(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】フォークリフト
(51)【国際特許分類】
B66F 9/24 20060101AFI20250311BHJP
【FI】
B66F9/24 R
B66F9/24 P
(21)【出願番号】P 2022012313
(22)【出願日】2022-01-28
【審査請求日】2024-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】加藤 拓朗
(72)【発明者】
【氏名】小出 幸和
(72)【発明者】
【氏名】岡本 浩伸
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-137479(JP,A)
【文献】特開2006-327729(JP,A)
【文献】特開2005-008367(JP,A)
【文献】特開平04-303394(JP,A)
【文献】特開平03-124700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/00-11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
パレットを積載するフォークと、
前記フォークを昇降させる昇降装置と、
前記フォークを傾動させる傾動装置と、
前記フォークの傾斜角度に応じた信号を出力するティルトセンサと、
前記昇降装置及び前記傾動装置を制御する制御装置と、
前記フォークに前記パレットを積載する際に前記フォークが差し込まれる孔を差込孔とし、前記フォークのうち前記差込孔に差し込まれる部分を差込部とし、前記差込孔を形成する面のうち上方に位置する面を第1対向面とし、前記差込孔を形成する面のうち前記第1対向面と対向する面を第2対向面とすると、前記差込部の根元側に設けられており、前記差込孔の入口に対応する前記第1対向面に対する前記差込部の接触の有無を検出する検出センサと、を備え、
前記フォークに前記パレットを積載した状態で前記昇降装置によって前記フォークを下降させることにより前記パレットを載置面に対して載置する荷置き作業を実行するフォークリフトであって、
前記制御装置は、
前記荷置き作業において、前記昇降装置によって前記フォークを下降させる途中に前記検出センサが前記第1対向面から離れたとき、前記昇降装置による前記フォークの下降を停止する停止処理と、
前記停止処理の後に実行する処理であって、前記傾斜角度が限界値となるまで前記フォークを前傾させるべく前記傾動装置を制御する前傾処理と、
前記前傾処理の実行中に前記ティルトセンサの信号に基づいて演算された前記傾斜角度を取得し、前記傾斜角度が前記限界値に到達する前に取得した前記傾斜角度の値の変化が無くなった場合、前記差込部又は前記検出センサが前記第1対向面に接触しないように前記傾動装置を制御することにより前記フォークを後傾させる戻し処理と、を実行し、
前記戻し処理は、前記傾斜角度が前記限界値に到達した場合に実行しない
フォークリフト。
【請求項2】
前記フォークを前後に移動させる移動装置を備え、
前記制御装置は、前記戻し処理の後、又は前記前傾処理で前記傾斜角度が前記限界値に到達した後に引き抜き処理を実行し、
前記引き抜き処理は、前記差込部の前記差込孔の入口に対する位置が変化しないように前記昇降装置及び前記移動装置のうち少なくとも前記移動装置を制御することにより前記差込部を前記差込孔から抜き出す処理である
請求項1に記載のフォークリフト。
【請求項3】
前記フォークリフトは、リーチ型のフォークリフトであり、
前記フォークは、前記昇降装置及び前記傾動装置により前記フォークと一体的に変位する取付部に取り付けられており、
前記傾動装置は、
ティルトシリンダと、
前記制御装置により制御されることにより前記ティルトシリンダへの作動油の給排を制御する油圧機構と、を有しており、
前記ティルトシリンダは、前記作動油の給排に応じてシリンダチューブに対して出没するロッドであって、先端が前記取付部に接離可能であるティルトロッドと、を有しており、
前記フォークは、前記ティルトロッドの先端が前記取付部を押圧するように前記ティルトロッドが前記シリンダチューブから突出することにより後傾し、前記ティルトロッドの先端が前記取付部から離れるように前記ティルトロッドが前記シリンダチューブに没入することにより自重により前傾する
請求項1又は請求項2に記載のフォークリフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォークリフトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フォークに積載されたパレットを搬送する特許文献1に記載されるようなフォークリフトが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、フォークが差込孔を形成する面に接触していると、フォークを差込孔から抜き出すときにフォークが差込孔を形成する面に引っかかる虞がある。このため、フォークを差込孔から適切に抜き出すことが困難になる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するフォークリフトは、車体と、パレットを積載するフォークと、前記フォークを昇降させる昇降装置と、前記フォークを傾動させる傾動装置と、前記フォークの傾斜角度に応じた信号を出力するティルトセンサと、前記昇降装置及び前記傾動装置を制御する制御装置と、前記フォークに前記パレットを積載する際に前記フォークが差し込まれる孔を差込孔とし、前記フォークのうち前記差込孔に差し込まれる部分を差込部とし、前記差込孔を形成する面のうち上方に位置する面を第1対向面とし、前記差込孔を形成する面のうち前記第1対向面と対向する面を第2対向面とすると、前記差込部の根元側に設けられており、前記差込孔の入口に対応する前記第1対向面に対する前記差込部の接触の有無を検出する検出センサと、を備え、前記フォークに前記パレットを積載した状態で前記昇降装置によって前記フォークを下降させることにより前記パレットを載置面に対して載置する荷置き作業を実行するフォークリフトであって、前記制御装置は、前記荷置き作業において、前記昇降装置によって前記フォークを下降させる途中に前記検出センサが前記第1対向面から離れたとき、前記昇降装置による前記フォークの下降を停止する停止処理と、前記停止処理の後に実行する処理であって、前記傾斜角度が限界値となるまで前記フォークを前傾させるべく前記傾動装置を制御する前傾処理と、前記前傾処理の実行中に前記ティルトセンサの信号に基づいて演算された前記傾斜角度を取得し、前記傾斜角度が前記限界値に到達する前に取得した前記傾斜角度の値の変化が無くなった場合、前記差込部又は前記検出センサが前記第1対向面に接触しないように前記傾動装置を制御することにより前記フォークを後傾させる戻し処理と、を実行し、前記戻し処理は、前記傾斜角度が前記限界値に到達した場合に実行しない。
【0006】
上記構成によれば、停止処理により、検出センサが第1対向面に接触していない状態でフォークの下降が停止する。したがって、停止処理により、差込部の根元は第1対向面から離れる。停止処理の後の前傾処理では、傾斜角度が限界値となるまでフォークを前傾させるため、多くの場合は、限界値に到達する前にフォークの先端が第2対向面に接触する。そして、前傾処理の後の戻し処理により、第2対向面に接触していた差込部の先端を第2対向面から離すことができる。なお、前傾処理において傾斜角度が限界値に到達した場合、差込部の先端が第2対向面に押し付けられていない。このため、前傾処理において傾斜角度が限界値に到達した場合、戻し処理を実行しない。これらの結果、フォークの根元を第1対向面から離すことができるとともに、フォークの先端を第2対向面から離すことができる。よって、差込孔からフォークを抜き出す前にフォークと差込孔を形成する面との接触を抑制することができる。
【0007】
上記のフォークリフトにおいて、前記フォークを前後に移動させる移動装置を備え、前記制御装置は、前記戻し処理の後、又は前記前傾処理で前記傾斜角度が前記限界値に到達した後に引き抜き処理を実行し、前記引き抜き処理は、前記差込部の前記差込孔の入口に対する位置が変化しないように前記昇降装置及び前記移動装置のうち少なくとも前記移動装置を制御することにより前記差込部を前記差込孔から抜き出す処理であるとよい。
【0008】
上記構成によれば、引き抜き処理により、差込孔を形成する面に差込部が接触しない状態を維持しつつ、差込孔から差込部を抜き出すことができる。よって、差込孔を形成する面にフォークが引っかかることがなくなるため、差込孔からのフォークの引き抜きを好適に実行できる。
【0009】
