(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】端末、分析方法、及び分析システム
(51)【国際特許分類】
H04L 43/02 20220101AFI20250311BHJP
H04L 43/0852 20220101ALI20250311BHJP
【FI】
H04L43/02
H04L43/0852
(21)【出願番号】P 2023514233
(86)(22)【出願日】2021-04-14
(86)【国際出願番号】 JP2021015377
(87)【国際公開番号】W WO2022219730
(87)【国際公開日】2022-10-20
【審査請求日】2023-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】沢辺 亜南
(72)【発明者】
【氏名】安田 真也
(72)【発明者】
【氏名】岩井 孝法
(72)【発明者】
【氏名】篠原 悠介
【審査官】長谷川 未貴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/070471(WO,A1)
【文献】特開2012-182747(JP,A)
【文献】特開2010-154201(JP,A)
【文献】特開2013-042435(JP,A)
【文献】特開2006-060579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/00 - 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信パスを経由して受信した複数のパケットの受信間隔を取得する取得部と、
前記受信間隔の分布に基づいて、前記通信パスに生じている遅延の遅延特性として、前記通信パスで行われた遅延処理の種別及び遅延量を特定する特定部と、
前記通信パスに生じている遅延の遅延特性に基づいて、前記通信パスで行われた遅延処理の処理内容を識別する識別部と、を含み、
前記特定部は、
前記受信間隔の分布を複数のクラスタに分割するクラスタリングを行い、
前記クラスタリングによる分割数に基づいて、前記通信パスで行われた遅延処理の種別を特定し、
前記クラスタリングによる分割後のクラスタ間の距離に基づいて、前記通信パスで行われた遅延処理の遅延量を特定する、
端末。
【請求項2】
前記特定部は、前記クラスタリングを複数回行うことで、前記通信パスで行われた複数の遅延処理のそれぞれの種別及び遅延量を特定する、
請求項1に記載の端末。
【請求項3】
複数回のクラスタリングによる分割後のクラスタ間の遷移確率を示す状態遷移確率を算出する算出部をさらに含み、
前記識別部は、前記通信パスで行われた複数の遅延処理のそれぞれの種別及び遅延量と、前記状態遷移確率と、に基づいて、前記通信パスで行われた複数の遅延処理のそれぞれの処理内容を識別する、
請求項2に記載の端末。
【請求項4】
前記端末は、
複数の前記通信パスのうちの少なくとも1つを経由してパケットを送信又は受信するアプリケーションを制御する制御部をさらに含み、
前記特定部は、複数の前記通信パスのそれぞれについて、前記通信パスに生じている遅延の遅延特性を特定し、
前記制御部は、複数の前記通信パスのそれぞれの遅延特性に基づいて、前記アプリケーションが使用する前記通信パスを選択する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の端末。
【請求項5】
分析システムにより実行される分析方法であって、
通信パスを経由して複数のパケットを受信するステップと、
前記受信した複数のパケットの受信間隔を取得する取得ステップと、
前記受信間隔の分布に基づいて、前記通信パスに生じている遅延の遅延特性として、前記通信パスで行われた遅延処理の種別及び遅延量を特定する特定ステップと、
前記通信パスに生じている遅延の遅延特性に基づいて、前記通信パスで行われた遅延処理の処理内容を識別する識別ステップと、を含み、
前記特定ステップでは、
前記受信間隔の分布を複数のクラスタに分割するクラスタリングを行い、
前記クラスタリングによる分割数に基づいて、前記通信パスで行われた遅延処理の種別を特定し、
前記クラスタリングによる分割後のクラスタ間の距離に基づいて、前記通信パスで行われた遅延処理の遅延量を特定する、
分析方法。
【請求項6】
前記特定ステップでは、前記クラスタリングを複数回行うことで、前記通信パスで行われた複数の遅延処理のそれぞれの種別及び遅延量を特定する、
請求項5に記載の分析方法。
【請求項7】
複数回のクラスタリングによる分割後のクラスタ間の遷移確率を示す状態遷移確率を算出する算出ステップをさらに含み、
前記識別ステップでは、前記通信パスで行われた複数の遅延処理のそれぞれの種別及び遅延量と、前記状態遷移確率と、に基づいて、前記通信パスで行われた複数の遅延処理のそれぞれの処理内容を識別する、
請求項6に記載の分析方法。
【請求項8】
複数の前記通信パスのうちの少なくとも1つを経由してパケットを送信又は受信するアプリケーションを制御する制御ステップをさらに含み、
前記特定ステップでは、複数の前記通信パスのそれぞれについて、前記通信パスに生じている遅延の遅延特性を特定し、
前記制御ステップでは、複数の前記通信パスのそれぞれの遅延特性に基づいて、前記アプリケーションが使用する前記通信パスを選択する、
請求項5から7のいずれか1項に記載の分析方法。
【請求項9】
通信パスを経由して複数のパケットを受信する受信手段と、
前記受信した複数のパケットの受信間隔を取得する取得手段と、
前記受信間隔の分布に基づいて、前記通信パスに生じている遅延の遅延特性として、前記通信パスで行われた遅延処理の種別及び遅延量を特定する特定手段と、
前記通信パスに生じている遅延の遅延特性に基づいて、前記通信パスで行われた遅延処理の処理内容を識別する識別手段と、を含み、
前記特定手段は、
前記受信間隔の分布を複数のクラスタに分割するクラスタリングを行い、
前記クラスタリングによる分割数に基づいて、前記通信パスで行われた遅延処理の種別を特定し、
前記クラスタリングによる分割後のクラスタ間の距離に基づいて、前記通信パスで行われた遅延処理の遅延量を特定する、
分析システム。
【請求項10】
前記特定手段は、前記クラスタリングを複数回行うことで、前記通信パスで行われた複数の遅延処理のそれぞれの種別及び遅延量を特定する、
請求項9に記載の分析システム。
【請求項11】
複数回のクラスタリングによる分割後のクラスタ間の遷移確率を示す状態遷移確率を算出する算出手段をさらに含み、
前記識別手段は、前記通信パスで行われた複数の遅延処理のそれぞれの種別及び遅延量と、前記状態遷移確率と、に基づいて、前記通信パスで行われた複数の遅延処理のそれぞれの処理内容を識別する、
請求項10に記載の分析システム。
【請求項12】
複数の前記通信パスのうちの少なくとも1つを経由してパケットを送信又は受信するアプリケーションを制御する制御手段をさらに含み、
前記特定手段は、複数の前記通信パスのそれぞれについて、前記通信パスに生じている遅延の遅延特性を特定し、
前記制御手段は、複数の前記通信パスのそれぞれの遅延特性に基づいて、前記アプリケーションが使用する前記通信パスを選択する、
請求項9から11のいずれか1項に記載の分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、端末、分析方法、及び分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、遅延にセンシティブなアプリケーションを利用するニーズが増加している。遅延にセンシティブなアプリケーションの例としては、AGV(Automated Guided Vehicle)、自動運転、ロボットの遠隔制御等に使用するアプリケーションが挙げられる。
【0003】
その一方で、無線通信技術の発展及び商用化により、ユーザが選択可能な通信パスが多様化している。ユーザが選択可能な通信パスの例としては、商用網(例えば、MNO(Mobile Network Operator)やMVNO(Mobile Virtual Network Operator)らが提供する、例えば、4G(Generation)/LTE(Long Term Evolution)や5G)、自営網(例えば、プライベートLTE(Long Term Evolution)やローカル5G)等の無線ネットワークが挙げられる。
【0004】
しかし、通信パスに応じて通信特性は様々である。そのため、キャリア及びユーザは、通信パスの通信特性を簡単に把握したいと考えられる。
【0005】
通信パスの通信特性の測定方法としては、ネットワーク処理に係る遅延時間を測定する方法が挙げられる(例えば、特許文献1,2)。
特許文献1に記載された方法によれば、システムにおける所定区間の開始位置と終了位置をパケットがそれぞれ通過した時刻を記録し、開始位置の時刻と終了位置の時刻とを比較することにより、所定区間における遅延時間を算出する。
【0006】
また、特許文献2に記載された方法によれば、ファイアウォール(FW)装置と第1の通信装置とのパケット往復で発生する複数の第1の遅延時間と、FW装置と第2の通信装置とのパケット往復で発生する複数の第2の遅延時間と、を取得する。そして、第1の遅延時間及び第2の遅延時間の各々をソートして、ソート後の順番が同じ第1の遅延時間と第2の遅延時間との差を求めることによって、FW装置に生じる遅延時間を算出する。そして、算出された遅延時間が閾値以上であれば、FW装置が過負荷状態であると判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-076780号公報
【文献】特開2021-016133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述した特許文献1,2に記載された方法はいずれも、結果として生じている遅延時間を測定するものであり、遅延の遅延特性を捉えたものではない。そのため、キャリア及びユーザには、通信パスに生じている遅延の遅延特性を確認したいという要求がある。
【0009】
そこで本開示の目的は、上述した課題を解決し、通信パスに生じている遅延の遅延特性を確認できる端末、分析方法、及び分析システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様による端末は、
通信パスを経由して受信した複数のパケットの受信間隔を取得する取得部と、
前記受信間隔の分布に基づいて、前記通信パスに生じている遅延の遅延特性を特定する特定部と、を含む。
【0011】
一態様による分析方法は、
通信パスを経由して複数のパケットを受信するステップと、
前記受信した複数のパケットの受信間隔を取得する取得ステップと、
前記受信間隔の分布に基づいて、前記通信パスに生じている遅延の遅延特性を特定する特定ステップと、を含む。
【0012】
一態様による分析システムは、
通信パスを経由して複数のパケットを受信する受信手段と、
前記受信した複数のパケットの受信間隔を取得する取得手段と、
