の内径とを接続するように設けられている。第一側板部267と、第二側板部268と、段差部269とは、同一の外形を有している。すなわち、支持部26は、軸方向について内径が変化する略円筒形状に形成されている。
【0085】
(第三実施形態)
以下、第三実施形態について、
図30~
図33を参照しつつ説明する。本実施形態は、
図2等にて示された上記の各実施形態における振動変換部5を省略しつつ、これらの実施形態と同様の効果が得られる構成を示す。
【0086】
図30に示されているように、本実施形態においては、超音波センサ1は、センサ筐体2と、固定部3と、変換素子4とを備えている。センサ筐体2は、振動板21を有している。振動板21は、指向軸DAに沿った板厚方向を有し、指向軸DAと交差する面内方向における中心部24が指向軸DAに沿って移動する態様で超音波振動可能に、支持部26により支持されている。変換素子4は、先端部42が直接あるいは上記の接合層を介して振動板21の内表面21bに当接するように設けられている。すなわち、変換素子4は、固定部3と振動板21との間で挟持されている。そして、変換素子4は、振動板21を面で押し出したり引き込んだりする態様で超音波振動させるように設けられている。
【0087】
このように、本実施形態に係る超音波センサ1は、駆動信号の印加により変換素子4にて発生した超音波振動が変換素子4から振動板21に伝達して振動板21が超音波振動することで、振動板21から外部空間SGに送信波を送信する送信機能を奏するように構成されている。あるいは、かかる超音波センサ1は、外部空間SGからの超音波の受信により励振された振動板21から変換素子4に伝達した超音波振動を変換素子4にて受信信号に変換する受信機能を奏するように構成されている。
【0088】
以下、上記構成を有する、本実施形態に係る超音波センサ1の動作概要を、同構成により奏される効果とともに、
図30を用いて説明する。なお、説明を簡略化するため、以下の動作概要説明においては、超音波センサ1は、少なくとも送信機能を有しているものとし、変換素子4は、軸方向に伸縮するような態様で超音波振動するタイプの構成を有しているものとする。そして、主として、送信機能の発現時、すなわち、超音波センサ1が送信波を外部空間SGに送信する送信時の動作について説明する。
【0089】
送信時において、変換素子4に、駆動信号が印加される。これにより、変換素子4は、軸方向に伸縮するような態様で超音波振動する。具体的には、正電圧印加時において、変換素子4は、
図30に示された状態よりも軸方向に伸長される。ここで、変換素子4の基端部41は、バンパーV3に固定的に支持された固定部3に固定されている。このため、変換素子4が軸方向に伸長されることで、変換素子4の先端部42は、送信方向DTに移動する。すると、振動板21は、変換素子4の先端部42により、送信方向DTに付勢される。このとき、振動板21は、変換素子4の先端部42との接合部における平面状態を保持したまま、送信方向DTに移動する。これにより、振動板21は、変換素子4の先端部42との接合面形状を維持したまま、送信方向DTに押し出される。
【0090】
一方、負電圧印加時において、変換素子4は、
図30に示された状態よりも軸方向に圧縮される。ここで、変換素子4の基端部41は、バンパーV3に固定的に支持された固定部3に固定されている。このため、変換素子4が軸方向に圧縮されることで、変換素子4の先端部42は、受信方向DRに移動する。すると、振動板21は、変換素子4の先端部42により、受信方向DRに付勢される。このとき、振動板21は、変換素子4の先端部42との接合部における平面状態を保持したまま、送信方向DTに移動する。これにより、振動板21は、変換素子4の先端部42との接合面形状を維持したまま、受信方向DRに引き込まれる。
【0091】
このように、変換素子4への駆動信号の印加により、振動板21は、外縁部25を節とし且つ中心部24を腹とする一次振動モードで超音波振動する。そして、振動板21における振動モードは、かかる一次振動モードに限定される。これにより、一次振動モードよりも高次の振動モードの発生による指向性の崩れが、良好に抑制され得る。
