(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】情報処理装置及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20250311BHJP
B60W 30/12 20200101ALI20250311BHJP
G01C 21/28 20060101ALI20250311BHJP
【FI】
G08G1/16 D
B60W30/12
G01C21/28
(21)【出願番号】P 2023143696
(22)【出願日】2023-09-05
【審査請求日】2023-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀米 辰弥
【審査官】貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-520056(JP,A)
【文献】特開2010-286995(JP,A)
【文献】国際公開第2018/168956(WO,A1)
【文献】特開2019-38396(JP,A)
【文献】特開2017-137001(JP,A)
【文献】特開2008-225822(JP,A)
【文献】特開2006-331389(JP,A)
【文献】特開2015-102449(JP,A)
【文献】特開2016-210285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 1/16
G01C 21/00 - 21/36
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行する走行車線において前記車両の進行方向の所定の範囲内の、前記走行車線に対して車線が分岐又は合流する分岐合流区間を特定する区間特定部と、
前記分岐合流区間を前記車両が走行するときの前記分岐合流区間の状況に基づいて、前記分岐合流区間における前記走行車線の中央線を特定する
複数の特定手段
のうちのいずれかを選択する選択部と、
前記選択された特定手段を用いて前記分岐合流区間における前記走行車線の中央線を特定する中央線特定部と、
を有
し、
前記複数の特定手段には、前記車両の前方を撮像する撮像装置が撮像した撮像画像を用いて前記分岐合流区間における前記走行車線の中央線を特定する第2特定手段が含まれ、
前記選択部は、前記車両が前記分岐合流区間を走行する日時に前記車両に対して太陽光が入射する方向と前記車両における前記撮像装置の位置とに基づいて前記撮像装置に太陽光が直接入射するか否かを判定し、前記撮像装置に太陽光が直接入射しないと判定した場合には、前記中央線を特定する手段として前記第2特定手段を選択し、太陽光が直接入射すると判定した場合には、前記中央線を特定する手段として前記第2特定手段と異なる特定手段を選択する、
情報処理装置。
【請求項2】
前記車両の位置を特定する位置特定部を有し、
前記選択部は、前記位置特定部が特定した前記車両の位置を用いて前記中央線を特定する第1特定手段を含む複数の特定手段のうちのいずれかを選択するものであって、前記分岐合流区間を前記車両が走行するときの前記位置特定部による前記車両の位置の特定精度が高い場合、前記第1特定手段を選択する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記車両の前方を走行する先行車両を検出する検出部を有し、
前記選択部は、前記検出部による前記先行車両の検出結果に基づいて前記中央線を特定する第3特定手段を含む複数の特定手段のうちのいずれかを選択するものであって、前記区間特定部が前記分岐合流区間を特定したときの前記検出部による前記先行車両の検出結果が所定の条件を満たす場合に、前記第3特定手段を選択する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
受信した電波に基づいて前記車両の位置を特定する位置特定部を有し、
前記選択部は、地図情報を参照して前記位置特定部が特定した前記車両の位置に対応する前記分岐合流区間における車線の位置を示す車線位置情報を取得し、取得した車線位置情報に基づいて前記中央線を特定する第1特定手
段を含む複数の特定手段のうちのいずれかを選択するものであって
