(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】生分解性樹脂組成物およびそれからなるフィルム
(51)【国際特許分類】
C08L 67/04 20060101AFI20250311BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20250311BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20250311BHJP
C08K 5/09 20060101ALI20250311BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20250311BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20250311BHJP
B65D 65/02 20060101ALI20250311BHJP
C09J 7/25 20180101ALI20250311BHJP
C09J 7/29 20180101ALI20250311BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20250311BHJP
C08L 101/16 20060101ALN20250311BHJP
【FI】
C08L67/04
C08L101/00 ZBP
C08L63/00 A
C08K5/09
C08J5/18 CFD
B32B27/36
B65D65/02 E
C09J7/25
C09J7/29
C09J7/38
C08L101/16
(21)【出願番号】P 2022550919
(86)(22)【出願日】2021-03-19
(86)【国際出願番号】 CN2021081672
(87)【国際公開番号】W WO2021185339
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2023-11-21
(31)【優先権主張番号】202010200049.7
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010199536.6
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202011293825.9
(32)【優先日】2020-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202011297029.2
(32)【優先日】2020-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】桂 宗彦
(72)【発明者】
【氏名】王 儒旭
(72)【発明者】
【氏名】王 珂
(72)【発明者】
【氏名】荒井 崇
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 功
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-256142(JP,A)
【文献】特開2012-205506(JP,A)
【文献】特開2012-149273(JP,A)
【文献】特開2010-150711(JP,A)
【文献】特開2015-193750(JP,A)
【文献】国際公開第2013/038770(WO,A1)
【文献】特開2015-224253(JP,A)
【文献】特開2003-313344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
B32B
B65D
C08J
C09J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸を80重量%以上、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シクロへキサンカルボン酸、安息香酸、ナフタレンカルボン酸のうちの1種または複数種のカルボン酸および/またはコハク酸無水物、グルタル酸無水物、安息香酸無水物、マレイン酸無水物、フェノキシ酢酸無水物、フタル酸無水物、ポリセバシン酸無水物、マレイン酸無水物含有重合体のうちの1種または複数種のカルボン酸無水物を0.1~2重量%、ならびに、エポキシ官能基を含む化合物を含有し、1.0dL/g以上の固有粘度を有し、70℃、85%RHで、6時間処理した後の固有粘度損失率が10%以上であり、かつ、50℃、85%RHで、6時間処理した後の固有粘度損失率が10%以下であることを特徴とする
生分解性樹脂組成物であって、前記ポリ乳酸の光学純度が86~98%である生分解性樹脂
組成物。
【請求項2】
ポリ乳酸を
80重量%以上、
コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シクロへキサンカルボン酸、安息香酸、ナフタレンカルボン酸のうちの1種または複数種のカルボン酸および/またはコハク酸無水物、グルタル酸無水物、安息香酸無水物、マレイン酸無水物、フェノキシ酢酸無水物、フタル酸無水物、ポリセバシン酸無水物、マレイン酸無水物含有重合体のうちの1種または複数種のカルボン酸無水物を0.1~2重量%、ならびに、エポキシ官能基を含む化合物を含有し、ASTM D5338-15に規定された条件に従って28℃におけるホームコンポストによる分解性の評価を行ったとき、12か月以内に相対生分解率が90%以上となり、かつ、50℃、85%RHで、6時間処理した後の固有粘度損失率が10%以下であることを特徴とする
生分解性樹脂組成物であって、前記ポリ乳酸の光学純度が86~98%である生分解性樹脂
組成物。
【請求項3】
固有粘度が1.0dL/g以上であることを特徴とする請求項2に記載の生分解性樹脂
組成物。
【請求項4】
70℃、85%RHで、6時間処理した後の固有粘度損失率が18%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の生分解性樹脂
組成物。
【請求項5】
50℃、85%RHで、6時間処理した後の固有粘度損失率が6%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の生分解性樹脂
組成物。
【請求項6】
0.1×10
-4mol/g以上のカルボキシル基を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の生分解性樹脂
組成物。
【請求項7】
0.1×10
-4~10×10
-4mol/gのカルボキシル基を含有することを特徴とする請求項6に記載の生分解性樹脂
組成物。
【請求項8】
ポリ乳酸の数平均分子量が50,000以上であることを特徴とする請求項
1または2に記載の生分解性樹脂
組成物。
【請求項9】
ポリ乳酸の融解エンタルピーが10~58J/gであることを特徴とする請求項
1または2に記載の生分解性樹脂
組成物。
【請求項10】
ポリ乳酸の融解エンタルピーが20~35J/gであることを特徴とする請求項
9に記載の生分解性樹脂
組成物。
【請求項11】
120℃~135℃の間に2回目の昇温での冷結晶化温度が存在することを特徴とする請求項
1または2に記載の生分解性樹脂
組成物。
【請求項12】
ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンテレフタレートアジペート、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリプロピレンカーボネート、ポリグリコール酸またはこれらの重合体の共重合体や、誘導体のうちの1種または複数種を5~50重量%含有することを特徴とする請求項1または2に記載の生分解性樹脂
組成物。
【請求項13】
