(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/48 20060101AFI20250311BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20250311BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20250311BHJP
【FI】
H01L23/48 H
H01L25/04 C
(21)【出願番号】P 2022032148
(22)【出願日】2022-03-02
【審査請求日】2024-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】土持 真悟
(72)【発明者】
【氏名】川島 崇功
【審査官】相澤 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-212645(JP,A)
【文献】特開2010-10537(JP,A)
【文献】国際公開第2016/108261(WO,A1)
【文献】特開2021-93503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/48
H01L 25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面に設けられた第1主電極(40D)と、前記一面とは板厚方向において反対の裏面に設けられた第2主電極(40S)と、を有する半導体素子(40)と、
絶縁基材(51)と、前記絶縁基材の表面に配置され、前記第1主電極に電気的に接続された表面金属体(52)と、前記絶縁基材において前記表面とは反対の面に配置された裏面金属体(53)と、を有する基板(50)と、
前記第1主電極と前記表面金属体との間に介在し、前記第1主電極と前記表面金属体とを接合する接合材(100)と、
前記表面金属体との間に固相接合部(120)を形成する主端子(91,92,93)と、
前記固相接合部を覆うように前記表面金属体および前記主端子上に設けられためっき膜(130)と、を備え、
前記主端子は、
前記表面金属体との間に形成される前記固相接合部がひとつであり、
前記板厚方向の平面視における前記表面金属体との重なり領域として、前記固相接合部を提供する接合領域(912)と、前記接合領域を除く領域であり、前記主端子の少なくとも幅方向において前記接合領域に隣接して設けられた非接合領域(913)と、を有し、
前記重なり領域の幅が、前記固相接合部の幅よりも広くされた、
幅広端子(91,93)を含む、半導体装置。
【請求項2】
前記半導体素子、前記表面金属体を含む前記基板の少なくとも一部、前記接合材、および前記固相接合部を含む前記主端子の一部を封止する封止体(30)を備える、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記固相接合部は、超音波接合部である、請求項1または請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記非接合領域は、前記接合領域よりも厚い部分を含む、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記板厚方向および前記幅方向に直交する方向において、前記半導体素子と前記幅広端子とが並んでいる、請求項1~4いずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記非接合領域は、前記幅方向に対して、前記直交する方向の前記半導体素子側に小さい、請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記幅広端子の前記非接合領域と前記表面金属体との隙間が、30μm以下である、請求項1~6いずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記非接合領域は、前記接合領域を囲んでいる、請求項1~7いずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記非接合領域は、前記接合領域を全周で囲んでいる、請求項8に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、半導体装置を開示している。この半導体装置は、基板(絶縁基板)、両面に主電極を有する半導体素子、および主端子(外部接続用端子)を備える。半導体素子の主電極のひとつは、半田層を介して基板の表面金属体(金属箔)に接続されている。主端子は、超音波接合などによって表面金属体に接続されている。先行技術文献の記載内容は、この明細書における技術的要素の説明として、参照により援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板に主端子を接合する構成では、接合部付近の電界集中により主端子の耐久寿命が低下する虞がある。また、半田層の濡れ性や主端子の接合性などを考慮し、主端子を表面金属体に接合した後に、めっき膜を施すことが考えられる。この場合、めっき液残渣が生じ、後工程でめっき液が染み出すことで、半田層の濡れ性低下などを引き起こす虞がある。上記した観点において、または言及されていない他の観点において、半導体装置にはさらなる改良が求められている。
【0005】
開示されるひとつの目的は、主端子の耐久寿命を向上しつつ、めっき液残渣による不具合を抑制できる半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示された半導体装置は、
一面に設けられた第1主電極(40D)と、一面とは板厚方向において反対の裏面に設けられた第2主電極(40S)と、を有する半導体素子(40)と、
絶縁基材(51)と、絶縁基材の表面に配置され、第1主電極に電気的に接続された表面金属体(52)と、絶縁基材において表面とは反対の面に配置された裏面金属体(53)と、を有する基板(50)と、
第1主電極と表面金属体との間に介在し、第1主電極と表面金属体とを接合する接合材(100)と、
表面金属体との間に固相接合部(120)を形成する主端子(91,92,93)と、
固相接合部を覆うように表面金属体および主端子上に設けられためっき膜(130)と、を備え、
主端子は、
表面金属体との間に形成される固相接合部がひとつであり、
板厚方向の平面視における表面金属体との重なり領域として、固相接合部を提供する接合領域(912)と、接合領域を除く領域であり、主端子の少なくとも幅方向において接合領域に隣接して設けられた非接合領域(913)と、を有し、
重なり領域の幅が、固相接合部の幅よりも広くされた、
幅広端子(91,93)を含む。
【0007】
開示された半導体装置によれば、主端子が幅広端子を含む。幅広端子は、非接合領域を有している。非接合領域は、少なくとも幅方向において接合領域に隣接している。これにより重なり領域の幅が、固相接合部の幅よりも広い。よって、電界集中を抑制し、ひいては主端子(幅広端子)の耐久寿命を向上することができる。
【0008】
また、めっき膜は、固相接合部を覆うように設けられている。つまり、固相接合した後に、めっき膜が形成されている。しかしながら、幅広端子が表面金属体との間に有する固相接合部はひとつである。非接合領域は、側方に開口している。よって、非接合領域と表面金属体との間にめっき液が入り込んだとしても、めっき液が排出されやすい。めっき液は、非接合領域と表面金属体との間に留まり難い。よって、めっき液残渣が生じるのを抑制することができる。めっき液残渣の抑制により、たとえば半導体素子と表面金属体との接続信頼性の低下を抑制することができる。このように、めっき液残渣による不具合を抑制することができる。
【0009】
この明細書における開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。この明細書に開示される目的、特徴、および効果は、後続の詳細な説明、および添付の図面を参照することによってより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る半導体装置が適用される電力変換装置の回路構成を示す図である。
【
図7】
図3のVII-VII線に沿う断面図である。
【
図8】ドレイン電極側の基板とリードフレームとを接合した状態を示す斜視図である。
【
図9】ドレイン電極側の基板と主端子との接続構造を示す平面図である。
【
図19】第2実施形態に係る半導体装置において、主端子と表面金属体との接合部周辺を拡大した斜視図である。
【
図21】超音波接合のプロセスを示す断面図である。
【
図22】第3実施形態に係る半導体装置の製造方法において、主端子と表面金属体との超音波接合を示す断面図である。
【
図25】第4実施形態に係る半導体装置において、主端子と表面金属体との接合部周辺を示す断面図である。
【
図26】第5実施形態に係る半導体装置において、裏面金属体の分離部周辺を示す断面図である。
【
図27】裏面金属体のパターンの一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて複数の実施形態を説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合せることができる。
【0012】
本実施形態の半導体装置は、たとえば、回転電機を駆動源とする移動体の電力変換装置に適用される。移動体は、たとえば、電気自動車(BEV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)などの電動車両、電動垂直離着陸機やドローンなどの飛行体、船舶、建設機械、農業機械である。以下では、車両に適用される例について説明する。
【0013】
(第1実施形態)
まず、
図1に基づき、車両の駆動システム1の概略構成について説明する。
【0014】
<車両の駆動システム>
図1に示すように、車両の駆動システム1は、直流電源2と、モータジェネレータ3と、電力変換装置4を備えている。
【0015】
直流電源2は、充放電可能な二次電池で構成された直流電圧源である。二次電池は、たとえばリチウムイオン電池、ニッケル水素電池である。モータジェネレータ3は、三相交流方式の回転電機である。モータジェネレータ3は、車両の走行駆動源、すなわち電動機として機能する。モータジェネレータ3は、回生時に発電機として機能する。電力変換装置4は、直流電源2とモータジェネレータ3との間で電力変換を行う。
【0016】
<電力変換装置>
次に、
