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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/16 20060101AFI20250311BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20250311BHJP
【FI】
A61B5/16 110
A61B5/00 102A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023566062
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(86)【国際出願番号】 JP2021045654
(87)【国際公開番号】W WO2023105791
(87)【国際公開日】2023-06-15
【審査請求日】2024-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124811
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 資博
(74)【代理人】
【識別番号】100088959
【弁理士】
【氏名又は名称】境 廣巳
(74)【代理人】
【識別番号】100097157
【弁理士】
【氏名又は名称】桂木 雄二
(74)【代理人】
【識別番号】100187724
【弁理士】
【氏名又は名称】唐鎌 睦
(72)【発明者】
【氏名】北出 祐
(72)【発明者】
【氏名】辻川 剛範
【審査官】上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/008666(WO,A1)
【文献】特開2019-198531(JP,A)
【文献】国際公開第2021/090402(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0357831(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/16
A61B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の人物の状態を表す状態データと、当該状態データが取得されたときの所定の人物の体調を表す正解データと、を含む学習データのうち、前記正解データを非線形空間に写像し、
前記状態データを説明変数とし、前記写像された正解データを目的変数として学習することによって、対象人物の体調を推定するために用いる推定モデルを生成し、
前記推定モデルに、対象人物から取得した当該対象人物の状態を表す対象人物状態データを入力することにより体調を表す値を算出し、
算出した体調を表す値を線形空間に逆写像する、
情報処理方法。
【請求項2】
所定の人物の状態を表す状態データと、当該状態データが取得されたときの所定の人物の体調を表す正解データと、を含む学習データのうち、前記正解データを非線形空間に写像する際に、変化率が1以上の単調増加関数を用いて前記正解データを非線形空間に写像し、
前記状態データを説明変数とし、前記写像された正解データを目的変数として学習することによって、対象人物の体調を推定するために用いる推定モデルを生成する、
情報処理方法。
【請求項3】
所定の人物の状態を表す状態データと、当該状態データが取得されたときの所定の人物の体調を表す正解データと、を含む学習データのうち、前記正解データを非線形空間に写像する際に、逆関数を定義可能な関数を用いて前記正解データを非線形空間に写像し、
前記状態データを説明変数とし、前記写像された正解データを目的変数として学習することによって、対象人物の体調を推定するために用いる推定モデルを生成する、
情報処理方法。
【請求項4】
所定の人物の状態を表す状態データと、当該状態データが取得されたときの所定の人物の体調を表す正解データと、を含む学習データのうち、前記正解データを非線形空間に写像し、
前記状態データを説明変数とし、前記写像された正解データを目的変数として学習することによって、対象人物の体調を推定するために用いる推定モデルを生成し、
前記状態データは、所定の人物から計測された計測データから抽出された複数の特徴量データからなり、
複数の前記特徴量データのうち、前記正解データに基づいて選択された前記特徴量データを、説明変数として学習することによって前記推定モデルを生成し、
選択された前記特徴量データと同一種別である、対象人物から計測された対象人物計測データから抽出された対象人物特徴量データを、前記推定モデルに入力することにより体調を表す値を算出し、
算出した体調を表す値を線形空間に逆写像する、
情報処理方法。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれかに記載の情報処理方法であって、
前記状態データは、所定の人物から計測された計測データから抽出された複数の特徴量データからなり、
複数の前記特徴量データのうち、前記正解データに基づいて選択された前記特徴量データを、説明変数として学習することによって前記推定モデルを生成する、