、前記分岐合流区間がトンネルの位置から所定の範囲外である場合、前記第1特定手段を選択する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
受信した電波に基づいて前記車両の位置を特定する位置特定部と、
前記車両の前方を走行する先行車両を検出する検出部と、
を有し、
前記選択部は、地図情報を参照して前記位置特定部が特定した前記車両の位置に対応する前記分岐合流区間における車線の位置を示す車線位置情報を取得し、取得した車線位置情報に基づいて前記中央線を特定する第1特定手段と、前記検出部による前記先行車両の検出結果に基づいて前記先行車両の車幅方向の位置を特定し、特定した車幅方向の位置に基づいて前記中央線を特定する第3特定手段
とを含む複数の特定手段のうちのいずれかを選択するものであって、前記分岐合流区間がトンネルの位置から所定の範囲内である場合、前記第3特定手段を選択し、前記分岐合流区間がトンネルの位置から所定の範囲外である場合、前記第1特定手段を選択する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記車両の前方を走行する先行車両を検出する検出部を有し、
前記選択部は、前
記第2特定手段と、前記検出部による前記先行車両の検出結果に基づいて前記先行車両の車幅方向の位置を特定し、特定した車幅方向の位置に基づいて前記中央線を特定する第3特定手段を含む複数の特定手段のうちいずれかを選択するものであって、
前記検出部が前記先行車両を検出し、かつ、前記分岐合流区間を前記車両が走行する場合に前記撮像装置に太陽光が直接入射するとき、前記第3特定手段を選
択する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
コンピュータが実行する、
車両が走行する走行車線において前記車両の進行方向の所定の範囲内の、前記走行車線に対して車線が分岐又は合流する分岐合流区間を特定するステップと、
前記分岐合流区間を前記車両が走行するときの前記分岐合流区間の状況に基づいて、前記分岐合流区間における前記走行車線の中央線を特定する
複数の特定手段
のうちのいずれかを選択するステップと、
前記選択された特定手段を用いて前記分岐合流区間における前記走行車線の中央線を特定するステップと、
を有
し、
前記複数の特定手段には、前記車両の前方を撮像する撮像装置が撮像した撮像画像を用いて前記分岐合流区間における前記走行車線の中央線を特定する第2特定手段が含まれ、
前記選択するステップにおいて、前記コンピュータは、前記車両が前記分岐合流区間を走行する日時に前記車両に対して太陽光が入射する方向と前記車両における前記撮像装置の位置とに基づいて前記撮像装置に太陽光が直接入射するか否かを判定し、前記撮像装置に太陽光が直接入射しないと判定した場合には、前記中央線を特定する手段として前記第2特定手段を選択し、太陽光が直接入射すると判定した場合には、前記中央線を特定する手段として前記第2特定手段と異なる特定手段を選択する、
情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両が走行する走行車線に沿って車両が走行するように車両の走行を制御するために、走行車線の中央線を特定することが行われている。例えば、特許文献1には、車両の走行車線から分岐車線が分岐する分岐部が存在する場合、車両の前方を撮像する撮像装置が撮像した撮像画像に基づいて走行車線における分岐部が生じた側とは逆側の区画線を検出し、当該区画線からの横方向オフセットを計算することにより、走行車線の中央線を特定する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
分岐区間及び合流区間では車線の区画線が複雑であることから、撮像領域において鮮明に撮像された分岐区間の画像に基づいて区画線を精度良く特定することが求められる。しかしながら、従来の方法では、分岐区間及び合流区間の状況によっては、撮像画像に基づいて区画線を精度良く特定することができず、走行車線の中央線を精度良く特定することができないという問題が生じる。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、車線の分岐区間又は合流区間における車両の走行車線の中央線の特定精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る情報処理装置は、車両が走行する走行車線において前記車両の進行方向の所定の範囲内の、前記走行車線に対して車線が分岐又は合流する分岐合流区間を特定する区間特定部と、前記分岐合流区間の状況に基づいて、前記分岐合流区間における前記走行車線の中央線を特定する特定手段を選択する選択部と、前記選択された特定手段を用いて前記分岐合流区間における前記走行車線の中央線を特定する中央線特定部と、を有する。
