IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電気株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-無線通信装置、システム、及び方法 図1
  • 特許-無線通信装置、システム、及び方法 図2
  • 特許-無線通信装置、システム、及び方法 図3
  • 特許-無線通信装置、システム、及び方法 図4
  • 特許-無線通信装置、システム、及び方法 図5
  • 特許-無線通信装置、システム、及び方法 図6A
  • 特許-無線通信装置、システム、及び方法 図6B
  • 特許-無線通信装置、システム、及び方法 図7A
  • 特許-無線通信装置、システム、及び方法 図7B
  • 特許-無線通信装置、システム、及び方法 図8
  • 特許-無線通信装置、システム、及び方法 図9A
  • 特許-無線通信装置、システム、及び方法 図9B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】無線通信装置、システム、及び方法
(51)【国際特許分類】
   H04J 11/00 20060101AFI20250311BHJP
   H04L 27/01 20060101ALI20250311BHJP
   H04L 27/26 20060101ALI20250311BHJP
【FI】
H04J11/00 Z
H04L27/01
H04L27/26 114
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023551016
(86)(22)【出願日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 JP2022001862
(87)【国際公開番号】W WO2023053472
(87)【国際公開日】2023-04-06
【審査請求日】2024-03-06
(31)【優先権主張番号】P 2021160872
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】田和 憲明
【審査官】齊藤 晶
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0389268(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0111786(US,A1)
【文献】特開2007-134783(JP,A)
【文献】Yixiao Li et al.,Doppler Shift Estimation Based Channel Estimation for Orthogonal Time Frequency Space System,2021 IEEE 94th Vehicular Technology Conference (VTC2021-Fall),2021年09月27日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04J 11/00
H04L 27/01
H04L 27/26
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1リファレンス信号を用いてチャネル推定を行い、第2リファレンス信号を用いて位相補正を行い、前記チャネル推定と前記位相補正の結果を用いて、受信した直交時間周波数空間(OTFS:Orthogonal Time Frequency Space)信号を復調する受信手段を備え
第1のUE(User Equipment)用の前記第1リファレンス信号は、前記第1のUE用の所定の第1エレメント範囲内に配置され、
第2のUE用の前記第1リファレンス信号は、前記第2のUE用の所定の第2エレメント範囲内に配置され、
前記第1エレメント範囲と前記第2エレメント範囲は、所定の距離以上離れた位置に配置される、
無線通信装置。
【請求項2】
前記受信手段は、前記第1リファレンス信号が配置されたサブフレームと、前記第2リファレンス信号が配置されたサブフレームと、を含む前記OTFS信号を受信し復調する、
請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記第1リファレンス信号は、チャネルインパルスレスポンス(CIR:Channel Impulse Response)を求めるためのチャネルインパルスレスポンスリファレンス信号(CIR-RS:Channel Impulse Response-Reference Signal)であり、
前記第2リファレンス信号は、前記位相補正を行うための位相補正リファレンス信号(PCRS:Phase Compensation Reference Signal)である、
請求項1または2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記受信手段は、
周波数時間(FT:Frequency Time)空間において、前記第1リファレンス信号に基づいたチャネル補正を行う第1等化器と、
遅延ドップラー(DD:Delay Doppler)空間において、前記第2リファレンス信号に基づいた前記位相補正の処理を行う第2等化器と、を有する、
請求項3に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記第1等化器が前記チャネル補正を行った後に、前記第2等化器が前記位相補正の処理を行う、
請求項4に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記受信手段は、前記第1リファレンス信号を用いて前記チャネル推定を行って、前記CIRを求めるチャネル推定手段をさらに備え、
前記第1等化器は、前記CIRに基づいて受信したデータに対して前記チャネル補正を行う、
請求項4または5に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記チャネル推定手段は、前記FT空間において、受信した前記OTFS信号から求めた前記第1リファレンス信号を伝搬チャネルの影響を受けていない前記第1リファレンス信号で除算したときの商を前記CIRとして計算する、
請求項6に記載の無線通信装置。
【請求項8】
ユーザ装置と基地局とを備え、
前記ユーザ装置は、
第1リファレンス信号と直交時間周波数空間(OTFS:Orthogonal Time Frequency Space)信号と第2リファレンス信号とを送信する送信手段を有し、
前記基地局は、
前記第1リファレンス信号を用いてチャネル推定を行い、前記第2リファレンス信号を用いて位相補正を行い、前記チャネル推定と前記位相補正の結果を用いて、受信した前記OTFS信号を復調する受信手段を有し、
第1のUE(User Equipment)用の前記第1リファレンス信号は、前記第1のUE用の所定の第1エレメント範囲内に配置され、