【0092】
なお、
図31に示されているように、かかる構成において、スプリアス振動を抑制するため、支持部26の軸方向における先端部には、テーパ部261が設けられ得る。また、
図32に示されているように、変換素子4と振動板21との間には、音響整合層61が設けられていてもよい。音響整合層61は、薄板状に形成されていてもよいし、比較的厚めに形成されていてもよい。
【0093】
さらに、
図33に示されているように、変換素子4は、送信素子451と、受信素子452と、連結部453とを備えていてもよい。本例においても、
図28の例と同様に、受信素子452は、送信素子451よりも小さい面積で形成されている。一方、本例においては、
図28の例とは異なり、送信素子451と、受信素子452と、連結部453との配列順が逆となっている。すなわち、受信素子452と、連結部453と、送信素子451とが、この順に送信方向DTに配列されている。
【0094】
かかる構成によれば、大径の積層型圧電素子である送信素子451で振動板21を面で押し出すことで、振動板21は、外縁部25を節とし且つ中心部24を腹とする一次振動モードで超音波振動する。そして、振動板21における振動モードは、かかる一次振動モードに限定される。これにより、一次振動モードよりも高次の振動モードの発生による指向性の崩れが、良好に抑制され得る。また、かかる態様の超音波振動は、非共振で実現可能である。このため、任意の送受信周波数を実現することが可能となる。さらに、温度変化に伴う送受信特性の変化が、良好に抑制され得る。したがって、高い送信出力と高い受信感度とを両立可能な、送受信一体型センサを、簡略な構成で実現することが可能となる。
【0095】
(第四実施形態)
以下、第四実施形態について、
図34を参照しつつ説明する。本実施形態は、
図2等にて示された上記の第一実施形態および第二実施形態における振動板21を省略しつつ、これらの実施形態と同様の効果が得られる構成を示す。
【0096】
図30に示されているように、本実施形態においては、超音波センサ1は、センサ筐体2と、固定部3と、変換素子4と、振動変換部5とを備えている。センサ筐体2は、
図2等にて示された振動板21を有しない非有底の筒状に形成されている。振動変換部5は、変換素子4の先端部42に固定されることで、先端部42と振動伝達可能に接続されている。具体的には、振動変換部5は、変換素子4の先端部42に近接する第一対向面51と、第一対向面51の裏面である第二対向面52とを有している。第一対向面51は、変換素子4の先端部42と、接着剤層等の接合層を介して接合されている。第二対向面52は、搭載状態にて外部空間SGに面するように設けられている。
【0097】
本例においては、振動変換部5は、第二対向面52の方が第一対向面51よりも面積が大きくなるように形成されている。第二対向面52は、外径が支持部26の内周面28の内径よりも若干小さくなるように形成されている。そして、振動変換部5の軸方向における先端部と支持部26との隙間を埋めるように、シール材621が設けられている。シール材621は、例えば、振動変換部5の軸方向における往復振動を妨げないように、シリコーンゴム等のエラストマ材料により形成され得る。
【0098】
このように、本実施形態に係る超音波センサ1は、駆動信号の印加により変換素子4にて発生した超音波振動が変換素子4から振動変換部5に伝達して振動変換部5が超音波振動することで、振動変換部5から外部空間SGに送信波を送信する送信機能を奏するように構成されている。あるいは、かかる超音波センサ1は、外部空間SGからの超音波の受信により励振された振動変換部5から変換素子4に伝達した超音波振動を変換素子4にて受信信号に変換する受信機能を奏するように構成されている。
【0099】
かかる構成を有する超音波センサ1においては、振動変換部5は、第一対向面51および第二対向面52の平面状態を維持しつつ軸方向に往復移動する態様で、超音波振動する。したがって、かかる構成によれば、常に一次振動モードでの送受信を行うことが可能となる。かかる態様の超音波振動は、非共振で実現可能である。このため、任意の送受信周波数を実現することが可能となる。また、温度変化に伴う送受信特性の変化が、良好に抑制され得る。
