(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】熱収縮性ポリエステル系フィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20250311BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20250311BHJP
【FI】
C08J5/18 CFD
B32B27/36
(21)【出願番号】P 2022553859
(86)(22)【出願日】2021-09-22
(86)【国際出願番号】 JP2021034742
(87)【国際公開番号】W WO2022071046
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2024-08-06
(31)【優先権主張番号】P 2020167141
(32)【優先日】2020-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】春田 雅幸
(72)【発明者】
【氏名】多保田 規
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-199570(JP,A)
【文献】国際公開第2017/170496(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/026530(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/071315(WO,A1)
【文献】特開2017-177677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
C08J 5/00-5/02
5/12-5/22
B65D 23/00-25/56
G09F 1/00-5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径が1.0μm以上5.0μm以下の微粒子を、350ppm以上20000ppm以下含むポリエステル樹脂層を少なくとも表裏面に有する単層又は積層熱収縮性ポリエステル系フィルムで、以下の(1)~(6)の要件を満足することを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。
(1)90℃の温水にフィルムを10秒間浸漬したときの温湯熱収縮率が、フィルム幅方向において40%以上80%以下
(2)90℃の温水にフィルムを10秒間浸漬したときの温湯熱収縮率が、フィルム長手方向において-5%以上10%以下
(3)少なくとも一方のフィルム面の最大突起高さSpが0.8μm以上3.0μm以下
(4)少なくとも一方のフィルム面の算術平均高さSaが0.03μm以上0.2μm以下
(5)フィルム表裏面同士での空気抜け時間が12秒以下
(6)フィルムの厚みが30μm以上50μm以下
【請求項2】
フィルム厚み30μmでのヘイズが2%以上11%以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項3】
ポリエステル系フィルム層を少なくとも2層以上積層している積層熱収縮性ポリエステル系フィルムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムを用いた熱収縮性ラベル。
【請求項5】
請求項4に記載の熱収縮性ラベルで、包装対象物の少なくとも外周の一部を被覆して熱収縮させて形成されることを特徴とする包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱収縮性ポリエステル系フィルムに関するもので、詳しくは透明性を有し、かつロール状でのシワが少なく、印刷等の加工に好適な熱収縮性ポリエステル系フィルム、熱収縮性ラベル、及び包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ガラス瓶またはプラスチックボトル等の保護と商品の表示を兼ねたラベル包装、キャップシール、集積包装等の用途に、耐熱性が高く、焼却が容易であり、耐溶剤性に優れたポリエステル系の熱収縮性フィルムが、収縮ラベルとして広範に利用されるようになってきており、PET(ポリエチレンテレフタレート)ボトル容器等の増大に伴って、使用量が増加している傾向にある。
これまではPETボトル被覆用ラベルとしては、厚物の熱収縮性フィルムが用いられてきた。しかし、包装用に用いられる熱収縮性フィルムは、内容物を利用した後は、ただのゴミとなる。そこで、なるべくゴミを減らそうという環境意識の高まりを受け、ラベルの厚みを薄くする為 フィルムメーカーも熱収縮性ポリエステル系フィルムの厚みも薄くすることを試みている。
しかし、フィルムの厚みを薄くするとフィルムの腰感が低下し、かつロール状に巻くときに空気が入り易くなってフィルムの空気抜けが悪いとロール状でシワが発生する不具合が生じることを本発明者らは見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許5240387号公報
【文献】特開2020-117700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的な熱収縮性フィルムは一軸延伸されてなり、延伸方向である主収縮方向の引張り破断強度が高く、非収縮方向(主収縮方向と直交する方向)の引張り破断強度が低い。それに対し特許文献1では 熱収縮ポリエステルフィルムの長手方向と幅方向の両方向の引張り破断強度を二軸延伸して高くする事で、フィルム強度が高いフィルムを製膜した。しかし、一般的な熱収縮フィルムの生産方法と比較して、フィルムの生産方法が非常に複雑で有り、設備を大きくする必要が有る、初期投資費用が高い等の課題が有る。
また特許文献2では 二軸延伸ポリエステルフィルムの表面粗さや無機粒子含有量を規定している。特許文献2は結晶性の二軸延伸ポリエステルフィルムに関するものであり、非晶性の原料を用い、かつ一軸延伸しか行わない熱収縮性ポリエステルフィルムは、表面突起による粗さやロール状にした時の空気抜けの状況が二軸延伸ポリエステルフィルムとは異なる。
そこで、本発明では、厚みが15μm~50μmでも、空気抜けが良好で巻き品質が良くシワが発生し難く、かつ印刷性も良好な熱収縮性ポリエステル系フィルムの提供を課題として掲げた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決してなる本発明は、以下の構成からなる。
1.以下の(1)~(5)の要件を満足することを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。
(1)90℃の温水にフィルムを10秒間浸漬したときの温湯熱収縮率が、フィルム幅方向において40%以上80%以下
(2)90℃の温水にフィルムを10秒間浸漬したときの温湯熱収縮率が、フィルム長手方向において-5%以上10%以下
