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特許7647905電子投票システム、電子投票方法、および電子投票プログラム
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  • 特許-電子投票システム、電子投票方法、および電子投票プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】電子投票システム、電子投票方法、および電子投票プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/26 20240101AFI20250311BHJP
【FI】
G06Q50/26
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023550906
(86)(22)【出願日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 JP2021036127
(87)【国際公開番号】W WO2023053339
(87)【国際公開日】2023-04-06
【審査請求日】2024-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】八木 真二郎
【審査官】牧 裕子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-67532(JP,A)
【文献】特開2004-192029(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0228344(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0105742(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有権者が電子投票を行う電子投票端末と送受信する電子投票システムであって、
有権者名簿に基づいて前記有権者に投票IDを発行する投票権管理装置と、
前記投票IDおよび投票内容に電子署名を付した電子投票情報を前記電子投票端末から受信し、前記投票IDおよび前記投票内容と前記電子署名を照合することで前記有権者の本人確認をし、前記電子投票情報から前記投票IDおよび前記電子署名を除去したものを投票データとして記録する投票処理装置と、
前記投票IDと前記投票内容と前記電子署名を秘密分散して記録する少なくとも3台の秘密分散サーバ装置と、
を備える電子投票システム。
【請求項2】
前記投票権管理装置は、前記投票処理装置における本人確認の結果に基づいて前記投票IDを無効化する、請求項1に記載の電子投票システム。
【請求項3】
前記投票権管理装置は、投票所における投票用紙を用いた投票結果に基づいて、前記投票用紙に紐づけられた前記投票IDを無効化する、請求項1または請求項2に記載の電子投票システム。
【請求項4】
前記秘密分散サーバ装置は、前記投票IDと前記投票内容と前記電子署名を秘密計算を用いて再集計して、前記投票データを用いた集計結果を検証する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電子投票システム。
【請求項5】
前記秘密分散サーバ装置は、前記投票IDと前記投票権管理装置が発行した前記投票IDとの整合性を秘密計算を用いて検証する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電子投票システム。
【請求項6】
前記秘密分散サーバ装置は、前記投票IDおよび前記投票内容と前記電子署名との整合性を秘密計算を用いて検証する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電子投票システム。
【請求項7】
前記投票処理装置は、前記投票IDに紐付けられた有権者の公開鍵が真正であることを第三者認証局に問い合わせて検証した後に本人確認を行う、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の電子投票システム。
【請求項8】
前記電子署名に用いられる秘密鍵と公開鍵の組は公的機関から発行されたものである、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電子投票システム。
【請求項9】
有権者が電子投票を行う電子投票端末と送受信する電子投票システムを用いた電子投票方法であって、
電子投票システムが有権者名簿に基づいて前記有権者に投票IDを発行し、
前記投票IDおよび投票内容に電子署名を付した電子投票情報を前記電子投票端末から受信し、
前記投票IDおよび前記投票内容と前記電子署名を照合することで前記有権者の本人確認をし、
前記電子投票情報から前記投票IDおよび前記電子署名を除去したものを投票データとして記録し、
