(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】開閉装置、開閉システム及び制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20250311BHJP
H02H 3/16 20060101ALI20250311BHJP
H02H 7/18 20060101ALI20250311BHJP
B60L 53/14 20190101ALI20250311BHJP
【FI】
H02J7/00 S
H02J7/00 P
H02H3/16 A
H02H7/18
B60L53/14
(21)【出願番号】P 2023509956
(86)(22)【出願日】2021-03-30
(86)【国際出願番号】 JP2021013505
(87)【国際公開番号】W WO2022208649
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100099933
【氏名又は名称】清水 敏
(74)【代理人】
【識別番号】100124028
【氏名又は名称】松本 公雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145207
【氏名又は名称】酒本 裕明
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【氏名又は名称】上代 哲司
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【氏名又は名称】神野 直美
(72)【発明者】
【氏名】甲田 直也
(72)【発明者】
【氏名】廣田 貴久
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-091156(JP,A)
【文献】特開2017-114373(JP,A)
【文献】特開平08-037720(JP,A)
【文献】特開2005-149813(JP,A)
【文献】国際公開第2010/032309(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
H01M10/42-10/48
H02H3/08-3/253
H02H7/00
H02H7/10-7/20
B60L1/00-3/12
B60L5/00-5/42
B60L7/00-13/00
B60L15/00-58/40
B60M1/00-7/00
B60R16/00-17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、直流電源に接続されるコネクタと蓄電池との間に配置される開閉装置であって、
前記コネクタと前記蓄電池とを接続する電送路と、
前記電送路に設けられた半導体リレーと、
前記電送路に設けられた開閉器と
、
前記半導体リレーの電圧を測定する第1センサと、
前記半導体リレーの開閉を制御する制御部とを含み、
前記開閉器は、外部からの制御信号により制御され、
前記制御部は、
前記第1センサの測定値に基づいて前記電送路の短絡の有無を判定する判定部を含み、
前記制御信号と前記判定部による判定結果とに基づいて前記半導体リレーの開閉を制御し、
前記第1センサは、電圧センサを含み、
前記電圧センサは、前記半導体リレーの入力端子及び出力端子間の電圧を測定し、
前記第1センサは、前記半導体リレーの入力端子及び出力端子間の前記電圧から片方向電圧を生成し、
前記判定部は、前記片方向電圧に基づいて前記電送路の短絡の有無を判定し、
前記片方向電圧は、短絡電流が生じる場合、前記半導体リレーの入力端子及び出力端子間の前記電圧に等しく、充電電流が生じる場合、0である、開閉装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記判定部により前記電送路が短絡していると判定されたことを受けて、前記制御信号を考慮せずに前記半導体リレーの開閉制御を行う、請求項
1に記載の開閉装置。
【請求項3】
前記半導体リレーの前記開閉制御は、前記半導体リレーを開く遮断制御である、請求項
2に記載の開閉装置。
【請求項4】
前記判定部により前記電送路が短絡していると判定されたことを受けて、リセット信号を出力するリセット部をさらに含み、
前記制御部は、
前記リセット信号が入力されたことを受けて、前記半導体リレーを閉じる制御を行い、
所定時間の間に前記遮断制御を複数回実行した後には、前記半導体リレーを開いた状態に維持する、請求項
3に記載の開閉装置。
【請求項5】
前記電送路が短絡していない状態において、前記制御部は、前記開閉器の開閉に同期して前記半導体リレーの開閉を制御する同期制御を行う、請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の開閉装置。
【請求項6】
前記同期制御は、前記第1センサの前記測定値を考慮せずに前記制御信号に基づいて前記半導体リレーを開閉させる制御である、請求項
5に記載の開閉装置。
【請求項7】
前記開閉器と前記半導体リレーとの接続ノードの電圧値を測定する第2センサと、
前記第2センサにより検出された電圧値により前記半導体リレーの故障の有無を判定する故障判定部とをさらに含み、
前記故障判定部は、前記制御信号及び前記電圧値により前記半導体リレーの故障の有無を判定する、請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載の開閉装置。
【請求項8】
請求項1から請求項
7のいずれか
1項に記載の開閉装置と、
前記開閉装置に前記制御信号を入力する開閉器制御部とを含む、開閉システム。
【請求項9】
車両に搭載され、直流電源に接続されるコネクタと蓄電池との間に配置される開閉装置の制御方法であって、
前記開閉装置は、
前記コネクタと前記蓄電池とを接続する電送路と、
前記電送路に設けられた半導体リレーと、
前記電送路に設けられた開閉器とを含み、
制御信号により前記開閉器を制御する第1制御ステップと
、
前記半導体リレーの電圧を測定する測定ステップと、
前記測定ステップにより得られる測定値に基づいて前記電送路の短絡の有無を判定する判定ステップと、
前記制御信号と前記
判定ステップによる判定結果とに基づいて前記半導体リレー
の開閉を制御する第2制御ステップとを含
み、
前記測定ステップは、
前記半導体リレーの入力端子及び出力端子間の電圧を測定するステップと、
前記半導体リレーの入力端子及び出力端子間の前記電圧から片方向電圧を生成するステップとを含み、
前記判定ステップは、前記片方向電圧に基づいて前記電送路の短絡の有無を判定するステップを含み、
前記片方向電圧は、短絡電流が生じる場合、前記半導体リレーの入力端子及び出力端子間の前記電圧に等しく、充電電流が生じる場合、0である、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、開閉装置、開閉システム及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラグインハイブリッド車(以下、PHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)という)又は電気自動車(以下、EV(Electric Vehicle)という)に搭載された二次電池は、外部電源により充電される。特許文献1には、充電ラインが短絡しても短絡電流の発生を防止できる電動車両の充電システムが開示されている。具体的には、
図1を参照して、電動車両12の充電システムは、車両側コネクタ30と、充電ライン開閉器28p及び28nと、車両側充電ライン46p及び46nと、走行用バッテリ24とを含む。また、充電システムは、車両側充電ライン46p及び46n間に設けられた車両側電圧センサ38と、直流電源60及び充電器側コネクタ62を電気的に接続(以下、単に接続という)する充電器側充電ライン72p及び72n間に設けられた充電器側電圧センサ66とを含む。充電システムはさらに、ダイオード32と、ダイオード32をバイパスするバイパスライン48と、バイパスライン48に配置されたバイパスライン開閉器34及び抵抗素子36と、電子制御装置(ECU(Electronic Control Unit))40とを含む。
【0003】
充電システムは、充電ラインに短絡が発生した場合、走行用バッテリ24から急速充電器14への逆流電流(短絡電流)を、ダイオード32により防止できる。また、充電システムは、充電が開始される前に絶縁故障(短絡等)の有無を判定できる。急速充電を行う場合、車両側コネクタ30と充電器側コネクタ62とが接続され、充電ライン開閉器28p及び28n、並びにバイパスライン開閉器34に対して閉指令が出力される。このとき、車両側電圧センサ38及び充電器側電圧センサ66により検出される電圧の差が所定の閾値を超える場合、電子制御装置40は、充電ライン開閉器28p若しくは28n、バイパスライン48又は抵抗素子36に絶縁故障(短絡等)の可能性があると判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本開示のある局面に係る開閉装置は、車両に搭載され、直流電源に接続されるコネクタと蓄電池との間に配置される開閉装置であって、コネクタと蓄電池とを接続する電送路と、電送路に設けられた半導体リレーと、電送路に設けられた開閉器と、半導体リレーを流れる電流、又は、半導体リレーの電圧を測定するセンサと、半導体リレーの開閉を制御する制御部とを含み、開閉器は、外部からの制御信号により制御され、制御部は、制御信号とセンサの測定値とに基づいて半導体リレーを制御する。
