(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】ポリアミド樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 77/00 20060101AFI20250311BHJP
C08K 5/5313 20060101ALI20250311BHJP
C08K 5/5399 20060101ALI20250311BHJP
C08L 23/26 20250101ALI20250311BHJP
C08L 51/00 20060101ALI20250311BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20250311BHJP
F16L 11/04 20060101ALI20250311BHJP
【FI】
C08L77/00
C08K5/5313
C08K5/5399
C08L23/26
C08L51/00
C08L67/00
F16L11/04
(21)【出願番号】P 2021562588
(86)(22)【出願日】2020-11-25
(86)【国際出願番号】 JP2020043773
(87)【国際公開番号】W WO2021111937
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2023-09-25
(31)【優先権主張番号】P 2019219649
(32)【優先日】2019-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020058505
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020058570
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】UBE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】坪井 一俊
(72)【発明者】
【氏名】中尾 祐貴子
(72)【発明者】
【氏名】楠本 孝明
(72)【発明者】
【氏名】城谷 香鈴
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-511685(JP,A)
【文献】国際公開第2009/037859(WO,A1)
【文献】特開2005-350501(JP,A)
【文献】特開2012-025954(JP,A)
【文献】特開2007-277535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K
C08L
F16L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ポリアミド(A)、ホスフィン酸塩(B)及びホスファゼン化合物(C)を含むポリアミド樹脂組成物であって、
前記脂肪族ポリアミド(A)は、前記ポリアミド樹脂組成物
100質量%中に60質量%以上
79質量%以下含まれ、
前記ホスフィン酸塩(B)は、前記ポリアミド樹脂組成物100質量%中に16質量%以上20質量%以下含まれ、
前記ホスファゼン化合物(C)は、前記ポリアミド樹脂組成物
100質量%中に
5質量%以上20質量%以下含まれる、ポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
前記脂肪族ポリアミド(A)は、メチレン基数のアミド基数に対する比が5.0以上の脂肪族ポリアミドであり
、かつ、
前記ホスファゼン化合物(C)は、環状ホスファゼン化合物である、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
更に、エラストマー重合体(D)(但し、コアシェルゴム型グラフト共重合体(F)を除く)及びリン含有高分子化合物(E)を
含む、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
前記エラストマー重合体(D)が、カルボキシル基及び/又は酸無水物基を有する不飽和化合物から誘導される構成単位を含有する、請求項3に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、前記脂肪族ポリアミド(A)を60質量%以上
76質量%以下含み、前記ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、前記エラストマー重合体(D)を3質量%以上15質量%以下含む、請求項3又は4に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項6】
前記リン含有高分子化合物(E)が、下記の式(5)で表される、請求項3又は4に記載のポリアミド樹脂組成物。
【化1】
〔式中、n1は4以上の整数である。〕
【請求項7】
前記ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、前記脂肪族ポリアミド(A)を60質量%以上76質量%以下含み、前記ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、前記リン含有高分子化合物(E)を3質量%以上10質量%以下含む、請求項3又は4に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項8】
前記ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、前記ホスファゼン化合物(C)を
5質量%以上10質量%以下含む、請求項3又は4に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項9】
更に、コアシェルゴム型グラフト共重合体(F)を含む、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項10】
前記コアシェルゴム型グラフト共重合体(F)が、シリコーン系共重合体である、請求項9に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項11】
前記ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、前記脂肪族ポリアミド(A)を60質量%以上76質量%以下含み、前記ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、前記コアシェルゴム型グラフト共重合体(F)を2質量%以上15質量%以下含む、請求項9又は10に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項12】
前記ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、成分(F)以外の耐衝撃材(G)を10質量%以下含む、請求項9又は10に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項13】
前記ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、成分(B)及び(C)以外の難燃剤(H)を10質量%以下含む、請求項9又は10に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項14】
前記ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、前記ホスファゼン化合物(C)を
5質量%以上10質量%以下含む、請求項9又は10に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項15】
前記ホスファゼン化合物(C)は、下記の式(3)で表される、請求項1~4、9及び10のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【化2】
〔式中、nは3~25の整数を示し、R
1は同一又は異なって、非置換又は置換されたアリール基であるが、但し、非置換のアリール基の割合は、R
1の合計量に対して0.1~100モル%である。〕
【請求項16】
前記脂肪族ポリアミド(A)が、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド612、ポリアミド1010、ポリアミド1012、及びポリアミド1212からなる群より選ばれる少なくとも1種の単独重合体、並びに/又はこれらを形成する原料単量体を2種以上用いた少なくとも1種の共重合体を含む、請求項1~4、9及び10のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物を含む、成形体。
【請求項18】
請求項1~16のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物から成形される、中空成形体。
【請求項19】
押出成形法によって成形される、請求項18に記載の中空成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、産業用及び民生用の機器並びに電気製品等の分野において、火災を未然に防ぐ、あるいは延焼を防ぐために材料への難燃性の要求が高まっている。一方で、合成樹脂類は燃焼し易い特徴をもっており、ポリアミド樹脂は、ポリオレフィン樹脂等に比べると難燃性が高いが、近年の高まる要求に対応するには不十分である。そのため、ポリアミド樹脂に難燃剤を用いる事で、高い難燃性を付与する材料の発明がこれまでにもなされている。
【0003】
例えば、ポリアミド66をベースとした、数種のリン系、窒素系の難燃剤を含む、高い難燃性とグローワイヤ抵抗を有する繊維強化ポリアミド樹脂が提案されている(特許文献1参照)。
また、脂肪族ポリアミドと部分芳香族ポリアミドからなり、リン系の難燃剤を含んだ繊維強化ポリアミド樹脂が提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、特許文献1及び2には、繊維強化樹脂のみについて記載されている。特許文献1及び2に開示されたポリアミド樹脂は、可撓性部品の製造のために用いるポリアミド樹脂として不適である。
ハロゲンを含まない難燃剤を含むポリアミド樹脂組成物も提案されている(特許文献3参照)。特許文献3は、剛性成形品を意図しており、特許文献3で用いられる全ての樹脂組成物は、繊維強化ポリアミド樹脂が想定されている。
【0004】
一方で、難燃性を有する非強化ポリアミド樹脂としては、ポリアミド12とポリアミドエラストマーをベースとして、難燃剤と可塑剤を含むポリアミド成形組成物が提案されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-70627号公報
【文献】特表2007-507566号公報
【文献】特表2004-510863号公報
【文献】特開2017-43762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献4には、酸素指数についての記載はあるが、難燃性の重要な指標であるUL燃焼試験の結果についての技術データの開示はない。よって、本発明は、優れた機械物性を持ち、UL94燃焼試験において優れた結果を示すポリアミド樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するために、鋭意検討した結果、ホスフィン酸塩と、特定の割合で、脂肪族ポリアミド及びホスファゼン化合物とを含む、ポリアミド樹脂組成物は、機械物性を持ち、UL94燃焼試験において優れた結果を示すことを見出した。
【0008】
即ち、本発明は、以下に関する。
[1]脂肪族ポリアミド(A)、ホスフィン酸塩(B)及びホスファゼン化合物(C)を含むポリアミド樹脂組成物であって、
前記脂肪族ポリアミド(A)は、前記ポリアミド樹脂組成物中に60質量%以上85質量%以下含まれ、
前記ホスファゼン化合物(C)は、前記ポリアミド樹脂組成物中に3質量%以上20質量%以下含まれる、ポリアミド樹脂組成物。
[2]前記脂肪族ポリアミド(A)は、メチレン基数のアミド基数に対する比が5.0以上の脂肪族ポリアミドであり、
前記ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、前記脂肪族ポリアミド(A)を60質量%以上82質量%以下含み、
前記ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、前記ホスフィン酸塩(B)を15質量%以上20質量%以下含み、かつ、
前記ホスファゼン化合物(C)は、環状ホスファゼン化合物である、[1]のポリアミド樹脂組成物。
[3]更に、エラストマー重合体(D)(但し、コアシェルゴム型グラフト共重合体(F)を除く)及びリン含有高分子化合物(E)を含み、