第2のUE用の前記第1リファレンス信号は、前記第2のUE用の所定の第2エレメント範囲内に配置され、
前記第1エレメント範囲と前記第2エレメント範囲は、所定の距離以上離れた位置に配置される、
システム。
【請求項9】
第1リファレンス信号を用いてチャネル推定を行い、第2リファレンス信号を用いて位相補正を行い、前記チャネル推定と前記位相補正の結果を用いて、受信した直交時間周波数空間(OTFS:Orthogonal Time Frequency Space)信号を復調すること、
を備え
第1のUE(User Equipment)用の前記第1リファレンス信号は、前記第1のUE用の所定の第1エレメント範囲内に配置され、
第2のUE用の前記第1リファレンス信号は、前記第2のUE用の所定の第2エレメント範囲内に配置され、
前記第1エレメント範囲と前記第2エレメント範囲は、所定の距離以上離れた位置に配置される、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線通信装置、システム、方法、及びプログラムに関し、特に、高いデータレートの直交時間周波数空間(OTFS:Orthogonal Time Frequency Space)信号を保ちつつ、少ない計算量で精度よくOTFS信号を復調することが可能な無線通信装置、システム、方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、基地局(BS:Base Station)と、高速移動するユーザ装置(UE:User Equipment)と、の間で大容量の通信を行うことが検討されている。しかしながら、第4世代(4G:4th Generation)と第5世代(5G:5th Generation)で利用されている直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調方式には、ドップラー効果などによる周波数誤差に対する耐性が低いという課題がある。近年では、ドップラー効果の影響が大きいミリ波などの高周波帯域の周波数の利用が検討されており、ドップラー効果に対する耐性を高くすることが課題になっていた。
【0003】
OFDMでドップラー効果を補正するためにはリファレンス信号の数を増やし、頻繁に伝搬チャネルの推定(チャネル推定)の結果を更新し補正する必要がある。しかしながら、リファレンス信号を増やすと、データに使用できるエレメント数が減少し、データレートが低下してしまう。また、 チャネル推定を頻繁に更新するため、データを処理するための計算量が増大するという課題があった。
【0004】
そこで、非特許文献1において、直交時間周波数空間(OTFS:Orthogonal Time Frequency Space)変調方式が提案された。OTFS変調は、OFDM変調のように周波数時間(FT:Frequency Time)空間にデータを配置するのではなく、遅延ドップラー(DD:Delay Doppler)空間にデータを配置する。
【0005】
OTFS変調は、データをDD空間に配置して変調するため、ドップラー効果などによる周波数誤差に高い耐性を有する。そのため、高速移動するUEに対して高速通信(高いデータレート)が可能になると期待されている。
【0006】
OTFS変調では、UEと基地局間の伝搬チャネルの影響を、リファレンス信号(RS:Reference Signal)を用いてチャネルインパルスレスポンス(CIR:Channel Impulse Response)を求めることで補正する。CIRを求めるためには、一般的に広いDD空間を必要とする。このため、頻繁にRSを配置すると、データレートが低下する。
【0007】
そこで、例えば、全てのサブフレームにRSを配置するのではなく、間欠的にRSを配置することが考えられる。しかしながら、異なるサブフレームで求めたCIRは、ドップラー効果などによる周波数誤差の影響で精度が劣化する。CIRの精度劣化は、復調精度の低下となり、その結果、データレート(スループット)が低下する。
【0008】
また、OTFS変調の信号ではDD空間にデータが配置される。DD空間でのデータの伝搬チャネルの影響を補正するためには、CIRから求めた補正係数と受信したデータとで畳み込み演算を行う必要がある。しかしながら、畳み込み演算は計算量が多く、さらに補正係数を求めるためにも多くの計算量が必要である(非特許文献2参照)。
【0009】
そこで、高いデータレートのOTFS信号を保ちつつ、少ない計算量で精度よくOTFS信号を復調する方法が必要であった。
【0010】
特許文献1の0237段落には、「例えば、ターゲットアンテナポート(target antenna port)が特定NZP CSI-RSである場合、当該NZP CSI-RS antenna portsはQCL-Type Aの観点では特定のTRSと、QCL-Type Dの観点では特定のSSBとQCLされたと指示/設定されることができる。このような指示/設定を受けた端末は、QCL-TypeA TRSにおいて測定されたDoppler、delay値を利用して当該NZP CSI-RSを受信し、QCL-TypeD SSB受信に使用された受信ビームを当該NZP CSI-RS受信に適用することができる。」と記載されている。特許文献1には、高いデータレートのOTFS信号を保ちつつ、少ない計算量で精度よくOTFS信号を復調することは記載されていない。
【0011】
特許文献2の0076段落には「受信機は、チャネル畳み込みOTFSパイロットバーストとして、直接および複製OTFSパイロットバーストの組み合わせを受信する。受信機へのOTFSパイロットバーストの着信の順序は、1)直接OTFSパイロットバースト、次いで、周波数偏移複製OTFSパイロットバーストである。」と記載されている。また、特許文献2の0199段落には「各データ記号が、無線多次元データチャネルの時間遅延およびドップラー偏移チャネル応答パラメータに従って選定される、複数の異なる時間ならびに異なる周波数にわたって、複数の区別可能な(例えば、通常は相互直交)波形を横断して、無損失かつ可逆様式で分配されることである。」と記載されている。特許文献2には、高いデータレートのOTFS信号を保ちつつ、少ない計算量で精度よくOTFS信号を復調することは記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特表2021-502783号公報
【文献】特開2020-205641号公報
【非特許文献】
【0013】
【文献】R. Hadani et al., "Orthogonal Time Frequency Space Modulation," 2017 IEEE Wireless Communications and Networking Conference (WCNC), 2017, pp. 1-6.