図1に基づき、電力変換装置4の回路構成について説明する。電力変換装置4は、電力変換回路を備えている。本実施形態の電力変換装置4は、平滑コンデンサ5と、電力変換回路であるインバータ6を備えている。
【0017】
平滑コンデンサ5は、主として、直流電源2から供給される直流電圧を平滑化する。平滑コンデンサ5は、高電位側の電源ラインであるPライン7と低電位側の電源ラインであるNライン8とに接続されている。Pライン7は直流電源2の正極に接続され、Nライン8は直流電源2の負極に接続されている。平滑コンデンサ5の正極は、直流電源2とインバータ6との間において、Pライン7に接続されている。平滑コンデンサ5の負極は、直流電源2とインバータ6との間において、Nライン8に接続されている。平滑コンデンサ5は、直流電源2に並列に接続されている。
【0018】
インバータ6は、DC-AC変換回路である。インバータ6は、図示しない制御回路によるスイッチング制御にしたがって、直流電圧を三相交流電圧に変換し、モータジェネレータ3へ出力する。これにより、モータジェネレータ3は、所定のトルクを発生するように駆動する。インバータ6は、車両の回生制動時、車輪からの回転力を受けてモータジェネレータ3が発電した三相交流電圧を、制御回路によるスイッチング制御にしたがって直流電圧に変換し、Pライン7へ出力する。このように、インバータ6は、直流電源2とモータジェネレータ3との間で双方向の電力変換を行う。
【0019】
インバータ6は、三相分の上下アーム回路9を備えて構成されている。上下アーム回路9は、レグと称されることがある。上下アーム回路9は、上アーム9Hと、下アーム9Lをそれぞれ有している。上アーム9Hおよび下アーム9Lは、上アーム9HをPライン7側として、Pライン7とNライン8との間で直列接続されている。上アーム9Hと下アーム9Lとの接続点は、出力ライン10を介して、モータジェネレータ3における対応する相の巻線3aに接続されている。インバータ6は、6つのアームを有している。各アームは、スイッチング素子を備えて構成されている。Pライン7、Nライン8、および出力ライン10それぞれの少なくとも一部は、たとえばバスバーなどの導電部材により構成される。
【0020】
本実施形態では、各アームを構成するスイッチング素子として、nチャネル型のMOSFET11を採用している。各アームを構成するスイッチング素子の数は特に限定されない。ひとつでもよいし、複数でもよい。MOSFETは、Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistorの略称である。
【0021】
一例として、本実施形態では、各アームがひとつのMOSFET11を有している。上アーム9Hにおいて、MOSFET11のドレインが、Pライン7に接続されている。下アーム9Lにおいて、MOSFET11のソースが、Nライン8に接続されている。上アーム9HにおけるMOSFET11のソースと、下アーム9LにおけるMOSFET11のドレインが、相互に接続されている。
【0022】
MOSFET11のそれぞれには、還流用のダイオード12が逆並列に接続されている。ダイオード12は、MOSFET11の寄生ダイオード(ボディダイオード)でもよいし、寄生ダイオードとは別に設けたものでもよい。ダイオード12のアノードは対応するMOSFET11のソースに接続され、カソードはドレインに接続されている。
【0023】
なお、スイッチング素子は、MOSFET11に限定されない。たとえばIGBTを採用してもよい。IGBTは、Insulated Gate Bipolar Transistorの略称である。IGBTにも、還流用のダイオードが逆並列に接続される。
【0024】
電力変換装置4は、電力変換回路として、コンバータをさらに備えてもよい。コンバータは、直流電圧を異なる値の直流電圧に変換するDC-DC変換回路である。コンバータは、直流電源2と平滑コンデンサ5との間に設けられる。コンバータは、たとえばリアクトルと、上記した上下アーム回路9を備えて構成される。この構成によれば、昇降圧が可能である。電力変換装置4は、直流電源2からの電源ノイズを除去するフィルタコンデンサを備えてもよい。フィルタコンデンサは、直流電源2とコンバータとの間に設けられる。
【0025】
電力変換装置4は、インバータ6などを構成するスイッチング素子の駆動回路を備えてもよい。駆動回路は、制御回路の駆動指令に基づいて、対応するアームのMOSFET11のゲートに駆動電圧を供給する。駆動回路は、駆動電圧の印加により、対応するMOSFET11を駆動、すなわちオン駆動、オフ駆動させる。駆動回路は、ドライバと称されることがある。
【0026】
電力変換装置4は、スイッチング素子の制御回路を備えてもよい。制御回路は、MOSFET11を動作させるための駆動指令を生成し、駆動回路に出力する。制御回路は、たとえば図示しない上位ECUから入力されるトルク要求、各種センサにて検出された信号に基づいて、駆動指令を生成する。ECUは、Electronic Control Unitの略称である。
【0027】
各種センサとして、たとえば電流センサ、回転角センサ、電圧センサがある。電流センサは、各相の巻線3aに流れる相電流を検出する。回転角センサは、モータジェネレータ3の回転子の回転角を検出する。電圧センサは、平滑コンデンサ5の両端電圧を検出する。制御回路は、駆動指令として、たとえばPWM信号を出力する。制御回路は、たとえばプロセッサおよびメモリを備えて構成されている。PWMは、Pulse Width Modulationの略称である。
【0028】
<半導体装置>
次に、
図2~
図8に基づき、半導体装置の概略構成について説明する。
図2は、半導体装置の斜視図である。
図3は、半導体装置を示す平面図である。
図3では、封止体に覆われた要素を破線で示している。
図4は、ドレイン電極側の基板を示す平面図である。
図5は、ソース電極側の基板を示す平面図である。
図4および
図5は、表面金属体のパターンを示している。
図4および
図5では、表面金属体との位置関係を示すために、半導体素子、導電スペーサ、基板接続部を二点鎖線で示している。
図6は、
図3のVI-VI線に沿う断面図である。
図7は、
図3のVII-VII線に沿う断面図である。
図8は、ドレイン電極側の基板にリードフレームを接合した状態を示す斜視図である。
【0029】
以下では、半導体素子(半導体基板)の板厚方向をZ方向とし、半導体素子の並び方向をX方向とする。Z方向およびY方向の両方向に直交する方向をY方向とする。特に断わりのない限り、Z方向から平面視した形状、換言すればX方向およびY方向により規定されるXY面に沿う形状を平面形状とする。
【0030】
図2および
図3に示す半導体装置20は、上下アーム回路9のひとつ、つまり一相分の上下アーム回路9を構成する。半導体装置20は、封止体30と、半導体素子40と、基板50,60と、導電スペーサ70と、基板接続部80,81と、外部接続端子90を備えている。
【0031】
封止体30は、半導体装置20を構成する他の要素の一部を封止している。他の要素の残りの部分は、封止体30の外に露出している。封止体30は、たとえば樹脂を材料とする。樹脂の一例は、エポキシ系樹脂である。封止体30は、樹脂を材料として、たとえばトランスファモールド法により成形されている。このような封止体30は、封止樹脂体、モールド樹脂、樹脂成形体などと称されることがある。封止体30は、たとえばゲルを用いて形成されてもよい。ゲルは、たとえば一対の基板50,60の対向領域に充填(配置)される。
【0032】
図2および
図3に示すように、封止体30は平面略矩形状をなしている。封止体30は、外郭をなす表面として、一面30aと、Z方向において一面30aとは反対の面である裏面30bを有している。一面30aおよび裏面30bは、たとえば平坦面である。また、一面30aと裏面30bとをつなぐ面である側面30c、30d、30e、30fを有している。側面30cは、外部接続端子90のうち、主端子である主端子91,92,93が突出する面である。側面30dは、Y方向において側面30cとは反対の面である。側面30dは、信号端子94が突出する面である。側面30e、30fは、外部接続端子90が突出していない面である。側面30eは、X方向において側面30fとは反対の面である。
【0033】
半導体素子40は、シリコン(Si)、シリコンよりもバンドギャップが広いワイドバンドギャップ半導体などを材料とする半導体基板に、スイッチング素子が形成されてなる。ワイドバンドギャップ半導体としては、たとえばシリコンカーバイド(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga2O3)、ダイヤモンドがある。半導体素子40は、パワー素子、半導体チップなどと称されることがある。
【0034】
本実施形態の半導体素子40は、SiCを材料とする半導体基板に、上記したnチャネル型のMOSFET11が形成されてなる。MOSFET11は、半導体素子40(半導体基板)の板厚方向、つまりZ方向に主電流が流れるように縦型構造をなしている。半導体素子40は、自身の板厚方向であるZ方向の両面に、スイッチング素子の主電極を有している。具体的には、主電極として、一面にドレイン電極40Dを有し、一面とはZ方向において反対の面である裏面にソース電極40Sを有している。主電流は、ドレイン電極40Dとソース電極40Sとの間に流れる。
【0035】
ダイオード12が寄生ダイオードの場合、ソース電極40Sがアノード電極を兼ね、ドレイン電極40Dがカソード電極を兼ねる。ダイオード12は、MOSFET11とは別チップに構成されてもよい。ドレイン電極40Dは高電位側の主電極であり、ソース電極40Sは低電位側の主電極である。
【0036】
半導体素子40は、平面略矩形状、一例として略正方形をなしている。
図3および
図7に示すように、半導体素子40は、裏面に、信号用の電極であるパッド40Pを有している。パッド40Pは、裏面においてソース電極40Sとは異なる位置に形成されている。パッド40Pは、少なくともゲートパッドを含む。本実施形態の半導体素子40は、3つのパッド40Pを有している。一例としてパッド40Pは、ゲート用、ケルビンソース用、電流センス用を含む。ゲート用は、MOSFET11のゲート電極に駆動電圧を印加するためのパッド40Pである。ケルビンソース用は、MOSFET11のソース電位、つまりソース電極40Sの電位を検出するためのパッド40Pである。電流センス用は、主電流に比例するセンス電流を検出し、ひいては主電流を検出するためのパッド40Pである。
【0037】