上記のフォークリフトにおいて、前記フォークリフトは、リーチ型のフォークリフトであり、前記フォークは、前記昇降装置及び前記傾動装置により前記フォークと一体的に変位する取付部に取り付けられており、前記傾動装置は、ティルトシリンダと、前記制御装置により制御されることにより前記ティルトシリンダへの作動油の給排を制御する油圧機構と、を有しており、前記ティルトシリンダは、前記作動油の給排に応じてシリンダチューブに対して出没するロッドであって、先端が前記取付部に接離可能であるティルトロッドと、を有しており、前記フォークは、前記ティルトロッドの先端が前記取付部を押圧するように前記ティルトロッドが前記シリンダチューブから突出することにより後傾し、前記ティルトロッドの先端が前記取付部から離れるように前記ティルトロッドが前記シリンダチューブに没入することにより自重により前傾するとよい。
【0010】
上記構成によれば、前傾処理を実行しているときに差込部が第2対向面に接触すると、差込部は第2対向面に接触したままティルトロッドが取付部から離れるようにシリンダチューブに対して没入する。すなわち、フォークの傾斜角度の変化が無くなった状態となったときに差込部が第2対向面に押し付けられない。したがって、戻し処理を実行する前にフォークに必要以上に応力が作用することを抑制できる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、差込孔からフォークを抜き出す前にフォークと差込孔を形成する面との接触を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】フォークリフトのティルトシリンダ周辺の概略図である。
【
図3】フォークリフトの構成を示すブロック図である。
【
図5】フォークリフトの荷置き作業を示す概略図である。
【
図6】フォークリフトの制御装置の処理フローを示すフローチャートである。
【
図7】荷置き作業時にフォークが水平、且つ載置面が水平である場合を示した図である。
【
図8】荷置き作業時にフォークが水平、且つ載置面が傾斜している場合の一例を示す図である。
【
図9】荷置き作業時にフォークが水平、且つ載置面が傾斜している場合の一例を示す図である。
【
図10】荷置き作業時にフォークが後傾、且つ載置面が水平である場合を示す図である。
【
図11】荷置き作業時にフォークが後傾、且つ載置面が傾斜している場合の一例を示す図である。
【
図12】荷置き作業時にフォークが後傾、且つ載置面が傾斜している場合の一例を示す図である。
【
図13】フォークリフトの制御装置が実行する停止処理を示す図である。
【
図14】フォークリフトの制御装置が実行する前傾処理を示す図である。
【
図15】フォークリフトの制御装置が実行する戻し処理を示す図である。
【
図16】フォークリフトの制御装置が実行する引き抜き処理の一例を示す図である。
【
図17】フォークリフトの制御装置が実行する引き抜き処理の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
以下、フォークリフトを具体化した第1実施形態を
図1~
図17にしたがって説明する。
【0014】
<フォークリフトの構成>
図1に示すように、フォークリフト10は、工場、港湾、及び商業施設等でパレットPを搬送する必要がある作業場で使用される。フォークリフト10は、パレットPを積載する荷取り作業を行った後、パレットPを搬送する。フォークリフト10は、パレットPを搬送した後、パレットPを載置する荷置き作業を行う。パレットPは、搬送物を収容する四角箱状の収容部Sと、収容部Sの四隅に設けられた脚部Lと、を備えている。パレットPは、メッシュパレットである。本実施形態のフォークリフト10は、リーチ型のフォークリフトである。
【0015】
フォークリフト10は、車体11と、リーチレグ12と、前輪13と、後輪14と、走行モータ15と、荷役装置20と、制御装置30と、を備えている。以下の説明において、車体11の前方向及び後方向を含む方向を第1方向Aとし、車体11の上方向及び下方向を含む方向を第2方向Bとする。車体11の左方向及び右方向を含む方向を第3方向Cとする。第1方向Aと第2方向Bとは直交している。第1方向Aと第3方向Cとは直交している。
【0016】
リーチレグ12は、車体11から車体11の前方向に延びている。リーチレグ12は、第3方向Cに互いに間隔をおいて二つ設けられている。前輪13は、一対のリーチレグ12の各々に設けられている。後輪14は、車体11に設けられている。後輪14は、例えば操舵輪であり、且つ走行モータ15により駆動する駆動輪である。走行モータ15が駆動することによりフォークリフト10は、第1方向Aに移動する。
【0017】
荷役装置20は、マスト21と、リフトブラケット22と、フォーク23と、を有している。荷役装置20は、リーチシリンダ24と、リフトシリンダ25と、ティルトシリンダ26と、ティルトロッド27と、油圧機構40と、を有している。
【0018】
マスト21は、多段式のマストである。マスト21は、第3方向Cに間隔をおいて二つ設けられている。マスト21は、アウタマストと、ミドルマストと、インナマストとがスライド可能に係合されることにより構成されている。
【0019】
図1及び
図2に示すように、マスト21にはキャリッジ100が設けられている。キャリッジ100は、リフトブラケット22、フォーク23、フィンガバー28、回動軸29を含む。キャリッジ100は、マスト21のインナマストに図示しないチェーン機構を介して吊下げられている。
【0020】
図1に示すように、リフトブラケット22は、マスト21のインナマストに図示しないチェーン機構を介して吊下げられている。リフトブラケット22は、一対のマスト21の間に第2方向Bに昇降可能に設けられている。フィンガバー28は、第3方向Cに長手が延びるようにリフトブラケット22に取り付けられている。フォーク23は、第3方向Cに互いに間隔をおいて二つ設けられている。フォーク23は、リフトブラケット22に取り付けられる基部232と、基部232の先端から車体11の前方向に延びる差込部231とを有している。差込部231は、収容部Sの底部を支持する。差込部231は、板状をなしている。差込部231は、第1面231aと、第2面231bとを有している。第1面231aは、収容部Sの底部に対向する面である。第2面231bは、差込部231の厚さ方向で第1面231aとは反対側に位置する面である。
【0021】
回動軸29は、第3方向Cに軸線が延びるようにリフトブラケット22に設けられている。リフトブラケット22は、回動軸29に回動自在に支持されている。フォーク23及びリフトブラケット22は、回動軸29を回動中心として車体11の前方向又は車体11の後方向に回動自在である。例えば、
図2に示すように、差込部231の先端に車体11の上方向に向かう外力を加えると、フォーク23及びリフトブラケット22は、回動軸29を回動中心として車体11の前方向に回動する。
【0022】
図1に示すように、リーチシリンダ24は、油圧シリンダである。リーチシリンダ24への作動油の給排によりマスト21が第1方向Aに移動する。フォーク23を含むキャリッジ100は、マスト21とともに第1方向Aに移動する。リーチシリンダ24によりマスト21とともにフォーク23が車体11の前方向に移動することをリーチアウトと呼称する。リーチシリンダ24によりマスト21とともにフォーク23が車体11の後方向に移動することをリーチインと呼称する。
【0023】
リフトシリンダ25は、油圧シリンダである。キャリッジ100は、リフトシリンダ25への作動油の給排によりマスト21の伸縮を伴ってマスト21に沿って第2方向Bに上昇又は下降する。フォーク23は、リフトブラケット22とともに第2方向Bに上昇又は下降する。
【0024】
ティルトシリンダ26は、油圧シリンダである。ティルトシリンダ26は、シリンダチューブ26aと、ティルトロッド27とを有している。ティルトロッド27は、ティルトシリンダ26への作動油の給排によりシリンダチューブ26aに対して出没するロッドである。
【0025】
図2に示すように、ティルトロッド27の先端27aは、フィンガバー28に接離可能である。換言すると、ティルトロッド27の先端27aは、フィンガバー28に固定されていない。
【0026】
ティルトロッド27がシリンダチューブ26aに対して最も没入した状態で、フォーク23及びリフトブラケット22は前傾する。フォーク23及びリフトブラケット22は、ティルトロッド27の支えがない状態において、フォーク23の前傾が最大となるように重心が設定されている。すなわち、ティルトロッド27の先端27aがフィンガバー28を離れるようにシリンダチューブ26aに没入することによりフォーク23は自重により前傾する。
【0027】