【0006】
本開示の別の局面に係る開閉システムは、上記の開閉装置と、開閉装置に制御信号を入力する開閉器制御部とを含む。
【0007】
本開示のさらに別の局面に係る制御方法は、車両に搭載され、直流電源に接続されるコネクタと蓄電池との間に配置される開閉装置の制御方法であって、開閉装置は、コネクタと蓄電池とを接続する電送路と、電送路に設けられた半導体リレーと、電送路に設けられた開閉器とを含み、制御信号により開閉器を制御する第1制御ステップと、半導体リレーを流れる電流、又は、半導体リレーの電圧を測定する測定ステップと、制御信号と測定ステップにより得られる測定値とに基づいて半導体リレーを制御する第2制御ステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、短絡電流を防止可能な従来の充電システムを示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本開示の第1実施形態に係る開閉装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、半導体リレーに用いるMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)の構造を示す断面図である。
【
図4】
図4は、
図3に示したMOSFETにおいてソース電圧を基準としてドレインに負電圧を印加したときの電圧-電流特性を示すグラフである。
【
図5】
図5は、
図2に示した構成において蓄電池を充電するときの動作を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、
図2に示した開閉装置の動作を示すタイミングチャートである。
【
図7】
図7は、しきい値を小さくした場合の効果を示すタイミングチャートである。
【
図8】
図8は、本開示の第2実施形態に係る開閉装置の構成を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、
図8に示した開閉装置の動作(短絡発生)を示すタイミングチャートである。
【
図10】
図10は、
図8に示した開閉装置の動作(短絡の誤検知)を示すタイミングチャートである。
【
図11】
図11は、本開示の第3実施形態に係る開閉装置の構成を示すブロック図である。
【
図13】
図13は、
図11に示した開閉装置の動作(正常状態)を示すタイミングチャートである。
【
図14】
図14は、
図11に示した開閉装置の動作(半導体リレーのオン固着状態)を示すタイミングチャートである。
【
図15】
図15は、
図11に示した開閉装置の動作(半導体リレーのオフ固着状態)を示すタイミングチャートである。
【
図16】
図16は、変形例に係る開閉装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示が解決しようとする課題]
特許文献1に記載された充電システムにおいては、走行用バッテリ24の急速充電時にはダイオード32に大電流が流れる。したがって、オン抵抗値が比較的大きいダイオード32の発熱量は大きく、ダイオード32を冷却するための機構を追加する必要があり、そのための費用がかかる問題がある。また、充電ライン開閉器28p及び28nの開閉制御とは別に、急速充電を開始する前に、蓄電池の電圧を確認するために、バイパスライン開閉器34をオンオフ制御することが必要であり、急速充電のための制御が複雑である問題もある。
【0010】
したがって、本開示は、特別な冷却機構を必要とせず、急速充電のための制御を複雑化させずに、短絡電流を遮断できる開閉装置、開閉システム及び制御方法を提供することを目的とする。
【0011】
[本開示の効果]
本開示によれば、特別な冷却機構を必要とせず、急速充電のための制御を複雑化させずに、短絡電流を遮断できる開閉装置、開閉システム及び制御方法を提供できる。
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
本開示の実施形態の内容を列記して説明する。以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組合せてもよい。
【0013】
(1)本開示の第1の局面に係る開閉装置は、車両に搭載され、直流電源に接続されるコネクタと蓄電池との間に配置される開閉装置であって、コネクタと蓄電池とを接続する電送路と、電送路に設けられた半導体リレーと、電送路に設けられた開閉器と、半導体リレーを流れる電流、又は、半導体リレーの電圧を測定する第1センサと、半導体リレーの開閉を制御する制御部とを含み、開閉器は、外部からの制御信号により制御され、制御部は、制御信号と第1センサの測定値とに基づいて半導体リレーを制御する。これにより、電送路に短絡が発生した場合に、電送路を速やかに遮断(開放)でき、蓄電池から短絡電流が流れることを防止できる。また、半導体リレーのオン抵抗は比較的小さいので、ダイオードを介して充電電流を供給する構成のように特別な冷却機構を設ける必要がない。
【0014】
(2)好ましくは、制御部は、第1センサの測定値に基づいて電送路の短絡の有無を判定する判定部を含み、制御信号と判定部による判定結果とに基づいて半導体リレーの開閉を制御する。これにより、充電ライン(電送路)に設けられた開閉器の制御を変更することなく、通常時には制御信号にしたがって半導体リレーを制御し、短絡発生時には半導体リレーをオフし、電送路を遮断できる。
【0015】
(3)より好ましくは、第1センサは、電圧センサを含み、電圧センサは、半導体リレーの入力端子及び出力端子間の電圧を測定し、判定部は、電圧センサにより測定された電圧に基づいて電送路の短絡の有無を判定する。これにより、電送路の短絡を速やかに検知できる。また、半導体リレーの片方向電圧(短絡電流を生じる電圧差であり、充電電流が流れる状態においてはゼロ)を用いて電送路の短絡の有無を判定すれば、半導体リレーをオフ(電送路の遮断状態)にするしきい値を充電電流よりも小さく設定でき、短絡が発生した場合に速やかに、半導体リレーをオフして短絡電流が流れることを防止できる。
【0016】
(4)さらに好ましくは、制御部は、判定部により電送路が短絡していると判定されたことを受けて、制御信号を考慮せずに半導体リレーの開閉制御を行う。これにより、速やかに半導体リレーをオフして短絡電流が流れることを防止できる。半導体リレーをオフしても、充電ラインに設けた開閉器の状態には影響しないので、開閉器を閉状態のままに維持できる。したがって、短絡判定が誤判定であった場合には速やかに充電を再開できる。
【0017】
(5)好ましくは、半導体リレーの開閉制御は、半導体リレーを開く遮断制御である。これにより、短絡電流が流れることを速やかに防止できる。
【0018】
(6)より好ましくは、開閉装置は、判定部により電送路が短絡していると判定されたことを受けて、リセット信号を出力するリセット部をさらに含み、制御部は、リセット信号が入力されたことを受けて、半導体リレーを閉じる制御を行い、所定時間の間に遮断制御を複数回実行した後には、半導体リレーを開いた状態に維持する。これにより、短絡発生をより正確に検出でき、誤検知であった場合には急速充電を維持できる。
【0019】
(7)さらに好ましくは電送路が短絡していない状態において、制御部は、開閉器の開閉に同期して半導体リレーの開閉を制御する同期制御を行う。これにより、充電ラインに設けられた開閉器の制御を変更する必要がなく、従来通りの充電制御を行うことができる。
【0020】
(8)好ましくは、同期制御は、第1センサの測定値を考慮せずに制御信号に基づいて半導体リレーを開閉させる制御である。これにより、短絡が発生していない状況においては、従来通りの開閉器の制御を行うことができる。
【0021】
(9)より好ましくは、開閉装置は、開閉器と半導体リレーとの接続ノードの電圧値を測定する第2センサと、第2センサにより検出された電圧値により半導体リレーの故障の有無を判定する故障判定部とをさらに含み、故障判定部は、制御信号及び電圧値により半導体リレーの故障の有無を判定する。これにより、半導体リレーが故障している場合には、急速充電が指示されても、急速充電を実行しないようにできる。したがって、半導体リレーがオン状態に維持されている故障状態(オン固着)において、短絡電流の発生を防止でき、半導体リレーがオフ状態に維持されている故障状態(オフ固着)において、急速充電の実行によりボディダイオードが異状発熱することを防止できる。
【0022】
(10)本開示の第2の局面に係る開閉システムは、上記の開閉装置と、開閉装置に制御信号を入力する開閉器制御部とを含む。これにより、電送路に短絡が発生した場合に、電送路を速やかに遮断(開放)でき、蓄電池から短絡電流が流れることを防止できる。また、半導体リレーのオン抵抗は比較的小さいので、ダイオードを介して充電電流を供給する構成のように特別な冷却機構を設ける必要がない。
【0023】
(11)本開示の第2の局面に係る制御方法は、車両に搭載され、直流電源に接続されるコネクタと蓄電池との間に配置される開閉装置の制御方法であって、開閉装置は、コネクタと蓄電池とを接続する電送路と、電送路に設けられた半導体リレーと、電送路に設けられた開閉器とを含み、制御信号により開閉器を制御する第1制御ステップと、半導体リレーを流れる電流、又は、半導体リレーの電圧を測定する測定ステップと、制御信号と測定ステップにより得られる測定値とに基づいて半導体リレーを制御する第2制御ステップとを含む。これにより、短絡が発生した場合に、電送路を速やかに遮断(開放)でき、蓄電池から短絡電流が流れることを防止できる。