金属元素を50~500ppm含有することを特徴とする請求項1または2に記載の生分解性樹脂
組成物。
【請求項14】
前記金属元素がナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、鉄、銅、錫のうちの1種または複数種であることを特徴とする請求項
13に記載の生分解性樹脂
組成物。
【請求項15】
分散相を含有し、分散相の平均径が0.5~6.0μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の生分解性樹脂
組成物。
【請求項16】
ASTM D5338-15に規定された条件に従って28℃におけるホームコンポストによる分解性の評価を行ったとき、12か月以内に相対生分解率が90%以上となることを特徴とする請求項1に記載の生分解性樹脂
組成物。
【請求項17】
ASTM D5988-18に規定された条件に従って土壌分解性の評価を行ったとき、24か月以内に相対生分解率が90%以上となることを特徴とする請求項1または2に記載の生分解性樹脂
組成物。
【請求項18】
請求項1~
17のいずれか一項に記載の生分解性樹脂
組成物からなる生分解性樹脂
組成物フィルム。
【請求項19】
MDまたはTD方向の少なくとも一方に配向していることを特徴とする請求項
18に記載の生分解性樹脂
組成物フィルム。
【請求項20】
MD/ZDおよび/またはTD/ZDの配向度が170%以上であることを特徴とする請求項
19に記載の生分解性樹脂
組成物フィルム。
【請求項21】
全光線透過率が90%以上であり、ヘイズが40%以下であり、内部ヘイズが8%以下であることを特徴とする請求項
18に記載の生分解性樹脂
組成物フィルム。
【請求項22】
ヘイズが10%以下であり、内部ヘイズが5%以下であることを特徴とする請求項
21に記載の生分解性樹脂
組成物フィルム。
【請求項23】
分散相を含有し、MD/ZD面および/またはTD/ZD面における分散相のアスペクト比が1.5以上であることを特徴とする請求項
18に記載の生分解性樹脂
組成物フィルム。
【請求項24】
少なくとも一方の表面の粗さが0.05~0.5μmであることを特徴とする請求項
18に記載の生分解性樹脂
組成物フィルム。
【請求項25】
厚み変動係数が10%以下であることを特徴とする請求項
18に記載の生分解性樹脂
組成物フィルム。
【請求項26】
引張強度が60MPa以上であり、破断伸びが20%以上であり、引張弾性率が4500MPa以下であることを特徴とする請求項
18に記載の生分解性樹脂
組成物フィルム。
【請求項27】
破断伸びが100%以上であり、引張弾性率が3000MPa以下であることを特徴とする請求項
26に記載の生分解性樹脂
組成物フィルム。
【請求項28】
請求項
18~27のいずれか一項に記載の生分解性樹脂
組成物フィルムを含む多層フィルム。
【請求項29】
請求項
18~27のいずれか一項に記載の生分解性樹脂
組成物フィルムを用いた包装材料用フィルム。
【請求項30】
請求項
18~27のいずれか一項に記載の生分解性樹脂
組成物フィルムを用いた粘着テープ。
【請求項31】
請求項
28に記載の多層フィルムを用いた包装材料用フィルム。
【請求項32】
請求項
28に記載の多層フィルムを用いた粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子材料の分野に属し、生分解性樹脂組成物およびそれからなる生分解性樹脂組成物フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは、人間の生産、生活の様々な局面で利用されている重要な材料である。しかし、多くのプラスチックは、寿命の終了後に長期間で自然界に残り、処理されなければ汚染に繋がる。
【0003】
生分解性プラスチックは細菌により分解され、この材料を用いることにより上記問題を効果的に解決することができる。現在、市場に出回る生分解性プラスチックの原料としては、ポリ乳酸、ポリブチレンテレフタレートアジペート、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリブチレンサクシネート、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリプロピレンカーボネートなどがある。ポリ乳酸は加工性と機械的性質という総合的な特性に優れているため、現在の使用量が最も多い生分解性プラスチックの一つである。しかし、ポリ乳酸も、他の各種樹脂のように、様々な用途に向けた場合に一定の欠点がある。例えば、ポリ乳酸は、生分解速度が遅く、特に細菌含有量が少なく、環境温度が低い環境中ではそうである。すなわち、ポリ乳酸は、工業堆肥化の標準方法に基づいて認定を行ったときに堆肥化可能と認定されるが、家庭堆肥化法(ホームコンポスト法)や土壌中埋込法(土中埋込法)などの標準方法により堆肥化可能と認定されない。これは、ホームコンポスト条件下や土壌中埋込後に速やかに分解できず、長期間で堆肥や土壌中にとどまることを意味する。
【0004】
一方、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトンなどの比較的速やかに生分解する重合体は、工業堆肥化法、家庭堆肥化法、土中埋込法に規定された標準方法では生分解性であると考えられるが、これらの材料の加工性や使用性が満足できない。特に、これらの材料は、プラスチックフィルムとして用いられる必要がある場合、常に加工安定性、粘弾性、熱的特性などの特性が不十分なものであることを示し、厚み、特性が安定したフィルム、特に二軸延伸フィルムの製造が困難となる。また、これらの材料は、強度、バリア性、耐熱性、ヒートシール性などの使用性の点でも不十分である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
よって、ホームコンポスト条件下で、土壌中埋込後にも速やかに分解でき、堆肥や土壌中に長期間で残らず、且つ特性に優れて安定したフィルムを製造でき、食品包装などの分野へ適用できる、生分解速度が速い生分解性樹脂が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するために、1.0dL/g以上の固有粘度を有し、70℃、85%RHで、6時間処理した後の固有粘度損失率が10%以上であり、かつ、50℃、85%RHで、6時間処理した後の固有粘度損失率が10%以下である生分解性樹脂組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
前記生分解性樹脂組成物とは、一般的意義には生分解能を有していると考えられる重合体組成物であり、特に、GB/T 19277.1-2011に規定された条件に従って生分解性の評価を行ったとき、6ヶ月における相対生分解率が90%以上となる重合体組成物を意味する。ここで、相対生分解率は、対照材料の生分解率に対する試料の生分解率の百分率である。以上の定義を満たすことを前提とし、生分解性樹脂組成物は、脂肪族ポリエステル、脂肪族芳香族ポリエステル、脂肪族ポリカーボネートのうちの1種または複数種を含んでもよく、さらに、ポリ乳酸、ポリブチレンテレフタレートアジペート、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリブチレンサクシネート、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリプロピレンカーボネート、および、上記重合体の共重合体からなる群より選択される1種または複数種を含んでもよい。
【0008】