前記受信間隔の分布に基づいて、前記通信パスに生じている遅延の遅延特性を特定する特定手段と、を含む。
【発明の効果】
【0013】
上述の態様によれば、通信パスに生じている遅延の遅延特性を確認できる端末、分析方法、及び分析システムを提供できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施の形態1に係る分析システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態1に係る受信間隔算出部の概略的な動作例を説明する図である。
【
図3】スケジューラが介在していない場合の遅延ジッターの分布の例を示す図である。
【
図4】スケジューラが介在している場合の遅延ジッターの分布の例を示す図である。
【
図5】送信端末と受信端末との間に、スケジューラConstSched、スケジューラProbSched1、及び、スケジューラProbSched2が介在している場合の遅延ジッターの分布の例を示す図である。
【
図6】
図5の場合の、送信端末におけるパケットの送信タイミング、スケジューラConstSchedにおけるパケットの送信タイミング、及びスケジューラProbSched1におけるパケットの送信タイミングの例を示す図である。
【
図7】実施の形態1に係るクラスタリング部の概略的な動作例を説明する図である。
【
図8】実施の形態1に係るクラスタリング部の概略的な動作のフロー例を説明するフロー図である。
【
図9】実施の形態1に係るクラスタリング部の動作の過程で得られる結果の例を示す図である。
【
図10】実施の形態1に係る処理内容識別部及び遅延処理DBの概略的な動作例を説明する図である。
【
図11】実施の形態2に係る分析システムの構成例を示すブロック図である。
【
図12】実施の形態2に係るクラスタリング部及び状態遷移確率算出部の概略的な動作例を説明する図である。
【
図13】実施の形態2に係る状態遷移確率算出部により算出される状態遷移確率の例を説明する図である。
【
図14】実施の形態2に係る状態遷移確率算出部により算出される状態遷移確率の例を説明する図である。
【
図15】実施の形態2に係る状態遷移確率算出部により算出される状態遷移確率の例を説明する図である。
【
図16】実施の形態2に係る処理内容識別部及び遅延処理DBの概略的な動作例を説明する図である。
【
図17】実施の形態3に係る分析システムの構成例を示すブロック図である。
【
図18】スケジューラが介在していない場合の遅延ジッターの確率の分布を混合ラプラス分布で表現した例を示す図である。
【
図19】スケジューラが介在している場合の遅延ジッターの確率の分布を混合ラプラス分布で表現した例を示す図である。
【
図20】実施の形態3に係る遅延処理混入判定部の概略的な動作のフロー例を説明するフロー図である。
【
図21】実施の形態4に係る分析システムの構成例を示すブロック図である。
【
図22】実施の形態4に係る表示部により表示される通信パスの遅延特性の表示例を示す図である。
【
図23】実施の形態4に係る表示部により表示される通信パスの遅延特性の表示例を示す図である。
【
図24】実施の形態4に係る表示部において、通信パスの遅延特性のレベル分けに使用するテーブルの例を示す図である。
【
図25】実施の形態4に係る表示部により表示される通信パスの遅延特性及び遅延処理の処理内容の表示例を示す図である。
【
図26】実施の形態5に係る分析システムの構成例を示すブロック図である。
【
図27】実施の形態6に係る分析システムの構成例を示すブロック図である。
【
図28】実施の形態6に係るアプリケーションDBに格納される情報の例を示す図である。
【
図29】実施の形態6に係るアプリケーション制御部の概略的な動作例を説明する図である。
【
図30】実施の形態6に係る表示部により表示される通信パス及びそれらの遅延特性の一覧の表示例を示す図である。
【
図31】実施の形態6に係る表示部により表示される通信パス及びそれらの遅延特性の一覧の表示例を示す図である。
【
図32】実施の形態6に係る分析システムの変形構成例を示すブロック図である。
【
図33】他の実施の形態に係る分析システムにおいて、端末の優先度に応じて通信パスを選択する例を説明する図である。
【
図34】他の実施の形態に係る分析システムの構成例を示す図である。
【
図35】
図34に示される分析システムにおける各通信パスの遅延特性及び遅延処理の処理内容の例を示す図である。
【
図36】
図34に示される分析システムにおける車両の種別の優先度の例を示す図である。
【
図37】他の実施の形態に係る分析システムの他の構成例を示す図である。
【
図38】実施の形態を概念的に示した分析システムの構成例を示すブロック図である。
【
図39】
図38に示される分析システムの概略的な動作のフロー例を説明するフロー図である。
【
図40】実施の形態に係る送信端末、受信端末、及び端末を実現するコンピュータのハードウェア構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。なお、以下の記載及び図面は、説明の明確化のため、適宜、省略及び簡略化がなされている。また、以下の各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。また、以下で示す具体的な数値などは、本開示の理解を容易とするための例示にすぎず、これに限定されるものではない。
【0016】
<実施の形態1>
まず、
図1を参照して、本実施の形態1に係る分析システム1の構成例について説明する。
図1に示されるように、本実施の形態1に係る分析システム1は、送信端末100及び受信端末200を備えている。
【0017】
送信端末100は、パケット送信部101を備えている。
パケット送信部101は、通信パスを経由して、一定間隔で固定サイズのパケットを受信端末200に送信する。通信パスは、MNO及びMVNO等が提供する4G/LTE、5G等の商用網、プライベートLTE、ローカル5G、Wi-Fi(Wireless Fidelity)等の自営網等の無線ネットワークである。
【0018】
受信端末200は、パケット受信部201、受信間隔算出部202、クラスタリング部203、処理内容識別部204、及び、遅延処理DB(Data Base)205を備えている。ただし、これには限定されず、受信間隔算出部202、クラスタリング部203、処理内容識別部204、及び、遅延処理DB205は、受信端末200とは別装置やクラウド上に設けられても良い。また、遅延処理DB205は、クラウド上に設けられ、複数の装置と共有されても良い。
パケット受信部201は、通信パスを経由して、送信端末100のパケット送信部101からパケットを受信する。
受信間隔算出部202は、
図2に示されるように、パケット受信部201により受信されたパケットの受信間隔を算出する。
【0019】
クラスタリング部203は、パケットの受信間隔の揺らぎ方(以下、適宜「遅延ジッター」と称す)のパターンを分析することによって、送信端末100と受信端末200との間に介在しているスケジューラの遅延処理の種別や遅延量を特定する。以下の説明では、遅延ジッターのパターンとして、遅延ジッターの分布を分析する例を記載する。
ここで、遅延ジッターは、送信端末100と受信端末200との間に、遅延処理を行う装置(以下、「スケジューラ」と称す)が介在しているか否かで異なる。
【0020】
図3に、スケジューラが介在していない場合の遅延ジッターの分布の例を示し、
図4に、スケジューラが介在している場合の遅延ジッターの分布の例を示す。
図3及び
図4において、横軸はパケット番号を示し、縦軸はそのパケット番号のパケットの遅延ジッター(受信間隔)を示している。ここでは、送信端末100のパケット送信部101は、パケットを送信する度にパケット番号を増加させる。そのため、パケット番号が最も大きいパケットが、最も直近に受信されたパケットとなる。
【0021】
図3及び
図4に示されるように、スケジューラが介在している場合の遅延ジッターの分布(
図4)は、スケジューラが介在していない場合の遅延ジッターの分布(
図3)と比較すると、階層性のある縞模様になるという特徴がある。
また、スケジューラが介在している場合の遅延ジッターの分布は、後述のように、スケジューラの遅延処理の種別や遅延量によっても、異なる特徴を示す。
【0022】
遅延処理の種別とは、スケジューラを介することによって生じる遅延の状態によって分類されるもので、例えば、固定的に遅延を生ずる処理(Constant scheduler、以降ConstSchedとも記載する)と、確率的に遅延を生じる処理(Probability scheduler、以降ProbSchedとも記載する)とがある。遅延量とは、スケジューラを介することによって生じる遅延の大きさである。より詳細には、遅延量とは、スケジューラを介することによって生じる、連続するパケットの到着時刻(又は受信時刻)の差分の大きさである。
【0023】
ここで、
図5及び
図6を参照して、送信端末100と受信端末200との間に介在しているスケジューラの遅延処理の種別及び遅延量に起因して、遅延ジッターの分布が異なることについて、説明する。
【0024】
なお、
図5及び
図6においては、パケット送信部101は、100Byteのパケットを33msの間隔で送信するものとする。
また、
図5及び
図6においては、送信端末100と受信端末200との間に、スケジューラConstSched(Constant scheduler)、スケジューラProbSched(Probability scheduler)1、及び、スケジューラProbSched2、がこの順に介在しているものとする。
【0025】
すなわち、
図5及び
図6においては、パケット送信部101から送信されたパケットは、スケジューラConstSched、スケジューラProbSched1、及び、スケジューラProbSched2を、この順に通過した後、パケット受信部201に受信されるものとする。
図5は、このようにしてパケット受信部201に受信されたパケットの揺らぎ方を表す遅延ジッターの分布の例を示している。
【0026】
ここで、スケジューラConstSchedは、パケットを20msの間隔で送信するスケジューラである。これに対して、スケジューラConstSchedの前段に設けられたパケット送信部101は、パケットを33msの間隔で送信する。そのため、スケジューラConstSchedには、後述のように、固定的な遅延処理が発生する。
【0027】
一方、スケジューラProbSched1は、8msの処理が、ある確率で発生するスケジューラである。また、スケジューラProbSched2は、1msの処理が、ある確率で発生するスケジューラである。そのため、スケジューラProbSched1,ProbSched2には、後述のように、確率的な遅延処理が発生する。
【0028】
図6は、パケット送信部101におけるパケットの送信タイミング、スケジューラConstSchedにおけるパケットの送信タイミング、及びスケジューラProbSched1におけるパケットの送信タイミングの例を、それぞれ示している。