(3)少なくとも一方のフィルム面の最大突起高さSpが0.8μm以上3.0μm以下
(4)少なくとも一方のフィルム面の算術平均高さSaが0.03μm以上0.2μm以下
(5)フィルム表裏面同士での空気抜け時間が14秒以下
2.フィルムの厚みが15μm以上50μm以下であることを特徴とする1.に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム
3.フィルム厚み30μmでのヘイズが2%以上11%以下であることを特徴とする1.又は2.に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
4.少なくとも2層以上積層している積層熱収縮性ポリエステル系フィルムであることを特徴とする1.~3.のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
5.前記1.~4.のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムを用いた熱収縮性ラベル。
6.前記5.に記載の熱収縮性ラベルで、包装対象物の少なくとも外周の一部を被覆して熱収縮させて形成されることを特徴とする包装体。
【発明の効果】
【0006】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、表面粗さや空気抜けを一定の範囲にすることで透明性や印刷性を維持し、かつフィルム厚みが薄くても、ロール状に巻き取った場合のシワや印刷性を良好に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の空気抜け時間の測定方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムについて詳しく説明する。なお、熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法は、後に詳述するが、熱収縮性フィルムは通常、ロール等を用いて搬送し、延伸することにより得られる。このとき、フィルムの搬送方向(製膜方向)を長手方向と称し、前記長手方向に直交する方向をフィルム幅方向と称する。
【0009】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、 以下の(1)~(5)の要件を満足することを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルムである。
(1)90℃の温水にフィルムを10秒間浸漬したときの温湯熱収縮率が、フィルム幅方向において40%以上80%以下
(2)90℃の温水にフィルムを10秒間浸漬したときの温湯熱収縮率が、フィルム長手方向において-5%以上10%以下
(3)少なくとも一方のフィルム面の最大突起高さSpが0.8μm以上3μm以下
(4)少なくとも一方のフィルム面の算術平均高さSaが0.03μm以上0.2μm以下
(5)フィルム表裏面同士での空気抜け時間が14秒以下
【0010】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムに用いるポリエステルは、エチレンテレフタレートユニットを主たる構成成分とするものである。エチレンテレフタレートユニットは、ポリエステルの構成ユニット100モル%中、50モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましく、70モル%以上がさらに好ましい。
本発明のポリエステルを構成する他のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、および1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸等を挙げることができる。
また、3価以上の多価カルボン酸(例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸およびこれらの無水物等)をポリエステルに含有させないことが好ましい。これらの多価カルボン酸を含有するポリエステルを使用して得た熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、必要な高収縮率を達成しにくくなる。
【0011】
ポリエステルを構成するジオール成分としては、エチレングリコールの他、1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-イソプロピル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジ-n-ブチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール、ビスフェノールA等の芳香族系ジオール等を挙げることができる。
これらの中でも、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の環状ジオールや、炭素数3~6個を有するジオール(例えば、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等)を用いることが好ましい。特に1,4-ブタンジオールやネオペンチルグリコールを用いると、本発明の必須要件を満足するポリエステルが得やすくなる。
【0012】
また、ポリエステルは、全ポリエステル樹脂中における多価アルコール成分100モル%中および多価カルボン酸成分100モル%中(すなわち、合計200モル%中)の非晶成分の合計が17モル%以上、好ましくは18モル%以上、より好ましくは19モル%以上、特に好ましくは20モル%以上である。なお前述のモノマー成分のうち、非晶質成分となり得るモノマーとしては、例えば、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、イソフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2,6--ナフタレンジカルボン酸、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-イソプロピル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジ-n-ブチル-1,3-プロパンジオール、ヘキサンジオールを挙げることもできる。また非晶成分の合計の上限は特に限定されないが、30モル%以下とすることが好ましい。非晶成分量を上記範囲にすることにより、ガラス転移点(Tg)を60~80℃に調整したポリエステルが得られる。
【0013】
