(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】小便器
(51)【国際特許分類】
E03D 13/00 20060101AFI20250311BHJP
【FI】
E03D13/00
(21)【出願番号】P 2023058987
(22)【出願日】2023-03-31
【審査請求日】2024-07-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内垣 和人
(72)【発明者】
【氏名】羽生 亜矢子
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-037863(JP,A)
【文献】特開2017-179802(JP,A)
【文献】特開2009-007846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00- 7/00
E03D 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿を受けるボウル部と、
前記ボウル部に洗浄水を吐水する吐水部と、
前記吐水部に洗浄水を供給する機能部と、
前記ボウル部の上部後側に形成され、前記機能部を収納する収納部と
を備え、
前記機能部は、
前記吐水部への給水路に設けられ、前記吐水部からの汚水の逆流を防止するバキュームブレーカと、
前記バキュームブレーカの上流側に設けられ、前記給水路を閉止する止水状態と前記給水路を開放する給水状態とを切り替えるダイヤフラムと
を含み、
前記バキュームブレーカは、前記ダイヤフラムよりも上方に配置される
とともに、前記吐水部に固定される
ことを特徴とする小便器。
【請求項2】
前記機能部は、
前記バキュームブレーカの上流側に設けられ、前記給水路における洗浄水の流れを用いて発電する発電部
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の小便器。
【請求項3】
前記バキュームブレーカは、
上流側に入水口、下流側に出水口を有する通水路と、
前記通水路と外部とを連通する大気導入口と、
前記通水路内に設けられ、洗浄水の水圧によって鉛直方向に沿って動作することで、通水時には前記入水口と前記出水口とを連通させ、非通水時には前記通水路と前記大気導入口とを連通させる弁体と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の小便器。
【請求項4】
前記バキュームブレーカは、
前記大気導入口から溢れ出た洗浄水を受ける水受け部
をさらに備え、
前記水受け部は、
受けた洗浄水を排出する排水口と、
前記排水口を囲むように形成される壁部と
を備えることを特徴とする請求項
3に記載の小便器。
【請求項5】
前記水受け部は、
洗浄水を受ける底面部が前記大気導入口に向けて下り傾斜となるように形成される
ことを特徴とする請求項
4に記載の小便器。
【請求項6】
前記吐水部は、
前記給水路から供給された洗浄水を前記ボウル部に吐水する第1吐水孔と、
前記水受け部から前記排水口を介して供給された洗浄水を前記ボウル部に吐水する第2吐水孔と
を備えることを特徴とする請求項
4に記載の小便器。
【請求項7】
前記第2吐水孔は、前記第1吐水孔よりも上方に設けられる
ことを特徴とする請求項
6に記載の小便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、小便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、小便器において、使用者の尿を受けるボウル部の上部後側に設けられた収納部を有し、収納部に機能部を収納するように構成されるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、小便器は、設置される国や場所において定められた規定を満たすため、汚水が給水路を逆流することを防止するバキュームブレーカを備えることがある。かかるバキュームブレーカは、メンテナンスの頻度が比較的高い機器である。そのため、小便器においては、バキュームブレーカに対するメンテナンス性の向上が求められる。
【0005】