【0024】
[本開示の実施形態の詳細]
以下の実施形態においては、同一の部品には同一の参照番号を付してある。それらの名称及び機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0025】
(第1実施形態)
(構成)
図2を参照して本開示の第1実施形態に係る開閉装置100は、制御部102、半導体リレー104、第1センサ106、開閉部108、並びに、電送路114a及び114bを含む。開閉装置100は、外部ECU120、コネクタ122、蓄電池124及びセンサ126と共に車両140に搭載されている。開閉装置100は、車両140に充電器200を接続して蓄電池124を充電するための電送路に配置されている。車両140は、PHEV又はEVである。
【0026】
制御部102は、判定部110及び駆動部112を含む。判定部110は、演算機能を有する。判定部110は、後述するように、所定のしきい値Vthに基づき、半導体リレー104をオフ(開放)させる制御を行う。具体的には、判定部110は、第1センサ106から入力される信号(後述する片方向電圧V0)をしきい値Vthと比較し、その結果に応じた制御信号S1を出力する。即ち、判定部110は、V0≦Vthであれば、ローレベル(以下、Lレベルという)の制御信号S1を出力し、V0>Vthであれば、ハイレベル(以下、Hレベルという)の制御信号S1を出力する。判定部110は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。判定部110は、比較的簡単な構成の演算素子(ASIC、FPGA等のICチップ)により実現され得る。判定部110は、CPU(Central Processing Unit)、マイクロコンピュータ(以下、マイコンという)等により実現されてもよい。
【0027】
しきい値Vthは、例えば、制御部102内部のメモリ(図示せず)に予め記憶されていればよい。なお、しきい値Vthは電圧であるが、遮断電流が指定される場合には、半導体リレー104のオン抵抗(R)を用いて、遮断電流(Ith)に対応する電圧値(Ith×R)を算出し、その電圧値をしきい値Vthとすればよい。
【0028】
しきい値Vthは、後述する半導体リレー104が損傷されない範囲の値に設定されることが必要である。充電器200により蓄電池124を急速充電する場合、充電中において半導体リレー104を流れる電流Iは、大電流の充電電流(例えば、200A)である。したがって、半導体リレー104が損傷されないように、電送路が短絡した場合においても、充電電流(200A)を超える短絡電流が流れないように、しきい値Vthを設定することが好ましい。例えば、半導体リレー104のオン抵抗と200Aとの積以下の値をしきい値Vthとすればよい。
【0029】
駆動部112は、半導体リレー104を駆動するための回路であり、判定部110の出力信号(制御信号S1)が入力され、制御信号S1と、後述する外部ECU120から入力される制御信号S2とに応じた駆動信号Vgを生成して半導体リレー104に出力する。具体的には、制御信号S1がLレベルであれば、制御信号S2と同じレベルの信号が駆動信号Vgとして出力される。制御信号S1がHレベルであれば、制御信号S2のレベルに関係なく、制御信号S1を反転したレベル(即ちLレベル)の信号が駆動信号Vgとして出力される。駆動信号Vgは、半導体リレー104の開閉を制御する信号(ゲート電圧)として使用される。
【0030】
半導体リレー104は、スイッチング機能を有する半導体素子を含むリレーである。半導体リレー104は、コネクタ122の複数の端子のうちの1つの端子(第1の端子)と蓄電池124の正極端子とを結ぶ電送路114aに配置されている。ここでは、半導体リレー104は、大電流を流すことができるN型のMOSFET(以下、N-MOSFETという)であるとする。半導体リレー104のソースSは開閉部108に接続され、ドレインDは蓄電池124の正極端子に接続され、ゲートGは駆動部112の出力端子に接続されている。半導体リレー104は、通常のMOSFETが構造的に有しているダイオード116を含む。半導体リレー104はN-MOSFETであるので、ダイオード116のアノード(N-MOSFETのボディ)はソースSに接続されており、カソードはドレインDに接続されている。後述するように、蓄電池124が充電されるとき、半導体リレー104のソースSは充電電流の入力端子であり、ドレインDは充電電流の出力端子である。
【0031】
図3を参照して、半導体リレー104の開閉機能を担うN-MOSFETに関して具体的に示す。N-MOSFET(例えば、SiCのN-MOSFET)のソースには正電圧が印加され、ドレインには、ソース電圧を基準として負電圧が印加される。ゲートには、ソース電圧を基準として正電圧が印加される。この状態においては、
図3に実線の矢印で示したように、チャネル(P型層においてゲート下に形成される反転層)を介して、ソースからドレインに電流(以下、ドレイン電流ともいう)が流れる。ソース電圧がドレイン電圧よりも高いので、ボディダイオードには順電圧がかかった状態であり、ボディダイオードを介しても電流(破線の矢印参照)が流れるが、抵抗の小さいチャネルを介して流れる電流が支配的である。
【0032】
図4を参照して、一定のゲート電圧VGの下でのドレイン電圧VD及びドレイン電流IDの変化を表すグラフ(電圧-電流特性)は、ゲート電圧VGを0からV1(>0)、V2(>V1)と増大させると、点線(VG=0)から実線で示したように変化する。
図4において、横軸(右方向が正方向)は、ソース電圧VSを基準としたドレイン電圧VDを表し、縦軸(上方向が正方向)は、ソースからドレインに流れる方向を正とするドレイン電流IDを表す。
図4のグラフは、右上に示した点Oを原点((VD,ID)=(0,0))として、VD≦0、ID≦0の領域におけるドレインの電圧-電流特性を示している。VG=0の場合、チャネルを介して電流は流れないので、VG=0のグラフは、ボディダイオードの電圧-電流特性を表している。
【0033】
第1センサ106は、半導体リレー104のソースS及びドレインD間の電圧を検出する。ここでは、第1センサ106は、ソースSの電圧VsとドレインDの電圧Vdとを検出し、検出値に応じた片方向電圧V0を、半導体リレー104に流れる電流方向を考慮して生成する。具体的には、片方向電圧V0は、Vd≧Vsであれば、V0=Vd-Vsであり、Vd<Vsであれば、V0=0である。即ち、片方向電圧V0は、ソース電圧を基準としたドレイン電圧であり、半導体リレー104のドレインDからソースSに向かう電流(短絡電流)が生じるときの電圧を意味する。半導体リレー104のソースSからドレインDに向かう電流(充電電流)が生じるときには、片方向電圧V0は0である。片方向電圧V0は、上記したように第1センサ106から判定部110に入力される。
【0034】
開閉部108は、第1開閉器108a及び第2開閉器108bを含む。第1開閉器108aは、コネクタ122の複数の端子のうちの第1の端子と蓄電池124の正極端子とを結ぶ電送路114aに配置されている。コネクタ122は、後述するコネクタ210と結合する形態を有している。例えば、コネクタ210がプラグであれば、コネクタ122はソケットである。第2開閉器108bは、コネクタ122の複数の端子のうち、第1の端子と異なる第2の端子と蓄電池124の負極端子とを結ぶ電送路114bに配置されている。より具体的には、第1開閉器108aは、コネクタ122の第1の端子と半導体リレー104のソースSとの間に配置されている。第1開閉器108a及び第2開閉器108bは、閉状態において蓄電池124及びコネクタ122を接続し、開状態において蓄電池124及びコネクタ122の接続を開放する。第1開閉器108a及び第2開閉器108bは、例えば、電磁石と機械的接点とを有する電磁開閉器である。第1開閉器108a及び第2開閉器108bの開閉は、外部ECU120からの制御信号S2により制御される。
【0035】
外部ECU120は、上記したように、第1開閉器108a及び第2開閉器108bの開閉を制御するための制御信号S2を、第1開閉器108a及び第2開閉器108bと駆動部112とに出力する。即ち、外部ECU120は、開閉装置100に含まれる第1開閉器108a及び第2開閉器108bを制御する開閉器制御部として機能する。外部ECU120は、例えば、CPU又はマイコン等により実現される。外部ECU120は、所定のプログラムを実行することにより、後述する処理を実行する。外部ECU120が実行するプログラムは、外部ECU120内部又は外部ECU120外部の不揮発性記憶装置に記憶されている。
【0036】
蓄電池124は、充放電可能な高電圧(例えば、約300V)の二次電池である。蓄電池124は、車両140(PHEV又はEV)の駆動機構(モータ等)に、その作動のための電力を供給する。
【0037】
センサ126は、電送路114a及び114b間の電圧を、所定の時間間隔で、又は、外部からの指示を受けたタイミングで測定する。センサ126は、外部からの要求を受けて、測定値を要求元に伝送する。例えば、急速充電に関係する外部ECU120は、急速充電を開始する前に、センサ126の測定値を取得して蓄電池124の充電状態を確認する。急速充電中には、センサ126の測定値は、蓄電池124の充電状況の監視に利用される。センサ126の測定値は、コネクタ122及びコネクタ210を介して、後述する通信線128により充電器200に送信されてもよい。