なお、ポリエステルには、炭素数8個以上のジオール(例えば、オクタンジオール等)、または3価以上の多価アルコール(例えば、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ジグリセリン等)を含有させないことが好ましい。これらのジオール、または多価アルコールを含有するポリエステルを使用して得た熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、必要な高収縮率を達成しにくくなる。また、ポリエステルには、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールをできるだけ含有させないことも好ましい。
【0014】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムを形成する樹脂の中には、必要に応じて各種の添加剤、例えば、ワックス類、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、減粘剤、熱安定剤、着色用顔料、着色防止剤、紫外線吸収剤等を添加することができる。
【0015】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムを形成する樹脂の中には、少なくとも一方のフィルム面における最大突起高さSp、算術平均高さSa、およびフィルム表裏面同士での空気抜け時間を所定範囲内とするために微粒子を添加することが好ましい。微粒子としては、任意のものを選択することができるが、例えば、無機系微粒子としては、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、硫酸バリウム等、有機系微粒子としては、例えば、アクリル系樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子等を挙げることができる。微粒子の平均粒径は、1.0~5.0μmの範囲内(コールターカウンタにて測定した場合)であり、好ましくは2.0~5.0μmの範囲内で、必要に応じて適宜選択することができる。粒子形状に関しては球状、不定形のどちらでも良いが、球状は不定形よりフィルム面の突起の数が多くなる。しかし球状は不定形より一般的に高価なので目的により選別することが望ましい。熱収縮性ポリエステル系フィルムの表裏層に使用される微粒子の添加量は350ppm以上20000ppm以下が好ましい。微粒子の添加量が350ppm未満だと、フィルム面における最大突起高さSp、算術平均高さSaが低くなり、空気抜け時間を所定範囲内にできなくなり好ましくない。また微粒子の添加量が20000ppmより高いと、空気抜け時間は短くなり好ましいが、最大突起高さSp、算術平均高さSaが高くなり透明性や印刷性が悪化するので好ましくない。450ppm以上19000ppm以下がより好ましく、550ppm以上18000ppm以下が特に好ましい。
上記の好ましい微粒子を使用し、後述の好ましい製造方法と組み合わせることにより本発明に適した突起をフィルム表面に形成し、前記の最大突起高さSp、算術平均高さSa、および空気抜け時間を所定の範囲内に制御することができる。
【0016】
熱収縮性ポリエステル系フィルムを形成する樹脂の中に上記粒子を配合する方法としては、例えば、ポリエステル系樹脂を製造する任意の段階において添加することができるが、エステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後、重縮合反応開始前の段階でエチレングリコール等に分散させたスラリーとして添加し、重縮合反応を進めるのが好ましい。また、ベント付き混練押出し機を用いてエチレングリコールまたは水等に分散させた粒子のスラリーとポリエステル系樹脂原料とをブレンドする方法、または混練押出し機を用いて、乾燥させた粒子とポリエステル系樹脂原料とをブレンドする方法等によって行うのも好ましい。
【0017】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムには、フィルム表面の接着性を良好にするためにコロナ処理、コーティング処理や火炎処理等を施したりすることも可能である。
なお、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムには、ポリエステル樹脂層を少なくとも1層有する積層型のポリエステルフィルムも含まれる。ポリエステル樹脂層が2層以上積層されるときは、そのポリエステル樹脂層は同じ組成のポリエステルであっても、異なる組成のポリエステルであってもよい。また、他の層として積層可能な層は、熱可塑性樹脂層であれば、特に限定されないが、価格や熱収縮特性から、ポリスチレン系樹脂層であることが好ましい。
ポリエステル樹脂層だけの2層以上の積層は 微粒子を含むポリエステル樹脂層が表裏面にある必要がある。これはフィルムロール状では表裏層が重なり合っているので、フィルム面に前記の最大突起高さSp、算術平均高さSaを所定の範囲にすることで、フィルムロールのシワを抑制できるためである。層構成は1種2層、2種3層、3種3層、3種5層でも構わないが、設備の大型化を防ぐ、フィルム面の突起や透明性を制御するのに2種3層構成が適している。2種3層構成では 微粒子を含むポリエステル樹脂層/微粒子を含まないポリエステル樹脂層/微粒子を含むポリエステル樹脂層にすることが好ましい。微粒子を含む同じポリエステル樹脂層にすることで、フィルム表裏の突起を同じに制御できる利点がある。また中間層に微粒子を含まない層にすることで透明性を良化することができる。2種3層では表裏にくる微粒子を含むポリエステル樹脂層が全体厚みの4%以上70%以下になることが好ましい。4%未満では ポリエステル樹脂層の片側の厚みが2%未満となり、フィルム生産時の微粒子を含むポリエステル樹脂層の厚み精度が悪くなった場合 微粒子を含むポリエステル樹脂層の厚みが薄くなり狙いの表面突起が得られなくなるので好ましくない。70%より高くても問題無いが、微粒子を含まないポリエステル樹脂層が厚くなると透明性が悪化するので好ましくない。2種3層構成での微粒子を含むポリエステル樹脂層/微粒子を含まないポリエステル樹脂層/微粒子を含むポリエステル樹脂層を構成する2種のうち微粒子を含むポリエステル樹脂層の厚み比率は、8%以上60%以下がより好ましく、10%以上50%以下が特に好ましい。
【0018】
ポリスチレン系樹脂には、熱可塑性樹脂および/またはゴム成分を添加することが好ましい。熱可塑性樹脂としては、アタクチック構造を有するポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン4、ポリヘキサメチレンアジパミド等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン系樹脂等を挙げることができる。
【0019】