半導体素子40は、上アーム9Hを構成する半導体素子40Hと、下アーム9Lを構成する半導体素子40Lを含む。半導体素子40H,40Lの構成は、互いに共通である。一例として、半導体素子40H,40Lの個数はそれぞれひとつである。
図3などに示すように、半導体素子40H,40Lは、X方向に並んでいる。各半導体素子40は、Z方向において互いにほぼ同じ位置に配置されている。各半導体素子40のドレイン電極40Dは、基板50に対向している。各半導体素子40のソース電極40Sは、基板60に対向している。
【0038】
基板50,60は、Z方向において、半導体素子40を挟むように配置されている。基板50,60は、Z方向において互いに少なくとも一部が対向するように配置されている。基板50,60は、平面視において半導体素子40(40H,40L)のすべてを内包している。
【0039】
基板50は、半導体素子40に対して、ドレイン電極40D側に配置されている。基板60は、半導体素子40に対して、ソース電極40S側に配置されている。基板50は、後述するようにドレイン電極40Dに電気的に接続され、配線機能を提供する。同様に、基板60は、ソース電極40Sに電気的に接続され、配線機能を提供する。このため、基板50,60は、配線部材、配線基板などと称されることがある。基板50はドレイン基板と称され、基板60はソース基板と称されることがある。基板50,60は、半導体素子40の生じた熱を放熱する放熱機能を提供する。このため、基板50,60は、放熱部材と称されることがある。
【0040】
基板50は、半導体素子40に対向する対向面50aと、対向面50aとは反対の面である裏面50bを有している。基板50は、絶縁基材51と、表面金属体52と、裏面金属体53を備えている。基板60は、半導体素子40に対向する対向面60aと、対向面60aとは反対の面である裏面60bを有している。基板60は、絶縁基材61と、表面金属体62と、裏面金属体63を備えている。以下において、表面金属体52,62、裏面金属体53,63を、単に金属体52,53,62,63と示すことがある。基板50は、絶縁基材51と金属体52,53とが積層された基板である。基板60は、絶縁基材61と金属体62,63とが積層された基板である。
【0041】
絶縁基材51は、表面金属体52と裏面金属体53とを電気的に分離する。同様に、絶縁基材61は、表面金属体62と裏面金属体63とを電気的に分離する。絶縁基材51,61は、絶縁層と称されることがある。絶縁基材51,61の材料は、樹脂、または、無機材料のセラミックである。樹脂としては、たとえばエポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂などを用いることができる。セラミックとしては、たとえばAl2O3(alumina)、Si3N4(silicon nitride)などを用いることができる。絶縁基材51,61が樹脂の場合、基板50、60は、金属樹脂基板と称されることがある。絶縁基材51,61がセラミックの場合、基板50、60は、金属セラミック基板と称されることがある。
【0042】
放熱性や絶縁性を考慮すると、樹脂系の場合、絶縁基材51,61それぞれの厚み、つまりZ方向の長さは、50μm~300μm程度が好ましい。セラミック系の場合、絶縁基材51,61の厚みは、200μm~500μm程度が好ましい。Z方向において、絶縁基材51,61の表面は内面、つまり半導体素子40側の面であり、Z方向において表面と反対の面である裏面は外面である。絶縁基材51,61は、材料構成を共通(同一)としてもよいし、互いに異ならせてもよい。本実施形態では、絶縁基材51,61の材料構成は共通である。
【0043】
金属体52,53,62,63は、たとえば、金属板または金属箔として提供される。金属体52,53,62,63は、Cuなどの導電性、熱伝導性が良好な金属を材料として形成されている。金属体52,53,62,63それぞれの厚みは、たとえば0.1mm~3mm程度である。表面金属体52は、Z方向において、絶縁基材51の表面に配置されている。裏面金属体53は、絶縁基材51の裏面に配置されている。同様に、表面金属体62は、Z方向において、絶縁基材61の表面に配置されている。裏面金属体63は、絶縁基材61の裏面に配置されている。
【0044】
表面金属体52,62と裏面金属体53,63との厚みの関係は特に限定されない。表面金属体52の厚みを、裏面金属体53より厚くしてもよいし、裏面金属体53とほぼ等しくしてもよい。表面金属体52の厚みを、裏面金属体53より薄くしてもよい。同様に、表面金属体62の厚みを、裏面金属体63より厚くしてもよいし、裏面金属体63とほぼ等しくしてもよい。表面金属体62の厚みを、裏面金属体63より薄くしてもよい。表面金属体52,62の厚みの関係も特に限定されないし、裏面金属体53,63の厚みの関係も特に限定されない。
【0045】
表面金属体52,62は、パターニングされている。表面金属体52,62は、配線、つまり回路を提供する。このため、表面金属体52,62は、回路パターン、配線層、回路導体などと称されることがある。表面金属体52の表面と、絶縁基材51の表面における表面金属体52の非配置領域とが、基板50の対向面50aをなしている。同様に、表面金属体62の表面と、絶縁基材61の表面における表面金属体62の非配置領域とが、基板60の対向面60aをなしている。
【0046】
たとえば、プレス加工やエッチングなどにより所定形状にパターニングした表面金属体52,62を準備し、絶縁基材51,61と裏面金属体53,63との二層構造の積層体に密着させて、基板50,60を形成してもよい。表面金属体52,62、絶縁基材51,61、裏面金属体53,63の三層構造の積層体を形成した後、切削やエッチングにより、表面金属体52,62をパターニングしてもよい。
【0047】
表面金属体52は、
図3、
図4、
図6、および
図7に示すように、P配線54と、中継配線55と、N配線56を有している。P配線54、中継配線55、およびN配線56は、所定の間隔(ギャップ)により、互いに電気的に分離されている。このギャップには、封止体30が充填されている。
【0048】
P配線54は、主端子91および半導体素子40Hのドレイン電極40Dに接続されている。P配線54は、主端子91と半導体素子40Hのドレイン電極40Dとを電気的に接続している。一例としてP配線54は、基部541と、延設部542,543を有している。基部541は、平面視において半導体素子40Hを内包している。基部541は、Y方向を長手方向とする平面略矩形状をなしている。
【0049】
延設部542,543は、基部541からY方向に延びている。延設部542,543それぞれのX方向の長さ、つまり幅は、基部541の幅よりも狭い。延設部542,543は、外部接続端子90を含むリードフレーム要素が接続される領域の少なくとも一部を提供する。延設部542は、平面略矩形状をなす基部541の辺のひとつに連なり、延設部543は、延設部542とは反対の辺に連なっている。延設部542には主端子91が接続され、延設部543には後述する支持フレーム98が接続されている。リードフレーム要素は、延設部542,543のみに接続されてもよいし、基部541と延設部542,543とにわたって接続されてもよい。延設部542,543を排除し、リードフレーム要素が基部541に接続される構成としてもよい。
【0050】
中継配線55は、半導体素子40Lのドレイン電極40D、基板接続部80、および主端子93に接続されている。中継配線55は、基板接続部80と半導体素子40Lのドレイン電極40Dとを電気的に接続している。中継配線55は、半導体素子40Hのソース電極40Sおよび半導体素子40Lのドレイン電極40Dと主端子93とを電気的に接続している。一例として中継配線55は、基部551と、延設部552,553,554を有している。基部551は、平面視において半導体素子40Lを内包している。基部551は、Y方向を長手方向とする平面略矩形状をなしている。
【0051】
延設部552,553は、基部551からY方向に延びている。延設部552,553それぞれのX方向の長さ、つまり幅は、基部551の幅よりも狭い。延設部552,553は、外部接続端子90を含むリードフレーム要素が接続される領域の少なくとも一部を提供する。延設部552は、平面略矩形状をなす基部551の辺のひとつに連なり、延設部553は、延設部552とは反対の辺に連なっている。延設部552には主端子93が接続され、延設部553には支持フレーム98が接続されている。リードフレーム要素は、延設部552,553のみに接続されてもよいし、基部551と延設部552,553とにわたって接続されてもよい。延設部552,553を排除し、リードフレーム要素が基部551に接続される構成としてもよい。
【0052】
延設部554は、平面視において基板接続部80を内包している。延設部554は、平面略矩形状をなす基部551の辺のひとつの辺に連なっている。延設部554は、基部551におけるP配線54との対向辺からX方向において基部541側に延びている。Y方向において、延設部554の長さは、基部551の長さよりも短い。中継配線55は、概ね平面略L字状をなしている。
【0053】
N配線56は、基板接続部81および主端子92に接続されている。N配線56は、基板接続部81と主端子92とを電気的に接続している。N配線56は、平面視において基板接続部81を内包している。一例としてN配線56は、Y方向を長手方向とする平面略矩形状をなしている。
【0054】
表面金属体52において、P配線54と中継配線55は、X方向に並んで配置されている。N配線56は、X方向において基部541,551の間に配置されている。N配線56は、Y方向において延設部554と並んでいる。
【0055】
表面金属体62は、N配線64と、中継配線65を有している。N配線64と中継配線65は、所定の間隔(ギャップ)により、電気的に分離されている。このギャップには、封止体30が充填されている。
【0056】
N配線64は、半導体素子40Lのソース電極40Sおよび基板接続部81に接続されている。N配線64は、半導体素子40Lのソース電極40Sと基板接続部81とを電気的に接続している。N配線64は、基板50のN配線56および基板接続部81とともに、半導体素子40Lのソース電極40Sと主端子92とを電気的に接続している。
【0057】
N配線64は、基部641と、延設部642を有している。N配線64は、平面略L字状をなしている。基部641は、Y方向を長手方向とする平面略矩形状をなしている。基部641は、平面視において半導体素子40Lを内包している。延設部642は、平面略矩形状をなす基部641の辺のひとつに連なっている。延設部642は、基部641における中継配線65との対向辺からX方向において基部651側に延びている。延設部642の少なくとも一部は、平面視においてN配線56と重なっている。