前記固有粘度(IV)は、試料をクロロホルムに溶解し、不溶物を除去した後、3±1mg/mLの溶液を調製し、ウベローデ粘度計を用いて30℃で測定したものである。固有粘度は、生分解性樹脂の分子量を特徴づけるために使用でき、固有粘度が1.0dL/g未満であると、樹脂の分子量が低く、加工性や機械的性質、熱的特性などの使用性が不十分になるおそれがある。したがって、本発明に係る生分解性樹脂組成物は、典型的には、1.0dL/g以上の特性粘度を有し、好ましくは、本発明に係る生分解性樹脂組成物は、1.2dL/g以上の特性粘度を有する。
【0009】
さらに、本発明に係る前記生分解性樹脂組成物は、70℃、85%RHで、6時間処理した後の固有粘度損失率が10%以上であり、好ましくは固有粘度損失率が18%以上であり、より好ましくは25%以上である。このような生分解性樹脂組成物は、速い生分解速度を有する。
【0010】
さらに、本発明に係る前記生分解性樹脂組成物は、50℃、85%RHで、6時間処理した後の固有粘度損失率が10%以下であり、好ましくは固有粘度損失率が6%以下である。生分解性樹脂組成物には、生分解速度が速いことが求められるが、同時に、生分解性樹脂組成物が、寿命の終了前に、優れた使用性を保つ、すなわち貯蔵安定性に優れていることも求められる。本発明者らは、50℃、85%RHで、6時間処理した後の固有粘度損失率が10%以下であり、好ましくは固有粘度損失率が6%以下である生分解性ポリエステルが、上記の貯蔵安定性を提供できることを見出した。
【0011】
さらに、生分解速度を向上させるために、前記生分解性樹脂組成物は、含有量が0.1×10-4mol/g以上のカルボキシル基を含有し、好ましくは含有量が0.1×10-4~10×10-4mol/gのカルボキシル基を含有する。カルボン酸基は、生分解性樹脂組成物中の重合体に存在してもよく、生分解性樹脂組成物中の低分子やオリゴマーに存在してもよい。カルボン酸基が少なすぎると、生分解速度が著しく上がらない。逆に、カルボン酸基が多すぎると、加工性や機械的性質、熱的特性などの使用性、および貯蔵安定性を満足させることが困難になる可能性がある。
【0012】
さらに、本発明に係る前記生分解性樹脂組成物は、ポリ乳酸を70重量%以上含有する。前記ポリ乳酸は、乳酸の単独重合体または共重合体のうちの1種または複数種である。ポリ乳酸は、乳酸などの物質を原料として脱水縮合することで得られるが、ラクチドなどの物質から開環重合することでも得られる。ここで、ラクチドとしては、L-乳酸の環状二量体であるL-ラクチド、D-乳酸の環状二量体であるD-ラクチド、D-乳酸とL-乳酸とを環状二量化したメソラクチド、またはD-ラクチドとL-ラクチドのラセミ混合物であるDL-ラクチドが挙げられる。本発明では、上記いずれのラクチドも使用可能である。乳酸の共重合体は、共重合単位として乳酸共重合単位と非乳酸共重合単位を含み、好ましくはL-乳酸および/またはD-乳酸共重合単位を85~99モル%含む。前記非乳酸共重合単位は、好ましくは、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシオクタン酸、グリコリド、カプロラクトンのうちの1種または複数種である。
【0013】
前記生分解性樹脂組成物は、ポリ乳酸を70重量%以上含有することで、加工性や機械的性質、熱的特性などの使用性を向上するのに役立つ。より好ましくはポリ乳酸を80重量%以上含有し、さらに好ましくはポリ乳酸を85%重量以上含有する。
【0014】
さらに、加工性や機械的性質、熱的特性などの使用性、および貯蔵安定性を向上させる観点から、前記ポリ乳酸の数平均分子量は、好ましくは50,000以上であり、より好ましくは80,000以上である。
【0015】
さらに、生分解性、加工性、機械的性質などの特性を向上させる観点から、前記ポリ乳酸の光学純度は、好ましくは83~96%、より好ましくは86~90%である。前記光学純度とは、標準対照品の比旋度に対する化合物の比旋度の比であり、ポリ乳酸である場合、L-ポリ乳酸の比旋度(-156°)に対する試料の比旋度の比である。ポリ乳酸の光学純度は、ポリ乳酸セグメントを構成するL-乳酸単位とD乳酸単位の含有量を調整することにより制御でき、より簡単に言えば、D乳酸単位の含有量が異なる2種以上のポリ乳酸を併用することにより制御できる。例えば、光学純度が97%以上のポリ乳酸と光学純度が96%以下のポリ乳酸を所定の重量比で併用することで光学純度の異なるポリ乳酸を得ることができる。好ましくは、前記光学純度が97%以上のポリ乳酸と光学純度が96%以下のポリ乳酸の配合比は40:60~90:10である。光学純度は、旋光計により1%の精度で測定することができる。なお、前記測定方法より測定した光学純度は、精度1%で表される。即ち、光学純度が97%以上のポリ乳酸は、前記測定方法より測定した光学純度が97%、98%またはそれよりも高いポリ乳酸のことを意味し、光学純度が96%以下のポリ乳酸は、前記測定方法より測定した光学純度が96%、95%またはそれよりも低いポリ乳酸のことを意味する。
【0016】
さらに、生分解性、加工性、機械的性質などの特性を向上させる観点から、前記ポリ乳酸の融解エンタルピーは、好ましくは10~58J/gであり、より好ましくは20~35J/gである。ポリ乳酸の融解エンタルピーが10J/g未満では、ポリ乳酸の加工性、機械的性質が悪くなる。ポリ乳酸の融解エンタルピーが42J/gを超えると、生分解速度が遅すぎる。
【0017】
さらに、生分解性、加工性、機械的性質などの特性を向上させる観点から、好ましくは、前記生分解性樹脂組成物は120℃~135℃の間に2回目の昇温での冷結晶化温度が存在する。
【0018】
前記融解エンタルピーおよび2回目の昇温での冷結晶化温度は、示差走査熱量計により測定される。
【0019】
さらに、生分解速度を向上させるために、前記生分解性樹脂組成物は、カルボキシル基、酸無水物基、スルホン酸基、ヒドロキシル基、アミン基のうちの少なくとも一つを有する化合物を含有し、前記化合物の含有量が0.1~10重量%である。好ましくは、前記生分解性樹脂組成物は0.1~5重量%の前記化合物を含有する。好ましくは、前記生分解性樹脂組成物は、0.1~10重量%のカルボン酸および/またはカルボン酸無水物を含有し、より好ましくは、前記生分解性樹脂組成物は、0.1~5重量%のカルボン酸および/またはカルボン酸無水物を含有する。
【0020】
カルボン酸は、カルボキシル基を有する有機化合物である。酢酸、酪酸、ステアリン酸などの一塩基酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸などの二塩基酸、およびクエン酸などの多塩基酸が挙げられる。また、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸などの飽和カルボン酸や、オレイン酸、ドコサへキサエン酸、マレイン酸などの不飽和カルボン酸も挙げられる。
【0021】
カルボン酸無水物は、酸無水物基を有する有機化合物である。コハク酸無水物、グルタル酸無水物、n-カプロン酸無水物などの飽和カルボン酸無水物や、クロトン酸無水物、マレイン酸無水物などの不飽和カルボン酸無水物が挙げられる。
【0022】
カルボン酸および/またはカルボン酸無水物が少なすぎると、生分解速度の向上効果は明らかではない。カルボン酸および/またはカルボン酸無水物が多すぎると、生分解性樹脂組成物の加工性や機械的性質、熱的特性などの使用性、および貯蔵安定性の大幅な低下につながる。
【0023】
