(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】フィルム製品リールの放射線透過検査装置およびこれを用いたフィルム製品リールの製造方法、ならびにフィルム製品リールの放射線透過方法
(51)【国際特許分類】
G01N 23/18 20180101AFI20250311BHJP
G01N 23/04 20180101ALI20250311BHJP
【FI】
G01N23/18
G01N23/04
(21)【出願番号】P 2021520438
(86)(22)【出願日】2021-04-12
(86)【国際出願番号】 JP2021015162
(87)【国際公開番号】W WO2022044418
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2024-04-09
(31)【優先権主張番号】P 2020142728
(32)【優先日】2020-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091384
【氏名又は名称】伴 俊光
(74)【代理人】
【識別番号】100125760
【氏名又は名称】細田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 充
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 尊則
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/004435(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/176903(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/069686(WO,A1)
【文献】特開2006-308456(JP,A)
【文献】特開2019-049544(JP,A)
【文献】特開2006-308316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/18
G01N 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアの外周面に長尺のフィルムが複数周巻回されてなるフィルム製品リールに含まれる異物の検査を行う放射線透過検査装置であって、
前記フィルム製品リールが置かれる載置台と、
前記コアの内側と前記フィルム製品リールの外周面との間にて、前記フィルム製品リールの半径方向に放射線を透過させて受光する放射線源および検出器の一対と、
前記検出器で得られた放射線検出結果から異物検出画像を生成する画像処理部と、
を有
し、
さらに、前記放射線源と前記検出器の一対を、前記円周方向に旋回または前記幅方向に移動させる機能を有し、
前記画像処理部が、前記放射線源と前記検出器の一対を前記フィルム製品リールの円周方向または幅方向に移動させる前後の前記異物検出画像に基づいて、前記異物が前記フィルム製品リールのフィルム部分に含まれるか否かを判定する、フィルム製品リールの放射線透過検査装置。
【請求項2】
コアの外周面に長尺のフィルムが複数周巻回されてなるフィルム製品リールに含まれる異物の検査を行う放射線透過検査装置であって、
前記フィルム製品リールが置かれる載置台と、
前記コアの内側と前記フィルム製品リールの外周面との間にて、前記フィルム製品リールの半径方向に放射線を透過させて受光する放射線源および検出器の一対と、
前記検出器で得られた放射線検出結果から異物検出画像を生成する画像処理部と、
を有
し、
前記載置台は、前記フィルム製品リールを前記円周方向に回転または前記幅方向に移動させる機能を有し、
前記画像処理部が、前記フィルム製品リールを前記フィルム製品リールの円周方向または幅方向に移動させる前後の前記異物検出画像に基づいて、前記異物が前記フィルム製品リールのフィルム部分に含まれるか否かを判定する、フィルム製品リールの放射線透過検査装置。
【請求項3】
前記放射線の焦点が前記コアの内側空洞部に配置される、請求項1
または2に記載の放射線透過検査装置。
【請求項4】
前記画像処理部が、前記フィルムを巻回する前の前記コアについて予め得られた前記異物検出画像に基づいて、前記異物が前記フィルム製品リールのフィルム部分に含まれるか否かを判定する、請求項1~
3のいずれかに記載の放射線透過検査装置。
【請求項5】
長尺のフィルムをコアに複数周巻回してフィルム製品リールを得る工程と、請求項1~
4のいずれかに記載の放射線透過検査装置を用いて前記フィルム製品リールに含まれる異物の検査を行う異物検査工程とを含む、フィルム製品リールの製造方法。