前記ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、前記脂肪族ポリアミド(A)を60質量%以上82質量%以下含み、
前記ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、前記ホスフィン酸塩(B)を15質量%以上20質量%以下含む、[1]のポリアミド樹脂組成物。
[4]前記エラストマー重合体(D)が、カルボキシル基及び/又は酸無水物基を有する不飽和化合物から誘導される構成単位を含有する、[3]のポリアミド樹脂組成物。
[5]前記ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、前記脂肪族ポリアミド(A)を60質量%以上79質量%以下含み、前記ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、前記エラストマー重合体(D)を3質量%以上15質量%以下含む、[3]又は[4]のポリアミド樹脂組成物。
[6]前記リン含有高分子化合物(E)が、下記の式(5)で表される、[3]~[5]のいずれかのポリアミド樹脂組成物。
【化1】
〔式中、n1は4以上の整数である。〕
[7]前記ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、前記脂肪族ポリアミド(A)を60質量%以上76質量%以下含み、前記ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、前記リン含有高分子化合物(E)を3質量%以上10質量%以下含む、[3]~[6]のいずれかのポリアミド樹脂組成物。
[8]前記ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、前記ホスファゼン化合物(C)を3質量%以上10質量%以下含む、[3]~[7]のいずれかのポリアミド樹脂組成物。
[9]更に、コアシェルゴム型グラフト共重合体(F)を含む、[1]のポリアミド樹脂組成物。
[10]前記コアシェルゴム型グラフト共重合体(F)が、シリコーン系共重合体である、[9]のポリアミド樹脂組成物。
[11]前記ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、前記コアシェルゴム型グラフト共重合体(F)を2質量%以上15質量%以下含む、[9]又は[10]ポリアミド樹脂組成物。
[12]前記ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、成分(F)以外の耐衝撃材(G)を10質量%以下含む、[9]~[11]のいずれかのポリアミド樹脂組成物。
[13]前記ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、成分(B)及び(C)以外の難燃剤(H)を10質量%以下含む、[9]~[12]のいずれかのポリアミド樹脂組成物。
[14]前記ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、前記ホスファゼン化合物(C)を3質量%以上10質量%以下含む、[9]~[13]のいずれかのポリアミド樹脂組成物。
[15]前記ホスファゼン化合物(C)は、下記の式(3)で表される、[1]~[14]のいずれかのポリアミド樹脂組成物。
【化2】
〔式中、nは3~25の整数を示し、R
1は同一又は異なって、非置換又は置換されたアリール基であるが、但し、非置換のアリール基の割合は、R
1の合計量に対して0.1~100モル%である。〕
[16]前記脂肪族ポリアミド(A)が、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド612、ポリアミド1010、ポリアミド1012、及びポリアミド1212からなる群より選ばれる少なくとも1種の単独重合体、並びに/又はこれらを形成する原料単量体を2種以上用いた少なくとも1種の共重合体を含む、[1]~[15]のいずれかのポリアミド樹脂組成物。
[17][1]~[16]のいずれかのポリアミド樹脂組成物を含む、成形体。
[18][1]~[16]のいずれかのポリアミド樹脂組成物から成形される、中空成形体。
[19]押出成形法によって成形される、[18]の中空成形体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、優れた機械物性を持ち、UL94燃焼試験において優れた結果を示すポリアミド樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[ポリアミド樹脂組成物]
ポリアミド樹脂組成物は、脂肪族ポリアミド(A)、ホスフィン酸塩(B)及びホスファゼン化合物(C)を含み、前記脂肪族ポリアミド(A)は、前記ポリアミド樹脂組成物中に60質量%以上85質量%以下含まれ、前記ホスファゼン化合物(C)は、前記ポリアミド樹脂組成物中に3質量%以上20質量%以下含まれる。
【0011】
[脂肪族ポリアミド(A)]
脂肪族ポリアミド(A)は、脂肪族ホモポリアミド樹脂及び/又は脂肪族共重合ポリアミド樹脂を含む。
【0012】
(脂肪族ホモポリアミド樹脂)
脂肪族ホモポリアミド樹脂は、脂肪族ポリアミド樹脂を構成するモノマー成分が、1種単独であるポリアミド樹脂を意味する。脂肪族ホモポリアミド樹脂は、1種類のラクタム及び当該ラクタムの加水分解物であるアミノカルボン酸の少なくとも一方からなるものであってもよく、1種類の脂肪族ジアミンと1種類の脂肪族ジカルボン酸との組合せからなるものであってもよい。ここで、脂肪族ポリアミド樹脂を構成するモノマー成分が、脂肪族ジアミン及び脂肪族ジカルボン酸の組合せである場合は、1種の脂肪族ジアミンと1種の脂肪族ジカルボン酸の組合せで1種のモノマー成分とみなすものとする。
【0013】
脂肪族ホモポリアミド樹脂としては、脂肪族ジアミン及び脂肪族ジカルボン酸からなる脂肪族ホモポリアミド樹脂、ラクタム又はアミノカルボン酸からなる脂肪族ホモポリアミド樹脂等を挙げることができる。
【0014】
脂肪族ホモポリアミド樹脂を構成するモノマー成分としては、炭素数2~20、好ましくは炭素数4~12、より好ましくは6~12の脂肪族ジアミンと、炭素数2~20、好ましくは炭素数6~12、より好ましくは10~12の脂肪族ジカルボン酸の組合せ、炭素数6~12、好ましくは11又は12のラクタム又はアミノカルボン酸等を挙げることができる。
【0015】
脂肪族ジアミンとしては、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ペプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカンジアミン、テトラデカンジアミン、ペンタデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、ヘプタデカンジアミン、オクタデカンジアミン、ノナデカンジアミン、エイコサンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、2,2,4/2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。また脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカンジオン酸、トリデカンジオン酸、テトラデカンジオン酸、ペンタデカンジオン酸、ヘキサデカンジオン酸、オクタデカンジオン酸、エイコサンジオン酸等が挙げられる。
【0016】
ラクタムとしては、ε-カプロラクタム、エナントラクタム、ウンデカンラクタム、ドデカンラクタム、α-ピロリドン、α-ピペリドン等が挙げられる。また、アミノカルボン酸としては6-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、9-アミノノナン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸が挙げられる。
【0017】
脂肪族ホモポリアミド樹脂は、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド26、ポリアミド44、ポリアミド45、ポリアミド46、ポリアミド48、ポリアミド49、ポリアミド410、ポリアミド412、ポリアミド54、ポリアミド55、ポリアミド56、ポリアミド58、ポリアミド59、ポリアミド510、ポリアミド512、ポリアミド64、ポリアミド65、ポリアミド66、ポリアミド68、ポリアミド69、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド614、ポリアミド616、ポリアミド618、ポリアミド96、ポリアミド98、ポリアミド99、ポリアミド910、ポリアミド912、ポリアミド106、ポリアミド108、ポリアミド109、ポリアミド1010、ポリアミド1012、ポリアミド126、ポリアミド128、ポリアミド129、ポリアミド1210、ポリアミド1212等が挙げられる。
【0018】
(脂肪族共重合ポリアミド樹脂)
脂肪族共重合ポリアミド樹脂としては、脂肪族ポリアミド樹脂を構成するモノマー成分が、2種以上の組合せであるポリアミド樹脂を意味する。脂肪族共重合ポリアミド樹脂は、脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸の組合せ、ラクタム及びアミノカルボン酸からなる群から選択される2種以上の共重合体である。ここで、脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸の組合せは、1種類の脂肪族ジアミンと1種類の脂肪族ジカルボン酸の組合せで1種類のモノマーとみなす。
【0019】
脂肪族ジアミンとしては、脂肪族ホモポリアミド樹脂の原料として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0020】
脂肪族ジカルボン酸としては、脂肪族ホモポリアミド樹脂の原料として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0021】
ラクタムとしては、脂肪族ホモポリアミド樹脂の原料として例示したものと同様のものが挙げられる。また、アミノカルボン酸としては脂肪族ホモポリアミド樹脂の原料として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0022】
これらの脂肪族ジアミン、脂肪族ジカルボン酸、ラクタム及びアミノカルボン酸は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
脂肪族共重合ポリアミド樹脂は、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
【0024】
(脂肪族ポリアミド(A)の好ましい態様)
脂肪族ポリアミド(A)は、機械物性(引張破断伸度)及び押出成形性の観点から、メチレン基数([CH2])のアミド基数([NHCO])に対する比[CH2]/[NHCO](以下、メチレン基数のアミド基数に対する比を[CH2]/[NHCO]と称する場合がある。)が5.0以上であることが好ましく、5.0以上15.0以下であることがより好ましく、7.0以上13.0以下であることが特に好ましい。
【0025】
メチレン基数のアミド基数に対する比[CH2]/[NHCO]が5.0以上15.0以下の脂肪族ポリアミド(A)としては、ポリアミド6:[CH2]/[NHCO]=5.0、ポリアミド11:[CH2]/[NHCO]=10.0、ポリアミド12:[CH2]/[NHCO]=11.0、ポリアミド66:[CH2]/[NHCO]=5.0、ポリアミド610:[CH2]/[NHCO]=7.0、ポリアミド612:[CH2]/[NHCO]=8.0、ポリアミド614:[CH2]/[NHCO]=9.0、ポリアミド616:[CH2]/[NHCO]=10.0、ポリアミド618:[CH2]/[NHCO]=11.0、ポリアミド810:[CH2]/[NHCO]=8.0、ポリアミド812:[CH2]/[NHCO]=9.0、ポリアミド99:[CH2]/[NHCO]=8.0、ポリアミド910:[CH2]/[NHCO]=8.5、ポリアミド912:[CH2]/[NHCO]=9.5、ポリアミド108:[CH2]/[NHCO]=8.0、ポリアミド109:[CH2]/[NHCO]=8.5、ポリアミド1010:[CH2]/[NHCO]=9.0、ポリアミド1012:[CH2]/[NHCO]=10.0、ポリアミド126:[CH2]/[NHCO]=8.0、ポリアミド128:[CH2]/[NHCO]=9.0、ポリアミド129:[CH2]/[NHCO]=9.5、ポリアミド1210:[CH2]/[NHCO]=10.0、ポリアミド1212:[CH2]/[NHCO]=11.0等が挙げられる。
【0026】
