(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】紙基材、紙容器及び紙容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 65/02 20060101AFI20250311BHJP
B65D 1/34 20060101ALI20250311BHJP
B65D 1/26 20060101ALI20250311BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20250311BHJP
【FI】
B65D65/02 F
B65D1/34
B65D1/26
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2024028712
(22)【出願日】2024-02-28
【審査請求日】2024-06-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 明裕
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 悟志
(72)【発明者】
【氏名】平野 大信
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-172842(JP,A)
【文献】特開2007-016380(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03819224(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/02-65/40
B65D 1/26-1/34
B32B 27/10-29/00
D21H 11/08-27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絞り成形紙容器用の紙基材であって、
該紙基材の坪量が、150~400[g/m
2]未満であり、
該紙基材の引張エネルギー吸収量(TEA)の縦横相乗平均値が、900~2000[J/m
2]であり、
該紙基材の破断伸びの縦横相乗平均値が12.0~20.0[%]であり、
該紙基材の引張強度の縦横相乗平均値が7.8~24.0[kN/m]であ
り、
該紙基材は、熱可塑性樹脂層、接着樹脂層、及び紙層がこの順に積層されており、
該紙基材を絞り成形して紙容器を形成する場合に、絞り成形で形成する開口部の角部の曲率が0.02~0.18[1/mm]となり、前記開口部の展開倍率が1.01~1.35[倍]となり、前記開口部の深さが5~60[mm]となるように絞り成形するための、紙基材。
【請求項2】
前記紙基材の前記坪量が、175[g/m
2]以上である、
請求項1に記載の紙基材。
【請求項3】
前記紙基材の厚さが、0.12~0.44[mm]である、
請求項1に記載の紙基材。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか一項に記載の紙基材を絞り成形して得られた紙容
器。
【請求項5】
底面部と、
前記底面部の周囲から立ち上がる側面部と、
前記側面部から外側に延出するフランジ部と、
を備え、
前記底面部は、表面が曲面状となるように一部が底上げされた底上げ部を有する、
請求項
4に記載の紙容器。
【請求項6】
坪量が150~400[g/m
2]未満であり、引張エネルギー吸収量(TEA)の縦横相乗平均値が、900~2000[J/m
2]であり、破断伸びの縦横相乗平均値が1
2.0~20.0[%]であり、引張強度の縦横相乗平均値が7.8~24.0[kN/m]であ
り、熱可塑性樹脂層、接着樹脂層、及び紙層がこの順に積層された絞り成形紙容器用の紙基材を準備することと、
絞り成形で形成した開口部の角部の曲率が、0.02~0.18[1/mm]となり、前記開口部の展開倍率が、1.01~1.35[倍]となり、
前記開口部の深さが5~60[mm]となるように、前記紙基材を絞り成形することと、
を含む、紙容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、紙基材、紙容器及び紙容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品容器や各種工業製品の包装材料として、成形が容易であること、大量生産できること、安価に製造できることなどから、プラスチック製容器が大量に使用されてきた。しかしながら、プラスチック製容器は、廃棄処分時の環境に対する負荷が高いという問題がある。プラスチック製容器は、埋め立て処理をすると半永久的に分解されず地中に残存する。また、プラスチック製容器は、焼却処理をすると、燃焼カロリーが高いため焼却炉を傷めやすいこと、完全燃焼しにくいこと、ポリ塩化ビニルを使用した容器は、腐食性の強い塩化水素ガスを発生する虞があるなどの問題がある。
【0003】
そこで、近年、環境問題、リサイクル問題、省資源を考慮し、プラスチック製容器の代わりに紙を使用した容器の検討がなされている。例えば、紙容器としては、パルプモウルド容器が知られている。しかしながら、パルプモウルド製容器の製造には時間もかかるため生産性に問題がある。
【0004】
また、例えば、特許文献1には、絞り成形によって成形容器を成形するための成形加工原紙が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
絞り加工によって得られる紙容器には、成形加工時に一部が破れや割れが生じ、生産性が低下する虞がある。特許文献1には、金型再現性が高く、且つ、紙容器の生産性が向上する成形加工原紙については開示されていない。
本開示は、金型再現性が高く、且つ、紙容器の生産性を向上可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本開示は、以下の<1>~<11>に関する
<1>
絞り成形紙容器用の紙基材であって、
該紙基材の坪量が、150~400[g/m2]未満であり、