【文献】G. D. Surabhi and A. Chockalingam, "Low-Complexity Linear Equalization for OTFS Modulation," in IEEE Communications Letters, vol. 24, no. 2, pp. 330-334, Feb. 2020.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記のとおり、高いデータレートのOTFS信号を保ちつつ、少ない計算量で精度よくOTFS信号を復調する方法が必要であるという課題があった。
【0015】
本開示の目的は、上述した課題を解決する無線通信装置、システム、方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本開示に係る無線通信装置は、
第1リファレンス信号を用いてチャネル推定を行い、第2リファレンス信号を用いて主に位相補正を行い、前記チャネル推定と前記位相補正の結果を用いて、受信した直交時間周波数空間(OTFS:Orthogonal Time Frequency Space)信号を復調する受信部を備える。
【0017】
本開示に係るシステムは、
ユーザ装置と基地局とを備え、
前記ユーザ装置は、
第1リファレンス信号と直交時間周波数空間(OTFS:Orthogonal Time Frequency Space)信号と第2リファレンス信号とを送信する送信部を有し、
前記基地局は、
前記第1リファレンス信号を用いてチャネル推定を行い、前記第2リファレンス信号を用いて位相補正を行い、前記チャネル推定と前記位相補正の結果を用いて、受信した前記OTFS信号を復調する受信部を有する。
【0018】
本開示に係る方法は、
第1リファレンス信号を用いてチャネル推定を行い、第2リファレンス信号を用いて位相補正を行い、前記チャネル推定と前記位相補正の結果を用いて、受信した直交時間周波数空間(OTFS:Orthogonal Time Frequency Space)信号を復調すること、
を備える。
【0019】
本開示に係るプログラムは、
第1リファレンス信号を用いてチャネル推定を行い、第2リファレンス信号を用いて位相補正を行い、前記チャネル推定と前記位相補正の結果を用いて、受信した直交時間周波数空間(OTFS:Orthogonal Time Frequency Space)信号を復調すること、
をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、高いデータレートの直交時間周波数空間(OTFS:Orthogonal Time Frequency Space)信号を保ちつつ、少ない計算量で精度よくOTFS信号を復調することが可能な無線通信装置、システム、方法、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施の形態1に係る無線通信装置を例示するブロック図である。
図2】実施の形態1に係るシステムを例示するブロック図である。
図3】実施の形態1に係るUEと基地局の構成を例示するブロック図である。
図4】実施の形態1に係るチャネル推定部を例示するブロック図である。
図5】実施の形態1に係るCIR-RSとPCRSとデータの配置を例示する模式図である。
図6A】実施の形態1に係る基地局による補正の効果を例示するコンスタレーション図である。
図6B】実施の形態1に係る基地局による補正の効果を例示するコンスタレーション図である。
図7A】実施の形態1に係る基地局によるDelay方向の補正の効果を例示するコンスタレーション図である。
図7B】実施の形態1に係る基地局によるDelay方向の補正の効果を例示するコンスタレーション図である。
図8】実施の形態2に係るОTFS後処理部を例示するブロック図である。
図9A】2ユーザが多重接続した時の信号マッピングを例示する模式図である。
図9B】2ユーザが多重接続した時の信号マッピングを例示する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。各図面において、同一又は対応する要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明を省略する。
【0023】
[実施の形態1]
<概要>
図1は、実施の形態1に係る無線通信装置を例示するブロック図である。
図1は、実施の形態1に係る無線通信装置の最小構成を示す。
図2は、実施の形態1に係るシステムを例示するブロック図である。
【0024】
図1に示すように、実施の形態1に係る無線通信装置11は、受信部111を備える。受信部111は、第1リファレンス信号を用いてチャネル推定を行い、第2リファレンス信号を用いて位相補正を行い、チャネル推定と位相補正の結果を用いて、受信した直交時間周波数空間(OTFS:Orthogonal Time Frequency Space)信号を復調する。なお、無線通信装置を無線基地局または基地局と称することもある。
【0025】
受信部111は、例えば、第1リファレンス信号が配置されたサブフレームと、第2リファレンス信号が配置されたサブフレームと、を含むOTFS信号を受信し復調する。
【0026】
図2に示すように、実施の形態1に係るシステム10は、基地局(BS:Base Station)11とユーザ装置(UE:User Equipment)12とを備える。UE12は、第1リファレンス信号とOTFS信号と第2リファレンス信号とを送信する送信部(図示しない)を有する。基地局11は、第1リファレンス信号とデータと第2リファレンス信号とを受信する受信部(図示しない)を有する。
【0027】
UE12は、例えば車両などに搭載され、高速で移動している。実施の形態1では、UE12から基地局11に送信するアップリンクについて説明するが、これには限定されない。基地局11からUE12に送信するダウンリンクについても、実施の形態1はアップリンクと同様にして適用が可能である。
【0028】
UE12の送信部から基地局11の受信部に、OTFS変調された高周波信号が送信される。高周波信号は、伝搬による減衰や建物などの障害物による反射や回折や透過を経て、基地局11に到達する。これらの減衰や反射などの影響を総じて伝搬チャネルと称する。また、UE12が高速で移動した場合、UE12から送信された高周波信号の周波数は、ドップラー効果により、基地局11でわずかにずれて受信される。
【0029】
基地局11の受信部は、OTFS変調された高周波信号を受信し、ダウンコンバートしたOTFS信号の第1リファレンス信号を用いて伝搬チャネルのチャネル推定を行い、第2リファレンス信号を用いて位相補正を行い、チャネル推定と位相補正の結果を用いて、受信したOTFS信号を復調する。基地局11の受信部は、後述する技術を用いて、伝搬チャネルやドップラー効果の影響を受けたOTFS信号(高周波信号)を補正し復調する。