前記投票IDと前記投票内容と前記電子署名を秘密分散して記録する、
電子投票方法。
【請求項10】
有権者が電子投票を行う電子投票端末と送受信する電子投票システムに実行させる電子投票プログラムであって、
有権者名簿に基づいて前記有権者に投票IDを発行し、
前記投票IDおよび投票内容に電子署名を付した電子投票情報を前記電子投票端末から受信し、
前記投票IDおよび前記投票内容と前記電子署名を照合することで前記有権者の本人確認をし、
前記電子投票情報から前記投票IDおよび前記電子署名を除去したものを投票データとして記録し、
前記投票IDと前記投票内容と前記電子署名を秘密分散して記録する、
ことを実行させる電子投票プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子投票システム、電子投票方法、および電子投票プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
選挙に代表されるような無記名投票では、紙の投票用紙を用いることが一般的である。その理由は、選挙における投票では、多重投票の防止および匿名性の担保が厳格に求められており、紙の投票用紙を用いることで多重投票の防止や匿名性の担保が実現されているからである。そして、選挙に代表されるような無記名投票を電子化する、いわゆる電子投票を実現するためには、紙の投票用紙を用いることで実現している多重投票の防止および匿名性の担保が電子投票にも求められることになる。
【0003】
例えば、一般的な選挙では、有権者に投票用紙を郵送するのではなく、投票所にて投票用紙と交換することができる郵便物を送付し、当該郵便物を受け取った有権者は、投票所にて投票用紙と交換して投票箱に投票用紙をいれるという仕組みを採用している。このような仕組みを採用すると、送付される郵便物には、住所および氏名が記載されているものの、投票用紙には記名せずに投票することができるので、匿名性が担保される。また、有権者名簿に記載されている人のみに投票用紙と交換することができる郵便物を送付し、投票用紙と交換時に当該郵便物を回収してしまえば多重投票を防止することができる。
【0004】
電子投票では、このような多重投票の防止および匿名性の担保を電子的な処理として実装する必要がある。例えば特許文献1には、このような多重投票の防止および匿名性の担保のために、投票トークンや電子署名などの仕組みが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-095884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
なお、上記先行技術文献の各開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。以下の分析は、本発明者らによってなされたものである。
【0007】
ところで、電子投票では、従来の投票用紙を用いた投票とは別の観点の信頼性が求められる。それは投票内容の検証であり、例えば不正な投票が行われた可能性がある場合、投票内容を事後的に検証する必要があるが、電子投票では電子データを扱うので紙とは異なる観点が生まれるのである。投票用紙を用いた投票では、投票箱の中の投票用紙を外部から書き換えるような不正をすることはできないが、電子投票では外部から投票データを書き換えられる可能性または不測のデータ破損の可能性を含めて信頼性を担保する必要がある。
【0008】
しかしながら、匿名化した投票データにおいて投票内容を検証することは困難性が伴う。例えば、選挙人名簿に含まれていない人物が投票したデータが含まれていることや、同一人物の投票が重複して含まれていることを、匿名化された後の投票データを用いて検証することは実質的に不可能である。
【0009】
本発明の目的は、上述した課題を鑑み、無記名投票において投票内容を検証することに寄与する電子投票システム、電子投票方法、および電子投票プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の視点では、有権者が電子投票を行う電子投票端末と送受信する電子投票システムであって、有権者名簿に基づいて前記有権者に投票IDを発行する投票権管理装置と、前記投票IDおよび投票内容に電子署名を付した電子投票情報を前記電子投票端末から受信し、前記投票IDおよび前記投票内容と前記電子署名を照合することで前記有権者の本人確認をし、前記電子投票情報から前記投票IDおよび前記電子署名を除去したものを投票データとして記録する投票処理装置と、前記投票IDと前記投票内容と前記電子署名を秘密分散して記録する少なくとも3台の秘密分散サーバ装置と、を備える電子投票システムが提供される。
【0011】