【0007】
前記選択部は、前記分岐合流区間を前記車両が走行するときの前記分岐合流区間の状況に基づいて複数の特定手段のうちのいずれかを選択してもよい。
【0008】
前記情報処理装置は、前記車両の位置を特定する位置特定部を有し、前記選択部は、前記位置特定部が特定した前記車両の位置を用いて前記中央線を特定する第1特定手段を含む複数の特定手段のうちのいずれかを選択するものであって、前記分岐合流区間を前記車両が走行するときの前記位置特定部による前記車両の位置の特定精度が高い場合、前記第1特定手段を選択してもよい。
【0009】
前記選択部は、前記車両に設けられ、前記車両の前方を撮像する撮像装置が撮像した撮像画像を用いて前記中央線を特定する第2特定手段を含む複数の特定手段のうちのいずれかを選択するものであって、前記分岐合流区間を前記車両が走行するときの前記分岐合流区間の明るさが高い場合、前記第2特定手段を選択してもよい。
【0010】
前記選択部は、前記分岐合流区間を前記車両が走行する場合に前記車両に対して太陽光が入射する方向に基づいて、前記複数の特定手段のうちのいずれかを選択してもよい。
【0011】
前記情報処理装置は、前記車両の前方を走行する先行車両を検出する検出部を有し、前記選択部は、前記検出部による前記先行車両の検出結果に基づいて前記中央線を特定する第3特定手段を含む複数の特定手段のうちのいずれかを選択するものであって、前記区間特定部が前記分岐合流区間を特定したときの前記検出部による前記先行車両の検出結果が所定の条件を満たす場合に、前記第3特定手段を選択してもよい。
【0012】
前記情報処理装置は、受信した電波に基づいて前記車両の位置を特定する位置特定部を有し、前記選択部は、地図情報を参照して前記位置特定部が特定した前記車両の位置に対応する前記分岐合流区間における車線の位置を示す車線位置情報を取得し、取得した車線位置情報に基づいて前記中央線を特定する第1特定手段と、前記車両に設けられ、前記車両の前方を撮像する撮像装置が撮像した撮像画像に基づいて、前記分岐合流区間において前記走行車線を規定する、分岐車線又は合流車線が接続しない側の区画線と、前記走行車線の車線幅とを特定し、当該区画線と車線幅とに基づいて前記中央線を特定する第2特定手段とを含む複数の特定手段のうちのいずれかを選択するものであって、前記分岐合流区間がトンネルの位置から所定の範囲内である場合、前記第2特定手段を選択し、前記分岐合流区間がトンネルの位置から所定の範囲外である場合、前記第1特定手段を選択してもよい。
【0013】
前記情報処理装置は、受信した電波に基づいて前記車両の位置を特定する位置特定部と、前記車両の前方を走行する先行車両を検出する検出部と、を有し、前記選択部は、地図情報を参照して前記位置特定部が特定した前記車両の位置に対応する前記分岐合流区間における車線の位置を示す車線位置情報を取得し、取得した車線位置情報に基づいて前記中央線を特定する第1特定手段と、前記検出部による前記先行車両の検出結果に基づいて前記先行車両の車幅方向の位置を特定し、特定した車幅方向の位置に基づいて前記中央線を特定する第3特定手段を含む複数の特定手段のうちのいずれかを選択するものであって、前記分岐合流区間がトンネルの位置から所定の範囲内である場合、前記第3特定手段を選択し、前記分岐合流区間がトンネルの位置から所定の範囲外である場合、前記第1特定手段を選択してもよい。
【0014】