【請求項6】
前記フィルムがポリオレフィン微多孔膜からなる、請求項
5に記載のフィルム製品リールの製造方法。
【請求項7】
コアの外周面に長尺のフィルムが複数周巻回されてなるフィルム製品リールに対し、前記コアの内側と前記フィルム製品リールの外周面との間にて、前記フィルム製品リールの半径方向に
放射線源から放射線を透過させ
て検出器で受光して得られた放射線検出結果から異物検出画像を生成
し、
前記フィルム製品リールまたは前記放射線源と前記検出器の一対を前記フィルム製品リールの円周方向または幅方向に移動させてから、再び前記異物検出画像を生成し、
前記円周方向または幅方向への移動前後の前記異物検出画像に基づいて、異物が前記フィルム製品リールのフィルム部分に含まれるか否かを判定する、フィルム製品リールの放射線透過検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムを巻き取ったフィルム製品リールに混入する異物を検査する放射線透過検査装置と、これを用いたフィルム製品リールの製造方法、ならびにフィルム製品リールの放射線透過方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
各種のポリマーフィルムなどのフィルムは、一般に、フィルム原反として、ロールに巻かれた状態でこのフィルムを使用するメーカーに供給される。特に、フィルム原反よりも幅の小さいフィルムを使用する場合には、幅広である原反ロールからフィルムを巻き出して所望のフィルム幅とするスリット加工を行い、スリット加工されたフィルムをコアに巻き取ってフィルム製品リールとする。スリット加工されたフィルムを使用するときは、フィルム製品リールから改めてフィルムを巻き出して使用する。また、各種の表面処理がなされたフィルムを使用する場合には、未処理フィルムの原反からフィルムを巻き出して表面処理を行い、処理後のフィルムを巻き取ってフィルム製品リールとする。表面処理されかつスリット加工されたフィルムを必要とするときは、表面処理されたフィルムをコアに巻取り、その後、このフィルム製品リールからフィルムを巻き出してスリット加工を行ない、再度、コアに巻き取ることが一般的である。
【0003】
このような過程を経て得られたフィルム製品リールからフィルムを巻き出して使用する場合、フィルム製品リール中に混入する微小な異物が問題となることがある。そこで、フィルム製品リール中に混入する異物を検出することが求められる。例えば、フィルム製品リールから巻き出したフィルムをリチウムイオン二次電池の正極と負極との間に挿入されるバッテリーセパレータフィルムとして使用する場合、フィルム製品リール中に混入していた異物はバッテリーセパレータフィルム上の異物となるが、この異物が例えば微小な金属片であれば、リチウムイオン二次電池における正極と負極との間の短絡を引き起こしたり、電解液に溶解して電池特性を劣化させたりする。そこで、フィルム製品リール中に混入する微小な異物を検出する検査方法及び装置が求められている。バッテリーセパレータフィルム向けにおいては、100μm以下の大きさ、例えば、数十μm程度の金属異物を検出することが必要である。もっとも、電気伝導性を有しない非金属の異物の場合には、より大きな異物であっても問題にならない場合もあるから、バッテリーセパレータフィルム用のフィルム製品リールでの異物の検出に際しては異物の大きさとその材質あるいは種類も判別できることが好ましい。
【0004】
また、フィルム製品リール中のどこに異物が存在するかを知ることができれば、異物が存在しない区間のフィルムを使用することができるようになって、フィルムの有効利用を図ることもできる。
【0005】
バッテリーセパレータフィルム上の欠陥や異物を検査する方法として、各種の放射線透過検査装置が知られている(特許文献1、2参照。)。しかしながら、例えば特許文献1の
図3に開示される欠陥検査装置では、セパレータ捲回体10の左側(線源部2側)の面とセパレータ捲回体10の右側(センサ部3側)の面との検出感度の差が生じ、特に広幅のセパレータ捲回体リールにおいては検出感度の顕著な差を生じる上に、線源部2とセパレータ捲回体10の物理的干渉があるため右側(センサ部3側)の面が十分な検出感度(例えば100μm)を保てない恐れがあるため、広幅リールの検査に適用するのが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-91825号公報
【文献】国際公開WO2020/004435