情報処理方法。
【請求項6】
請求項5に記載の情報処理方法であって、
前記特徴量データの種別毎に、当該特徴量データと前記正解データとの相関度合いを算出し、算出した相関度合いに基づいて選択された前記特徴量データを説明変数として学習することによって前記推定モデルを生成する、
情報処理方法。
【請求項7】
所定の人物の状態を表す状態データと、当該状態データが取得されたときの所定の人物の体調を表す正解データと、を含む学習データのうち、前記正解データを非線形空間に写像する変換部と、
前記状態データを説明変数とし、前記写像された正解データを目的変数として学習することによって、対象人物の体調を推定するために用いる推定モデルを生成する生成部と、
前記推定モデルに、対象人物から取得した当該対象人物の状態を表す対象人物状態データを入力することにより体調を表す値を算出する算出部と、
算出した体調を表す値を線形空間に逆写像する逆変換部と、
を備えた情報処理装置。
【請求項8】
所定の人物の状態を表す状態データと、当該状態データが取得されたときの所定の人物の体調を表す正解データと、を含む学習データのうち、前記正解データを非線形空間に写像する際に、変化率が1以上の単調増加関数を用いて前記正解データを非線形空間に写像する変換部と、
前記状態データを説明変数とし、前記写像された正解データを目的変数として学習することによって、対象人物の体調を推定するために用いる推定モデルを生成する生成部と、
を備えた情報処理装置。
【請求項9】
所定の人物の状態を表す状態データと、当該状態データが取得されたときの所定の人物の体調を表す正解データと、を含む学習データのうち、前記正解データを非線形空間に写像する際に、逆関数を定義可能な関数を用いて前記正解データを非線形空間に写像する変換部と、
前記状態データを説明変数とし、前記写像された正解データを目的変数として学習することによって、対象人物の体調を推定するために用いる推定モデルを生成する生成部と、
を備えた情報処理装置。
【請求項10】
情報処理装置に、
所定の人物の状態を表す状態データと、当該状態データが取得されたときの所定の人物の体調を表す正解データと、を含む学習データのうち、前記正解データを非線形空間に写像し、
前記状態データを説明変数とし、前記写像された正解データを目的変数として学習することによって、対象人物の体調を推定するために用いる推定モデルを生成し、
前記推定モデルに、対象人物から取得した当該対象人物の状態を表す対象人物状態データを入力することにより体調を表す値を算出し、
算出した体調を表す値を線形空間に逆写像する、
処理を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人物の体調を推定するための情報処理方法、情報処理装置、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
人物のストレスを推定する方法として、事前にストレス値を算出するためのモデルを学習して生成しておき、かかるモデルに対して人物から生体データなどのストレスを推定する起因となるデータを入力することでストレス値を算出する、という方法が知られている。このとき、モデルは、人物の生体データの特徴量を説明変数とし、アンケートなどにより得られた人物のストレス値を目的変数として学習することで生成される。例えば、特許文献1に、モデルを用いたストレスの推定方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2021/090402号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したようにモデルを生成する方法では、学習データとして一般的な人物つまり高ストレスや低ストレスではない人物のデータが多数となり、ストレス値が中央値に極端に偏ったデータが収集されるおそれがある。このため、中央値に偏ったデータを学習してモデルを生成した場合には、ストレスが高い、あるいは、ストレスが低い人物に対するストレス推定精度が低下する、という問題が生じる。その結果、より精度の高いストレスの推定が困難である。また、ストレスに限らず、人物の肉体的及び精神的な疲労や内面的なコンディションといった体調も同様に、高精度に推定することも困難である。
【0005】
このため、本発明の目的は、上述した課題である、より精度の高い体調の推定が困難である、ことを解決することができる情報処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態である情報処理方法は、
所定の人物の状態を表す状態データと、当該状態データが取得されたときの所定の人物の体調を表す正解データと、を含む学習データのうち、前記正解データを非線形空間に写像し、
前記状態データを説明変数とし、前記写像された正解データを目的変数として学習することによって、対象人物の体調を推定するために用いる推定モデルを生成する、
という構成をとる。
【0007】
また、本発明の一形態である情報処理装置は、
所定の人物の状態を表す状態データと、当該状態データが取得されたときの所定の人物の体調を表す正解データと、を含む学習データのうち、前記正解データを非線形空間に写像する変換部と、