ティルトシリンダ26への作動油の供給によってティルトロッド27がシリンダチューブ26aから突出する。ティルトロッド27の先端27aがフィンガバー28を押圧するようにティルトロッド27がシリンダチューブ26aから突出することにより、フォーク23は、リフトブラケット22及びフィンガバー28とともに後傾する。ティルトロッド27がシリンダチューブ26aに対して最大限突出した状態で、フォーク23の後傾が最大となる。
【0028】
すなわち、ティルトシリンダ26への作動油の給排によってフォーク23が傾動する。フォーク23は、フィンガバー28及びリフトブラケット22とともに傾動する。傾動は、上記前傾と上記後傾とを含む。前傾とは、フォーク23、リフトブラケット22及びフィンガバー28を車体11の前方向に傾動させる(フォーク23の先端が下がる)ことである。後傾とは、フォーク23、リフトブラケット22及びフィンガバー28を車体11の後方向に傾動させる(フォーク23の先端が上がる)ことである。フォーク23は、リフトブラケット22及びフィンガバー28とともに上昇、下降、前傾、後傾する。すなわち、リフトブラケット22及びフィンガバー28は、フォーク23と一体的に変位する取付部である。フォーク23は、取付部に取り付けられている。
【0029】
フォーク23の差込部231が第1方向Aに延びている状態において、差込部231の第1面231aに直交し、かつ基部232に沿って延びる仮想線を、フォーク23の基準線mとする。差込部231の第1面231aが水平となる状態を基準状態とする。フォーク23の傾斜角度θは、フォーク23が前傾したときの基準線mと、基準状態の基準線mとの間の角度である。
【0030】
傾斜角度θの下限値を限界値θfmaxとする。限界値θfmaxは、フォーク23の前傾が最大となるときの基準線mと、基準状態の基準線mとの間の角度である。限界値θfmaxは、負の値である。
【0031】
傾斜角度θの上限値を限界値θbmaxとする。限界値θbmaxは、フォーク23の後傾が最大となるときの基準線mと、基準状態の基準線mとの間の角度である。限界値θbmaxは、正の値である。
【0032】
図3に示すように、油圧機構40は、リーチシリンダ24、リフトシリンダ25、及びティルトシリンダ26を含む油圧機器への作動油の給排を制御するための機構である。油圧機構40は、コントロールバルブ41と、荷役ポンプ42と、荷役モータ43と、を有している。コントロールバルブ41は、リーチシリンダ24、リフトシリンダ25、及びティルトシリンダ26への作動油の給排を制御する。コントロールバルブ41は、リーチシリンダ24、リフトシリンダ25、及びティルトシリンダ26へ作動油を給排する油路の開度を調整する電磁制御弁である。荷役ポンプ42は、コントロールバルブ41に作動油を吐出する。荷役モータ43は、荷役ポンプ42を駆動させる動力を発生させる。
【0033】
図1に示すように、リーチシリンダ24及び油圧機構40は、第1方向Aにおいてフォーク23を前後に移動させる移動装置の一例である。リフトシリンダ25及び油圧機構40は、第2方向Bにフォーク23を昇降させる昇降装置の一例である。ティルトシリンダ26及び油圧機構40は、フォーク23を傾動させる傾動装置の一例である。
【0034】
図4に示すように、フォークリフト10は、フォークリフト10に搭乗する乗員が操作可能な操作部16を備えている。操作部16は、リーチ操作部161と、リフト操作部162と、ティルト操作部163と、アクセル操作部164と、を含む。
【0035】
リーチ操作部161は、中立位置から第1方向Aに前傾又は後傾可能なリーチレバーを含む。リーチレバーを中立位置から車体11の前方向に前傾させると、リーチ操作部161は、信号を制御装置30に出力する。当該信号が出力されると、マスト21とともにフォーク23が車体11の前方向に移動する。リーチレバーを中立位置から車体11の後方向に後傾させると、リーチ操作部161は、信号を制御装置30に出力する。当該信号が出力されると、マスト21とともにフォーク23が車体11の後方向に移動する。
【0036】
リフト操作部162は、中立位置から第1方向Aに前傾又は後傾可能なリフトレバーを含む。リフトレバーを中立位置から車体11の前方向に前傾させると、リフト操作部162は、信号を制御装置30に出力する。当該信号が出力されると、リフトブラケット22とともにフォーク23が下降する。リフトレバーを中立位置から車体11の後方向に後傾させると、リフト操作部162は、信号を制御装置30に出力する。当該信号が出力されると、リフトブラケット22とともにフォーク23が上昇する。
【0037】
ティルト操作部163は、中立位置から第1方向Aに前傾又は後傾可能なティルトレバーを含む。ティルトレバーを中立位置から車体11の前方向に前傾させると、ティルト操作部163は、信号を制御装置30に出力する。この信号が出力されると、ティルトロッド27がシリンダチューブ26aに没入されることによりフォーク23がリフトブラケット22及びフィンガバー28とともに前傾する。ティルトレバーを中立位置から車体11の後方向に後傾させると、ティルト操作部163は、信号を制御装置30に出力する。この信号が出力されると、ティルトロッド27がシリンダチューブ26aに対して突出することによりフォーク23がリフトブラケット22及びフィンガバー28とともに後傾する。
【0038】
アクセル操作部164は、中立位置から第1方向Aに前傾又は後傾可能なアクセルレバーを含む。アクセルレバーを中立位置から車体11の前方向に前傾させると、アクセル操作部164は、信号を制御装置30に出力する。この信号が出力されると、フォークリフト10が前進するように走行モータ15が駆動される。アクセルレバーを中立位置から車体11の後方向に後傾させると、アクセル操作部164は、信号を制御装置30に出力する。この信号が出力されると、フォークリフト10が後進するように走行モータ15が駆動される。
【0039】
図5に示すように、フォークリフト10は、トラックTに積まれたパレットPに対して荷取り作業を行う。トラックTの停車位置A1は、予め決められている。フォークリフト10は、荷取り位置A2まで移動した後に荷取り作業を実行する。
【0040】
フォークリフト10は、フォーク23にパレットPを積載した状態でフォーク23を下降させることによりパレットPをトラックTの載置面TBに対して載置する荷置き作業を実行する。フォークリフト10は、例えば荷取り位置A2と同じ位置で荷置き作業を実行する。
【0041】
トラックTは、載置面TBと、側あおりSSと、後あおりRSと、タイヤT1と、を備えている。載置面TBには、パレットPが積まれる。側あおりSSは、載置面TBの側部に設けられている。側あおりSSは、トラックTの上方向及び下方向に回動可能である。後あおりRSは、載置面TBの後部に設けられている。後あおりRSは、トラックTの上方向及び下方向に回動可能である。トラックTの走行中などには、側あおりSS及び後あおりRSによって載置面TBが囲まれている。フォークリフト10が荷取り作業及び荷置き作業を行う際には、側あおりSS及び後あおりRSは、下方に回動させられており、側あおりSS及び後あおりRSはパレットPに向かい合わない。すなわち、フォークリフト10が荷取り作業及び荷置き作業を行う際には、側あおりSS及び後あおりRSは、フォークリフト10による荷取り作業及び荷置き作業を阻害しないように回動させられる。なお、フォークリフト10は、荷取り作業後にパレットPを搬送する場合、フォーク23を水平な状態にする、又はフォーク23を後傾させた状態にする。そして、フォークリフト10は、パレットPが搬送されているときのフォーク23の傾きを維持した状態で荷置き作業を実行する。
図5には、フォーク23が水平な状態であるときに荷置き作業が実行される場合を一例として記載している。
【0042】
パレットPが載置面TBに積まれた状態で、載置面TB、脚部L、及び収容部Sに囲まれる孔である差込孔IHが形成されている。差込孔IHは、フォークリフト10のフォーク23にパレットPを積載する際にフォーク23が差し込まれる孔である。差込部231は、フォーク23のうち差込孔IHに差し込まれる部分である。フォークリフト10は、トラックTの側あおりSS側で荷取り作業及び荷置き作業を実行する。すなわち、フォークリフト10の第1方向Aと、トラックTの車幅方向Tdとが一致している状態で荷取り作業及び荷置き作業が実行される。
【0043】
差込孔IHを形成する面は、第1対向面IH1と、第2対向面IH2とを有している。第1対向面IH1は、差込部231が差込孔IHに差し込まれた状態において、差込部231の第1面231aと対向している。第1対向面IH1は、差込孔IHを形成する面のうち上方に位置する面である。第2対向面IH2は、差込部231が差込孔IHに差し込まれた状態において、差込部231の第2面231bと対向している。第2対向面IH2は、差込孔IHを形成する面のうち第1対向面IH1と対向する面である。
【0044】