【0100】
(物体検知装置)
以下、上記の通りの構成を有する超音波センサ1を備えた物体検知装置700について、主として
図35を参照しつつ説明する。物体検知装置700は、複数の超音波センサ1を備えている。また、物体検知装置700は、送信回路701と、受信回路702と、駆動信号生成部703と、受信信号処理部704と、制御部705とを備えている。
【0101】
送信回路701は、超音波センサ1に駆動信号を入力するように、超音波センサ1に電気接続されている。具体的には、送信回路701は、デジタル/アナログ変換回路等を有している。すなわち、送信回路701は、駆動信号生成部703から出力された駆動信号に対してデジタル/アナログ変換等の処理を施し、これにより生成された交流電圧を超音波センサ1における変換素子4に印加するように構成されている。受信回路702は、超音波センサ1における超音波の受信結果に対応して変換素子4にて生成された受信信号に対して増幅やアナログ/デジタル変換等の信号処理を行って受信信号処理部704に出力するように設けられている。具体的には、受信回路702は、増幅回路やアナログ/デジタル変換回路等を有している。送信回路701および受信回路702は、複数の超音波センサ1の各々に対応して設けられ得る。
【0102】
駆動信号生成部703は、所定周波数の送信波を超音波センサ1にて出力するための駆動信号を生成して送信回路701に入力するように設けられている。具体的には、駆動信号生成部703は、制御部705から出力された制御信号に基づいて、駆動信号の周波数を変更可能に構成されている。受信信号処理部704は、受信回路702から出力された受信信号に対してフィルタ処理等の各種信号処理を行うように設けられている。また、受信信号処理部704は、各種信号処理の結果である処理信号を制御部705に出力するように設けられている。駆動信号生成部703および受信信号処理部704は、複数の超音波センサ1に共通して設けられ得る。
【0103】
制御部705は、複数の超音波センサ1に共通して設けられている。制御部705は、図示しないCPU、ROM、RAM、不揮発性リライタブルメモリ、等を備えた車載マイクロコンピュータとしての構成を有している。すなわち、制御部705は、ROMまたは不揮発性リライタブルメモリに格納された制御プログラムを読み出して実行することで、複数の超音波センサ1の各々における送受信動作を含む、物体検知装置700の動作を制御するように構成されている。そして、制御部705は、複数の超音波センサ1の各々における受信信号に基づいて、外部空間SGに存在する物体(例えば障害物)の存在状態に対応する検知信号を生成し、かかる検知信号を外部装置に出力するように構成されている。具体的には、制御部705は、車載マイクロコンピュータ上に実現される機能構成として、パラメータ取得部751と、周波数調整部752と、物体計測部753とを有している。
【0104】
パラメータ取得部751は、超音波センサ1の送受信動作に影響を与える物理量に関するパラメータを取得するようになっている。かかるパラメータは、構造パラメータと環境パラメータとを含む。構造パラメータは、振動板21を含む超音波センサ1の構造に関するパラメータであって、例えば、振動板21の板厚、外径、物性値(ヤング率等)の温度特性、等である。環境パラメータは、振動板21を含む超音波センサ1の環境に関するパラメータであって、例えば、温度等である。
【0105】
周波数調整部752は、駆動信号の周波数を調整することで、送信波の周波数を所定周波数に設定するようになっている。すなわち、周波数調整部752は、超音波センサ1にて所定の指向性を得るために、送信波の周波数を調整するようになっている。また、周波数調整部752は、構造パラメータと環境パラメータとのうちの少なくともいずれか一方に基づいて駆動信号周波数を調整すなわち補正するようになっている。さらに、周波数調整部752は、隣接する2つの超音波センサ1における送信波の周波数が異なるように送信波の周波数を調整することで、混信の発生を抑制するようになっている。物体計測部753は、車両Vの周囲に存在する物体による送信波の反射波の受信結果に基づいて、かかる物体の形状を計測するようになっている。