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、高速で搬送されるフィルムを巻き取ったフィルム製品リールに含まれる微小な異物を、例えば金属異物であるか否かを含めて検出することができる検査装置と、これを用いたフィルム製品リールの製造方法、ならびにフィルム製品リールの放射線透過方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るフィルム製品リールの放射線透過検査装置は、コアの外周面に長尺のフィルムが複数周巻回されてなるフィルム製品リールに含まれる異物の検査を行う放射線透過検査装置であって、前記フィルム製品リールが置かれる載置台と、前記フィルム製品リールの円周面に対し半径方向に放射線を透過させて受光する放射線源および検出器の一対と、前記検出器で得られた放射線検出結果から異物検出画像を生成する画像処理部と、を有するものからなる。ここで放射線とは、X線、β線、γ線、赤外線等を含む電磁波をいう。検出器としては撮像素子が2次元に配列されたエリアカメラ、撮像素子が1次元に配列されたラインカメラ、あるいは複数のラインカメラを配列方向と垂直に設けたTDI(Time Delay Integration)カメラ等を用いることができる。ラインカメラまたはTDIカメラを用いる場合は、撮像素子の配列がリール回転軸と平行になるよう配置することが好ましい。
【0009】
このような本発明に係るフィルム製品リールの放射線透過検査装置によれば、フィルム製品リールの円周面に対し半径方向に放射線を透過させるので、リール幅が増加しても高感度で異物を検出することが可能である。
【0010】
本発明に係るフィルム製品リールの放射線透過検査装置において、前記放射線の焦点が前記コアの内側空洞部に配置され、検出器が前記コアの半径方向外側に配置されることが好ましい。検出器を外側に配置することで、検出器サイズに制約を設ける必要がなく、1回の撮像視野を大きくすることができる。
【0011】
本発明に係るフィルム製品リールの放射線透過検査装置において、前記フィルム製品リールを円周方向に回転させる機能を有することが好ましい。また、前記放射線源と前記検出器の一対を、前記フィルム製品リールの円周方向に旋回させてもよい。
【0012】
本発明に係るフィルム製品リールの放射線透過検査装置において、前記フィルム製品リールを幅方向に移動させる機能を有することが好ましい。また、前記放射線源と前記検出器の一対を、前記フィルム製品リールの幅方向に移動させてもよい。このような構成を有することにより、1回の撮像視野以上の幅を有するフィルム製品リールも全幅検査することができる。また、幅方向に移動させる際の1回の移動量を、最小視野幅(フィルム製品リールの最も放射線源に近い位置における撮像視野幅)の半分未満とすることにより、同一異物を2視野以上で撮像することができる。この場合、幅方向に移動させる前後の異物検出画像に基づいて異物混入深さを推定することができるので、異物がフィルム製品リールのフィルム部分に含まれるか否かを判定することが可能となる。
【0013】
本発明に係るフィルム製品リールの放射線透過検査装置において、前記画像処理部が、前記フィルムを巻回する前の前記コアについて予め得られた前記異物検出画像に基づいて、前記異物が前記フィルム製品リールのフィルム部分に含まれるか否かを判定することが好ましい。このように、フィルム製品リールの異物検出画像を、フィルムを巻回する前のコアについて予め得られた異物検出画像と対比することにより、フィルム製品の性能に直接影響しないコアに含まれる異物を差し引いてフィルム部分に含まれる異物のみを検出すれば、異物がコアのみに含まれるフィルム製品リールを不良品と誤判定することがなくなるので、放射線透過検査における収率悪化を回避することができる。
【0014】
また、上記課題を解決するために、本発明に係るフィルム製品リールの製造方法は、長尺のフィルムをコアに巻回してフィルム製品リールを得る工程と、上記の放射線透過検査装置を用いて前記フィルム製品リールに含まれる異物の検査を行う異物検査工程とを含む方法からなる。このような本発明に係るフィルム製品リールの製造方法によれば、異物の混入が少ないフィルム製品リールを効率的に製造することが可能である。特にフィルムがポリオレフィン微多孔膜からなる場合には、フィルム製品リールがリチウムイオン二次電池の正極と負極との間に挿入されるバッテリーセパレータフィルムとして用いられる場合が多く、数十μm程度の微小な金属異物を検出することが求められるため、上記の放射線透過検査装置を用いた異物検査工程をフィルム製品リールの製造工程に含めることは有効である。
【0015】