図3に示すように、フォークリフト10は、補助記憶装置50と、環境センサ51と、を備えている。フォークリフト10は、検出センサ52と、車速センサ53と、リーチセンサ54と、リフトセンサ55と、ティルトセンサ56とを備えている。
【0045】
補助記憶装置50は、制御装置30が読み取り可能な情報を記憶している。補助記憶装置50としては、例えば、ハードディスクドライブや、ソリッドステートドライブが用いられる。補助記憶装置50には、地図情報が記憶されている。地図情報とは、フォークリフト10が用いられる環境の形状、広さ等、フォークリフト10の周辺環境の物理的構造に関する情報である。停車位置A1、及び荷取り位置A2等の位置は、地図情報中の座標として表される。地図情報は、フォークリフト10の用いられる環境を座標で示したデータといえる。地図情報は、フォークリフト10が用いられる周辺環境を予め把握できていれば、予め補助記憶装置50に記憶されていてもよい。地図情報を予め補助記憶装置50に記憶する場合、建築物の壁、柱など位置の変化しにくい物の座標を地図情報として記憶する。地図情報は、SLAM:Simultaneous Localization and Mappingによるマッピングにより作成されてもよい。マッピングは、例えば、環境センサ51によって得られた座標から局所地図を作成した後、この局所地図をフォークリフト10の自己位置に応じて組み合わせることによって行われる。環境センサ51は、フォークリフト10の後方に位置する物体と、フォークリフト10との相対位置を制御装置30に認識させることができるセンサである。環境センサ51としては、例えば、ミリ波レーダー、ステレオカメラ、LIDAR:Laser Imaging Detection and Rangingなどを用いることができる。
【0046】
検出センサ52は、差込部231の根元側(基部232側)に設けられている。検出センサ52は、差込部231が差込孔IHに差し込まれた状態において、差込孔IHの入口IHinに対応する位置に設けられている。検出センサ52は、第1対向面IH1に接触することにより信号Scを制御装置30に出力するとともに、第1対向面IH1に接触していないときに信号Scを制御装置30に出力しない接触センサである。検出センサ52は、第1対向面IH1に対する差込部231の接触の有無を検出するセンサである。なお、検出センサ52は、第1対向面IH1に接触するときに信号Scを制御装置30に出力せずに、第1対向面IH1に接触していないときに信号Scを制御装置30に出力する接触センサであってもよい。また、検出センサは、荷重センサであってもよい。すなわち、検出センサ52は、第1対向面IH1に対する差込部231の接触の有無を検出できればよい。また、
図3に記載の検出センサ52の厚さは、誇張して記載している。
図3の図示の便宜上、検出センサ52が第1対向面IH1に対して接触しているときに差込部231が第1対向面IH1に接触していないように見えている。しかし、実際には検出センサ52が第1対向面IH1に接触しているとき、差込部231は、第1対向面IH1に接触している。
【0047】
車速センサ53は、信号SVを制御装置30に出力する。リーチセンサ54は、信号SRを制御装置30に出力する。リフトセンサ55は、信号SLを制御装置30に出力する。ティルトセンサ56は、信号Sθを制御装置30に出力する。
【0048】
<制御装置の構成>
図3に示すように、制御装置30は、CPUやGPU等のプロセッサ31と、RAM及びROM等からなる記憶部32と、を備えている。記憶部32は、処理をプロセッサ31に実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。記憶部32、すなわち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。制御装置30は、ASIC:Application Specific Integrated CircuitやFPGA:Field Programmable Gate Array等のハードウェア回路によって構成されていてもよい。処理回路である制御装置30は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASICやFPGA等の1つ以上のハードウェア回路、或いは、それらの組み合わせを含み得る。なお、記憶部32に記憶されるプログラムコードや指令は、記憶部32に代えて補助記憶装置50に記憶されてもよい。
【0049】
制御装置30は、記憶部32に記憶されたプログラムコード又は指令に従い、走行モータ15及び油圧機構40を制御する。これにより、フォークリフト10が走行したり、リーチシリンダ24、リフトシリンダ25、及びティルトシリンダ26が動作したりする。このため、制御装置30は、移動装置、昇降装置、及び傾動装置を制御するといえる。本実施形態のフォークリフト10は、基本的に乗員による操作が行われることがない。フォークリフト10は、制御装置30による移動装置、昇降装置、及び傾動装置の制御により自動で動作する無人フォークリフトである。本実施形態のフォークリフト10は、乗員による操作が行われる場合に操作部16の操作に応じてフォークリフト10が動作する有人式のフォークリフトとしても使用できる。
【0050】
制御装置30は、自己位置推定処理を実行する。自己位置推定処理は、補助記憶装置50に記憶された地図情報上でのフォークリフト10の自己位置を推定するための処理である。制御装置30は、自己位置推定処理を実行しながら走行モータ15を制御することにより、荷取り位置A2にフォークリフト10を移動させることが可能である。自己位置推定処理は、例えば、走行モータ15の回転数を用いて自己移動量を推定するオドメトリを用いて行われてもよいし、ランドマークと地図情報とのマッチング結果から行われてもよい。また、これらを組み合わせて自己位置推定処理を実行してもよい。フォークリフト10が用いられる環境が屋外であれば、GPS:Global Positioning Systemを用いて自己位置を推定してもよい。なお、自己位置とは、車体11の一点を示す座標であり、例えば、車体11の水平方向の中央の座標である。
【0051】
フォークリフト10が荷取り位置A2に到達したとき、制御装置30は、油圧機構40を制御することで差込孔IHと差込部231の先端とが向かい合うようにフォーク23の高さを調整する。制御装置30は、油圧機構40を制御することでマスト21をリーチアウトさせることによりフォーク23を車体11の前方向に移動させる。これにより、差込部231が差込孔IHに差し込まれる。制御装置30は、差込部231が差込孔IHに差し込まれた後、油圧機構40を制御することでフォーク23を上昇させることによりフォーク23にパレットPを積載させる。制御装置30は、フォーク23にパレットPを積載させた後、油圧機構40を制御することでマスト21をリーチインさせることによりフォーク23を車体11の後方向に移動させる。よって、制御装置30によって荷取り作業が自動で実現される。荷取り作業においてフォーク23にパレットPを積載させたとき、第1対向面IH1には検出センサ52が接触する。なお、荷取り作業でフォーク23にパレットPを積載させたとき、制御装置30は、フォーク23が水平又は後傾となるように油圧機構40を制御する。
【0052】
制御装置30は、荷置き作業を実行する場合においても荷取り位置A2にフォークリフト10を移動させる。制御装置30は、フォークリフト10が荷取り位置A2に移動した後、油圧機構40を制御することでマスト21をリーチアウトさせることによりフォーク23をトラックTの載置面TBの直上に配置する。制御装置30は、載置面TBの直上にフォーク23を配置した状態で、油圧機構40を制御することでフォーク23を下降させる。よって、パレットPが載置面TBに載置される。よって、制御装置30によって荷置き作業が自動で実現される。荷置き作業とは、フォーク23にパレットPを積載した状態で昇降装置によってフォーク23を下降させることによりパレットPを載置面TBに対して載置する作業である。
【0053】
<接触判定部、及び模擬電圧値演算部>
制御装置30は、接触判定部34と、模擬電圧値演算部35と、を有している。
接触判定部34には、検出センサ52の信号Scが入力される。接触判定部34は、信号Scが入力されているとき、差込部231が第1対向面IH1に接触していると判定する。接触判定部34は、信号Scが入力されていないとき、差込部231が第1対向面IH1に接触していないと判定する。接触判定部34は、判定結果を模擬電圧値演算部35に出力する。
【0054】
模擬電圧値演算部35は、位置姿勢演算部36と、目標位置姿勢演算部37とを有している。位置姿勢演算部36には、信号SV,SR,SL,Sθが入力される。