【0106】
かかる構成を有する物体検知装置700においては、構造パラメータや環境パラメータに基づいて駆動信号の周波数を補正することで、指向性や音圧や感度等の送受信特性を規定値以内に調整することが可能となる。また、用途や搭載位置に応じて周波数を変えることで、所望の指向性を得ることが可能となる。特に、
図5や
図6A等に示されているような、バンパーV3の一部を振動部V7として用いる構成においては、搭載場所によりキャリブレーションが必要となるため、非常に有効である。さらに、異なる指向性での物体計測結果に基づいて、物体の高さ情報を取得することが可能となる。
【0107】
なお、混信対策により、同時計測や高頻度計測が可能となる。かかる観点から、送信波を変調することが好適である。具体的には、時間経過とともに周波数が変化する送信波を送信するとともに、送信波の変調態様に対応する基準信号と受信信号との間の相関検出を行うことで、良好な混信対策が可能である。また、周波数偏移変調と位相偏移変調とのうちの少なくともいずれか一方を有する送信波を用いることも好適である。
かかる構成によれば、混信による誤検知が、よりいっそう良好に回避され得る。また、S/N比や距離分解能の向上を図ることも可能となる。
【0108】
(他の変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。故に、上記実施形態に対しては、適宜変更が可能である。以下、代表的な変形例について説明する。以下の変形例の説明においては、上記実施形態との相違点を主として説明する。また、上記実施形態と変形例とにおいて、互いに同一または均等である部分には、同一符号が付されている。したがって、以下の変形例の説明において、上記実施形態と同一の符号を有する構成要素に関しては、技術的矛盾または特段の追加説明なき限り、上記実施形態における説明が適宜援用され得る。
【0109】
本発明は、上記実施形態にて示された具体的な装置構成に限定されない。すなわち、例えば、適用対象である車両Vは、四輪自動車に限定されない。具体的には、車両Vは、三輪自動車であってもよいし、貨物トラック等の六輪または八輪自動車でもよい。車両Vの種類は、内燃機関のみを備えた自動車であってもよいし、内燃機関を備えない電気自動車または燃料電池車であってもよいし、いわゆるハイブリッド自動車であってもよい。車体V1の形状および構造も、箱状すなわち平面視における略矩形状に限定されない。さらに、適用対象である移動体は、車両Vに限定されず、例えば、船舶あるいは飛行体であってもよい。
【0110】
超音波センサ1の取付対象は、バンパーV3に限定されない。具体的には、例えば、超音波センサ1は、車体パネルV2に取り付けられるものであってもよい。超音波センサ1の取付対象としての、車体パネルV2および/またはバンパーV3を構成する材料についても、特段の限定はない。すなわち、例えば、かかる材料は、FRP、CFRP、鋼板、等であってもよい。FRPはFiber Reinforced Plasticsの略である。CFRPはCarbon Fiber Reinforced Plasticsの略である。
【0111】
あるいは、例えば、超音波センサ1がカーナビゲ―ション装置やセンターインフォメーションディスプレイ装置等のヒューマン・マシン・インタフェース装置における入力デバイスにも適用され得る。この場合、超音波センサ1の取付対象は、車室内、すなわち、ダッシュボード、センターコンソール、車室天井、等であってもよい。
【0112】
本発明は、車両V等の移動体に搭載される構成に限定されるものではない。具体的には、例えば、超音波センサ1は、携帯電話機、パーソナルコンピュータ、電化製品、工作機械、等における入力デバイスにも用いられ得る。あるいは、例えば、超音波センサ1は、自動ドアや防犯カメラ等における人検知センサとしても用いられ得る。
【0113】