前記状態データを説明変数とし、前記写像された正解データを目的変数として学習することによって、対象人物の体調を推定するために用いる推定モデルを生成する、生成部と、
を備えた、
という構成をとる。
【0008】
また、本発明の一形態であるプログラムは、
情報処理装置に、
所定の人物の状態を表す状態データと、当該状態データが取得されたときの所定の人物の体調を表す正解データと、を含む学習データのうち、前記正解データを非線形空間に写像し、
前記状態データを説明変数とし、前記写像された正解データを目的変数として学習することによって、対象人物の体調を推定するために用いる推定モデルを生成する、
処理を実行させる、
という構成をとる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、以上のように構成されることにより、より精度の高い体調の推定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態1におけるストレス推定装置の構成を示すブロック図である。
図2図1に開示したストレス推定装置に入力される人物のストレスに関する主観データを取得するためのテストの一例を示す図である。
図3図1に開示したストレス推定装置にてモデルを生成するときに使用する関数の一例を示す図である。
図4図1に開示したストレス推定装置の動作を示すフローチャートである。
図5図1に開示したストレス推定装置の動作を示すフローチャートである。
図6】本発明の実施形態2における情報処理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図7】本発明の実施形態2における情報処理装置の構成を示すブロック図である。
図8】本発明の実施形態2における情報処理装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態1>
本発明の第1の実施形態を、図1乃至図5を参照して説明する。図1乃至図3は、ストレス推定装置の構成を説明するための図であり、図4乃至図5は、ストレス推定装置の処理動作を説明するための図である。
【0012】
[構成]
本発明におけるストレス推定装置10(情報処理装置)は、人物のストレスを推定するために用いられる。例えば、ストレス推定装置10は、人物が所属する職場において業務などを行っている所定の状況下においてストレス値を算出するために用いられるものである。但し、本発明におけるストレス推定装置10は、人物のいかなる状況下におけるストレスを算出するものであってもよい。また、本発明は、ストレスを推定することに限定されず、人物の肉体的及び精神的な疲労や内面的なコンディションといった体調を推定することにも適用可能である。つまり、本実施形態で挙げるストレス値は、推定する対象となる人物の体調の値の一例であって、体調の値の他の例としては、疲労の度合いを表す疲労度であったり、コンディションを表す何らかの指標値など、いかなる値であってもよい。
【0013】
ストレス推定装置10は、演算装置と記憶装置とを備えた1台又は複数台の情報処理装置にて構成される。そして、ストレス推定装置10は、図1に示すように、データ取得部11、前処理部12、学習部13、算出部14、出力部15、を備える。データ取得部11、前処理部12、学習部13、算出部14、出力部15の各機能は、演算装置が記憶装置に格納された各機能を実現するためのプログラムを実行することにより実現することができる。また、ストレス推定装置10は、人物情報記憶部16、モデル記憶部17、を備える。人物情報記憶部16、モデル記憶部17は、記憶装置により構成される。以下、各構成について詳述する。
【0014】
データ取得部11は、人物のストレスを推定するために用いるデータを取得する。まず、データ取得部11は、ストレス値を算出するために用いるストレス推定モデルを機械学習により生成するための学習データを取得する。学習データは、任意の多数の人物(所定の人物)のデータであり、後述するように人物情報記憶部16に記憶される。
【0015】
具体的に、データ取得部11は、学習データとして、人物が職場などで業務を行っている状況下などの所定の状況下における人物の状態を表す状態データを取得する。状態データは、例えば、当該人物の身体から発せられる種々の情報である生体データである。生体データは、例えば、心拍数、開眼度、等である。例えば、データ取得部11は、図1に示すように、人物Uが装着しているウェアラブル端末Wなどの計測装置を介して当該人物Uの心拍数や、図示しないカメラにて撮影した人物Uの顔画像から抽出した開眼度などの生体データを、状態データとして取得する。このとき、データ取得部11は、人物及び期間を区別して生体データを計測して、状態データとして取得する。但し、データ取得部11は、人物の状態データとして、いかなる計測装置を用いていかなる生体データを取得してもよく、生体データに限らず人物の状態を表す他のデータを取得してもよい。
【0016】