一方、ゴム成分としては、スチレン系化合物をその構成成分として含有するゴム状共重合体が好ましく、スチレンとゴム成分からそれぞれ一種以上を選んで共重合したランダム、ブロックまたはグラフト共重合体を挙げることができる。このようなゴム状共重合体としては、たとえばスチレン-ブタジエン共重合体ゴム、スチレン-イソプレンブロック共重合体、それらのブタジエン部分の一部あるいは全部を水素化したゴム、アクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体ゴム、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体ゴム、アクリロニトリル-アルキルアクリレート-ブタジエン-スチレン共重合体ゴム、メタクリル酸メチル-アルキルアクリレート-ブタジエン-スチレン共重合体ゴム等を挙げることができる。上記したスチレン系化合物をその構成成分として含有するゴム状共重合体は、スチレン単位を有するため、シンジオタクチック構造を有するポリスチレン系樹脂に対する分散性が良好であり、ポリスチレン系樹脂に対する可塑性改良効果が大きい。また、相溶性調整剤としては、上記したスチレン系化合物をその構成成分として含有するゴム状共重合体を好適に用いることができる。
【0020】
一方、ゴム成分としては、他に、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ネオプレン、エチレン-プロピレン共重合体ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、ポリエーテル-エステルゴム、ポリエステル-エステルゴム等を用いることができる。
【0021】
また、ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量は、10,000以上であると好ましく、50,000以上であるとより好ましい。重量平均分子量が10,000未満のものは、フィルムの強伸度特性や耐熱性が低下し易いので好ましくない。重量平均分子量の上限は特に限定されないが、重量平均分子量が1,500,000を上回ると、延伸張力の増大に伴う破断の発生等が生じることがあるため、好ましくない。
ポリスチレン系樹脂は、各種メーカーにより、種々のグレードのものが市販されており、市販のものを使用してもよい。他の層は、1層であっても2層以上でも構わない。
ポリスチレンとの多層では 光沢や印刷適正が優れているポリエステル層が最外層になるように、フィルム表面からポリエステル層/ポリスチレン層/ポリエステル層とすると良い。しかしポリエステルとポリスチレンは非相溶な樹脂となるので、相関剥離が生じる不具合がある。そこでフィルム表面からポリエステル層/接着層/ポリスチレン層/接着層/ポリエステル層と接着層をはさみ3種5層構成にすることが好ましい。また3種7層構成、3種9層構成でも構わないが、3種5層より設備が大掛かりになる。
【0022】
3種5層ではポリエステル層が全体厚みの20%以上80%以下になることが好ましい。20%未満では ポリエステル層の片側の厚みが10%未満となり、フィルムの印刷性や光沢が不足するので好ましくない。80%より高いと、ポリスチレン層が薄くなり長手方向の収縮率を抑制する効果が小さくなり好ましくない。3種5層ではポリエステル層は全体厚みの25%以上75%以下がより好ましく、30%以上70%以下が特に好ましい。
【0023】
3種5層では接着層が全体厚みの1%以上14%以下になることが好ましい。1%未満では 接着性が低下するので好ましくない。14%より高いと、ポリエステル層とポリスチレン層の厚みが薄くなり熱収縮特性が低下するので好ましくない。3種5層では接着層は全体厚みの2%以上12%以下がより好ましく、3%以上10%以下が特に好ましい。
3種5層ではポリスチレン層が全体厚みの20%以上80%以下になることが好ましい。20%未満では 長手方向の収縮率を抑制する効果が小さくなり好ましくない。80%以上では リエステル層の片側の厚みが10%未満となり、フィルムの印刷性や光沢が不足するので好ましくない。3種5層ではポリスチレン層は全体厚みの25%以上75%以下がより好ましく、30%以上70%以下が特に好ましい。
【0024】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、90℃の温水中で無荷重状態で10秒間に亘って処理したときに、収縮前後の長さから、下式1により算出したフィルムの主収縮方向である幅方向の熱収縮率(すなわち、90℃の温湯熱収縮率)が、40%以上80%以下であることが好ましい。
熱収縮率={(収縮前の長さ-収縮後の長さ)/収縮前の長さ}×100(%)・・式1
【0025】
90℃における主収縮方向の温湯熱収縮率が40%未満であると、飲料ラベル用途や弁当包装のフィルムとして使用する場合に、収縮量が小さいために、熱収縮した後のラベルシワやタルミが生じてしまうので好ましくない。90℃の温湯収縮率は43%以上であるとより好ましく、46%以上であると特に好ましいく、50%以上であると最も好ましい。
90℃における主収縮方向の温湯熱収縮率が80%より高くても問題無いが、本発明では90℃の温湯熱収縮率が80%より高いフィルムを得る事ができなかったので、上限を80%とした。
【0026】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、90℃における主収縮方向と直交する長手方向の温湯熱収縮率が-5%以上10%以下であることが好ましい。長手方向の90℃の温湯収縮率がー5%未満であると、飲料ラベル用途で使用する場合に、ラベルが伸びてPETボトルでのラベル高さが長くなり好ましくない。長手方向の90℃の温湯収縮率は-4%以上であるとより好ましく、-3%以上であると特に好ましい。
長手方向の90℃の温湯収縮率が10%より大きいと、飲料ラベル用途で使用する場合に、ラベルが縮みPETボトルでのラベル高さが短くなり好ましくない。また収縮後のラベル歪みの原因ともなる。長手方向の90℃の温湯収縮率は9%以下であるとより好ましく、8%以下であるとさらに好ましく、7%以下であると特に好ましく、6%以下であると最も好ましい。
【0027】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの少なくとも一方の面の最大突起高さSpは、3.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは2.5μm以下であり、さらに好ましくは2.0μm以下である。最大突起高さSpが3.0μmより高いと粗大突起の形成による印刷抜けなどにより、印刷外観不良や意匠性が悪いなどフィルム品質を損ない、好ましくない。
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの少なくとも一方の面の最大突起高さSpは、0.8μm以上であることが好ましく、より好ましくは1.2μm以上であり、さらに好ましくは1.6μm以上である。最大突起高さSpが0.8μm未満であると、ロールに巻取る際に巻込まれる空気が均一に抜けず、シワや気泡上のニキビといった外観不良が生じやすくなり、巻取り性が悪化し易い。