さらに、前記カルボン酸および/またはカルボン酸無水物の炭素数は4個以上である。より好ましくは、前記カルボン酸は、コハク酸、2-メチル-2ヒドロキシコハク酸、プロピルコハク酸、グルタル酸、2-メチル-グルタル酸、3-メチル-グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ガラクタル酸、クエン酸、シクロへキサンカルボン酸、安息香酸、ナフタレンカルボン酸、テトラヒドロキシコハク酸、テトラメチルコハク酸、アミノペンタン酸、ヘプタン酸、イソヘプタン酸、オクタン酸、アミノオクタン酸、イソオクタン酸、ノナン酸、アミノノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、へキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ドコサン酸、テトラコサン酸、へキサコサン酸、トリコサン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸、桂皮酸、イソ桂皮酸、エレオステアリン酸、エレオステアリン酸、リシノール酸のうちの1種または複数種であり、前記カルボン酸無水物は、ヘキサン酸無水物、サリチル酸無水物、ペンタン酸無水物、オクタン酸無水物、ヘプタン酸無水物、コハク酸無水物、グルタル酸無水物、安息香酸無水物、マレイン酸無水物、フェノキシ酢酸無水物、フタル酸無水物、ポリセバシン酸無水物、マレイン酸無水物含有重合体のうちの1種または複数種である。
【0024】
本発明者は、このようなカルボン酸および/またはカルボン酸無水物を適量含有することにより、加工性、機械的性質、熱的特性などの使用性および貯蔵安定性を効果的に維持しながら、生分解性樹脂組成物の生分解速度を著しく向上させることができることを見出した。
【0025】
さらに、前記生分解性樹脂組成物は、2種以上のカルボン酸を含有するか、1種以上のカルボン酸と1種以上のカルボン酸無水物を含有する。より好ましくは、前記生分解性樹脂組成物は、セバシン酸とアジピン酸を含有するか、セバシン酸とグルタル酸無水物を含有する。本発明者は、これらのカルボン酸および/またはカルボン酸無水物の組み合わせが、生分解性樹脂組成物の生分解速度を向上させるのに特に有利であると共に、加工性、機械的性質、熱的特性などの使用性および貯蔵安定性を効果的に維持できることを見出した。
【0026】
さらに、生分解速度の向上、フィルム製品の柔軟性、伸び、厚み偏差などの特性の向上のために、好ましくは、前記生分解性樹脂組成物は、ポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステル、脂肪族・芳香族共重合エステル、脂肪族ポリカーボネートのうちの1種または複数種を含有する。好ましくは、前記生分解性樹脂組成物は、ポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステル、脂肪族・芳香族共重合エステル、脂肪族ポリカーボネートのうちの1種または複数種を5~50重量%含有し、より好ましくは、ポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステル、脂肪族・芳香族共重合エステル、脂肪族ポリカーボネートのうちの1種または複数種を10~30重量%含有する。
【0027】
好ましくは、前記生分解性樹脂組成物は、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンテレフタレートアジペート、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリプロピレンカーボネート、ポリグリコール酸、またはこれらの重合体の共重合体や、誘導体のうちの1種または複数種を5~50重量%含有する。より好ましくは、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンテレフタレートアジペート、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリプロピレンカーボネート、ポリグリコール酸、またはこれらの重合体の共重合体や、誘導体のうちの1種または複数種を10~30重量%含有する。
【0028】
前記ポリカプロラクトン(PCL)は、-OCO(CH2)5-繰り返し単位を含有する重合体であり、通常、カプロラクトン単量体が開環重合してなる重合体である。前記ポリブチレンサクシネート(PBS)は、コハク酸とブチレングリコールとの重合体である。前記ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)は、コハク酸とアジピン酸とブチレングリコールとの重合体である。前記ポリブチレンテレフタレートアジペート(PBAT)は、アジピン酸とテレフタル酸とブチレングリコールとの重合体である。前記ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)は、-O-CHR-(CH2)m-CO-繰り返し単位(ここで、Rがアルキル基であり、mが1以上の整数である。)を含有する重合体であり、通常、天然の食糖または脂質から細菌発酵により生成した鎖状ポリエステルであり、例えば、ポリ3-ヒドロキシブチレート、ポリ3-ヒドロキシバレレート、ポリ3-ヒドロキシオクタノエート、ポリ3-ヒドロキシドデカノエート、およびその共重合体である。前記ポリプロピレンカーボネート(PPC)は、-CH2CHCH3OCOO-繰り返し単位を含有する重合体であり、通常、二酸化炭素とプロピレンオキシドを原料として合成された重合体である。前記ポリグリコール酸(PGA)は、-CH2COO-繰り返し単位を含有する重合体であり、通常、グリコール酸またはグリコリドから合成され、ポリヒドロキシアセテート、あるいは、ポリグリコリドとも呼ばれる。
【0029】
さらに、生分解速度の向上および柔軟性などの機械的性質の改善のために、前記生分解性樹脂組成物は、金属元素を50~500ppm含有する。さらに、前記金属元素がナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、鉄、銅、錫のうちの1種または複数種である。金属元素の存在は、前記ポリ乳酸とほかの樹脂や添加剤とのエステル交換、鎖伸長などの反応に有利であり、相溶性を高めることができる。
【0030】
さらに、前記生分解性樹脂組成物は、分散相を含有し、分散相の平均径が0.5~6.0μmである。
【0031】
本発明に係る前記生分解性樹脂組成物には、本発明の目的を達成することを妨げない範囲で、充填剤、可塑剤、相溶化剤、末端封止剤、難燃剤、核剤、酸化防止剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤、または発泡剤などの添加剤のうちの1種または複数種を使用してもよい。
【0032】
前記充填剤としては、ゴム・プラスチック分野で一般的に用いられる繊維状、フレーク状、粒状または粉末状の充填剤を用いることができ、無機または有機充填剤がある。無機充填剤としては、具体的に、ガラス繊維、アスベスト繊維、炭素繊維、グラフアイト繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、マグネシウム系ウイスカー、シリコン系ウイスカー、ウォラストナイト、セピオライト、アスベスト、スラグ繊維、トバモライト、シリカアパタイト、石膏繊維、シリカ繊維、シリカ/アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素繊維またはホウ素繊維などの繊維状無機充填剤のうちの1種または複数種や、ガラスフレーク、非膨潤性マイカ、膨潤性マイカ、グラフアイト、金属箔、セラミックビーズ、タルク、クレー、マイカ、セリサイト、ゼオライト、ベントナイト、バーミキュライト、モンモリロナイト、ドロマイト、カオリン、微粉珪酸、長石粉、チタン酸カリウム、微細中空ガラス球、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、二酸化チタン、ベーマイトアルミナ、シリカ、石膏、均密石英岩、ドーソナイトまたは白土などのフレーク状または粒状の無機質充填剤のうちの1種または複数種が挙げられる。有機充填剤としては、具体的に、デンプン、セルロース、麻繊維または竹繊維などの植物性繊維、羊毛繊維などの動物性繊維、アラミド繊維または芳香族ポリエステル繊維などの有機合成繊維のうちの1種または複数種が挙げられる。上記充填剤は、樹脂との界面接着性を向上させるために、任意の形態の表面処理を施すことができる。