【0058】
中継配線65は、半導体素子40Hのソース電極40Sおよび基板接続部80に接続されている。中継配線55は、半導体素子40Hのソース電極40Sと基板接続部80とを電気的に接続している。中継配線65は、基部651と、延設部652を有している。中継配線65は、平面略L字状をなしている。基部651は、平面略矩形状をなしている。基部651は、平面視において半導体素子40Hを内包している。延設部652は、平面略矩形状をなす基部651の辺のひとつに連なっている。延設部652は、基部651におけるN配線64との対向辺から、Y方向において基部641側に延びている。延設部652の少なくとも一部は、平面視において中継配線55の延設部554と重なっている。
【0059】
N配線64と中継配線65は、X方向に並んで配置されている。基部641,651は、X方向に並んでいる。半導体素子40Lのソース電極40Sは、基部641に電気的に接続されている。半導体素子40Hのソース電極40Sは、基部651に電気的に接続されている。延設部642,652は、Y方向に並んでいる。
【0060】
裏面金属体53,63は、絶縁基材51,61により、半導体素子40および表面金属体52,62を含む回路とは電気的に分離されている。裏面金属体53,63は、金属ベース基板と称されることがある。半導体素子40の生じた熱は、表面金属体52,62および絶縁基材51,61を介して、裏面金属体53,63に伝わる。裏面金属体53,63は、放熱機能を提供する。
【0061】
一例として裏面金属体53,63は、平面略矩形状をなしている。裏面金属体53,63は、絶縁基材51,61の裏面のほぼ全域に配置された、いわゆるベタ導体である。これに代えて、裏面金属体53,63を、平面視において表面金属体52,62と略一致するように、パターニングしてもよい。
【0062】
放熱効果をさらに高めるために、裏面金属体53、63の少なくともひとつは、封止体30から露出してもよい。本実施形態では、裏面金属体53が封止体30の一面30aから露出し、裏面金属体63が裏面30bから露出している。裏面金属体53の露出面は、一面30aと略面一である。裏面金属体63の露出面は、裏面30bと略面一である。裏面金属体53,63が、基板50,60の裏面50b,60bをなしている。
【0063】
導電スペーサ70は、半導体素子40と基板60との間に、所定の間隔を確保するスペーサ機能を提供する。導電スペーサ70は、半導体素子40のパッド40Pに、対応する信号端子94を電気的に接続するためのワイヤ高さを確保する。導電スペーサ70は、半導体素子40のソース電極40Sと基板60との電気伝導、熱伝導経路の途中に位置し、配線機能および放熱機能を提供する。導電スペーサ70は、Cuなどの導電性、熱伝導性が良好な金属材料を含んでいる。
【0064】
導電スペーサ70は、ターミナル、ターミナルブロック、金属ブロック体などと称されることがある。半導体装置20は、半導体素子40と同数の導電スペーサ70を備えている。具体的には、2つの導電スペーサ70を備えている。導電スペーサ70は、半導体素子40に個別に接続されている。導電スペーサ70は、平面視においてソース電極40Sとほぼ同じ若しくは若干小さい大きさを有する柱状体である。導電スペーサ70のひとつは、半導体素子40Hのソース電極40Sと中継配線65とを電気的に接続している。導電スペーサ70の他のひとつは、半導体素子40Lのソース電極40SとN配線64とを電気的に接続している。
【0065】
基板接続部80,81は、基板50の表面金属体52と基板60の表面金属体62とを電気的に接続する。つまり、基板同士を接続する。基板接続部80は、中継配線55,65を電気的に接続する。基板接続部80は、X方向において半導体素子40Hと半導体素子40Lの間に設けられている。基板接続部80は、平面視において中継配線55の延設部554と中継配線65の延設部652との重なり領域に設けられている。基板接続部81も、X方向において半導体素子40Hと半導体素子40Lの間に設けられている。基板接続部81は、平面視においてN配線56とN配線64の延設部642との重なり領域に設けられている。
【0066】
一例として基板接続部80,81のそれぞれは、金属柱状体である。Z方向において、基板接続部80の端部のひとつと中継配線55との間に接合材103が介在し、端部の他のひとつと中継配線65との間に接合材103が介在している。Z方向において、基板接続部81の端部のひとつとN配線56との間に接合材103が介在し、端部の他のひとつとN配線64との間に接合材103が介在している。
【0067】
これに代えて、基板接続部80,81は、表面金属体52,62の少なくともひとつに連続的に連なるものでもよい。つまり、基板接続部80,81は、基板50,60の一部として表面金属体52,62と一体的に設けたものでもよい。基板接続部80,81は、接合材103のみを備える構成としてもよい。
【0068】
外部接続端子90は、半導体装置20を外部機器に電気的に接続するための端子である。外部接続端子90は、銅などの導電性が良好な金属材料を用いて形成されている。外部接続端子90は、たとえば板材である。外部接続端子90は、リードと称されることがある。外部接続端子90は、主端子91,92,93と、信号端子94を含む。主端子91,92,93は、半導体素子40の主電極に電気的に接続される外部接続端子90である。信号端子94は、上アーム9H側の信号端子94Hと、下アーム9L側の信号端子94Lを含む。
【0069】
主端子91,92は、上記した電源ライン7、8に電気的に接続される外部接続端子90である。主端子91は、平滑コンデンサ5の正極端子に電気的に接続される。主端子91は、正極端子、高電位電源端子、P端子などと称されることがある。主端子91は、表面金属体52のP配線54に接続されている。つまり、主端子91は、上アーム9Hを構成する半導体素子40Hのドレイン電極40Dに電気的に接続されている。主端子91は、P配線54におけるY方向の一端付近に接続されている。主端子91は、Y方向に延び、側面30cから封止体30の外に突出している。
【0070】
主端子92は、平滑コンデンサ5の負極端子に電気的に接続される。主端子92は負極端子、低電位電源端子、N端子などと称されることがある。主端子92は、表面金属体52のN配線56に接続されている。つまり、主端子92は、下アーム9Lを構成する半導体素子40Lのソース電極40Sに電気的に接続されている。主端子92は、N配線56におけるY方向の一端付近に接続されている。主端子92は、Y方向に延び、側面30cから封止体30の外に突出している。
【0071】
主端子93は、モータジェネレータ3の対応する相の巻線3a(固定子コイル)に電気的に接続される。主端子93は、O端子、交流端子などと称されることがある。主端子93は、表面金属体52の中継配線55に接続されている。つまり、主端子93は、上アーム9Hと下アーム9Lとの接続点に電気的に接続されている。主端子93は、中継配線55におけるY方向の一端付近に接続されている。主端子93は、Y方向に延び、側面30cから封止体30の外に突出している。
【0072】
3本の主端子91,92,93は、X方向に並んで配置されている。主端子91,92,93は、X方向において主端子91、主端子92、主端子93の順に配置されている。隣り合う主端子は、その全長の大部分において側面が対向している。たとえば主端子91の側面と、主端子92の側面が対向している。
【0073】
信号端子94は、ボンディングワイヤ110などの接続部材を介して、対応する半導体素子40のパッド40Pに電気的に接続されている。信号端子94Hは、ボンディングワイヤ110を介して半導体素子40Hのパッド40Pに接続されている。信号端子94Lは、ボンディングワイヤ110を介して半導体素子40Lのパッド40Pに接続されている。信号端子94は、Y方向に延び、側面30dから封止体30の外に突出している。信号端子94は、Y方向において主端子91,92,93とは反対側に延びている。一例として信号端子94は、信号端子94H,94Lをそれぞれ3本含む。
【0074】
外部接続端子90は、
図8に示すようにリードフレーム95の一部として構成されている。リードフレーム95は、外部接続端子90と、外周フレーム96と、タイバー97と、支持フレーム98を備えている。外部接続端子90のそれぞれは、外周フレーム96に対して、直列的に固定、および/または、タイバー97を介して間接的に固定されている。外周フレーム96およびタイバー97は、半導体装置20の製造過程において、不要部分として除去される。
【0075】
支持フレーム98は、主端子91,92,93とともに表面金属体52に接続される。支持フレーム98は、主端子91,92,93とともに、基板50を支持する。支持フレーム98は、基板50を安定的に支持するために、Y方向において主端子91,92,93とは反対側で基板50に接続されている。支持フレーム98は、不要部分を除去する際に外周フレーム96およびタイバー97と切り離される。半導体装置20は、2つの支持フレーム98を備える。支持フレーム98のひとつはP配線54において延設部543を含む部分に接続され、他のひとつは中継配線55において延設部553を含む部分に接続されている。支持フレーム98はY方向に延び、側面30dから封止体30の外に突出している。
【0076】
リードフレーム95が備える信号端子94の本数は、特に限定されない。たとえば、基板50に配置される半導体素子40のパッド40Pの総数と同数としてもよい。複数の半導体素子40において、互いに同じ種類のパッド40Pを共通の信号端子94に接続することで、半導体素子40のパッド40Pの総数よりも少ない数としてもよい。
【0077】
一例としてリードフレーム95は、信号端子94H,94Lを5本ずつ有する。そして、基板50に搭載する半導体素子40のパッド40Pの数に応じて、不要な信号端子94については、封止体30の成形後に切除される。本実施形態では、半導体素子40Hのパッド40Pの数が3つなので、信号端子94Hのうち、3本がパッド40Pとの接続に提供され、残りの2本が切除される。同様に、信号端子94Lのうち、3本がパッド40Pの接続に提供され、残りの2本が切除される。このため、半導体装置20は、一部が切除された残りの部分である端子残部99を備える。半導体装置20は、4つの端子残部99を備える。
【0078】