【0028】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの少なくとも一方の面の算術平均高さSaは、0.2μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.18μm以下であり、さらに好ましくは0.16μm以下である。算術平均高さSaが0.2μmより高いとフィルム表面の荒れが大きく、透明性を損なったり印刷性が悪化する恐れがある。
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの少なくとも一方の面の算術平均高さSaは、0.03μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.035μm以上であり、さらに好ましくは0.04μm以上である。算術平均高さSaが0.03μm未満であると、ロールに巻取る際に巻込まれる空気が均一に抜けず、シワや気泡上のニキビといった外観不良が生じやすくなり、巻取り性が悪化し易い。
【0029】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの表裏面同士での空気抜け時間は、14秒以下であることが好ましく、より好ましくは13秒以下であり、さらに好ましくは12秒以下であり、特に好ましくは10秒以下である。空気抜け時間が14秒を超える場合、製造工程中および巻返し、スリット等でフィルムがロール状に巻取られる際に、ロールに巻込まれる空気が均一に抜けず、シワや気泡状のニキビといった外観不良を生じる原因となりやすい。
【0030】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムのフィルム厚み30μmでのヘイズは11%以下であり、より好ましくは9%以下であり、さらに好ましくは7%以下であり、特に好ましくは5%以下である。フィルム厚み30μmでのヘイズが11%を超える場合、印刷外観が低下することや、高速での加工が進む中で異物検知がしにくくなり、十分な品質を得ることが困難になりやすい。
【0031】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの厚みは、15μm以上50μm以下が好ましい。フィルム厚みが15μm未満であるとフィルムのコシ感が著しく低下するためロールにシワが入りやすくなり好ましくない。一方、フィルム厚みは厚くてもフィルムロールとして問題はないが、コストや環境の観点から薄肉化することが好ましい。フィルムの厚みは17μm以上45μmがより好ましく、20μm以上40μmが特に好ましい。
【0032】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、上記したポリエステル原料を押出機により溶融押し出しして未延伸フィルムを形成し、その未延伸フィルムを以下に示す所定の方法により、横一軸延伸して熱処理することによって得ることができる。積層する場合は、複数の押し出し機やフィードブロック、マルチマニホールドを用いればよい。なお、ポリエステルは、前記した好適なジカルボン酸成分とジオール成分とを公知の方法で重縮合させることで得ることができる。また、通常は、チップ状のポリエステルを2種以上混合してフィルムの原料として使用する。積層する場合は、複数の押し出し機を用いればよい。
【0033】
原料樹脂を溶融押し出しする際には、ポリエステル原料をホッパードライヤー、パドルドライヤー等の乾燥機、または真空乾燥機を用いて乾燥するのが好ましい。そのようにポリエステル原料を乾燥させた後に、押出機を利用して、200~300℃の温度で溶融しフィルム状に押し出す。押し出しに際しては、Tダイ法、チューブラー法等、既存の任意の方法を採用することができる。
そして、押し出し後のシート状の溶融樹脂を急冷することによって未延伸フィルムを得ることができる。なお、溶融樹脂を急冷する方法としては、溶融樹脂を口金から回転ドラム上にキャストして急冷固化することにより実質的に未配向の樹脂シートを得る方法を好適に採用することができる。
【0034】
さらに、得られた未延伸フィルムを、後述するように、所定の条件で幅方向に延伸し本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムを得ることが可能となる。以下、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムを得るための好ましい延伸について説明する。後述する好ましい延伸方法と条件を採用することにより、本発明に適したフィルム表面の状態を形成することができる。
【0035】
通常の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、収縮させたい方向に未延伸フィルムを延伸することによって製造される。あるいは、縦延伸をした後に横延伸を行う二軸延伸する製造方法があるが、二軸延伸の場合大掛かりな設備が必要となる。本発明では主収縮方向である幅方向に一軸延伸する。なお幅(横)方向の一軸延伸による製造手段は、長手方向の延伸設備を使用しないので簡易な設備で製造できる利点を有する。
【0036】
幅方向の延伸は、未延伸フィルムをフィルムの両端をクリップで把持して加熱することができるテンター装置に導き、熱風によりフィルムを所定の温度まで加熱した後、長手方向に搬送しながらクリップ間の距離を広げることで延伸する。
未延伸フィルムの予熱温度は フィルムのTg+10℃以上+80℃以下の温度で予熱することが好ましい。より好ましくは、Tg+20℃以上+60℃以下である。Tg+10℃未満では、予熱温度不足で延伸力が高くなり破断が生じやすくなり好ましくない。またTg+80℃より高い温度で加熱すると、未延伸シートの幅方向への延伸力が低下し、幅方向の厚み精度(偏肉)が悪くなり好ましくない。より好ましくはTg+30以上+50℃以下である。
【0037】
幅方向延伸時のフィルム温度は、フィルムTg℃以上Tg+30℃以下であることが好ましい。フィルム温度がTg未満であると、延伸力が高くなりすぎて、フィルムの破断が生じやすくなり好ましくない。フィルム温度がTg+30℃を超えると、延伸力が低すぎるために、上記したように90℃で測定した幅方向の熱収縮率が低くなり好ましくない。より好ましくはTg+3℃以上+25℃以下、さらに好ましくはTg+5℃以上+20℃以下である。
【0038】
幅方向への延伸倍率は3.5倍以上6倍以下が好ましい。延伸倍率が3.5倍未満であると、延伸力が不十分で、フィルム幅方向の厚み精度(所謂 偏肉)が悪くなる。また延伸倍率が6倍を超えると、製膜時に破断するリスクが高くなる上に、設備が長大になるため好ましくない。より好ましくは3.7倍以上5.5倍以下である。また特に限定しないが、幅方向の延伸後に、収縮率の調整のため熱処理を行ってもよい。熱固定時のフィルム温度は、幅方向のフィルム延伸温度以上、幅方向のフィルム延伸温度+30℃以下であることが好ましい。フィルム熱固定温度が幅方向のフィルム延伸温度未満であると、幅方向の分子緩和が不十分となり、熱固定の効果が無いので好ましくない。フィルム熱固定温度が幅方向のフィルム延伸温度+30℃を超えると、フィルムが結晶化し収縮率が低くなり好ましくない。より好ましくは幅方向のフィルム延伸温度+1℃以上、幅方向のフィルム延伸温度+25℃以下、さらに好ましくは幅方向のフィルム延伸温度+2℃以上、幅方向のフィルム延伸温度+20℃以下である。