機械物性及び押出成形性の観点から、脂肪族ポリアミド(A)は、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド612、ポリアミド1010、ポリアミド1012、及びポリアミド1212からなる群より選ばれる少なくとも1種の単独重合体、並びに/又はこれらを形成する原料単量体を2種以上用いた少なくとも1種の共重合体を含むことが好ましい。
【0027】
機械物性、押出成形性及び耐薬品性の観点から、脂肪族ポリアミド(A)は、ポリアミド12及び/又はポリアミド11を含むことがより好ましく、ポリアミド12及び/又はポリアミド11のみからなることが特に好ましい。
脂肪族ポリアミド(A)は、1種又は2種以上の組み合わせであってよい。
【0028】
脂肪族ポリアミド(A)は、機械物性及び押出成形性の観点から、JIS K 6920に準じて、脂肪族ポリアミド(A)1gを96%硫酸100mlに溶解させ、25℃で測定される相対粘度が1.5以上3.5以下であることが好ましく、より好ましくは2.0以上3.0以下である。
【0029】
脂肪族ポリアミド(A)が、相対粘度が異なる2種以上のポリアミド樹脂を含む場合、脂肪族ポリアミド(A)の相対粘度は、上記内容で測定されるのが好ましいが、それぞれのポリアミド樹脂の相対粘度とその混合比が判明している場合、それぞれの相対粘度にその混合比を乗じた値を合計して算出される平均値を、脂肪族ポリアミド(A)の相対粘度としてもよい。
【0030】
(ポリアミド樹脂の製造)
ポリアミド樹脂の製造装置としては、バッチ式反応釜、一槽式ないし多槽式の連続反応装置、管状連続反応装置、一軸型混練押出機、二軸型混練押出機等の混練反応押出機等、公知のポリアミド製造装置が挙げられる。重合方法としては溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法を用い、常圧、減圧、加圧操作を繰り返して重合することができる。これらの重合方法は単独で、あるいは適宜、組合せて用いることができる。
【0031】
[ホスフィン酸塩(B)]
ホスフィン酸塩(B)は、ポリアミド樹脂組成物に難燃性を付与する成分である。
【0032】
ホスフィン酸塩(B)としては、下記式(1)のホスフィン酸金属塩、式(2)のホスフィン酸金属塩、及び/又はそれらのポリマー、アンモニウム塩やホスホニウム塩などのオニウム塩等が挙げられる。ホスフィン酸のオニウム塩の具体例としては、WO2008/117666に記載されたものが挙げられる。
【0033】
ホスフィン酸塩(B)は、ホスフィン酸金属塩であることが好ましく、下記式(1)のホスフィン酸金属塩、式(2)のホスフィン酸金属塩、及び/又はそれらのポリマーであることが特に好ましい。
【0034】
【0035】
【0036】
(式中、
R2、R3は、同一又は異なり、C1-C8アルキル基又はC6-C20アリール基であり;
R4は、C1-C10アルキレン基、C6-C20アリーレン基、C1-C8アルキル基で置換されたC6-C20アリーレン基、又はC6-C20アリール基で置換されたC1-C10アルキレン基であり;
Mは、元素の周期表の第2族若しくは第13族の典型元素又は遷移元素の金属イオンであり;
mは、2又は3であり;
pは、1又は3であり;
xは、1又は2である)。
【0037】
C1-C8アルキル基は、直鎖又は分枝鎖のアルキル基である。C1-C8アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。
C6-C20アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基(o-フェニルフェニル、m-フェニルフェニル、p-フェニルフェニル基等)等が挙げられる。
C1-C10アルキレン基は、直鎖又は分枝鎖のアルキレン基である。C1-C10アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基、t-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-オクチレン基又はn-ドデシレン基等が挙げられる。
C6-C20アリーレン基としては、フェニレン基又はナフチレン基等が挙げられる。
C1-C8アルキル基で置換されたC6-C20アリーレン基としては、メチルフェニレン基、エチルフェニレン基、t-ブチルフェニレン基、メチルナフチレン基、エチルナフチレン基又はt-ブチルナフチレン基等が挙げられる。
C6-C20アリールで置換されたC1-C10アルキレン基としては、フェニルメチレン基、フェニルエチレン基、フェニルプロピレン基又はフェニルブチレン基等が挙げられる。
【0038】
元素の周期表の第2族又は第13族の典型元素としては、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、B、Al、Ga、In、Tlが挙げられる。遷移金属は、第12族元素(Zn、Cd等)を含むものとする。よって、遷移金属としては、Ti、Zn、Fe、Zr、Mn、Zn等が挙げられる。Mとしては、Al、Ca及びZnからなる群より選択される1種以上の金属のイオンであることが好ましい。
mは、Mの価数である。例えば、MがAlの場合は、mは3であり、MがCa又はZnの場合は、mは2である。
p及びxは、mに応じて適宜設定される。例えば、式(2)において、2p=mxとなるように、p及びxが設定される。
【0039】
ホスフィン酸塩(B)におけるホスフィン酸としては、ジメチルホスフィン酸、エチルメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、メチル-n-プロピルホスフィン酸、メチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、メタン-ジ(メチルホスフィン酸)、エタン-1,2-ジ(メチルホスフィン酸)、ヘキサン-1,6-ジ(メチルホスフィン酸)、ベンゼン-1,4-ジ(メチルホスフィン酸)等が挙げられる。
【0040】
ホスフィン酸塩(B)は、特開2007-507566号公報、欧州特許第0699708号に記載されているような、周知の方法によって製造できる。また、ホスフィン酸は、金属カルボン酸塩、金属水酸化物又は金属酸化物を有する水溶液中で、本質的にはモノマーへ、場合によっては反応条件によってポリマーへ転換されることにより、ホスフィン酸塩(B)を製造してもよい。
【0041】
また、ホスフィン酸塩(B)は、市販品を用いることができる。ホスフィン酸塩(B)の市販品としては、クラリアント(株)製のEXOLIT OP1230、EXOLIT OP1240、EXOLIT OP930、EXOLIT OP935等の有機ホスフィン酸のアルミニウム塩が挙げられる。
ホスフィン酸塩(B)は、1種又は2種以上の組み合わせであってよい。
【0042】
[ホスファゼン化合物(C)]
ホスファゼン化合物(C)は、ポリアミド樹脂組成物に難燃性及び機械物性を付与する成分である。ホスファゼン化合物(C)としては、環状ホスファゼン化合物及び非環状ホスファゼン化合物が挙げられる。ホスファゼン化合物(C)は、環状ホスファゼン化合物であることが好ましい。
【0043】
環状ホスファゼン化合物は、-P=N-結合を繰り返し単位として有する化合物である。環状ホスファゼン化合物は、下記の式(3)で表される化合物であることが好ましい。
【化5】
〔式中、nは3~25の整数を示し、R
1は、同一又は異なって、非置換又は置換されたアリール基であるが、但し、非置換のアリール基の割合は、R
1の合計量に対して0.1~100モル%である。〕
【0044】
nは、3~6の整数であることが好ましく、3又は4の整数であることが特に好ましい。
【0045】
非置換のアリール基としては、C6-C20アリール基であることが好ましく、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基(o-フェニルフェニル、m-フェニルフェニル、p-フェニルフェニル基等)等であることがより好ましく、フェニル基であることが特に好ましい。
【0046】
置換されたアリール基の置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、(ヒドロキシアリール)アルキル基、アリールアルキル基、ヒドロキシアリールスルホニル基、ヒドロキシアリールオキシ基、グリシジル基、シアノ基等が挙げられる。置換されたアリール基におけるアリール基としては、非置換のアリール基として前記したとおりである。置換基としてのアルキル基は、C1-C10アルキル基であることが好ましく、C1-C3アルキル基であることが特に好ましい。
【0047】
置換されたアリール基としては、アルキル基で置換されたアリール基{例えば、トリル(o-トリル、m-トリル、p-トリル等)、キシリル(3,4-キシリル、3,5-キシリル、2,3-キシリル、2,4-キシリル、2,5-キシリル、2,6-キシリル等)、エチルフェニル、クミル(o-クミル、m-クミル、p-クミル、フェニルクミル等)、ブチルフェニル(2-t-ブチルフェニル、4-t-ブチルフェニル、2,4-ジ-t-ブチルフェニル、2,6-ジ-t-ブチルフェニル、3-メチル-6-t-ブチルフェニル、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル等)、アミルフェニル(2,4-ジ-t-アミルフェニル、2,6-ジ-t-アミルフェニル等)、シクロヘキシルフェニル、トリメチルフェニル、メチルナフチル等}、アルコキシフェニル基(o-メトキシフェニル、m-メトキシフェニル、p-メトキシフェニル基等)、ヒドロキシフェニル基(o-ヒドロキシフェニル、m-ヒドロキシフェニル、p-ヒドロキシフェニル基、p-(p′-ヒドロキシフェニル)フェニル基等)、(ヒドロキシアリール)アルキルアリール基(p-[2-(p′-ヒドロキシフェニル)イソプロピル]フェニル基等)、(ヒドロキシアリールスルホニル)アリール基(p-(p′-ヒドロキシフェニルスルホニル)フェニル基)、(ヒドロキシアリールオキシ)アリール基(p-(p′-ヒドロキシフェニルオキシ)フェニル基等)、グリシジルフェニル、シアノフェニル等が挙げられる。
【0048】
置換されたアリール基としては、C1-C3アルキル基で置換されたフェニル基(例えば、o-トリル、m-トリル、p-トリル、2,4-キシリル、2,6-キシリル、3,5-キシリル基)及び/又はシアノフェニル基であることが好ましい。
【0049】
式(3)中、非置換のアリール基の割合は、R1の合計量に対して、0.1~100モル%であり、50~100モル%であることがより好ましく、70~100モル%であることがさらに好ましく、100モル%であることが特に好ましい。
【0050】
環状ホスファゼン化合物の具体例としては、2,2,4,4,6,6-ヘキサフェノキシシクロトリホスファゼン(n=3の化合物)、2,2,4,4,6,6,8,8-オクタフェノキシシクロテトラホスファゼン(n=4の化合物)、2,2,4,4,6,6,8,8,10,10-デカフェノキシシクロペンタホスファゼン(n=5の化合物)等が挙げられる。ホスファゼン化合物(C)は、市販品を用いることができる。ホスファゼン化合物(C)の市販品としては、株式会社伏見製薬所製のラビトル FP-110、ラビトル FP-300、ラビトル FP-390等が挙げられる。
ホスファゼン化合物(C)は、1種又は2種以上の組み合わせであってよい。例えば、ホスファゼン化合物(C)は、nが異なる2種以上の環状ホスファゼン化合物の混合物であってもよい。
【0051】
[更なる成分]
ポリアミド樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、更なる成分を含んでいてもよい。更なる成分として、後述する成分(D)~成分(H)、その他の熱可塑性樹脂、可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、帯電防止剤、結晶化促進剤、及び、着色剤等が挙げられる。
更なる成分は、それぞれ、1種又は2種以上の組み合わせであってよい。
【0052】
[エラストマー重合体(D)(但し、コアシェルゴム型グラフト共重合体(F)を除く)]
エラストマー重合体(D)は、ポリアミド樹脂組成物に耐衝撃性を付与する成分である。エラストマー重合体(D)は、後述するコアシェルゴム型グラフト共重合体(F)は除かれる。
【0053】