該紙基材の引張エネルギー吸収量(TEA)の縦横相乗平均値が、900~2000[J/m2]である、紙基材。
<2>
前記紙基材の前記坪量が、175[g/m2]以上である、
<1>に記載の紙基材。
<3>
前記紙基材の破断伸びの縦横相乗平均値が、12.0[%]以上である、
<1>又は<2>に記載の紙基材。
<4>
前記紙基材の厚さが、0.12~0.44[mm]である、
<1>~<3>のいずれか一項に記載の紙基材。
<5>
前記紙基材は、熱可塑性樹脂層、接着樹脂層、及び紙層がこの順に積層されている、
<1>~<4>のいずれか一項に記載の紙基材。
<6>
<1>~<5>のいずれか一項に記載の紙基材を絞り成形して得られた紙容器。
<7>
絞り成形で形成した開口部の角部の曲率が、0.02~0.18[1/mm]である、
<6>に記載の紙容器。
<8>
絞り成形で形成した開口部の展開倍率が、1.01~1.35[倍]である、
<6>又は<7>に記載の紙容器。
<9>
絞り成形で形成した開口部の深さが、5~60[mm]である、
<6>~<8>のいずれか一項に記載の紙容器。
<10>
底面部と、
前記底面部の周囲から立ち上がる側面部と、
前記側面部から外側に延出するフランジ部と、
を備え、
前記底面部は、表面が曲面状となるように一部が底上げされた底上げ部を有する、
<6>~<9>のいずれか一項に記載の紙容器。
<11>
坪量が150~400[g/m2]未満であり、引張エネルギー吸収量(TEA)の縦横相乗平均値が、900~2000[J/m2]である絞り成形紙容器用の紙基材を準備することと、
前記紙基材を絞り成形することと、
を含む、紙容器の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、金型再現性が高く、且つ、紙容器の生産性を向上可能な技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1(A)は、実施形態に係る紙容器の平面図であり、
図1(B)は、実施形態に係る紙容器を短手方向に沿って切断した場合の断面図であり、
図1(C)は、実施形態に係る紙容器を長手方向に沿って切断した場合の断面図である。
【
図2】
図2(A)は、変形例に係る紙容器の平面図であり、
図2(B)は、変形例に係る紙容器を短手方向に沿って切断した場合の断面図であり、
図2(C)は、変形例に係る紙容器を長手方向に沿って切断した場合の断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る紙基材の断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る紙容器の製造方法に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、数値範囲を表す「X以上Y以下」や「X~Y」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。また、「X~Y未満」の記載は、X以上Y未満を表し、端点である下限を含み、端点である上限を含まない数値範囲を意味する。数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
【0011】
また本明細書において、縦方向とは紙層における抄紙方向(MD)であり、繊維が配向する方向と同じである。また、横方向とは抄紙方向に対して垂直方向(CD)である。
【0012】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本発明はこれらの実施形態の構成に限定されるものではない。
【0013】
[紙容器]
図1(A)~(C)は、実施形態に係る紙容器を示す図である。
図1(A)は、紙容器1を上側から見た平面図であり、
図1(B)は、紙容器1を
図1(A)のAA線で切断した場合の断面図である。
図1(C)は、紙容器1を
図1(A)のBB線で切断した場合の断面図である。本実施形態に係る紙容器1は、1枚の紙基材を絞り成形(深絞り成形)することによって得られる。紙容器1は、1枚の紙基材を成形して製造されるため、全体が一体的に成形されている。また、
図1(A)に示すように、紙容器1は、平面視した場合に、長手方向と当該長手方向に直交する短手方向とを有する長方形状を備えている。紙容器1は、例えば、チルド食品などの水分を含んだ食品用の容器として用いられる。
【0014】
また、
図1(A)~(C)には、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸が示されている。X軸方向およびY軸方向は、水平方向における一方向に相当し、Z軸方向は、水平方向に直交する鉛直方向を示している。以下では、方向X、Y、Z(もしくは水平方向、鉛直方向)を用いながら説明する。紙容器1は、X軸方向に短手方向を備え、Y軸方向に長手方向を備え、Z軸方向に深絞り成形で形成される深さを備えている。
【0015】
図1(A)~(C)に示すように、紙容器1は、食品などが載置される底面部2と、底面部2の周囲から立ち上がる側面部3と、を備える。底面部2と、側面部3とで、紙容器1の内容積部に対応する開口部4を構成する。底面部2は、長方形の4つの角部が面取りされた形状である紙容器角部5を有している。側面部3は、底面部2から立ち上がることで、底面部2と供に食品等を収容する空間を形成する。側面部3の外周である周縁部6は、長方形の4つの角部が面取りされた形状である開口部角部7を有している。
【0016】
開口部角部7の角度は、側面部3の周縁部6にて鉛直方向に延在する仮想面と、側面部3とがなす角度θに相当する。開口部4の深さは、底面部2と、側面部の周縁部6を含む開口面との距離Hに相当する。
【0017】
また、紙容器1は、側面部3の周縁部6から外側に延出するフランジ部8を備える。フランジ部8は、側面部3の全周を囲むように設けられている。このため、フランジ部8は、開口部4の外周側に設けられることになる。フランジ部8の最外周が紙容器1の平面視における外周を構成している。フランジ部8は、底面部2との平坦部分と略平行に延在する平坦面を有しており、その最外周には底面部2側に下がった段差が形成されている。