前記情報処理装置は、前記車両の前方を走行する先行車両を検出する検出部を有し、前記選択部は、前記車両に設けられ、前記車両の前方を撮像する撮像装置が撮像した撮像画像に基づいて、前記分岐合流区間において前記走行車線を規定する、分岐車線又は合流車線が接続しない側の区画線と、前記走行車線の車線幅とを特定し、当該区画線と車線幅とに基づいて前記中央線を特定する第2特定手段と、前記検出部による前記先行車両の検出結果に基づいて前記先行車両の車幅方向の位置を特定し、特定した車幅方向の位置に基づいて前記中央線を特定する第3特定手段を含む複数の特定手段のうちいずれかを選択するものであって、前記分岐合流区間を前記車両が走行する場合に前記撮像装置に太陽光が直接入射するとき、前記第3特定手段を選択し、前記分岐合流区間を前記車両が走行する場合に前記撮像装置に太陽光が直接入射しないとき、前記第2特定手段を選択してもよい。
【0015】
本発明の第2の態様に係る情報処理方法は、コンピュータが実行する、車両が走行する走行車線において前記車両の進行方向の所定の範囲内の、前記走行車線に対して車線が分岐又は合流する分岐合流区間を特定するステップと、前記分岐合流区間の状況に基づいて、前記分岐合流区間における前記走行車線の中央線を特定する特定手段を選択するステップと、前記選択された特定手段を用いて前記分岐合流区間における前記走行車線の中央線を特定するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、車線の分岐区間又は合流区間における車両の走行車線の中央線の特定精度を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】情報処理装置の概要を説明するための図である。
【
図2】情報処理装置が設けられている車両の構成を示す図である。
【
図3】情報処理装置が分岐合流区間における中央線特定手段を選択する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[情報処理装置10の概要]
図1は、情報処理装置10の概要を説明するための図である。情報処理装置10は、例えば、バスやトラック等の車両Vに搭載され、車両Vが走行する走行車線の中央線を特定するコンピュータである。
【0019】
情報処理装置10は、車両Vが走行する走行車線において車両Vの位置から車両Vの進行方向の所定の範囲内に存在する分岐合流区間を特定する。分岐合流区間は、例えば、
図1(a)に示すように車両Vの走行車線から分岐車線が分岐する走行車線内の走行区間、又は、
図1(b)に示すように車両Vの走行車線に合流車線が合流する走行車線内の走行区間である。
【0020】
分岐合流区間は、走行車線から分岐車線に分岐するにあたり、車線の幅が拡大を開始する地点から、分岐が完了し、分岐車線側に走行車線を分岐車線と明確に分離するガードレールや分離帯などの構造物が設置される地点までの区間であるとする。なお、分岐合流区間は、当該区間の前後の走行車線のみからなる区間を含んでいてもよい。また、分岐合流区間は、走行車線が合流車線と合流するにあたり、合流車線と走行車線の間を分離する構造物がなくなった地点から、合流車線がなくなった地点までの区間であるとする。なお、分岐合流区間は、合流する場合においても分岐する場合と同様に、上述の区間の前後の走行車線のみからなる区間を含んでいてもよい。
【0021】
情報処理装置10は、分岐合流区間における走行車線の中央を通る中央線を特定する複数の中央線特定手段により、走行車線の中央線を特定することが可能である。情報処理装置10は、特定した分岐合流区間を車両Vが走行するときの分岐合流区間の状況に基づいて複数の中央線特定手段の優劣を特定し、特定した優劣に基づいて、複数の中央線特定手段のうちのいずれかを選択する。分岐合流区間においては、走行車線の幅が見かけ上、拡大するように見える。したがって、分岐車線、又は合流車線と走行車線をあわせた車線全体の中央をとると、実際の走行車線に対して分岐車線、又は合流車線側にシフトした位置に中央線を認識してしまう。情報処理装置10は、分岐合流区間の状態に応じた中央線特定手段を選択することにより、より高精度に中央線を特定することが可能となる。
【0022】
そして、情報処理装置10は、選択した中央線特定手段を用いて、分岐合流区間における走行車線の中央線を特定する。このようにすることで、情報処理装置10は、複数の中央線特定手段のうち、分岐合流区間の状況に適した中央線特定手段を用いて、車線の分岐区間又は合流区間における車両Vの走行車線の中央線の特定精度を向上させることができる。
【0023】
[情報処理装置10の構成]
続いて、情報処理装置10の構成について説明する。