エラストマー重合体(D)としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブテン(PB)、ポリメチルペンテン(TPX)、エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン(PS)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体(MS)、メタクリル酸メチル/スチレン/ブタジエン共重合体(MBS)等のポリスチレン系樹脂;カルボキシル基及びその塩、酸無水物基、エポキシ基等の官能基が含有された前記ポリオレフィン系樹脂及びポリスチレン系樹脂;ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、ポリ(エチレンテレフタレート/エチレンイソフタレート)共重合体(PET/PEI)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリアリレート(PAR)、液晶ポリエステル(LCP)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)等のポリエステル系樹脂;ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンエーテル(PPO)等のポリエーテル系樹脂;ポリサルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PESU)、ポリフェニルサルホン(PPSU)等のポリサルホン系樹脂;ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリチオエーテルサルホン(PTES)等のポリチオエーテル系樹脂;ポリケトン(PK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルエーテルケトン(PEEEK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、ポリエーテルケトンケトンケトン(PEKKK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)等のポリケトン系樹脂;ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、メタクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体(NBR)等のポリニトリル系樹脂;ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル(PEMA)等のポリメタクリレート系樹脂;ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/アクリル酸メチル共重合体等のポリビニル系樹脂;酢酸セルロース、酪酸セルロース等のセルロース系樹脂;ポリカーボネート(PC)等のポリカーボネート系樹脂;熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエステルアミドイミド等のポリイミド系樹脂;熱可塑性ポリウレタン系樹脂;ポリアミドエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロルフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体(ETFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/ビニリデンフルオライド共重合体(THV)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、クロロトリフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)/テトラフルオロエチレン共重合体(CPT)等の含フッ素系重合体、アミノ基に対して反応性を有する官能基を含有する前記含フッ素系重合体が挙げられる。エラストマー重合体(D)は1種又は2種以上の組み合わせであってよい。
【0054】
エラストマー重合体(D)としては、脂肪族ポリアミド(A)との相溶性の観点から、カルボキシル基及び/又は酸無水物基を有する不飽和化合物から誘導される構成単位を含有するエラストマー重合体であることが好ましい。エラストマー重合体(D)としては、具体的には、カルボキシル基及び/又は酸無水物基を有する不飽和化合物から誘導される構成単位を含有する、(エチレン及び/又はプロピレン)/α-オレフィン系共重合体、(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β-不飽和カルボン酸及び/又はα,β-不飽和カルボン酸エステル)系共重合体、芳香族ビニル化合物/共役ジエン化合物系ブロック共重合体等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0055】
(エチレン及び/又はプロピレン)/α-オレフィン系共重合体は、エチレン及び/又はプロピレンと炭素数3以上のα-オレフィンとを共重合した重合体である。炭素数3以上のα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、12-エチル-1-テトラデセン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0056】
また共重合体は、非共役ジエン等のポリエンを共重合したものであってもよい。非共役ジエンとしては、1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,4-オクタジエン、1,5-オクタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン、4,8-ジメチル-1,4,8-デカトリエン(DMDT)、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、5-ビニルノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,5-ノルボルナジエン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0057】
(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β-不飽和カルボン酸及び/又はα,β-不飽和カルボン酸エステル)系共重合体は、エチレン及び/又はプロピレンとα,β-不飽和カルボン酸及び/又はα,β-不飽和カルボン酸エステル単量体を共重合した重合体である。α,β-不飽和カルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等が挙げられる。α,β-不飽和カルボン酸エステル単量体としては、これらα,β-不飽和カルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、ペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、2-エチルへキシルエステル、ヒドロキシエチルエステル等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0058】
前記芳香族ビニル化合物/共役ジエン化合物系ブロック共重合体は、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン化合物系重合体ブロックからなるブロック共重合体であり、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックを少なくとも1個と、共役ジエン化合物系重合体ブロックを少なくとも1個有するブロック共重合体が用いられる。前記ブロック共重合体では、共役ジエン化合物系重合体ブロックにおける不飽和結合が水素添加されていてもよい。
【0059】
芳香族ビニル化合物系重合体ブロックは、芳香族ビニル化合物に由来する単位から主としてなる重合体ブロックである。その場合の芳香族ビニル化合物としては、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、1,5-ジメチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、4-プロピルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-ドデシルスチレン、2-エチル-4-ベンジルスチレン、4-(フェニルブチル)スチレン等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。また、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックは、場合により少量の他の不飽和単量体からなる単位を有していてもよい。
【0060】
共役ジエン化合物系重合体ブロックは、1,3-ブタジエン、クロロプレン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等の共役ジエン系化合物の1種又は2種以上から形成された重合体ブロックであり、水素添加した芳香族ビニル化合物/共役ジエン化合物系ブロック共重合体では、その共役ジエン化合物系重合体ブロックにおける不飽和結合部分の一部又は全部が水素添加により飽和結合になっている。
芳香族ビニル化合物/共役ジエン化合物系ブロック共重合体及びその水素添加物の分子構造は、直鎖状、分岐状、放射状、又はそれら任意の組み合わせのいずれであってもよい。これらの中でも、芳香族ビニル化合物/共役ジエン化合物系ブロック共重合体及び/又はその水素添加物として、1個の芳香族ビニル化合物重合体ブロックと1個の共役ジエン化合物系重合体ブロックが直鎖状に結合したジブロック共重合体、芳香族ビニル化合物系重合体ブロック-共役ジエン化合物系重合体ブロック-芳香族ビニル化合物系重合体ブロックの順に3つの重合体ブロックが直鎖状に結合しているトリブロック共重合体、及びそれらの水素添加物の1種又は2種以上が好ましく用いられ、未水添又は水添スチレン/ブタジエンブロック共重合体、未水添又は水添スチレン/イソプレンブロック共重合体、未水添又は水添スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体、未水添又は水添スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体、未水添又は水添スチレン/(エチレン/ブタジエン)/スチレンブロック共重合体、未水添又は水添スチレン/(イソプレン/ブタジエン)/スチレンブロック共重合体等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0061】
エラストマー重合体(D)の構成単位を形成するカルボキシル基を有する不飽和化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、シス-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、エンドビシクロ-[2.2.1]-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸、並びにこれらカルボン酸の金属塩、アルキルエステル、ヒドロキシアルキルエステル及びアミノアルキルエステル等が挙げられる。エラストマー重合体(D)の構成単位を形成する酸無水物基を有する不飽和化合物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ-[2.2.1]-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸無水物等のα,β-不飽和結合を有するジカルボン酸無水物が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、α,β-不飽和結合を有するジカルボン酸無水物が好ましく、無水マレイン酸及び無水イタコン酸がより好ましい。
【0062】
エラストマー重合体(D)におけるカルボキシル基及び/又は酸無水物基濃度は、耐衝撃性及び流動性の観点から、25μeq/g以上200μeq/g以下であることが好ましく、50μeq/g以上150μeq/g以下であることがより好ましい。
【0063】
エラストマー重合体(D)におけるカルボキシル基及び/又は酸無水物基濃度は、該エラストマー重合体をトルエン溶液に溶解し、さらに、エタノールを加えて調製した試料溶液を用いて、フェノールフタレインを指示薬とし、0.1NのKOHエタノール溶液で滴定して測定することができる。
【0064】
エラストマー重合体(D)として、カルボキシル基及び/又は酸無水物基濃度が異なる2種以上のエラストマー重合体を用いる場合、エラストマー重合体(D)におけるカルボキシル基及び/又は酸無水物基濃度は、トルエン及びエタノールを用いて調製した試料溶液を用いて、フェノールフタレインを指示薬とし、0.1NのKOHエタノール溶液による中和滴定で測定されるのが好ましいが、それぞれのエラストマー重合体のカルボキシル基及び/又は酸無水物基濃度とその混合比が判明している場合、それぞれのカルボキシル基及び/又は酸無水物基濃度にその混合比を乗じた値を合計して算出される平均値を、エラストマー重合体(D)のカルボキシル基及び/又は酸無水物濃度としてもよい。