【0039】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、従来公知の方法によりラベル化することができる。一例としては、所望幅に裁断した熱収縮性ポリエステル系フィルムに適当な印刷を施し、溶剤接着等によりフィルムの左右端部を重ね合わせて接合してチューブフィルムを製造する。このチューブフィルムを適切な長さに裁断し、チューブ状ラベルとする。接着用の有機溶剤としては、1,3-ジオキソランあるいはテトラヒドロフラン等の環状エーテル類が好ましい。この他、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素やフェノール等のフェノール類あるいはこれらの混合物が使用できる。
【0040】
上記ラベルに対し公知の方法によりミシン目を形成した後、PETボトルに被せ、当該PETボトルをベルトコンベアー等にのせて、スチームを吹きつけるタイプの収縮トンネル(スチームトンネル)または、熱風を吹きつけるタイプの収縮トンネル(熱風トンネル)の内部を通過させる。これらのトンネル通過時にラベルが熱収縮することにより、ラベルがペットボトル等のボトル容器に装着される。
【0041】
本発明の包装体は、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムから得られたミシン目またはノッチを有するラベルが、包装対象物の少なくとも外周の一部に被覆して熱収縮させて形成されるものである。包装対象物としては、飲料用のPETボトルを始め、各種の瓶、缶、菓子や弁当等のプラスチック容器、紙製の箱等を挙げることができる。なお、通常、それらの包装対象物に、熱収縮性ポリエステル系フィルムから得られるラベルを熱収縮させて被覆させる場合には、当該ラベルを約5~70%程度熱収縮させて包装体に密着させる。なお、包装対象物に被覆されるラベルには、印刷が施されていても良いし、印刷が施されていなくても良い。
【実施例】
【0042】
次に、実施例および比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例の態様に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。なお、フィルムの評価方法を以下に示す。
【0043】
[熱収縮率(温湯熱収縮率)]
フィルムを10cm×10cmの正方形に裁断し、90℃±0.5℃の温水中に無荷重
状態で10秒間浸漬して熱収縮させた後、25℃±0.5℃の水中に10秒間浸漬し、水
中から引き出してフィルムの長手(縦)および幅(横)方向の寸法を測定し、下記式(1)にしたがって、それぞれ熱収縮率を求めた。熱収縮率の大きい方向を主収縮方向とした。
熱収縮率={(収縮前の長さ-収縮後の長さ)/収縮前の長さ}×100(%) 式(1)
【0044】
[算術平均高さSa、最大高さSp]
ISO25178に準拠し、得られたフィルムから長手方向10cm×幅方向10cmの面積に切り出し、Zygo社製の白色レーザー干渉計(NEW VIEW8300)を用い、下記の観察条件にて走査を行い、算術平均高さSa(μm)と最大突起高さSp(μm)を測定した。測定は、未溶融物や埃等の異物を除く表面を対象とした。
測定箇所は10cm×10cmのサンプルの任意の箇所10点で測定し、その平均値をそれぞれ算術平均高さSa、最大突起高さSpとした。
(観察条件)
・対物レンズ:10倍
・ズームレンズ:1倍
・視野:0.82×0.82mm
・サンプリング間隔:0.803μm
・想定測定時間:4秒
・タイプ:Surface
・モード:CSI
・Z解像度:High
・スキャン長:20μm
・カメラモード:1024×1024@100Hz
・シャッター速度:100%
・光量:1.3%
・オプション:SureScan Off
SmartPsi Averages 4
ノイズ低減
・信号処理オプション:フリンジ次数解析 Advanced
フリンジ除去ON
【0045】
[空気抜け時間]
図1に示すように、台盤1の上にフィルム4を載せる。次いで、フィルム押え2をフィルム4の上から載せ、固定することによって張力を与えながらフィルム4を固定する。次いで、フィルム押え2の上に、フィルム5として台盤1の上に載せたフィルム4の上面とは反対の面を下にして載せる。次いでフィルム5の上にフィルム押え8を載せ、更にネジ3を用いてフィルム押え8,2および台盤1を固定する。
次に、フィルム押え2に設けられた空洞2aと真空ポンプ6とを、フィルム押え2に設けられた細孔2cおよびパイプ7を介して接続する。そして、真空ポンプ6を駆動すると、フィルム5には、空洞2aに吸い付けられることによって張力が加わる。また、同時にフィルム4とフィルム5の重なり合った面もフィルム押え2に円周状に設けられた細孔2dを介して減圧され、フィルム4とフィルム5はその重なり合った面において、外周部から密着し始める。
密着する様子は、重なり合った面の上部から干渉縞を観察することによって容易に知ることができる。そして、フィルム4とフィルム5の重合面の外周部に干渉縞が生じてから重なり合った面の前面に干渉縞が拡がり、その動きが止まるまでの時間(秒)を測定し、この時間(秒)を空気抜け時間とする。なお、測定は2枚のフィルムを取り替えて5回繰り返し行い、その平均値を用いる。
【0046】
[フィルムの厚み]
JIS K7130-1999 A法に準拠し、ダイアルゲージを用いて測定した。
【0047】
[フィルムのヘイズ]
JIS K7361-1に準拠し、フィルムを1辺10cmの正方形状に切り出し、日本電飾(株)製ヘイズメーターNDH2000を用い、ヘイズ測定を行った。3か所で実施し、その平均値をヘイズ実測値とし、下式(2)により30μm換算のヘイズを算出した。
ヘイズ=ヘイズ実測値×30/フィルムの厚み(%/30μm) 式(2)
【0048】
[Tg(ガラス転移点)]
セイコー電子工業株式会社社製の示差走査熱量計(型式:DSC220)を用いて、JIS-K7121-1987に従ってTgを求めた。詳細には未延伸フィルム10mgを、-40℃から120℃まで、昇温速度10℃/分で昇温し、吸熱曲線を測定した。得られた吸熱曲線の変曲点の前後に接線を引き、その交点をガラス転移点(Tg;℃)とした。
【0049】
[極限粘度 (IV)]
ポリエステル0.2gをフェノール/1,1,2,2-テトラクロルエタン(60/40(重量比))の混合溶媒50ml中に溶解し、30℃でオストワルド粘度計を用いて測定した。単位はdl/gである。
【0050】
[組成分析]