【0030】
なお、第1リファレンス信号は、チャネルインパルスレスポンス(CIR:Channel Impulse Response)を求めるためのチャネルインパルスレスポンスリファレンス信号(CIR-RS:Channel Impulse Response-Reference Signal)である。また、第2リファレンス信号は、主に位相補正を行うための位相補正リファレンス信号(PCRS:Phase Compensation Reference Signal)である。
【0031】
<構成>
図3は、実施の形態1に係るUEと基地局の構成を例示するブロック図である。
図3は、UE12の送信部122と基地局11の受信部111を示す。
この例では、UE12から基地局11へのアップリンクについて説明する。
【0032】
図3に示すように、UE12の送信部122は、OTFSの前処理を行うOTFS前処理部1221と、直交周波数多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調を行うOFDM変調部1222と、デジタル信号をRF(Radio Frequency)信号に変換するD to R部と、アンテナ(ANT:Antenna)と、を含む。なお、信号をデータと称することもある。
【0033】
OTFS前処理部1221は、リファレンス信号(RS:Reference Signal)やデータなどを各エレメントに配置するマッピング(Mapping)部と、逆SFFT(Symplectic Finite Fourier Transform)を行うISFFT0部とを含む。
【0034】
OFDM変調部1222は、通常のOFDM変調と同様な処理を行う。OFDM変調部1222は、データの帯域外にゼロデータを追加するAdd Zero部と、逆フーリエ変換を行うIFFT部と、CP(Cyclic prefix)を追加するAdd CP部と、データをパラレルからシリアルに変換するP to S部と、を含む。
【0035】
基地局11の受信部111は、アンテナ(ANT:Antenna)と、受信したRF信号をデジタル信号に変換するR to D部と、OFDM復調部1112と、OTFS後処理部1111と、を含む。
【0036】
OFDM復調部1112は、通常のOFDM復調と同様な処理を行う。OFDM復調部1112は、デジタルのデータをシリアルからパラレルに変換するS to P部と、CPを除去するRm CP部と、高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)を行うFFT部と、帯域外成分を除去するRm Zero部と、を含む。
【0037】
OTFS後処理部1111は、伝搬チャネルの推定を行うチャネル推定部と、第1等化器EQ1と、SFFTを行うSFFT0部と、第2等化器EQ2と、を含む。
【0038】
第1等化器EQ1は、FT空間において、第1リファレンス信号に基づいたチャネル補正を行う。第2等化器EQ2は、DD空間において、第2リファレンス信号に基づいた位相補正の処理を行う。
【0039】
第1等化器EQ1がチャネル補正を行った後に、第2等化器EQ2が位相補正の処理を行う。
【0040】
チャネル推定部は、第1リファレンス信号を用いてチャネル推定を行って、チャネルインパルスレスポンス(CIR:Channel Impulse Response)を求める。第1等化器EQ1は、求めたCIRに基づいてOTFS信号に対してチャネル補正を行う。
【0041】
図4は、実施の形態1に係るチャネル推定部を例示するブロック図である。
図4は、チャネル推定部の詳細を示す。
【0042】
図4に示すように、チャネル推定部は、SFFTを行うSFFT1部と、チャネルインパルスレスポンスリファレンス信号(CIR-RS:Channel Impulse Response-Reference Signal)周囲のエレメント領域を抽出するCIR-RS抽出部と、ISFFTを行うISFFT1部と、リファレンス信号(RS:Reference Signal)をISFFTするISFFT2部と、を含む。
【0043】
<動作>
<UEの動作>
UE12の送信部122は、マッピング部がDD空間にRSやデータを配置する。
図5は、実施の形態1に係るCIR-RSとPCRSとデータの配置を例示する模式図である。
図5の横軸はドップラーインデックス(Doppler Index)を示し、縦軸は遅延インデックス(Delay Index)を示す。
【0044】
この例では、1サブフレーム中の遅延(Delay)方向の総インデックス数Mは、M=1200、ドップラー(Doppler)方向の総インデックス数Nは、N=14とし、10サブフレームで1フレームとする。
【0045】
CIR-RS(第1リファレンス信号)のみが配置されたサブフレームの数は1フレームあたり1つであってもよく、また、データとPCRS(第2リファレンス信号)とが配置されたサブフレームの数は2つ以上であってもよい。
【0046】
具体的には、第0サブフレームは、CIR-RSのみを配置し、CIR-RSを配置しないエレメントは全てゼロ(ブランク)とする。CIR-RSを、遅延インデックスl=150、ドップラーインデックスk=1のエレメント位置に配置する。この例では、1つのエレメントのみにCIR-RSを配置したが、これには限定されない。CIR-RSを一定のエレメント範囲に配置してもよい。また、後述するCIR-RS解析範囲に影響を与えない範囲でデータを配置してもよい。
【0047】
第1サブフレームから第9サブフレームには、データと位相補正リファレンス信号(PCRS:Phase Compensation Reference Signal)を配置する。この例では、PCRSは、各サブフレームの遅延インデックスl=0、48、95、…、1152、ドップラーインデックスk=0のエレメント位置に配置する。PCRSは、乱数状に分布した既知のQPSK信号とする。ただし、PCRSのエレメント位置やデータはこれに限定されない。
【0048】
上記のように、DD空間に配置した第i番目のサブフレーム信号をxi(l,k) DDとする。ここで、l=0,1,…,M-1、k=0,1,…,N-1,i=0,1,…,9である。これにより、特に、第0サブフレームの信号x0(l,k) DDは、式(1)のように表される。
(1)
【0049】
信号xi(l,k) DDをサブフレームごとにOTFS変調する。変調方法は、非特許文献1及び非特許文献2で示された方法と同様である。
【0050】
先ず、信号xi(l,k) DDをISFFTによって、DD空間からFT空間の信号xi(m,n) FT,(m=0,1,…,M-1、n=0,1,…,N-1)に変換する。信号xi(m,n) FTは、式(2)に示すように、ISFFTによってDelay方向とDoppler方向にそれぞれフーリエ変換と逆フーリエ変換することで計算される。
(2)
【0051】