【0029】
図6に示されるように、パケット送信部101は、33msの間隔でパケットを送信する。
そのため、パケット送信部101の後段に設けられたスケジューラConstSchedには、33msの間隔でパケットが入力されることになる。
【0030】
しかし、スケジューラConstSchedは、20msの間隔でパケットを送信するものである。そのため、スケジューラConstSchedには、パケットの入力がない状況が発生し得る。この状況では、スケジューラConstSchedは、パケットの送信を見送る。このことから、スケジューラConstSchedは、20ms又は40msの間隔でパケットを送信することになる。
【0031】
従って、パケットがスケジューラConstSchedを通過することによって、遅延ジッターの分布は、スケジューラConstSchedにパケットが入力される間隔を挟むような2つのクラスタに、二分割されることになる。
【0032】
詳細には、
図5に示されるように、遅延ジッターの分布は、パケットが入力される間隔33msを挟むように、20ms付近をクラスタ中心とするクラスタと、40ms付近をクラスタ中心とするクラスタと、に二分割されることになる。
【0033】
図6に戻ると、スケジューラConstSchedの後段に設けられたスケジューラProbSched1には、20ms又は40msの間隔でパケットが入力されることになる。
しかし、スケジューラProbSched1は、8msの処理が、ある確率で発生し、その結果、パケットの送信が8ms遅延する。そのため、例えば、あるパケットの前のパケットが遅延すると、パケットの間隔が8ms短くなり、あるパケットの次のパケットが遅延すると、パケットの間隔が8ms長くなる。このことから、スケジューラProbSched1は、12(=20-8)ms、20ms、28(=20+8)ms、32(=40-8)ms、40ms、又は48(=40+8)msの間隔でパケットを送信することになる。なお、
図6の例においては、スケジューラProbSched1は、12ms、40ms、28msの間隔でパケットを送信している。
【0034】
従って、パケットがスケジューラProbSched1を通過することによって、遅延ジッターの分布は、スケジューラProbSched1にパケットが入力される間隔付近をクラスタ中心とするクラスタと、その間隔の上下をクラスタ中心とするクラスタと、に三分割されることになる。
【0035】
詳細には、
図5に示されるように、20ms付近では、遅延ジッターの分布は、20ms付近をクラスタ中心とするクラスタと、12msをクラスタ中心とするクラスタと、28msをクラスタ中心とするクラスタと、に三分割されることになる。
【0036】
また、40ms付近では、遅延ジッターの分布は、40ms付近をクラスタ中心とするクラスタと、32msをクラスタ中心とするクラスタと、48msをクラスタ中心とするクラスタと、に三分割されることになる。
【0037】
なお、
図6には図示していないが、スケジューラProbSched1の後段に設けられたスケジューラProbSched2には、12ms、20ms、28ms、32ms、40ms、又は48msの間隔でパケットが入力されることになる。
【0038】
従って、パケットがスケジューラProbSched2を通過することによっても、遅延ジッターの分布は、スケジューラProbSched2にパケットが入力される間隔付近をクラスタ中心とするクラスタと、その間隔の上下をクラスタ中心とするクラスタと、に三分割されることになる。
【0039】
以上の通り、送信端末100と受信端末200との間に、固定的な遅延処理が発生するスケジューラConstSchedが介在していると、遅延ジッターの分布は二分割される。また、送信端末100と受信端末200との間に、確率的な遅延処理が発生するスケジューラProbSchedが介在していると、遅延ジッターの分布は三分割される。
【0040】
このことを利用して、クラスタリング部203は、遅延ジッターの分布に対して階層的なクラスタリングを行うことによって、送信端末100と受信端末200との間に介在しているスケジューラの遅延処理の種別や遅延量を推定する。
【0041】
以下、クラスタリング部203の動作について詳細に説明する。
まず、
図7を参照して、クラスタリング部203の概略的な動作例について説明する。
【0042】
ステップS101:
図7に示されるように、クラスタリング部203は、固定的な遅延処理が発生するスケジューラConstSchedが介在していると仮定したクラスタリングを行う。
具体的には、クラスタリング部203は、スケジューラ間隔δを変えながら、以下の数式1により、平均絶対誤差(MAE:Mean Absolute Error)を計算する。なお、例えば、予め探索するδを決めておき、予め決めておいた全てのδについてMAEを計算することが考えられる。
【数1】
【0043】
図7において、kは、kδと(k+1)δとで分割前のクラスタ中心c0を挟むための定数である。デフォルトでは、分割前のクラスタ中心c0は、パケット送信部101によるパケットの送信間隔とすることができる。
【0044】
また、数式1において、観測データ数(N)は、パケット総数を示し、i番目観測値は、i番目のパケットの遅延ジッター(受信間隔)を示し、最近傍クラスタ中心は、分割後のクラスタ中心候補うち、i番目のパケットから最近傍のクラスタ中心を示す。ここでは、分割後のクラスタ中心候補は、kδ及び(k+1)δである。
【0045】
クラスタリング部203は、MAEが最小値となるδを採用し、採用されたδを用いて、クラスタ中心候補c1,c2を決定する。ここでは、クラスタ中心候補c1,c2は、kδ及び(k+1)δとなる。
【0046】
ステップS102:
その一方で、クラスタリング部203は、確率的な遅延処理が発生するスケジューラProbSchedが介在していると仮定したクラスタリングを行う。
具体的には、クラスタリング部203は、遅延量δを変えながら、上述した数式1により、MAEを計算する。
数式1において、観測データ数(N)、i番目観測値、及び最近傍クラスタ中心は、スケジューラConstSchedに係るクラスタリングと同様である。ただし、ここでは、分割後のクラスタ中心候補は、分割前のクラスタ中心c及び分割前のクラスタ中心c±δである。
【0047】
クラスタリング部203は、MAEが最小値となるδを採用し、採用されたδを用いて、クラスタ中心候補c1,c2,c3を決定する。ここでは、クラスタ中心候補c1,c2,c3は、分割前のクラスタ中心c-δ、分割前のクラスタ中心c、及び、分割前のクラスタ中心c+δとなる。
【0048】
ステップS103:
次に、クラスタリング部203は、ステップS101のスケジューラConstSchedに係るクラスタリングで計算されたMAEの最小値と、ステップS102のスケジューラProbSchedに係るクラスタリングで計算されたMAEの最小値と、を比較し、スケジューラConstSched及びスケジューラProbSchedのうち、MAEが小さいスケジューラを採用する。
【0049】
ステップS104:
次に、クラスタリング部203は、ステップS103で採用されたスケジューラのクラスタ中心候補を、順次、分割前のクラスタ中心c0として新たに設定し、新たに設定された分割前のクラスタ中心について、上述したステップS101~S103を繰り返す。
【0050】
続いて、
図8を参照して、クラスタリング部203の概略的な動作のフロー例について説明する。
図8に示されるように、まず、クラスタリング部203は、分割前のクラスタ中心を設定する(ステップS201)。デフォルトでは、分割前のクラスタ中心は、パケット送信部101によるパケットの送信間隔とすることができる。
【0051】
次に、クラスタリング部203は、固定的な遅延処理が発生するスケジューラConstSchedが介在していると仮定したクラスタリングを行う。
具体的には、クラスタリング部203は、スケジューラ間隔δを設定し(ステップS202)、δを用いてクラスタ中心候補を計算し(ステップS203)、クラスタ中心候補を用いてMAEを計算する(ステップS204)。これらのステップS202~S204を、予め決めておいた全てのδについて行う。
【0052】
次に、クラスタリング部203は、MAEが最小値となるδを採用する(ステップS205)。また、クラスタリング部203は、採用されたδを用いて、クラスタ中心候補を決定する。
【0053】
その一方で、クラスタリング部203は、確率的な遅延処理が発生するスケジューラProbSchedが介在していると仮定したクラスタリングを行う。
具体的には、クラスタリング部203は、遅延量δを設定し(ステップS206)、δを用いてクラスタ中心候補を計算し(ステップS207)、クラスタ中心候補を用いてMAEを計算する(ステップS208)。これらのステップS206~S208を、予め決めておいた全てのδについて行う。
【0054】
次に、クラスタリング部203は、MAEが最小値となるδを採用する(ステップS209)。また、クラスタリング部203は、採用されたδを用いて、クラスタ中心候補を決定する。
【0055】
次に、クラスタリング部203は、スケジューラConstSchedに係るクラスタリングで計算されたMAEの最小値と、スケジューラProbSchedに係るクラスタリングで計算されたMAEの最小値と、を比較し(ステップS210)、スケジューラConstSched及びスケジューラProbSchedのうち、MAEが小さいスケジューラを採用する(ステップS211)。
【0056】
次に、クラスタリング部203は、終了条件が満たされるか否かを判定する(ステップS212)。終了条件は、ステップS211で採用されたスケジューラのクラスタ中心間の差分が、閾値未満であるか等の条件である。
【0057】
ステップS212において、終了条件が満たされない場合は(ステップS212のNo)、ステップS201に戻り、クラスタリング部203は、ステップS211で採用されたスケジューラのクラスタ中心候補を、順次、分割前のクラスタ中心として新たに設定し、新たに設定された分割前のクラスタ中心について、以降の処理を繰り返す。
一方、ステップS212において、終了条件が満たされている場合は(ステップS212のYes)、クラスタリング部203は、処理を終了する。
【0058】
続いて、
図9を参照して、クラスタリング部203の動作の過程で得られる結果の例を説明する。
図9に示されるように、まず、クラスタリング部203は、遅延ジッターの分布の観測データ2031に対して、階層的なクラスタリングを行い、クラスタリング結果2032を得る。
ここで、遅延ジッターの分布の観測データ2031の横軸及び縦軸は、
図3及び
図4と同様である。また、クラスタリング結果2032の横軸は、何層目のクラスタリングであるかを示している。また、クラスタリング結果2032の縦軸は、各層のクラスタリングで採用されたスケジューラによる分割後の各クラスタのクラスタ中心を示している。
【0059】
クラスタリング結果2032は、以下を示している。