上記の通り、超音波センサ1は、送受信一体型の構成に限定されない。すなわち、例えば、超音波センサ1は、超音波の送信のみが可能な構成を有していてもよい。あるいは、超音波センサ1は、他の超音波送信器から送信された超音波である送信波の、周囲に存在する物体による反射波を受信する機能のみを有するものであってもよい。
【0114】
超音波センサ1における各部の構成も、上記具体例に限定されない。例えば、各部における面内形状は、円形に限定されず、楕円形、四角形、六角形、八角形、等であってもよい。具体的には、例えば、センサ筐体2は、外形形状が多角柱状に形成されていてもよい。また、指向軸DAを囲む筒状に形成されていた構成要素は、円筒状の他に、楕円筒状、多角筒状(例えば四角筒状)に形成され得る。あるいは、指向軸DAを囲む筒状に形成されていた構成要素は、柱状、ブロック状、コーン状、壁状、等の任意の形状を有する構成要素を、指向軸DAの周囲に複数配置することによっても実現され得る。各部を構成する材料についても、特段の限定はなく、合目的的に選択され得る。
【0115】
具体的には、
図36は、制振部V8を、円筒状あるいは円形リング状に形成した場合を示す。
図37は、制振部V8を、四角筒状に形成した場合を示す。制振部V8の面内形状は、これらの例に限定されず、例えば、楕円筒状であってもよいし、多角筒状(例えば四角筒状)であってもよい。
【0116】
図38は、
図37に示された制振部V8を、周方向について複数に分割した場合を示す。なお、制振部V8の分割態様は、
図38に示された態様には限定されない。同様に、
図36に示された、円筒状あるいは円形リング状の制振部V8も、周方向について複数に分割され得る。楕円筒状や多角筒状の場合も同様である。制振部V8が複数に分割された場合の、1個の制振部V8の形状についても、特段の限定はなく、例えば、円柱状、楕円柱状、平板状、多角柱状、円筒状、楕円筒状、多角筒状、円錐台状、多角錐台状、等の任意の形状に形成され得る。
【0117】
図39は、
図6Aに示された構成において、制振部V8をバンパーV3に接合層801を介して接合した例を示す。接合層801は、接着剤層や両面テープ層等によって形成されている。これに対し、
図40は、かかる接合層801を用いず、制振部V8をバンパーV3と一体に構成した例を示す。
図41は、
図39に示された構成において、振動変換部5と振動板21すなわちバンパーV3との間に音響整合層61を設けた例を示す。
図42は、
図40に示された構成において、振動変換部5と振動板21すなわちバンパーV3との間に音響整合層61を設けた例を示す。これらの例においても、
図6Aに示された構成と同様の効果が奏され得る。
【0118】
図43は、上記第一実施形態の、
図6Aに示された構成の説明において適宜省略した、接合層や固定具について補足説明するための図である。
図43においては、固定部3は、制振部V8の内周面である保持面V9と対向する第一固定箇所F1にて、制振部V8に固定されている。第一固定箇所F1においては、螺子や嵌合構造(例えば係合穴と係合爪との係合構造)等が用いられ得る。また、制振部V8は、バンパー内表面V6と対向する第二固定箇所F2にて、バンパーV3に固定されている。第二固定箇所F2においては、
図39等に示された接合層801あるいは溶着のような接合手段、あるいは、螺子等の固定具を用いた固定手段が用いられ得る。
【0119】
固定部3に変換素子4を固定する第三固定箇所F3には、接着剤等の接合手段や、隙間を埋めるための音響整合材が用いられ得る。変換素子4と振動変換部5との間の第四固定箇所F4についても同様である。振動板21を構成するバンパーV3の振動部V7と振動変換部5との間の第五固定箇所F5においては、接着剤等の接合手段や、隙間を埋めるための音響整合材が用いられ得る。バンパーV3の振動部V7と振動変換部5との間に音響整合層61が設けられる場合も同様である。
【0120】
図45は、
図1および
図2に示された、バンパーV3に取付孔V4を設ける構成の変形例を示す。本例においては、合成樹脂製の振動板部901は、その外側表面がバンパー外表面V5とほぼ面一となるように、取付孔V4内に収容されている。振動板部901は、その面内方向における外側の部分にて、指向軸DAを取り囲むように指向軸DAを囲む周方向について一体的にまたは複数に分割して設けられた制振支持部902によって超音波振動可能に支持されている。すなわち、制振支持部902は、