各試料を、クロロホルムD ( ユーリソップ社製) とトリフルオロ酢酸D 1 ( ユーリソップ社製) を10:1(体積比) で混合した溶媒に溶解させて、試料溶液を調製し、NMR「GEMINI-200」(Varian社製) を用いて、温度23 ℃ 、積算回数64 回の測定条件で試料溶液のプロトンのNMRを測定した。NMR測定では、所定のプロトンのピーク強度を算出して、二酸成分100モル%中の成分量及び多価アルコール成分100モル%中の成分量を測定した。
【0051】
[収縮仕上り性]
熱収縮性フィルムの端部をインパルスシーラー(富士インパルス社製)で溶着し、幅方向を周方向とした円筒状ラベルを得た。また0.5mmサイズの孔をフィルム長手方向に3mmピッチで入れた。またフィルム幅方向に10mmの間隔をあけて、同様にフィルム長手方向に0.5mmサイズの孔を3mmピッチで入れた(所謂 ラベルを剥がしやすくするミシン目)。ラベルの収縮方向の直径は68mmであった。このラベルを、市販の500mlのPETボトル(内容物入り; 胴直径 62mm、ネック部の最小直径25mm)に被せて、90℃に調整したFuji Astec Inc 製スチームトンネル(型式;SH-1500-L)を用いスチームに通して熱収縮させた(トンネル通過時間5秒)。ラベルの収縮仕上がり性を、以下の基準に従って目視で評価を行った。以下の基準に従って目視で5段階評価した。以下に記載の欠点とは、飛び上がり、シワ、収縮不足、ラベル端部折れ込み、収縮白化等を意味する。3以上を合格とした。
5:仕上がり性最良(欠点なし)
4:仕上がり性良(欠点1箇所あり)
3:欠点2箇所あり
2:欠点3~5箇所あり
1:欠点多数あり(6箇所以上)
【0052】
[フィルムロールのシワ評価]
製膜した熱収縮性ポリエステル系フィルムを幅500mm、巻長1000mで巻き取り、下記基準でロール表層にあるシワの評価を目視で行った。判定○、△を合格とした。
○:シワがない
△:弱いシワがあるが、引き出したフィルムに張力20N/m程度をかけるとシワが消える
×:強いシワがあり、引き出したフィルムに張力20N/m程度をかけてもシワが消えない
【0053】
[印刷性の評価]
幅500mm、巻長1000mのフィルムロールに、東洋インキ製造(株)の草色のインキを用いて、印刷(1色印刷)を施した。印刷後のインキの厚みは1μmであった。印刷後のフィルムにおいて 測定1つあたり面積900mm2(長手方向に30mm、幅方向に30mm)を拡大率5倍のルーペで印刷のドット抜けを調査した。測定した位置は 印刷後のロールを幅方向に任意で3点測定した。また幅方向に測定した位置から長手方向に50m離れた位置で、同じように幅方向で3点(計6点)を測定し、面積900mm2(長手方向に30mm、幅方向に30mm)を拡大率5倍のルーペで測定し、判定○、△を合格とした。
○:ドット抜けが1%未満
△:ドット抜けが1%以上3%未満
×:ドット抜けが3%以上
【0054】
[ポリエステル原料の調製]
撹拌機、温度計及び部分環流式冷却器を備えたステンレススチール製オートクレーブに、二塩基酸成分としてジメチルテレフタレート(DMT)100モル%と、グリコール成分としてエチレングリコール(EG)100モル%とを、グリコールがモル比でメチルエステルの2.2倍になるように仕込み、エステル交換触媒として酢酸亜鉛を0.05モル%(酸成分に対して)用いて、生成するメタノールを系外へ留去しながらエステル交換反応を行った。その後、重縮合触媒として三酸化アンチモン0.025モル%(酸成分に対して)を添加し、280℃で26.6Pa(0.2トール)の減圧条件下、重縮合反応を行い、固有粘度0.75dl/gのポリエステル(A)を得た。このポリエステルはポリエチレンテレフタレートである。
【0055】
なお、製造の際には、滑剤としてSiO2をポリエステルに対して8,000ppmの割合で添加したのがポリエステルB1~B8で、固有粘度0.75dl/gである。各々のSiO2はポリエステルB1は形状が球状で重量平均粒径1μm、ポリエステルB2は形状が不定形で重量平均粒径1.5μm、ポリエステルB3は形状が不定形で重量平均粒径2μm、ポリエステルB4は形状が不定形で重量平均粒径2.5μm、ポリエステルB5は形状が不定形で重量平均粒径3μm、ポリエステルB6は形状が不定形で重量平均粒径4μm、ポリエステルB7は形状が不定形で重量平均粒径5μm、ポリエステルB8は形状が不定形で重量平均粒径6μmであった。
【0056】
また、上記と同様な方法により、表1に示すポリエステル(C,D,E)を合成した。なお、表中、NPGはネオペンチルグリコール、CHDMは1,4-シクロヘキサンジメタノール、BDは1,4-ブタンジオールである。ポリエステルC,D,Eの固有粘度は、それぞれ、0.75dl/g,0.75dl/g,1.15dl/gであった。なお、各ポリエステルは、適宜チップ状にした。
【0057】
実施例、比較例で使用した原料チップの内容、実施例、比較例におけるフィルムの樹脂組成、層構成と製造条件を、それぞれ表1、表2に示す。
【0058】
【0059】
【0060】
実施例1
共押出法を利用して、コア層形成用樹脂、スキン層形成用樹脂を別々の押出機(第一、第二押出機)から溶融押出しし、ダイス(Tダイ)内で積層し、表面温度30℃に冷却された回転する金属ロールに巻き付けて急冷することにより、厚さが138μmで、二種三層構成、すなわち、コア層の外側に、それぞれスキン層が積層された構成の未延伸フィルムを得た。この時、コア層には上記したポリエステルA、ポリエステルCおよびポリエステルEを重量比20:70:10で混合して押出機に投入した。この混合樹脂を260℃で溶融した。一方スキン層には上記したポリエステルA、ポリエステルB3、ポリエステルCおよびポリエステルEを重量比12:8:70:10で混合して押出機に投入した。この混合樹脂を260℃で溶融した。このときのスキン層/コア層/スキン層の厚み比率は1:2:1であった。このときの未延伸フィルムの引取速度(金属ロールの回転速度)は、約30m/minであった。また、未延伸フィルムのTgは69℃であった。
得られた未延伸フィルムをテンター(横延伸機)へ導いた。予熱工程の温度を95℃(Tg+26℃)、延伸工程の温度を78℃(Tg+9℃)とし4.6倍に延伸した。横延伸後のフィルムを83℃(延伸温度+5℃)で8秒、緊張状態で熱処理した。その後、冷却し、両縁部を裁断除去して幅800mmでロール状に巻き取ることによって、厚さ30μmの延伸フィルムを2000mの長さにわたって連続的に製造した。得られたフィルムの特性を上記した方法によって評価した。評価結果を表3に示す。フィルムロールのシワ、収縮仕上り性が良好なフィルムであった。
【0061】
実施例2
ポリエステルB3をポリエステルB4に変更した以外は実施例1と同様の方法で厚さ30μmのフィルムを採取した。評価結果を表3に示す。空気抜け時間は実施例1より短くなり、フィルムロールのシワ、収縮仕上り性が良好なフィルムであった。
【0062】
実施例3