【0065】
[リン含有高分子化合物(E)]
リン含有高分子化合物(E)は、ポリアミド樹脂組成物に難燃性を付与する成分である。リン含有高分子化合物(E)は、1種又は2種以上の組み合わせであってよい。リン含有高分子化合物(E)は、機械物性及び難燃性の点で、式(4)で表される基を有する繰り返し単位を含むことが好ましい。
【化6】
【0066】
リン含有高分子化合物(E)は、下記の式(5)で表される化合物であることが特に好ましい。
【化7】
〔式中、n1は4以上の整数であり、好ましくは6以上100以下の整数、特に好ましくは10以上60以下の整数である。〕
【0067】
[コアシェルゴム型グラフト共重合体(F)]
コアシェルゴム型グラフト共重合体(F)は、ポリアミド樹脂組成物に、成形性、難燃性及び耐衝撃性を付与する成分である。コアシェルゴム型グラフト共重合体(F)は、コアシェル型構造を有し、ゴム成分となる重合体成分をコア層とし、この重合体成分と共重可能な単量体成分がシェル層としてグラフト共重合された共重合体である。シェル層は、2層以上であってもよい。
コアシェルゴム型グラフト共重合体(F)は、1種又は2種以上の組み合わせであってよい。
【0068】
成形性、難燃性及び低温耐衝撃性の観点から、コアシェルゴム型グラフト共重合体(F)は、シリコーン系共重合体であることが好ましい。コアシェルゴム型グラフト共重合体(F)がシリコーン系共重合体である場合、コア層がシリコーン単位を含んでいてもよく、シェル層がシリコーン単位を含んでいてもよく、コア層とシェル層とがシリコーン単位を含んでいてもよい。成形性、難燃性及び低温耐衝撃性をいっそう高める観点から、コア層がシリコーン単位を含むことが好ましい。
【0069】
コア層を形成する重合体成分のガラス転移温度は、通常0℃以下であり、-10℃以下が好ましく、-20℃以下がより好ましく、-30℃以下がさらに好ましい。コア層を形成する重合体成分の具体例としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリブチルアクリレートやポリ(2-エチルヘキシルアクリレート)、ブチルアクリレート・2-エチルヘキシルアクリレート共重合体等のポリアルキルアクリレート、ポリオルガノシロキサンゴム等のシリコーン系ゴム、ブタジエン-アクリル複合体、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキルアクリレートゴムとからなるIPN(Interpenetrating Polymer Network)型複合ゴム、スチレン-ブタジエン共重合体、エチレン-プロピレン共重合体やエチレン-ブテン共重合体、エチレン-オクテン共重合体等のエチレン-αオレフィン系共重合体、エチレン-アクリル共重合体、フッ素ゴム等を挙げることができる。これらは、単独でも2種以上を併用してもよい。これらの中でも、機械的特性や表面外観の面から、ポリブタジエン、ポリアルキルアクリレート、ポリオルガノシロキサン、ポリオルガノシロキサンとポリアルキルアクリレートとからなる複合体、ブタジエン-スチレン共重合体が好ましく、ポリオルガノシロキサン、ポリオルガノシロキサンとポリアルキルアクリレートとからなる複合体がより好ましい。
【0070】
シェル層を構成する、コア層の重合体成分とグラフト共重合可能な単量体成分の具体例としては、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物;マレイミド、N-メチルマレイミド、N-フェニルマレイミド等のマレイミド化合物;マレイン酸、フタル酸、イタコン酸等のα,β-不飽和カルボン酸化合物やそれらの無水物(例えば無水マレイン酸等)等が挙げられる。これらの単量体成分は単独でも2種以上を併用してもよい。これらの中でも、機械的特性や表面外観の面から、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物が好ましく、より好ましくは(メタ)アクリル酸エステル化合物である。(メタ)アクリル酸エステル化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル等が挙げられ、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルが好ましく、(メタ)アクリル酸メチルがより好ましい。
【0071】
コアシェルゴム型グラフト共重合体(F)としては、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン共重合体樹脂(MBS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体樹脂(ABS樹脂)等のジエン系コアシェル型ゴム質重合体;アクリレート-スチレン-アクリロニトリル共重合体樹脂(ASA樹脂)、アクリレート-メチルメタクリレート共重合体樹脂等のアクリル系コアシェル型ゴム質重合体;シリコーン-アクリレート-メチルメタクリレート共重合体樹脂、シリコーン-アクリレート-アクリロニトリル-スチレン共重合体樹脂等のシリコーン系コアシェル型ゴム質重合体(シリコーン系共重合体);及びこれらの無水マレイン酸やグリシジルメタクリレート等による変性物等が挙げられる。
【0072】
市販で入手可能なコアシェルゴム型グラフト共重合体(F)としては、シリコーン系コアシェル型ゴム質重合体を使用した製品名:メタブレン(登録商標)S-2001、S-2006、S-2501、S-2030、S-2100、S-2200、SRK200A、SX-005、SX-006(三菱ケミカル株式会社製);ジエン系コアシェル型ゴム質重合体を使用した製品名:パラロイド(登録商標)EXL-2655(Rohm&Haas社製)、メタブレン(登録商標)C-223A、C-215A、C-201A、C-140A、E-860A、E-870A、E-875A(三菱ケミカル株式会社製);アクリル系コアシェル型ゴム質重合体を使用した製品名:スタフィロイド(登録商標)AC-3355、TR-2122(アイカ工業株式会社製)、パラロイド(登録商標)EXL-2611、EXL-3387(Rohm&Haas社製)、メタブレン(登録商標)W-300A、W-450A、W-600A、W377(三菱ケミカル株式会社製)等を挙げることができる。
【0073】
コアシェルゴム型グラフト共重合体(F)は、粒子形状を有していることが好ましい。コアシェルゴム型グラフト共重合体(F)が粒子形状を有している場合、成形性、難燃性、耐衝撃性及び成型体の外観の観点から、該粒子の体積平均粒子径(D50)は、100nm以上であることが好ましく、より好ましくは250nm以上であり、また、800nm以下であることが好ましい。上記範囲の体積平均粒子径(D50)を有するコアシェルゴム型グラフト共重合体(F)の粒子は、乳化重合法により作製することができる。
【0074】
コアシェルゴム型グラフト共重合体(F)の粒子の体積平均粒子径は、体積基準で測定される平均径であり、50%となるメディアン径(D50)の値である。体積平均粒子径(D50)は、レーザー回折・散乱法、画像解析法、コールター法、及び遠心沈降法等により測定可能である。上記粒子の体積平均粒子径(D50)は、レーザー回折・散乱法による測定により求めることが好ましい。
【0075】
[成分(F)以外の耐衝撃材(G)]
成分(F)以外の耐衝撃材(G)(以下、その他の耐衝撃材(G)ともいう。)は、ポリアミド樹脂組成物に、耐衝撃性を付与する成分である。その他の耐衝撃材(G)としては、成分(D)で記載した成分が挙げられる。
その他の耐衝撃材(G)は、1種又は2種以上の組み合わせであってよい。
【0076】
[成分(B)及び(C)以外の難燃剤(H)]
成分(B)及び(C)以外の難燃剤(H)(以下、その他の難燃剤(H)ともいう。)は、ポリアミド樹脂組成物に、難燃性をさらに付与する成分である。その他の難燃剤(H)としては、リン含有化合物(リン含有高分子化合物(E)を含む)、ハロゲン含有化合物、ホウ素含有化合物等を例示することができる。
その他の難燃剤(H)は、1種又は2種以上の組み合わせであってよい。
【0077】
その他の難燃剤(H)は、難燃性の観点から、リン含有高分子化合物(E)であることが好ましい。
【0078】
[その他の熱可塑性樹脂]
その他の熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブテン(PB)、ポリメチルペンテン(TPX)、エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン(PS)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体(MS)、メタクリル酸メチル/スチレン/ブタジエン共重合体(MBS)等のポリスチレン系樹脂;カルボキシル基及びその塩、酸無水物基、エポキシ基等の官能基が含有された前記ポリオレフィン系樹脂及びポリスチレン系樹脂;ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、ポリ(エチレンテレフタレート/エチレンイソフタレート)共重合体(PET/PEI)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリアリレート(PAR)、液晶ポリエステル(LCP)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)等のポリエステル系樹脂;ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンエーテル(PPO)等のポリエーテル系樹脂;ポリサルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PESU)、ポリフェニルサルホン(PPSU)等のポリサルホン系樹脂;ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリチオエーテルサルホン(PTES)等のポリチオエーテル系樹脂;ポリケトン(PK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルエーテルケトン(PEEEK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、ポリエーテルケトンケトンケトン(PEKKK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)等のポリケトン系樹脂;ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、メタクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体(NBR)等のポリニトリル系樹脂;ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル(PEMA)等のポリメタクリレート系樹脂;ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/アクリル酸メチル共重合体等のポリビニル系樹脂等が挙げられる。
【0079】
また、その他の熱可塑性樹脂としては、酢酸セルロース、酪酸セルロース等のセルロース系樹脂;熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエステルアミドイミド等のポリイミド系樹脂;熱可塑性ポリウレタン系樹脂;ポリアミドエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロルフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体(ETFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/ビニリデンフルオライド共重合体(THV)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、クロロトリフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)/テトラフルオロエチレン共重合体(CPT)等の含フッ素系重合体、アミノ基に対して反応性を有する官能基を含有する前記含フッ素系重合体が挙げられる。その他の熱可塑性樹脂は1種又は2種以上の組み合わせであってよい。
【0080】
[可塑剤]
可塑剤としては、特開2017-43762号公報に記載されたもの、例えば、N-ブチルベンゼンスルホンアミド、N-オクチルベンゼンスルホンアミド、N-エチルヘキシルベンゼンスルホンアミド、N-シクロヘキシルベンゼンスルホンアミド、トルエンスルホンアミド、N-アルキルトルエンスルホンアミド等が挙げられる。
【0081】
上記した成分以外の更なる成分の具体例としては、ポリアミド樹脂組成物に通常用いられる成分が挙げられる。