実施形態の一態様は、バキュームブレーカに対するメンテナンス性を向上させることができる小便器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の一態様に係る小便器は、尿を受けるボウル部と、前記ボウル部に洗浄水を吐水する吐水部と、前記吐水部に洗浄水を供給する機能部と、前記ボウル部の上部後側に形成され、前記機能部を収納する収納部とを備え、前記機能部は、前記吐水部への給水路に設けられ、前記吐水部からの汚水の逆流を防止するバキュームブレーカと、前記バキュームブレーカの上流側に設けられ、前記給水路を閉止する止水状態と前記給水路を開放する給水状態とを切り替えるダイヤフラムとを含み、前記バキュームブレーカは、前記ダイヤフラムよりも上方に配置されることを特徴とする。
【0007】
これにより、バキュームブレーカは、例えば収納部において上方からアクセスし易い位置に配置されることとなり、作業者はバキュームブレーカのメンテナンスを容易に行うことができる。すなわち、バキュームブレーカがダイヤフラムよりも上方に配置されることで、メンテナンスの頻度が比較的高いバキュームブレーカのメンテナンス性を向上させることができる。
【0008】
また、前記機能部は、前記バキュームブレーカの上流側に設けられ、前記給水路における洗浄水の流れを用いて発電する発電部をさらに含むことを特徴とする。
【0009】
このように、バキュームブレーカの上流側に発電部が設けられることで、吐水部から発電部などへの汚水の逆流を防止することができる。
【0010】
また、前記バキュームブレーカは、前記吐水部に固定されることを特徴とする。
【0011】
このように、バキュームブレーカが吐水部に固定されることで、バキュームブレーカと吐水部との相対的な位置関係が、洗浄時の水勢によって変化しないようにすることができ、バキュームブレーカは所期の性能を確保することができる。すなわち、例えばバキュームブレーカが吐水部以外の場所に固定されると、バキュームブレーカは、洗浄時の水勢によって吐水部との相対的な位置関係が変わり、バキュームブレーカが吐水部に対して傾いたりすることがある。このような場合、例えばバキュームブレーカの弁体が鉛直方向に動作しにくくなるなどして、所期の性能が確保されないおそれがある。
【0012】
そこで、バキュームブレーカが吐水部に固定されることで、バキュームブレーカは、吐水部との相対的な位置関係が変化しないようにすることができる。そのため、例えば弁体が動作しにくくなるなどの事象の発生を抑制でき、バキュームブレーカは所期の性能を確保することができる。
【0013】
また、前記バキュームブレーカは、上流側に入水口、下流側に出水口を有する通水路と、前記通水路と外部とを連通する大気導入口と、前記通水路内に設けられ、洗浄水の水圧によって鉛直方向に沿って動作することで、通水時には前記入水口と前記出水口とを連通させ、非通水時には前記通水路と前記大気導入口とを連通させる弁体とを備える。
【0014】
このように、バキュームブレーカは、弁体が洗浄水の水圧によって通水路内を鉛直方向に沿って動作する方式のバキュームブレーカである。すなわち、バキュームブレーカは、下方から洗浄水が供給される構成であることから、バキュームブレーカを、機能部を構成する各機器に対して上方となるような位置に配置することが可能となる。これにより、バキュームブレーカを、例えば収納部において上方からよりアクセスし易い位置に配置でき、バキュームブレーカのメンテナンス性をより向上させることができる。
【0015】
また、前記バキュームブレーカは、前記大気導入口から溢れ出た洗浄水を受ける水受け部をさらに備え、前記水受け部は、受けた洗浄水を排出する排水口と、前記排水口を囲むように形成される壁部とを備えることを特徴とする。
【0016】
これにより、水受け部にあっては、水受け部によって捕集された洗浄水の排出経路を、排出口を通る経路と、大気導入口を通る経路の2つにすることができ、捕集された洗浄水の排出を早期に行うことができる。また、排出口の周囲に壁部を設けるようにしたので、捕集されて壁部を越えない分の洗浄水は、大気導入口側から排出されることとなる。かかる大気導入口は、比較的開口径が大きいことから、捕集された洗浄水の排出を早期に行うことができる。
【0017】
また、前記水受け部は、洗浄水を受ける底面部が前記大気導入口に向けて下り傾斜となるように形成されることを特徴とする。
【0018】
これにより、水受け部に捕集された洗浄水は、大気導入口へ流れ易くなるため、大気導入口から早期に排出させることができる。
【0019】
また、前記吐水部は、前記給水路から供給された洗浄水を前記ボウル部に吐水する第1吐水孔と、前記水受け部から前記排水口を介して供給された洗浄水を前記ボウル部に吐水する第2吐水孔とを備えることを特徴とする。