なお、信号端子94H,94Lのそれぞれは、それぞれの先端位置と対応する半導体素子40の複数のパッド40Pの中心との距離が互いにほぼ等しくなるように配置されている。中心とは、パッド40Pの並び方向(X方向)において、複数のパッド40Pの中心位置である。信号端子94H,94Lのそれぞれは、直線部941と、延設部942を有している。直線部941は、Y方向に延びる部分であり、少なくとも一部が封止体30の外に配置される。延設部942は、直線部941の端部のひとつに連続的に連なり、対応するパッド40P側に延びた部分である。延設部942の少なくとも一部は、封止体30によって覆われる。複数の延設部942は、対応する半導体素子40のパッド40Pの中心に対して放射状に延びており、全体として略扇状の配置となっている。これにより、ボンディングワイヤ110の長さを互いに略等しくすることができる。
【0079】
上記したように、本実施形態の半導体装置20では、封止体30によって一相分の上下アーム回路9を構成する複数の半導体素子40が封止されている。封止体30は、複数の半導体素子40、基板50の一部、基板60の一部、複数の導電スペーサ70、基板接続部80,81、および外部接続端子90それぞれの一部を、一体的に封止している。封止体30は、基板50,60において、絶縁基材51,61および表面金属体52,62を封止している。
【0080】
半導体素子40は、Z方向において、基板50,60の間に配置されている。半導体素子40は、対向配置された基板50,60によって挟まれている。これにより、半導体素子40の熱を、Z方向において両側に放熱することができる。半導体装置20は、両面放熱構造をなしている。基板50の裏面50bは、封止体30の一面30aと略面一となっている。基板60の裏面60bは、封止体30の裏面30bと略面一となっている。裏面50b,60bが露出面であるため、放熱性を高めることができる。
【0081】
<製造方法>
次に、上記した半導体装置20の製造方法の一例について説明する。
【0082】
まず、半導体素子40、基板50,60、導電スペーサ70、基板接続部80,81、およびリードフレーム95をそれぞれ準備する。リードフレーム95は、
図8に示すように、外部接続端子90を備えている。リードフレーム95は、金属板にプレスなどの加工を施すことで形成されている。外部接続端子90は、直接および/またはタイバー97を介して、外周フレーム96に支持されている。
【0083】
次いで、基板50とリードフレーム95とを接合する。まず、リードフレーム95と表面金属体52との接合箇所が重なるように、基板50とリードフレーム95を相対的に位置決めする。そして、この位置決め状態で、表面金属体52とリードフレーム95とを固相接合する。具体的には、主端子91,92,93および支持フレーム98を、表面金属体52に接合する。
図8は、この接合状態を示している。
【0084】
固相接合としては、超音波接合、常温接合、摩擦攪拌接合、拡散接合、摩擦圧接などがある。一例として本実施形態では、超音波接合を採用する。固相接合、特に超音波接合では、表面金属体52およびリードフレーム95の金属表面にめっき膜が形成されていない状態の方が接合しやすい。よって、めっき処理の前に、基板50とリードフレーム95を接合する。
【0085】
次いで、めっき処理を行う。表面金属体52とリードフレーム95との接合部(固相接合部)を覆うように、表面金属体52およびリードフレーム95の表面にめっき膜を形成する。めっき膜は、たとえばニッケルを主成分とする膜を含む。一例として本実施形態では、P(リン)を含む無電解Niめっきにより下地膜を形成し、次いでAuめっきにより上地膜を形成する。
【0086】
次いで、基板50に、半導体素子40および基板接続部80,81を接合する。また、半導体素子40に導電スペーサ70を接合する。つまり、接合材100,101,103を用いた接続対象を基板50に接合する。具体的には、接合材100により、半導体素子40のドレイン電極40Dと表面金属体52とを接合する。接合材101により、ソース電極40Sと導電スペーサ70とを接合する。接合材103により、基板接続部80,81と表面金属体52とを接合する。一例として本実施形態では、接合材100,101,103としてはんだを用いるため、リフローによって一括で接合を行うことができる。
【0087】
次いで、ワイヤボンディングを行う。具体的には、半導体素子40Hのパッド40Pと信号端子94Hとを、ボンディングワイヤ110により電気的に接続する。同様に、半導体素子40Lのパッド40Pと信号端子94Lとを、ボンディングワイヤ110により電気的に接続する。
【0088】
次いで、基板60を接合する。接合材102を介して、導電スペーサ70と表面金属体62とを接合する。接合材103を介して、基板接続部80,81と表面金属体62とを接合する。たとえば、はんだの場合、リフローによって一括で接合を行うことができる。
【0089】
次いで、封止体30を形成する。本実施形態では、トランスファモールド法により封止体30を成形する。たとえば基板50,60が完全に被覆されるように封止体30を成形し、成形後に切削を行う。封止体30を基板50,60の裏面金属体53,63の一部ごと切削する。これにより、裏面50b,60bを露出させる。裏面50bは封止体30の一面30aと略面一となり、裏面60bは裏面30bと略面一となる。これに代えて、裏面50b,60bの少なくとも一方を成形金型のキャビティ壁面に押し当て、密着させた状態で、封止体30を成形してもよい。この場合、封止体30を成形した時点で、裏面50b,60bの少なくとも一方が封止体30から露出する。
【0090】
次いで、リードフレーム95において、外周フレーム96、タイバー97、使用しない信号端子94などの不要部分を除去する。以上により、半導体装置20を得ることができる。
【0091】
<接合部およびその周辺構造>
図9は、基板50の表面金属体52と主端子91,92,93との接続構造を示す平面図である。
図9では、表面金属体52および主端子91,92,93を簡素化して図示している。
図10は、
図9に一点鎖線で示す領域Xを拡大した図である。
図11は、
図10に示すXI-XI線に沿う断面図である。
【0092】
図9に示すように、主端子91は、延設方向(Y方向)に直交する方向(X方向)の長さ、つまり幅がほぼ一定である。主端子93も、主端子91同様、幅がほぼ一定である。主端子91,93それぞれの幅は、表面金属体52との間に形成された接合部120の幅よりも広い。一方、主端子92は、拡幅部921と、拡幅部921よりも幅が縮小された縮幅部922を有している。縮幅部922は、拡幅部921に連続的に連なっており、主端子92の先端部をなしている。主端子92において、縮幅部922の幅は、接合部120の幅にほぼ一致している。拡幅部916の幅は、接合部120の幅よりも広い。主端子91,92,93のうち、主端子91および主端子93が、幅広端子に相当する。また、接合部120が、固相接合部に相当する。
【0093】
幅広端子である主端子91は、
図10および
図11に示すように、平面視における表面金属体52との重なり領域911として、接合領域912と、非接合領域913を有している。接合領域912は、平面視において接合部120と重なる領域である。接合領域912は、接合部120を提供する領域である。接合部120および接合領域912は、たとえば平面略矩形状をなしている。非接合領域913は、重なり領域911のうち、接合領域912を除いた残りの領域である。
図10において、接合部120を示す破線の内側の部分が接合領域912であり、破線の外側の部分が非接合領域913である。
【0094】
非接合領域913は、少なくとも幅方向において接合領域912に隣接するように設けられている。一例として本実施形態の非接合領域913は、
図10に示すように接合領域912を囲んでいる。非接合領域913は、接合領域912を全周で取り囲んでいる。重なり領域911において、接合領域912は中央に設けられ、非接合領域913は周囲に設けられている。重なり領域911において、非接合領域913は幅方向の両端および延設方向の両端にそれぞれ設けられている。非接合領域913は、平面略矩形状をなす接合領域912の4辺のそれぞれに隣接して設けられている。
【0095】
図11に示すように、接合領域912は、表面金属体52であるP配線54との間で接合部120を形成している。本実施形態の接合部120は、超音波接合部である。非接合領域913は、接合部120を形成しておらず、P配線54との間に隙間121(ギャップ)を有する。隙間121は、非常に僅かであり、数十μm程度である。超音波接合により形成される隙間121は、30μm以下である。
【0096】
半導体装置20は、めっき膜130を備える。めっき膜130は、接合部120を覆うように、主端子91を含むリードフレーム95上および表面金属体52上に設けられている。めっき膜130は、超音波接合後のめっき処理にて形成される。めっき膜130は、上記したようにニッケルを含む。めっき膜130は、隙間121に配置されてもよい。つまり、隙間121を構成する非接合領域913およびP配線54の対向面に設けられてもよい。めっき膜130は、隙間121の一部のみに設けられてもよいし、接合部120に接するように隙間121の奥まで設けられてもよい。一例として本実施形態では、隙間121における開口から一部の範囲のみに設けられている。
【0097】
主端子91の厚みは、全域においてほぼ均一としてもよいし、部分的に厚みを異ならせてもよい。一例として本実施形態の重なり領域911は、薄肉部914と、厚肉部915を有する。薄肉部914は、少なくとも接合領域912を含む。薄肉部914は、超音波接合時に超音波ツールが接触する部分である。薄肉部914は、平面視において接合領域912、ひいては接合部120を内包するように設けられている。薄肉部914のうち外周端近傍は、非接合領域913である。
【0098】
厚肉部915は、接合領域912を含む。厚肉部915は、幅方向において主端子91の両端に設けられている。つまり厚肉部915の間に、薄肉部914が位置している。厚肉部915の厚みは、主端子91の重なり領域911以外の部分の厚みとほぼ等しい。非接合領域913の主たる部分は、接合領域912よりも厚い。なお、
図11に示す一点鎖線間の領域が接合領域912である。
【0099】
幅広端子のうち、主端子91について説明したが、主端子93も同様の構成を有している。
【0100】
<第1実施形態のまとめ>