【0038】
充電器200は、直流電源202、センサ204、制御部206、電送路208a及び208b、並びに、コネクタ210を含む。制御部206は、車両140に搭載された外部ECU120から充電開始及び充電停止の指示を、通信線128を介して受ける。通信線128は、コネクタ210がコネクタ122に装着されることにより、車両140内の配線と充電器200内の配線とが接続されることにより形成される。直流電源202は、制御部206による制御を受けて、蓄電池124を充電するための電力(直流)を出力する。
【0039】
直流電源202の正極端子は電送路208aに接続され、負極端子は電送路208bに接続されている。電送路208a及び208bは、コネクタ210に接続されている。コネクタ210は、例えばプラグであり、電送路208a及び208bは、例えば、充電器200の本体とコネクタ210とを接続するケーブルとして実現される。電送路208aは、コネクタ210の複数の端子のうちの1つの端子(以下、第3の端子という)に接続され、電送路208bは、コネクタ210の複数の端子のうち、第3の端子と異なる第4の端子に接続されている。コネクタ210がコネクタ122に装着されることにより、上記したコネクタ122の第1の端子及び第2の端子はそれぞれ、コネクタ210の第3の端子及び第4の端子に接続される。したがって、直流電源202の出力電力は、電送路114a及び114bに配置された、第1開閉器108a及び第2開閉器108b、並びに半導体リレー104を介して蓄電池124に電送される。
【0040】
センサ204は、電送路208a及び208b間の電圧を測定する。制御部206は、センサ204の測定値を直流電源202の制御に適宜利用する。制御部206は、通信線128を介して、センサ204の測定値を外部ECU120に送信してもよい。
【0041】
(充電時の動作)
図5及び
図6を参照して、充電時における開閉装置100の動作に関して説明する。
図5に示した処理は、車両140が停止しており(停車し駆動機構が停止している状態)、コネクタ122にコネクタ210が装着され、操作装置(図示せず)に対して急速充電を指示する操作が行われたことを受けて開始される。
図5に示した処理は、開閉装置100を含めて、
図2に示した車両140及び充電器200を構成する各部の協働により実現される。
【0042】
図6に示した波形は上から、外部ECU120から出力される制御信号S2、開閉部108の状態、駆動信号Vg(半導体リレー104のゲート電圧)、半導体リレー104の状態、片方向電圧V0、判定部110から出力される制御信号S1、及び、半導体リレー104を流れる電流Iを表す。横軸は、全ての波形に共通の時間tを表す。電流Iはドレイン電流であり、半導体リレー104のソースSからドレインDに向かう方向(充電器200から蓄電池124に向かう方向)が正である。I>0の場合、電流Iは蓄電池124を充電するための充電電流である。I<0の場合、電流Iは蓄電池124から出力される短絡電流である。
【0043】
0≦t<t1の間、車両140は停止しており、制御信号S2はLレベルであり開閉部108は開状態にある。このとき、片方向電圧V0は0であり、判定部110から出力される制御信号S1はLレベルであり、上記したように、駆動部112は制御信号S2のレベルと同じレベルの信号(Lレベル)を出力する。したがって、半導体リレー104はオフ(停止状態)である。
【0044】
t=t1において、上記したように急速充電が指示されると、ステップ300において、開閉部108を閉状態にし、半導体リレー104をオンさせる。その後、制御はステップ302に移行する。具体的には、外部ECU120がHレベルの制御信号S2を出力し、若干の遅れの後、開閉部108は閉状態になる。制御信号S2は、開閉部108に入力されると同時に駆動部112にも入力される。このとき、第1センサ106から出力される片方向電圧V0は0であり、判定部110から出力される制御信号S1はLレベルである。したがって、上記したように、駆動部112は制御信号S2のレベルと同じレベルの駆動信号Vg(Hレベル)を出力する。なお、駆動信号Vgのレベル(Hレベル又はLレベル)は、ソースSの電圧を基準としている。開閉部108は機械式であるので、
図6に示したように、半導体リレー104がオンするタイミングの方が、開閉部108が閉状態になるタイミングよりも早い。
【0045】
ステップ302において、蓄電池124を急速充電するための充電電流の供給を開始する。その後、制御はステップ304に移行する。具体的には、外部ECU120は、通信線128を介して充電器200の制御部206に充電電流の供給を指示し、これを受けて充電器200は、直流電源202から電力を出力する。上記したように、ステップ300により開閉部108が閉状態になれば、半導体リレー104のソースSには直流電源202からの正電圧が印加される。半導体リレー104のドレインDには、蓄電池124から正電圧が印加されているので、直流電源202の正電圧が蓄電池124の正電圧よりも高ければ(即ち、ソース電圧を基準としたドレイン電圧Vdが負(Vd<0)であれば)、駆動信号VgがHレベルになることにより、半導体リレー104はオンし駆動状態になる。したがって、直流電源202から電力供給することにより、半導体リレー104にはソースSからドレインDに向かって正の電流Iが流れる(
図6においてI=I0)。これにより、蓄電池124は充電される(充電器200による急速充電)。このとき、電流Iには、ダイオード116を介して流れる電流も含まれるが、より抵抗が小さいチャネル部分を流れる電流が支配的である。
【0046】
ステップ304において、片方向電圧V0を生成する。具体的には、第1センサ106は、半導体リレー104の入力端子(ソースS)及び出力端子(ドレインD)間の電圧差を検出し、電圧差に応じて、上記したように片方向電圧V0を生成して出力する。その後、制御はステップ306に移行する。
【0047】
ステップ306において、電送路の短絡の有無を判定する。具体的には、判定部110は、第1センサ106から出力される片方向電圧V0がしきい値Vth以上であるか否かを判定することにより、電送路に短絡が発生したか否かを判定する。判定部110は、V0≧Vth(短絡発生)と判定すると、上記したように、Hレベルの制御信号S1を出力する。V0≧Vthと判定されると、制御はステップ312に移行し、そうでなければ、制御はステップ308に移行する。
【0048】
短絡が発生していなければ、ステップ308において、外部ECU120は、急速充電を終了するか否かを判定する。終了すると判定された場合、制御はステップ310に移行し、そうでなければ、制御はステップ304に戻る。例えば、蓄電池124が満充電になった場合、又は、操作装置が操作されて終了の指示がなされた場合に、急速充電を終了すると判定される。
【0049】
ステップ310において、開閉部108を開状態にし、半導体リレー104をオフにする。具体的には、外部ECU120は、Lレベルの制御信号S2を出力する。その後、本プログラムは終了する。これにより、開閉部108は開状態になり、半導体リレー104はオフになる。したがって、短絡が発生しておらず、充電を終了すると判定されなければ、ステップ304~308が繰返し実行され、急速充電状態が維持される。
【0050】
ステップ306により短絡発生と判定された場合、ステップ312において、半導体リレーをオフする。具体的には、上記したように、駆動部112は、判定部110からHレベルの制御信号S1が入力されると、外部ECU120から出力される制御信号S2のレベルに関係なく、Lレベルの駆動信号Vgを出力する。これにより、半導体リレー104は速やかにオフし、短絡電流が流れることを防止できる。その後、本プログラムは終了する。
【0051】
図6は、t1<t<t2において、急速充電が実行され(ステップ304、306及び308の繰返し)、t=t2において、急速充電を終了すると判定された(ステップ308の判定結果がYES)ことを示している。t=t2において、外部ECU120から出力される制御信号S2がLレベルになれば(ステップ310参照)、若干の遅れの後、開閉部108は開状態になる。このとき、第1センサ106から出力される片方向電圧V0は0であり、判定部110から出力される制御信号S1はLレベルである。したがって、上記したように、駆動部112は制御信号S2のレベルと同じレベルの駆動信号Vg(Lレベル)を出力し、半導体リレー104はオフ(停止状態)になる。開閉部108は機械式であるので、
図6に示したように、開閉部108が閉状態になるタイミングよりも、半導体リレー104がオフするタイミングの方が早い。即ち、半導体リレー104のソースSには直流電源202からの正電圧が印加され、半導体リレー104のドレインDには、蓄電池124から正電圧が印加されている状態で、駆動信号VgがLレベルになる。これにより、電流Iはゼロになる。
【0052】
その後、t=t3において、再度、急速充電が指示されると、外部ECU120から出力される制御信号S2がHレベルになる(ステップ300参照)。これにより、t=t1に関して上記したように、開閉部108が閉状態になり、半導体リレー104がオン(駆動状態)になり、電流I(I=I0)が流れて蓄電池124が充電される。
【0053】