【0018】
紙容器1は、底面部2、側面部3、フランジ部8が一体成形されているので各部が連設された構造を備える。
【0019】
紙容器1は、紙基材を絞り成形して得られる。パルプを含む紙基材を絞り成形して得られる紙容器1は、従来のプラスチック容器に比べ、環境負荷が低減される。次に、実施形態に係る紙基材について説明する。
【0020】
<紙基材>
紙基材の坪量は、150~400[g/m2]未満である。
紙基材の坪量とは、紙基材を構成する全ての層の単位面積当たりの質量である。例えば、紙基材が紙層、接着樹脂層、及び熱可塑性樹脂層を有する場合、該紙層だけでなく、該
接着樹脂層、及び該熱可塑性樹脂層の質量も、紙基材の坪量に含まれる。
【0021】
紙基材の坪量を高くすると、絞り成形による割れが発生しやすくなり、且つ紙容器の金型再現性が低くなるが、逆に坪量を低くすると、絞り成形による破れが発生しやすくなる。そのため、紙容器1の坪量を上記の範囲内に制御することで、絞り成形による破れや割れが発生しづらくなり、紙容器1の生産性が向上する。また、紙容器1の坪量が150~400[g/m2]未満であることにより、金型再現性を向上することができる。
【0022】
紙基材の坪量は、破れ発生を抑える観点から、好ましくは175[g/m2]以上であり、より好ましくは200[g/m2]以上である。また、紙基材の坪量は、金型再現性を向上させ、かつ割れ発生をより抑える観点からは、好ましくは375[g/m2]以下であり、より好ましくは350[g/m2]以下である。
したがって、紙基材の坪量は、好ましくは175~375[g/m2]であり、より好ましくは200~350[g/m2]である。紙基材の坪量が175~375[g/m2]であることにより、絞り成形による破れや割れをより抑制しやすくなり紙容器1の生産性がより向上する。また、紙基材の坪量が175~375[g/m2]であることにより、金型再現性をより向上することができる。
【0023】
紙基材の縦方向の引張エネルギー吸収量(TEA)と、横方向のTEAとの相乗平均値、すなわち紙基材のTEAの縦横相乗平均値(以下、単に「紙基材のTEA」ともいう)は、900~2000[J/m
2]である。
TEAは、JIS P 8113:2006に準拠して測定される。TEAとは、紙基材を引っ張り、破断するのに要する単位面積当たりのエネルギー量であり、紙基材の伸び及び強度に関連する指標である。紙容器1における絞り成形により伸長していない部分(例えば、
図1に示すフランジ部8)を用いて測定することにより、紙容器1の成形に用いた紙基材のTEAを測定することもできる。
【0024】
紙基材のTEAを高くすると、絞り成形による割れが発生しやすくなるが、逆にTEAを低くすると、絞り成形による破れが発生しやすくなる。また、TEAを低くすると、金型再現性が低くなる。そのため、紙基材のTEAを900~2000[J/m2]に制御することで、絞り成形による破れや割れが発生しづらくなり、紙容器1の生産性が向上する。また、紙基材のTEAを900~2000[J/m2]に制御することで、金型再現性が高い紙容器を得ることができる。
紙基材のTEAを高くするには、紙基材の坪量を高くする、紙層に樹脂層を付与する、紙層を構成するパルプに高濃度叩解を施す、紙層の抄紙時にクルパック処理を行う、などの方法が挙げられる。紙基材のTEAを低くするには、紙基材の坪量を低くする、紙基材として単紙を用いる、などの方法が挙げられる。紙基材のTEAを900~2000[J/m2]に制御する観点から、クルパック処理前後の速度差を、例えば、-10~-35[%]とすることが有効である。
【0025】
紙基材のTEAは、好ましくは1000~1900[J/m2]であり、より好ましくは1200~1700[J/m2]である。紙基材のTEAが1000~1900[J/m2]または1200~1700[J/m2]であることにより、絞り成形による破れや割れをより抑制しやすくなり、紙容器1の生産性がより向上する。また、紙基材のTEAが1000~1900[J/m2]であることにより、金型再現性をより向上することができる。
【0026】
紙基材の縦方向のTEAは、好ましくは1300~2700[J/m2]であり、より好ましくは1400~2600[J/m2]である。
紙基材の横方向のTEAは、好ましくは700~1500[J/m2]であり、より好
ましくは800~1400[J/m2]である。
【0027】
紙基材の縦方向の破断伸びと、横方向の破断伸びとの相乗平均値、すなわち紙基材の破断伸びの縦横相乗平均値(以下、単に「紙基材の破断伸び」ともいう)は、好ましくは12.0[%]以上であり、より好ましくは15.0[%]以上である。紙基材の破断伸びの上限は特に限定されないが、製造上の観点から通常20.0[%]以下である。
破断伸びは、JIS P 8113:2006に準拠して測定される。紙基材の破断伸びは、例えば、紙容器1における絞り成形により伸長していない部分(例えば、
図1に示すフランジ部8)を用いて測定することにより、紙容器1の成形に用いた紙基材の破断伸びを測定することもできる。
【0028】
紙基材の破断伸びが12.0~20.0[%]であることにより、紙容器1の成形性をより向上させることができ、絞り成形による破れや割れをより抑制しやすくなり、紙容器1の生産性がより向上する。
紙基材の破断伸びを高くするには、紙層に樹脂層を付与する、紙層を構成するパルプに対して高濃度叩解を施す、紙層の抄紙時にクルパック処理を行う、などの方法が挙げられる。
【0029】
紙基材の縦方向の破断伸びは、好ましくは14.0[%]以上であり、より好ましくは17.5[%]以上であり、上限は特に限定されないが通常23.0[%]以下である。
紙基材の横方向の破断伸びは、好ましくは10.0[%]以上であり、より好ましくは13.0[%]以上であり、上限は特に限定されないが通常17.0[%]以下である。
【0030】