また、上記課題を解決するために、本発明に係るフィルム製品リールの放射線透過検査方法は、コアの外周面に長尺のフィルムが複数周巻回されてなるフィルム製品リールの円周面に対し半径方向に放射線を透過させて得られた放射線検出結果から異物検出画像を生成する方法からなる。このような本発明に係るフィルム製品リールの放射線透過検査方法によれば、フィルム製品リールの円周面に対し半径方向に放射線を透過させるので、リール幅が増加しても高感度で異物を検出することが可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、リール幅が増加しても高感度で異物を検出することが可能なフィルム製品リールの放射線透過検査が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施態様に係るフィルム製品リールの放射線透過検査方法を説明するための模式図であり、(A)はリール端部の正面図、(B)はリール円周面の正面図、(C)はリールの斜視図である。
【
図2】本発明の他の実施態様に係るフィルム製品リールの放射線透過検査方法を説明するための模式図であり、(A)は
図1とは異なるタイプの検出器を用いた場合のリールの斜視図、(B)は検出器の中央部と端部とでは投影倍率の差が生じることを示す模式図である。
【
図3】
図1の放射線透過検査方法により異物を検出する方法を説明するための模式図であり、(A)はリール回転中心軸とX線焦点位置が一致している場合を示し、(B)はリール回転中心軸とX線焦点位置がずれている場合を示している。
【
図4】
図1の放射線透過検査方法により異物混入深さを推定する方法を説明するための模式図である。
【
図5】本発明の一実施態様に係る放射線透過検査装置を示し、(A)正面図、(B)は左側面図である。
【
図6】本発明の他の実施態様に係るフィルム製品リールの放射線透過検査方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の望ましい実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0019】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の一実施態様に係るフィルム製品リールの放射線透過検査方法を説明するための模式図であり、(A)はリール端部の正面図、(B)はリール円周面の正面図、(C)はリールの斜視図である。
図1(A)において、コア2に複数周巻回されたフィルム3にX線を照射するにあたり、X線源4は円筒形状のコア2の回転中心軸上に配置される。照射X線5はフィルム3を透過してコア2外部に設けられたTDIカメラからなる検出器6で受光されるが、受光したX線の輝度の違いを検出して画像処理することにより異物が検出される。
【0020】
図1(B)は、リール円周面の正面図であり、
図1(C)はリールの斜視図である。製品リール1をリール幅方向に移動させながらX線を照射して照射X線5を検出器6で受光することにより、製品リール1の幅全体にわたって異物を検出することができる。また製品リール1を移動させる代わりに、検出器6とX線源(図示略)の一対をリール幅方向に移動させても同様の効果が得られる。
【0021】
ここで、本実施形態において、検出器6としてTDIカメラを用いることによるメリットを、
図2を用いて説明する。
図2は、本発明の他の実施態様に係るフィルム製品リールの放射線透過検査方法を説明するための模式図であり、
図1の検出器6(TDIカメラ)とは異なるタイプの検出器26(エリアカメラ)を用いたものである。
図2(A)に示すように製品リールの側表面が曲面をなしているため、
図2(B)に示すように検出器26(エリアカメラ)のリール円周方向中央部とリール円周方向端部とでは投影倍率(D/d=FID/FOD)の差が生じる。投影倍率が大きいほど、より小さな異物を検出することができ、投影倍率の差は、検出感度のばらつきとなる。従って、検出器としてはエリアカメラよりもラインカメラや、ラインカメラを流れ方向に複数並べ、積算し高感度化したTDIカメラを用いることで、製品リール全周に亘って一定の検出感度で検査することができる。ここで、dとは異物の実寸法、Dとは異物を投影した検出器上での寸法、FID(Focus to Image Distance)とは焦点~検出器距離を指し、FOD(Focus to Object Distance)は焦点~対象物距離を指す。
【0022】
図3は、
図1の放射線透過検査方法により異物を検出する方法を説明するための模式図である。
図3(A)においては、コア2の回転中心軸上にX線焦点16が配置されているので、曲面形状の検査サンプルである製品リール1をリール円周方向に回転させながら照射X線5を検出器6で受光することにより、TDIカメラにおける輝度を正常に積算することができる。これに対し
図3(B)においては、コア2の回転中心軸とX線焦点16がずれて配置されているので、異物Bが正常に投影されず、TDIカメラにおける輝度を正常に積算することができない。ただしTDIカメラを用いた場合でも積算誤差が許容される場合や、ラインカメラ、エリアカメラのように輝度積算不要な検出器を用いた場合はこの限りではなく、以下の長所を踏まえた上で適宜X線焦点16の位置を変更してよい。