・1層目のクラスタリングにおいては、遅延量20msのスケジューラConstSchedを採用し、遅延ジッターの分布を二分割している。
・2層目のクラスタリングにおいては、遅延量8.1msのスケジューラProbSched1を採用し、遅延ジッターの分布を三分割している。
・3層目のクラスタリングにおいては、遅延量0.9msのスケジューラProbSched2を採用し、遅延ジッターの分布を三分割している。
【0060】
次に、クラスタリング部203は、各クラスタ確率2033を得る。
各クラスタ確率2033の横軸は、3層目のクラスタリングで採用された遅延量0.9msのスケジューラProbSched2による分割後の各クラスタのクラスタ番号を示している。クラスタリング結果2032においては、最も下のクラスタのクラスタ番号が1であり、正方向に向かうほど、クラスタ番号が大きくなる。各クラスタ確率2033の縦軸は、そのクラスタ番号のクラスタに属するパケットのパケット数を、パケット総数で除算した確率を示している。
【0061】
その後、クラスタリング部203は、クラスタリング結果2032及び各クラスタ確率2033に基づいて、送信端末100と受信端末200との間に介在しているスケジューラの遅延処理の種別(ConstSched又はProbSched)及び遅延量を推定し、推定結果2034を得る。
【0062】
推定結果2034は、以下を示している。
・1層目のクラスタリングにおいては、遅延量20msのスケジューラConstSchedが介在していると推定している。
・2層目のクラスタリングにおいては、遅延量8.1msのスケジューラProbSched1が介在し、遅延量8.1msの処理が発生する確率は11.62%であると推定している。この確率は、20msの±8.1msのクラスタ及び40msの±8.1msのクラスタに属するパケットのパケット数を、パケット総数で除算することで得られる。
・3層目のクラスタリングにおいては、遅延量0.9msのスケジューラProbSched2が介在し、遅延量0.9msの処理が発生する確率は25.94%であると推定している。この確率の求め方は、2層目のクラスタリングに準じた方法を採れば良い。
【0063】
以上の通り、クラスタリング部203は、遅延ジッターの分布の観測データ2031から、送信端末100と受信端末200との間に介在しているスケジューラの遅延処理の種別(ConstSched又はProbSched)及び遅延量を推定できていることが分かる。
【0064】
遅延処理DB205は、
図10に示されるように、スケジューラの遅延処理の処理内容毎に、遅延処理の種別及び遅延量の情報が格納されたデータベースである。
処理内容識別部204は、
図10に示されるように、クラスタリング部203により推定された、スケジューラの遅延処理の種別及び遅延量を入力して、遅延処理の具体的な処理内容を遅延処理DB205に問い合わせる。
【0065】
すると、遅延処理DB205は、問い合わせに対する応答として、遅延処理の具体的な処理内容を、処理内容識別部204へ返す。
図10の例においては、処理内容識別部204は、遅延量8.1msのスケジューラProbSched1を入力した問合せを行い、遅延処理DB205は、遅延処理の処理内容の候補として、HARQ(Hybrid Automatic Repeat reQuest)を返している。
【0066】
なお、
図10には図示していないが、処理内容識別部204は、遅延量20msのスケジューラConstSchedを入力した問合せ及び遅延量0.9msのスケジューラProbSched2を入力した問合せも行い、それぞれのスケジューラの遅延処理の処理内容の候補も得ているものとする。また、処理内容については、
図10に記載されたHARQ、アクセス処理に限られない。
【0067】
上述したように本実施の形態1によれば、クラスタリング部203は、通信パスを経由して受信したパケットの受信間隔(遅延ジッター)の分布を分析することにより、送信端末100と受信端末200との間に介在しているスケジューラの遅延処理の種別(ConstSched又はProbSched)及び遅延量を推定する。そのため、通信パスに生じている遅延特性として、通信パスで行われている遅延処理の種別や遅延量といった遅延特性を確認できる。
【0068】
また、本実施の形態1によれば、処理内容識別部204は、クラスタリング部203により推定された、スケジューラの遅延処理の種別及び遅延量に基づいて、遅延処理DB205から、遅延処理の具体的な処理内容を得る。そのため、遅延処理の種別及び遅延量といった遅延特性だけでなく、遅延処理の具体的な処理内容も確認できる。
【0069】
なお、本実施の形態1においては、通信パスの数については言及していないが、送信端末100及び受信端末200は、複数の通信パスを経由して、パケットを送受信しても良い。この場合、クラスタリング部203は、複数の通信パスのそれぞれについて、遅延特性(遅延処理の種別及び遅延量)を推定し、また、処理内容識別部204は、複数の通信パスのそれぞれについて、遅延処理の処理内容を識別すれば良い。
【0070】
<実施の形態2>
本実施の形態2は、送信端末100と受信端末200との間に、複数の遅延処理が混入している場合(複数のスケジューラが介在している場合)に、状態遷移確率を利用して、複数の遅延処理の処理内容を特定するものである。
【0071】
まず、
図11を参照して、本実施の形態2に係る分析システム1Aの構成例について説明する。
図11に示されるように、本実施の形態2に係る分析システム1Aは、上述した実施の形態1の
図1の構成と比較して、受信端末200に、受信間隔DB206及び状態遷移確率算出部207が追加されている点が異なる。ただし、これには限定されず、受信間隔DB206及び状態遷移確率算出部207は、受信端末200とは別装置やクラウド上に設けられても良い。また、受信間隔DB206は、クラウド上に設けられ、複数の装置と共有されても良い。
【0072】
受信間隔DB206は、受信間隔算出部202により算出されたパケットの受信間隔の情報が格納されたデータベースである。クラスタリング部203は、受信間隔DB206から、パケットの受信間隔を取得する。ただし、クラスタリング部203は、パケットの受信間隔を、受信間隔算出部202から直接取得しても良い。この場合、受信間隔DB206を設ける必要は無い。
【0073】
状態遷移確率算出部207は、クラスタリング部203のクラスタリングによる分割後のクラスタ間の遷移確率を示す状態遷移確率を算出する。詳細には、状態遷移確率算出部207により算出される状態遷移確率は、パケット番号iのパケットが属するクラスタと、パケット番号i+1のパケットが属するクラスタと、の間の遷移確率を示すものとなる。
【0074】
例えば、
図12に示されるように、クラスタリング部203による1層目のクラスタリングにおいては、遅延ジッターの分布が、クラスタC1,C2に二分割される。ここでは、さらに、クラスタC1よりも下のクラスタC0と、クラスタC2よりも上のクラスタC3と、を考慮する。クラスタC0は、前のパケットと略同時に受信されたパケットが属するクラスタであり、クラスタC3は、受信間隔が外れ値(例えば、パケット送信部101による送信間隔の2倍を閾値とした場合に、その閾値よりも大きい値)であったパケットが属するクラスタである。
【0075】
この場合、状態遷移確率算出部207は、1層目のクラスタリングによる分割後のクラスタC0,C1,C2,C3間の遷移確率を示す状態遷移確率2071を算出する。状態遷移確率2071の例を
図13に示す。例えば、パケット番号iのパケットがクラスタC0に属する場合、パケット番号i+1のパケットがクラスタC0に属する確率は、0.11765となる。
【0076】
また、クラスタリング部203による2層目のクラスタリングにおいては、クラスタC1が、クラスタC1-0,C1-1,C1-2に三分割され、また、クラスタC2が、クラスタC2-0,C2-1,C2-2に三分割される。
【0077】
この場合、状態遷移確率算出部207は、2層目のクラスタリングによる分割後のクラスタC0,C1-0,C1-1,C1-2,C2-0,C2-1,C2-2,C3間の遷移確率を示す状態遷移確率2072を算出する。状態遷移確率2072の例を
図14に示す。
【0078】
また、クラスタリング部203による3層目のクラスタリングにおいては、クラスタC1-0が、クラスタC1-0-0,C1-0-1,C1-0-2に三分割される。同様に、クラスタC1-1,C1-2,C2-0,C2-1,C2-2も、三分割される。
【0079】
この場合、状態遷移確率算出部207は、3層目のクラスタリングによる分割後のクラスタC0,C1-0-0,C1-0-1,C1-0-2,C1-1-0,C1-1-1,C1-1-2,C1-2-0,C1-2-1,C1-2-2,C2-0-0,C2-0-1,C2-0-2,C2-1-0,C2-1-1,C2-1-2,C2-2-0,C2-2-1,C2-2-2,C3間の遷移確率を示す状態遷移確率2073を算出する。状態遷移確率2073の例を
図15に示す。なお、
図15においては、状態遷移確率の一部の値は省略されている。
【0080】
なお、上述した例においては、状態遷移確率算出部207は、1層分のクラスタリングが行われる度に、状態遷移確率を算出しているが、これには限定されない。後述のように、処理内容識別部204が使用するのは、3層目のクラスタリングが行われた後の状態遷移確率2073となる。そのため、状態遷移確率算出部207は、1層目及び2層目のクラスタリングが行われた後の状態遷移確率2071,2072は算出せず、3層目のクラスタリングが行われた後の状態遷移確率2073のみを算出しても良い。
【0081】
ここで、本実施の形態2に係る遅延処理DB205は、
図16に示されるように、学習器2051を備えている。学習器2051は、遅延処理の種別及び遅延量を入力すると、候補となる各処理内容の混入確率を出力するように、機械学習によって、学習されている。ただし、学習器2051は、遅延処理DB205に設けられることには限定されず、遅延処理DB205と学習器2051とは別々に設けられていても良い。
【0082】
そのため、処理内容識別部204は、クラスタリング部203により
図12に示すようなクラスタリングが行われた場合、各層のクラスタリングで推定された、遅延量20msのスケジューラConstSched、遅延量8msのスケジューラProbSched、及び遅延量1msのスケジューラProbSchedを入力するとともに、3層目のクラスタリングの後の状態遷移確率2073を入力して、遅延処理の具体的な処理内容を遅延処理DB205に問い合わせる。
【0083】
すると、遅延処理DB205は、問い合わせに対する応答として、遅延処理の具体的な処理内容を、処理内容識別部204へ返す。このとき、学習器2051からは、候補となる各処理内容の混入確率が出力される。遅延処理DB205は、入力された遅延処理の種別の数だけ、混入確率が高い順に処理内容を選択する。
図16の例においては、遅延処理の種別が3つ入力されているため、遅延処理の処理内容の候補として、3つの処理内容A+B+Cを返している。