図2は、情報処理装置10が設けられている車両Vの構成を示す図である。
図2に示すように、車両Vは、撮像装置1と、走行制御装置2と、情報処理装置10とを有する。
【0024】
撮像装置1は、例えば車両Vの前面に設けられており、車両Vの前方を撮像することにより生成した画像を情報処理装置10に出力する。撮像装置1は、所定時間(例えば、数ミリ秒~数十ミリ秒)おきに車両Vの位置を特定する。
走行制御装置2は、車両Vの走行を制御する。例えば、走行制御装置2は、情報処理装置10が特定した走行車線の中央線に沿って車両Vが走行するように車両Vの走行を制御する。具体的には、走行制御装置2は、特定された中央線に対して、車両Vの中心が所定の範囲内で走行するように、車両Vのステアリングや速度を制御する。
【0025】
情報処理装置10は、
図2に示すように、記憶部11と、制御部12とを有する。
記憶部11は、例えば、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)である。記憶部11は、制御部12を機能させるための各種のプログラムを記憶する。記憶部11は、制御部12を、位置特定部121、区間特定部122、検出部123、選択部124、及び中央線特定部125として機能させるプログラムを記憶する。
【0026】
また、情報処理装置10は、各位置における道路情報を含む地図データを記憶する。道路情報には、分岐車線及び合流車線を含む、道路の一以上の車線それぞれに対応する区画線を示す情報が含まれているものとする。また、道路情報には、道路の各車線の車線幅を示す車線幅情報が含まれていてもよい。
【0027】
制御部12は、図示しないCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含む計算リソースである。制御部12は、記憶部11に記憶されているプログラムを実行することにより、位置特定部121、区間特定部122、検出部123、選択部124、及び中央線特定部125として機能する。制御部12は、1又は複数のプロセッサで構成されていてもよく、さらに、1又は複数の電子回路を含んでいてもよい。
【0028】
位置特定部121は、車両Vの位置を特定する。例えば、位置特定部121は、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星(不図示)から受信した電波に基づいて、所定時間おきに車両Vの位置を特定する。
【0029】
区間特定部122は、車両Vが走行する走行車線において車両Vの位置から車両Vの進行方向の所定の範囲内に存在する分岐合流区間を特定する。例えば、区間特定部122は、まず、位置特定部121が所定時間おきに特定した車両Vの位置に基づいて、車両Vの進行方向を特定する。そして、区間特定部122は、記憶部11に記憶されている地図情報を参照し、車両Vの位置から車両Vの進行方向の所定の範囲内に存在する、車両Vの走行車線に対応する分岐合流区間を特定する。
【0030】
なお、ここで、所定の範囲は、車両Vに対して予め設定された固定値であってもよい。例えば、車両Vの進行方向200mの範囲内であるとする。また、所定の範囲は、車両Vの車速に応じて動的に設定されてもよい。例えば、車速が80km/時以上である場合に、車両Vの進行方向300mの範囲内であるとし、車速が80km/時より低い場合に、車両Vの進行方向150mの範囲内であるとしてもよい。また、所定の範囲は、車両Vが走行する道路の種別に応じて設定されてもよい。道路の種別は、位置特定部121で特定された車両Vの位置情報と、記憶部11に格納された地図情報に基づいて特定される。例えば、車両Vが、高速道路を走行している場合に、車両Vが制限速度40km/時の一般道を走行している場合よりも、広い範囲を所定の範囲としてもよい。なお、ここで示した範囲や車速等の値は例示であって、これに限らない。
【0031】
検出部123は、車両Vの前方を走行する先行車両を検出する。例えば、検出部123は、まず、撮像装置1が撮像した車両Vの前方の画像を解析することにより、車両Vが走行する走行車線に対応する区画線を特定する。そして、検出部123は、特定した区画線に基づいて走行車線を特定する。検出部123は、撮像装置1が撮像した車両Vの前方の画像を解析することにより、車両Vの前方に存在し、特定した走行車線を走行する先行車両を検出する。