蓄電池124の充電中、t=t4において、電送路に短絡が発生したとする(ステップ306の判定結果がYES)。短絡により、ステップ312が実行される。即ち、半導体リレー104のソース電圧は低下し、電流Iが減少する(チャネルを流れる電流が減少する)。半導体リレー104のソース電圧がさらに低下し、ドレイン電圧よりも低くなると、半導体リレー104のチャネルを流れる電流の方向は逆転する(電流Iは正から負に変化する)。このとき、第1センサ106から出力される片方向電圧V0が0より大きくなる(
図6におけるt=t5のタイミング参照)。その後、半導体リレー104のソース電圧の低下により、第1センサ106から出力される片方向電圧V0はさらに増大する。判定部110は、第1センサ106から入力される片方向電圧V0がしきい値Vth以上になれば、制御信号S1をLレベルからHレベルに変化させる。これにより、駆動部112は、外部ECU120から入力される制御信号S2に依らず、制御信号S1のレベル(Hレベル)を反転させたレベル(Lレベル)の駆動信号Vgを出力する。これにより、半導体リレー104はオフになり、チャネル電流は流れなくなる。ドレイン電圧>ソース電圧の状態は、ボディダイオードにとっては逆バイアスがかかった状態であるので、ボディダイオードを介しても電流は流れない。即ち、充電ライン(電送路)が遮断された状態になる。なお、この状態において、開閉部108は閉状態のままである。
【0054】
以上により、車両140に配置された開閉装置100は、半導体リレー104から充電器200側(半導体リレー104の左側)の電送路において短絡が発生した場合、半導体リレー104をオフ(開放)することにより電送路を速やかに遮断して、蓄電池124から短絡電流が流れることを防止できる。また、開閉部108の状態に依らずに、電送路を遮断できるので、短絡が検知された場合にも開閉部108の状態を維持できる。したがって、電送路の短絡が誤検知であった場合には、半導体リレー104をオンさせるだけで速やかに急速充電を再開できる。
【0055】
半導体リレー104のオン抵抗は比較的小さいので、蓄電池124の急速充電中に半導体リレー104に大きな充電電流が流れても発熱量は少ない。したがって、特許文献1に開示されたようにダイオードを介して充電電流を流す場合に必要となる冷却装置は不要であり、費用の増大を抑制できる。また、短絡発生時には、大きな短絡電流が流れる前に速やかに電送路を遮断できるので、開閉部108に低耐圧製品を採用でき、全体のコストを低減できる。
【0056】
また、蓄電池124の充電時において、開閉部108の制御と半導体リレー104の制御とを同期させる。即ち、半導体リレー104の制御に開閉部108の制御信号(外部ECU120からの制御信号S2)をそのまま使用する。これにより、短絡が発生していない状況において、半導体リレー104を個別に制御する必要がなく、従来通り開閉器の制御を行えばよく、制御システムが単純である。
【0057】
また、短絡の有無の検知に片方向電圧V0を用いることにより、半導体リレー104をオフするしきい値Vthを、充電電流により半導体リレー104の両端子間(ソース-ドレイン間)に発生する電圧差よりも小さい値に設定できる。例えば、電流方向(即ちドレイン電圧の正負)を考慮せずに半導体リレー104の両端子間の電圧差の絶対値によって、短絡の有無を判定する場合、急速充電時に半導体リレー104がオフされないようにするには、しきい値(絶対値)を、急速充電時の半導体リレー104の両端間の電圧よりも大きい値に設定する必要がある。
【0058】
これに対して、片方向電圧V0を用いることにより、しきい値Vthを任意に設定できる。例えば、急速充電時の半導体リレー104の両端子間の電圧差よりも小さい値をしきい値Vthに設定できる。
図7を参照して、上記したしきい値Vth(>0)よりも小さい、正のしきい値Vth1(Vth>Vth1>0)を用いる場合について説明する。
【0059】
図7には、
図6と同様に、駆動信号Vg、半導体リレー104の状態、片方向電圧V0、制御信号S1及び電流Iが示されている。
図7には、しきい値がVthである場合の波形(
図6と同じ波形)を、破線で示している。
図7において、短絡が発生するまで(t=t4まで)は、
図6と同じ波形である。
【0060】
上記したように、t=t4の後、電流Iは減少し、t=t5において、I=0になり、その後、I<0、V0>0となる。V0<Vth1である間は、判定部110は依然としてLレベルの制御信号S1を出力する。片方向電圧V0がさらに増大し、判定部110がV0≧Vth1となったと判定すると、判定部110はHレベルの制御信号S1を出力する。これにより、駆動部112は、制御信号S2のレベルに依らず、制御信号S1を反転したレベル(Lレベル)の駆動信号Vgを出力し、半導体リレー104はオフになる。その結果、電流Iは0になる。このとき、しきい値Vth1はしきい値Vthよりも小さい値であるので、t=t6よりも前であるt=t7のタイミングにおいて、半導体リレー104はオフし、電流Iは0になる。即ち、より小さいしきい値を設定することにより、より速やかに電送路を遮断し、短絡電流を防止できる。
【0061】
上記では、短絡が検知された場合に、半導体リレー104をオフするが、開閉部108は閉状態を維持する場合を説明したが、これに限定されない。短絡が発生した場合に、開閉部108を開状態にしてもよい。例えば、判定部110と外部ECU120との間に信号線を設けておき、判定部110が制御信号S1を出力するとき(短絡発生)に、判定部110から外部ECU120に所定の信号を伝送してもよい。これにより、その所定の信号を受信した外部ECU120は、制御信号S2をLレベルにして、開閉部108を開状態にできる。
【0062】
(第2実施形態)
第1実施形態においては、短絡が検知されると速やかに半導体リレーをオフしたが、誤検知が生じる可能性がある。第2実施形態は、第1実施形態と同様に短絡電流を遮断する機能を有し、短絡の誤検知にも対応できるものである。
【0063】
(構成)
図8を参照して本開示の第2実施形態に係る開閉装置400は、制御部402、半導体リレー104、第1センサ106、開閉部108、並びに、電送路114a及び114bを含む。開閉装置400は、外部ECU120、コネクタ122、蓄電池124及びセンサ126と共に車両140に搭載されている。開閉装置400は、車両140に充電器200を接続して蓄電池124を充電するための電送路に配置されている。
【0064】
制御部402は、判定部410、リセット部412及び駆動部420を含む。駆動部420は、第1駆動部422及び第2駆動部424を含む。開閉装置400は、
図2に示した開閉装置100において、制御部102及び第1センサ106をそれぞれ制御部402及び第1センサ406で代替したものであり、制御部402は、
図2に示した制御部102において、判定部110及び駆動部112をそれぞれ判定部410及び駆動部420で代替し、リセット部412を追加したものである。
図8において
図2と同じ符号を付した構成要素は、
図2の構成要素と同じ機能を有し、同様に構成されている。以下においては、重複説明を繰返さず、主として開閉装置400が開閉装置100と異なる点に関して説明する。
【0065】
判定部410は、判定部110と同様の機能に加えて、後述するリセット部412から入力されるリセット信号S3に応じて、出力する制御信号S1のレベルを変化させる機能を有する。第1実施形態(
図2参照)において判定部110は、第1センサ106から入力される片方向電圧V0を用いて短絡発生の有無を判定したが、判定部410は、後述する第1センサ406から入力される電流の測定値(電流値I0)を用いて短絡発生の有無を判定する。具体的には、判定部410は、電流値I0を負のしきい値Ith(<0)と比較し、その結果に応じた制御信号S1を出力する。例えば、判定部410は、I0>Ithであれば、Lレベルの制御信号S1を出力し、I0≦Ithであれば、Hレベルの制御信号S1を出力する。
【0066】
判定部410は、制御信号S1をHレベルで出力したとき、所定時間Δt1の間、リセット信号S3(例えばHレベル)の入力を待ち受ける。リセット信号S3が入力されると、制御信号S1をLレベルにする。リセット信号S3が入力されなければ、制御信号S1をHレベルに維持する。後述するように、短絡が発生した場合、第1センサ406は繰返しリセット信号S3を出力する。判定部410は、短時間の間に、例えば3回制御信号S1をLレベルからHレベルに変化させとき、リセット信号が入力されても制御信号S1をHレベルに維持し、ダイアグ信号S4(例えばHレベル)を出力する。ダイアグ信号S4は外部ECU120に入力される。
【0067】
リセット部412は、判定部410から出力される制御信号S1がHレベルになったときから所定の時間Δt2(Δt2<Δt1)経過すれば、リセット信号S3(Hレベル)を出力する。時間の経過は、リセット部412の内部に時計を設けて判定しても、外部(時計等)から取得した時刻情報を用いて判定してもよい。また、リセット部412の動作クロックを用いてもよい。
【0068】
第1センサ406は、第1センサ106と同様に、半導体リレー104のソースS及びドレインD間の電圧を検出する。第1センサ406は、第1センサ106とは異なり、検出したソースSの電圧Vs及びドレインDの電圧Vdから、104を流れる電流値I0を算出する。第1センサ406は、電流値I0を判定部410に入力する。これにより、上記したように第1センサ406は、電流値I0としきい値Ithとを比較した結果に応じたレベルの制御信号S1を出力する。
【0069】