紙基材の縦方向の引張強度と、横方向の引張強度との相乗平均値、すなわち紙基材の引張強度の縦横相乗平均値(以下、単に「紙基材の引張強度」ともいう)は、好ましくは7.8[kN/m]以上であり、より好ましくは8.1[kN/m]以上である。紙基材の引張強度の上限は特に限定されないが、製造上の観点から通常24.0[kN/m]以下である。
引張強度は、JIS P 8113:2006に準拠して測定される。紙基材の引張強度は、例えば、紙容器1における絞り成形により伸長していない部分(例えば、フランジ部8)を用いて測定することにより、紙容器1の成形に用いた紙基材の引張強度を測定することもできる。
【0031】
紙基材の引張強度が7.8~24.0[kN/m]であることにより、絞り成形による破れや割れをより抑制しやすくなり、紙容器1の生産性が向上する。
紙基材の引張強度を高くするには、紙力剤を増添する、紙基材の坪量を高くする、紙層に樹脂層を付与する、紙層を構成するパルプのカナディアンスタンダードフリーネス(CSF)を下げる、紙力増強剤を増添する、などの方法が挙げられる。
【0032】
紙基材の縦方向の引張強度は、好ましくは9.5[kN/m]以上であり、より好ましくは10.5[kN/m]以上であり、上限は特に限定されないが通常34.0[kN/m]以下である。
紙基材の横方向の引張強度は、好ましくは6.0[kN/m]以上であり、より好ましくは6.3[kN/m]以上であり、上限は特に限定されないが通常17.0[kN/m]以下である。
【0033】
紙基材の厚さは、好ましくは0.17[mm]以上であり、より好ましくは0.19[mm]以上である。紙基材の厚さは、好ましくは0.44[mm]以下であり、より好ましくは0.41[mm]以下である。紙基材の厚さとは、紙基材を構成する全ての層の厚さである。例えば、紙基材が紙層、接着樹脂層、及び熱可塑性樹脂層を有する場合、該紙
層だけでなく、該接着樹脂層、及び該熱可塑性樹脂層の厚さも、紙基材の厚さに含まれる。
【0034】
紙基材の厚さが0.17~0.44[mm]であることにより、絞り成形による破れや割れをより抑制しやすくなり、紙容器1の生産性が向上する。また、紙基材の厚さが0.17~0.44[mm]であることにより、紙容器1の金型再現性をより向上することができる。
【0035】
紙基材の密度は、特に限定されないが、通常0.75~0.95[g/cm3]であり、好ましくは0.80~0.90[g/cm3]である。密度は、坪量及び厚さから算出する。
【0036】
図1に示す紙容器1の開口部4の展開倍率は、1.01~1.35[倍]である。
紙容器1の開口部4は、紙容器の底面部2と、側面部3とで構成される、絞り成形で形成される部分であり、紙容器1の内容積部に対応する部分を指す。開口部4の展開倍率とは、絞り成形によって開口部4が延ばされ、どれだけ表面積が増加したかを表す指標である。
【0037】
紙容器1の開口部4の展開倍率が高くなると、紙容器1の破れが発生しやすくなる。そのため、開口部4の展開倍率を1.35[倍]以下とすることで、紙容器1の破れが発生しづらくなり、紙容器1の生産性が向上する。開口部4の展開倍率は、製造上の観点から、1.01[倍]以上である。
紙容器の開口部4の展開倍率を低くするには、後述する紙容器の開口部4の深さを浅くする、後述する開口部角部7の角度を大きくする、後述する紙容器角部5の曲率を小さくする、などの方法が挙げられる。
【0038】
紙容器の開口部4の展開倍率は、好ましくは1.01~1.30[倍]であり、より好ましくは1.01~1.20[倍]である。紙容器の開口部4の展開倍率が1.01~1.30[倍]であることにより、紙容器1の破れをより抑制しやすくなり、紙容器1の生産性がより向上する。
【0039】
紙容器1の開口部角部7の曲率は、0.02~0.18[1/mm]である。
紙容器1の開口部角部7とは、紙容器の側面部の周縁部6が備える角部である。該周縁部は長方形の形状であり、4つの開口部角部7を備える。角部の曲率とは、該角部に接する円の半径の逆数である。曲率が大きいと、該角部が角張っていることを指し、曲率が小さいと、該角部が緩やかであることを指す。
【0040】
紙容器1の開口部角部7の曲率が大きくなると、紙容器1の破れが発生しやすくなる。そのため、開口部角部7の曲率を0.18[1/mm]以下とすることで、紙容器1の破れが発生しづらくなり、紙容器1の生産性が向上する。開口部角部7の曲率は、製造上の観点から、0.02[1/mm]以上である。
紙容器の開口部角部7の曲率を低くするには、絞り成形の条件を適切に選択するなどの方法が挙げられ、例えば、成形に使用する金型の形状を適切に選択するなどの方法が挙げられる。
【0041】
紙容器の開口部角部7の曲率は、好ましくは0.02~0.15[1/mm]であり、より好ましくは0.02~0.10[1/mm]である。紙容器の開口部角部7の曲率が0.02~0.15[1/mm]であることにより、紙容器1の破れをより抑制しやすくなり、紙容器1の生産性がより向上する。
【0042】
紙容器の開口部4の深さは、好ましくは60[mm]以下であり、より好ましくは53[mm]以下であり、さらに好ましくは46[mm]以下であり、よりさらに好ましくは40[mm]以下である。紙容器の開口部4の深さの下限は特に限定されないが、製造上の観点から通常5[mm]以上である。なお、紙容器の開口部4の深さとは、紙容器の底面部2と、側面部の周縁部6を含む開口面との距離Hに相当する。
【0043】
紙容器の開口部4の深さが5~60[mm]であることにより、金型再現性が良化し、紙容器1の破れをより抑制しやすくなり、紙容器1の生産性がより向上する。
紙容器の開口部4の深さを浅くするには、絞り成形の条件を適切に選択するなどの方法が挙げられ、例えば、成形に使用する金型の形状を適切に選択するなどの方法が挙げられる。
【0044】