【0020】
これにより、水受け部の排出口から排出された洗浄水を、ボウル部側に確実に排出することができる。すなわち、例えば水受け部の排出口から排出された洗浄水が第1吐水孔に接続された場合、第1吐水孔はボウル部を洗浄する水勢を有する洗浄水が流れるため、その水勢に押されて排出口からの洗浄水が排出されにくくなるおそれがある。そのため、吐水部において、第1吐水孔とは別に、第2吐水孔を備えることで、水受け部の排出口から排出された洗浄水を、ボウル部側に確実に排出することができる。
【0021】
また、前記第2吐水孔は、前記第1吐水孔よりも上方に設けられる。
【0022】
これにより、第2吐水孔と、第2吐水孔の上方に位置する水受け部との距離を、第2吐水孔が第1吐水孔に対して下方や側方に設けられる場合に比べて近づけることができる。そのため、例えば第2吐水孔と水受け部とを接続する接続管の配管長を短くすることができ、接続管の取り回しを容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
実施形態の一態様によれば、バキュームブレーカに対するメンテナンス性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、実施形態に係る小便器の側断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る小便器の上面図である。
【
図3】
図3は、機能部および吐水部の斜視図である。
【
図4】
図4は、機能部および吐水部の正面図である。
【
図5】
図5は、機能部および吐水部の構成例を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、バキュームブレーカと吐水部との固定方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する小便器の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0026】
(実施形態)
実施形態に係る小便器1について
図1および
図2を参照して説明する。
図1は、実施形態に係る小便器1の側断面図である。
図2は、実施形態に係る小便器1の上面図である。なお、
図1、2および後述する
図3以降は、いずれも模式図である。
【0027】
また、
図1および
図2では、説明の便宜のために、互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする3次元の直交座標系を図示している。また、以下の説明では、X軸正方向を「右方」、X軸負方向を「左方」、Y軸正方向を「前方」、Y軸負方向を「後方」と記載する場合がある。このため、以下の説明では、X軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向、Z軸方向を上下方向(鉛直方向)という場合がある。このような直交座標系は、他の図においても示す場合がある。
【0028】
図1および
図2に示すように、実施形態に係る小便器1は、トイレ室に設置される。小便器1は、壁面に設置される壁掛け式であっても、床面に設置される床置き式であってもよい。小便器1は、小便器本体2を有し、小便器本体2は、例えば陶器製である。
【0029】
小便器本体2は、ボウル部3と、排水部5と、収納部6と、機能部10と、吐水部20とを備える。
【0030】
ボウル部3は、小便器本体2における前面である使用者と対向する面(正面)に形成される。ボウル部3には、使用者の尿を受けるボウル面4が形成される。ボウル面4は、上端から下方へ向かうほど内側(ボウル部3の左右方向の中心側)、かつ、奥側(後側)へ向けて凹んだ面となるように形成される。また、ボウル面4は、上下方向の中央部付近から下部にかけて後側へ向けて緩やかに湾曲する面となるように形成される。
【0031】
ボウル面4の上部には、吐水部20が設けられる。ボウル部3のボウル面4には、吐水部20から洗浄水が吐水され、ボウル面4が洗浄される。また、ボウル面4の下部には、排水部5が設けられる。
【0032】
排水部5は、