【0033】
前記可塑剤としては、特に限定されないが、ヒドロキシル安息香酸-2-エチルへキシルなどのヒドロキシル安息香酸エステル、グリセリンのエチレンオキサイド付加物の酢酸エステルなどの多価アルコールエステル、フタル酸ジ2-エチルへキシルなどのフタル酸エステル、アジピン酸ジオクチルなどのアジピン酸エステル、マレイン酸ジn-ブチルなどのマレイン酸エステル、アセチルクエン酸トリブチルなどのクエン酸エステル、トリクレジルホスフェートなどのアルキルリン酸エステル、トリメリット酸トリオクチルなどのトリカルボン酸エステル、コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステル、アジピン酸とジエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステル、1,3,6-へキサントリカルボン酸とポリエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステルなどの多価カルボン酸のアルキルエーテルエステル、アセチル化ポリオキシエチレンへキシルエーテルなどのアセチル化ポリオキシエチレンアルキル(アルキルの炭素数2~15)エーテル、エチレンオキサイドの付加モル数が3~20であるポリエチレングリコールジアセテート、ポリエチレンオキシド-1,4-ブチレングリコールエーテルジアセテート、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール重合体のポリエーテル、大豆油、オリーブ油などの油脂など、または前記化学構造とポリ乳酸との重合体などが挙げられる。好ましくは、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ブチルベンジル、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、グリセリントリアセテート、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール共重合体、ポリ乳酸・エチレングリコール共重合体、ポリ乳酸・プロピレングリコール共重合体、大豆油、またはエポキシ大豆油のうちのうちの1種または複数種である。上記可塑剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
前記相溶化剤としては、エポキシ官能基、イソシアネート官能基、カルボジイミド官能基、酸無水物官能基、シラン官能基、オキサゾリン官能基、またはホスファイト官能基のうちの1種または複数種を含む化合物であって、該化合物に含まれる上記官能基の総数が2つ以上である化合物が挙げられる。相溶化剤としては、具体的には、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート、へキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、リジントリイソシアネート、γ-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、ポリカルボジイミド、エチレン・アクリレート・マレイン酸無水物三元共重合体、またはエポキシ官能基を有するアクリレート系重合体のうちの1種または複数種であることができる。
【0035】
前記末端封止剤としては、エポキシ官能基、イソシアネート官能基、カルボジイミド官能基、酸無水物官能基、シラン官能基、オキサゾリン官能基、またはホスファイト官能基のうちの1種を含む化合物であって、該化合物中に含まれる上記官能基の総数が1つである化合物が挙げられる。
【0036】
さらに、環境保護の観点から、前記生分解性樹脂組成物のバイオマス度は、好ましくは70%であり、より好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。
【0037】
さらに、好ましくは、前記生分解性樹脂組成物は、ASTM D5338-15に規定された条件に従って28℃におけるホームコンポストによる分解性の評価を行ったとき、12か月以内に相対生分解率が90%以上となる。
【0038】
さらに、好ましくは、前記生分解性樹脂組成物は、ASTM D5988-18に規定された条件に従って土壌分解性の評価を行ったとき、24か月以内に生分解率が90%以上となる。
【0039】
本発明は、さらにポリ乳酸を70重量%以上含有し、ASTM D5338-15に規定された条件に従って28℃におけるホームコンポストによる分解性の評価を行ったとき、12か月以内に相対生分解率が90%以上となる生分解性樹脂組成物を提供する。
【0040】
さらに、本発明に係る前記生分解性樹脂組成物の固有粘度は、好ましくは1.0dL/g以上であり、より好ましくは1.2dL/g以上である。
【0041】
さらに、好ましくは、本発明に係る前記生分解性樹脂組成物は70℃、85%RHで、6時間処理した後の固有粘度損失率が18%以上である。
【0042】
さらに、好ましくは、本発明に係る前記生分解性樹脂組成物は50℃、85%RHで、6時間処理した後の固有粘度損失率が10%以下であり、より好ましくは6%以下である。
【0043】
さらに、好ましくは、本発明に係る前記生分解性樹脂組成物は含有量が0.1×10-4mol/g以上のカルボキシル基を含有し、より好ましくは含有量が0.1×10-4~10×10-4mol/gのカルボキシル基を含有する。
【0044】
さらに、好ましくは、本発明に係る前記生分解性樹脂組成物はポリ乳酸を80重量%以上含有する。
【0045】
さらに、好ましくは、本発明に係る前記生分解性樹脂組成物は前記ポリ乳酸の数平均分子量が50,000以上である。
【0046】
さらに、好ましくは、本発明に係る前記生分解性樹脂組成物は前記ポリ乳酸の光学純度が83~96%である。
【0047】
さらに、好ましくは、本発明に係る前記生分解性樹脂組成物はポリ乳酸の融解エンタルピーが10~58J/gであり、より好ましくは20~35J/gである。
【0048】
さらに、好ましくは、本発明に係る前記生分解性樹脂組成物は120℃~135℃の間に2回目の昇温での冷結晶化温度が存在する。
【0049】
さらに、好ましくは、本発明に係る前記生分解性樹脂組成物はカルボキシル基、酸無水物基、スルホン酸基、ヒドロキシル基、アミン基のうちの少なくとも一つを有する化合物を含有し、前記化合物の含有量が0.1~10重量%である。
【0050】
さらに、好ましくは、本発明に係る前記生分解性樹脂組成物はカルボン酸および/またはカルボン酸無水物を含有し、前記カルボン酸および/またはカルボン酸無水物の含有量が0.1~10重量%である。
【0051】
さらに、好ましくは、前記カルボン酸および/またはカルボン酸無水物の炭素数が4以上である。
【0052】
さらに、好ましくは、前記カルボン酸がコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シクロへキサンカルボン酸、安息香酸、ナフタレンカルボン酸のうちの1種または複数種であり、前記カルボン酸無水物がコハク酸無水物、グルタル酸無水物、安息香酸無水物、マレイン酸無水物、フェノキシ酢酸無水物、フタル酸無水物、ポリセバシン酸無水物、マレイン酸無水物含有重合体のうちの1種または複数種である。
【0053】