開口部角部7の角度は、好ましくは15.00[°]以上であり、より好ましくは20.00[°]以上であり、さらに好ましくは25.00[°]以上であり、よりさらに好ましくは30.00[°]以上である。開口部角部7の角度の上限は特に限定されないが、製造上の観点から通常85.00[°]以下である。なお、開口部角部7の角度とは、側面部の周縁部6にて鉛直方向に延在する仮想面と、側面部3とがなす角度θに相当する。
【0045】
開口部角部7の角度が15.00~85.00[°]であることにより、紙容器1の破れをより抑制しやすくなり、紙容器1の生産性がより向上する。
開口部角部7の角度を高くするには、絞り成形の条件を適切に選択するなどの方法が挙げられ、例えば、成形に使用する金型の形状を適切に選択するなどの方法が挙げられる。
【0046】
紙容器角部5の曲率は、好ましくは0.10[1/mm]以下であり、より好ましくは0.08[1/mm]以下である。紙容器角部5の曲率の下限は特に限定されないが、製造上の観点から0.03[1/mm]以上である。なお、紙容器角部5とは、底面部2が備える角部である。底面部2は長方形の形状であり、4つの紙容器角部5を備える。
【0047】
紙容器角部5の曲率が0.03~0.10[1/mm]であることにより、紙容器1の破れをより抑制しやすくなり、紙容器1の生産性がより向上する。
紙容器角部5の曲率を低くするには、絞り成形の条件を適切に選択するなどの方法が挙げられ、例えば、成形に使用する金型の形状を適切に選択するなどの方法が挙げられる。
【0048】
次に、実施形態の変形例に係る紙容器について説明する。
図2(A)~(C)は、変形例に係る紙容器を示す図である。
図2(A)は、紙容器1を上側から見た平面図であり、
図2(B)は、紙容器1を
図2(A)のCC線で切断した場合の断面図である。
図2(C)は、紙容器1を
図2(A)のDD線で切断した場合の断面図である。
【0049】
本変形例に係る紙容器1の底面部2は、表面が曲面状となるように一部が底上げされた底上げ部2Aを有している。底上げ部2Aは、底面部2の中心とその中心が一致するように底面部2全体と同様の角部が面取りされた長方形状を有している。
図2(B)、(C)に示すように、底上げ部2Aは、表面が鉛直上方に凸状となる曲面状に形成されている。なお、紙容器1の深さは、底上げ部2A以外の底面部2と、側面部3の周縁部6との鉛直距離Hに相当する。
【0050】
底上げ部2Aの表面は、2本の直線が交差して形成される角部のない滑らかな曲面状である。また、底上げ部2Aの外側の底面部2も同様に滑らかな曲面状である。同様に、側面部3の表面は、滑らかな曲面状である。紙容器1は、底面部2や側面部3を滑らかな曲面状に形成することで、皺や亀裂を無くし、美麗性を向上することができる。また、紙容
器1は、底面部2や側面部3を滑らかな曲面状に形成することで、内容物の油分や水分を底上げ部2Aの周囲に流して溜めることができる。例えば、食品からドリップが出た場合に、紙容器1は、ドリップを底上げ部2Aの周囲に流して溜めることができる。また、紙容器1は、底上げ部2Aを設けることで、使用者が手で底面部2を持ち上げた際に手と底面部2の接触面積を減らすことができ、これによって、内容物が熱い場合でも手に熱を伝わりにくくすることができる。このように、紙容器1は、利便性が向上している。
【0051】
また、紙容器1は、底上げ部2Aを備えることで、長手方向の断面二次モーメントが大きくなり、長手方向の曲げに対する強度が向上する。紙容器1は、強度を向上することができる。
【0052】
また、
図2(B)に示すように、底上げ部2Aを含む底面部2を短辺(X軸方向)の延在方向で切断した場合の底上げ部2Aの断面は、鉛直上方に凸となる円弧状である。紙容器1は、底上げ部2Aを鉛直上方に凸となる円弧状とすることで、落下時に衝撃が分散しやすくなる。
【0053】
また、底面部2、側面部3およびフランジ部8は、Y軸方向に延在する長辺と、X軸方向に直交する短辺とをそれぞれ有する。本変形例では、底面部2は、底上げ部2Aを除いた部分が最低部を形成し、その最低部がX-Y平面と並行となるように形成される。このため、
図2に示すように、側面部3の長辺側から紙容器1を見た場合に、底面部2の最低部がY軸に沿って延在する直線状である。紙容器1は、最低部を水平面状に載置した場合に最低部が水平面上に均一に当接するためぐらつかず、安定する。なお、
図2に示すように、開口部角部7の角度は、側面部3の周縁部6にて鉛直方向に延在する仮想面と、側面部3とがなす角度θに相当する。
【0054】
<紙層>
絞り成形紙容器用の紙基材は、紙層を有する。紙層は、後述する単層抄きで得られた単層紙であってもよく、後述する多層抄きで得られた多層紙であってもよい。
【0055】
紙基材は、1層のみの紙層を有する単紙を用いて得てもよいが、2層以上の紙層を貼合した合紙を用いて得ることが好ましい。合紙は該2層以上の紙層の間に、さらに接着樹脂層を含む。すなわち、例えば2層の紙層を貼合した合紙を紙基材とし、該紙基材は、紙層、接着樹脂層、及び紙層がこの順に積層されてなる。例えば、
図3に示すように、紙基材10が熱可塑性樹脂層11、接着樹脂層12、及び紙層13がこの順に積層されてなる合紙であることによって、絞り成形による破れや割れをより抑制しやすくなり、紙容器1の生産性が向上する。
【0056】
紙層は、一般的に用いられている紙であれば特に限定されず、植物由来のパルプを主成分として含む紙であることが好ましく、木材パルプを主成分とする紙であることがより好ましい。また、紙層に含まれる原料パルプは、木材パルプが好ましく、クラフトパルプが好ましい。クラフトパルプは、原料の違いから、広葉樹クラフトパルプ(LKP)及び針葉樹クラフトパルプ(NKP)が挙げられる。また、処理状態の違いから、晒クラフトパルプ(BKP)、未晒クラフトパルプ(UKP)及び酸素漂白クラフトパルプ(OKP)が挙げられ、印刷適正の観点から、晒クラフトパルプ(BKP)が好ましい。また、古紙パルプを用いてもよい。
【0057】
これらの中でも、原料パルプとしては、好ましくは広葉樹クラフトパルプ(LKP)、針葉樹クラフトパルプ(NKP)、古紙パルプからなる群から選択される少なくとも一であり、より好ましくは針葉樹クラフトパルプ(NKP)である。