【0023】
(X線焦点16を、回転中心軸から検出器側に近づけた場合のメリット)
前述の通り、投影倍率(検出感度)を大きくする方法としては、FIDを大きくするか、FODを小さくすることが挙げられる。即ち、X線焦点16を回転中心軸から検出器側に近づけることで、FIDを維持したまま投影倍率を大きくすることができる。
【0024】
(X線焦点16を回転中心軸から遠ざけた場合のメリット)
コアの肉厚をt、コア内面までのFODをFOD(内)、リール外周面までのFODをFOD(外)とした場合、コア内面上に存在する異物に対する投影倍率はFID/FOD(内)、リール外周面上に存在する異物に対する投影倍率はFID/FOD(外)=FID/(FOD(内)+t)となる。両者の比をとると(FID/FOD(内))/{FID/(FOD(内)+t)}=1+t/FOD(内)となり、これが1に近いほど検出感度ばらつきが小さく好ましい。即ち、FOD(内)を大きくする(X線焦点16を回転中心軸から遠ざける)ことで、検出感度ばらつきを小さくすることができる。
【0025】
図4は、
図1の放射線透過検査方法により異物混入深さを推定する方法を説明するための模式図である。
図3(B)および(C)に示したように、製品リール1(または検出器6とX線源4の一対)をリール幅方向に移動させながらX線を照射して照射X線5を検出器6で受光すると、
図4に示すように一つの異物が異物検出画像上で移動し軌跡を描く。製品リールの変位(Δx)と異物検出画像上の異物の変位(x
1-x
2)の関係を読み取って数式1を用いた幾何学的計算をすることにより、FIDおよびFODを用いて異物混入深さ(z)を算出することができる。
【0026】
(数式1) z=Δx×FID/(x1-x2)-FOD
【0027】
図5は、本発明の一実施態様に係る放射線透過検査装置を示し、(A)正面図、(B)は左側面図である。放射線透過検査装置11は、フィルム3がコア2に巻回されてなる製品リール1を、コア受け12を介して載置するための載置台13が設けられている。
【0028】
検査を開始するにあたっては、まず載置台13を、幅方向移動機構14を用いて製品リール1の幅方向に移動させることにより、X線源4を固定する線源固定フレーム15をコア2の内側空洞部に挿入させる。移動先については、あらかじめ定めた検査開始位置まで移動させることもできるが、照射X線5と検出器6によって検知されたフィルム3の端部(エッジ)まで移動させたり、別途に設置した別のセンサで検知されたフィルム3の端部まで移動させてから検査を開始してもよい。また、載置台13を移動させる代わりに、固定した載置台13に対してX線源4と検出器6の一対を幅方向に移動させてもよい。
【0029】
次に、照射X線5のX線焦点16がコア2の回転中心軸上に配置されるようにX線を照射した状態でコア受け12を回転させることにより製品リール1を回転させ、検出器6が連続的に検出したデータを画像処理して異物検出画像を生成する。コアを一定速度で回転させるために、コア受け材質はコアと摩擦の大きいものが好ましく、例えばゴムなどが挙げられる。また材質以外の対策として、コア受けとコア表面それぞれに凹凸加工を施し、噛み合わせることで回転させてもよい。コア2には回転位置マーカー17が設けられているため、1回転ごとに回転位置センサ18で検出される回転位置マーカー17を手掛かりにして1周分の異物検出画像を得ることができる。また、複数周回分の異物検出画像を平均化すれば画像ノイズを抑制することができる。また、検出器6としてラインカメラまたはTDIカメラを用いる場合には、歪みのない画像を得るために、カメラのスキャン速度とコア受け12の回転速度を一致させることが好ましい。このとき、回転速度が変動した場合に備えてコア受け12またはコア2の回転速度をエンコーダ等の速度計で測定し、カメラのスキャン速度と同期させてもよい。なお、照射X線5の照射幅は検出器より広範囲であってもよい。
【0030】
次に、幅方向移動機構14を用いて載置台13をあらかじめ定められた移動量だけ幅方向に移動させてから、再び異物検出画像を生成する。これを製品リール1の全幅に渡って繰り返すことにより、製品リール1全体の異物検出画像を得ることができる。なお、製品リール1またはX線源4と検出器6の一対を幅方向に移動させる前後の異物検出画像に基づいて異物が製品リール1のフィルム3部分に含まれるか否かを判定する、いわゆるステレオ撮像による検査を行う場合には、1回あたりの載置台13の移動量を1周分の異物検出画像幅の半分未満とすることが好ましい。また、載置台13の移動時には製品リール1の回転を止めてもよいし、製品リール1を回転させたままで載置台13を移動させてもよい。