【0082】
[各成分の含有量]
ポリアミド樹脂組成物中の各成分の合計の含有量は、以下のとおりである。
脂肪族ポリアミド(A)は、ポリアミド樹脂組成物100質量%中に60質量%以上85質量%以下含む。脂肪族ポリアミド(A)の含有量が60質量%未満であると、機械物性に劣りやすい。脂肪族ポリアミド(A)の含有量が85質量%を超えると、UL94燃焼試験の結果が劣りやすい。機械物性、耐薬品性及び耐熱性の観点から、ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、脂肪族ポリアミド(A)は、60質量%以上82質量%以下含まれることが好ましく、60質量%以上79質量%以下含まれることがより好ましく、60質量%以上76質量%以下含まれることが更に好ましく、62質量%以上75質量%以下含まれることが更により好ましく、64質量%以上72質量%以下含まれることが特に好ましい。また、ポリアミド樹脂組成物100質量%中の、脂肪族ポリアミド(A)は、60質量%以上の範囲で、後述する各成分の含有量の残余となる量であれば特に限定されない。
【0083】
ホスファゼン化合物(C)は、ポリアミド樹脂組成物中に3質量%以上20質量%以下含まれる。なお、ポリアミド樹脂組成物中のホスファゼン化合物(C)の含有量が20質量%を超過する場合、低温(例えば、-30~-60℃)での機械的強度が低下する。また、ポリアミド樹脂組成物中のホスファゼン化合物(C)の含有量が3質量%未満である場合、UL94燃焼試験の結果が劣る。
【0084】
ポリアミド樹脂組成物中の成分(B)、その他の熱可塑性樹脂及び可塑剤の含有量は、以下のとおりである。
【0085】
難燃性と機械物性の観点から、ホスフィン酸塩(B)は、ポリアミド樹脂組成物中に15質量%以上20質量%以下含まれることが好ましく、16質量%以上19質量%以下含まれることがより好ましく、16質量%以上18質量%以下含まれることが特に好ましい。
【0086】
ポリアミド樹脂組成物中のその他の熱可塑性樹脂の含有量は、ポリアミド樹脂組成物100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることが特に好ましい。ポリアミド樹脂組成物中のその他の熱可塑性樹脂の含有量は、ポリアミド樹脂組成物100質量部に対して、0質量部超であることが好ましく、1質量部以上であることが特に好ましい。
【0087】
耐揮発性に優れる観点から、ポリアミド樹脂組成物中の可塑剤の含有量は、ポリアミド樹脂組成物中、5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。また、成形品の低温耐衝撃性が要求される場合には、可塑剤を入れることによる低温耐衝撃性の低下の懸念があるため、ポリアミド樹脂組成物は、可塑剤を含まないことが特に好ましい。
【0088】
[更なる成分及び各成分の含有量における可能性のある態様]
ポリアミド樹脂組成物中の更なる成分及び各成分の含有量について、可能性のある第1の態様~第3の態様は、以下のとおりである。
[1]第1の態様は、脂肪族ポリアミド(A)が、メチレン基数のアミド基数に対する比が5.0以上の脂肪族ポリアミド(A1)であり、ホスファゼン化合物(C)が、環状ホスファゼン化合物(C1)であり、ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、メチレン基数のアミド基数に対する比が5.0以上の脂肪族ポリアミド(A1)を60質量%以上82質量%以下含み、ホスフィン酸塩(B)を15質量%以上20質量%以下含む。第1の態様に係るポリアミド樹脂組成物は、更に、優れた表面性、溶融特性を持ち、酸素指数試験において優れた結果を示す。
【0089】
第1の態様において、ポリアミド樹脂組成物は、更なる成分として、エラストマー重合体(D)(但し、コアシェルゴム型グラフト共重合体(F)を除く)、コアシェルゴム型グラフト共重合体(F)及びその他の耐衝撃材(G)を含んでいてもよく、含まないものでよい。第1の態様において、ポリアミド樹脂組成物は、その他の難燃剤(H)を含んでいてもよい。
【0090】
第1の態様において、各成分の含有量は、上記した以外に、以下のとおりである。
【0091】
機械物性と表面性、難燃性の観点から、ホスファゼン化合物(C)は、ポリアミド樹脂組成物中に5質量%以上15質量%以下含まれることが好ましい。
【0092】
ポリアミド樹脂組成物中の、その他の熱可塑性樹脂及び可塑剤以外の更なる成分の合計の含有量は、ポリアミド樹脂組成物100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることが特に好ましい。
【0093】
[2]第2の態様は、更に、エラストマー重合体(D)(但し、コアシェルゴム型グラフト共重合体(F)を除く)及びリン含有高分子化合物(E)を含み、前記ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、前記脂肪族ポリアミド(A)を60質量%以上82質量%以下含み、ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、前記ホスフィン酸塩(B)を15質量%以上20質量%以下含む。第2の態様に係るポリアミド樹脂組成物は、更に、より優れた機械物性、優れた押出成形性を持ち、酸素指数試験において優れた結果を示す。
【0094】
第2の態様において、ポリアミド樹脂組成物が、更なる成分として、その他の耐衝撃材(G)を含む場合、これはエラストマー重合体(D)(但し、コアシェルゴム型グラフト共重合体(F)を除く)として含有量が計算される。第2の態様において、ポリアミド樹脂組成物は、更なる成分として、コアシェルゴム型グラフト共重合体(F)を含んでいてもよく、含まなくてもよい。
【0095】
第2の態様において、その他の難燃剤(H)を含んでいてもよく、含まなくてもよい。
【0096】
第2の態様において、各成分の含有量は、上記した以外に、以下のとおりである。
【0097】
耐衝撃性、流動性及び難燃性の観点から、ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、エラストマー重合体(D)(但し、コアシェルゴム型グラフト共重合体(F)を除く)は、3質量%以上15質量%以下含まれることが好ましく、3質量%以上10質量%以下含まれることがより好ましく、3質量%以上7質量%以下含まれることが特に好ましい。なお、ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、エラストマー重合体(D)(但し、コアシェルゴム型グラフト共重合体(F)を除く)が3質量%以上15質量%以下含まれる場合は、前記ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、脂肪族ポリアミド(A)を60質量%以上79質量%以下含まれることが好ましい。
【0098】
機械物性、表面性及び難燃性の観点から、ホスファゼン化合物(C)は、ポリアミド樹脂組成物100質量%中に3質量%以上10質量%以下含まれることが好ましく、4質量%以上8質量%以下含まれることがより好ましく、5質量%以上7質量%以下含まれることが特に好ましい。
【0099】
機械物性及び難燃性の観点から、リン含有高分子化合物(E)は、ポリアミド樹脂組成物100質量%中に3質量%以上10質量%以下含まれることが好ましく、より好ましくは3質量%以上8質量%以下、特に好ましくは4質量%以上7質量%以下である。なお、ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、リン含有高分子化合物(E)が3質量%以上10質量%以下含まれる場合は、前記ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、脂肪族ポリアミド(A)を60質量%以上76質量%以下含まれることが好ましい。
【0100】
ポリアミド樹脂組成物中の、エラストマー重合体(D)(但し、コアシェルゴム型グラフト共重合体(F)を除く)、リン含有高分子化合物(E)、その他の熱可塑性樹脂及び可塑剤以外の更なる成分の合計の含有量は、ポリアミド樹脂組成物100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることが特に好ましい。
【0101】
[3]第3の態様は、更に、コアシェルゴム型グラフト共重合体(F)を含む。第3の態様に係るポリアミド樹脂組成物は、更に、特に優れた機械物性を持つ。
【0102】
第3の態様において、各成分の含有量は、上記した以外に、以下のとおりである。
【0103】
成形性、難燃性及び低温耐衝撃性の観点から、ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、コアシェルゴム型グラフト共重合体(F)は、2質量%以上15質量%以下含まれることが好ましく、3質量%以上13質量%以下含まれることがより好ましく、5質量%以上10質量%以下含まれることが特に好ましい。
【0104】
機械物性、表面性及び難燃性の観点から、ホスファゼン化合物(C)は、ポリアミド樹脂組成物100質量%中に3質量%以上10質量%以下含まれることが好ましく、4質量%以上8質量%以下含まれることがより好ましく、5質量%以上7質量%以下含まれることが特に好ましい。
【0105】
耐衝撃性及び難燃性の観点から、ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、その他の耐衝撃材(G)は、10質量%以下含まれることが好ましく、1質量%以上7質量%以下含まれることがより好ましく、3質量%以上5質量%以下含まれることが特に好ましい。第3の態様において、ポリアミド樹脂組成物が、更なる成分として、エラストマー重合体(D)(但し、コアシェルゴム型グラフト共重合体(F)を除く)を含む場合、これらはその他の耐衝撃材(G)として含有量が計算される。
【0106】
機械物性及び難燃性の観点から、ポリアミド樹脂組成物100質量%中に、その他の難燃剤(H)は、10質量%以下含まれることが好ましく、2質量%以上8質量%以下含まれることがより好ましく、3質量%以上7質量%以下含まれることが特に好ましい。第3の態様において、ポリアミド樹脂組成物が、更なる成分として、リン含有高分子化合物(E)を含む場合、これはその他の難燃剤(H)として含有量が計算される。
【0107】
ポリアミド樹脂組成物中の、その他の耐衝撃材(G)、その他の難燃剤(H)、その他の熱可塑性樹脂及び可塑剤以外の更なる成分の合計の含有量は、ポリアミド樹脂組成物100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることが特に好ましい。
【0108】
[ポリアミド樹脂組成物の製造方法]
ポリアミド樹脂組成物を製造する方法は、特に限定されず、各成分を混合する方法を採用することができる。ここで、脂肪族ポリアミド(A)、ホスフィン酸塩(B)、ホスファゼン化合物(C)及び必要に応じて更なる成分を混合する方法は、特に制限されず、従来から知られている各種の方法を採用することができる。例えば、タンブラー及び/又はミキサーを用いて、脂肪族ポリアミド(A)、ホスフィン酸塩(B)及びホスファゼン化合物(C)のペレット同士を前記の混合割合になるように均一にドライブレンドする方法、脂肪族ポリアミド(A)、ホスフィン酸塩(B)及びホスファゼン化合物(C)を必要に応じて添加される他の成分と共に、成形時に使用する濃度で予めドライブレンドし、溶融混練する方法等により製造することができる。溶融混練は、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機を使用して行うことができる。
【0109】
[ポリアミド樹脂組成物の用途]
ポリアミド樹脂組成物は、前記ポリアミド樹脂組成物を含む成形体として使用することができる。
ポリアミド樹脂組成物を含む成形体は、自動車部品、鉄道部品、電動工具ハウジング類等の機械部品、工業材料、産業資材、電気部品、電子部品、医療部品、食品包装用部品、家庭用品、事務用品、建材関係部品、家具用部品等各種用途に使用することができる。また、ポリアミド樹脂組成物を含む成形体は、防火を目的とした前記用途に使用することができる。ポリアミド樹脂組成物を成形することにより、所望の成形体を得ることができる。成形方法としては、押出成形法、ブロー成形法、射出成形法等の任意の溶融成形法が採用できる。ポリアミド樹脂組成物を含む成形体の形状は、任意であり、フィルム状、シート状、中空状(チューブ状、ホース状、ボトル状等)等が挙げられる。ポリアミド樹脂組成物を含む成形体の形状が、フィルム状又はシート状である場合は、後加工して中空状の成形物にしてもよい。