基板の表面金属体に接合される主端子を、接合部を提供する先端部において接合部と同等の幅とし、後端部において接合部よりも幅の広い構造とすることが考えられる。先端部を細くすることで、たとえば接合面の傾きの精度管理が容易となる。後端部を太くすることで、たとえば大電流の通電が可能となる。たとえばインダクタンスを低減することができる。しかしながら、先端部と後端部との境界の角部に電界が集中し、これにより耐久寿命が低下する虞がある。
【0101】
本実施形態では、半導体装置20が、幅広端子である主端子91を備えている。主端子91は、非接合領域913を有している。非接合領域913は、少なくとも幅方向(X方向)において接合領域912に隣接している。つまり、主端子91の幅(重なり領域911の幅)が、接合部120の幅よりも広い。これにより、主端子91において幅の変化が少ない。よって、電界集中を抑制し、ひいては主端子91の耐久寿命を向上することができる。また、主端子91は、大電流の通電が可能である。インダクタンスを低減することができる。重なり領域911の幅に対して、接合部120(接合領域912)の幅が狭いため、接合面の傾きの精度管理が容易となる。
【0102】
接合部を覆うようにめっき膜が設けられた構成、つまり固相接合した後に、めっき膜130が形成される構成では、めっき液残渣が問題となり得る。めっき液残渣が生じると、残渣が後工程、たとえばはんだのリフロー工程で染み出し、たとえば表面金属体における封止体との密着性の低下、はんだ(接合材)の濡れ性の低下を引き起こす虞がある。主端子が接合部を複数有すると、接合部の間にめっき液が留まり、めっき液残渣が生じやすくなる。
【0103】
本実施形態では、主端子91が、接合部120をひとつ有している。非接合領域913は、側方に開口している。よって、非接合領域913と表面金属体52との間にめっき液が入り込んだとしても、めっき液が排出されやすい。めっき液は、非接合領域913と表面金属体52との隙間121に留まり難い。このため、隙間121にめっき液が残る、つまりめっき液残渣が生じるのを抑制することができる。
【0104】
以上より、本実施形態に係る半導体装置20によれば、主端子91の耐久寿命を向上しつつ、めっき液残渣による不具合を抑制することができる。表面金属体52には、接合材100を介して半導体素子40が接続されている。めっき液残渣の抑制により、半導体素子40と表面金属体52との接続信頼性の低下を抑制することができる。なお、幅広端子である主端子93についても同様である。
【0105】
幅広端子である主端子91,93と半導体素子40との位置関係は特に限定されない。本実施形態では、主端子91,93の延設方向(Y方向)において、主端子91,93と対応する半導体素子40H,40Lとが並んでいる。このような構成では、めっき液残渣が生じると、接合材100であるはんだの濡れ性が低下し、半導体素子40と表面金属体52との接続信頼性が低下する虞がある。しかしながら、上記した構成により、めっき液残渣が生じるのを抑制できる。よって、半導体素子40と表面金属体52との接続信頼性の低下を抑制することができる。
【0106】
本実施形態の半導体装置20は、封止体30を備えている。上記した構成により、表面金属体52の表面へのめっき液残渣の染み出しが抑制される。よって、表面金属体52に対する封止体30の密着性低下を抑制することができる。
【0107】
本実施形態の非接合領域913は、接合領域912を囲んでいる。具体的には、非接合領域913は、接合領域912を全周で囲んでいる。接合領域912は、非接合領域913の内側に位置している。非接合領域913と表面金属体52との間に形成される隙間121は、全周で外側に開口している。よって、隙間121にめっき液が残るのを効果的に抑制することができる。また、この構成によれば、いずれの方向に位置ずれが生じても、接合面積を確保することができる。
【0108】
本実施形態の接合部120は、超音波接合部である。超音波接合の場合、多点接合の2点目以降は摩擦できないため、接合強度が低下する。上記したように、主端子91,93それぞれの接合部120は、ひとつ(1点)である。よって、超音波接合を採用しつつ、接合強度を確保することができる。つまり、耐久性を向上することができる。
【0109】
本実施形態の非接合領域913は、接合領域912よりも厚い部分を含む。このように、接合領域912が薄い。よって、少ない荷重で接合部120を形成することができる。つまり超音波接合時の荷重を減らし、基板50が受けるダメージを低減することができる。非接合領域913は、接合領域912よりも厚い部分を含むため、重なり領域911、ひいては主端子91の剛性を確保することができる。
【0110】
本実施形態では、非接合領域と表面金属体との隙間121が、30μm以下である。このように、隙間121を狭くすることで、めっき液が隙間121に入り難くなるため、めっき液残渣が生じるのを抑制することができる。また、樹脂にフィラーが混入されてなる封止体30を採用する構成において、フィラーが隙間121に入り難くなる。これにより、フィラーが噛みこむことで応力が局所的に高くなり、耐久性が低下するのを抑制することができる。
【0111】
<変形例>
非接合領域913が接合領域912を囲む構成は、
図10に示した全周で囲む例に限定されない。たとえば
図12に示すように、非接合領域913を、接合領域912の3辺に隣接するように設けてもよい。
図12では、接合領域912が、主端子91の先端から所定範囲にわたって設けられている。非接合領域913は、接合領域912の4辺のうち、主端子91の先端に一致する辺を除く3辺に隣接している。
【0112】
たとえば
図13に示すように、非接合領域913が接合領域912を全周で囲む構成において、接合領域912を重なり領域911の中心位置よりも主端子91の先端側に偏って設けた構成としてもよい。非接合領域913は、延設方向において主端子91の先端側に位置する先端部913aと、幅方向において接合領域912に隣接する横並び部913bを有している。先端部913aの長さL1は、横並び部913bの長さL2より短い。つまり非接合領域913は、幅方向(X方向)に対して、延設方向(Y方向)の半導体素子40側に小さい。これにより、半導体素子40側の隙間121が小さいため、半導体素子40側にめっき液が染み出すのを効果的に抑制することができる。よって、半導体素子40と表面金属体52との接続信頼性の低下を効果的に抑制することができる。
【0113】
なお、
図12に示した構成は、先端部913aが存在しない。これにより、非接合領域913は、幅方向(X方向)に対して、延設方向(Y方向)の半導体素子40側に小さい。よって、半導体素子40と表面金属体52との接続信頼性の低下を効果的に抑制することができる。
【0114】
重なり領域911において、接合領域912および非接合領域913の位置は特に限定されるものではない。重なり領域911がひとつのみ有する接合領域912に対して、非接合領域913は、少なくとも幅方向において隣接するように設けられればよい。たとえば
図14に示すように、非接合領域913を、接合領域912の2辺に隣接するように設けてもよい。接合領域912は、Y方向において主端子91の先端から所定範囲にわたって設けられている。接合領域912は、X方向において主端子91の一端から所定の範囲にわたって設けられている。非接合領域913は、X方向において接合領域912の辺のひとつに隣接している。非接合領域913は、Y方向において接合領域912の辺のひとつに隣接している。
【0115】
主端子91,92,93のうち、真ん中に位置する主端子92を幅広端子から除外する例を示したが、これに限定されない。
図15に示すように、主端子92を、主端子91,93と同様に幅広端子としてもよい。
【0116】
(第2実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。超音波接合にともなう不具合を解消するために、主端子および/または基板に種々の工夫を施してもよい。
【0117】
<半導体装置>
本実施形態に係る半導体装置20の基本構成は、先行実施形態に示した半導体装置20の概略構成(
図2~
図8参照)と同様である。
【0118】
図示を省略するが、半導体装置20は、封止体30と、半導体素子40と、基板50,60と、導電スペーサ70と、基板接続部80,81と、外部接続端子90を備えている。半導体装置20は、接合材100~103と、ボンディングワイヤ110を備えている。
【0119】
基板50と主端子91,92,93との間に、固相接合による接合部120が形成されている。本実施形態では、固相接合として超音波接合を採用している。接合部120は、超音波接合部である。その他の構成は、先行実施形態に示した半導体装置20の概略構成と同様である。
【0120】
<基板ダメージ>
図16は、参考例を示す断面図である。参考例では、各要素の符号を、半導体装置20の関連する要素の符号の末尾にrを付加したものとしている。
図16では、超音波ツールが印加するエネルギーと、接合対象に伝達されたエネルギーを実線矢印で示している。実線矢印の大きさは、エネルギーの大きさを示している。
図16では、一例として主端子93rと表面金属体52r(中継配線55r)との超音波接合を示している。
【0121】
図16に示すように、超音波ツール140rは、接触面に複数の凸部141rを有している。複数の凸部141rは、所定の間隔で設けられている。一方、主端子93rは、超音波ツール140rが接触する上面に、複数の凹部931rを有している。複数の凹部931rは、所定の間隔で設けられている。凸部141rと凹部931rとが噛み合うように、凸部141rおよび凹部931rが設けられている。
【0122】
凹凸が噛み合った状態で、超音波ツール140rは、Z方向に直交する方向に振動する。エネルギーは、超音波ツール140rから主端子93rに伝わり、さらには主端子93rの下部に位置する表面金属体52rに伝わる。この振動エネルギーにより、表面金属体52rと裏面金属体53rとの間にZ方向に直交する方向において相対ずれが発生する。つまり、基板50rに応力が生じる。また、超音波振動によって基板50rが発熱する。
【0123】
よって、基板50r、たとえば絶縁基材51rがダメージを受けてしまう。絶縁基材51rがダメージを受けると、絶縁信頼性が低下する虞がある。特に超音波ツール140rが印加するエネルギーが大きいほど、基板50rが受けるダメージが大きくなる。
【0124】
<バリ>
図17は、参考例を示す断面図である。
図17は、後述する
図20に対応している。
図17に示す例では、一定厚の金属板材、つまり平板状の金属板材をプレス加工して、主端子93rを構成している。
【0125】