信号xi(m,n) FTは、OFDM変調部1222で、通常の方法でOFDM変調される。OFDM変調されたOTFS信号si(p,q),(ただしp=0,1,…,M-1、q=0,1,…,N-1)は、式(3)及び式(4)のように表される。
(3)
(4)
【0052】
ここでは、簡単のため、Add Zero部での帯域外ゼロデータの追加と、Add CP部でのCP追加を無視(省略)する。そして、第0サブフレームの信号s0(p,q)は、式(1)と式(4)より、式(5)となる。
(5)
【0053】
UE12の送信部122のP to S部は、信号si(p,q)をパラレル-シリアル変換し、デジタルベースバンド信号に変換する。D to R部は、デジタルベースバンド信号をアナログベースバンド信号に変換し、さらに、アナログベースバンド信号を搬送波帯域のRF信号に変換する。RF信号は、ANTから空中に放射される。
【0054】
<基地局の動作>
基地局11の受信部111は、UE12からのRF信号をANTで受信し、R to D部でRF信号をデジタルベースバンド信号に変換する。S to P部は、デジタルベースバンド信号をシリアル-パラレル変換して受信信号ri(p,q)にする。
【0055】
OFDM復調部1112は、受信信号ri(p,q)を通常の方法でOFDM復調する。ここで、UE12と基地局11は、通常の方法でタイミング同期が取られているものとする。OFDM復調部1112のRm CP部は、受信信号ri(p,q)からCPを除去する。その後、FFT部がフーリエ変換を行い、Rm Zero部が帯域外ゼロ成分を除去する。OFDM復調部1112でOFDM復調して得られた信号yi(m,n) FTは、式(6)及び式(7)のように表せる。
(6)
(7)
【0056】
ここでは、簡単のため、CP除去と帯域外ゼロデータ除去と雑音成分を無視(省略)して表わす。式(7)のh(m,n)は伝搬チャネル、ωはドップラー効果による周波数オフセットに対応した角周波数、tはサンプリング間隔(サンプリングレートの逆数)である。よって、式(7)のe(jω0ts(MNi+Mn+p))はドップラー効果による位相変化を示す。
【0057】
信号yi(m,n) FTを用いてOTFS後処理を行う。この例では、CIR-RSを配置した第0サブフレームを用いてチャネル推定を行い、CIRを求める。チャネル推定は、図4に示した順で実施される。先ず、SFFT1部で信号y0(m,n) FTにSFFTを行い、FT空間からDD空間の信号y0(l,k) DDに変換する。信号y0(l,k) DDを式(8)に示す。
(8)
【0058】
CIR-RS抽出部は、信号y0(l,k) DDからCIR-RSを配置した周囲のエレメントのみを抽出する。この抽出した範囲をCIR-RS抽出範囲と呼ぶ。この例では、図5の点線で示すように、CIR-RSを配置したエレメントから、Delay方向に+/-150インデックス、Doppler方向に+/-3インデックスの範囲を抽出する。CIR-RS抽出範囲がサブフレーム端を超える場合、図5の点線のようにサブフレーム内で折り返して範囲を設定する。このとき、CIR-RS抽出範囲外のエレメントの値はゼロとする。CIR-RSの抽出後の信号をyr(l,k) DDとする。
【0059】
CIR-RS抽出範囲がCIR-RSを配置した範囲よりも大きくする理由は、電波伝搬の影響を受けたCIR-RSを抽出するためである。すなわち、CIR-RSは、遅延やドップラー効果などにより、元のエレメントの位置とは異なる位置、または、複数のエレメント位置に分散して受信されるからである。そして、このようなCIR-RSの変化に基づいてCIRを推測(推定)する。
【0060】
また、CIR-RSの周囲を抽出することにより、熱雑音などの影響を抑え、チャネル推定の精度を向上させることができる。この例では、第0サブフレームにはCIR-RSのみ配置しているが、これには限定されない。CIR-RS抽出範囲に影響を与えないエレメント領域に、データや他のUE用のCIR-RSなどを配置してもよい。
【0061】
CIR-RSが抽出された後の信号yr(l,k) DDは、ISFFT1部での変換、すなわち、式(2)で示した処理(変換)と同様にISFFT変換され、再度、FT空間の信号yr(m,n) FTに変換される。信号yr(m,n) FTは、CIR-RSのみを送信した場合の受信信号と考えられるため、式(7)と式(5)に基づいて式(9)のように表される。
(9)
【0062】
CIR-RSは、既知の信号であるので、基地局11においてもCIR-RSのみを配置した第0サブフレーム信号xr(l,k) DDを作成する。この例の場合、信号xr(l,k) DDは、式(1)で示した信号x0(l,k) DDに等しい。UE12において第0サブフレームにはCIR-RSのみ配置しているが、UE12においてデータなどを第0サブフレームに配置した場合でも、基地局11で生成する第0サブフレームにはCIR-RSのみを配置する。
【0063】
DD空間の信号xr(l,k) DDは、ISFFT2部で式(2)と同様にISFFT変換され、FT空間の信号xr(m,n) FTに変換される。信号xr(m,n) FTを式(10)及び式(11)に示す。
【0064】
(10)
(11)
【0065】
各フレームで同じ信号をCIR-RSとして使用する場合、各フレームで信号xr(m,n) FTを計算する必要はなく、初めに一度計算し、その後、同じ信号を繰り返し使用してもよい。また、この例では、ISFFT2部を用いて、信号xr(l,k) DDから信号xr(m,n) FTを作成したが、これには限定されない。予め作成した信号xr(m,n) FTを基地局11内のメモリに保持しておき、それを使用してもよい。
【0066】
チャネル推定部で求めるCIR係数he(m,n)は、受信信号から求めたCIR-RSのFT空間の信号yr(m,n) FTと、伝搬チャネルの影響を受けていないCIR-RSのFT空間の信号xr(m,n) FTとの商を計算することで求める。すなわち、チャネル推定部は、FT空間において、受信したОTFS信号から求めたCIR-RS(第1リファレンス信号)を伝搬チャネルの影響を受けていないCIR-RS(第1リファレンス信号)で除算したときの商をCIR係数he(m,n)として計算する。CIR係数he(m,n)を式(12)及び式(13)に示す。
(12)
(13)
【0067】
これにより、ドップラー効果の周波数誤差の影響を含むチャネル係数が計算される。第0サブフレームで求めたCIR係数he(m,n)は、再度、CIR-RSの配置されたサブフレームが受信されるまで、繰り返し使用する。
【0068】
第1等化器EQ1は、CIR係数he(m,n)を用いてFT空間においてチャネル補正を行う。補正された信号zi(m,n) EQ1を式(14)及び式(15)に示す。
(14)
(15)
【0069】
信号zi(m,n) EQ1は、SFFT0部でSFFT変換され、DD空間の信号zi(l,k) DDに変換される。zi(l,k) DDを式(16)及び式(17)に示す。