【0032】
選択部124は、区間特定部122が特定した分岐合流区間を車両Vが走行するときの分岐合流区間の状況に基づいて、分岐合流区間における走行車線の中央を通る中央線を特定する複数の特定手段のうちのいずれかを選択する。選択部124は、区間特定部122が特定した分岐合流区間を車両Vが走行するときの分岐合流区間の状況に基づいて、複数の特定手段の優劣を特定し、特定した優劣に基づいて、複数の特定手段のうちのいずれかを選択する。なお、ここで、特定手段は、中央線の特定方法と言い換えることもできる。本実施形態において、複数の特定手段には、第1特定手段と、第2特定手段と、第3特定手段とが含まれる。
【0033】
第1特定手段は、車両Vの位置情報に基づいて、走行車線の中央線を特定する特定手段である。第1特定手段は、撮像装置1が撮像した撮像画像及び検出部123による先行車両の検出結果を用いずに、位置特定部121が特定した車両Vの位置を用いて中央線を特定する。具体的には、第1特定手段は、記憶部11に記憶されている地図情報を参照して位置特定部121が特定した車両の位置に対応する分岐合流区間における車線の位置を示す車線位置情報を取得し、取得した車線位置情報に基づいて中央線を特定する。車線位置情報は、例えば、車線を規定する2つの区画線の位置を示す情報であり、2つの区画線の位置に基づいて、車線の中央線を特定可能である。
【0034】
第2特定手段は、撮像装置1が撮像した撮像画像を用いて中央線を特定する特定手段である。第2特定手段は、位置特定部121が特定した車両Vの位置及び検出部123による先行車両の検出結果を用いずに、撮像装置1が撮像した撮像画像を用いて中央線を特定する。具体的には、第2特定手段は、撮像装置1が撮像した撮像画像に基づいて分岐車線又は合流車線が接続しない側の走行車線の区画線を特定する。第2特定手段は、当該区画線と走行車線の車線幅とに基づいて中央線を特定する。走行車線の車線幅は、例えば、分岐合流区間よりも前の走行車線を走行時に、撮像装置1が撮像して得られた撮像画像に基づいて予め特定されているとする。第2特定手段は、分岐合流区間とは異なる区間において予め特定した走行車線の車線幅と、分岐車線又は合流車線が接続しない側の区画線の位置とに基づいて、走行車線の中央線を特定する。なお、走行車線の車線幅は、撮像装置1が撮像した撮像画像から特定された走行車線の種別に応じて特定されていてもよい。
【0035】
第3特定手段は、検出部123による先行車両の検出結果を用いて中央線を特定する特定手段である。第3特定手段は、分岐合流区間の近傍に車両Vが侵入する前に、検出した先行車両の検出結果に基づいて中央線を特定する。第3特定手段は、位置特定部121が特定した車両Vの位置及び撮像装置1が撮像した撮像画像を用いずに、検出部123による先行車両の検出結果を用いて中央線を特定する中央線特定手段である。具体的には、第3特定手段は、検出部123による先行車両の検出結果に基づいて先行車両の車幅方向の位置を特定し、特定した車幅方向の位置に基づいて中央線を特定する。
【0036】
例えば、選択部124は、分岐合流区間を車両Vが走行するときの位置特定部121による車両Vの位置の特定精度を特定し、特定した特定精度に基づいて、複数の中央線特定手段の優劣を特定する。トンネルの周辺では衛星が送信する電波の受信強度が低くなりやすいので、位置特定部121による車両Vの位置の特定精度が低下する。そこで、選択部124は、記憶部11に記憶されている地図情報を参照し、車両Vが走行する道路上のトンネルであって、車両Vの進行方向に存在するトンネルの位置を特定する。選択部124は、区間特定部122が特定した分岐合流区間がトンネルの位置から所定の範囲内であるか否かに基づいて、分岐合流区間を車両Vが走行するときの車両Vの位置の特定精度が高いか否かを判定する。
【0037】
選択部124は、分岐合流区間がトンネルから所定の範囲外である場合、車両Vの位置の特定精度が高いと判定して、第1特定手段を、当該分岐合流区間における中央線の特定に対して相対的に優れている特定手段と特定し、第1特定手段を選択する。また、選択部124は、分岐合流区間がトンネルから所定の範囲内である場合、車両Vの位置の特定精度が低いと判定して、第2特定手段又は第3特定手段を相対的に優れている特定手段と特定し、第2特定手段又は第3特定手段を選択する。