主端子93rは、超音波接合のために凹部931rを有している。凹部931rは、プレス加工により形成されている。主端子93は、凹部931rの開口端付近に、プレス加工によるバリ932rを有している。このような主端子93rを備えたリードフレームと基板50rとを超音波接合することで、リードフレームと基板50rとの接合体150rが形成される。
【0126】
図18は、参考例を示す断面図である。
図18は、接合体150rの梱包状態を示している。
図18に示すように、複数の接合体150rをZ方向に積層して梱包する。
図18では、簡素化のために、2つの接合体150rを示している。
【0127】
この梱包状態では、Z方向において隣り合う2つの接合体150rにおいて、下段の主端子93rのバリ932rが、上段の基板50rの裏面金属体53に接触する。これにより、裏面金属体53rに傷が生じたり、異物が発生する虞がある。
【0128】
<接合部周辺の構造>
図19は、本実施形態の半導体装置20において、主端子93と表面金属体52の中継配線55との接合部周辺を示す斜視図である。
図19は、
図8に一点鎖線で示す領域XIXに対応している。
図20は、
図19のXX-XX線に沿う断面図である。
【0129】
主端子93は、平面視において接合部120を含むように設けられた凹部933を有している。凹部933は、主端子93の上面に開口し、Z方向に所定の深さを有している。これにより、凹部933の底面933aと主端子93の下面(接合面)との間の厚み、つまり凹部933が設けられた部分の厚みが、主端子93の他の部分よりも薄くなっている。主端子93のうち、凹部933が設けられた部分を除く部分である厚肉部934の厚みT1は、表面金属体52の厚みT2よりも厚い。一方、凹部933が設けられた部分である薄肉部935の厚みT3は、表面金属体52の厚みT2よりも薄い。薄肉部935の厚みT3は、凹部931が設けられていない部分の厚みである。
【0130】
凹部933の底面933aには、超音波ツールが接触する。凹部933は、超音波ツールが超音波振動可能なエリアを提供する。凹部933には、超音波ツールの一部が配置される。一例として本実施形態の凹部933は、主端子93の先端に設けられている。凹部933は、主端子93の先端面にも開口している。
【0131】
幅方向であるX方向において、主端子93の両端には厚肉部934が設けられている。薄肉部935は、平面略矩形状をなしている。凹部933の側面933bは、主端子93の先端側の辺を除く残りの3辺に設けられている。
【0132】
凹部933の底面933aには、複数の凹部931が形成されている。
図19に示す実線の矩形状域は、凹部931の形成領域931aを示している。凹部931の開口端付近に存在するバリ932の高さは、凹部933の深さより短い。バリ932は、その全体が凹部933内に配置されている。
【0133】
<第2実施形態のまとめ>
本実施形態では、接合部120を含む薄肉部935の厚みT3が、表面金属体52の厚みT2よりも薄い(T3<T2)。これにより、超音波ツールが印加するエネルギーを低減しても、接合部120の形成が可能となる。エネルギーの低減により、たとえば表面金属体52と裏面金属体53との相対的なずれを抑制することができる。よって、基板50の受けるダメージ、たとえば絶縁基材51のダメージを低減することができる。
【0134】
本実施形態では、厚肉部934の厚みT1が、表面金属体52の厚みT2よりも厚い(T1>T2)。薄肉部935は、局所的に設けられている。これにより、主端子93において接合部周辺の剛性を確保することができる。特に、薄肉部935に対して幅方向の両サイドに厚肉部934が位置している。よって、リードフレーム95を把持して搬送する際に両サイドの厚肉部934が梁として機能し、接合部120に応力が集中するのを抑制することができる。
【0135】
本実施形態では、凹部933の底面933aに設けられたバリ932の高さが、凹部933の深さよりも短い。これにより、
図18に示した参考例同様、超音波接合した基板50とリードフレーム95との接合体を積層して梱包する際に、下段の接合体のバリ932が上段の接合体の裏面金属体53に接触しない。よって、裏面金属体53に傷が生じたり、異物が発生するのを抑制することができる。
【0136】
凹部933の底面933aと側面933bのなす角度θは、特に限定されないが、好ましくは45度以上とするとよい。また、底面933aと側面933bとの角部を、R形状にするとよい。これによれば、薄肉部935を設けた主端子93において、角部への応力集中を回避することができる。たとえば、応力集中により主端子93にクラックが生じるのを抑制することができる。
【0137】
以上においては主端子93について説明したが、超音波接合される他の主端子91,92も同様である。
【0138】
本実施形態に記載の構成は、先行実施形態に記載の構成との組み合わせが可能である。
【0139】
<第3実施形態>
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。本実施形態では、超音波接合による基板ダメージを抑制できる別の構成を提案する。
【0140】
<超音波接合のプロセス>
図21は、超音波接合のプロセスを示す断面図である。一例として接合対象を、表面金属体52および主端子93としている。
【0141】
超音波接合を行う前の状態で、表面金属体52および主端子93の接合面には、コンタミネーション160が存在する。超音波接合では、超音波ツールによって、主端子93に加圧しつつ振動エネルギーを印加する。これにより、接合起点となる、表面金属体52と主端子93との接点122が高速で接触し、摩擦と塑性流動による金属結合が形成される。そして、金属結合部が広がり、接合部120が形成される。
【0142】
<半導体装置の製造方法>
図22は、本実施形態に係る半導体装置20の製造方法を示す断面図である。
図22は、
図20に対応している。
図22は、基板50の表面金属体52(中継配線55)と主端子93との超音波接合を示している。
【0143】
本実施形態では、超音波接合を行う前に、主端子93の下面(接合面)に凹凸部936を設けておく。凹凸部936は、粗化部と称されることがある。そして、超音波ツールによって、凹凸部936を有する主端子93に加圧しつつ振動エネルギーを印加する。
【0144】
凹凸部936は、たとえば粗化処理により形成される。具体的には、レーザ粗化、粗化めっき、サンドブラスト、薬液処理などが可能である。凹凸部936の凹凸のピッチは細かいほど好ましい。凹凸のピッチは、たとえばnmオーダやμmオーダである。凹凸部936は、非常に微細な凹凸を有している。
【0145】
<第3実施形態のまとめ>
本実施形態では、接合面に凹凸部936を有する主端子93を用いて、超音波接合を行う。これにより、平坦面同士の超音波接合条件に較べて、弱い加圧や振幅で十分な接合性を得ることが可能となる。つまり超音波ツールが印加するエネルギーを低減しても、接合部120の形成が可能となる。エネルギーの低減により、基板50に生じる応力や基板50の発熱が小さくなる。よって、基板50の受けるダメージ、たとえば絶縁基材51のダメージを低減することができる。
【0146】
図23は、上記した製造方法により形成される半導体装置20の一例を示している。
図23は、半導体装置20において、主端子93と基板50との接合部周辺を拡大した図である。
図23は、
図20に対応している。その他の構成は、先行実施形態に記載した半導体装置20の概略構成と同様である。
【0147】
凹凸部936は、超音波接合をする前に、接合部120の形成領域を内包するように設けられる。凹凸部936は、位置ずれを考慮して設けられる。半導体装置20において、凹凸部936は、接合部120を取り囲んでいる。凹凸部936は、接合部120に隣接している。半導体装置20が有する凹凸部936は、超音波接合されずに残った部分である。
【0148】
接合部120に対して凹凸部936が隣接する辺の数は特に限定されない。凹凸部936は、たとえば接合部120の辺のひとつのみに隣接してもよい。凹凸部936のすべてが接合部120の形成に寄与し、半導体装置20が凹凸部936を有さない構成としてもよい。
【0149】
以上においては主端子93について説明したが、超音波接合される他の主端子91,92も同様である。
【0150】
<変形例>
凹凸部936を主端子93に設けることで、超音波接合時のエネルギーを低減する例を示したが、これに限定されない。
図24に示すように、表面金属体52の上面(接合面)に凹凸部521を設けてもよい。
図24は、
図20に対応している。
【0151】
本実施形態に記載の構成は、先行実施形態に記載の構成との組み合わせが可能である。
【0152】
<第4実施形態>
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。本実施形態では、超音波接合による基板ダメージを抑制できる別の構成を提案する。
【0153】
図25は、本実施形態に係る半導体装置20において、主端子93と基板50との接合部周辺を拡大した断面図である。
図25は、
図20に対応している。
【0154】
図25に示すように、主端子93の表面には、めっき膜131が形成されている。めっき膜131の一部は、接合部120を構成している。接合部120は、めっき膜131を構成する金属を含んでいる。
図25では、接合部120を簡素化して図示している。
【0155】
めっき膜131は、表面金属体52および主端子93とは異なる金属材料を主成分としている。主成分金属は、たとえばPd,Auである。
【0156】
<第4実施形態のまとめ>
本実施形態によれば、異種金属の拡散により、接合時間を短縮することができる。よって、超音波ツールが印加するエネルギーを低減しても、接合部120の形成が可能となる。エネルギーの低減により、基板50の受けるダメージ、たとえば絶縁基材51のダメージを低減することができる。
【0157】
以上においては主端子93について説明したが、超音波接合される他の主端子91,92も同様である。
【0158】
主端子93にめっき膜131を設ける例を示したが、これに限定されない。表面金属体52の表面に、表面金属体52および主端子93とは異なる金属材料を主成分とするめっき膜を設けてもよい。
【0159】
本実施形態に記載の構成は、接合後にめっき膜130を形成する構成、接合面に凹凸部を設ける構成を除く、先行実施形態に記載の構成との組み合わせが可能である。
【0160】
<第5実施形態>
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例であり、先行実施形態の記載を援用できる。本実施形態では、超音波接合による基板ダメージを抑制できる別の構成を提案する。