位置姿勢演算部36は、信号SVに基づきフォークリフト10の車速を演算し、且つ当該車速に基づきフォークリフト10の移動量PVを演算する。車速センサ53は、フォークリフト10の車速に応じた信号SVを出力している。位置姿勢演算部36は、演算した移動量PVを目標位置姿勢演算部37に出力する。
【0055】
位置姿勢演算部36は、信号SRに基づきマスト21の移動量PRを演算する。リーチセンサ54は、リーチシリンダ24によるマスト21の移動量PRに応じた信号SRを出力している。位置姿勢演算部36は、演算した移動量PRを目標位置姿勢演算部37に出力する。
【0056】
位置姿勢演算部36は、信号SLに基づきフォーク23の高さPLを演算する。リフトセンサ55は、リフトシリンダ25により上昇又は下降したフォーク23の高さPLに応じた信号SLを出力している。位置姿勢演算部36は、演算した高さPLを目標位置姿勢演算部37に出力する。
【0057】
位置姿勢演算部36は、信号Sθに基づきフォーク23の傾斜角度θを演算する。ティルトセンサ56は、ティルトシリンダ26により傾動したフォーク23の傾斜角度θに応じた信号Sθを出力している。位置姿勢演算部36は、演算した傾斜角度θを目標位置姿勢演算部37に出力する。
【0058】
目標位置姿勢演算部37には、接触判定部34の判定結果と、位置姿勢演算部36から出力された移動量PV、移動量PR、高さPL、及び傾斜角度θが入力される。
目標位置姿勢演算部37は、目標車両位置PV※を演算する。目標車両位置PV※は、入力された移動量PVに基づき演算される。目標車両位置PV※は、第1方向Aにおいてフォークリフト10が位置するべき目標の位置である。目標位置姿勢演算部37は、電圧値VV※を演算する。電圧値VV※は、目標車両位置PV※を達成するべくアクセル操作部164が操作されたときにアクセル操作部164から出力される信号の電圧値VVを模擬した値である。
【0059】
目標位置姿勢演算部37は、目標マスト位置PR※を演算する。目標マスト位置PR※は、入力された移動量PRに基づき演算される。目標マスト位置PR※は、第1方向Aにおいてマスト21が位置するべき目標の位置である。目標位置姿勢演算部37は、電圧値RV※を演算する。電圧値RV※は、目標マスト位置PR※を達成するべくリーチ操作部161が操作されたときにリーチ操作部161から出力される信号の電圧値RVを模擬した値である。
【0060】
目標位置姿勢演算部37は、目標フォーク高さPL※を演算する。目標フォーク高さPL※は、入力された判定結果及び高さPLに基づき演算される。目標フォーク高さPL※は、第2方向Bにおいてフォーク23が位置するべき目標の位置である。目標位置姿勢演算部37は、電圧値LV※を演算する。電圧値LV※は、目標フォーク高さPL※を達成するべくリフト操作部162が操作されたときにリフト操作部162から出力される信号の電圧値LVを模擬した値である。
【0061】
目標位置姿勢演算部37は、差込部231が第1対向面IH1に接触しているとの判定結果が入力されている場合、入力された高さPLに基づき目標フォーク高さPL※を演算する。差込部231が第1対向面IH1に接触しているとは、検出センサ52が第1対向面IH1に接触していることと同義である。
【0062】
目標位置姿勢演算部37は、差込部231が第1対向面IH1に接触していないとの判定結果が入力されている場合、フォーク23の下降を停止させるように電圧値LV※を演算する。目標位置姿勢演算部37は、差込部231が第1対向面IH1に接触していない場合、電圧値LV※をリフト操作部162が操作されていないときの電圧値LVに置き換える。よって、目標位置姿勢演算部37は、差込部231が第1対向面IH1に接触していない場合、リフト操作部162が操作されていないものとして、フォーク23の動作が停止する電圧値LV※を演算する。なお、差込部231が第1対向面IH1に接触していないとは、検出センサ52が第1対向面IH1から離れたことと同義である。
【0063】
目標位置姿勢演算部37は、入力される傾斜角度θの変化を監視している。目標位置姿勢演算部37は、目標傾斜角度θ※を演算する。目標傾斜角度θ※は、入力された傾斜角度θに基づき演算される。目標傾斜角度θ※は、フォーク23が傾斜するべき目標の傾斜角度θである。目標位置姿勢演算部37は、電圧値θV※を演算する。電圧値θV※は、目標傾斜角度θ※を達成するべくティルト操作部163が操作されたときにティルト操作部163から出力される信号の電圧値θVを模擬した値である。模擬電圧値演算部35は、フォークリフト10が自動で動作する場合に操作部16の操作を模擬的に実現するための電圧値VV※,RV※,LV※,θV※を演算する。
【0064】
<内部コントローラ>
制御装置30は、内部コントローラ33を有している。内部コントローラ33は、走行モータ15及び油圧機構40の各々を動作させる指令値を演算している。
【0065】
フォークリフト10に乗員が搭乗している場合、内部コントローラ33には、リーチ操作部161の信号の電圧値RV、及びリフト操作部162の信号の電圧値LVが入力される。フォークリフト10に乗員が搭乗している場合、内部コントローラ33には、ティルト操作部163の信号の電圧値θV、及びアクセル操作部164の信号の電圧値VVが入力される。内部コントローラ33は、電圧値RV,LV,θVに基づいて油圧機構40を動作させる指令値を油圧機構40に出力する。内部コントローラ33は、電圧値VVに基づいて走行モータ15を動作させる指令値を走行モータ15に出力する。
【0066】
フォークリフト10に乗員が搭乗していない場合、目標位置姿勢演算部37は、演算した電圧値VV※,RV※,LV※,θV※を内部コントローラ33に出力する。フォークリフト10に乗員が搭乗していない場合、内部コントローラ33は、電圧値RV※,LV※,θV※に基づいて油圧機構40を動作させる指令値を油圧機構40に出力する。フォークリフト10に乗員が搭乗していない場合、内部コントローラ33は、電圧値VV※に基づいて走行モータ15を動作させる指令値を走行モータ15に出力する。
【0067】
<フォークを差込孔から適切に抜き出すための処理>
制御装置30は、フォーク23を差込孔IHから適切に抜き出すための処理を実行する。フォーク23を差込孔IHから適切に抜き出すための処理は、荷置き作業においてフォーク23が下降しているときに開始される。
【0068】
図6に示すように、制御装置30がフォーク23を差込孔IHから適切に抜き出すための処理を開始すると、制御装置30は、最初にステップS1を実行する。
制御装置30は、ステップS1の処理において、検出センサ52の信号Scが入力されていないか否かを判定する。ステップS1の処理は、接触判定部34が実行する。制御装置30は、接触判定部34により信号Scが入力されていると判定された場合(ステップS1:NO)には、ステップS1の処理を繰り返す。すなわち、制御装置30は、接触判定部34により差込部231が第1対向面IH1に接触していると判定された場合には、ステップS1の処理を繰り返す。制御装置30は、接触判定部34により信号Scが入力されていないと判定された場合(ステップS1:YES)には、処理をステップS2へと進める。すなわち、制御装置30は、接触判定部34により差込部231が第1対向面IH1から離れていると判定された場合には、処理をステップS2へと進める。
【0069】
制御装置30は、ステップS2の処理において、停止処理を実行する。以下、ステップS2を停止処理S2と記載する。停止処理S2は、荷置き作業において昇降装置によってフォーク23を下降させる途中に検出センサ52が第1対向面IH1から離れたとき、昇降装置によるフォーク23の下降を停止する処理である。停止処理S2は、目標位置姿勢演算部37にフォーク23の下降を停止させる電圧値LV※を演算させる処理である。停止処理S2は、検出センサ52が第1対向面IH1から離れた場合、目標位置姿勢演算部37が電圧値LV※をリフト操作部162が操作されていないときの電圧値LVに置き換える処理である。制御装置30は、停止処理S2を実行すると、処理をステップS3へと進める。
【0070】
制御装置30は、ステップS3の処理において、前傾処理を実行する。以下、ステップS3を前傾処理S3と記載する。前傾処理S3は、停止処理S2の後に実行する処理である。前傾処理S3は、フォーク23の傾斜角度θが限界値θfmaxとなるまでフォーク23を傾動させるべく傾動装置を制御する処理である。前傾処理S3は、目標位置姿勢演算部37により演算される目標傾斜角度θ※を限界値θfmaxに置き換える処理である。前傾処理S3において、制御装置30は、目標位置姿勢演算部37で限界値θfmaxに置き換えた目標傾斜角度θ※に基づいて電圧値θV※を演算する。前傾処理S3において、制御装置30は、限界値θfmaxに置き換えた目標傾斜角度θ※に基づいて演算された電圧値θV※に応じた指令値を内部コントローラ33から油圧機構40に出力する。