【0084】
なお、
図16の例においては、処理内容識別部204は、3つの遅延処理の種別を一気に問い合わせているが、特定の2つの遅延処理の種別の処理内容を識別したい場合、特定の2つの遅延処理の種別の状態遷移確率を入力すれば良い。この場合、処理内容識別部204は、3つの遅延処理の種別を使った状態遷移確率から周辺確率を計算し、特定の2つの遅延処理の種別の状態遷移確率を得ても良い。例えば、
図12において、遅延量20msのスケジューラConstSched及び遅延量8msのスケジューラProbSchedの処理内容を識別したい場合、処理内容識別部204は、状態遷移確率2073から周辺確率を計算することにより、状態遷移確率2072が得られる。
【0085】
上述したように本実施の形態2によれば、状態遷移確率算出部207は、クラスタリング部203のクラスタリングによる分割後のクラスタ間の遷移確率を示す状態遷移確率を算出する。そのため、複数の遅延処理が混入している場合(複数のスケジューラが介在している)場合に、状態遷移確率を利用して、複数の遅延処理の処理内容をまとめて識別できる。
その他の効果は、上述した実施の形態1と同様である。
【0086】
<実施の形態3>
本実施の形態3は、送信端末100と受信端末200との間に、遅延処理が混入しているか否か(スケジューラが介在しているか否か)を事前に判定するものである。
【0087】
まず、
図17を参照して、本実施の形態3に係る分析システム1Bの構成例について説明する。
図17に示されるように、本実施の形態3に係る分析システム1Bは、上述した実施の形態1の
図1の構成と比較して、受信端末200に、受信間隔DB206及び遅延処理混入判定部208が追加されている点が異なる。ただし、これには限定されず、受信間隔DB206及び遅延処理混入判定部208は、受信端末200とは別装置やクラウド上に設けられても良い。また、受信間隔DB206は、クラウド上に設けられ、複数の装置と共有されても良い。
【0088】
遅延ジッターの分布から、遅延ジッターの確率の分布を得ることができる。遅延ジッターの確率の分布は、複数のラプラス分布を混合した混合ラプラス分布で表現することができる。
また、遅延ジッターの確率の分布は、送信端末100と受信端末200との間に、遅延処理が混入しているか否か(スケジューラが介在しているか否か)で異なる。
【0089】
図18に、スケジューラが介在していない場合の遅延ジッターの確率の分布の例を示し、
図19に、スケジューラが介在している場合の遅延ジッターの確率の分布の例を示す。なお、
図18及び
図19において、左側は、遅延ジッターの確率の分布の観測データを示し、右側は、その観測データを混合ラプラス分布で表現したデータを示している。また、
図18及び
図19の各データにおいて、横軸は遅延ジッター(受信間隔)を示し、縦軸はその遅延ジッターが発生する確率を表す確率密度関数(PDF:Probability Density Function)を示している。
【0090】
図18に示されるように、スケジューラが介在していない場合には、遅延ジッターの確率の分布は、3つのラプラス分布を混合した混合ラプラス分布、すなわち、混合数3の混合ラプラス分布で表現することができる。その一方、
図19に示されるように、スケジューラが介在している場合には、遅延ジッターの確率の分布を表現した混合ラプラス分布は、混合数が15となり、混合数が大きく増加する。
【0091】
そこで、遅延処理混入判定部208は、遅延ジッターの確率の分布を表現した混合ラプラス分布の混合数を閾値と比較し、混合数が閾値を超過する場合、送信端末100と受信端末200との間に、遅延処理が混入している(スケジューラが介在している)と判定する。なお、混合数の閾値は、例えば、3とすれば良い。
【0092】
遅延処理混入判定部208により遅延処理が混入していると判定された場合に、後段に設けられたクラスタリング部203及び処理内容識別部204は、上述した処理を行う。すなわち、クラスタリング部203は、遅延処理の種別及び遅延量を推定する処理を行い、処理内容識別部204は、遅延処理の処理内容を識別する処理を行う。
【0093】
受信間隔DB206は、上述した実施の形態2の
図11と同様のデータベースである。クラスタリング部203及び遅延処理混入判定部208は、受信間隔DB206から、パケットの受信間隔を取得する。ただし、クラスタリング部203及び遅延処理混入判定部208は、パケットの受信間隔を、受信間隔算出部202から直接取得しても良い。この場合、受信間隔DB206を設ける必要は無い。
【0094】
続いて、
図20を参照して、遅延処理混入判定部208の概略的な動作のフロー例を説明する。
図20に示されるように、まず、遅延処理混入判定部208は、パケットの受信間隔に基づいて、遅延ジッターの確率の分布を導出する(ステップS301)。
次に、遅延処理混入判定部208は、遅延ジッターの確率の分布を混合ラプラス分布で表現した場合のラプラス分布の混合数を推定する(ステップS302)。
次に、遅延処理混入判定部208は、混合数が閾値を超過しているか否かを判定する(ステップS303)。
【0095】
ステップS303において、混合数が閾値を超過していない場合(ステップS303のNo)、遅延処理混入判定部208は、遅延処理が混入していない(スケジューラが介在していない)と判定し、処理を終了する。
【0096】
一方、ステップS303において、混合数が閾値を超過している場合(ステップS303のYes)、遅延処理混入判定部208は、遅延処理が混入している(スケジューラが介在している)と判定し、クラスタリング部203及び処理内容識別部204に対し、上述した処理を行うよう指示する(ステップS304)。その後、処理を終了する。
【0097】
上述したように本実施の形態3によれば、遅延処理混入判定部208は、送信端末100と受信端末200との間に、遅延処理が混入しているか否か(スケジューラが介在しているか否か)を事前に判定する。そのため、遅延処理が混入していると判定された場合にのみ、クラスタリング部203及び処理内容識別部204は、上述した処理を行えば良い。その結果、クラスタリング部203及び処理内容識別部204の処理負荷を軽減できる。
その他の効果は、上述した実施の形態1と同様である。
【0098】
<実施の形態4>
例えば、キャリアは、通信品質の改善のために、通信品質の低下の原因が何かを絞りたいと考えられる。また、10ms周期で通信するアプリケーションと1s周期で通信するアプリケーションとでは、許容できる遅延ジッターは、10ms周期で通信するアプリケーションの方が厳しい。そのため、ユーザは、10ms周期で通信するアプリケーションを使用する場合、遅延ジッターの小さい通信パスを選択したいと考えられる。
そこで、本実施の形態4は、受信端末200側で、通信パスに生じている遅延の分析結果を表示するものである。
図21を参照して、本実施の形態4に係る分析システム1Cの構成例について説明する。
図21に示されるように、本実施の形態4に係る分析システム1Cは、上述した実施の形態1の
図1の構成と比較して、受信端末200に、表示部209が追加されている点が異なる。ただし、これには限定されず、表示部209は、受信端末200とは別装置に設けられても良い。
【0099】
表示部209は、通信パスに生じている遅延の分析結果(クラスタリング部203により推定された遅延特性(遅延処理の種別及び遅延量)及び処理内容識別部204により識別された遅延処理の処理内容の少なくとも1つ)を表示する。このとき、表示部209は、通信パスに生じている遅延要因として、処理内容を表示しても良い。
【0100】
例えば、表示部209は、通信パスの遅延特性を表示する場合、
図22又は
図23に示されるように、表示を行えば良い。
図22の例においては、表示部209は、通信パスの具体的な遅延特性を表示している。詳細には、固定的な遅延処理(ConstSched)の場合は、遅延量を表示し、確率的な遅延処理(ProbSched)の場合は、確率及び遅延量を表示している。
図22の例においては、通信パスAは、固定的に3msの遅延を生ずる処理と、確率7%で5msの遅延を生ずる処理とが行われることを示す。
【0101】
また、
図23の例においては、表示部209は、通信パスの遅延特性を、レベルに分けて表示している。詳細には、固定的な遅延処理の場合は、遅延量の長さのレベルを表示し、確率的な遅延処理の場合は、危険性のレベルを表示している。なお、通信パスの遅延特性をレベル分けする方法は、
図24に示されるようなテーブルを予め保持しておき、このテーブルに従ってレベル分けする方法が考えられる。
【0102】
また、表示部209は、通信パスの遅延特性及び遅延処理の処理内容の両方を表示する場合、
図25に示されるように、表示を行えば良い。なお、
図25の例においては、通信パスの遅延特性として、
図22のように、通信パスの具体的な遅延特性を表示しているが、
図23のように、通信パスの遅延特性を、レベルに分けて表示しても良い。
【0103】
また、上述したように、送信端末100及び受信端末200は、複数の通信パスを経由して、パケットを送受信することが可能である。この場合、クラスタリング部203は、複数の通信パスのそれぞれについて、遅延特性(遅延処理の種別及び遅延量)を推定し、また、処理内容識別部204は、複数の通信パスのそれぞれについて、遅延処理の処理内容を識別する。
【0104】
そのため、表示部209は、複数の通信パスのそれぞれについて、遅延特性や遅延処理の処理内容を表示することが可能である。
そこで、表示部209は、複数の通信パスの全ての遅延特性や遅延処理の処理内容の一覧を表示しても良い。
【0105】
又は、表示部209は
、複数の通信パスのうち、ユーザやキャリアにより選択された通信パスの遅延特性や遅延処理の処理内容のみを表示しても良い。
ここで、ユーザは、通信パスに遅延が発生している場合、概略的な遅延特性を知ることができれば良いと考えられる。そのため、受信端末200がユーザの端末であり、ユーザが通信パス名を入力した場合、表示部209は、
図22及び
図23に示されるように、その通信パスの遅延特性を表示することが考えられる。
【0106】
一方、キャリアは、通信パスに遅延が発生している場合、保守等のためには、概略的な遅延特性だけでなく、遅延処理の具体的な処理内容まで知りたいと考えられる。そのため、受信端末200がキャリアの端末であり、キャリアの保守者等が通信パス名を入力した場合、表示部209は、
図25に示されるように、その通信パスの遅延特性だけでなく、遅延処理の処理内容も表示することが考えられる。
【0107】
また、ユーザやキャリアがエリア名を入力した場合、表示部209は、そのエリアで使用可能な通信パスの一覧を表示すると共に、それらの遅延パスの遅延特性や遅延処理の処理内容を表示しても良い。
【0108】
上述したように本実施の形態4によれば、受信端末200側で、通信パスに生じている遅延の分析結果として、遅延特性及び遅延処理の処理内容の少なくとも1つを表示する。このとき、表示を行う通信パスは、ユーザやキャリアが選択することができる。