第1駆動部422は、半導体リレー104を駆動するための回路であり、駆動部112と同じ機能を有する。第1駆動部422は、判定部410から制御信号S1が入力され、制御信号S1と、外部ECU120から入力される制御信号S2とに応じた駆動信号Vgを生成して半導体リレー104に出力する。制御信号S1がLレベルであれば、制御信号S2と同じレベルの信号が駆動信号Vgとして出力される。制御信号S1がHレベルであれば、制御信号S2のレベルに関係なく、制御信号S1を反転したレベル(即ちLレベル)の信号が駆動信号Vgとして出力される。駆動信号Vgは、半導体リレー104の開閉を制御する信号(ゲート電圧)として使用される。
【0070】
第2駆動部424は、開閉部108を構成する第1開閉器108a及び第2開閉器108bを駆動するための回路である。第2駆動部424は、外部ECU120からの制御信号S2に応じて、第1開閉器108a及び第2開閉器108bの開閉を制御する。
【0071】
(短絡発生時の動作)
図9を参照して、短絡が発生した場合に、それを検知するときの動作に関して説明する。
図9に示した波形は上から、半導体リレー104を流れる電流I、外部ECU120から出力される制御信号S2、駆動信号Vg、判定部410から出力される制御信号S1、リセット信号S3、及び、ダイアグ信号S4を表す。駆動信号Vgは、半導体リレー104の状態(オン又はオフ)を表す。横軸は、全ての波形に共通の時間tを表す。電流Iはドレイン電流であり、半導体リレー104のソースSからドレインDに向かう方向(充電器200から蓄電池124に向かう方向)が正である。I>0の場合、電流Iは蓄電池124を充電するための充電電流である。I<0の場合、電流Iは蓄電池124から出力される短絡電流である。
【0072】
0≦t<t1の間、車両140は停止しており、制御信号S2はLレベルであり開閉部108は開状態にある。このとき、電流値I0は0であり、判定部410から出力される制御信号S1はLレベルであり、上記したように、第1駆動部422は制御信号S2のレベルと同じレベルの信号(Lレベル)を出力する。したがって、半導体リレー104はオフ(停止状態)である。
【0073】
t=t1において、急速充電が指示されると、外部ECU120がHレベルの制御信号S2を出力し、第2駆動部424の制御を受けて開閉部108は閉状態になる。制御信号S2は、第1駆動部422にも入力される。このとき、第1センサ106から出力される電流値I0は0であり、判定部410から出力される制御信号S1はLレベルである。したがって、上記したように、第1駆動部422は制御信号S2のレベルと同じレベルの駆動信号Vg(Hレベル)を出力する。これにより、半導体リレー104がオンし、t1<t<t2において、急速充電が実行される。
【0074】
蓄電池124の充電中、t=t3において、電送路に短絡が発生したとする。これにより、半導体リレー104のソース電圧は低下し、電流Iが減少する。したがって、第1センサ406から判定部410に入力する電流値I0は減少する。半導体リレー104のソース電圧がさらに低下し、ドレイン電圧よりも低くなると、半導体リレー104のチャネルを流れる電流の方向は逆転し(電流Iは正から負に変化する)、さらに減少する。したがって、第1センサ406から判定部410に入力する電流値I0は負になり、さらに減少する。判定部410は、電流値I0が負のしきい値Ith以下(I0≦Ith)になれば、制御信号S1をLレベルからHレベルに変化させる(以下、遮断制御ともいう)。これにより、第1駆動部422は、外部ECU120から入力される制御信号S2に依らず、制御信号S1のレベル(Hレベル)を反転させたレベル(Lレベル)の駆動信号Vgを出力する。したがって、半導体リレー104はオフになり、チャネル電流は流れなくなる。ドレイン電圧>ソース電圧の状態は、ボディダイオードにとっては逆バイアスがかかった状態であるので、ボディダイオードを介しても電流は流れない。即ち、充電ライン(電送路)が遮断された状態になる。なお、この状態において、制御信号S2はHレベルのままであり、開閉部108は閉状態のままである。
【0075】
判定部410は、Hレベルの制御信号S1を出力した後、時間Δt1の間、リセット信号S3の入力を待ち受ける。判定部410から出力される制御信号S1がHレベルになると、リセット部412は、制御信号S1がHレベルになったときからの経過時間を測定し、時間Δt2が経過すれば、リセット信号S3(Hレベル)を出力する。これを受けて、判定部410は、遮断制御を行う(制御信号S1をHレベルからLレベルに変化させる)。これにより、駆動信号VgはHレベルになり、半導体リレー104がオンになり、電流Iが流れ始めるが、短絡が発生しているので電流Iは短絡電流であり、短時間の後、t=t4においてt=t3と同じ状態になる。即ち、制御信号S1がHレベルになり、駆動信号VgがLレベルになり、半導体リレー104はオフする。
【0076】
t4<t≦t5においては、上記したt3<t≦t4における動作が繰返される。その結果、判定部410は制御信号S1を、t=t3、t4及びt5において合計3回Hレベルにする(3回の遮断制御)。その後、判定部410は、リセット信号が入力されても制御信号S1をHレベルに維持し、t=t6において、ダイアグ信号S4(Hレベル)を出力する。ダイアグ信号S4は外部ECU120に入力され、外部ECU120は制御信号S2をLレベルにする。これにより、第2駆動部424は、第1開閉器108a及び第2開閉器108bを開状態にする。
【0077】
(短絡誤検知時の動作)
図10を参照して、短絡発生の検知が誤検知である場合の動作に関して説明する。
図10に示した各波形の意味は、
図9と同じであり、横軸の意味も同じである。
【0078】
0≦t<t2において、開閉装置400の動作は
図9と同じである。t1≦t<t2の間、急速充電が実行される。
【0079】
蓄電池124の充電中、t=t2において、何らかの原因で、短絡発生が誤検知されたとする。例えば、実際には短絡が発生しておらず、正常に充電電流が流れているにもかかわらず、第1センサ406から出力される電流値I0がしきい値Ith以下(I0≦Ith)になったとすると、判定部410は、制御信号S1をLレベルからHレベルに変化させる。これにより、駆動電圧VgはLレベルになり、半導体リレー104はオフする。また、判定部410が、Hレベルの制御信号S1を出力した後、リセット信号S3の入力を待ち受ける時間Δt1の間に、第1センサ406からリセット信号S3が出力される。
【0080】
判定部410は、リセット信号S3が入力されると、t=t3において、制御信号S1をLレベルに戻す。これにより、駆動信号VgはHレベルになり、半導体リレー104はオンする。判定部410は、Hレベルの制御信号S1を出力した後、時間Δt1の間、リセット信号S3の入力を待ち受けるが、実際には短絡が発生しておらず誤検知であり、短絡電流が流れていない(I0>Ith)ので、リセット信号S3は出力されない。したがって、その後は、急速充電が継続され、例えば、t=t4において蓄電池124が満充電になれば、外部ECU120は制御信号S2をLレベルにし、半導体リレー104はオフする。これにより、急速充電が終了する。
【0081】
以上により、車両140に配置された開閉装置400は、半導体リレー104から充電器200側(半導体リレー104の左側)の電送路において、実際に短絡が発生した場合、半導体リレー104をオフ(開放)することにより電送路を速やかに遮断して、蓄電池124から短絡電流が流れることを防止できる。判定部410が遮断制御を3回実行(制御信号S1を3回Hレベルにする)した後に、短絡発生と判定することにより、より正確に短絡発生を検知できる。また、短絡発生の検知が誤検知であった場合には、急速充電を停止することなく、継続できる。
【0082】
上記では、判定部410は遮断制御を3回実行したときに、短絡発生と判定する場合を説明したが、これに限定されない。誤検知を回避するには、所定の短時間内に遮断制御を2回以上実行すればよく、4回以上遮断制御を行った後に、短絡発生と判定してもよい。
【0083】
上記では、第1センサ406が、半導体リレー104の電流値を測定する場合を説明したが、これに限定されない。第1実施形態の第1センサ106と同様に、電圧を測定し、片方向電圧V0を出力してもよい。その場合、判定部410は、判定部110と同様に片方向電圧V0としきい値Vthとを比較して、短絡発生の有無を判定する。
【0084】
(第3実施形態)
第2実施形態においては、短絡の誤検知に対処したが、半導体リレー自体が故障することもあり得る。第3実施形態は、第2実施形態と同様に、短絡電流を遮断し、短絡の誤検知に対応できることに加えて、半導体リレーの故障をも検知できるものである。
【0085】
(構成)
図11を参照して本開示の第3実施形態に係る開閉装置600は、制御部602、半導体リレー104、第1センサ106、開閉部108、並びに、電送路114a及び114bを含む。開閉装置600は、外部ECU120、コネクタ122、蓄電池124及びセンサ126と共に車両140に搭載されている。開閉装置600は、車両140に充電器200を接続して蓄電池124を充電するための電送路に配置されている。
【0086】
制御部602は、判定部410、リセット部412、駆動部420、第2センサ604及び故障判定部606を含む。駆動部420は、第1駆動部422及び第2駆動部424を含む。開閉装置600は、
図8に示した開閉装置400において、制御部402を制御部602で代替したものである。制御部602は、
図8に示した制御部402において、第2センサ604及び故障判定部606を追加したものである。
図11において