図1に示すように、排水口5aと、排水トラップ部5bとを備える。排水口5aは、ボウル部3のボウル面4の下部に形成され、ボウル面4を洗浄した洗浄水が排水される。排水トラップ部5bは、排水口5aの下流側に接続される。排水トラップ部5bは、洗浄水を貯留して封水を形成し、排水管からの臭気等がボウル部3側へ逆流することを防止する。排水トラップ部5bの下流側には、排水ソケット100が接続され、洗浄水は、排水トラップ部5bから排水ソケット100を介して外部の排水配管(図示せず)へ排水される。
【0033】
収納部6は、ボウル部3の上部後側に形成され、機能部10を収納する。収納部6は、底部6aと、前壁部6bと、左右の側壁部6cとを有する。そして、底部6a、前壁部6bおよび左右の側壁部6cによって囲まれた空間が、機能部10を収納する収納空間Sとなる。収納部6の上部には、上蓋6dが収納部6に対して上方から着脱自在に取り付けられる。なお、
図2では、かかる上蓋6dが外された状態を示している。収納空間Sの上部は、上蓋6dによって閉塞される。
【0034】
具体的には、底部6aは、機能部10の下方に位置している。底部6aは、機能部10を下方から支持する。なお、底部6aは、機能部10を直接支持する場合もあるが、支持部材を介して機能部10を間接的に支持する場合もある。また、機能部10の一部または全部が、底部6a以外の部位に固定されて支持される場合もある。
【0035】
前壁部6bは、底部6aの前端部(前端縁)から上方へ立ち上がるように形成された壁である。左右の側壁部6cは、底部6aの左右方向の側端部(側端縁)から上方へ立ち上がるように形成された壁である。底部6a、前壁部6bおよび左右の側壁部6cは、一体的に形成され、これら底部6a、前壁部6bおよび左右の側壁部6cに囲まれることで、後方が開放された収納空間Sが形成される。
【0036】
このように、収納部6は、ボウル部3のさらに上方に配置されるのではなく、ボウル部3内に機能部10が隠れるようにボウル部3の上部後側に配置される。このため、小便器1は、コンパクトな外観となる。
【0037】
機能部10は、吐水部20へ洗浄水を供給する機能などを有する。かかる機能部10は、小便器1が設置される国や場所によって、その構成が変わる。例えば、小便器1が設置される国等で定められた規定を満たすため、機能部10は、汚水が給水路を逆流することを防止するバキュームブレーカを含むことがある。かかるバキュームブレーカは、メンテナンスの頻度が比較的高い機器である。例えば、バキュームブレーカは、ゴム部材などを有することから、定期的なメンテナンスが行われる。
【0038】
そこで、本実施形態にあっては、バキュームブレーカに対するメンテナンス性を向上させることができるように構成した。
【0039】
この構成について、
図3~
図5等を参照して説明する。
図3は、機能部10および吐水部20の斜視図であり、
図4は、機能部10および吐水部20の正面図である。
図5は、機能部10および吐水部20の構成例を示すブロック図である。なお、
図3および
図4では、理解の便宜のため、機能部10および吐水部20のみを示している。また、
図3および
図4において、機能部10は収納部6に収納された状態を示し、吐水部20はボウル部3に取り付けられた状態を示している。
【0040】
機能部10としては、例えばボウル面4(
図1参照)を自動洗浄する自動洗浄ユニットを用いることができる。具体的には、
図3~
図5に示すように、機能部10は、給水路30(
図5参照)と、止水栓40と、定流量弁50(
図5参照)と、ダイヤフラム60と、電磁弁70と、発電機80と、バキュームブレーカ90とを備える。
【0041】
機能部10の各機器について、
図5を参照しつつ説明すると、給水路30は、水道などの給水源(図示せず)から洗浄水が供給される流路である。止水栓40は、給水路30に接続され、後流側の各機器等に対して洗浄水を給水および止水する。定流量弁50は、給水路30において止水栓40の下流側に接続され、流入した洗浄水を所定の流量以下に絞る。
【0042】
ダイヤフラム60には、給水路30において定流量弁50の下流側に接続され、圧力室61が隣接して設けられる。また、電磁弁70は、給水路30においてダイヤフラム60の下流側には、電磁弁70が接続される。かかる電磁弁70は、圧力室61の圧力を変化させることで、ダイヤフラム60を動作させ、給水路30における洗浄水の流れを制御する。
【0043】