【0058】
紙層を構成するパルプの平均繊維幅は、好ましくは28.0[μm]以下であり、より好ましくは27.0[μm]以下であり、さらに好ましくは26.0[μm]以下であり、さらにより好ましくは21.0[μm]以下である。下限は特に制限されないが、好ましくは12.0[μm]以上であり、より好ましくは15.0[μm]以上である。
【0059】
紙層を構成するパルプの長さ加重平均繊維長は、好ましくは0.5~2.5[mm]であり、より好ましくは0.6~2.4[mm]であり、さらに好ましくは0.6~1.2[mm]である。
【0060】
紙層の坪量は、好ましくは80~340[g/m2]であり、より好ましくは90~320[g/m2]であり、さらに好ましくは100~300[g/m2]である。
なお、紙層の坪量とは、紙容器1が2層以上の紙層を貼合した合紙を用いて得られる場合、紙容器1に含まれる全ての紙層の坪量の合計値である。
【0061】
紙層の厚さは、好ましくは0.12~0.44[mm]であり、より好ましくは0.13~0.42[mm]であり、さらに好ましくは0.14~0.40[mm]である。
なお、紙層の厚さとは、紙容器1が2層以上の紙層を貼合した合紙を用いて得られる場合、紙容器1に含まれる全ての紙層の厚さの合計値である。
【0062】
紙層を構成するパルプのカナディアンスタンダードフリーネス(CSF)は、特に制限されないが、好ましくは400~750[mL]であり、より好ましくは500~700[mL]である。
CSFは、JIS-P8220に準拠して標準離解機にて試料を離解処理した後、JIS-P8121に準拠してカナダ標準濾水度試験機にて測定した濾水度の値である。
【0063】
紙層の調製の際には、内添剤を添加してもよい。内添剤としては、サイズ剤、填料、紙力増強剤、高分子凝集剤(歩留り向上剤)、pH調整剤、濾水性向上剤、耐水化剤、柔軟剤、帯電防止剤、消泡剤、スライムコントロール剤、染料、顔料等が挙げられる。
【0064】
紙力増強剤としては、乾燥紙力増強剤及び湿潤紙力増強剤があり、乾燥紙力増強剤としてはカチオン化澱粉、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられ、湿潤紙力増強剤としてはポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂などが挙げられる。
【0065】
紙層の抄紙においては、公知の湿式抄紙機を適宜選択して使用することができる。抄紙機としては、長網抄紙機、ギャップフォーマー型抄紙機、円網式抄紙機、短網式抄紙機等が挙げられる。これらの抄紙機にクルパック処理を実施可能なクルパック装置を設け、クルパック処理を行ってもよい。
【0066】
紙層の抄紙においては、例えば、紙料をワイヤー等に流延させ、脱水して湿紙を得て、必要に応じて複数の湿紙を重ね、この単層又は多層の湿紙をプレスし、乾燥させる方法が挙げられる。このとき、複数の湿紙を重ねない場合は単層抄きの紙層が得られ、複数の湿紙を重ねる場合は多層抄きの紙層が得られる。多層抄きの紙層を得る場合は、抄紙工程中、層間接着を強化する澱粉、ポリアクリルアミドなどを層間に塗布し、抄き合わせてもよい。
【0067】
澱粉を塗布する場合、澱粉の量(例えば、乾燥後の塗工量)としては、0.1~5.0[g/m2]であることが好ましく、0.5~2.0[g/m2]であることがより好ましい。抄紙機によって形成された紙層は、たとえば、フェルトにて搬送し、ドライヤーで乾燥させることが好ましい。ドライヤー乾燥前にプレドライヤーとして、多段式シリンダ
ードライヤーを使用してもよい。
【0068】
また、上記のようにして得られた紙層に、カレンダーによる表面処理を施して厚さやプロファイルの均一化を図ってもよい。カレンダー処理としては公知のカレンダー処理機を適宜選択して使用することができる。
【0069】
クルパック装置としては、公知のものを用いることができる。例えば、ニップロール及びエンドレスの厚い弾性ゴム製ブランケットを備えたクルパック装置が挙げられる。上記の通り、クルパック処理においては、ニップロールとブランケットとの間に紙匹を搬入し、ニップロールとブランケットにより紙匹を圧縮する際に、あらかじめ伸長させておいたブランケットを収縮させることで紙匹を収縮させてクレープを付与する。クルパック装置は、通常、抄紙機のドライヤー装置の一部に設けられ、クレープ化させたのち乾燥し、固定する。以上の様にして紙層を得ることができる。
【0070】
紙層の王研式平滑度(JIS P 8155:2010)は特に制限されないが、5秒以上であることが好ましく、10~1000[秒]がより好ましい。また、紙層の75[°]光沢度も特に制限されないが、5[%]以上であることが好ましく、10~70[%]がより好ましい。
【0071】
<接着樹脂層>
紙基材が2層以上の紙層を貼合した合紙である場合は、該2層以上の紙層の間に接着樹脂層が含まれる。また、紙基材が紙層だけでなく熱可塑性樹脂層も有する場合は、該紙層及び該熱可塑性樹脂層の間にも接着樹脂層を含んでいてよい。
【0072】
接着樹脂層は、熱可塑性樹脂を含む層であってもよい。熱可塑性樹脂を用いることで、紙層上に加熱溶融した樹脂をコーティングし、もう一方の紙層を貼合することにより、容易に積層体である合紙を得ることができる。
【0073】
熱可塑性樹脂としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネート等のポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリブテン、ポリブタジエン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;ポリカーボネート;ポリウレタン;ポリアミド;ポリアクリロニトリル;ポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0074】