【0109】
そのため、例えば、受信端末200が、アプリケーションを利用するユーザの端末である場合、ユーザは、複数の通信パスのそれぞれの遅延特性を知ることができる。そのため、ユーザは、安定してアプリケーションのデータを得るために、適切な通信パスを選択できるようになる。
【0110】
また、受信端末200が、通信パスの保守等を行うキャリアの端末である場合、キャリアは、通信パスで行われている遅延処理の具体的な処理内容を知ることができる。そのため、キャリアは、遅延処理の処理内容に応じた対応を取ることができるようになる。
【0111】
<実施の形態5>
本実施の形態5は、送信端末100側で、通信パスに生じている遅延の分析結果を表示するものである。
図26を参照して、本実施の形態5に係る分析システム1Dの構成例について説明する。
図26に示されるように、本実施の形態5に係る分析システム1Dは、上述した実施の形態1の
図1の構成と比較して、送信端末100に、分析結果受信部102及び表示部103が追加されている点と、受信端末200に、分析結果送信部210が追加されている点と、が異なる。ただし、これには限定されず、分析結果受信部102及び表示部103は、送信端末100とは別装置やクラウド上に設けられても良い。また、分析結果送信部210は、受信端末200とは別装置やクラウド上に設けられても良い。
【0112】
分析結果送信部210は、通信パスを経由して、通信パスに生じている遅延の分析結果(クラスタリング部203により推定された遅延特性(遅延処理の種別及び遅延量)及び処理内容識別部204により識別された遅延処理の処理内容の少なくとも1つ)を送信する。
分析結果受信部102は、通信パスを経由して、受信端末200の分析結果送信部210から、通信パスに生じている遅延の分析結果を受信する。
【0113】
表示部103は、分析結果受信部102により受信された、通信パスに生じている遅延の分析結果を表示する。
例えば、表示部103は、通信パスの遅延特性の推定結果を表示する場合、
図22又は
図23に示されるように、表示を行えば良い。また、表示部103は、通信パスの遅延特性及び遅延処理の処理内容の両方を表示する場合、
図25に示されるように、表示を行えば良い。
また、表示部103が表示を行う通信パスは、ユーザやキャリアが選択しても良い。また、ユーザやキャリアがエリア名を入力した場合、表示部103は、そのエリアで使用可能な通信パスの一覧を表示すると共に、それらの遅延パスの遅延特性や遅延処理の処理内容を表示しても良い。
【0114】
上述したように本実施の形態5によれば、送信端末100側で、通信パスに生じている遅延の分析結果として、遅延特性及び遅延処理の処理内容の少なくとも1つを表示する。このとき、表示を行う通信パスは、ユーザやキャリアが選択することができる。
【0115】
そのため、例えば、送信端末100が、アプリケーションを提供するサーバである場合、サーバは、複数の通信パスのそれぞれの遅延特性を知ることができる。そのため、サーバは、安定してアプリケーションのデータを提供するために、適切な通信パスを選択できるようになる。
【0116】
また、送信端末100が、通信パスの保守等を行うキャリアの端末である場合、キャリアは、通信パスで行われている遅延処理の具体的な処理内容を知ることができる。そのため、キャリアは、遅延処理の処理内容に応じた対応を取ることができるようになる。
【0117】
<実施の形態6>
本実施の形態6は、受信端末200側で、通信パスに生じている遅延の分析結果を、アプリケーションの制御に利用するものである。
図27を参照して、本実施の形態6に係る分析システム1Eの構成例について説明する。
図27に示されるように、本実施の形態6に係る分析システム1Eは、上述した実施の形態4の図
21の構成と比較して、受信端末200に、アプリケーション制御部211及びアプリケーションDB212が追加されている点が異なる。ただし、これには限定されず、アプリケーション制御部211及びアプリケーションDB212は、受信端末200とは別装置やクラウド上に設けられても良い。また、アプリケーションDB212は、クラウド上に設けられ、複数の装置と共有されても良い。なお、
図27及び以降の図面においては、「アプリケーション」は、適宜「アプリ」と略して表示されている。
【0118】
アプリケーションDB212は、受信端末200で使用可能なアプリケーションのうち、複数の通信パスの少なくとも1つを経由して、パケットを送信又は受信するアプリケーションの情報が格納されたデータベースである。具体的には、アプリケーションDB212には、
図28に示されるように、アプリケーション毎に、通信周期及び許容される遅延特性の情報が格納される。
図28において、例えば、アプリケーションXについては、通信周期が10msであり、固定的な遅延処理(ConstSched)の場合は、3msの遅延量まで許容し、確率的な遅延処理(ProbSched)の場合は、10%の確率まで許容すると共に5msの遅延量まで許容することを示している。なお、
図28に示されるアプリケーションDB212は、アプリケーション毎に、許容される遅延特性の情報が格納されているが、これに代えて又は追加して、許容される遅延処理の処理内容の情報が格納されても良い。
【0119】
アプリケーション制御部211は、アプリケーションを制御する。例えば、アプリケーション制御部211は、複数の通信パスのそれぞれの遅延特性(遅延処理の種別及び遅延量)又は遅延処理の処理内容に基づいて、複数の通信パスの中から、アプリケーションが使用する通信パスを選択する。
【0120】
以下、アプリケーション制御部211の概略的な動作例について説明する。なお、以下で説明する動作例1~3においては、通信パスの遅延特性及び遅延処理の処理内容のうち、遅延特性を用いて、処理を行うものとして説明する。
【0121】
(1)動作例1
まず、
図29を参照して、アプリケーション制御部211の動作例1について説明する。なお、
図29は、
図27に示される受信端末200の構成要素のうち、クラスタリング部203、アプリケーション制御部211及びアプリケーションDB212のみを抜粋して図示している。
【0122】
図29に示されるように、まず、ユーザが、使用したいアプリケーションのアプリケーション名「アプリケーションX」を入力したとする(ステップS401)。「アプリケーションX」は、アプリケーション制御部211にて取得される(ステップS402)。
【0123】
次に、アプリケーション制御部211は、クラスタリング部203から、複数の通信パスのそれぞれの遅延特性(遅延処理の種別及び遅延量)を取得する(ステップS403)と共に(ステップS403)、アプリケーションDB212から、「アプリケーションX」に許容される遅延処理の条件を取得する(ステップS404)。
【0124】
次に、アプリケーション制御部211は、複数の通信パスの中から、「アプリケーションX」に許容される遅延特性の条件を満たす通信パスを1つ選択する。ここでは、通信パス名「通信パスa」の通信パスを選択したとする。そのため、アプリケーション制御部211は、「通信パスa」を表示部209に表示させる(ステップS405)。
【0125】
(2)動作例2
続いて、アプリケーション制御部211の動作例2について説明する。
本動作例2は、ステップS401~S404までの動作は、上述した動作例1と同様であるが、その後の動作が異なる。
【0126】
すなわち、本動作例2においては、アプリケーション制御部211は、複数の通信パスの中から、「アプリケーションX」に許容される遅延特性の条件を満たす通信パスを全て選択する。そして、アプリケーション制御部211は、
図30に示されるように、選択された全ての通信パス及びそれらの遅延特性の一覧を選択肢として表示部209に表示させ、ユーザに選択肢の中から通信パスを選択させる。なお、
図30は、通信パスの遅延特性として、具体的な遅延特性を表示している。
【0127】
(3)動作例3
本動作例3は、上述した動作例2と略同様であるが、表示部209に表示させる通信パスの遅延特性の表示態様が異なる。
すなわち、本動作例3においては、アプリケーション制御部211は、
図31に示されるように、通信パスの遅延特性を、レベルに分けて、表示部209に表示させる。
【0128】
上述したように本実施の形態6によれば、アプリケーション制御部211は、例えば、複数の通信パスのそれぞれの遅延特性(遅延処理の種別及び遅延量)又は遅延処理の処理内容に基づいて、複数の通信パスの中から、アプリケーションが使用する通信パスを選択する。そのため、ユーザは、アプリケーションを使用するに際して、そのアプリケーションに適切な通信パスを使用できる。
【0129】
なお、本実施の形態6においては、受信端末200側で、通信パスに生じている遅延の分析結果をアプリケーションの制御に利用するものとして説明したが、送信端末100側で、通信パスに生じている遅延の分析結果をアプリケーションの制御に利用しても良い。この場合、
図32に示されるように、分析システムを、上述した実施の形態5の
図26と同様の構成とし、さらに、アプリケーション制御部211及びアプリケーションDB212に相当するアプリケーション制御部104及びアプリケーションDB105を送信端末100側に追加すれば良い。
【0130】
<他の実施の形態>
端末(上述した受信端末200に対応する機能を備える端末)側で、適切な通信パスを適宜選択しても良い。例えば、端末は、午前中は通信パスxを使用していたが、通信パスxの特性が変化したので、午後は通信パスyに切り替えても良い。また、例えば、端末は、エリアAからエリアBに移動した場合、エリアAでは通信パスxを使用していたが、移動先のエリアBでは通信パスyに切り替えても良い。これにより、ユーザが意識しなくても、適切な通信パスを使用できるようになる。
【0131】
また、建物内の通信や、同一企業内の通信において、端末(送信端末100又は受信端末200)同士で、互いの優先度等を考慮した連携を行い、通信パスを選択しても良い。例えば、
図33の例では、端末Aは、端末Aだけを考えれば、遅延特性が最も良好な通信パスaに接続するのが良い。しかし、優先度が最も高い端末Bを考えると、通信パスaには端末Bを優先して接続する必要がある。そのため、端末Aは、通信パスbに接続する。なお、
図33の例では、端末同士が連携しているが、同一の端末内のアプリケーション同士で、同様の連携を取っても良い。
【0132】
また、上述した各実施の形態に係る分析システムは、交差点で車両を制御するために適用しても良い。この分析システムは、例えば、
図34に示されるように、MEC(Multi-access Edge Computing)サーバ301,302及びキャリア通信管理装置303を備える。MECサーバ302は、上述した受信端末200に対応する機能を備える。MECサーバ302は、交差点における各通信パスの遅延特性及び遅延処理の処理内容(