ポリエステルB3をポリエステルB5に変更した以外は実施例1と同様の方法で厚さ30μmのフィルムを採取した。評価結果を表3に示す。空気抜け時間は実施例1より短くなり、フィルムロールのシワ、収縮仕上り性が良好なフィルムであった。
【0063】
実施例4
ポリエステルB3をポリエステルB6に変更した以外は実施例1と同様の方法で厚さ30μmのフィルムを採取した。評価結果を表3に示す。空気抜け時間は実施例1より短くなり、ヘイズが少し高くなったが、フィルムロールのシワ、収縮仕上り性が良好なフィルムであった。
【0064】
実施例5
ポリエステルB3をポリエステルB7に変更した以外は実施例1と同様の方法で厚さ30μmのフィルムを採取した。評価結果を表3に示す。空気抜け時間は実施例1より短くなり、ヘイズが少し高くなったが、フィルムロールのシワ、収縮仕上り性が良好なフィルムであった。
【0065】
実施例6
実施例1のコア層の原料をスキン層と同じ原料に変更し、一種三層に変更した以外は実施例1と同様の方法で厚さ30μmのフィルムを採取した。評価結果を表3に示す。ヘイズが少し高くなったが、フィルムロールのシワ、収縮仕上り性が良好なフィルムであった。
【0066】
実施例7
共押出法を利用して、コア層形成用樹脂、スキン層形成用樹脂、接着剤層形成用樹脂を別々の押出機(第一~第三押出機)から溶融押出しし、ダイス(Tダイ)内で積層し、エアーナイフ法により、30℃に冷却された回転する金属ロールに巻き付けて急冷することにより、厚さが138μmで、三種五層構成、すなわち、コア層の表裏両側に中間層(接着剤層)が積層され、それらの中間層の外側に、それぞれ、スキン層が積層された構成の未延伸フィルム(ポリスチレン系樹脂積層シート)を得た。未延伸フィルムの各層の形成方法(溶融押出までの工程)は、以下の通りである。なお、以下の説明においては、ポリスチレン系混合樹脂積層シートの表裏から順に、第一層、第二層、第三層、第四層、第五層という(すなわち、第五層の表面は、金属ロール接触面である)。このときの未延伸フィルムの引取速度(金属ロールの回転速度)は、約30m/minであった。
・第一層、第五層(スキン層)の形成
乾燥後のポリエステルA、ポリエステルB4、ポリエステルC、ポリエステルEを12:8:70:10で混合して第一押出機に投入した。この混合樹脂を260℃で溶融押出しした(コア層の表裏の外側に積層された中間層の外側に積層されるように溶融押出しした)。Tダイからの押出を安定させるために、押出機とTダイとの間にヘリカルタイプかつ並列タイプのギアポンプを介在させた。
・第二層、第四層(接着剤層)の形成
上記したチップFを、ブレンダー装置を用いて予備乾燥した後、その予備乾燥後のチップFを、第二押出機の直上のホッパに、定量スクリューフィーダーで連続的に供給した。そして、供給されたチップDを、第二押出機のTダイから溶融押出しした(コア層の表裏の外側に積層されるように溶融押出しした)。なお、第二押出機の温度は200℃に調整した。また、第一押出機による押出しと同様に、Tダイからの押出を安定させるために、押出機とTダイとの間にヘリカルタイプかつ並列タイプのギアポンプを介在させた。
・第三層(コア層)の形成
上記したチップG,H,Iを、それぞれ、ブレンダー装置を用いて予備乾燥した後、それらのチップG,H,Iを、43:43:14の混合比率で第三押出機に投入した。混合樹脂を200℃で溶融押出しした。また、第一押出機による押出しや第二押出機による押出しと同様に、Tダイからの押出を安定させるために、押出機とTダイとの間にヘリカルタイプかつ並列タイプのギアポンプを介在させた。
なお、上記各押出機による樹脂の押出において、未延伸フィルムの形成における第一~第三押出機の吐出量は、第一層/第二層/第三層/第四層/第五層の厚みが、23/3/48/3/23となるように調整した。
得られた未延伸フィルムを、幅方向への延伸温度を82℃に変更した以外は実施例1と同様にして、厚さ30μmのフィルムを製造した。評価結果を表3に示す。フィルムロールのシワ、収縮仕上り性が良好なフィルムであった。
【0067】
実施例8
ポリエステルCをポリエステルDに変更した以外は実施例1と同様の方法で厚さ30μmのフィルムを採取した。未延伸フィルムのTgは69℃であった。評価結果を表3に示す。フィルムロールのシワ、収縮仕上り性が良好なフィルムであった。
【0068】
実施例9
ポリエステルB3をポリエステルB1に変更し、スキン層の原料をポリエステルA、ポリエステルB1、ポリエステルC、ポリエステルEを4/16/70/10の重量比にした。また未延伸フィルムを、幅方向へ延伸する工程で予熱工程の温度を100℃、延伸工程の温度を85℃、熱処理温度を86℃に変更した以外は実施例1と同様の方法で厚さ30μmのフィルムを採取した。評価結果を表3に示す。フィルムロールのシワ、収縮仕上り性が良好なフィルムであった。
【0069】
比較例1
ポリエステルB3をポリエステルB1に変更した以外は実施例1と同様の方法で厚さ30μmのフィルムを採取した。評価結果を表3に示す。空気抜け時間は実施例1より遅くなり、フィルムロールのシワが目立つフィルムであった。
【0070】
比較例2
ポリエステルB3をポリエステルB2に変更した以外は実施例1と同様の方法で厚さ30μmのフィルムを採取した。評価結果を表3に示す。空気抜け時間は実施例1より遅くなり、フィルムロールのシワが目立つフィルムであった。
【0071】
比較例3
ポリエステルB3をポリエステルB8に変更した以外は実施例1と同様の方法で厚さ30μmのフィルムを採取した。評価結果を表3に示す。空気抜け時間は短くシワも良好であったが、フィルム面の最大突起高さSp、及びフィルム面の算術平均高さが高いので印刷時のドット抜けがあり、印刷性に劣るフィルムであった。
【0072】
比較例4
未延伸フィルムを、幅方向へ延伸する工程で予熱工程の温度を95℃、幅方向への延伸温度を83℃、熱処理温度を88℃に変更した以外は実施例9と同様の方法で厚さ30μmのフィルムを採取した。評価結果を表3に示す。空気抜け時間は実施例1より遅くなり、フィルムロールのシワが目立つフィルムであった。
【0073】
比較例5
実施例1より未延伸フィルムを幅方向へ延伸する工程で、予熱工程と延伸工程で76℃(Tg+7℃)に変更し、熱処理温度を88℃に変更した以外は実施例1と同様の方法で厚さ30μmのフィルムを採取した。評価結果を表3に示す。空気抜け時間は実施例1より遅くなり、フィルムロールのシワが目立つフィルムであった。これはフィルム延伸時の延伸応力が高くなったため 滑剤が潰れやすくなったと考える。
【0074】
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、高い熱収縮率を有し、かつ 透明性や印刷性に優れ、空気抜け時間が短いので良好な外観のフィルムロールを得ることができる。
【符号の説明】
【0076】
1.台盤
2,8.フィルム押さえ
2a.溝孔
3.ネジ
4,5.フィルム
6.真空ポンプ
7.パイプ
X.フィルム重なり部