また、データ取得部11は、学習データとして、上述したように所定の人物から生体データを取得したときにおける当該人物のストレスの状況を表す正解データを取得する。例えば、正解データは、人物のストレスに関する主観データに基づくデータである。このため、データ取得部11は、人物に対して業務中や業務終了時、あるいは一定の期間が経過した時に、入力装置20を介して予め設定された設問を出題し、人物Uからの回答を取得して集計することで、人物Uのストレスに関する主観データに基づくデータを、正解データとして取得する。このとき、データ取得部11は、人物及び期間を区別して正解データを取得する。
【0017】
一例として、データ取得部11は、人物のストレスに関する主観データに基づくデータである正解データとして、「知覚されたストレス尺度(Perceived Stress Scale(PSS))」を集計した「PSSスコア」を取得する。ここで、PSSとは、図2に一例を示すように、ユーザに対して起きていることをどのように感じているかを問う予め設定された14項目の設問からなり、5段階の回答が用意されているものである。5段階の回答には、0~4点のスコアが付与され、14問中、計算対象となる10項目の設問に対する回答のスコアの合計がPSSスコアとして算出される。このため、PSSスコアは、0~40点の値をとる。一例として、データ取得部11は、図1に示すように、人物Uが操作する情報処理端末といった入力装置20から図2に示すようなPSSの設問を表示し、入力装置20に対して人物Uから入力される回答を取得し、かかる回答からPSSスコアを集計することで取得する。但し、データ取得部11は、正解データとして、人物のストレスに関する主観データに基づくデータを取得することに限らず、他の方法で取得したストレスの状況を表すデータを正解データとして取得してもよい。
【0018】
そして、データ取得部11は、上述したように所定の人物から取得した状態データと正解データとを、人物毎及び期間毎に関連付けて、学習データとして人物情報記憶部16に記憶しておく。例えば、データ取得部11は、1カ月ごとに人物から状態データと正解データを取得する場合には、人物毎に月毎の状態データと正解データとを関連付けて記憶しておく。
【0019】
前処理部12(変換部)は、上述したように取得して人物情報記憶部16に記憶されている状態データと正解データとからなる学習データを用いて機械学習を行う前に、当該学習データの前処理を行う。まず、前処理部12は、状態データと正解データとからなるデータセットについて、正解データを非線形空間に写像する。このとき、前処理部12は、写像前後で正解データの大小関係が変化しないよう、変化率が1以上の単調増加関数を用いて正解データを非線形空間に写像すると望ましい。さらに、前処理部12は、後述するようにモデルを用いて算出したストレス値を線形空間に逆写像することが可能なよう、逆関数を定義可能な関数を用いて正解データを非線形空間に写像すると望ましい。このため、本実施形態では、図3の符号M1,M2に示すような3次関数、符号M3に示すような指数関数、符号M4に示すような2次関数、のいずれかを用いて、正解データを非線形空間に写像することとする。なお、各関数に含まれる「t」は、「t=x-med」であり、「x」は正解データであるPSSスコアを表し、「med」は正解データの分布全体の中央値であることとする。このように、図3に示すような各関数を用いて正解データを非線形空間に写像することにより、図3の右側のグラフに示すように、正解データが中央値に偏っている場合であっても、中央値に近い値の重みを下げ、中央値から離れた値の重みを高くすることができる。なお、図3に示す関数のうち、重みを均等にすることができる2次関数を用いることが望ましいが、いかなる関数を用いてもよく、図3に挙げていないいかなる関数を用いてもよい。
【0020】
続いて、前処理部12は、人物毎かつ期間毎の学習データのうち、状態データである生体データから、複数種類の特徴量を抽出して特徴量データを生成する。例えば、前処理部12は、時系列に沿って取得した生体データから、時間領域における平均値、分散/標準偏差、最大値、最小値、四分位、周波数領域におけるヒストグラムの平均、分散、四分位、さらにはパワースペクトルのピークなど、複数種類の特徴量データを抽出する。そして、前処理部12は、特徴量データの種別毎にそれぞれ写像した正解データを関連付けて、特徴量データと写像した正解データとのデータセットを生成する。つまり、前処理部12は、各人物について期間毎に、それぞれ各特徴量データと写像した正解データとのデータセットを生成する。一例として、一人の人物について3カ月分の状態データと写像した正解データとからなる学習データを取得している場合であって、状態データから5種類の特徴量データを抽出した場合には、1ヵ月分で5通りのデータセットを生成し、3ヵ月分で15通りのデータセットを生成することになる。そして、このようなデータセットを人数分生成することとなる。なお、前処理部12は、上述したように正解データを非線形空間に写像する前に、状態データから複数種類の特徴量データを生成してもよい。この場合、前処理部12は、特徴量データの種類ごとにそれぞれ正解データを関連付けて、特徴量データと正解データとのデータセットを生成し、その後、各データセットにおいて正解データを非線形空間に写像して、特徴量データと写像した正解データとのデータセットを生成する。