具体的には、電磁弁70は、小便器1の適宜位置(例えば吐水部20)に設けられた人体検知センサ200によって使用者が検知されて図示しない制御部から開信号が入力されると、開状態となる。これによって圧力室61が低下してダイヤフラム60は給水路30を開放し、供給された洗浄水を下流側へ流す。一方、電磁弁70は、制御部から閉信号が入力されると閉状態となり、これによって圧力室61が上昇してダイヤフラム60は給水路30を閉塞し、洗浄水の供給を停止させる。このように、ダイヤフラム60は、給水路30を閉止する止水状態と、給水路30を開放する給水状態とを切り替える。
【0044】
発電機80は、給水路30において定流量弁50の下流側に接続され、給水路30における洗浄水の流れを用いて発電する。具体的には、発電機80は、給水路30から分岐する分岐流路31に接続され、分岐流路31の洗浄水の流れを用いて発電する水力発電機である。発電機80によって発電された電力は、図示しない蓄電部(例えばコンデンサ)に蓄電され、蓄電部から電磁弁70や人体検知センサ200など各種の電気機器へ供給される。なお、発電機80は、発電部の一例である。
【0045】
バキュームブレーカ90は、給水路30において発電機80や電磁弁70の下流側に接続される。バキュームブレーカ90の下流側には、吐水部20が接続される。すなわち、バキュームブレーカ90は、吐水部20への給水路30に設けられる。かかるバキュームブレーカ90は、吐水部20からの汚水の逆流を防止する。
【0046】
ここで、バキュームブレーカ90の構成について、
図6を参照しつつ説明する。
図6は、
図4のVI-VI線断面図であり、バキュームブレーカ90等を説明するための図である。
【0047】
図6に示すように、バキュームブレーカ90は、通水路91と、大気導入口92と、弁体93と、水受け部94とを備える。
【0048】
通水路91は、上流側(給水路30の電磁弁70(
図5参照)側)に入水口91a、下流側(吐水部20側)に出水口91bを有する。入水口91aは鉛直方向(上下方向)に向けて開口し、出水口91bは前方(正確には前方下向き)に向けて開口する。大気導入口92は、通水路91と外部とを連通する開口部であり、入水口91aの上方に設けられ、鉛直方向に向けて開口する。
【0049】
弁体93は、通水路91内に設けられ、洗浄水の水圧によって通水路91内を鉛直方向に沿って動作する(上下動する)。かかる弁体93は、通水時(矢印A参照)には水圧により上昇して入水口91aと出水口91bとを連通させる。
【0050】
また、弁体93は、破線で示すように、非通水時には自重により降下して入水口91aを閉止するとともに、通水路91と大気導入口92とを連通させる。また、何らかの原因で給水路30に負圧が発生した場合、弁体93は、負圧によって下方に引っ張られて入水口91aを閉塞する。これにより、バキュームブレーカ90は、吐水部20からの汚水の逆流を防止することができる。
【0051】
水受け部94は、大気導入口92の上部に設けられる。水受け部94は、大気導入口92と連通しており、大気導入口92から溢れ出た洗浄水を受ける。水受け部94により捕集された洗浄水は、大気導入口92から排出される場合と、水受け部94に設けられた排出口94dから排出される場合とがあるが、これについては後述する。
【0052】
バキュームブレーカ90の下流側には、吐水部(スプレッダ)22が接続される。吐水部20は、ボウル部3(
図1参照)に取り付けられて固定される。
【0053】
吐水部20は、第1入水部21aと、第1吐水孔22aと、第1連通路23aとを備える。第1入水部21aには、通水路91の出水口91bが接続される。第1吐水孔22aは、ボウル部3のボウル面4に向かて開口する開口部である。第1連通路23aは、第1入水部21aと第1吐水孔22aとを連通する流路である。従って、通水路91の出水口91bから第1入水部21aへ洗浄水が流入すると、流入した洗浄水は、第1連通路23aを介して第1吐水孔22aからボウル面4へ吐出され、ボウル面4を洗浄する。このように、第1吐水孔22aは、給水路30から供給された洗浄水をボウル部3に吐水する。なお、吐水部20は、給水路30(通水路91)からの洗浄水が流れる流路とは異なる別流路を備えるが、これについては後述する。
【0054】
上記のように構成されたバキュームブレーカ90は、収納部6において上部付近となるように配置される。言い換えると、バキュームブレーカ90は、機能部10を構成する各機器に対して上方となるような位置に配置される。例えば、
図4などに示すように、バキュームブレーカ90は、ダイヤフラム60よりも上方に配置される。
【0055】