本発明の第2の視点は、有権者が電子投票を行う電子投票端末と送受信する電子投票システムを用いた電子投票方法であって、電子投票システムが有権者名簿に基づいて前記有権者に投票IDを発行し、前記投票IDおよび投票内容に電子署名を付した電子投票情報を前記電子投票端末から受信し、前記投票IDおよび前記投票内容と前記電子署名を照合することで前記有権者の本人確認をし、前記電子投票情報から前記投票IDおよび前記電子署名を除去したものを投票データとして記録し、前記投票IDと前記投票内容と前記電子署名を秘密分散して記録する、電子投票方法が提供される。
【0012】
本発明の第3の視点は、有権者が電子投票を行う電子投票端末と送受信する電子投票システムに実行させる電子投票プログラムであって、有権者名簿に基づいて前記有権者に投票IDを発行し、前記投票IDおよび投票内容に電子署名を付した電子投票情報を前記電子投票端末から受信し、前記投票IDおよび前記投票内容と前記電子署名を照合することで前記有権者の本人確認をし、前記電子投票情報から前記投票IDおよび前記電子署名を除去したものを投票データとして記録し、前記投票IDと前記投票内容と前記電子署名を秘密分散して記録する、ことを実行させる電子投票プログラムが提供される。なお、このプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記録することができる。記憶媒体は、半導体メモリ、ハードディスク、磁気記録媒体、光記録媒体等の非トランジェント(non-transient)なものとすることができる。本発明は、コンピュータプログラム製品として具現することも可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の各視点によれば、無記名投票において投票内容を検証することに寄与する電子投票システム、電子投票方法、および電子投票プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、第1実施形態に係る電子投票システムを示す概略図である。
図2図2は、第1実施形態に係る電子投票方法を示す概略システムフロー図である。
図3図3は、実施形態に用いられる装置のハードウェア構成例を示す図である。
図4図4は、第2実施形態に係る電子投票システムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。ただし、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付している。さらに、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0016】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る電子投票システムを示す概略図である。図1に示すように、電子投票システム100は、投票権管理装置110と投票処理装置120と秘密分散サーバ131,132,133とを備えている。電子投票システム100は、有権者Pが電子投票を行う電子投票端末20と送受信し、一般的な選挙を電子化することを想定しているが、無記名アンケートなど、多重投票の防止および匿名性の担保を必要とする投票一般に適用することができる。
【0017】
投票権管理装置110は、有権者名簿に基づいて有権者Pに投票IDを発行する。投票IDは、数字や文字列であることを想定するが、アンケートなどではプライバシーや安全性が許容すればニックネームや氏名とすることも可能である。また、投票IDは、数字や文字列などを直接発行するのではなく、バーコードや電子トークンなどの形態で発行することも可能である。
【0018】
投票処理装置120は、投票IDおよび投票内容に電子署名を付した電子投票情報を電子投票端末20から受信し、投票IDおよび投票内容と電子署名を照合することで有権者Pの本人確認をし、電子投票情報から投票IDおよび電子署名を除去したもの、すなわち投票内容を投票データとして記録する。投票内容とは、選挙であれば立候補者の氏名であり、アンケートであれば回答内容である。
【0019】
ここで電子署名とは、電子的文書の作成者を照明するために当該電子的文書に付す電子的記録である。電子署名を実現する仕組みとして代表的な公開鍵暗号方式では、電子的文書の作成者のみが知っている秘密鍵を用いてその電子的文書またはそのハッシュ値を暗号化することである。作成者のみが知っている秘密鍵で暗号化された暗号文は、公開鍵で復号したときに元の電子的文書またはそのハッシュ値が得られたときに正しい作成者によって作成された電子的文書であることを証明する。投票処理装置120は、この仕組み利用し、投票IDおよび投票内容と電子署名を照合することで有権者Pの本人確認を行う。
【0020】
投票処理装置120は、上記の方法を用いて有権者Pの本人確認を行った後、有権者Pに対応する投票IDが既に投票済みでないかを投票処理装置120に問い合わせて確認し、投票処理装置120は有権者Pに対応する投票IDが既に投票済みでない場合、有権者Pに対応する投票IDを投票済みに変更し、有権者Pに対応する投票IDを無効化する。このようにして、電子投票システム100は、多重投票を防止する。
【0021】