【0038】
また、選択部124は、車両Vの位置の特定精度が低いと判定すると、第2特定手段と第3特定手段との優劣を特定する。この場合、第3特定手段が検出部123による先行車両の検出結果を用いて中央線を特定する特定手段であることから、先行車両が検出されていないと中央線を特定することができない。このため、選択部124は、区間特定部122が分岐合流区間を特定したときの検出部123による先行車両の検出結果に基づいて、第2特定手段と、第3特定手段との優劣を特定する。選択部124は、区間特定部122が分岐合流区間を特定した場合に検出部123が先行車両を検出していないとき、第2特定手段を相対的に優れている特定手段と特定し、第2特定手段を選択する。
【0039】
また、選択部124は、区間特定部122が分岐合流区間を特定した場合に検出部123が先行車両を検出しているときには、分岐合流区間を車両Vが走行するときの分岐合流区間の明るさに基づいて、撮像画像を用いて中央線を特定する第2特定手段と、撮像画像を用いて中央線を特定しない第3特定手段との優劣を特定する。
【0040】
具体的には、選択部124は、分岐合流区間を車両Vが走行する場合に車両Vに対して太陽光が入射する方向に基づいて、第2特定手段と第3特定手段との優劣を特定する。例えば、選択部124は、分岐合流区間を車両Vが走行する場合における車両Vの進行方向と、車両Vが分岐合流区間を走行する日時に対応する太陽の位置とに基づいて、車両Vに対して太陽光が入射する方向を特定する。
【0041】
そして、選択部124は、車両Vに対して太陽光が入射する方向と、車両Vにおける撮像装置1の位置とに基づいて、撮像装置1に太陽光が直接入射するか否かを判定する。選択部124は、撮像装置1に太陽光が直接入射すると判定すると、第3特定手段を相対的に優れている特定手段と特定し、第3特定手段を選択する。また、選択部124は、撮像装置1に太陽光が直接入射しないと判定すると、第2特定手段を相対的に優れている特定手段と特定し、第2特定手段を選択する。
【0042】
なお、選択部124は、車両Vの進行方向と、車両Vが分岐合流区間を走行する日時に対応する太陽の位置とに基づいて、撮像装置1に太陽光が直接入射するかを特定したが、これに限らない。例えば、情報処理装置10に照度センサを設けておき、照度センサが測定した車両Vの周囲の照度に基づいて、日照の有無を特定してもよい。そして、選択部124は、車両Vの進行方向と、車両Vが分岐合流区間を走行する日時に対応する太陽の位置と、日照の有無とに基づいて、撮像装置1に太陽光が直接入射するかを特定してもよい。
【0043】
中央線特定部125は、車両Vが走行する走行車線の中央線を特定する。中央線特定部125は、分岐合流区間とは異なる区間における走行車線の中央線を、撮像装置1が撮像した車両Vの前方の撮像画像に基づいて特定する。例えば、中央線特定部125は、撮像装置1が撮像した車両Vの前方の画像を解析することにより、車両Vが走行する走行車線に対応する2つの区画線を特定し、2つの区画線の中間の位置を、走行車線の中央線として特定する。また、中央線特定部125は、2つの区画線の距離を算出することにより、走行車線の車線幅を特定する。特定した走行車線の車線幅は、第2特定手段を用いて分岐合流区間における中央線を算出する場合に用いられる。
【0044】
中央線特定部125は、選択部124が選択した特定手段を用いて分岐合流区間における走行車線の中央線を特定する。中央線特定部125は、第1特定手段が選択されている場合には、記憶部11に記憶されている地図情報を参照して位置特定部121が特定した車両の位置に対応する分岐合流区間における車線の位置を示す車線位置情報を取得し、取得した車線位置情報に基づいて中央線を特定する。
【0045】
中央線特定部125は、第2特定手段が選択されている場合には、分岐合流区間とは異なる区間において特定した最新の車線幅と、撮像装置1が撮像した車両Vの前方の画像に基づいて特定した、分岐車線又は合流車線が接続しない側の区画線とに基づいて中央線を特定する。
【0046】
中央線特定部125は、第3特定手段が選択されている場合には、先行車両の車幅方向の中心位置を特定し、特定した車幅方向の中心位置を走行車線の中央線として特定する。
【0047】