これにより、バキュームブレーカ90は、例えば収納部6において上方からアクセスし易い位置に配置されることとなり、作業者はバキュームブレーカ90のメンテナンスを容易に行うことができる。すなわち、バキュームブレーカ90がダイヤフラム60よりも上方に配置されることで、メンテナンスの頻度が比較的高いバキュームブレーカ90のメンテナンス性を向上させることができる。
【0056】
また、バキュームブレーカ90は、ダイヤフラム60に限らず、止水栓40、止水栓40と同様な高さに位置する定流量弁50(
図4で見えず)、電磁弁70、発電機80などよりも上方に配置される。言い換えると、詳しくは、バキュームブレーカ90は、機能部10を構成する各機器に対して最も上方となるような位置に配置される。
【0057】
これにより、バキュームブレーカ90は、例えば収納部6において上方からアクセスし易い位置に配置されることとなり、バキュームブレーカ90のメンテナンス性を向上させることができる。
【0058】
また、バキュームブレーカ90は、上記したように、弁体93が洗浄水の水圧によって通水路91内を鉛直方向に沿って動作する方式のバキュームブレーカである。すなわち、バキュームブレーカ90は、下方から洗浄水が供給される構成であることから、バキュームブレーカ90を、機能部10を構成する各機器に対して上方となるような位置に配置することが可能となる。
【0059】
これにより、バキュームブレーカ90を、例えば収納部6において上方からよりアクセスし易い位置に配置でき、バキュームブレーカ90のメンテナンス性をより向上させることができる。
【0060】
なお、バキュームブレーカ90の種類は、上記に限定されるものではなく、フラッパー式などその他の種類のものであってもよい。
【0061】
また、
図5に示すように、バキュームブレーカ90の上流側には、発電機80、電磁弁、ダイヤフラム60、定流量弁50、止水栓40などが設けられる。
【0062】
このように、バキュームブレーカ90の上流側に発電機80などが設けられることで、吐水部20から発電機80などへの汚水の逆流を防止することができる。
【0063】
次に、バキュームブレーカ90の固定について説明する。バキュームブレーカ90は、
図6に示すように、吐水部20に固定される。すなわち、バキュームブレーカ90は、吐水部20に直接固定され、収納部6の底部6aや前壁部6b(
図2参照)などには固定されていない。
【0064】
具体的な固定方法について
図7も参照しつつ説明する。
図7は、バキュームブレーカ90と吐水部20との固定方法を説明するための図である。
図7は、吐水部20の上面図であり、バキュームブレーカ90は通水路91の部分のみを図示している。
【0065】
図6および
図7に示すように、バキュームブレーカ90と吐水部20とは、バキュームブレーカ90の通水路91の出水口91bの部分と、吐水部20の第1入水部21aの部分において、固定金具300によって固定される。かかる固定金具300としては、リング状の止め輪を用いることができる。なお、
図7では、理解の便宜のため、固定金具300である止め輪が開いた状態(非固定状態)を示している。
【0066】
バキュームブレーカ90と吐水部20とは、互いに係止した状態で、固定金具300によって固定される。具体的には、吐水部20において、第1入水部21aの外周面21a1には、バキュームブレーカ90は通水路91へ向けて突出する凸部25が形成される。バキュームブレーカ90の通水路91において、出水口91bの外周面91b1には、凸部25が係止(嵌合)可能な凹部95が形成される。
【0067】
上記した凸部25と凹部95とが係止されることで、バキュームブレーカ90は、吐水部20と係止する。これにより、バキュームブレーカ90の通水路91は、吐水部20に対して周方向の回転が抑制される。このバキュームブレーカ90の回転が抑制された状態で、固定金具300が凸部25および凹部95付近を挟み込むようにして締め付けることで、バキュームブレーカ90は吐水部20に固定される。
【0068】
このように、バキュームブレーカ90が吐水部20に固定されることで、バキュームブレーカ90と吐水部20との相対的な位置関係が、洗浄時の水勢によって変化しないようにすることができ、バキュームブレーカ90は所期の性能を確保することができる。
【0069】
すなわち、例えばバキュームブレーカ90が吐水部20以外の場所に固定されると、バキュームブレーカ90は、洗浄時の水勢によって吐水部20との相対的な位置関係が変わり、バキュームブレーカ90が吐水部20に対して傾いたりすることがある。このような場合、バキュームブレーカ90の弁体93が鉛直方向に動作しにくくなるなどして、所期の性能が確保されないおそれがある。