【0021】
続いて、前処理部12は、上述したように状態データから抽出した特徴量データのうち、学習データとして機械学習に用いる特徴量データの種別を選択する。このとき、前処理部12は、特徴量データの種別ごとに、特徴量データと写像した正解データとの相関度合いを表す相関値を算出し、かかる相関値に基づいて特徴量データの種別を選択する。例えば、前処理部12は、ある種別に属する全てのデータセットを成す写像した正解データと特徴量データとについて、写像した正解データのデータ分布と特徴量データのデータ分布とが、予め設定された基準により相互に近似している度合いや相関している度合いを表す相関値を算出する。そして、各種別についてそれぞれ相関値を算出し、つまり、上述した特徴量データが5種類の場合には、5種類それぞれの相関値を算出し、相関値が高い上位N個の種別の特徴量データや、相関値が予め設定された閾値を超えている種別の特徴量データを選択する。なお、前処理部12は、いかなる基準で特徴量データの種別を選択してもよい。例えば、前処理部12は、正解データを写像する前に状態データから特徴量データを抽出し、特徴量データと正解データとのデータセットを生成した場合には、写像する前の正解データと特徴量データとの分布から特徴量データの選択を行い、その後、上述同様に正解データを非線形空間に写像してもよい。
【0022】
学習部13(生成部)は、上述したように選択された特徴量データと非線形空間に写像された正解データとのデータセットを学習データとして用いて機械学習を行い、ストレス推定モデル(推定モデル)を生成する。具体的に、学習部13は、選択された種別の特徴量データを含む全てのデータセットを学習データとして用い、特徴量データを説明変数とし、写像された正解データを目的変数として機械学習を行う。これにより、生成されるストレス推定モデルは、人物Uの生体データを入力として、上述したPSSスコアと同様に0-40の値を非線形空間に写像した値として算出するよう構成されたモデルとなりうる。そして、学習部13は、機械学習により生成したストレス推定モデルをモデル記憶部17に記憶しておく。
【0023】
次に、上述したようにストレス推定モデルを生成した後に、当該ストレス推定モデルを用いて、対象となる人物(対象人物)のストレスを推定するときの各部の機能を説明する。例えば、対象となる人物Uはある職場に所属しており、職場において業務を行っているなど所定の状況下にあるときのストレスを推定する場面を想定する。
【0024】
データ取得部11は、対象となる人物Uのストレスを推定するために用いる状態データ(対象人物計測データ)を取得する。具体的に、データ取得部11は、対象となる人物Uが実際にストレスを推定する場面である職場で業務を行うなどの状況下にある場合に、当該人物Uから生体データである状態データを計測して取得する。例えば、データ取得部11は、上述同様に、人物Uが装着しているウェアラブル端末Wなどの計測装置を介して当該人物Uの心拍数を生体データとして取得したり、図示しないカメラにて撮影した人物Uの顔画像から抽出した開眼度を生体データとして取得する。このとき、データ取得部11は、職場で業務を行うなどの状況下にある人物Uから、予め設定されたタイミングで、例えば、一定の時間間隔で生体データを取得する。
【0025】
算出部14は、上述したように人物Uから生体データを取得する度に、当該生体データの特徴量データを算出する。このとき、算出部14は、上述したように前処理部12で選択された特徴量データの種別と同一種別の特徴量データ(対象人物特徴量データ)を、生体データから抽出する。なお、算出部14は、生体データから予め設定されている全ての種別の特徴量データを算出し、かかる特徴量データのうちから、選択された種別と同一種別の特徴量データを抽出してもよい。
【0026】
そして、算出部14は、モデル記憶部17に記憶されているストレス推定モデルを読み出し、当該ストレス推定モデルに対して、前処理部12で選択された特徴量データと同一種別の特徴量データを入力することにより、その出力であるストレス値を算出する。つまり、算出部14は、人物Uが業務を開始した後に、上述したように人物Uから生体データを取得する一定の時間間隔などの予め設定されたタイミングとなる毎にストレス値を算出する。なお、ストレス値を算出するタイミングは、例えば、業務中であってもよく、1ヵ月毎など、いかなる間隔でストレス値を算出してもよい。
【0027】
さらに、算出部14(逆変換部)は、上述したようにストレス推定モデルを用いて算出したストレス値を、線形空間に逆写像する。このとき、算出部14は、前処理部12にて学習前に正解データを非線形空間に写像する際に用いた関数の逆関数を用いて、ストレス推定モデルで算出されたストレス値を線形空間に逆写像する。
【0028】
出力部15は、上述したように算出部14で算出して線形空間に逆写像したストレス値に基づく情報を出力する。例えば、出力部15は、ストレス値が算出される毎に、かかるストレス値が予め設定されたストレスが高いと判断される基準値を超えている場合に、人物Uを管理している職場の管理者が操作する情報処理装置の表示装置30に、その旨(アラート)を表示するよう出力する。あるいは、出力部15は、ストレス値が算出される毎に、常に、ストレス値自体つまり人物Uのストレス値の時系列変化を表示するよう出力してもよく、ストレス値に基づくいかなるデータを出力してもよい。また、出力部15は、ストレス値に基づくデータを、対象となる人物Uに対して出力するなど、いかなる者に対して出力してもよい。