これらの中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネート等のポリエステルが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネートがより好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレンがさらに好ましく、ポリプロピレンがよりさらに好ましい。
また、上記の材料の他、樹脂として、バイオマス樹脂や生分解性樹脂を用いてもよい。これらの樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0075】
接着樹脂層は、ドライラミネート又はウェットラミネートに適する樹脂系の接着剤を用いてもよい。接着剤として特に限定されないが、水系、溶剤系、UV系などの種類を用いることができ、その中でも、水系接着剤が好ましい。すなわち、接着層は水系接着剤により形成された水系接着剤層であることが好ましい。また、水系接着剤の中でも酢酸ビニル系接着剤、アクリル系接着剤、ポリウレタン系接着剤及びイソシアネート系接着剤からなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0076】
接着樹脂層の1層あたりの厚さは、好ましくは5~100[μm]であり、より好ましくは10~50[μm]である。
【0077】
<熱可塑性樹脂層>
防水性及び防汚性の向上の観点から、絞り成形紙容器用の紙基材は、少なくとも一方の面に熱可塑性樹脂層を有してもよい。紙基材は、一方の面に熱可塑性樹脂層を有していてもよいし、両方の面に熱可塑性樹脂層を有していてもよい。
熱可塑性樹脂層に使用される熱可塑性樹脂としては特に限定されず、公知の熱可塑性樹脂の中から適宜選択すればよく、接着樹脂層に含まれる熱可塑性樹脂として上述した熱可塑性樹脂の中から適宜選択してもよい。
【0078】
また、熱可塑性樹脂層の1層あたりの厚さは、好ましくは8~150[μm]であり、より好ましくは15~80[μm]である。
【0079】
<紙容器の製造方法>
紙容器1を製造する方法は特に限定されず、公知の方法を採用することができる。まず、以下に紙容器1を構成する紙基材の製造方法の一例を示す。
【0080】
紙基材が、2層以上の紙層を貼合した合紙である場合は、紙層の片面に、例えば溶融積層によって接着樹脂層を塗工し、この塗工面にさらに紙層を貼合させ、合紙を得ることができる。
合紙は、前述の通り、2層以上の紙層を含むものであるが、3層以上の紙層を含むものでもよい。合紙が3層以上の紙層を含む場合、それらの紙層同士を接着する複数の接着樹脂層は、それぞれ異なってもよいし、同じであってもよい。
【0081】
紙基材が、紙層だけでなく熱可塑性樹脂層も有する場合は、紙層の片面に、例えば溶融積層によって接着樹脂層を塗工し、この塗工面に熱可塑性樹脂層を貼合させ、熱可塑性樹脂層を有する紙基材を得ることができる。熱可塑性樹脂層は、溶融押出コーティングによって塗工してもよい。
【0082】
得られた紙基材を、収容物品の大きさや形状、輸送、展示への適合性を考慮し、適当な寸法に裁断してもよい。裁断は、同一形状の合紙を効率的に得る観点から、打ち抜き加工によることが好ましい。
打ち抜き加工は、高速自動打抜機、平盤打抜機、輪転打抜機を用いて行うことが好ましく、高速自動打抜機によることがより好ましい。高速自動打抜機、平盤打抜機によれば、四角形、角丸四角形、楕円形等の形状の紙基材を容易に効率的に得ることができる。
【0083】
以下に、上述の紙基材から得られる紙容器1の製造方法の一例を示す。
紙容器の製造方法としては、絞り成形紙容器用の紙基材を容器ブランクシートに打ち抜き、雄型と雌型よりなるプレス型に該ブランクシートを挟み、加熱、加圧して成形する、いわゆるプレス成形という製造方法が例示される。また、加熱下に、雄型又は雌型のみを使用して、型とブランクシートとの間を真空にして、ブランクシートを型に密着させて成形する、真空成形、加熱下に雄型又は雌型を使用して、一方の型と他方の圧空装置の間にブランクシートを挟み、圧力装置からの圧力よりブランクシートを型に密着させて成形する、圧空成形が例示される。
【0084】
この時、紙基材は、予め調湿し、水分量を調節してもよい。なお、紙基材の水分量の調節方法として、成形直前に紙層に水分を供与する方法や、紙層の抄造時において、ドライヤーを出た後に加湿し、水分が維持される状態で輸送・保存する方法等が挙げられる。
【0085】
次に、紙基材から紙容器1を製造する工程について説明する。
図4は、紙容器の製造方法に関するフローチャートである。本実施形態に係る紙容器の製造方法では、絞り成形紙容器用の紙基材を準備する(ステップS101)。ステップS101の次のステップS102では、紙基材を絞り成形する(ステップS102)。これにより、紙容器1が得られる。絞り成形をプレス加工で行う場合には、一対のプレス用金型により行う。一対のプレス用金型とは、凸状で紙容器1の内容積部に対応する形状の凸型と、凹状で紙容器1の外形に対応する形状の凹型である。一対のプレス用金型は、前後又は上下方向に少なくとも片方の型が動くことによりブランクシートをプレスすることができる。
【0086】
絞り加工を真空成形で行う場合には、雌型又は雄型のいずれか一方の金型だけを用いてブランクシートを金型に合わせた形状に成形する。好ましくは加熱下に、ブランクシートと型との隙間を減圧し、ブランクシートを型に密着させて成形し、必要に応じて冷却後空気を吹き込んで紙容器1を取り出す。
【0087】
絞り加工を圧空成形で行う場合には、雄型又は雌型のいずれか一方の金型と、圧空装置(圧空ボックスともいう)を使用して金型に合わせた形状に成形する。型と圧空装置の間にブランクシートを挟み、好ましくは加熱下に、圧力装置からの圧力によりブランクシートを型に密着させて成形し、必要に応じて冷却後、紙容器1を取り出す。圧力装置からの圧力は、0.01~0.30[bar]であることが好ましく、0.05~0.20[bar]であることがより好ましい。
【0088】