【0161】
図26は、本実施形態に係る半導体装置20において、主端子93と基板50との接合部周辺を拡大した断面図である。
【0162】
基板50の裏面金属体53は、パターニングされている。裏面金属体53は、主部531と、分離部532を有している。主部531は、裏面金属体53の大部分を占めている。主部531は、主放熱部と称されることがある。主部531は、平面視において半導体素子40を内包している。
【0163】
分離部532は、主部531と電気的に分離されている。分離部532と主部531との間には、金属体が除去されてなるギャップが存在する。分離部532は、島部(アイランド)と称されることがある。分離部532は、接合部120の直下に設けられている。分離部532は、平面視において接合部120を内包している。その他の構成は、先行実施形態に記載した半導体装置20の概略構成と同様である。
【0164】
半導体装置20は、冷却器170により冷却される。冷却器170は、内部に有する流路に冷媒が流通することで、半導体装置20を冷却する。流路に流す冷媒としては、水やアンモニアなどの相変化する冷媒や、エチレングリコール系などの相変化しない冷媒を用いることができる。冷却器170と半導体装置20との間には、シリコーンゲルなどの熱伝導部材180が配置されている。熱伝導部材180は、サーマルインターフェイスマテリアル(TIM)と称されることがある。熱伝導部材180は、冷却器170と半導体装置20との対向面に追従し、対向面間の隙間を埋める。
【0165】
一例として冷却器170は、Z方向において半導体装置20の両側に配置されている。冷却器170は、半導体装置20に積層配置されている。冷却器170のひとつは、平面視において裏面金属体53の主部531と重なり、分離部532とは重ならないように配置されている。冷却器170は、裏面金属体53の主部531に熱的に接続されている。冷却器170は、主部531を介して半導体装置20を冷却する。冷却器170の他のひとつは、平面視において裏面金属体63と重なるように配置されている。冷却器170は、裏面金属体63に熱的に接続されている。冷却器170は、裏面金属体63を介して半導体装置20を冷却する。
【0166】
図27は、裏面金属体53のパターンの一例を示している。裏面金属体53は、ひとつの主部531と、ひとつの分離部532を有している。分離部532は、各主端子91,92,93の接合部120を内包するように設けられている。分離部532は、主端子91,92,93に対して共通の領域である。
【0167】
<第5実施形態のまとめ>
本実施形態によれば、接合部120の直下に分離部532が設けられている。つまり、超音波接合時に荷重がかかる部分の直下に、分離部532が設けられている。分離部532は、他の裏面金属体53の部分(主部531)とは切り離れている。一体構造に較べて、分離部532は変形しやすくなっている。これにより、超音波接合時において基板50に応力が生じるのを抑制することができる。したがって、基板50の受けるダメージ、たとえば絶縁基材51のダメージを低減することができる。
【0168】
また、接合部120の直下に設けられた分離部532は、主部531とは電気的に分離されている。よって、超音波接合時に、分離部532と重なる位置で絶縁基材51にクラックが生じたとしても、主部531側で半導体装置20としての絶縁性は確保することができる。
【0169】
裏面金属体53のパターンは、
図27に示した例に限定されない。たとえば主端子91,92,93ごとに、分離部532を個別に設けてもよい。つまり、複数の分離部532を設けてもよい。
【0170】
本実施形態に記載の構成は、先行実施形態に記載の構成との組み合わせが可能である。
【0171】
(他の実施形態)
この明細書および図面等における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。たとえば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものと解されるべきである。
【0172】
明細書および図面等における開示は、請求の範囲の記載によって限定されない。明細書および図面等における開示は、請求の範囲に記載された技術的思想を包含し、さらに請求の範囲に記載された技術的思想より多様で広範な技術的思想に及んでいる。よって、請求の範囲の記載に拘束されることなく、明細書および図面等の開示から、多様な技術的思想を抽出することができる。
【0173】
ある要素または層が「上にある」、「連結されている」、「接続されている」または「結合されている」と言及されている場合、それは、他の要素、または他の層に対して、直接的に上に、連結され、接続され、または結合されていることがあり、さらに、介在要素または介在層が存在していることがある。対照的に、ある要素が別の要素または層に「直接的に上に」、「直接的に連結されている」、「直接的に接続されている」または「直接的に結合されている」と言及されている場合、介在要素または介在層は存在しない。要素間の関係を説明するために使用される他の言葉は、同様のやり方で(例えば、「間に」対「直接的に間に」、「隣接する」対「直接的に隣接する」など)解釈されるべきである。この明細書で使用される場合、用語「および/または」は、関連する列挙されたひとつまたは複数の項目に関する任意の組み合わせ、およびすべての組み合わせを含む。
【0174】
空間的に相対的な用語「内」、「外」、「裏」、「下」、「低」、「上」、「高」などは、図示されているような、ひとつの要素または特徴の他の要素または特徴に対する関係を説明する記載を容易にするためにここでは利用されている。空間的に相対的な用語は、図面に描かれている向きに加えて、使用または操作中の装置の異なる向きを包含することを意図することができる。例えば、図中の装置をひっくり返すと、他の要素または特徴の「下」または「真下」として説明されている要素は、他の要素または特徴の「上」に向けられる。したがって、用語「下」は、上と下の両方の向きを包含することができる。この装置は、他の方向に向いていてもよく(90度または他の向きに回転されてもよい)、この明細書で使用される空間的に相対的な記述子はそれに応じて解釈される。
【0175】
車両の駆動システム1は、上記した構成に限定されない。たとえば、モータジェネレータ3をひとつ備える例を示したが、これに限定されない。複数のモータジェネレータを備えてもよい。電力変換装置4が、電力変換回路としてインバータ6を備える例を示したが、これに限定されない。たとえば、複数のインバータを備える構成としてもよい。少なくともひとつのインバータと、コンバータを備える構成としてもよい。コンバータのみを備えてもよい。
【0176】
半導体素子40が、スイッチング素子としてMOSFET11を有する例を示したが、これに限定されない。たとえば、IGBTを採用することもできる。IGBTは、Insulated Gate Bipolar Transistorの略称である。
【0177】
半導体装置20は各アームを構成する半導体素子40を複数備えてもよい。半導体装置20は、上アーム9Hを構成する半導体素子40Hを複数備え、下アーム9Lを構成する半導体素子40Lを複数備えてもよい。複数の半導体素子40Hのドレイン電極40Dは、互いに共通のP配線54に接続される。複数の半導体素子40Lのドレイン電極40Dは、互いに共通の中継配線55に接続される。
【0178】
半導体装置20が、一相分の上下アーム回路9を構成する例を示したが、これに限定されない。半導体装置20は、アームのひとつのみを構成してもよい。半導体装置20は、複数相の上下アーム回路9を構成してもよい。
【0179】
基板50の表面金属体52に接合される主端子の数は、特に限定されない。半導体装置20は、表面金属体52に接合される主端子を少なくともひとつ備えればよい。
【0180】
表面金属体52のパターン、表面金属体52と主端子91,92,93の配置は、上記した例に限定されるものではない。
【0181】
ソース電極40Sが基板60の表面金属体62に電気的に接続される例を示したが、これに限定されない。基板60に代えて、金属板材を採用してもよい。基板60を排除した構成、つまり片面放熱構造としてもよい。
【0182】
半導体装置20が導電スペーサ70を備える例を示したが、これに限定されない。導電スペーサ70を備えない構成としてもよい。たとえば導電スペーサ70に代えて、基板60の表面金属体62が凸部を有してもよい。
【0183】
半導体装置20が封止体30を備える例を示したが、これに限定されない。封止体30を備えない構成としてもよい。
【符号の説明】
【0184】
1…駆動システム、2…直流電源、3…モータジェネレータ、4…電力変換装置、5…平滑コンデンサ、6…インバータ、7…Pライン、8…Nライン、9…上下アーム回路、9H…上アーム、9L…下アーム、10…出力ライン、11…MOSFET、12…ダイオード、20…半導体装置、30…封止体、30a…一面、30b…裏面、30c、30d、30e、30f…側面、40、40H、40L…半導体素子、40D…ドレイン電極、40S…ソース電極、40P…パッド、50…基板、50a…対向面、50b…裏面、51…絶縁基材、52…表面金属体、521…凹凸部、53…裏面金属体、531…主部、532…分離部、54…P配線、541…基部、542,543…延設部、55…中継配線、551…基部、552,553,554…延設部、56…N配線、60…基板、60a…対向面、60b…裏面、61…絶縁基材、62…表面金属体、63…裏面金属体、64…N配線、640…基部、641…延設部、65…中継配線、654…基部、655…延設部、70…導電スペーサ、80、81…基板接続部、90…外部接続端子、91,92,93…主端子、911…重なり領域、912…接合領域、913…非接合領域、913a…先端部、913b…横並び部、914…薄肉部、915…厚肉部、921…拡幅部、922…縮幅部、931…凹部、931a…形成領域、932…バリ、933…凹部、933a…底面、933b…側面、934…厚肉部、935…薄肉部、936…凹凸部、94,94H,94L…信号端子、941…直線部、942…延設部、95…リードフレーム、96…外周フレーム、97…タイバー、98…支持フレーム、99…端子残部、100、101、102、103…接合材、110…ボンディングワイヤ、120…接合部、121…隙間、122…接点、130、131…めっき膜、140r…超音波ツール、141r…凸部、150…接合体、160…コンタミネーション、170…冷却器、180…熱伝導部材