(16)
(17)
【0070】
式(16)及び式(17)に示すように、信号zi(l,k) DDには、ドップラー効果による位相ずれが補正しきれずに残っている。
【0071】
ドップラー効果による位相ずれは、2つの成分を有する。1つ目の成分は、e(jω0tsMNi)であり、サブフレームごとの位相ずれであり、第0サブフレームで求めたCIRを、その後のサブフレームに使用することが原因で生じる。2つ目の成分は、e(jω0ts(l-l0))であり、CIR-RSを配置した位置とのDelay方向の差に依存した位相ずれである。
【0072】
この位相ずれを、PCRSを用いて第2等化器EQ2で補正する。第2等化器EQ2で用いる補正係数wi(l,k)は、PCRSのオリジナル信号(送信側と受信側で予め取り決めた既知の信号)と受信信号の商を計算することで、式(18)及び式(19)に示すように求める。
(18)
(19)
【0073】
ここで、サブフレーム番号iは1から9の整数である。PCRSの存在しないDelayインデックスの補正係数
は、近接する補正係数から内挿、外挿によって求める。また、PCRSの存在しないDopplerインデックスの補正係数
は、PCRSの存在するDopplerインデックスの補正係数wi(l,k∈kp)と等しい値を使用する
【0074】
第0サブフレームにデータを配置する場合、CIR-RSの抽出範囲に影響を与えない位置にPCRSを追加し、上記と同様に補正を行う。もしくは、前フレーム、または、同フレーム内の補正係数wi(l,k) (i=1,2,…,9)の、同じDelayインデックスの補正係数を用いて外挿により求めてもよい。
【0075】
第2等化器EQ2は、補正係数wi(l,k)を受信信号zi(l,k) DDに乗ずることで補正を行う。第2等化器EQ2による補正後の信号zi(l,k) EQ2を、式(20)及び式(21)に示す。
(20)
(21)
【0076】
第2等化器EQ2を用いることで、ドップラー効果に起因する位相ずれが補正され、送信信号が正しく受信される。なお、この例では、簡単のため振幅変化を無視したが、第2等化器EQ2を用いることでサブフレーム毎の振幅変化も補正することができる。
【0077】
<効果>
実施の形態1に係る基地局11は、FT空間でチャネル補正を行う。これにより、計算量を抑えることができる。例えば、1台のUE12と基地局11とが通信している場合を考える。このとき、DD空間でチャネル補正を行う場合、(MNxMN)次元の行列の逆数を求め、受信信号と畳み込み演算を行う必要がある(非特許文献2参照)。一方、実施の形態1では、MxN次元の行列の各要素の逆数を求め、受信信号の各要素と乗算を行うだけでよいので計算量を抑えることができる。
【0078】
また、実施の形態1に係る基地局11は、FT空間でチャネル補正を行うため、OTFS信号を使用した場合でも、通常の手法で空間多重技術が利用できる。これにより、複数のUE12の同時、且つ、同一周波数接続が可能であり、基地局11の通信容量を増加させることができる。
【0079】
その結果、高いデータレートの直交時間周波数空間(OTFS:Orthogonal Time Frequency Space)信号を保ちつつ、少ない計算量で精度よくOTFS信号を復調することが可能な無線通信装置、システム、方法、及びプログラムを提供することができる。
【0080】
また、実施の形態1に係る基地局11は、CIR-RSとPCRSの2種類のRSを用いる。これにより、伝搬チャネルによる影響と、ドップラー効果による影響の両方を補正することができる。
【0081】
具体的には、PCRSを用いた第2等化器EQ2を用いることで、補正するデータとは異なるサブフレームで求めたCIRを用いることができる。毎サブフレームCIR-RSでチャネル推定を行うとデータレートの低下を招くため、チャネル推定を行わないサブフレームを用いることで高いデータレートを保つことができる。
【0082】
図6A及び図6Bは、実施の形態1に係る基地局による補正の効果を例示するコンスタレーション図である。
図6A及び図6Bの横軸はIチャネル(channel)を示し、縦軸はQチャネル(channel)を示す。
【0083】
図6A及び図6Bは、UEを歩行速度(約4km/s)で、基地局に向けて移動させた場合の結果を示す。搬送波周波数は28GHz(ギガヘルツ)である。
図6Aは、第2等化器EQ2がサブフレームごとの補正を行わなかった場合のコンスタレーション図である。
図6Bは、第2等化器EQ2がサブフレームごとの補正を行った場合のコンスタレーション図である。
【0084】
図6Aに示すように、第2等化器EQ2が補正を行わなかった場合、第1サブフレーム以降、サブフレームごとに位相が回転してしまう。一方、図6Bに示すように、第2等化器EQ2が補正を行った場合、位相回転が補正される。
【0085】
また、CIRだけでは、Delayインデックスに依存したドップラー効果の影響を見積もることができないので、第1等化器EQ1だけではこの影響が残る(式17参照)。実施の形態1に係る基地局11は、PCRSを用いた第2等化器EQ2によって、この影響を補正し、復調精度を向上させることができる。
【0086】
図7A及び図7Bは、実施の形態1に係る基地局によるDelay方向の補正の効果を例示するコンスタレーション図である。
図7A及び図7Bの横軸はIチャネル(channel)を示し、縦軸はQチャネル(channel)を示す。
図7A及び図7Bは、UEが高速で移動していると仮定し、UEの送信部と基地局の受信部に4kHz(キロヘルツ)の周波数誤差を与えた場合の測定結果を示す。周波数誤差4kHzは、およそ150km/hでUEが基地局に向かって移動している状況に等しい。搬送波周波数は28GHz(ギガヘルツ)である。
【0087】
図7Aは、第2等化器EQ2がDelay方向の補正を行っていない場合のコンスタレーション図である。
図7Bは、第2等化器EQ2がDelay方向の補正を行った場合のコンスタレーション図である。
図7A及び図7Bは、1サブフレーム間のコンスタレーションを示す。
【0088】
図7Aに示すように、第2等化器EQ2がDelay方向の補正を行っていない場合、円周方向に分散してしまう。一方、図7Bに示すように、第2等化器EQ2がDelay方向の補正を行った場合、円周方向の分散が補正される。
【0089】
また、実施の形態1に係る基地局11は、SFFT1部を用いて第0サブフレームの信号をDD空間に変換し、CIR-RS抽出部によって、CIR-RSの周囲を抽出することで、伝搬チャネルの影響を受けたCIR-RSのみを雑音を抑えて抽出することができる。
【0090】
ここで、実施の形態1に係る基地局の特徴を以下に示す。
2種類のリファレンス信号(CIR-RSとPCRS)を用い、それぞれ異なる等化器を利用することで、OTFS信号を高いデータレートを保ちつつ、少ない計算量で精度よく復調することができる。