【0070】
そこで、バキュームブレーカ90が吐水部20に固定されることで、バキュームブレーカ90は、吐水部20との相対的な位置関係が変化しないようにすることができる。そのため、弁体93が動作しにくくなるなどの事象の発生を抑制でき、バキュームブレーカ90は所期の性能を確保することができる。
【0071】
次に、バキュームブレーカ90の水受け部94、および、吐水部20が備える別流路について、
図6と
図8、9を参照しつつ説明する。
図8は、水受け部94の上面図である。
図9は、
図8のIX-IX線端面図である。
【0072】
図6に示すように、水受け部94は、箱状に形成され、本体部94aと、蓋部94bとを備える。なお、
図8、9は、蓋部94bが取り外された状態を示している。
【0073】
図8、9に示すように、本体部94aは、底面部94a1と、側壁部94a2とを備える。側壁部94a2は、底面部94a1の周端縁から上方へ立ち上がるように形成された壁である。蓋部94b(
図6参照)は、本体部94aの上部に取り付けられる。これにより、水受け部94にあっては、底面部94a1と側壁部94a2と蓋部94bとによって囲まれる空間が形成され、かかる空間に、大気導入口92から溢れ出た洗浄水が捕集される。
【0074】
底面部94a1は、流入出口94cと、排出口94dと、壁部94eとを備える。流入出口94cは、上記した大気導入口92と連通するように形成される。従って、大気導入口92から溢れ出た洗浄水は流入出口94cから流入し、流入した洗浄水を底面部94a1が受ける。
【0075】
排出口94dは、流入出口94cから離間した位置に形成される。排出口94dは、水受け部94で受けた洗浄水を排出する。壁部94eは、排出口94dを囲むようにして形成される。言い換えると、壁部94eは、底面部94a1における排出口94dの周囲の部位から上方へ向けて延在するようにして形成される。壁部94eの上端の高さは、側壁部94a2の高さより低くなるように設定される。
【0076】
従って、排出口94dは、水受け部94で受けた洗浄水のうち、壁部94eを越えた洗浄水を排出することとなる。言い換えると、排出口94dは、水受け部94によって捕集された洗浄水が、壁部94eを越えて所定量を超えた場合に、壁部94eを越えた分の洗浄水を排出する。
【0077】
また、水受け部94によって捕集された洗浄水が壁部94eを越えず、大気導入口92からの洗浄水の流入が止まった場合、捕集された洗浄水は、流入出口94cから大気導入口92を介して通水路91へ流出し、通水路91から吐水部20を介して排水される。
【0078】
このように、水受け部94にあっては、水受け部94によって捕集された洗浄水の排出経路を、排出口94dを通る経路と、大気導入口92を通る経路の2つにすることができ、捕集された洗浄水の排出を早期に行うことができる。
【0079】
また、排出口94dの周囲に壁部94eを設けるようにしたので、捕集されて壁部94eを越えない分の洗浄水は、大気導入口92側から排出されることとなる。かかる大気導入口92は、比較的開口径が大きいことから、捕集された洗浄水の排出を早期に行うことができる。
【0080】
また、底面部94a1は、
図8、9に矢印Bで示すように、大気導入口92に向けて下り傾斜となるように形成される。これにより、水受け部94に捕集された洗浄水は、大気導入口92へ流れ易くなるため、大気導入口92から早期に排出させることができる。
【0081】
ここで、吐水部20について
図6を参照して説明すると、吐水部20は、第2入水部21bと、第2吐水孔22bと、第2連通路23bとを備える。
【0082】
第2入水部21bには、水受け部94の排出口94dが接続管96を介して接続される。第2吐水孔22bは、ボウル部3のボウル面4(
図1参照)に向かて開口する開口部である。第2連通路23bは、第2入水部21bと第2吐水孔22bとを連通する流路である。従って、排出口94dから排出された洗浄水が、接続管96を介して第2入水部21bへ流入すると、流入した洗浄水は、第2連通路23bを介して第2吐水孔22bからボウル面4へ吐出される。このように、第2吐水孔22bは、水受け部94から排出口94dを介して供給された洗浄水をボウル部3に吐水する。
【0083】