【0029】
[動作]
次に、上述したストレス推定装置10の動作を、主に図4乃至図5のフローチャートを参照して説明する。まず、図4のフローチャートを参照して、ストレス推定モデルを機械学習により生成するときの動作を説明する。
【0030】
ストレス推定装置10は、ストレス値を算出するために用いるストレス算出モデルを機械学習により生成するための学習データを取得する。具体的に、ストレス推定装置10は、学習データとして、人物が職場などで業務を行っている状況下など所定の状況下における人物の状態を表す状態データを取得する。例えば、ストレス推定装置10は、人物Uが装着しているウェアラブル端末Wなどの計測装置を介して当該人物Uの心拍数などの生体データを、状態データとして取得する(ステップS1)。
【0031】
続いて、ストレス推定装置10は、学習データとして、上述したように所定の人物から生体データを取得したときにおける当該人物のストレスの状況を表す正解データを取得する(ステップS2)。例えば、正解データは、人物のストレスに関する主観データに基づくデータであり、一例として、「知覚されたストレス尺度(Perceived Stress Scale(PSS))」を集計した「PSSスコア」を取得する。
【0032】
続いて、ストレス推定装置10は、上述したように取得した状態データと正解データとからなる学習データを用いて機械学習を行う前に、当該学習データの前処理を行う。まず、ストレス推定装置10は、前処理として、状態データと正解データとからなるデータセットに含まれる正解データを非線形空間に写像する(ステップS3)。このとき、ストレス推定装置10は、例えば、図3に示すように、変化率が1以上の単調増加関数であり、逆関数を定義可能な関数を用いて、正解データを非線形空間に写像する。
【0033】
続いて、ストレス推定装置10は、学習データのうち、状態データである生体データから複数種類の特徴量を抽出して特徴量データを生成する。そして、ストレス推定装置10は、特徴量データ毎にそれぞれ写像した正解データを関連付けて、各特徴量データと写像した正解データとのデータセットを生成する。
【0034】
さらに、ストレス推定装置10は、状態データから抽出した特徴量データのうち、学習データとして機械学習に用いる特徴量データの種別を選択する(ステップS4)。このとき、ストレス推定装置10は、特徴量データの種別ごとに、特徴量データと正解データとの相関度合いを表す相関値を算出し、かかる相関値に基づいて特徴量データの種別を選択する。
【0035】
そして、ストレス推定装置10は、上述したように選択された特徴量データと非線形空間に写像された正解データとのデータセットを学習データとして用いて機械学習を行い、ストレス推定モデルを生成する(ステップS5)。具体的に、ストレス推定装置10は、選択された種別の特徴量データを含む全てのデータセットを学習データとして用い、特徴量データを説明変数とし、写像された正解データを目的変数として機械学習を行う。このようにして、ストレス推定装置10は、人物Uの生体データを入力として、上述したPSSスコアと同様に0-40の値からなるストレス値を非線形空間に写像した値として算出するストレス推定モデルを生成する。
【0036】
次に、図5のフローチャートを参照して、生成したストレス算出モデルを用いて、対象となる人物のストレスを推定する動作を説明する。なお、対象となる人物のストレスを推定する場面とは、人物が職場において業務を行っているなど所定の状況下にある場合を想定する。
【0037】
まず、ストレス推定装置10は、対象となる人物Uのストレスを推定するために用いる状態データを取得する。具体的に、データ取得部11は、対象となる人物Uが実際にストレスを推定する場面である職場で業務を行うなどの状況下にある場合に、当該人物Uから生体データである状態データを計測して取得する(ステップS11)。
【0038】
続いて、ストレス推定装置10は、生体データから特徴量データを抽出する(ステップS12)。このとき、ストレス推定装置10は、上述したようにモデルを生成する際に学習データにおいて選択された特徴量データの種別と同一種別の特徴量データを抽出する。
【0039】
そして、ストレス推定装置10は、ストレス推定モデルに対して抽出した特徴量データを入力することにより、その出力であるストレス値を算出する(ステップS13)。さらに、ストレス推定装置10は、算出したストレス値を線形空間に逆写像する(ステップS14)。このとき、ストレス推定装置10は、学習前に正解データを非線形空間に写像する際に用いた関数の逆関数を用いて、ストレス推定モデルで算出されたストレス値を線形空間に逆写像する。
【0040】
その後、ストレス推定装置10は、線形空間に逆写像したストレス値に基づく情報を出力する(ステップS15)。例えば、ストレス推定装置10は、ストレス値そのものやストレス値に基づくアラートなど、対象となる人物Uのストレス情報を出力する。