【0071】
前傾処理S3を実行しているとき、目標位置姿勢演算部37は、電圧値LV※をリフト操作部162が操作されていないときの電圧値LVに置き換える。また、前傾処理S3を実行しているとき、目標位置姿勢演算部37は、電圧値RV※をリーチ操作部161が操作されていないときの電圧値RVに置き換える。さらに、前傾処理S3を実行しているとき、目標位置姿勢演算部37は、電圧値VV※をアクセル操作部164が操作されていないときの電圧値VVに置き換える。すなわち、前傾処理S3において、制御装置30は、傾動装置のみを制御する。制御装置30は、前傾処理S3を実行すると、処理をステップS4へと進める。
【0072】
制御装置30は、ステップS4の処理において、傾斜角度θが限界値θfmaxとなったか否かを判定する。ステップS4の処理において、目標位置姿勢演算部37は、傾斜角度θが限界値θfmaxとなったか否かを判定している。制御装置30は、ステップS4の処理を実行するときに前傾処理S3を継続している。制御装置30は、ステップS4の処理において傾斜角度θが限界値θfmaxとなっていないと判定した場合(ステップS4:NO)には、処理をステップS6へと進める。
【0073】
制御装置30は、ステップS6の処理において、傾斜角度θが変化していないか否かを判定する。制御装置30は、ステップS6の処理を実行するときに前傾処理S3を継続している。ステップS6の処理において、制御装置30は、目標位置姿勢演算部37が傾斜角度θに変化がないと判定した場合(ステップS6:YES)には、処理をステップS7へと進める。すなわち、制御装置30は、前傾処理S3の実行中に傾斜角度θが限界値θfmaxに到達する前に取得した傾斜角度θの値の変化が無くなった場合、処理をステップS7へと進める。
【0074】
制御装置30は、ステップS6の処理において、傾斜角度θが変化していると判定した場合(ステップS6:NO)には、前傾処理S3を継続する。ここで、前傾処理S3を実行しているときに傾斜角度θが限界値θfmaxに到達する前に傾斜角度θの変化がない状態を検知した場合とは、ティルトロッド27がシリンダチューブ26aに対して没入していく途中で、フォーク23の差込部231の先端が差込孔IHの第2対向面IH2に引っかかる状態となる場合である。
【0075】
制御装置30は、ステップS4の処理において傾斜角度θが限界値θfmaxとなったと判定した場合(ステップS4:YES)には、処理をステップS5へと進める。すなわち、制御装置30は、傾斜角度θが限界値θfmaxに到達した場合にステップS7の処理を実行しない。
【0076】
制御装置30は、ステップS7の処理において、戻し処理を実行する。以下、ステップS7を戻し処理S7と記載する。戻し処理S7は、傾動装置を制御することによりフォーク23を所定角度だけ後傾させる処理である。所定角度は、例えば制御装置30の記憶部32に記憶されている。戻し処理S7において、目標位置姿勢演算部37は、記憶部32に記憶された所定角度を参照する。戻し処理S7において、目標位置姿勢演算部37は、読み込んだ目標傾斜角度θ※を所定角度に置き換える。戻し処理S7において、制御装置30は、目標位置姿勢演算部37で所定角度に置き換えた目標傾斜角度θ※に基づいて電圧値θV※を演算する。戻し処理S7を実行しているとき、目標位置姿勢演算部37は、電圧値LV※をリフト操作部162が操作されていないときの電圧値LVに置き換える。また、戻し処理S7を実行しているとき、目標位置姿勢演算部37は、電圧値RV※をリーチ操作部161が操作されていないときの電圧値RVに置き換える。さらに、戻し処理S7を実行しているとき、目標位置姿勢演算部37は、電圧値VV※をアクセル操作部164が操作されていないときの電圧値VVに置き換える。すなわち、戻し処理S7において、制御装置30は、傾動装置のみを制御する。制御装置30は、戻し処理S7を実行すると、処理をステップS8へと進める。
【0077】
制御装置30は、ステップS8の処理において、傾斜角度θが「0」であるか否かを判定する。すなわち、制御装置30は、ステップS8の処理において、フォーク23の差込部231が水平であるか否かを判定する。制御装置30は、目標位置姿勢演算部37に入力された傾斜角度θが「0」であると判定した場合(ステップS8:YES)には、処理をステップS9へと進める。制御装置30は、ステップS8の処理において、目標位置姿勢演算部37に入力された傾斜角度θが「0」ではないと判定した場合(ステップS8:NO)には、処理をステップS10へと進める。
【0078】
制御装置30は、ステップS10の処理において、フォーク23が前傾しているか否かを判定する。ステップS10の処理において、目標位置姿勢演算部37は、傾斜角度θが「0」よりも小さい値であるか否かを判定している。制御装置30は、ステップS10の処理において、傾斜角度θが「0」よりも小さい値である場合にフォーク23が前傾していると判定する。制御装置30は、ステップS10の処理において傾斜角度θが「0」よりも大きい値である場合にフォーク23が前傾していないと判定する。換言すると、制御装置30は、ステップS10の処理において傾斜角度θが「0」よりも大きい値である場合にフォーク23が後傾していると判定する。制御装置30は、ステップS10の処理において、フォーク23が前傾していると判定した場合(ステップS10:YES)には、処理をステップS5へと進める。制御装置30は、ステップS10の処理において、フォーク23が前傾していないと判定した場合(ステップS10:NO)には、処理をステップS11へと進める。
【0079】
制御装置30は、ステップS5,S9,S11の処理において、フォーク23の差込部231を差込孔IHから抜き出す引き抜き処理を実行する。以下、ステップS5,S9,S11の各々を引き抜き処理S5,S9,S11と記載する。制御装置30は、引き抜き処理S5,S9,S11を実行すると、フォーク23を差込孔IHから適切に抜き出すための処理を終了する。引き抜き処理S5,S9,S11の詳細は、後ほど説明する。
【0080】
<載置面の状態、フォークの傾き、検出センサの第1対向面への接触状態の関係性>
図7、
図8、及び
図9には、荷置き作業時にフォーク23の差込部231が水平である場合を記載している。
図10、
図11、及び
図12には、荷置き作業時にフォーク23が後傾している場合を記載している。
【0081】
図7~
図12に示すように、載置面TBは、トラックTのサスペンションの沈み具合によって水平を維持しているときもあれば、トラックTの車幅方向Tdに対して傾斜しているときもある。
【0082】
図7及び
図10に示すように、載置面TBが水平を維持している場合、差込孔IHもトラックTの車幅方向へ水平に延びる。
図7に示すように、差込部231が水平な状態でパレットPが水平な載置面TBに載置された時点では、検出センサ52は、第1対向面IH1に接触している。
【0083】
図10に示すように、差込部231が後傾した状態でパレットPが水平な載置面TBに載置された時点では、検出センサ52は、第1対向面IH1から離れている。
図8及び
図11に示すように、差込部231の基端から先端に向かう方向において、載置面TBが差込部231の先端に近づくように傾斜している場合、差込孔IHは載置面TBに合わせて後傾する。
【0084】
図8に示すように、差込部231が水平な状態でパレットPが後傾した載置面TBに載置された時点では、検出センサ52は、第1対向面IH1に接触している。
図11に示すように、差込部231が後傾した状態でパレットPが後傾した載置面TBに載置された時点では、検出センサ52は、第1対向面IH1に接触している。
【0085】
図9及び
図12に示すように、差込部231の基端から先端に向かう方向において、載置面TBが差込部231の先端から離れるように傾斜している場合、差込孔IHは載置面TBに合わせて前傾する。
【0086】
図9に示すように、差込部231が水平な状態でパレットPが前傾した載置面TBに載置された時点では、検出センサ52は、第1対向面IH1から離れている。
図12に示すように、差込部231が後傾した状態でパレットPが前傾した載置面TBに載置された時点では、検出センサ52は、第1対向面IH1から離れている。
【0087】
<載置面の状態、及び停止処理の関係性>
以下、載置面TBの状態、及び停止処理S2との関係性について説明する。
例えば、
図13に示すように、差込部231が水平な状態でパレットPが後傾した載置面TBに載置された時点では、検出センサ52は、第1対向面IH1に接触している。このとき、荷置き作業におけるフォーク23の下降は継続される。そして、
図13の二点鎖線で示すように、フォーク23が下降して検出センサ52が第1対向面IH1から離れると、停止処理S2が実行される。なお、