【0091】
[実施の形態2]
図8は、実施の形態2に係るОTFS後処理部を例示するブロック図である。
【0092】
図8に示すように、実施の形態2に係る基地局21は、実施の形態1に係る基地局11と比べて、第1セレクタSE1と第2セレクタSE2を追加した点が異なる。また、基地局21は、基地局11と比べて、SFFT0部とSFFT1部を共通にした点が異なる。基地局21のその他の要素(機能部)は、基地局11と同様である。
【0093】
第1セレクタSE1と第2セレクタSE2は、CIRを推定するときに、第1等化器EQ1をバイパスするために使用する。例えば、実施の形態1と同様に、第0サブフレームにCIR-RSが配置された信号を使用する場合、第0サブフレーム時において、第1等化器EQ1をバイパスするように第1セレクタSE1と第2セレクタSE2を切り替える。一方、第1サブフレームから第9サブフレーム時においては、第1等化器EQ1を使用するように第1セレクタSE1と第2セレクタSE2を切り替える。
【0094】
すなわち、第1セレクタSE1と第2セレクタSE2は、CIR-RSのみが配置されたサブフレームが、第1等化器EQ1をバイパスするような設定を行う。また、第1セレクタSE1と第2セレクタSE2は、CIR-RSが配置されていないサブフレームでは、第1等化器EQ1にОFDM復調して得られた信号を入力する。
【0095】
なお、第1セレクタSE1と第2セレクタSE2を用いない場合、CIRを推定するときのみ、CIR係数he(m,n)を1に変更し、第1等化器EQ1での補正が行われないようにしてもよい。
【0096】
また、実施の形態1に係るSFFT0部とSFFT1部を共通にしてもよい。これを実現するため、図8に示すように、チャネル推定部は、CIR-RS(第1リファレンス信号)抽出部と逆SFFT変換部(ISFFT1部)とを備えてもよい。SFFT0部(SFFT変換部)は、第1等化器EQ1がチャネル補正を行った信号に対してSFFT変換を行う。CIR-RS抽出部は、SFFT変換部が変換した信号からCIR-RSを抽出する。ISFFT1部は、CIR-RS抽出部が抽出した信号に対して逆SFFT変換する。
【0097】
これにより、SFFTの計算を省略でき(SFFTが1つだけ削減できる)ので(図4図8を参照)、実施の形態1と比べて、受信部での計算量を低減することができる。
【0098】
[実施の形態3]
図9A及び図9Bは、2ユーザが多重接続した時の信号マッピングを例示する模式図である。
図9Aは、第1のUE(UE32a)の信号マッピングを示す。
図9Bは、第2のUE(UE32b)の信号マッピングを示す。
【0099】
実施の形態3は、複数のUE32と基地局31が同時に通信するマルチユーザ環境においても利用することができる。実施の形態3では、UE32ごとに、エレメント位置を変えてCIR-RSとPCRSをそれぞれ配置する。
【0100】
図9A及び図9Bに示すように、CIR-RSには、電波伝搬による遅延やDoppler効果によって、マッピング上でエレメント位置の変化や、複数のエレメントへ拡散(分散)というような変化が表れる。これにより、CIR-RSが他のUEのCIR-RS抽出範囲に影響を与えた場合、CIRの推定精度が低下し復調精度が低下する。そこで、実施の形態3では、CIR-RSを、図9A及び図9Bに示すように、複数のCIR-RS抽出範囲は、相互に影響を与えない、互いに十分離れた位置に配置する。
【0101】
具体的には、第1のUE用のCIR-RS(第1リファレンス信号)は、第1のUE用の所定の第1エレメント範囲内に配置する。第2のUE用のCIR-RS(第1リファレンス信号)は、第2のUE用の所定の第2エレメント範囲内に配置する。第1エレメント範囲と第2エレメント範囲は、所定の距離以上離れた位置に配置する。なお、CIR-RS抽出範囲をエレメント範囲と称することもある。
【0102】
実施の形態3では、UE32a用のCIR-RSとUE32b用のCIR-RSを離れた位置に配置することにより、CIR-RS抽出部がそれぞれのUEのCIR-RSのみを抽出することができ、それぞれのUEのCIRを確実に求めることができる。
【0103】
また、それぞれのUEごとに、エレメント位置が重ならないようにしてPCRSを配置してもよい。
【0104】
また、実施の形態1から3では、CIRを用いたチャネル補正をFT空間で行うため、ゼロフォーシング(Zero-forcing)法や最小平均二乗誤差(Minimum Mean Square Error)法といった空間多重技術を用いることができる。これにより、同時、且つ、同周波数帯域に複数の信号を多重することができるため、通信量を増加することができる。
【0105】
なお、空間多重技術による通信量の増加は、上りの信号だけでなく、伝搬チャネルの可逆性を利用して、下りの信号にも適用できる。これにより、下りにおいても通信量を増加することができる。
【0106】
尚、上記の実施の形態では、本発明をハードウェアの構成として説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、各構成要素の処理を、CPU(Central Processing Unit)にコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。
【0107】
上記の実施の形態において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実態のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(具体的にはフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(具体的には光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(具体的には、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM))、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory)を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0108】
さらに、動作は特定の順序で描かれているが、これは、望ましい結果を達成するために、そのような動作が示された特定の順序または連続した順序で実行されること、または示されたすべての動作が実行されることを要求するものとして理解されるべきではない。特定の状況では、マルチタスクと並列処理が有利な場合がある。同様に、いくつかの特定の実施の形態の詳細が上記の議論に含まれているが、これらは本開示の範囲に対する制限としてではなく、特定の実施の形態に特有の特徴の説明として解釈されるべきである。別個の実施の形態の文脈で説明される特定の特徴は、単一の実施の形態に組み合わせて実装されてもよい。逆に、単一の実施の形態の文脈で説明される様々な特徴は、複数の実施の形態で別々にまたは任意の適切な組み合わせで実装されてもよい。