中央線特定部125は、特定した中央線を示す中央線情報を走行制御装置2に出力する。これにより、走行制御装置2は、中央線情報が示す中央線に沿って車両Vが走行するように、車両Vの走行を制御することができる。
【0048】
なお、第3特定手段を用いて、先行車両の車幅方向の中心位置を特定する場合、先行車両が車線変更することにより、中央線を正しく特定できなくなることがある。このため、選択部124は、第3特定手段を選択している場合において、先行車両の車幅方向の単位時間当たりの変位量を特定し、特定した単位時間当たりの変位量が所定量以上となったことに応じて、分岐合流区間の中央線を特定する特定手段として、第1特定手段又は第2特定手段を選択するようにしてもよい。このようにすることで、情報処理装置10は、先行車両が車線変更した場合に中央線を正しく特定できなくなることを抑制することができる。
【0049】
[情報処理装置10における処理の流れ]
続いて、情報処理装置10が分岐合流区間における特定手段を選択する処理の流れについて説明する。
図3は、情報処理装置10が分岐合流区間における特定手段を選択する処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、本フローチャートは、区間特定部122が分岐合流区間を特定すると実行されるものとする。
【0050】
まず、選択部124は、位置特定部121による車両Vの位置の特定精度が高いか否かを判定する(S1)。選択部124は、車両Vの位置の特定精度が高いと判定すると(S1のYES)、S2に処理を移し、分岐合流区間の中央線を特定する特定手段として、第1特定手段を選択する。
【0051】
選択部124は、車両Vの位置の特定精度が低いと判定すると(S1のNO)、検出部123により車両Vの走行車線を走行する先行車両が検出されているか否かを判定する(S3)。選択部124は、先行車両が検出されていると判定すると(S3のYES)、S5に処理を移す。また、選択部124は、先行車両が検出されていないと判定すると(S3のNO)、S4に処理を移し、分岐合流区間の中央線を特定する特定手段として、第2特定手段を選択する。
【0052】
S5において、選択部124は、撮像装置1に太陽光が直接入射するか否かを判定する。選択部124は、撮像装置1に太陽光が直接入射すると判定すると(S5のYES)、S6に処理を移し、分岐合流区間の中央線を特定する特定手段として、第3特定手段を選択する。選択部124は、撮像装置1に太陽光が直接入射しないと判定すると(S5のNO)、S4に処理を移し、分岐合流区間の中央線を特定する特定手段として、第2特定手段を選択する。
【0053】
[本実施の形態の効果]
以上説明したように、本実施の形態に係る情報処理装置10は、車両Vが走行する走行車線において車両Vの位置から車両Vの進行方向の所定の範囲内に存在する、車両Vの走行車線から分岐車線が分岐又は車両Vの走行車線に合流車線が合流する走行車線内の走行区間である分岐合流区間を特定し、当該分岐合流区間を車両Vが走行するときの分岐合流区間の状況に基づいて、分岐合流区間における走行車線の中央を通る中央線を特定する複数の中央線特定手段のうちのいずれかを選択する。そして、情報処理装置10は、選択した中央線特定手段を用いて分岐合流区間における走行車線の中央線を特定する。このようにすることで、情報処理装置10は、車線の分岐区間又は合流区間における車両Vの走行車線の中央線の特定精度を向上させることができる。
【0054】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0055】
1 撮像装置
2 走行制御装置
10 情報処理装置
11 記憶部
12 制御部
121 位置特定部
122 区間特定部
123 検出部
124 選択部
125 中央線特定部
【要約】
【課題】車線の分岐区間又は合流区間における車両Vの走行車線の中央線の特定精度を向上させる。
【解決手段】情報処理装置10は、車両Vが走行する走行車線において車両Vの進行方向の所定の範囲内の、走行車線に対して車線が分岐又は合流する分岐合流区間を特定する区間特定部122と、分岐合流区間の状況に基づいて、分岐合流区間における走行車線の中央線を特定する特定手段を選択する選択部124と、選択された特定手段を用いて分岐合流区間における走行車線の中央線を特定する中央線特定部125と、を有する。
【選択図】
図2