さらに、好ましくは、本発明に係る前記生分解性樹脂組成物はポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンテレフタレートアジペート、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリプロピレンカーボネート、ポリグリコール酸、またはこれらの重合体の共重合体や、誘導体のうちの1種または複数種を5~50重量%含有する。
【0054】
さらに、好ましくは、本発明に係る前記生分解性樹脂組成物は金属元素を50~500ppm含有する。
【0055】
さらに、前記金属元素がナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、鉄、銅、錫のうちの1種または複数種である。
【0056】
さらに、好ましくは、本発明に係る前記生分解性樹脂組成物は分散相を含有し、分散相の平均径が0.5~6.0μmである。
【0057】
本発明は、さらに上記生分解性樹脂組成物からなる生分解性樹脂組成物フィルムを提供する。
【0058】
前記生分解性樹脂組成物フィルムは、上記した生分解性樹脂組成物を原料とし、公知の成型方法、例えば、押出、流延、プレス、インフレーション、カレンダー、一軸延伸、二軸延伸などの方法により製造してもよく、さらに熱処理を経て製造してもよい。
【0059】
前記生分解性樹脂組成物フィルムの厚みは、特に限定されないが、一般に1μm~5mmである。
【0060】
さらに、前記生分解性樹脂組成物フィルムは、機械的性質および生産効率を向上させるために、MD(長さ方向)またはTD(幅方向)の少なくとも一方に配向している。前記配向は、一軸または二軸延伸によって製造することができる。二軸延伸の場合、フィルムの2つの方向(MDとTD)の延伸倍率は、同じであってもよく異なっていてもよい。フィルムの偏光ラマンスペクトルには、ある特定の特徴的なピークが存在し、そのピーク強度はフィルムの配向度に関係する。ポリ乳酸を含むフィルムについて、873cm-1(ピーク値をPと記する)と1769cm-1(ピーク値をQと記する)におけるピークを特徴的なピークとし、下記方法により配向フィルムであるか否かを判断することができる。試料フィルムの断面について、偏光ラマンスペクトル測定を行い、フィルムの長さ方向(MD)、フィルムの幅方向(TD)および厚み方向(ZD)のPとQが得られ、3つの方向でのP/Q値をそれぞれ計算し、(P/Q)MD、(P/Q)TD、(P/Q)ZDと記し、さらに(P/Q)MD/(P/Q)ZDおよび(P/Q)TD/(P/Q)ZD値を計算する。上記方法により測定を5回繰り返し、各測定では、測定箇所を200μmずつ離れ、測定箇所の方向は任意である。(P/Q)MD/(P/Q)ZDの平均値と(P/Q)TD/(P/Q)ZDの平均値を求める。ある平均値が1.1以上であれば、フィルムはこの方向に配向されている。
【0061】
さらに、好ましくは、MD/ZDおよび/またはTD/ZDの配向度が170%以上である。
【0062】
また、印刷性、ラミネート適性、塗布適性などを向上させる目的で、本発明に係る前記生分解性樹脂組成物フィルムは、さらに種々の表面処理を施すこともできる。表面処理の方法としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、フレーム処理、酸処理、離型処理などが挙げられる。
【0063】
さらに、前記生分解性樹脂組成物フィルムの透明性を向上させるために、前記生分解性樹脂組成物フィルムの全光線透過率が90%以上であり、および/またはヘイズが40%以下であり、および/または内部ヘイズ8%以下である。好ましくは、前記生分解性樹脂組成物フィルムの全光線透過率が90%以上であり、ヘイズが40%以下であり、内部ヘイズ20%以下である。より好ましくは、全光線透過率が90%以上であり、ヘイズが33%以下であり、内部ヘイズが11%以下である。
【0064】
さらに、前記生分解性樹脂組成物フィルムは、分散相を含有し、MD/ZD面および/またはTD/ZD面における分散相のアスペクト比が1.5以上であり、好ましくは2.0以上である。前記アスペクト比は、成分や配向(一軸または二軸延伸)などのフィルム作製条件を適宜選択することにより達成できる。
【0065】
さらに、使用時の滑らかさの向上や、バリア包装材料としての際の蒸着層との相乗作用によるバリア性の向上のために、前記生分解性樹脂組成物フィルムは、少なくとも一方の表面の粗さが0.05~0.5μmである。
【0066】
滑らかさの向上、表面粗さの低減、厚み偏差の低減、並びに柔軟性および伸びの向上のために、好ましくは、前記生分解性樹脂組成物は、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンテレフタレートアジペート、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリプロピレンカーボネート、またはこれらの重合体の共重合体や、誘導体のうちの1種または複数種を5~50重量%含有する。より好ましくは、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンテレフタレートアジペート、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリプロピレンカーボネート、またはこれらの重合体の共重合体や、誘導体のうちの1種または複数種を10~30重量%含有する。さらに好ましくは、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンテレフタレートアジペート、またはこれらの重合体の共重合体や、誘導体のうちの1種または複数種を10~30重量%含有する。上記した好ましいMD/ZD面および/またはTD/ZD面における分散相のアスペクト比を達成するために、最も好ましくは、前記生分解性樹脂組成物は、ポリカプロラクトンを10~30重量%含有する。
【0067】
さらに、機械的性質などの使用性の均一性を向上させるために、前記生分解性樹脂組成物フィルムの厚み変動係数が10%以下である。前記厚み変動係数とは、平均厚みに対する厚みの標準偏差の比である。成分を適宜選択することで、前記生分解性樹脂組成物フィルムの厚み変動係数が10%以下であることを実現できる。特に、前記生分解性樹脂組成物にポリカプロラクトンを10~30重量%含有させることで実現できる。
【0068】
さらに、使用性を向上させるために、前記生分解性樹脂組成物フィルムの引張強度が60MPa以上であり、破断伸びが20%以上であり、引張弾性率が4500MPa以下である。好ましくは、引張強度が70MPa以上であり、破断伸びが100%以上であり、引張弾性率が3000MPa以下である。
【0069】
さらに、前記生分解性樹脂組成物フィルムは、ASTM D5338-15に規定された条件に従って28℃におけるホームコンポストによる分解性の評価を行ったとき、12か月以内に相対生分解率が90%以上となる。
【0070】
さらに、前記生分解性樹脂組成物フィルムは、ASTM D5988-18に規定された条件に従って土壌分解性の評価を行ったとき、24か月以内に相対生分解率が90%以上となる。
【0071】
さらに、前記生分解性樹脂組成物フィルムは、1.0dL/g以上の固有粘度を有し、70℃、85%RHで、6時間処理した後の固有粘度損失率が10%以上であり、好ましくは18%以上である。
【0072】
さらに、前記生分解性樹脂組成物フィルムは、50℃、85%RHで、6時間処理した後の固有粘度損失率が10%以下であり、好ましくは6%以下である。
【0073】
本発明者らは、一軸延伸または二軸延伸して得られた生分解性樹脂組成物フィルムをさらに120~150℃で0.1~5分間処理することにより、70℃、85%RHで、6時間処理した後の固有粘度損失率が10%以上(好ましくは25%以上)であり、50℃、85%RHで、6時間処理した後の固有粘度損失率が10%以下(好ましくは6%以下)であるという効果を奏するのに非常に有利であることを見出した。