図8と同じ符号を付した構成要素は、
図8の構成要素と同じ機能を有し、同様に構成されている。以下においては、重複説明を繰返さず、主として開閉装置600が開閉装置400と異なる点に関して説明する。
【0087】
第2センサ604は、開閉部108と半導体リレー104との接続ノードの電圧を検出し、検出結果(電圧値V1)を故障判定部606に出力する。具体的には、第2センサ604は、電送路114a上に配置された第1開閉器108a及び半導体リレー104(ソースS)の接続ノードと、電送路114b上における第2開閉器108b及び蓄電池124(負極端子)の接続ノードとの間の電圧を測定する。
【0088】
故障判定部606は、外部ECU120から入力される制御信号S2と、第2センサ604から入力される電圧値V1とに応じて、半導体リレー104の故障の有無と、故障の種類とを判定する。具体的には、故障判定部606は、制御信号S2がLレベルである場合、電圧値V1が所定のしきい値Vth2未満(V1<Vth2)のLレベルであれば、半導体リレー104は正常であり、電圧値V1がしきい値Vth2以上(V1≧Vth2)のHレベルであれば、半導体リレー104は故障していると判定する。故障判定部606は、その故障の種類を、駆動信号VgがLレベルであるにも関わらずオンしている故障(以下、オン固着という)と判定する。一方、故障判定部606は、制御信号S2がHレベルである場合、電圧値V1がHレベルであれば、半導体リレー104は正常であり、電圧値V1がLレベル(V1<Vth2)であれば、半導体リレー104は故障していると判定する。故障判定部606は、その故障の種類を、駆動信号VgがHレベルであるにも関わらずオフしている故障状態(以下、オフ固着という)と判定する。しきい値Vth2は、例えば蓄電池124の電圧の1/2である。
【0089】
故障判定部606は、比較的簡単な構成の演算素子(ASIC、FPGA等のICチップ)により実現され得る。故障判定部606は、CPU、マイコン等により実現されてもよい。
図12に故障判定部606の動作の一例を示す。なお、充電器200は車両140側からの指示を受けて、電力の出力を開始及び停止する。具体的には、制御部206は、通信線128を介して外部ECU120から、充電開始の指示を受信すると直流電源202を放電させ、充電停止の指示を受信すると放電を停止させる。
【0090】
ステップ500において、故障判定部606は、外部ECU120から入力される制御信号S2がHレベルであるか否かを判定する。Hレベルであると判定された場合、制御はステップ502に移行する。そうでなければ、制御はステップ504に移行する。
【0091】
ステップ502において、故障判定部606は、第2センサ604から入力される電圧値V1がしきい値Vth2以上であるか否かを判定する。しきい値Vth2以上であると判定された場合(半導体リレー104は正常)、制御はステップ508に移行する。そうでなければ、即ちV1<Vth2であれば(半導体リレー104はオフ固着状態)、制御はステップ506に移行する。
【0092】
ステップ504において、故障判定部606は、ステップ502と同様に電圧値V1がしきい値Vth2以上であるか否かを判定する。しきい値Vth以上であると判定された場合(半導体リレー104はオン固着状態)、制御はステップ506に移行する。そうでなければ(半導体リレー104は正常)、制御はステップ508に移行する。
【0093】
ステップ506において、故障判定部606は、外部ECU120に出力するダイアグ信号S4をHレベルにする。その後、制御はステップ508に移行する。
【0094】
ステップ508において、故障判定部606は、終了の指示を受けたか否かを判定する。終了の指示を受けたと判定された場合、故障判定部606は動作を停止する。そうでなければ、制御はステップ500に戻る。故障判定部606は、例えば、140の操作装置が操作されて電源オフの指示がなされた場合、終了の指示を受けたと判定する。
【0095】
以上により、故障判定部606は、制御信号S2及び電圧値V1に応じて、半導体リレー104の故障の有無及びその種類を判定し、故障の場合には、Hレベルのダイアグ信号S4を外部ECU120に出力する。半導体リレー104にオン固着が生じている場合には、短絡が発生し、開閉装置600がそれを検出したとしても、短絡電流を遮断できない。また、半導体リレー104にオフ固着が生じている場合には、急速充電時に半導体リレー104のボディダイオードに通電されて、想定以上の発熱になり得る。したがって、オン固着及びオフ固着の状態を検知できることが好ましい。
【0096】
上記したように、故障判定部606は、半導体リレー104が故障状態にあると判定した場合、ダイアグ信号S4を外部ECU120に出力する。外部ECU120は、急速充電の指示を受けてHレベルの制御信号S2を出力していても、制御部206に充電開始の指示をしない。外部ECU120は、制御信号S2をLレベルにしてもよい。また、外部ECU120は、Lレベルの制御信号S2を出力していれば、急速充電の指示を受けても制御信号S2をHレベルにせず、Lレベルに維持する。いずれの場合にも外部ECU120は、警告を提示してもよい。
【0097】
(正常動作)
図13を参照して、半導体リレーが正常である場合における急速充電時の動作に関して説明する。
図13に示した波形は上から、半導体リレー104を流れる電流I、充電電圧(充電器200の出力電圧)、外部ECU120から出力される制御信号S2、半導体リレー104の状態、第2センサ604から出力される電圧値V1、及び、ダイアグ信号S4を表す。横軸は、全ての波形に共通の時間tを表す。ここでは、短絡は発生しないとする。半導体リレー104が正常である場合、半導体リレー104のオンオフ状態は、駆動信号Vgのレベルにより決定されるが、半導体リレー104が故障しているときには、半導体リレー104のオンオフ状態は、駆動信号Vgのレベルとは直接関係しない。なお、短絡が発生した場合には、開閉装置600は開閉装置400と同様に動作する(
図9及び
図10参照)。
【0098】
t=t1において、急速充電が指示されると、外部ECU120がHレベルの制御信号S2を出力し、第2駆動部424の制御を受けて開閉部108は閉状態になる。制御信号S2は、第1駆動部422にも入力される。この段階では、外部ECU120はまだ制御部206に充電開始を指示していないので、充電器200から充電電圧は出力されておらず、第1センサ106から出力される電流値I0は0であり、判定部410から出力される制御信号S1はLレベルである。したがって、第1駆動部422は制御信号S2のレベルと同じレベルの駆動信号Vg(Hレベル)を出力する。これにより、半導体リレー104がオンし、第2センサ604により電池124の電圧が検出され、第2センサ604から出力される電圧値V1はHレベルになる。したがって、ダイアグ信号S4はLレベルに維持され、時刻t2において、外部ECU120は充電器200の制御部206に充電開始を指示する。これにより、充電器200から電圧Vchが供給され、t2<t<t3において、急速充電が実行される。
【0099】
その後は、急速充電が継続され、t=t3において蓄電池124が満充電になれば、外部ECU120は制御部206に充電停止を指示し、制御信号S2をLレベルにする。これにより、充電電圧はゼロになり、半導体リレー104はオフし、急速充電が終了する。
【0100】
(オン固着状態における動作)
図14を参照して、半導体リレー104がオン固着状態になった場合における急速充電時の動作に関して説明する。
図14に示した各波形の意味は、
図13と同じであり、横軸の意味も同じである。ここでは、急速充電が実行されていない状態であるとする。
【0101】
t=t1において、何らかの原因により半導体リレー104がオン固着状態になった場合、第1開閉器108a及び半導体リレー104の接続ノードには蓄電池124の電圧(正極端子の電圧)が印加される。したがって、第2センサ604から出力される電圧値V1はHレベルになる。これを受けて、故障判定部606は、制御信号S2がLレベルであるので、所定の時間Δt3の間、第2センサ604からの電圧値V1がHレベルに維持されているか否かを判定する。故障判定部606は、時間Δt3経過しても電圧値V1がHレベルであるので、t=t2において、ダイアグ信号S4をHレベルに設定する。これを受けて、外部ECU120は、制御信号S2をLレベルに維持する(急速充電の指示を受けても制御信号S2をHレベルにしない)。したがって、半導体リレー104がオン固着状態において、急速充電が実行されることを防止できる。外部ECU120は、半導体リレー104がオン固着状態であることを提示できる。
【0102】
(オフ固着状態における動作)
図15を参照して、半導体リレーがオフ固着状態である場合に急速充電が指示されたときの動作に関して説明する。
図15に示した各波形の意味は、
図13と同じであり、横軸の意味も同じである。
【0103】
t=t1において、何らかの原因により半導体リレー104がオフ固着状態になったとする。このときにも