また、自動車部品として用いられる成形物としては、燃料用部品(ガソリンタンク、オイルタンク等の燃料用タンク;フューエルデリバリーパイプ、フューエルレール、燃料チューブ、燃料ホース等の燃料輸送用部品);吸気系部品又は排気系部品(エアーダクト、インテークマニホールド、エアクリーナー、エアクリーナボックス、レゾネーター、スロットルボディ、空圧ホース、空圧チューブ等);自動車外板・外装構造部材(エアスポイラー、フェンダー、バンパー、サスペンションブーツ等);又は、その他の自動車用部品(ホースジョイント、油圧チューブ、油圧ホース、シートカバー等)等の用途に使用することができる。
鉄道用部品として用いられる成形物としては、電線の被覆材(コーティング材、カバー材)、シートカバー等が挙げられる。
電気部品又は電子部品として用いられる成形物としては、プラグ、ファン等が挙げられる。
建材関係部品として用いられる成形物としては、防火壁等が挙げられる。
【0110】
[更なる態様]
ポリアミド樹脂組成物は、表面性、機械物性の観点から、亜リン酸、無機亜鉛化合物、シリカ、石炭灰、ゼオライト、珪酸塩、ポリメタキシリレンアジパミド(PAMXD6)、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)、フェノールアラルキル系樹脂、エポキシ樹脂からなる群より選択される1種以上を含まないことが好ましい。また、ポリアミド樹脂組成物は、表面性、機械物性の観点から、強化材(例えば、繊維状、粉状、粒状、板状、針状、クロス状、マット状等の形状を有する無機充填材、及びガラス繊維、炭素繊維等の有機繊維)を含まないことが好ましい。さらに、ポリアミド樹脂組成物を含む、成形体は、その用途に求められる特性から、強化材(例えば、繊維状、粉状、粒状、板状、針状、クロス状、マット状等の形状を有する無機充填材、及びガラス繊維、炭素繊維等の有機繊維)を含まないことが好ましい。
【実施例】
【0111】
以下に、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明する。しかし、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0112】
[実施例及び比較例で用いた材料]
1.脂肪族ポリアミド(A)
(1)ポリアミド12(A-1):ポリアミド12(A-1)は、以下により製造されたポリアミド12(A-1)である。
内容積70リットルの攪拌機付き耐圧力反応容器に、ドデカンラクタム19.73kg(100.0モル)、ステアリン酸258.3g(0.909モル)、及び蒸留水0.5Lを仕込み、重合槽内を窒素置換した後、180℃まで加熱し、この温度で反応系内が均一な状態になるように攪拌した。次いで重合槽内温度を270℃まで昇温させ、槽内圧力を3.5MPaに調圧しながら、2時間攪拌下に重合した。その後、約2時間かけて常圧に放圧し、次いで、53kPaまで減圧し、減圧下において5時間重合を行なった。次いで、窒素をオートクレーブ内に導入し、常圧に復圧後、反応容器の下部ノズルからストランドとして抜き出し、カッティングしてペレットを得た。このペレットを減圧乾燥し、相対粘度1.67のポリアミド12を得た(以下、このポリアミド12を「ポリアミド12(A-1)」という。)。
(2)ポリアミド12(A-2)(宇部興産株式会社製、UBESTA(登録商標)、相対粘度 2.26)
【0113】
2.ホスフィン酸塩(B)
(1)ホスフィン酸金属塩(B-1) (Clariant Produkte GmbH製、Exolit OP1230)
(2)ホスフィン酸金属塩(B-2)(Clariant Produkte GmbH製、Exolit(登録商標)OP935)
【0114】
3.ホスファゼン化合物(C)
(1)環状ホスファゼン化合物(C-1) 2,2,4,4,6,6-ヘキサフェノキシシクロトリホスファゼン(伏見製薬(株)製、ラビトル(登録商標)FP-110)
【0115】
4.エラストマー重合体(D)
(1)無水マレイン酸変性エチレン/1-ブテン共重合体(D-1)(三井化学株式会社製、タフマー(登録商標)MH5010(カルボキシル基及び酸無水物基濃度の合計:50μeq/g))
【0116】
5.リン含有高分子化合物(E)
(1)2-(9,10-ジヒドロキシ-9-オキサ-10-オキサイド-10-ホスファフェナントレン-10-イル)メチルコハク酸ビス-(2-ヒドロキシエチル)-エステル重合体(E-1)(三光株式会社製、ME-P8、平均分子量:10,000)
(E-1)は、下記の式(5)で表される。
【化8】
【0117】
6.コアシェルゴム型グラフト共重合体(F)
(1)メタクリル酸アルキル・アクリル酸アルキル・ジメチルシロキサン共重合体(F-1)(三菱ケミカル株式会社製、メタブレン(登録商標)SX-005、コアがポリジメチルシロキサン、シェルがメタクリル酸アルキル及びアクリル酸アルキルの共重合体であるコアシェルゴム粒子)
【0118】
7.その他の耐衝撃材(G)
(1)(G-1):(G-1)は、(D-1)と同じである。
【0119】
8.その他の難燃剤(H)
(1)ポリリン酸メラミン(H-1) (BASF(株)製、Melapur 200 70)
(2)メラミンシアヌレート(H-2) (日産化学工業(株)製、MC-6000)
(3)(H-3):(H-3)は、(E-1)と同じである。
【0120】
9.可塑剤(I)
(1)N-ブチルベンゼンスルホンアミド(I-1)(Proviron株式会社製、BBSA)
【0121】
[実施例1]
ポリアミド樹脂組成物(A1-1)の製造
ポリアミド12(A-1)にホスフィン酸金属塩(B-1)、環状ホスファゼン化合物(C-1)をあらかじめ混合し、二軸溶融混練機((株)日本製鋼所製、型式:TEX44)に供給し、シリンダ温度180℃から270℃で溶融混練し、溶融樹脂をストランド状に押出した後、これを水槽に導入し、冷却、カット、真空乾燥して、ポリアミド12(A-1)/ホスフィン酸金属塩(B-1)/環状ホスファゼン化合物(C-1)=78.3/18.7/3.0(質量%)の合計100質量部よりなるポリアミド12組成物のペレットを得た(以下、このポリアミド12組成物を「ポリアミド組成物(A1-1)」という。)。ポリアミド組成物(A1-1)の製造時に発生した蒸気量は、一般的な可塑剤であるBBSA(N-ブチルベンゼンスルホンアミド)を用いたときに発生する量に比べると明らかに少なかった。
【0122】
[実施例2]
ポリアミド12組成物(A1-2)の製造
ポリアミド12(A-1)、ホスフィン酸金属塩(B-1)及び環状ホスファゼン化合物(C-1)の添加量を変更した以外は、ポリアミド12組成物(A1-1)の製造と同様の方法にて、ポリアミド12(A-1)/ホスフィン酸金属塩(B-1)/環状ホスファゼン化合物(C-1)=75.0/18.7/6.3(質量%)の合計100質量部よりなるポリアミド12組成物のペレットを得た(以下、このポリアミド12組成物を「ポリアミド組成物(A1-2)」という。)。ポリアミド組成物(A1-2)の製造時に発生した蒸気量は、一般的な可塑剤であるBBSA(N-ブチルベンゼンスルホンアミド)を用いたときに発生する量に比べると明らかに少なかった。
【0123】
[実施例3]
ポリアミド12組成物(A1-3)の製造
ポリアミド12(A-1)、ホスフィン酸金属塩(B-1)及び環状ホスファゼン化合物(C-1)の添加量を変更した以外は、ポリアミド12組成物(A1-1)の製造と同様の方法にて、ポリアミド12(A-1)/ホスフィン酸金属塩(B-1)/環状ホスファゼン化合物(C-1)=71.3/18.7/10.0(質量%)の合計100質量部よりなるポリアミド12組成物のペレットを得た(以下、このポリアミド12組成物を「ポリアミド組成物(A1-3)」という。)。ポリアミド組成物(A1-3)の製造時に発生した蒸気量は、一般的な可塑剤であるBBSA(N-ブチルベンゼンスルホンアミド)を用いたときに発生する量に比べると明らかに少なかった。
【0124】
[実施例4]
ポリアミド12組成物(A1-4)の製造
ポリアミド12(A-1)、ホスフィン酸金属塩(B-1)及び環状ホスファゼン化合物(C-1)の添加量を変更した以外は、ポリアミド12組成物(A1-1)の製造と同様の方法にて、ポリアミド12(A-1)/ホスフィン酸金属塩(B-1)/環状ホスファゼン化合物(C-1)=66.3/18.7/15.0(質量%)の合計100質量部よりなるポリアミド12組成物のペレットを得た(以下、このポリアミド12組成物を「ポリアミド組成物(A1-4)」という。)。ポリアミド組成物(A1-4)の製造時に発生した蒸気量は、一般的な可塑剤であるBBSA(N-ブチルベンゼンスルホンアミド)を用いたときに発生する量に比べると明らかに少なかった。
【0125】
[実施例5]
ポリアミド12組成物(A1-5)の製造
ポリアミド12(A-1)、ホスフィン酸金属塩(B-1)及び環状ホスファゼン化合物(C-1)の添加量を変更した以外は、ポリアミド12組成物(A1-1)の製造と同様の方法にて、ポリアミド12(A-1)/ホスフィン酸金属塩(B-1)/環状ホスファゼン化合物(C-1)=77.7/16.0/6.3(質量%)の合計100質量部よりなるポリアミド12組成物のペレットを得た(以下、このポリアミド12組成物を「ポリアミド組成物(A1-5)」という。)。ポリアミド組成物(A1-5)の製造時に発生した蒸気量は、一般的な可塑剤であるBBSA(N-ブチルベンゼンスルホンアミド)を用いたときに発生する量に比べると明らかに少なかった。
【0126】
[実施例6]
ポリアミド12組成物(A1-6)の製造
ポリアミド12(A-1)、ホスフィン酸金属塩(B-1)及び環状ホスファゼン化合物(C-1)の添加量を変更した以外は、ポリアミド12組成物(A1-1)の製造と同様の方法にて、ポリアミド12(A-1)/ホスフィン酸金属塩(B-1)/環状ホスファゼン化合物(C-1)=83.7/10.0/6.3(質量%)の合計100質量部よりなるポリアミド12組成物のペレットを得た(以下、このポリアミド12組成物を「ポリアミド組成物(A1-6)」という。)。ポリアミド組成物(A1-6)の製造時に発生した蒸気量は、一般的な可塑剤であるBBSA(N-ブチルベンゼンスルホンアミド)を用いたときに発生する量に比べると明らかに少なかった。
【0127】
[実施例7]
ポリアミド12組成物(A1-7)の製造
ポリアミド12(A-1)、ホスフィン酸金属塩(B-1)及び環状ホスファゼン化合物(C-1)の添加量を変更した以外は、ポリアミド12組成物(A1-1)の製造と同様の方法にて、ポリアミド12(A-1)/ホスフィン酸金属塩(B-1)/環状ホスファゼン化合物(C-1)=80.7/13.0/6.3(質量%)の合計100質量部よりなるポリアミド12組成物のペレットを得た(以下、このポリアミド12組成物を「ポリアミド組成物(A1-7)」という。)。ポリアミド組成物(A1-7)の製造時に発生した蒸気量は、一般的な可塑剤であるBBSA(N-ブチルベンゼンスルホンアミド)を用いたときに発生する量に比べると明らかに少なかった。
【0128】
[実施例8]
ポリアミド12組成物(A1-8)の製造
ポリアミド12(A-1)、ホスフィン酸金属塩(B-1)及び環状ホスファゼン化合物(C-1)の添加量を変更した以外は、ポリアミド12組成物(A1-1)の製造と同様の方法にて、ポリアミド12(A-1)/ホスフィン酸金属塩(B-1)/環状ホスファゼン化合物(C-1)=80.0/10.0/10.0(質量%)の合計100質量部よりなるポリアミド12組成物のペレットを得た(以下、このポリアミド12組成物を「ポリアミド組成物(A1-7)」という。)。ポリアミド組成物(A1-7)の製造時に発生した蒸気量は、一般的な可塑剤であるBBSA(N-ブチルベンゼンスルホンアミド)を用いたときに発生する量に比べると明らかに少なかった。
【0129】
[比較例1]
ポリアミド12組成物(A2-1)の製造
環状ホスファゼン化合物(C-1)を用いない以外は、ポリアミド12組成物(A1-1)の製造と同様の方法にて、ポリアミド12(A-1)/ホスフィン酸金属塩(B-1)=81.3/18.7(質量%)の合計100質量部よりなるポリアミド12組成物のペレットを得た(以下、このポリアミド12組成物を「ポリアミド組成物(A2-1)」という。)。ポリアミド組成物(A2-1)の製造時に発生した蒸気量は、一般的な可塑剤であるBBSA(N-ブチルベンゼンスルホンアミド)を用いたときに発生する量に比べると明らかに少なかった。
【0130】
[比較例2]
ポリアミド12組成物(A2-2)の製造
環状ホスファゼン化合物(C-1)をポリリン酸メラミン(H-1)に変更した以外は、ポリアミド12組成物(A1-1)の製造と同様の方法にて、ポリアミド12(A-1)/ホスフィン酸金属塩(B-1)/ポリリン酸メラミン(H-1)=78.3/18.7/3.0(質量%)の合計100質量部よりなるポリアミド12組成物のペレットを得た(以下、このポリアミド12組成物を「ポリアミド組成物(A2-2)」という。)。ポリアミド組成物(A2-2)の製造時に発生した蒸気量は、一般的な可塑剤であるBBSA(N-ブチルベンゼンスルホンアミド)を用いたときに発生する量に比べると明らかに少なかった。