【0041】
以上のように、上述したストレス推定装置10によると、学習データのうちストレス値である正解データを非線形空間に写像してから学習してモデルを生成している。これにより、学習データとしてストレス値が中央値に極端に偏ったデータが収集された場合であっても、ストレス値が中央値に偏ることを抑制したモデルを生成することができる。その結果、より精度の高いストレスの推定を行うことができる。
【0042】
なお、本発明は、上述したように、人物のストレスを推定する場合に限らず、人物の肉体的及び精神的な疲労や内面的なコンディションといった体調を推定することにも適用可能である。この場合、上述した正解データを、体調を表すデータ、例えば、人物の疲労やコンディションに関する主観データに基づくスコアといったデータとすることで、上述同様に人物の体調を表す値を推定することができる。
【0043】
<実施形態2>
次に、本発明の第2の実施形態を、図6乃至図8を参照して説明する。図6乃至図7は、実施形態2における情報処理装置の構成を示すブロック図であり、図8は、情報処理装置の動作を示すフローチャートである。なお、本実施形態では、上述した実施形態で説明したストレス推定装置及びストレス推定方法の構成の概略を示している。
【0044】
まず、図6を参照して、本実施形態における情報処理装置100のハードウェア構成を説明する。情報処理装置100は、一般的な情報処理装置にて構成されており、一例として、以下のようなハードウェア構成を装備している。
・CPU(Central Processing Unit)101(演算装置)
・ROM(Read Only Memory)102(記憶装置)
・RAM(Random Access Memory)103(記憶装置)
・RAM103にロードされるプログラム群104
・プログラム群104を格納する記憶装置105
・情報処理装置外部の記憶媒体110の読み書きを行うドライブ装置106
・情報処理装置外部の通信ネットワーク111と接続する通信インタフェース107
・データの入出力を行う入出力インタフェース108
・各構成要素を接続するバス109
【0045】
そして、情報処理装置100は、プログラム群104をCPU101が取得して当該CPU101が実行することで、図7に示す変換部121と生成部122とを構築して装備することができる。なお、プログラム群104は、例えば、予め記憶装置105やROM102に格納されており、必要に応じてCPU101がRAM103にロードして実行する。また、プログラム群104は、通信ネットワーク111を介してCPU101に供給されてもよいし、予め記憶媒体110に格納されており、ドライブ装置106が該プログラムを読み出してCPU101に供給してもよい。但し、上述した変換部121と生成部122とは、かかる手段を実現させるための専用の電子回路で構築されるものであってもよい。
【0046】
なお、図6は、情報処理装置100のハードウェア構成の一例を示しており、情報処理装置のハードウェア構成は上述した場合に限定されない。例えば、情報処理装置は、ドライブ装置106を有さないなど、上述した構成の一部から構成されてもよい。
【0047】
そして、情報処理装置100は、上述したようにプログラムによって構築された変換部121と生成部122との機能により、図8のフローチャートに示す情報処理方法を実行する。
【0048】
図8に示すように、情報処理装置100は、
所定の人物の状態を表す状態データと、当該状態データが取得されたときの所定の人物の体調を表す正解データと、を含む学習データのうち、前記正解データを非線形空間に写像し(ステップS101)、
前記状態データを説明変数とし、前記写像された正解データを目的変数として学習することによって、対象人物の体調を推定するために用いる推定モデルを生成する(ステップS102)、
という処理を実行する。
【0049】
本発明は、以上のように構成されることにより、学習データのうち体調を表す正解データを非線形空間に写像してから学習して、推定モデルを生成している。これにより、学習データとして体調を表す値が中央値に極端に偏ったデータが収集された場合であっても、体調を表す値が中央値に偏ることを抑制したモデルを生成することができ、より精度の高い体調の推定を行うことができる。
【0050】
<付記>
上記実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうる。以下、本発明における情報処理方法、情報処理装置、プログラムの構成の概略を説明する。但し、本発明は、以下の構成に限定されない。
(付記1)
所定の人物の状態を表す状態データと、当該状態データが取得されたときの所定の人物の体調を表す正解データと、を含む学習データのうち、前記正解データを非線形空間に写像し、
前記状態データを説明変数とし、前記写像された正解データを目的変数として学習することによって、対象人物の体調を推定するために用いる推定モデルを生成する、
情報処理方法。
(付記2)
付記1に記載の情報処理方法であって、
前記推定モデルに、対象人物から取得した当該対象人物の状態を表す対象人物状態データを入力することにより体調を表す値を算出し、