図2に示された支持部26あるいは
図6Aに示された制振部V8と同様の構成および機能を有している。なお、振動板部901とバンパー外表面V5との面一を保つための、超音波センサ1をバンパーV3に固定するセンサ保持部については、図示を省略している。
【0121】
制振支持部902は、軸方向における先端面903および基端面904を有している。先端面903および基端面904は、軸方向と直交する平面状に形成されている。制振支持部902は、先端面903にて、接合層801を介して振動板部901と接合されている。固定部3は、制振支持部902の側面であって指向軸DAに対向する内側壁面905にて、制振支持部902に固定されている。
図46は、
図45に示された構成に対して、接合層801を用いず、振動板部901と制振支持部902とを一体に構成した例を示す。
【0122】
図47は、
図45に示された構成において、振動変換部5と振動板部901との間に音響整合層61を設けた例を示す。
図48は、
図46に示された構成において、振動変換部5と振動板部901との間に音響整合層61を設けた例を示す。
【0123】
図1~
図48は、本発明の内容を簡潔に説明するために、装置構成を簡略化して示している。よって、実際に本発明が具体的な製品として実現された場合の詳細な構成は、
図1~
図48に示された構成とは、必ずしも一致するとは限螺ない。すなわち、実際に本発明が具体的な製品として実現される場合の、超音波センサ1の各部の具体的な構成の細部は、
図1~
図48に示された構成とは異なり得る。
【0124】
上記の説明において、互いに継ぎ目無く一体に形成されていた複数の構成要素は、互いに別体の部材を貼り合わせることによって形成されてもよい。同様に、互いに別体の部材を貼り合わせることによって形成されていた複数の構成要素は、互いに継ぎ目無く一体に形成されてもよい。
【0125】
上記の説明において、互いに同一の材料によって形成されていた複数の構成要素は、互いに異なる材料によって形成されてもよい。同様に、互いに異なる材料によって形成されていた複数の構成要素は、互いに同一の材料によって形成されてもよい。
【0126】
上記実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、構成要素の個数、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数値に限定される場合等を除き、その特定の数値に本発明が限定されることはない。同様に、構成要素等の形状、方向、位置関係等が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に特定の形状、方向、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、方向、位置関係等に本発明が限定されることはない。
【0127】
変形例も、上記の例示に限定されない。例えば、複数の実施形態のうちの1つにおける全部または一部と、他の1つにおける全部または一部とが、技術的に矛盾しない限り、互いに組み合わされ得る。組み合わせる数についても特段の限定はない。同様に、複数の変形例のうちの1つにおける全部または一部と、他の1つにおける全部または一部とが、技術的に矛盾しない限り、互いに組み合わされ得る。さらに、複数の実施形態のうちの1つにおける全部または一部と、複数の変形例のうちの1つにおける全部または一部とが、技術的に矛盾しない限り、互いに組み合わされ得る。具体的には、例えば、
図6Aや
図6Bに示されたインビジブルソナー構成は、
図11~
図34に示された構成においても実現され得る。より詳細には、例えば、
図30~
図32に示された構成において、振動板21および支持部26に代えて、
図6Aに示されたバンパーV3および制振部V8が用いられ得る。
【符号の説明】
【0128】
1 超音波センサ
2 センサ筐体
21 振動板
3 固定部
4 変換素子
41 基端部
42 先端部
5 振動変換部
SG 外部空間
V 車両(移動体)