【0074】
本発明は、さらに上記生分解性樹脂組成物フィルムからなる多層フィルムを提供する。前記多層フィルムは、2層以上を有するフィルムである。異なる層が異なる機能を有していてもよいので、多層フィルムは、単層フィルムに比べ、多種多様なニーズを提供することができる。
【0075】
前記多層フィルムの厚みは、特に限定されないが、一般に1μm~5mmである。
【0076】
さらに、本発明に係る前記多層フィルムは、蒸着層、ヒートシール層、粘着層、接着層のうちの少なくとも1種を含むものである。
【0077】
前記蒸着層は、金属、金属酸化物およびシリカよりなる群から選ばれる少なくとも1種の蒸着材料から形成されるので、このような蒸着層が存在することで、水分や酸素、二酸化炭素などのガスの透過を抑制でき、基材フィルムのバリア性、機械的性質および外観を向上することができる。
【0078】
前記ヒートシール層は、熱可塑性または熱硬化性樹脂組成物を含むフィルム層であり、該フィルム層は、比較的低い加熱、加圧条件下で、溶融、凝固により対向するフィルム層と連結し、密封構造を形成する。前記ヒートシール層は、本発明に係る前記生分解性樹脂組成物フィルムと同じ成分と同じ成分を有していてもよく、異なっていてもよい。
【0079】
前記粘着層は、粘着後に容易に再度分離可能な粘着剤、例えばアクリレート系、ゴム系、ポリウレタン系などの粘着剤を含む固形、半固形または液状の層状材料であり、多層フィルムにおける異なる層を接続するか、多層フィルムと他の物品とを接続するものである。
【0080】
前記接着層は、加熱または他の方法により硬化可能な固形、半固形または液状の層状材料であり、接着硬化後に容易に分離できない点で上記粘着層と異なる。該接着層は、硬化系接着剤、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のうちの1種または複数種を含み、多層フィルムにおける異なる層を連結するためのものである。
【0081】
さらに、本発明に係る前記多層フィルムは、より良好なバリア性を提供するために、水蒸気透過係数が10g・μm/m2以下であり、好ましくは5g・μm/m2以下である。
【0082】
さらに、本発明に係る前記多層フィルムは、より良好なバリア性を提供するために、酸素透過係数が1000cc・μm/m2以下であり、好ましくは500cc・μm/m2以下である。
【0083】
本発明は、さらに上記生分解性樹脂組成物フィルムを用いた包装材料用フィルムを提供する。
【0084】
本発明は、さらに上記生分解性樹脂組成物フィルムを用いた粘着テープを提供する。
【0085】
本発明は、さらに上記多層フィルムを用いた包装材料用フィルムを提供する。
【0086】
本発明は、さらに上記多層フィルムを用いた粘着テープを提供する。
【0087】
本発明に係る前記生分解性樹脂組成物、前記生分解性樹脂組成物を用いたフィルムおよび多層フィルム、並びに前記生分解性樹脂組成物フィルムを用いた包装材料用フィルム、粘着テープなどの製品は、迅速な生分解性と貯蔵安定性を兼ね備え、また機械的性質、光学的性質、バリア性が良好であり、包装や宅配便輸送など多用途に使用でき、寿命の終了後、二酸化炭素や水などの小分子に速やかに生分解され、環境を汚染しないものである。
【実施例】
【0088】
以下に示す本発明の具体的な実施例、参考例および比較例により、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の範囲は下記実施例に限定されるものではない。
【0089】
実施例、参考例と比較例に用いられる材料は、下記の通りである。
A1:ポリ乳酸、米国Natureworks社製、規格:4032D、数平均分子量110,000、バイオマス材料、光学純度:98%。
A2:ポリ乳酸、米国Natureworks社製、規格:4060D、数平均分子量110,000、バイオマス材料、光学純度:78%。
B1:セバシン酸、中国国薬試薬社製、規格:AR、バイオマス材料。
B2:アジピン酸、中国国薬試薬社製、規格:AR、非バイオマス材料。
B3:グルタル酸無水物、中国国薬試薬社製、規格:AR、非バイオマス材料。
B4:セバシン酸アンモニウム、中国国薬試薬社製、規格:AR、バイオマス材料。
C1:ポリカプロラクトン(PCL)、米国Ingevity社製、規格:Capa 6500D、数平均分子量70,000、非バイオマス材料。
C2:ポリブチレンサクシネート(PBS)、中国Blue Ridge Tunhe社製、規格:TH803S、数平均分子量50,000、非バイオマス材料。
C3:ポリ3-ヒドロキシルブチレート(P3HB)、寧波天安社製、規格:Y3000、バイオマス材料。
D1:ステアリン酸亜鉛、中国Aladdin試薬社製、規格:AR、非バイオマス材料。
D2:クエン酸カルシウム、中国国薬試薬社製、規格:AR、バイオマス材料。
E1:エポキシ化合物、ドイツBASF社製、規格:Joncryl ADR 4468、非バイオマス材料。
E2:スチレン・アクリロニトリル・グリシジルメタクリレート三元ランダム共重合体(SAG-008)、中国Fine-Blend社製、規格:Fine-blend SAG-008、非バイオマス材料。
【0090】
実施例、参考例および比較例に用いられる原料、試料について、下記の実験方法より測定した。試験温度は、特に断りのない限り、すべて23℃であった。
【0091】
固有粘度(IV):試料をクロロホルムに溶解し、孔径2~5μmのサンドコアファンネル(sand core funnel)を用いて不溶物を吸引ろ過にて除去した後、溶質含有量が3±1mg/mLのクロロホルム溶液を調製し、毛細管径0.3~0.4mmのウベローデ粘度計を用いて30℃で試料溶液の流出時間Tを測定した。別途で、同じ条件にて純粋なクロロホルムの流出時間Toを測定し、下記式により固有粘度を算出した。
IV=[ln(T/To)]/c
【0092】
固有粘度損失率:試料をEspec社のPL-2J型恒温恒湿器に置いて湿熱処理した。湿熱処理の条件は、70℃、85%RH、6時間で、または50℃、85%RH、6時間であった。上記方法により、湿熱処理前の試料の固有粘度(IV1)と湿熱処理後の試料の固有粘度(IV2)を測定した。下記式により固有粘度損失率(ΔIV%)を算出した。
ΔIV%=(IV1-IV2)/IV1×100%
【0093】
カルボキシル基の含有量:質量Mの試料をクロロホルムに溶解し、0.1重量%のクレゾールレッドエタノール溶液を2滴加え、モル濃度NのKOH標準溶液で校正し、溶液が黄色から褐色に変化し且つ15秒以内に退色しない時点を終点とし、用いられたKOH標準溶液の体積をVとして記録した。別途で同じ体積のクロロホルムを用い、0.1重量%のクレゾールレッドエタノール溶液を2滴加え、モル濃度NのKOH標準溶液で校正し、溶液が黄色から褐色に変化し且つ15秒以内に退色しない時点を終点とし、用いられたKOH標準溶液の体積をV0として記録した。下記式によりカルボキシル基の含有量を算出した。
カルボキシル基の含有量=(V-V0)×N/M
【0094】
数平均分子量:アジレント社の1260型ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定し、ジクロロメタンを移動相とし、3回測定し、平均値を取った。
【0095】
光学純度:試料中のポリ乳酸を抽出し、日本ATAGO社のSAC-i型全自動旋光計を用い、ジクロロメタンを溶媒とし、6回測定し、抽出試料中のポリ乳酸の比旋度の平均値を取った。下記式により光学純度を算出した。ここで、PLLA標準品の比旋度は-156°である。
光学純度=100%×試料比旋度の平均値/PLLA標準品の比旋度