また、投票処理装置120は、上記の方法を用いて有権者Pの本人確認を行った後、電子投票情報から投票内容を投票データとして記録する。電子投票システム100は無記名投票に適用することを想定しているので、投票IDおよび電子署名は不要であり、投票処理装置120は、電子投票情報から有権者Pを特定し得る投票IDおよび電子署名を除去し投票データとして記録する。このようにして、電子投票システム100は、匿名性を担保する。
【0022】
一方、投票処理装置120は、投票IDと投票内容と電子署名を少なくとも3台の秘密分散サーバ131,132,133に秘密分散して記録する。秘密分散とは、秘密にすべき情報を各参加者に分散することで秘密を維持する技術のことである。各参加者には、秘密情報から生成されたシェアと呼ばれる情報がそれぞれ渡される。シェアは参加者の数だけ生成され、個々のシェアを見ても元の秘密情報を復元できず、かつ、十分な数のシェアを集めれば秘密情報を復元することができるように生成される。
【0023】
例えば、3台の秘密分散サーバ131,132,133に秘密分散する最も簡単な方法は、秘密にすべき情報aをa=a+a+a mod7のように分解し、秘密分散サーバ131に(a,a)を記録し、秘密分散サーバ132に(a,a)を記録し、秘密分散サーバ133に(a,a)を記録すると、各秘密分散サーバ131,132,133に記録されているデータだけでは、秘密にすべき情報aを復元することができない。一方、3台の秘密分散サーバ131,132,133のうち少なくとも2台のデータを組み合わせると秘密の情報aを復元できる。このような秘密分散の手法は各種知られており、これも電子投票システム100を適用する用途に応じて適宜選択して用いることができる。その場合、必要な秘密分散サーバの台数が3台ではなくより多くの台数の秘密分散サーバを必要とすることもある。
【0024】
また、上記のように秘密分散された秘密の情報は、秘密を維持したまま計算することもできる。一般に、秘密を維持したまま行う計算を秘密計算と呼ぶ。この秘密計算は理論的には任意の演算を行うことが可能である。なぜならば、AND演算とOR演算を秘密計算で実現することが可能だからである。しかしながら、すべての計算をAND演算とOR演算に分解するのは煩雑であり、求められる秘密計算に適した秘密分散の手法を適宜選択して用いることができる。
【0025】
これにより、秘密分散サーバ131,132,133は、投票IDと投票内容と電子署名を秘密計算を用いて再集計して、投票処理装置120が集計した投票データを用いた集計結果を検証することができる。また、秘密分散サーバ131,132,133は、投票IDと投票権管理装置が発行した投票IDとの整合性を秘密計算を用いて検証することができる。さらに、秘密分散サーバ131,132,133は、投票IDおよび投票内容と電子署名との整合性を秘密計算を用いて検証することもできる。このように、本実施形態の電子投票システム100では、多重投票を防止し匿名性を担保しながらも、投票データに記録されているデータが適切なものであることを検証することができる。
【0026】
なお、投票処理装置120と電子投票端末20との間の通信は、電子投票の用途が要求する安全性に応じて暗号化されることが好ましい。投票処理装置120と電子投票端末20との間の通信が傍受されると、有権者Pの投票内容が漏洩する虞がある。したがって、高度に安全性が要求される投票に適用する場合、暗号化を施すことが好ましい。また、投票処理装置120と電子投票端末20との間の通信全体を暗号化することも可能であるが、用途の安全性が許容すれば投票内容のみを暗号化して暗号化後の投票内容に電子署名を付すという方法も考えられる。
【0027】
図2は、第1実施形態に係る電子投票方法を示す概略システムフロー図である。図2に示される電子投票方法は、有権者が電子投票を行う電子投票端末20と送受信する電子投票システム100を用いた電子投票方法である。電子投票システム100は、投票権管理装置110と投票処理装置120と秘密分散サーバ130とを備えており、図2は、電子投票端末20と投票権管理装置110と投票処理装置120と秘密分散サーバ130との間で行われる処理の概要を示している。なお、秘密分散サーバ130は、図1における秘密分散サーバ131,132,133を代表して記載しており、実際の台数を限定するものではない。
【0028】
図2に示すように、ステップS1では、投票権管理装置110が有権者名簿に基づいて有権者Pに投票IDを発行し、投票権管理装置110が電子投票端末20へ投票IDを送信する。
【0029】
そして、ステップS2では、有権者Pは電子投票端末20を用いて、投票IDおよび投票内容に電子署名を付し、投票IDと投票内容と電子署名とを投票処理装置120へ送信する。
【0030】
ステップS3では、投票処理装置120が投票IDおよび投票内容と電子署名を照合することで有権者Pの本人確認を行う。
【0031】