図35)を定期的に確認し(ステップS501)、MECサーバ301及びキャリア通信管理装置303に報告する(ステップS502)。キャリア通信管理装置303は、MECサーバ302からの報告に基づいて、交差点における各通信パスの通信品質の改善を図る(ステップS503)。その一方、MECサーバ301は、交差点に進入する車両の種別を特定し(ステップS504)、特定された車両の種別の優先度(
図36)に応じて、接続先の通信パスを選択する(ステップS505)。その後、MECサーバ301は、車両に対して接続先の通信パスを指示する(ステップS506)。
【0133】
なお、
図34に示される分析システムは、交差点に適用することには限定されず、例えばデッドスポットと呼ばれるような通信状況の悪い場所(ビル影・高架下等)、イベント会場、観光地、基地局の設置が制限される区域等に適用しても良い。また、
図34に示される分析システムは、制御の対象が車両には限定されず、設備や、イベント会場等のスタッフの端末等でも良い。また、
図34に示される分析システムは、通信パスの遅延特性等の報告先をキャリアとしたが、これには限定されず、報告先は、通信パスを管理する部署や、その通信パスが配備されたエリアを管理する部署(警察、自治体、市町村)等でも良い。
【0134】
また、上述した各実施の形態に係る分析システムは、AGVを制御するために適用しても良い。この分析システムは、例えば、
図37に示されるように、AGV306、エッジ307、及び集約装置308を備える。AGV306は、上述した受信端末200に対応する機能を備える。AGV306は、AGV306の位置に応じて、AGV306とエッジ307との間の通信パスを選択しても良い。また、AGV306は、AGV306とエッジ307との間の通信パスだけではなく、エッジ307と集約装置308との間の通信パスを選択しても良い。
【0135】
<実施の形態の概念>
続いて、
図38を参照して、上述した実施の形態1~6に係る分析システム1,1A~1Eを概念的に示した分析システム1Xの構成例について説明する。
【0136】
図38に示される分析システム1Xは、N(Nは2以上の整数)個の端末400-1~400-Nを備えている。また、端末400-1~400-Nのうち、少なくとも1つの端末(ここでは、端末400-Nとする)は、取得部401及び特定部402を備えている。
【0137】
ここで、端末400-1~400-Nの中には、通信パスを経由して複数のパケットを互いに送受信する送信端末及び受信端末が含まれている。端末400-Nは、受信端末であっても良いし、受信端末とは異なる端末(送信端末を含む)であっても良い。
【0138】
取得部401は、受信端末にて通信パスを経由して受信した複数のパケットの受信間隔を取得する。端末400-Nが受信端末であれば、取得部401は、上述した受信間隔算出部202に対応する。
特定部402は、受信間隔の分布に基づいて、通信パスに生じている遅延の遅延特性を特定する。特定部402は、上述したクラスタリング部203に対応する。
【0139】
続いて、
図39を参照して、
図38に示される分析システム1Xの概略的な動作のフロー例について説明する。
【0140】
図39に示されるように、まず、取得部401は、受信端末にて通信パスを経由して受信した複数のパケットの受信間隔を取得する(ステップS601)。
その後、特定部402は、受信間隔の分布に基づいて、通信パスに生じている遅延の遅延特性を特定する(ステップS602)。
【0141】
上述したように、
図38に示される分析システム1Xによれば、取得部401は、受信端末にて通信パスを経由して受信した複数のパケットの受信間隔を取得する。特定部402は、受信間隔の分布に基づいて、通信パスに生じている遅延の遅延特性を特定する。これにより、通信パスに生じている遅延特性を確認できる。
【0142】
なお、特定部402は、通信パスに生じている遅延の遅延特性として、通信パスで行われた遅延処理の種別及び遅延量を特定しても良い。また、端末400-Nは、通信パスに生じている遅延の遅延特性に基づいて、該遅延処理の処理内容を識別する識別部をさらに備えていても良い。この識別部は、上述した処理内容識別部204に対応する。この識別部は、通信パスで行われた遅延処理の種別及び遅延量に基づいて、その遅延処理の処理内容を識別しても良い。
【0143】
また、特定部402は、受信間隔の分布を複数のクラスタに分割するクラスタリングを行い、クラスタリングによる分割数に基づいて、通信パスで行われた遅延処理の種別を特定し、クラスタリングによる分割後のクラスタ間の距離に基づいて、通信パスで行われた遅延処理の遅延量を特定しても良い。
また、特定部402は、クラスタリングを複数回行うことで、通信パスで行われた複数の遅延処理のそれぞれの種別及び遅延量を特定しても良い。
【0144】
また、端末400-Nは、複数回のクラスタリングによる分割後のクラスタ間の遷移確率を示す状態遷移確率を算出する算出部をさらに備えていても良い。この算出部は、上述した状態遷移確率算出部207に対応する。また、上述した識別部は、通信パスで行われた複数の遅延処理のそれぞれの種別及び遅延量と、状態遷移確率と、に基づいて、通信パスで行われた複数の遅延処理のそれぞれの処理内容を識別しても良い。
【0145】
また、端末400-Nは、受信間隔の確率の分布を、複数のラプラス分布を混合した混合ラプラス分布で表現した場合における、ラプラス分布の混合数に基づいて、通信パスで遅延処理が行われたか否かを判定する判定部をさらに備えていても良い。この判定部は、上述した遅延処理混入判定部208に対応する。この判定部により通信パスで遅延処理が行われたと判定された場合に、特定部402は、通信パスで行われた遅延処理の種別及び遅延量を特定し、上述した識別部は、その遅延処理の処理内容を識別しても良い。
【0146】
また、端末400-Nは、複数の通信パスのうちの少なくとも1つを経由してパケットを送信又は受信するアプリケーションを制御する制御部をさらに備えていても良い。この制御部は、上述したアプリケーション制御部211に対応する。また、特定部402は、複数の通信パスのそれぞれについて、通信パスに生じている遅延の遅延特性を特定し、上述した制御部は、複数の通信パスのそれぞれの遅延特性に基づいて、アプリケーションが使用する前記通信パスを選択しても良い。又は、特定部402は、複数の通信パスのそれぞれについて、通信パスで行われた遅延処理の種別及び遅延量を特定し、上述した識別部は、複数の通信パスのそれぞれについて、通信パスで行われた遅延処理の処理内容を識別し、上述した制御部は、複数の通信パスのそれぞれで行われた遅延処理の種別及び遅延量に基づいて、又は、複数の通信パスのそれぞれで行われた遅延処理の処理内容に基づいて、アプリケーションが使用する通信パスを選択しても良い。
【0147】
<実施の形態に係る端末のハードウェア構成>
続いて、
図40を参照して、上述した実施の形態1~6に係る送信端末100及び受信端末200と、上述した実施の形態の概念に係る端末400-1~400-Nと、を実現するコンピュータ900のハードウェア構成例について説明する。
【0148】
図40に示されるように、コンピュータ900は、プロセッサ901、メモリ902、ストレージ903、入出力インタフェース(入出力I/F)904、及び通信インタフェース(通信I/F)905等を備える。プロセッサ901、メモリ902、ストレージ903、入出力インタフェース904、及び通信インタフェース905は、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路で接続されている。
【0149】
プロセッサ901は、例えばCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等の演算処理装置である。メモリ902は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等のメモリである。ストレージ903は、例えばHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、またはメモリカード等の記憶装置である。また、ストレージ903は、RAMやROM等のメモリであっても良い。
【0150】
ストレージ903は、送信端末100、受信端末200、及び端末400-1~400-Nが備える構成要素の機能を実現するプログラムを記憶している。プロセッサ901は、これら各プログラムを実行することで、送信端末100、受信端末200、及び端末400-1~400-Nが備える構成要素の機能をそれぞれ実現する。ここで、プロセッサ901は、上記各プログラムを実行する際、これらのプログラムをメモリ902上に読み出してから実行しても良いし、メモリ902上に読み出さずに実行しても良い。また、メモリ902やストレージ903は、送信端末100、受信端末200、及び端末400-1~400-Nが備える構成要素が保持する情報やデータを記憶する役割も果たす。
【0151】
また、上述したプログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、上述した実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されても良い。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、compact disc(CD)-ROM、digital versatile disk(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されても良い。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、又はその他の形式の伝搬信号を含む。
【0152】
入出力インタフェース904は、表示装置9041、入力装置9042、音出力装置9043等と接続される。表示装置9041は、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、モニターのような、プロセッサ901により処理された描画データに対応する画面を表示する装置である。入力装置9042は、オペレータの操作入力を受け付ける装置であり、例えば、キーボード、マウス、及びタッチセンサ等である。表示装置9041及び入力装置9042は一体化され、タッチパネルとして実現されていても良い。音出力装置9043は、スピーカのような、プロセッサ901により処理された音響データに対応する音を音響出力する装置である。
【0153】
通信インタフェース905は、外部の装置との間でデータを送受信する。例えば、通信インタフェース905は、有線通信路または無線通信路を介して外部装置と通信する。
【0154】
以上、実施の形態を参照して本開示を説明したが、本開示は上述した実施の形態に限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、本開示のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。例えば、上述した実施の形態は、一部又は全部を相互に組み合わせて用いても良い。
【0155】