【0096】
バイオマス度:試料の成分に応じ、成分中の生物由来の有機物の重量部をMとし、成分中の非生物由来の有機物の重量部をNとし、下記式によりバイオマス度を算出した。
バイオマス度=M/(M+N)×100%
【0097】
ホームコンポストによる分解性:堆肥温度を28±2℃にし、ほかの条件をASTM D5338-15に規定された条件にし、生分解性の評価を行った。12か月以内に相対生分解率が90%以上となる場合は、ホームコンポストによる分解性があり、「〇」とし、そうでない場合は、ホームコンポストによる分解性が無く、「×」とした。
【0098】
土壤中分解性:ASTM D5988-18に規定された条件に従って生分解性の評価を行った。24か月以内に相対生分解率が90%以上となる場合は、土壤中分解性があり、「〇」とし、そうでない場合は、土壤中分解性が無く、「×」とした。
【0099】
配向度:5cm×5cmの試料を用い、日本Horiba社のラマン分光計により、偏光モードで、試料フィルムの断面について偏光ラマンスペクトル測定を行った。873cm-1(ピーク値をPと記する)と1769cm-1(ピーク値をQと記する)におけるピークを測定し、特徴的なピークとした。フィルムの長さ方向(MD)、フィルムの幅方向(TD)および厚み方向(ZD)のPとQを得た。3つの方向でのP/Q値をそれぞれ計算し、(P/Q)MD、(P/Q)TD、(P/Q)ZDと記し、さらに(P/Q)MD/(P/Q)ZDおよび(P/Q)TD/(P/Q)ZD値を計算した。上記方法により測定を5回繰り返し、各測定では、測定箇所を200μmずつ離れ、測定箇所の方向は任意であった。(P/Q)MD/(P/Q)ZDの平均値と(P/Q)TD/(P/Q)ZDの平均値を求めた。(P/Q)MD/(P/Q)ZDの平均値と(P/Q)TD/(P/Q)ZDの平均値をそれぞれMD配向度とTD配向度と記した。
【0100】
ポリ乳酸の融解エンタルピーおよび2回目の昇温での冷結晶化温度:TA社のDSC Q100型示差走査熱量計を用い、10℃/分間の速度で0℃から215℃まで昇温し(1回目の昇温過程)、215℃で3分間保持した。10℃/分間の速度で0℃まで降温し、0℃で3分間保持した。10℃/分間の昇温速度で215℃まで昇温し(2回目の昇温過程)、2回目の昇温過程におけるピーク値温度が130~180℃の溶融ピークをポリ乳酸の融解エンタルピーとして測定し、2回目の昇温過程における放熱ピークのピーク値温度を2回目の昇温での冷結晶化温度とした。
【0101】
分散相の平均径dおよびアスペクト比:試料をRuO
4で染色し、観察する方向に沿って超薄く切片した後、断面を日本電子社の透過型電子顕微鏡JEOL2010(TEM)で観察した。樹脂
組成物の観察方向は任意であった。フィルムの観察方向は、MD/ZD面、TD/ZD面であった。試料の異なる位置の拡大倍率5000倍の写真を無作為に5枚ずつ撮影し、ペンで分散相の輪郭を描いた後、画像処理ソフトImageJ 1.46rで各分散相の面積Sおよび輪郭上の最も離れた2点の長さLを算出した。さらに、下記式により各分散相の直径d(面積が分散相と等しい円の直径をこの直径dとした)を算出した。
【数1】
なお、分散相の長さLと分散相の直径dとの比を分散相のアスペクト比とした。
【0102】
厚みおよび厚み変動係数:三洋計器社の7050型厚み測定計を用い、試料から均等に9箇所を選択し、各箇所の厚みをそれぞれ測定し、平均値を試料の厚みとした。さらに、下記式により厚み変動係数を算出した。
厚み変動係数=厚みの標準偏差/厚み×100%
【0103】
透明性:5cm×5cmの試料について、日本SUGA社のヘイズ計HZ-V3を用い、D65を光源とし、ヘイズおよび光線透過率を測定した。3cm×5cmの試料を95%の分析グレードの純エタノールが入ったセルに入れ、D65を光源とし、測定したヘイズを内部ヘイズとした。
【0104】
表面粗さ:5cm×5cmの試料について、日本Ryoka社の非接触表面測定器VertScan-R5300を用い、表面算術平均高さSaを表面粗さとして測定した。
【0105】
引張強度、破断伸び、引張弾性率:DUMBBELL SD-100測定片作製機で寸法150mm×10mmの試験片を作製した。日本島津製作所製の引張試験機AG-IS 1KNで試験片の引張強度および破断伸びを測定した。つかみ間隔を50mm、引張速度を100mm/minとした。測定を5回繰り返した。
【0106】
金属元素の含有量:米国Thermo Fisher Scientific社の誘導結合プラズマ発光分光計Icap7600を用い、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、鉄、銅、スズ金属元素の合計含有量を測定した。
【0107】
水蒸気透過係数(WVP):厚みTの試料について、米国AMETEK MOCON社の3/34G型水蒸気透過率測定計を用い、38℃、90%RHの測定環境で、標準ASTM F1249-13に従って水蒸気透過率(WVTR)を測定した。下記式により水蒸気透過係数を測定した。
WVP=T×WVTR
【0108】
酸素透過係数(OTP):厚みTの試料について、米国AMETEK MOCON社の2/22H型酸素透過率測定計を用い、20℃、0%RHの測定環境で、標準ASTM D3985-17に従って酸素透過率(OTR)を測定した。下記式により酸素透過係数を測定した。
OTP=T×OTR
実施例2~10,12~20、参考例1~3および比較例1~4
【0109】
TOYOSEIKI社製のC4150-01型混練機を用い、原料を180℃、100rpmで6分間混練し、表1、表2に示される成分を含有する生分解性樹脂組成物を製造した。
【0110】
次いで、TOYOSEIKI社製のMINI TEST PRESS型成形機を用い、生分解性樹脂組成物を180℃で成形し、氷水で急冷し、厚み200μmの成形品を作成し、そしてBruckner社製のKARO-IV型二軸延伸機を用い、80℃で、5%/sの引張速度で同時に3×3二軸延伸した後、140℃で10秒熱処理し、生分解性樹脂組成物フィルムを製造した。
【0111】
各実施例、参考例、比較例における生分解性樹脂組成物について特性測定を行った結果を表1と表2に示す。各実施例、参考例、比較例における生分解性樹脂組成物フィルムについて特性測定を行った結果を表3と表4に示す。各実施例、参考例において、フィルムの固有粘度、70℃、85%RHで、6時間処理した後の固有粘度損失率、50℃、85%RHで、6時間処理した後の固有粘度損失率、カルボキシル基の含有量、数平均分子量、光学純度、バイオマス度、ホームコンポストによる分解性、土壤堆肥化による分解性、ポリ乳酸の融解エンタルピー、2回目の昇温での冷結晶化温度、金属元素の含有量は、樹脂組成物の対応する特性測定結果と実質的に同等である。各実施例、参考例において、フィルムのMD/ZD面における分散相の平均径、アスペクト比の測定結果は、TD/ZD面における測定結果と実質的に同等である。
【0112】
各実施例における前記生分解性樹脂組成物フィルムに、必要に応じ、さらに蒸着層、ヒートシール層、粘着層、接着層などの機能性層を1層または複数層追加することができる。水蒸気透過係数が10g・μm/m2以下、好ましくは5g・μm/m2以下となり、酸素透過係数が1000cc・μm/m2以下、好ましくは500cc・μm/m2以下となるように、蒸着層を設計することができる。
【0113】
したがって、本発明に係る前記生分解性樹脂組成物は、迅速な生分解性と貯蔵安定性を兼ね備え、またバイオマス度が高い。本発明に係る前記生分解性樹脂組成物フィルムは、厚みが均一であり、機械的性質が高く、透明性に優れ、表面が滑らかである。
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】