【0131】
[比較例3]
ポリアミド12組成物(A2-3)の製造
環状ホスファゼン化合物(C-1)をメラミンシアヌレート(H-2)に変更した以外は、ポリアミド12組成物(A1-1)の製造と同様の方法にて、ポリアミド12(A-1)/ホスフィン酸金属塩(B-1)/メラミンシアヌレート(H-2)=78.3/18.7/3.0(質量%)の合計100質量部よりなるポリアミド12組成物のペレットを得た(以下、このポリアミド12組成物を「ポリアミド組成物(A2-3)」という。)。ポリアミド組成物(A2-3)の製造時に発生した蒸気量は、一般的な可塑剤であるBBSA(N-ブチルベンゼンスルホンアミド)を用いたときに発生する量に比べると明らかに少なかった。
【0132】
実施例1~8及び比較例1~3について、ポリアミド樹脂組成物の特性は、以下の方法で測定した。その結果を表1まとめた。
[特性の測定方法]
[相対粘度]
JIS K-6920に記載の試験方法に準拠して、96%の硫酸中、ポリアミド濃度1%、温度25℃の条件下で測定した。
【0133】
[引張破断伸度]
引張の試験速度を5mm/minに変更したこと以外は、ISO 527-1、2に記載の試験方法に準拠して、引張試験を行い、引張破断伸度を測定した。引張破断伸度が35%以上であれば、十分な機械物性を有すると判断した。
【0134】
[燃焼試験(UL94相当試験)]
UL94に記載の試験方法に準拠し、厚み1/16インチ試験片に対し、燃焼試験を行った。UL94の規格に基づき、「V-0」、「V-2」及び「規格外」で判定した。
【0135】
[表面性]
二軸溶融混練機から押し出されたポリアミド樹脂組成物のストランドを採取し、目視及び触感によって、表面性を測定した。ストランド上に突起物が確認されない場合は○、ストランド上に突起物が多くは無いが確認される場合は△、ストランド上に突起物が多く確認される場合は×とした。
【0136】
[MFR(メルトフローレート)]
ISO 1133に記載の試験方法に準拠して、190℃、1,000gの条件にてMFR(メルトフローレート)を測定した。MFRが5.0以上であれば、十分な溶融特性を有すると判断した。
【0137】
[酸素指数]
ISO 4589-2に記載の試験方法に準拠し、酸素指数の測定を行った。酸素指数が30%以上であれば、十分な難燃性を有すると判断した。
【0138】
【0139】
表1から明らかなように、ホスファゼン化合物(C)を含まない比較例1のポリアミド組成物は、機械物性が劣っていた。また、ホスファゼン化合物(C)以外の難燃剤を含む比較例2、3のポリアミド組成物は、機械物性が劣っていた。一方、実施例1から8のポリアミド組成物は、機械物性及び燃焼試験の結果が良好であった。更に、実施例1から5のポリアミド組成物は、表面性、機械物性、溶融特性、燃焼試験及び酸素指数試験の結果が良好であった。
【0140】
[実施例9]
ポリアミド樹脂組成物(A1-9)の製造
ポリアミド12(A-2)に、ホスフィン酸金属塩(B-2)、環状ホスファゼン化合物(C-1)、エラストマー重合体(D-1)及びリン含有高分子化合物(E-1)をあらかじめ混合し、二軸溶融混練機(株式会社日本製鋼所製、型式:TEX44)に供給し、シリンダ温度210℃から230℃で溶融混練し、溶融樹脂をストランド状に押出した後、これを水槽に導入し、冷却、カット、真空乾燥して、ポリアミド12(A-2)/D-1ホスフィン酸金属塩(B-2)/環状ホスファゼン化合物(C-1)/エラストマー重合体(D-1)/リン含有高分子化合物(E-1)=65.00/18.75/6.25/5.00/5.00(質量%)の合計100質量部よりなるポリアミド12組成物のペレットを得た(以下、このポリアミド12組成物を「ポリアミド樹脂組成物(A1-9)」という。)。
【0141】
[実施例10]
ポリアミド樹脂組成物(A1-10)の製造
ポリアミド12(A-2)とホスフィン酸金属塩(B-2)の添加量を変更した以外は、実施例9と同様の方法にて、ポリアミド12(A-2)/ホスフィン酸金属塩(B-2)/環状ホスファゼン化合物(C-1)/エラストマー重合体(D-1)/リン含有高分子化合物(E-1)=73.75/10.00/6.25/5.00/5.00(質量%)の合計100質量部よりなるポリアミド12組成物のペレットを得た(以下、このポリアミド12組成物を「ポリアミド樹脂組成物(A1-10)」という。)。
【0142】
[比較例4]
ポリアミド樹脂組成物(A2-4)の製造
環状ホスファゼン化合物(C-1)を用いず、その分ポリアミド12(A-2)を増やした以外は、実施例9と同様の方法にて、ポリアミド12(A-2)/ホスフィン酸金属塩(B-2)/エラストマー重合体(D-1)/リン含有高分子化合物(E-1)=71.25/18.75/5.00/5.00(質量%)の合計100質量部よりなるポリアミド12組成物のペレットを得た(以下、このポリアミド12組成物を「ポリアミド樹脂組成物(A2-4)」という。)。
【0143】
[比較例5]
ポリアミド樹脂組成物(A2-5)の製造
比較例5は、特開2017-43762号公報をもとに製造され、かつ、ホスファゼン化合物(C)を含まないポリアミド樹脂組成物に関する。ポリアミド12(A-2)及びホスフィン酸金属塩(B-2)をあらかじめ混合し、二軸溶融混練機(株式会社日本製鋼所製、型式:TEX44)に供給する一方、該二軸溶融混練機のシリンダの途中から、可塑剤(I-1)を定量ポンプより注入し、シリンダ温度210℃から230℃で溶融混練し、溶融樹脂をストランド状に押出した後、これを水槽に導入し、冷却、カット、真空乾燥して、ポリアミド12(A-2)/ホスフィン酸金属塩(B-2)/可塑剤(I-1)=66.00/25.00/9.00(質量%)の合計100質量部よりなるポリアミド12組成物のペレットを得た(以下、このポリアミド12組成物を「ポリアミド樹脂組成物(A2-5)」という。)。
【0144】
[実施例11]
ポリアミド樹脂組成物(A1-11)の製造
ポリアミド12(A-2)にコアシェルゴム型グラフト共重合体(F-1)、ホスフィン酸金属塩(B-2)及び環状ホスファゼン化合物(C-1)をあらかじめ混合し、二軸溶融混練機(株式会社日本製鋼所製、型式:TEX44)に供給し、シリンダ温度210℃から230℃で溶融混練し、溶融樹脂をストランド状に押出した後、これを水槽に導入し、冷却、カット、真空乾燥して、ポリアミド12(A-2)/ホスフィン酸金属塩(B-2)/環状ホスファゼン化合物(C-1)/コアシェルゴム型グラフト共重合体(F-1)=70.00/18.75/6.25/5.00(質量%)の合計100質量部よりなるポリアミド12組成物のペレットを得た(以下、このポリアミド12組成物を「ポリアミド樹脂組成物(A1-11)」という。)。
【0145】
[実施例12]
ポリアミド樹脂組成物(A1-12)の製造
さらにその他の耐衝撃材(G-1を用い、ポリアミド12(A-2)の量を変更した以外は、実施例11と同様の方法にて、ポリアミド12(A-2)/ホスフィン酸金属塩(B-2)/環状ホスファゼン化合物(C-1)/コアシェルゴム型グラフト共重合体(F-1)/その他の耐衝撃材(G-1)=67.00/18.75/6.25/5.00/3.00(質量%)の合計100質量部よりなるポリアミド12組成物のペレットを得た(以下、このポリアミド12組成物を「ポリアミド樹脂組成物(A1-12)」という。)。
【0146】
[実施例13]
ポリアミド樹脂組成物(A1-13)の製造
さらにその他の難燃剤(H-3)を用い、ポリアミド12(A-2)の量を変更した以外は、実施例11と同様の方法にて、ポリアミド12(A-2)/ホスフィン酸金属塩(B-2)/環状ホスファゼン化合物(C-1)/コアシェルゴム型グラフト共重合体(F-1)/その他の難燃剤(H-3)=65.00/18.75/6.25/5.00/5.00(質量%)の合計100質量部よりなるポリアミド12組成物のペレットを得た(以下、このポリアミド12組成物を「ポリアミド樹脂組成物(A1-13)」という。)。
【0147】
[実施例14]
ポリアミド樹脂組成物(A1-14)の製造
ポリアミド12(A-2)とコアシェルゴム型グラフト共重合体(F-1)の添加量を変更した以外は、実施例11と同様の方法にて、ポリアミド12(A-2)/ホスフィン酸金属塩(B-2)/環状ホスファゼン化合物(C-1)/コアシェルゴム型グラフト共重合体(F-1)=65.00/18.75/6.25/10.00(質量%)の合計100質量部よりなるポリアミド12組成物のペレットを得た(以下、このポリアミド12組成物を「ポリアミド樹脂組成物(A1-14)」という。)。
【0148】
[実施例15]
ポリアミド樹脂組成物(A1-15)の製造
コアシェルゴム型グラフト共重合体(F-1)を用いず、ポリアミド12(A-2)の量を変更した以外は、実施例11と同様の方法にて、ポリアミド12(A-2)/ホスフィン酸金属塩(B-2)/環状ホスファゼン化合物(C-1)=75.00/18.75/6.25(質量%)の合計100質量部よりなるポリアミド12組成物のペレットを得た(以下、このポリアミド12組成物を「ポリアミド樹脂組成物(A1-15)」という。)。
【0149】
実施例9~15及び比較例4~5について、ポリアミド樹脂組成物の特性は、以下の方法で測定した。その結果を表2~4にまとめた。
[特性の測定方法]
[試験片の作製]
実施例9~15及び比較例4~5のペレットをそれぞれ用い、下記射出成形条件で、各試験に適合する試験片を作製した。
<射出成形条件>
シリンダ温度:270℃
金型温度:80℃
金型内平均射出速度:50mm/sec
冷却時間:5秒
【0150】
[燃焼試験(UL94相当試験)]
UL94に記載の試験方法に準拠し、厚み1/16インチ試験片に対し、燃焼試験を行った。UL94の規格に基づき、「V-0」、「V-2」及び「規格外」で判定した。
【0151】
[引張破断伸度]
ISO 527-1、2に記載の試験方法に準拠して、引張試験を行い、引張破断伸度を測定した。引張破断伸度が35%以上であれば、十分な機械物性を有すると判断した。また、引張破断伸度が100%以上であれば、より十分な機械物性を有すると判断し、引張破断伸度が130%以上であれば、特に十分な機械物性を有すると判断した。
【0152】
[酸素指数]
ISO 4589-2に記載の試験方法に準拠し、酸素指数の測定を行った。酸素指数が30%以上であれば、十分な難燃性を有すると判断した。
【0153】
中空成形体(チューブ)の成形性は以下の方法で評価した。
【0154】
[チューブ押出成形]
実施例9~15及び比較例4~5のポリアミド樹脂組成物をそれぞれ使用して、PAL32(マイルファー社製)単層チューブ成形機にて、押出成形機を190℃から210℃に設定し、外径8mm、厚み1mmをターゲット値として管状体に成形した。外径、厚みの寸法誤差が0.1mm以下で成形できたものをチューブ成形性が良好であると判断した。
【0155】
実施例11及び比較例5の中空成形体(チューブ)の引張破断伸度及び低温耐衝撃性は、以下の方法で評価した。
【0156】
[引張破断伸度(チューブ)]
「チューブ押出成形」で得られたチューブを用いて、SAE J 2260に記載の試験方法に準拠して、チューブの引張試験を行い、引張破断伸度を測定した。
【0157】
[低温耐衝撃性(チューブ)]
「チューブ押出成形」で得られたチューブを用いて、SAE J 2260に記載の試験方法に準拠して、チューブの低温耐衝撃性試験を-40℃及び-60℃の条件下で行い、チューブに割れが発生するか確認した。結果は、割れが発生した本数/試験した本数として記載した。
【0158】
【0159】
表2から、ホスファゼン化合物(C)を含まない比較例4のポリアミド樹脂組成物は、機械物性及びチューブ成形性に劣っていた。特開2017-43762号公報をもとに製造した比較例5のポリアミド樹脂組成物は、燃焼試験で規格外となり、難燃性が劣っていた。
一方、実施例9のポリアミド樹脂組成物は、燃焼試験、酸素指数、引張破断伸び及びチューブ成形性のすべてにおいて良好な結果を示した。また、実施例10のポリアミド樹脂組成物は、燃焼試験及び引張破断伸びにおいて良好な結果を示した。ここで、実施例9及び10のポリアミド樹脂組成物は、引張破断伸度が130%以上であり、特に十分な機械物性を有していた。
【0160】
【0161】
【0162】
表3から、実施例11~15のポリアミド樹脂組成物は、燃焼試験及び機械物性において良好な結果を示すことが分かる。ここで、実施例11~14のポリアミド樹脂組成物は、引張破断伸度が130%以上であり、特に十分な機械物性を有していた。また、実施例15のポリアミド樹脂組成物は、引張破断伸度が100%以上であり、より十分な機械物性を有していた。また、表4から、実施例11のポリアミド樹脂組成物は、チューブとしての機械物性及び低温耐衝撃性がいずれも優れていることが分かる。一方、比較例5は、チューブにおける低温耐衝撃性試験にて割れが確認された。