このように、吐水部20は、給水路30から供給された洗浄水を吐水する第1吐水孔22aに加えて、水受け部94から排出口94dを介して供給(排出)された洗浄水をボウル部3に吐水する第2吐水孔22bを備えるようにした。これにより、水受け部94の排出口94dから排出された洗浄水を、ボウル部3側に確実に排出することができる。
【0084】
すなわち、例えば水受け部94の排出口94dから排出された洗浄水が第1吐水孔22aに接続された場合、第1吐水孔22aはボウル部3を洗浄する水勢を有する洗浄水が流れるため、その水勢に押されて排出口94dからの洗浄水が排出されにくくなるおそれがある。
【0085】
そのため、吐水部20において、第1吐水孔22aとは別に、第2吐水孔22bを備えることで、水受け部94の排出口94dから排出された洗浄水を、ボウル部3側に確実に排出することができる。
【0086】
また、吐水部20において、第2吐水孔22bは、第1吐水孔22aよりも上方に設けられる。これにより、第2吐水孔22bと、第2吐水孔22bの上方に位置する水受け部94との距離を、第2吐水孔22bが第1吐水孔22aに対して下方や側方に設けられる場合に比べて近づけることができる。そのため、第2吐水孔22bと水受け部94とを接続する接続管96の配管長を短くすることができ、接続管96の取り回しを容易に行うことができる。
【0087】
上述してきたように、実施形態に係る小便器1は、ボウル部3と、吐水部20と、機能部10と、収納部6とを備える。ボウル部3は、尿を受ける。吐水部20は、ボウル部3に洗浄水を吐水する。機能部10は、吐水部20に洗浄水を供給する。収納部6は、ボウル部3の上部後側に形成され、機能部10を収納する。機能部10は、吐水部20への給水路30に設けられ、吐水部20からの汚水の逆流を防止するバキュームブレーカ90と、バキュームブレーカ90の上流側に設けられ、給水路30を閉止する止水状態と給水路30を開放する給水状態とを切り替えるダイヤフラム60とを含む。バキュームブレーカ90は、ダイヤフラム60よりも上方に配置される。これにより、バキュームブレーカ90に対するメンテナンス性を向上させることができる。
【0088】
<付記>
(1)
尿を受けるボウル部と、
前記ボウル部に洗浄水を吐水する吐水部と、
前記吐水部に洗浄水を供給する機能部と、
前記ボウル部の上部後側に形成され、前記機能部を収納する収納部と
を備え、
前記機能部は、
前記吐水部への給水路に設けられ、前記吐水部からの汚水の逆流を防止するバキュームブレーカと、
前記バキュームブレーカの上流側に設けられ、前記給水路を閉止する止水状態と前記給水路を開放する給水状態とを切り替えるダイヤフラムと
を含み、
前記バキュームブレーカは、前記ダイヤフラムよりも上方に配置される
ことを特徴とする小便器。
(2)
前記機能部は、
前記バキュームブレーカの上流側に設けられ、前記給水路における洗浄水の流れを用いて発電する発電部
をさらに含むことを特徴とする(1)に記載の小便器。
(3)
前記バキュームブレーカは、前記吐水部に固定される
ことを特徴とする(1)または(2)に記載の小便器。
(4)
前記バキュームブレーカは、
上流側に入水口、下流側に出水口を有する通水路と、
前記通水路と外部とを連通する大気導入口と、
前記通水路内に設けられ、洗浄水の水圧によって鉛直方向に沿って動作することで、通水時には前記入水口と前記出水口とを連通させ、非通水時には前記通水路と前記大気導入口とを連通させる弁体と
を備えることを特徴とする(1)~(3)のいずれか一つに記載の小便器。
(5)
前記バキュームブレーカは、
前記大気導入口から溢れ出た洗浄水を受ける水受け部
をさらに備え、
前記水受け部は、
受けた洗浄水を排出する排水口と、
前記排水口を囲むように形成される壁部と
を備えることを特徴とする(4)に記載の小便器。
(6)
前記水受け部は、
洗浄水を受ける底面部が前記大気導入口に向けて下り傾斜となるように形成される
ことを特徴とする(5)に記載の小便器。
(7)
前記吐水部は、
前記給水路から供給された洗浄水を前記ボウル部に吐水する第1吐水孔と、
前記水受け部から前記排水口を介して供給された洗浄水を前記ボウル部に吐水する第2吐水孔と
を備えることを特徴とする(5)または(6)に記載の小便器。
(8)
前記第2吐水孔は、前記第1吐水孔よりも上方に設けられる
ことを特徴とする(7)に記載の小便器。
【符号の説明】
【0089】
1 小便器
3 ボウル部
6 収納部
10 機能部
20 吐水部
90 バキュームブレーカ
60 ダイヤフラム