その後、ステップS4では、投票処理装置120が有権者Pに対応する投票IDが既に投票済みでないかを投票処理装置120に問い合わせて確認する。投票処理装置120は有権者Pに対応する投票IDが既に投票済みでない場合、有権者Pに対応する投票IDを投票済みに変更し、有権者Pに対応する投票IDを無効化する。このようにして、電子投票システム100は、多重投票を防止する。
【0032】
一方、ステップS5では、投票処理装置120が電子投票情報から投票内容を投票データとして記録する。言い換えると、投票処理装置120は、電子投票情報から有権者Pを特定し得る投票IDおよび電子署名を除去し投票データとして記録し、匿名性を担保する。
【0033】
そして、ステップS6では、投票処理装置120が投票IDと投票内容と電子署名を秘密分散サーバ130に送信し、秘密分散サーバ130は投票IDと投票内容と電子署名を秘密分散して記録する。
【0034】
上記説明したように、本実施形態の電子投票方法では、多重投票を防止し匿名性を担保しながらも、投票データに記録されているデータが適切なものであることを検証することができる。
【0035】
[ハードウェア構成例]
図3は、実施形態に用いられる装置のハードウェア構成例を示す図である。すなわち、投票権管理装置110、投票処理装置120、秘密分散サーバ131,132,133は、図3に示すハードウェア構成を採用した情報処理装置(コンピュータ)にて、上記説明した電子投票方法をプログラムとして実行させることで、投票権管理装置110、投票処理装置120、秘密分散サーバ131,132,133における各機能を実現することを可能にする。ただし、図3に示すハードウェア構成例は、投票権管理装置110、投票処理装置120、秘密分散サーバ131,132,133の各機能を実現するハードウェア構成の一例であり、投票権管理装置110、投票処理装置120、秘密分散サーバ131,132,133のハードウェア構成を限定する趣旨ではない。投票権管理装置110、投票処理装置120、秘密分散サーバ131,132,133は、図3に示さないハードウェアを含むことができる。
【0036】
図3に示すように、投票権管理装置110、投票処理装置120、秘密分散サーバ131,132,133が採用し得るハードウェア構成10は、例えば内部バスにより相互に接続される、CPU(Central Processing Unit)11、主記憶装置12、補助記憶装置13、およびIF(Interface)部14を備える。
【0037】
CPU11は、投票権管理装置110、投票処理装置120、秘密分散サーバ131,132,133が実行する電子投票プログラムに含まれる各指令を実行する。主記憶装置12は、例えばRAM(Random Access Memory)であり、投票権管理装置110、投票処理装置120、秘密分散サーバ131,132,133が実行する準同型巡回演算プログラムなどの各種プログラムなどをCPU11が処理するために一時記憶する。
【0038】
補助記憶装置13は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)であり、投票権管理装置110、投票処理装置120、秘密分散サーバ131,132,133が実行する準同型巡回演算プログラムなどの各種プログラムなどを中長期的に記憶しておくことが可能である。電子投票プログラムなどの各種プログラムは、非一時的なコンピュータ可読記録媒体(non-transitory computer-readable storage medium)に記録されたプログラム製品として提供することができる。
【0039】
また、補助記憶装置13は、電子投票方法に用いられるデータを記憶することも可能である。すなわち、補助記憶装置13は、投票権管理装置110における有権者名簿を記憶することに用いることができ、投票処理装置120における投票データを記憶することに用いることができ、秘密分散サーバ131,132,133における秘密分散データに用いることができる。
【0040】
IF部14は、例えば投票権管理装置110、投票処理装置120、秘密分散サーバ131,132,133の間の入出力に関するインターフェイスを提供する。
【0041】
上記のようなハードウェア構成10を採用した情報処理装置は、先述した電子投票方法をプログラムとして実行することで、例えば投票権管理装置110、投票処理装置120、秘密分散サーバ131,132,133の各機能を実現する。
【0042】
[第2実施形態]
図4は、第2実施形態に係る電子投票システムを示す概略図である。第2実施形態に係る電子投票システム200は、実際の選挙における投票により近い実施形態である。
【0043】
図4に示すように、電子投票システム200は、投票権管理装置210と投票処理装置220と秘密分散サーバ群230とを備えている。電子投票システム200は、有権者Pが電子投票端末20を用いて行う電子投票を処理すると共に、有権者Pが投票所30にて投票用紙31を用いて投票した時でも多重投票を防止する。
【0044】