【0031】
製品リール1全体の異物検出画像が得られたら、X線の照射を停止し、製品リール1の回転を停止し、線源固定フレーム15がコア2から露出する位置まで載置台13を幅方向に移動させて製品リール1をコア受け12から取り出す。
【0032】
(第2の実施形態)
図1において、検出器6としてエリアカメラを用い、その他は同一とする。エリアカメラは、TDIカメラやラインカメラとは異なり、静止状態で撮像するため製品リール1の回転速度を測定または制御する必要がなく、製品リール1の特定の幅位置において全周検査するフローとしては、製品リール1をθ回転→静止→撮像→製品リール1をθ回転→・・・となる。ここで、θは次視野撮像時の製品リール1の回転角度である。またエリアカメラを使用した場合は、X線焦点16の位置はコア2の回転中心軸上からずらすことが好ましい。これにより、全周検査する際に同一異物を複数視野で検出した場合において、異物混入位置を推定することができる。この原理について
図6を用いて説明する。
【0033】
図6は製品リール1を、原点Oを中心として円周方向に回転させる前後の2視野において、同一異物を検出した場合の模式図を示している。まず、線分s
1において、X線焦点~異物~検出器上の異物投影位置の3点が同一線上にあることから数式2が成立する。
(数式2) (FID-b)/(A
1-a)=(y
1-b)/(x
1-a)
【0034】
同様に、線分s2において、数式3が成立する。
(数式3) (FID-b)/(A2-a)=(y2-b)/(x2-a)
【0035】
次に、回転後の異物混入位置は回転前の異物混入位置をθ回転させた位置であることから数式4および数式5が成立する。
(数式4) x2=x1×cosθ-y1×sinθ
(数式5) y2=x1×sinθ+y1×cosθ
【0036】
数式2~5の連立方程式を解くと、x1、y1、x2、y2が求められる。これらの座標から、異物混入位置(x1、y1)の極座標(r、φ)は、r=(x1
2+y1
2)1
/2、φ=arctan(y1/x1)と求めることができる。このとき、rがコア2の外径よりも小さいか大きいかで、コア内部の異物か、フィルム中の異物かを判断することができる。
【0037】
ここで、X線焦点16がコア2の回転中心軸上にあった場合(a=b=0の場合)、異物混入位置半径に依らず検出器上の投影位置は同一となってしまい、数式2~5で位置を求めることができない。従って、本実施形態においてX線焦点16はコア2の回転中心軸上からずらすことが好ましい。ただしいずれの場合でも、第1の実施形態と同様に、幅方向の移動前後の画像に基づき数式1を用いて異物混入位置を求めることができる。
【0038】
異物混入位置が求められれば、投影倍率の定義式からd=D×(r/FID)により実寸法が求められ、
図2で示したエリアカメラ使用時における円周方向の感度ばらつきを補正することができる。このとき、それぞれの異物混入位置(x
1、y
1)、(x
2、y
2)それぞれにおける検出器上での寸法D
1、D
2と、X線焦点~検出器間距離FID
1、FID
2を用いてd
1、d
2を算出し平均値を算出することで、計算誤差を抑制することができる。ここでFID
1、FID
2とは、線分s
1、s
2のそれぞれの長さである。
【0039】
本実施形態においては、円周方向の複数視野において同一異物を検出し、かつ検査時間を長大化させないように、θを適宜設定する。θが大きいと一つの視野でしか検出できない可能性があり、θが小さいと検査時間を要してしまう。ただし、θは全周に亘って一定である必要はなく、通常時は次視野とのオーバーラップを最小限としたθとし、異物検出時のみ、一時的にθを小さくして複数視野で検出させてもよい。また上述は2視野で検出した場合を説明したが、3視野以上で検出しても同様に求めることができ、算出値を平均化する等により、さらに誤差を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の検査方法を適用する製造工程は、ポリオレフィン製バッテリーセパレータフィルムに限られず、コーティングセパレータ、不織布製バッテリーセパレータ、コンデンサ用フィルム、MLCC離型用フィルム、高精度ろ過用途として用いられるポリオレフィン微多孔フィルム等の製造工程にも好適である。
【符号の説明】
【0041】
1 製品リール
2 コア
3 フィルム
4 X線源
5 照射X線
6、26 検出器
11 放射線透過検査装置
12 コア受け
13 載置台
14 幅方向移動機構
15 線源固定フレーム
16 X線焦点
17 回転位置マーカー
18 回転位置センサ
FID 焦点~検出器距離
FOD 焦点~対象物距離