算出した体調を表す値を線形空間に逆写像する、
情報処理方法。
(付記3)
付記1又は2に記載の情報処理方法であって、
変化率が1以上の単調増加関数を用いて前記正解データを非線形空間に写像する、
情報処理方法。
(付記4)
付記1乃至3のいずれかに記載の情報処理方法であって、
逆関数を定義可能な関数を用いて前記正解データを非線形空間に写像する、
情報処理方法。
(付記5)
付記1乃至4のいずれかに記載の情報処理方法であって、
前記状態データは、所定の人物から計測された計測データから抽出された複数の特徴量データからなり、
複数の前記特徴量データのうち、前記正解データに基づいて選択された前記特徴量データを、説明変数として学習することによって前記推定モデルを生成する、
情報処理方法。
(付記6)
付記5に記載の情報処理方法であって、
前記特徴量データの種別毎に、当該特徴量データと前記正解データとの相関度合いを算出し、算出した相関度合いに基づいて選択された前記特徴量データを説明変数として学習することによって前記推定モデルを生成する、
情報処理方法。
(付記7)
付記5又は6に記載の情報処理方法であって、
選択された前記特徴量データと同一種別である、対象人物から計測された対象人物計測データから抽出された対象人物特徴量データを、前記推定モデルに入力することにより体調を表す値を算出し、
算出した体調を表す値を線形空間に逆写像する、
情報処理方法。
(付記8)
所定の人物の状態を表す状態データと、当該状態データが取得されたときの所定の人物の体調を表す正解データと、を含む学習データのうち、前記正解データを非線形空間に写像する変換部と、
前記状態データを説明変数とし、前記写像された正解データを目的変数として学習することによって、対象人物の体調を推定するために用いる推定モデルを生成する生成部と、
を備えた情報処理装置。
(付記9)
付記8に記載の情報処理装置であって、
前記推定モデルに、対象人物から取得した当該対象人物の状態を表す対象人物状態データを入力することにより体調を表す値を算出する算出部と、
算出した体調を表す値を線形空間に逆写像する逆変換部と、
を備えた情報処理装置。
(付記10)
付記8又は9に記載の情報処理装置であって、
前記変換部は、変化率が1以上の単調増加関数を用いて前記正解データを非線形空間に写像する、
情報処理装置。
(付記11)
付記8乃至10のいずれかに記載の情報処理装置であって、
前記変換部は、逆関数を定義可能な関数を用いて前記正解データを非線形空間に写像する、
情報処理装置。
(付記12)
付記8乃至11のいずれかに記載の情報処理装置であって、
前記状態データは、所定の人物から計測された計測データから抽出された複数の特徴量データからなり、
前記生成部は、複数の前記特徴量データのうち、前記正解データに基づいて選択された前記特徴量データを、説明変数として学習することによって前記推定モデルを生成する、
情報処理装置。
(付記13)
付記12に記載の情報処理装置であって、
前記生成部は、前記特徴量データの種別毎に、当該特徴量データと前記正解データとの相関度合いを算出し、算出した相関度合いに基づいて選択された前記特徴量データを説明変数として学習することによって前記推定モデルを生成する、
情報処理装置。
(付記14)
付記12又は13に記載の情報処理装置であって、
選択された前記特徴量データと同一種別である、対象人物から計測された対象人物計測データから抽出された対象人物特徴量データを、前記推定モデルに入力することにより体調を表す値を算出する算出部と、
算出した体調を表す値を線形空間に逆写像する逆変換部と、
を備えた情報処理装置。
(付記15)
情報処理装置に、
所定の人物の状態を表す状態データと、当該状態データが取得されたときの所定の人物の体調を表す正解データと、を含む学習データのうち、前記正解データを非線形空間に写像し、
前記状態データを説明変数とし、前記写像された正解データを目的変数として学習することによって、対象人物の体調を推定するために用いる体調推定モデルを生成する、
処理を実行させるためのプログラムを記憶したコンピュータにて読み取り可能な記憶媒体。
(付記16)
付記15に記載のプログラムを記憶したコンピュータにて読み取り可能な記憶媒体であって、
前記推定モデルに、対象人物から取得した当該対象人物の状態を表す対象人物状態データを入力することにより体調を表す値を算出し、
算出した体調を表す値を線形空間に逆写像する、
処理を実行させるためのプログラムを記憶したコンピュータにて読み取り可能な記憶媒体。
【符号の説明】
【0051】
10 ストレス推定装置
11 データ取得部
12 前処理部
13 学習部
14 算出部
15 出力部
16 人物情報記憶部
17 モデル記憶部
20 入力装置
30 表示装置
100 情報処理装置
101 CPU
102 ROM
103 RAM
104 プログラム群
105 記憶装置
106 ドライブ装置
107 通信インタフェース
108 入出力インタフェース
109 バス
110 記憶媒体
111 通信ネットワーク
121 変換部
122 生成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8