図12に示した処理は実行されているが、急速充電されておらず、制御信号S2及び電圧値V1は共にLレベルであるので、故障(オフ固着)は検出されない。t=t2において、急速充電が指示されると、外部ECU120は制御信号S2をHレベルにする。これにより、駆動電圧VgはHレベルになるが、半導体リレー104はオフ固着状態であり、外部ECU120はまだ制御部206に充電開始を指示していないので、充電電圧は出力されていない。したがって、第2センサ604から出力される電圧値V1はLレベルのままである。故障判定部606は、制御信号S2がHレベルになってから、時間Δt3の間、第2センサ604からの電圧値V1がLレベルに維持されているか否かを判定する。故障判定部606は、時間Δt3が経過しても電圧値V1がHレベルにならずLレベルのままであるので、t=t3において、ダイアグ信号S4をHレベルに設定する。これを受けて、外部ECU120は、急速充電の指示を受けているが、充電器200の制御部206に充電開始を指示しない。また、外部ECU120は、t=t4において、制御信号S2をHレベルからLレベルに戻す。外部ECU120は、半導体リレー104がオフ固着状態であることを提示できる。
【0104】
以上により、開閉装置600は、半導体リレー104が故障状態であれば、急速充電が指示されても、急速充電が実行されることを防止できる。したがって、半導体リレー104にオフ固着が生じている場合には、急速充電時に半導体リレー104のボディダイオードに通電されて、想定以上の発熱になることを回避できる。また、半導体リレー104にオン固着が生じている場合には、その旨を提示できるので、速やかに半導体リレー104を交換修理できる。よって、半導体リレー104にオン固着状態において、短絡が発生し、開閉装置600がそれを検出したとしても、短絡電流を遮断できない問題が発生することを、回避できる。
【0105】
なお、半導体リレー104が正常であれば、開閉装置600は、開閉装置400と同様に動作する。即ち、短絡が発生した場合には、半導体リレー104をオフ(開放)することにより電送路を速やかに遮断して、蓄電池124から短絡電流が流れることを防止できる。また、短絡発生の検知が誤検知であった場合には、急速充電を停止することなく、継続できる。
【0106】
上記では、第2センサ604及び故障判定部606が、制御部602に含まれる場合を説明したが、これに限定されない。第2センサ604及び故障判定部606は、制御部602の外部に配置されていてもよい。
【0107】
上記では、外部ECU120が、充電器200の制御部206に急速充電の開始及び停止を指示する場合を説明したが、これに限定されない。コネクタ210及びコネクタ122が接続されており、第1開閉器108aがオンであれば、制御部206は、コネクタ210のピンのうち第1開閉器108aに接続されている所定のピンにより、電圧値V1に対応する電圧値を検出できる。したがって、制御部206は、コネクタ210の所定のピンの電圧に応じて、電力の供給開始及び停止を判定してもよい。このようにすれば、故障判定部606が半導体リレー104の故障を検出しておらず、半導体リレー104がオンしているにもかかわらず、所定のピンの電圧がゼロのまま(蓄電池124の電圧を検出できない状態)であれば、開閉部108が故障していると判定できる。
【0108】
(変形例)
第3実施形態においては、半導体リレー104に故障が発生した場合、故障判定部606からHレベルのダイアグ信号S4を外部ECU120に出力したが、これに限定されない。変形例にかかる開閉装置は、故障判定部606からHレベルのダイアグ信号S4を外部ECU120に出力するとともに、開閉部108を開状態にする。
図16を参照して、変形例にかかる開閉装置700は、
図12に示した開閉装置600において、破線で示すように故障判定部606から第2駆動部424への信号線を追加したものである。開閉装置700のそれ以外の構成は、開閉装置600と同じである。
【0109】
開閉装置700の故障判定部606は、ダイアグ信号S4を出力する場合、例えばHレベルの制御信号S5を第2駆動部424に出力する。これを受けて、第2駆動部424は、制御信号S2のレベルによらず、開閉部108を開状態に制御する。これにより、半導体リレー104に故障が発生していることが検知されると、速やかに開閉部108を開状態にできる。したがって、半導体リレー104が故障したことにより、短絡が発生した場合に短絡電流を遮断できない問題を回避できる。
【0110】
上記では、制御信号S2がHレベルの場合に開閉部108が閉状態になる場合を説明したが、これに限定されない。開閉部108を開状態にする制御信号S2のレベルと、開閉部108を閉状態にする制御信号S2のレベルとが異なっていればよい。例えば、制御信号S2がLレベルの場合に開閉部108が閉状態になるように構成してもよい。その場合、駆動部112は、制御信号S1がLレベルの状態(短絡が発生していない状態)においては、入力される制御信号S2(Lレベル)を反転したレベルの駆動信号Vg(Hレベル)を半導体リレー104のゲートGに出力すればよい。
【0111】
上記では、判定部110は、V0≧VthであればHレベルの制御信号S1を出力し、V0<VthであればLレベルの制御信号S1を出力する場合を説明したが、これに限定されない。V0≧Vthであるか否かに応じて、制御信号S1が異なるレベルで出力されるように構成されていればよい。例えば、判定部110は、V0≧VthであればLレベルの制御信号S1を出力し、V0<VthであればHレベルの制御信号S1を出力してもよい。その場合、駆動部112は、制御信号S1がHレベルであれば、入力される制御信号S2のレベルと同じレベル(又は制御信号S2を反転したレベル)の駆動信号Vgを出力し、制御信号S1がLレベルであれば、制御信号S1と同じレベルの駆動信号Vg(Lレベル)を出力すればよい。これにより、電送路の短絡時に、半導体リレー104のゲートGをLレベルにし、電送路を遮断できる。なお、判定部410が、電流値I0としきい値Ithとを比較した結果に応じて制御信号S1を出力する処理に関しても同様である。I0≦Ithであるか否かに応じて、制御信号S1が異なるレベルで出力されるように構成されていればよい。
【0112】
上記では、半導体リレー104を蓄電池124(正極端子)と第1開閉器108aとの間に配置する場合を説明したがこれに限定されない。半導体リレー104を、蓄電池124と第2開閉器108bとの間に配置してもよい。その場合、半導体リレー104のドレインDを第2開閉器108bに接続し、ソースSを蓄電池124の負極端子に接続すればよい。
【0113】
上記では、半導体リレー104にN-MOSFETを使用する場合を説明したが、これに限定されない。半導体リレー104にP型のMOSFET(以下、P-MOSFETという)を使用してもよい。その場合、例えば、半導体リレー(P-MOSFET)のソースSを蓄電池124の正極端子に接続し、ドレインDを第1開閉器108aに接続し、ゲートGには、ソースSの電圧を基準として、負の電圧を印加する。なお、P-MOSFETに形成されるボディダイオードに関しては、ドレインからソースに向かう方向(第1開閉器108aから蓄電池124の正極端子に向かう方向)が順方向である。したがって、半導体リレー104にN-MOSFETを使用する場合と同様に、電送路に短絡が発生しても短絡電流を防止できる。
【0114】
上記では、半導体リレーがMOSFETを用いて構成されている場合を説明したが、これに限定されない。外部からの制御を受けてスイッチとして機能し、オン抵抗が小さく、オフ時にダイオードとして機能する素子であればよい。例えば、サイリスタ、トライアック等を用いた半導体リレーであってもよい。また、外部からの制御を受けてスイッチとして機能し、オン抵抗が小さい素子と、ダイオードとが並列に接続されたものであってもよい。そのように構成された半導体リレーを、ダイオードのアノードが充電器側に接続され、ダイオードのカソードが蓄電池側に接続されるように、送電線に配置することにより、電送路に短絡が発生した場合に短絡電流を防止できる。
【0115】
以上、実施の形態を説明することにより本開示を説明したが、上記した実施の形態は例示であって、本開示は上記した実施の形態のみに制限されるわけではない。本開示の範囲は、発明の詳細な説明の記載を参酌した上で、請求の範囲の各請求項によって示され、そこに記載された文言と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含む。
【符号の説明】
【0116】
12 電動車両
14 急速充電器
24 走行用バッテリ
28n、28p 充電ライン開閉器
30 車載側コネクタ
32、116 ダイオード
34 バイパスライン開閉器
36 抵抗素子
38 車両側電圧センサ
40 電子制御装置
46n、46p 車両側充電ライン
48 バイパスライン
60、202 直流電源
62 充電器側コネクタ
66 充電器側電圧センサ
72n、72p 充電器側充電ライン
100、400、600、700 開閉装置
102、206、402、602 制御部
104 半導体リレー
106、406 第1センサ
108 開閉部
108a 第1開閉器
108b 第2開閉器
110、410 判定部
112、420 駆動部
114a、114b、208a、208b 電送路
120 外部ECU
122、210 コネクタ
124 蓄電池
126、204 センサ
128 通信線
140 車両
200 充電器
300、302、304、306、308、310、312、500、502、504、506、508 ステップ
412 リセット部
422 第1駆動部
424 第2駆動部
604 第2センサ
606 故障判定部
D ドレイン
G ゲート
I 電流
I0 電流値
ID ドレイン電流
V0 片方向電圧
V1 電圧値
VD ドレイン電圧
VG ゲート電圧
Vg 駆動信号
S ソース
S1、S2、S5 制御信号
S3 リセット信号
S4 ダイアグ信号
Δt1、Δt2、Δt3 時間