【0109】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記によって限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0110】
尚、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0111】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
第1リファレンス信号を用いてチャネル推定を行い、第2リファレンス信号を用いて位相補正を行い、前記チャネル推定と前記位相補正の結果を用いて、受信した直交時間周波数空間(OTFS:Orthogonal Time Frequency Space)信号を復調する受信部を備える無線通信装置。
(付記2)
前記受信部は、前記第1リファレンス信号が配置されたサブフレームと、前記第2リファレンス信号が配置されたサブフレームと、を含む前記OTFS信号を受信し復調する、
付記1に記載の無線通信装置。
(付記3)
前記第1リファレンス信号は、チャネルインパルスレスポンス(CIR:Channel Impulse Response)を求めるためのチャネルインパルスレスポンスリファレンス信号(CIR-RS:Channel Impulse Response-Reference Signal)であり、
前記第2リファレンス信号は、前記位相補正を行うための位相補正リファレンス信号(PCRS:Phase Compensation Reference Signal)である、
付記1または2に記載の無線通信装置。
(付記4)
前記受信部は、
周波数時間(FT:Frequency Time)空間において、前記第1リファレンス信号に基づいたチャネル補正を行う第1等化器と、
遅延ドップラー(DD:Delay Doppler)空間において、前記第2リファレンス信号に基づいた前記位相補正の処理を行う第2等化器と、を有する、
付記3に記載の無線通信装置。
(付記5)
前記第1等化器が前記チャネル補正を行った後に、前記第2等化器が前記位相補正の処理を行う、
付記4に記載の無線通信装置。
(付記6)
前記受信部は、前記第1リファレンス信号を用いて前記チャネル推定を行って、前記CIRを求めるチャネル推定部をさらに備え、
前記第1等化器は、前記CIRに基づいて受信したデータに対して前記チャネル補正を行う、
付記4または5に記載の無線通信装置。
(付記7)
前記チャネル推定部は、前記FT空間において、受信したOTFS信号から求めた前記第1リファレンス信号を伝搬チャネルの影響を受けていない前記第1リファレンス信号で除算したときの商を前記CIRとして計算する、
付記6に記載の無線通信装置。
(付記8)
前記第1リファレンス信号のみが配置されたサブフレームの数は1フレームあたり1つであり、
前記データと前記第2リファレンス信号とが配置されたサブフレームの数は2つ以上である、
付記6に記載の無線通信装置。
(付記9)
前記第1リファレンス信号のみが配置されたサブフレームが、前記第1等化器をバイパスするような設定を行うセレクタをさらに備え、
前記第1リファレンス信号が配置されていないサブフレームでは、前記第1等化器に直交周波数分割多重(ОFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)復調して得られた信号を入力する、
付記4から7のいずれか1つに記載の無線通信装置。
(付記10)
前記第1等化器が前記チャネル補正を行った信号に対してSFFT変換を行うSFFT変換部と、
前記SFFT変換部が変換した信号から前記第1リファレンス信号を抽出する第1リファレンス信号抽出部と、
第1リファレンス信号抽出部が抽出した信号に対して逆SFFT変換する逆SFFT変換部と、
をさらに備える、
付記4に記載の無線通信装置。
(付記11)
第1のUE(User Equipment)用の前記第1リファレンス信号は、前記第1のUE用の所定の第1エレメント範囲内に配置され、
第2のUE用の前記第1リファレンス信号は、前記第2のUE用の所定の第2エレメント範囲内に配置され、
前記第1エレメント範囲と前記第2エレメント範囲は、所定の距離以上離れた位置に配置される、
付記1から10のいずれか1つに記載の無線通信装置。
(付記12)
ユーザ装置と基地局とを備え、
前記ユーザ装置は、
第1リファレンス信号と直交時間周波数空間(OTFS:Orthogonal Time Frequency Space)信号と第2リファレンス信号とを送信する送信部を有し、
前記基地局は、
前記第1リファレンス信号を用いてチャネル推定を行い、前記第2リファレンス信号を用いて位相補正を行い、前記チャネル推定と前記位相補正の結果を用いて、受信した前記OTFS信号を復調する受信部を有する、
システム。
(付記13)
第1リファレンス信号を用いてチャネル推定を行い、第2リファレンス信号を用いて位相補正を行い、前記チャネル推定と前記位相補正の結果を用いて、受信した直交時間周波数空間(OTFS:Orthogonal Time Frequency Space)信号を復調すること、
を備える方法。
(付記14)
第1リファレンス信号を用いてチャネル推定を行い、第2リファレンス信号を用いて位相補正を行い、前記チャネル推定と前記位相補正の結果を用いて、受信した直交時間周波数空間(OTFS:Orthogonal Time Frequency Space)信号を復調すること、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【0112】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記によって限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0113】
この出願は、2021年9月30日に出願された日本出願特願2021-160872を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0114】
10…システム
11、21、31…無線通信装置、基地局
111…受信部
1111…OTFS後処理部
1112…OFDM復調部
12、32…UE
32a…第1のUE
32b…第2のUE
122…送信部
1221…OTFS前処理部
1222…OFDM変調部
M、N…総インデックス数
EQ1…第1等化器
EQ2…第2等化器
SE1…第1セレクタ
SE2…第2セレクタ
UE…端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9A
図9B