図13に示す載置面TBの状態及びフォーク23の状態は、
図8に示す載置面TBの状態及びフォーク23の状態と同じである。
【0088】
図7、
図8及び
図11に示すように、パレットPが載置面TBに載置された時点で検出センサ52が第1対向面IH1に接触している場合には、荷置き作業におけるフォーク23の下降は継続される。そして、検出センサ52が第1対向面IH1から離れると、停止処理S2が実行される。
【0089】
図9、
図10、及び
図12に示すように、パレットPが載置面TBに載置された時点で検出センサ52が第1対向面IH1から離れている場合には、パレットPが載置面TBに載置された時点で停止処理S2が実行される。
【0090】
このように、停止処理S2は、荷置き作業において検出センサ52が第1対向面IH1から離れない限りはフォーク23の下降を継続する処理である。そして、停止処理S2は、検出センサ52が第1対向面IH1から離れたとき、荷置き作業におけるフォーク23の下降を停止する処理である。
【0091】
<差込孔の傾き、及び前傾処理>
例えば、
図13に示した停止処理S2の後に実行する前傾処理S3について説明する。
図14に示すように、前傾処理S3は、傾斜角度θが限界値θfmaxとなるまでフォーク23を前傾させるべくティルトロッド27をシリンダチューブ26aに対して没入させる処理である。しかし、差込孔IHが後傾している場合、傾斜角度θが限界値θfmaxに到達する前に差込部231の先端が第2対向面IH2に必ず接触する。このため、差込孔IHが後傾している場合、
図14の破線で示すように、ティルトロッド27の先端27aが、フィンガバー28から必ず離れた状態となる。すなわち、差込部231の先端が第2対向面IH2に接触しつつ、ティルトロッド27がシリンダチューブ26aに対して没入すると、フォーク23の前傾が停止するため、傾斜角度θの変化が無くなる。
【0092】
図7及び
図10に示すように、差込孔IHが水平に延びている場合であっても、前傾処理S3を実行すると、傾斜角度θが限界値θfmaxに到達する前に差込部231の先端が第2対向面IH2に必ず接触する。このため、ティルトロッド27の先端27aが、フィンガバー28から必ず離れた状態となる。すなわち、差込部231の先端が第2対向面IH2に接触しつつ、ティルトロッド27がシリンダチューブ26aに対して没入すると、フォーク23の前傾が停止するため、傾斜角度θの変化が無くなる。
【0093】
図9及び
図12に示すように、差込孔IHが前傾している場合、載置面TBの前傾度合いによって、傾斜角度θが限界値θfmaxに到達することがあり得る。すなわち、載置面TBが大きく前傾している場合、傾斜角度θが限界値θfmaxに到達するまで差込部231の先端が第2対向面IH2に接触しない可能性がある。制御装置30が実行するステップS4は、載置面TBが大きく前傾した状態を想定して実行される処理である。
【0094】
<戻し処理>
例えば、
図14に示した前傾処理S3の後に実行する戻し処理S7について説明する。
図15に示すように、戻し処理S7は、前傾処理S3の後に所定角度だけフォーク23を後傾させるためにティルトロッド27をシリンダチューブ26aから突出させる処理である。戻し処理S7は、差込部231の先端が第2対向面IH2に接触しない状態とする処理である。所定角度は、例えば1度である。所定角度は、フォーク23の差込部231の先端が第2対向面IH2に接触している状態からフォーク23を後傾させたときに検出センサ52が第1対向面IH1に接触しないことを予め確認して設定される値である。
【0095】
また、所定角度は、フォーク23の差込部231の先端が第2対向面IH2に接触している状態からフォーク23を後傾させたときに差込部231の先端が第1対向面IH1に接触しないことを予め確認して設定される値である。
【0096】
なお、上述した戻し処理S7の説明は、差込孔IHが後傾している場合を想定しているが、戻し処理S7は、差込孔IHが水平である場合、又は差込孔IHが前傾している場合であっても同様である。換言すると、戻し処理S7における所定角度の設定の仕方は、差込孔IHの傾斜具合が変わっても同じである。すなわち、差込孔IHの傾斜具合に関わらず、戻し処理S7は、差込部231又は検出センサ52が第1対向面IH1に接触しないようにフォーク23を後傾させる処理である。
【0097】
<引き抜き処理>
引き抜き処理S5,S9,S11の各々について説明する。
引き抜き処理S5,S9,S11は、戻し処理S7の後、又は前傾処理S3で傾斜角度θが限界値θfmaxに到達した後に実行する処理である。引き抜き処理S5,S9,S11において、目標位置姿勢演算部37は、電圧値VV※をアクセル操作部164が操作されていないときの電圧値VVに置き換える。引き抜き処理S5,S9,S11において、目標位置姿勢演算部37は、電圧値θV※をティルト操作部163が操作されていないときの電圧値θVに置き換える。すなわち、引き抜き処理S5,S9,S11が実行されているときは傾動装置及び走行モータ15は動作しない。
【0098】
図16に示すように、引き抜き処理S5は、フォーク23が前傾しているときに差込部231の差込孔IHの入口IHinに対する位置SPが変化しないように差込部231を差込孔IHから抜き出す処理である。引き抜き処理S5は、マスト21をリーチインさせつつ、フォーク23を速度Ps1で上昇させる処理である。速度Ps1は、差込部231を差込孔IHから抜き出すときに位置SPが変化しないように設定されている。
【0099】
制御装置30の記憶部32には、マスト21のリーチインする速度と、フォーク23の傾斜角度θと、速度Ps1との相関を示す数式又はマップが記憶されている。引き抜き処理S5において、目標位置姿勢演算部37は、演算された移動量PRからマスト21のリーチインの速度を演算する。引き抜き処理S5において、目標位置姿勢演算部37は、演算されたマスト21のリーチインの速度と、演算された傾斜角度θとを上記の数式又はマップを参照することにより速度Ps1を演算する。引き抜き処理S5において、目標位置姿勢演算部37は、演算された速度Ps1を実現するための目標フォーク高さPL※を演算する。引き抜き処理S5において、目標位置姿勢演算部37は、速度Ps1を実現する目標フォーク高さPL※に基づいて演算された電圧値LV※を内部コントローラ33に出力する。引き抜き処理S5において、内部コントローラ33は、速度Ps1を実現するための電圧値LV※に応じた指令値を油圧機構40に出力する。引き抜き処理S5において、目標位置姿勢演算部37は、目標マスト位置PR※に基づいて演算された電圧値RV※を内部コントローラ33に出力する。引き抜き処理S5において、内部コントローラ33は、電圧値RV※に応じた指令値を油圧機構40に出力する。このため、引き抜き処理S5では、マスト21がリーチインしつつも、フォーク23は速度Ps1で上昇する。よって、引き抜き処理S5は、制御装置30が昇降装置及び移動装置を制御することにより差込部231を差込孔IHから抜き出す処理である。
【0100】
図17に示すように、引き抜き処理S11は、フォーク23が後傾しているときに差込部231の差込孔IHの入口IHinに対する位置SPが変化しないように差込部231を差込孔IHから抜き出す処理である。引き抜き処理S11は、マスト21をリーチインさせつつ、フォーク23を速度Ps2で下降させる処理である。速度Ps2は、差込部231を差込孔IHから抜き出すときに位置SPが変化しないように設定されている。
【0101】
制御装置30の記憶部32には、マスト21のリーチインする速度と、フォーク23の傾斜角度θと、速度Ps2との相関を示す数式又はマップが記憶されている。引き抜き処理S11において、目標位置姿勢演算部37は、演算された移動量PRからマスト21のリーチインの速度を演算する。引き抜き処理S11において、目標位置姿勢演算部37は、演算されたマスト21のリーチインの速度と、演算された傾斜角度θとを上記の数式又はマップを参照することにより速度Ps2を演算する。引き抜き処理S11において、目標位置姿勢演算部37は、演算された速度Ps2を実現するための目標フォーク高さPL※を演算する。引き抜き処理S11において、目標位置姿勢演算部37は、速度Ps1を実現する目標フォーク高さPL※に基づいて演算された電圧値LV※を内部コントローラ33に出力する。引き抜き処理S11において、内部コントローラ33は、速度Ps2を実現するための電圧値LV※に応じた指令値を油圧機構40に出力する。引き抜き処理S11において、目標位置姿勢演算部37は、目標マスト位置PR※に基づいて演算された電圧値RV※を内部コントローラ33に出力する。引き抜き処理S11において、内部コントローラ33は、電圧値RV※に応じた指令値を油圧機構40に出力する。このため、引き抜き処理S11では、マスト21がリーチインしつつも、フォーク23は速度Ps2で下降する。よって、引き抜き処理S11は、制御装置30が昇降装置及び移動装置を制御することにより差込部231を差込孔IHから抜き出す処理である。