また、上述した実施の形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
通信パスを経由して受信した複数のパケットの受信間隔を取得する取得部と、
前記受信間隔の分布に基づいて、前記通信パスに生じている遅延の遅延特性を特定する特定部と、を含む、
端末。
(付記2)
前記端末は、
前記通信パスに生じている遅延の遅延特性に基づいて、前記通信パスで行われた遅延処理の処理内容を識別する識別部をさらに含む、
付記1に記載の端末。
(付記3)
前記特定部は、前記通信パスに生じている遅延の遅延特性として、前記通信パスで行われた遅延処理の種別及び遅延量を特定する、
付記2に記載の端末。
(付記4)
前記特定部は、
前記受信間隔の分布を複数のクラスタに分割するクラスタリングを行い、
前記クラスタリングによる分割数に基づいて、前記通信パスで行われた遅延処理の種別を特定し、
前記クラスタリングによる分割後のクラスタ間の距離に基づいて、前記通信パスで行われた遅延処理の遅延量を特定する、
付記3に記載の端末。
(付記5)
前記特定部は、前記クラスタリングを複数回行うことで、前記通信パスで行われた複数の遅延処理のそれぞれの種別及び遅延量を特定する、
付記4に記載の端末。
(付記6)
複数回のクラスタリングによる分割後のクラスタ間の遷移確率を示す状態遷移確率を算出する算出部をさらに含み、
前記識別部は、前記通信パスで行われた複数の遅延処理のそれぞれの種別及び遅延量と、前記状態遷移確率と、に基づいて、前記通信パスで行われた複数の遅延処理のそれぞれの処理内容を識別する、
付記5に記載の端末。
(付記7)
前記受信間隔の確率の分布を、複数のラプラス分布を混合した混合ラプラス分布で表現した場合における、ラプラス分布の混合数に基づいて、前記通信パスで遅延処理が行われたか否かを判定する判定部をさらに含み、
前記判定部により前記通信パスで遅延処理が行われたと判定された場合に、前記特定部は、前記通信パスで行われた遅延処理の種別及び遅延量を推定し、前記識別部は、該遅延処理の処理内容を識別する、
付記3から6のいずれか1項に記載の端末。
(付記8)
前記端末は、
複数の前記通信パスのうちの少なくとも1つを経由してパケットを送信又は受信するアプリケーションを制御する制御部をさらに含み、
前記特定部は、複数の前記通信パスのそれぞれについて、前記通信パスに生じている遅延の遅延特性を特定し、
前記制御部は、複数の前記通信パスのそれぞれの遅延特性に基づいて、前記アプリケーションが使用する前記通信パスを選択する、
付記1から7のいずれか1項に記載の端末。
(付記9)
複数の前記通信パスのうちの少なくとも1つを経由してパケットを送信又は受信するアプリケーションを制御する制御部をさらに含み、
前記特定部は、複数の前記通信パスのそれぞれについて、前記通信パスで行われた遅延処理の種別及び遅延量を推定し、
前記識別部は、複数の前記通信パスのそれぞれについて、前記通信パスで行われた遅延処理の処理内容を識別し、
前記制御部は、複数の前記通信パスのそれぞれで行われた遅延処理の種別及び遅延量に基づいて、又は、複数の前記通信パスのそれぞれで行われた遅延処理の処理内容に基づいて、前記アプリケーションが使用する前記通信パスを選択する、
付記3から7のいずれか1項に記載の端末。
(付記10)
通信パスを経由して複数のパケットを受信するステップと、
前記受信した複数のパケットの受信間隔を取得する取得ステップと、
前記受信間隔の分布に基づいて、前記通信パスに生じている遅延の遅延特性を特定する特定ステップと、を含む、
分析方法。
(付記11)
前記通信パスに生じている遅延の遅延特性に基づいて、前記通信パスで行われた遅延処理の処理内容を識別する識別ステップをさらに含む、
付記10に記載の分析方法。
(付記12)
前記特定ステップでは、前記通信パスに生じている遅延の遅延特性として、前記通信パスで行われた遅延処理の種別及び遅延量を特定する、
付記11に記載の分析方法。
(付記13)
前記特定ステップでは、
前記受信間隔の分布を複数のクラスタに分割するクラスタリングを行い、
前記クラスタリングによる分割数に基づいて、前記通信パスで行われた遅延処理の種別を特定し、
前記クラスタリングによる分割後のクラスタ間の距離に基づいて、前記通信パスで行われた遅延処理の遅延量を特定する、
付記12に記載の分析方法。
(付記14)
前記特定ステップでは、前記クラスタリングを複数回行うことで、前記通信パスで行われた複数の遅延処理のそれぞれの種別及び遅延量を特定する、
付記13に記載の分析方法。
(付記15)
複数回のクラスタリングによる分割後のクラスタ間の遷移確率を示す状態遷移確率を算出する算出ステップをさらに含み、
前記識別ステップでは、前記通信パスで行われた複数の遅延処理のそれぞれの種別及び遅延量と、前記状態遷移確率と、に基づいて、前記通信パスで行われた複数の遅延処理のそれぞれの処理内容を識別する、
付記14に記載の分析方法。
(付記16)
前記受信間隔の確率の分布を、複数のラプラス分布を混合した混合ラプラス分布で表現した場合における、ラプラス分布の混合数に基づいて、前記通信パスで遅延処理が行われたか否かを判定する判定ステップをさらに含み、
前記判定ステップにより前記通信パスで遅延処理が行われたと判定された場合に、前記推定ステップでは、前記通信パスで行われた遅延処理の種別及び遅延量を推定し、前記識別ステップでは、該遅延処理の処理内容を識別する、
付記12から15のいずれか1項に記載の分析方法。
(付記17)
複数の前記通信パスのうちの少なくとも1つを経由してパケットを送信又は受信するアプリケーションを制御する制御ステップをさらに含み、
前記特定ステップでは、複数の前記通信パスのそれぞれについて、前記通信パスに生じている遅延の遅延特性を特定し、
前記制御ステップでは、複数の前記通信パスのそれぞれの遅延特性に基づいて、前記アプリケーションが使用する前記通信パスを選択する、
付記10から16のいずれか1項に記載の分析方法。
(付記18)
複数の前記通信パスのうちの少なくとも1つを経由してパケットを送信又は受信するアプリケーションを制御する制御ステップをさらに含み、
前記特定ステップでは、複数の前記通信パスのそれぞれについて、前記通信パスで行われた遅延処理の種別及び遅延量を推定し、
前記識別ステップでは、複数の前記通信パスのそれぞれについて、前記通信パスで行われた遅延処理の処理内容を識別し、
前記制御ステップでは、複数の前記通信パスのそれぞれで行われた遅延処理の種別及び遅延量に基づいて、又は、複数の前記通信パスのそれぞれで行われた遅延処理の処理内容に基づいて、前記アプリケーションが使用する前記通信パスを選択する、
付記12から16のいずれか1項に記載の分析方法。
(付記19)
通信パスを経由して複数のパケットを受信する受信手段と、
前記受信した複数のパケットの受信間隔を取得する取得手段と、
前記受信間隔の分布に基づいて、前記通信パスに生じている遅延の遅延特性を特定する特定手段と、を含む、
分析システム。
(付記20)
前記通信パスに生じている遅延の遅延特性に基づいて、前記通信パスで行われた遅延処理の処理内容を識別する識別手段をさらに含む、
付記19に記載の分析システム。
(付記21)
前記特定手段は、前記通信パスに生じている遅延の遅延特性として、前記通信パスで行われた遅延処理の種別及び遅延量を特定する、
付記20に記載の分析システム。
(付記22)
前記特定手段は、
前記受信間隔の分布を複数のクラスタに分割するクラスタリングを行い、
前記クラスタリングによる分割数に基づいて、前記通信パスで行われた遅延処理の種別を特定し、
前記クラスタリングによる分割後のクラスタ間の距離に基づいて、前記通信パスで行われた遅延処理の遅延量を特定する、
付記21に記載の分析システム。
(付記23)
前記特定手段は、前記クラスタリングを複数回行うことで、前記通信パスで行われた複数の遅延処理のそれぞれの種別及び遅延量を特定する、
付記22に記載の分析システム。
(付記24)
複数回のクラスタリングによる分割後のクラスタ間の遷移確率を示す状態遷移確率を算出する算出手段をさらに含み、
前記識別手段は、前記通信パスで行われた複数の遅延処理のそれぞれの種別及び遅延量と、前記状態遷移確率と、に基づいて、前記通信パスで行われた複数の遅延処理のそれぞれの処理内容を識別する、
付記23に記載の分析システム。
(付記25)
前記受信間隔の確率の分布を、複数のラプラス分布を混合した混合ラプラス分布で表現した場合における、ラプラス分布の混合数に基づいて、前記通信パスで遅延処理が行われたか否かを判定する判定手段をさらに含み、
前記判定手段により前記通信パスで遅延処理が行われたと判定された場合に、前記特定手段は、前記通信パスで行われた遅延処理の種別及び遅延量を推定し、前記識別手段は、該遅延処理の処理内容を識別する、
付記21から24のいずれか1項に記載の分析システム。
(付記26)
複数の前記通信パスのうちの少なくとも1つを経由してパケットを送信又は受信するアプリケーションを制御する制御手段をさらに含み、
前記特定手段は、複数の前記通信パスのそれぞれについて、前記通信パスに生じている遅延の遅延特性を特定し、
前記制御手段は、複数の前記通信パスのそれぞれの遅延特性に基づいて、前記アプリケーションが使用する前記通信パスを選択する、
付記19から25のいずれか1項に記載の分析システム。
(付記27)
複数の前記通信パスのうちの少なくとも1つを経由してパケットを送信又は受信するアプリケーションを制御する制御手段をさらに含み、
前記特定手段は、複数の前記通信パスのそれぞれについて、前記通信パスで行われた遅延処理の種別及び遅延量を推定し、
前記識別手段は、複数の前記通信パスのそれぞれについて、前記通信パスで行われた遅延処理の処理内容を識別し、
前記制御手段は、複数の前記通信パスのそれぞれで行われた遅延処理の種別及び遅延量に基づいて、又は、複数の前記通信パスのそれぞれで行われた遅延処理の処理内容に基づいて、前記アプリケーションが使用する前記通信パスを選択する、
付記21から25のいずれか1項に記載の分析システム。
【符号の説明】
【0156】
1,1A~1E,1X 分析システム
100 送信端末
101 パケット送信部
102 分析結果受信部
103 表示部
104 アプリケーション制御部
105 アプリケーションDB
200 受信端末
201 パケット受信部
202 受信間隔算出部
203 クラスタリング部
204 処理内容識別部
205 遅延処理DB
2051 学習器
206 受信間隔DB
207 状態遷移確率算出部
208 遅延処理混入判定部
209 表示部
210 分析結果送信部
211 アプリケーション制御部
212 アプリケーションDB
301,302 MECサーバ
303 キャリア通信管理装置
306 AGV
307 エッジ
308 集約装置
400-1~400-N 端末
401 取得部
402 特定部
900 コンピュータ
901 プロセッサ
902 メモリ
903 ストレージ
904 入出力インタフェース
9041 表示装置
9042 入力装置
9043 音出力装置
905 通信インタフェース