投票権管理装置210は、有権者名簿に基づいて有権者Pに投票IDを発行する。このとき、投票IDは、電子投票と投票用紙31を用いた投票で共通とする。例えば、投票用紙31における投票IDは、バーコードなどで印字することで実施することができる。
【0045】
投票処理装置220は、投票IDおよび投票内容に電子署名を付した電子投票情報を電子投票端末20から受信し、投票IDおよび投票内容と電子署名を照合することで有権者Pの本人確認をする。
【0046】
ここで電子署名には、公的機関から発行された秘密鍵と公開鍵の組を用いる。例えば、日本国ではマイナンバーカードという制度が存在し、このマイナンバーカードに組み込まれているICチップには、公的機関から発行された秘密鍵と公開鍵の組が格納されている。そして、この秘密鍵と公開鍵の組を電子署名は、スマートフォンなどの一般に普及している電子端末を介して利用可能となっている。選挙の電子投票制度においても、このような公的機関から発行された秘密鍵と公開鍵の組を用いる電子署名を用いることが好ましい。
【0047】
さらに、投票処理装置220は、電子投票端末20から受信した電子署名が正当なものであることを第三者認証局40に問い合わせて確認する。上記のような電子署名であっても、秘密鍵と公開鍵の組を偽造することによって、有権者Pに成りすましが行われる危険性がある。そこで、公開鍵とその公開鍵の持ち主の対応関係を保証するための公開鍵基盤(PKI;public key infrastructure)という仕組みが存在する。投票処理装置220は、この仕組みを利用して、投票IDに紐付けられた有権者の公開鍵が真正であることを第三者認証局40に問い合わせて検証した後に本人確認を行う。
【0048】
投票処理装置220は、上記の方法を用いて有権者Pの本人確認を行った後、有権者Pに対応する投票IDが既に投票済みでないかを投票処理装置220に問い合わせて確認し、投票処理装置220は有権者Pに対応する投票IDが既に投票済みでない場合、有権者Pに対応する投票IDを投票済みに変更し、有権者Pに対応する投票IDを無効化する。
【0049】
投票処理装置220が管理する投票IDは、電子投票と投票用紙31を用いた投票で共通しており、上記のように投票処理装置220にて電子投票の確認がされると、投票所30における投票用紙31を用いた投票を拒否するようにする。逆に、投票所30における投票用紙31を用いた投票が既に行われている場合、投票処理装置220は有権者Pに対応する投票IDが既に投票済みとなっており、投票処理装置220から投票処理装置220への問い合わせも投票済みとなるので、電子投票の受け付けも拒否することができる。このようにして、電子投票システム200は、電子投票と投票用紙31を用いた投票との間で多重投票を防止する。
【0050】
そして、投票処理装置220は、電子投票情報から投票IDおよび電子署名を除去したもの、すなわち投票内容を投票データとして記録する。投票処理装置220は、投票締め切り時間まで投票データ未公開とするが、各時刻での投票率などの情報をダッシュボードシステム50で公開することも可能である。また、投票締め切り時間を過ぎてしまえば、投票データには個人情報などが含まれていないので、オープンデータとして公共に公開してしまうことも可能である。
【0051】
投票処理装置220は、投票IDと投票内容と電子署名を秘密分散サーバ群230に秘密分散して記録する。秘密分散サーバ群230における秘密分散および秘密計算の仕組みについては第1実施形態と同様であるのでここでは説明を省略する。
【0052】
なお、引用した上記の特許文献等の各開示は、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の全開示の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態ないし実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ、ないし、選択(部分的削除を含む)が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。特に、本書に記載した数値範囲については、当該範囲内に含まれる任意の数値ないし小範囲が、別段の記載のない場合でも具体的に記載されているものと解釈されるべきである。さらに、上記引用した文献の各開示事項は、必要に応じ、本発明の趣旨に則り、本発明の開示の一部として、その一部又は全部を、本書の記載事項と組み合わせて用いることも、本願の開示事項に含まれるものと、みなされる。
【符号の説明】
【0053】
100,200 電子投票システム
110,210 投票権管理装置
120,220 投票処理装置
130,131,132,133 秘密分散サーバ
230 秘密分散サーバ群
10 ハードウェア構成
11 CPU
12 主記憶装置
13 補助記憶装置
14 IF部
20 電子投票端末
30 投票所
31 投票用紙
40 第三者認証局
50 ダッシュボードシステム
P 有権者
図1
図2
図3
図4