【0102】
図示しないが、引き抜き処理S9は、フォーク23が水平であるときに差込部231の差込孔IHの入口IHinに対する位置SPが変化しないように差込部231を差込孔IHから抜き出す処理である。引き抜き処理S9は、マスト21をリーチインさせる処理である。
【0103】
引き抜き処理S9において、目標位置姿勢演算部37は、目標マスト位置PR※に基づいて演算された電圧値RV※を内部コントローラ33に出力する。引き抜き処理S9において、内部コントローラ33は、電圧値RV※に応じた指令値を油圧機構40に出力する。引き抜き処理S9において、目標位置姿勢演算部37は、電圧値LV※をリフト操作部162が操作されていないときの電圧値VVに置き換える。このため、引き抜き処理S9は、制御装置30が移動装置を制御することにより差込部231を差込孔IHから抜き出す処理である。したがって、引き抜き処理S5,S9,S11は、位置SPが変化しないように昇降装置及び移動装置のうち少なくとも移動装置を制御することにより差込部231を差込孔IHから抜き出す処理である。
【0104】
<本実施形態の作用>
本実施形態の作用を説明する。
停止処理S2により、検出センサ52が第1対向面IH1に接触していない状態でフォーク23の下降が停止する。したがって、停止処理S2により、差込部231の根元は第1対向面IH1から離れる。停止処理S2の後の前傾処理S3では、傾斜角度θが限界値θfmaxとなるまでフォーク23を前傾させるため、多くの場合は、限界値θfmaxに到達する前にフォーク23の先端が第2対向面IH2に接触する。そして、前傾処理S3の後の戻し処理S7により、第2対向面IH2に接触していた差込部231の先端を第2対向面IH2から離すことができる。なお、前傾処理S3において傾斜角度θが限界値θfmaxに到達した場合、差込部231の先端が第2対向面IH2に押し付けられていない。このため、前傾処理S3において傾斜角度θが限界値θfmaxに到達した場合、戻し処理S7を実行しない。これらの結果、フォーク23の根元を第1対向面IH1から離すことができるとともに、フォーク23の先端を第2対向面IH2から離すことができる。よって、差込孔IHからフォーク23を抜き出す前にフォーク23と、第1対向面IH1及び第2対向面IH2の各々との接触が抑制される。そして、引き抜き処理S5,S9,S11を実行することにより差込部231が差込孔IHを形成する面に接触することなく差込孔IHから抜き出される。
【0105】
<本実施形態の効果>
本実施形態の効果を説明する。
(1)停止処理S2、前傾処理S3、及び戻し処理S7を実行することにより差込孔IHからフォーク23を抜き出す前にフォーク23と差込孔IHを形成する面との接触を抑制することができる。
【0106】
(2)引き抜き処理S5,S9,S11により、第1対向面IH1及び第2対向面IH2の各々に差込部231が接触しない状態を維持しつつ、差込孔IHから差込部231を抜き出すことができる。よって、第1対向面IH1及び第2対向面IH2にフォーク23が引っかかることがなくなるため、差込孔IHからのフォーク23の引き抜きを好適に実行できる。
【0107】
(3)前傾処理S3を実行しているときに差込部231が第2対向面IH2に接触すると、差込部231は第2対向面IH2に接触したままティルトロッド27がフィンガバー28から離れるようにシリンダチューブ26aに没入する。すなわち、フォーク23の傾斜角度θの変化が無くなった状態となったときに差込部231が第2対向面IH2に押し付けられない。したがって、戻し処理S7を実行する前にフォーク23に必要以上に応力が作用することを抑制できる。
【0108】
(4)載置面TBが傾斜した状態であっても、差込部231が差込孔IHから抜き出されるときに、差込部231がパレットPを引き摺ることがない。
(5)ティルトセンサ56は、フォークリフト10に通常搭載されているセンサである。よって、既存のセンサを使用して、傾斜角度θの変化を観察することにより差込部231が第2対向面IH2に接触していることを検知することができる。よって、差込部231が第2対向面IH2に接触していることを検出する新規のセンサを追加する必要がないため、フォークリフト10のコストを増加しない。
【0109】
<変更例>
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施できる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0110】
○ ティルトロッド27の先端27aは、フィンガバー28ではなく、リフトブラケット22に接離可能であってもよい。ティルトロッド27の先端27aは、取付部に接離可能であれば、接離する対象は適宜変更してもよい。
【0111】
○ ティルトロッド27の先端27aは、フィンガバー28又はリフトブラケット22に固定されていてもよい。この場合、キャリッジ100は、ティルトロッド27の支えがない状態において、フォーク23は自重で前傾するように重心を設定する必要はない。
【0112】
○ フォークリフト10は、カウンタ型のフォークリフトであってもよい。この場合、フォーク23の傾動は、ティルトシリンダ26の油圧の変化によってマスト21が傾動することにより実現されてもよい。このように変更する場合、リフトブラケット22は、マスト21に固定されているとよい。ティルトセンサ56は、マスト21の傾斜角度をフォーク23の傾斜角度θとして検出する。
【0113】
○ 制御装置30が実行する処理から、ステップS8の処理、ステップS10の処理、及び引き抜き処理S5,S9,S11を割愛してもよい。制御装置30は、ステップS4で傾斜角度θが限界値θfmaxとなったと判定した場合(ステップS4:YES)と、戻し処理S7を実行した場合には、処理を終了してもよい。すなわち、差込部231を差込孔IHから抜き出す作業は、乗員によって行われるように変更してもよい。
【0114】
○ 荷置き作業において、フォーク23を下降させる処理は、制御装置30が自動で実行していたが、乗員により実行されてもよい。この場合、荷置き作業において乗員がリフト操作部162の操作によりフォーク23を下降させている途中で検出センサ52が第1対向面IH1から離れたとき、乗員によりリフト操作部162の操作に関わらず、停止処理S2を実行するとよい。
【0115】
○ 荷取り作業は、乗員により実行されてもよい。
○ 荷取り作業及び荷置き作業において、マスト21がリーチアウト及びリーチインされていたが、例えば、走行モータ15によりフォークリフト10を前後に移動させることでフォーク23を前後に移動させてもよい。すなわち、走行モータ15を移動装置としてもよい。走行モータ15を移動装置とする場合、引き抜き処理S5,S9,S11におけるマスト21のリーチインの動作は、フォークリフト10の後進に置き換わる。そして、速度Ps1,Ps2を演算するために使用する数式又はマップは、フォークリフト10の速度と、フォーク23の傾斜角度θと、速度Ps1,Ps2との相関を示すものに変更する。
【0116】
走行モータ15、リーチシリンダ24、及び油圧機構40を移動装置としてもよい。走行モータ15、リーチシリンダ24、及び油圧機構40を移動装置とする場合、引き抜き処理S5,S9,S11では、マスト21のリーチインの動作だけでなくフォークリフト10の後進が追加される。そして、速度Ps1,Ps2を演算するために使用する数式又はマップは、マスト21のリーチインする速度と、フォークリフト10の速度と、フォーク23の傾斜角度θと、速度Ps1,Ps2との相関を示すものに変更する。
【0117】
○ 差込孔IHは、パレットPに形成された孔であってもよい。この場合、差込孔IHを形成する面のうち、差込部231の第1面231aに対向する面を第1対向面IH1とし、差込部231の第2面231bに対向する面を第2対向面IH2とする。
【符号の説明】
【0118】
10…フォークリフト、11…車体、15…走行モータ、22…リフトブラケット、23…フォーク、24…リーチシリンダ、25…リフトシリンダ、26…ティルトシリンダ、26a…シリンダチューブ、27…ティルトロッド、27a…ティルトロッドの先端、28…フィンガバー、30…制御装置、40…油圧機構、52…検出センサ、56…ティルトセンサ、231…差込部、IH…差込孔、IH1…第1対向面、IH2…第2対向面、IHin…差込孔の入口、P…パレット、TB…載置面、θ…傾斜角度、θfmax…限界値、Sθ…ティルトセンサの信号、S2…停止処理、S3…前傾処理、S7…戻し処理、SP…差込部の差込孔の入口に対する位置、S5,S9,S11…引き抜き処理。