ブランクシートを加熱する方法としては、高周波加熱、熱風加熱、赤外線加熱などの方法が挙げられる。ブランクシートは、絞り成形前に事前に加温しておいてもよい。ブランクシートは、40~80[℃]に加温しておくことが好ましく、50~70[℃]に加温しておくことがより好ましい。
【0089】
また、金型全体を加熱しておいてもよい。この場合、金型を加熱する手段を必要とする。金型加熱手段としては該金型に電熱加熱装置を設け加熱することが一般的であるが、金型に高周波発振機を接続して、高周波を印加して乾燥する手段もある。また、電熱加熱と高周波加熱を併用することもできる。金型は、90~130[℃]に加熱することが好ましく、100~120[℃]に加熱することがより好ましい。
【0090】
絞り成形を完了した紙容器1は、金型から取り出し、空冷してもよいが、寸法安定性を高めるためには、高温の紙容器1を冷却用の金型に一定時間だけ固定冷却することも好ましい。
【0091】
金型の材質としては、アルミニウム、アルミニウム系合金、黄銅、鉄、ステンレス鋼、セラミックなど公知のものが使用できる。
【0092】
金型を動作させる方法としては、油圧プレス、エアーシリンダー、カム機構のいずれの方法も可能である。本発明で上型と下型のクリアランスを制御する具体的な方式としては、油圧あるいはエアー圧による場合、成形品厚さに応じて、コンピューター制御により圧力を制御してもよいし、ストッパーの位置を制御してもよい。カム機構による場合、予め設計されたカム形状と型の下降速度により制御することが可能である。
プレス成形時のプレス時間については、成形性、作業性の点から1秒間以上30秒間以下が好ましい。
【0093】
以下、各物性の測定方法について記載する。
なお、紙基材の物性は、絞り成形前の紙基材の物性を測定する。紙容器から測定する場
合は、絞り成形後の紙容器の一部を切り出して測定してもよい。絞り成形後の紙容器の一部を切り出して測定する場合、未加工部分である紙容器の平坦な部分からサンプルを切り出せばよく、紙容器1がフランジ部8を有する場合は、該フランジ部8から切り出してもよい。
【0094】
<紙基材の坪量>
紙基材の坪量は、JIS P 8124:2011に準拠して、JIS P 8111:1998に規定された調湿環境下にて調湿後に測定する。
具体的には、所定の大きさに切り出した紙基材の質量を測定し、坪量を算出する。
【0095】
<紙基材のTEA、破断伸び、及び引張強度>
紙基材のTEA、破断伸び、及び引張強度は、JIS P 8113:2006に準拠して、JIS P 8111:1998に規定された調湿環境下にて調湿後に測定する。
具体的には、幅15mm、長さ150mmに切り出した紙基材を準備する。引張試験機(型式RTC-1210A、株式会社エー・アンド・デイ製)にて、チャック間距離が100mmとなるようサンプルを装着し、10mm/minの速度で引張試験を行い、MD(縦方向)、CD(横方向)それぞれのTEA、破断伸び、及び引張強度を測定する。縦方向の値と、横方向との値と、をそれぞれ10点測定し、これらの算術平均値を採用し、さらに縦方向の算術平均値と、横方向の算術平均値との相乗平均値を算出する。
【0096】
<紙基材の厚さ>
紙基材の厚さは、JIS P 8118:2014に準拠して、JIS P 8111:1998に規定された調湿環境下にて調湿後に測定する。
具体的には、紙厚計(型番:No.132 デジタル測厚機、株式会社東洋精機製作所製)を用いてサンプルを10点測定し、算術平均値を採用する。また、紙基材断面の走査型電子顕微鏡(SEM)の観察像から、紙基材や、紙基材を構成する紙層、接着樹脂層、及び熱可塑性樹脂層それぞれの厚さを測定できる。
【0097】
<紙基材の密度>
紙基材の密度は、上述した測定方法により得られた坪量及び厚さから算出する。
【0098】
<紙容器の開口部の展開倍率>
紙容器の開口部の展開倍率は、以下の式から算出する。
開口部の展開倍率=展開後の表面積/展開前の表面積
展開前の表面積及び展開後の表面積とは、それぞれ、3Dスキャナ型三次元測定機(VL-700シリーズ、株式会社キーエンス製)にて、展開前後(絞り成形前後)の紙容器の立体データを取り込むことで測定できる。
なお、展開倍率は絞り成形箇所がどれだけ引き延ばされているかを表す指標であり、紙容器1を開口部側から確認することで成形箇所を把握することができ、展開前の表面積も導き出せるので、絞り成形後の紙容器から展開倍率を測定できる。
【0099】
<紙容器の開口部角部の曲率、開口部の深さ、開口部角部の角度、及び紙容器角部の曲率>
紙容器の開口部角部の曲率、開口部の深さ、開口部角部の角度、及び紙容器角部の曲率は、3Dスキャナ型三次元測定機(VL-700シリーズ、株式会社キーエンス製)にて、紙容器の立体データを取り込むことで測定できる。
【0100】
[実施例]
以下、実施例を用いて発明を具体的に説明するが、発明の範囲が実施例の記載により限定されることはない。また、特にことわりがない限り、「部」は、「質量部」を表す。
【0101】
[紙層1~8の製造]
針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)を、離解フリーネス(CSF:カナダ標準濾水度(Canadian standard freeness))が700mLとなるまでダブルディスクリファイナーを用いて高濃度叩解を実施し、パルプ固形分濃度が0.5質量%であるパルプスラリーを調製した。
このパルプスラリー100質量部に対し、合成サイズ剤(SPS400、荒川化学工業株式会社製)0.2質量部、硫酸バンド1.0質量部、紙力増強剤としてポリアクリルアミド(CK-311、ミサワセラミック社製)0.2質量部、及び高分子凝集剤として非イオン性アクリルアミド(パーコール47、アライドコロイド社製)0.0025質量部を添加し、紙料を調製した。この紙料を用いて、伸縮装置(クルパック製)を備えた湿式抄紙機(ベルフォームIII型、三菱重工業株式会社製)にて、クルパック処理前後の速度
差を-20.0m/分に設定し、坪量が150g/m2になるよう抄紙して、紙層1を得た。
【0102】
坪量が50g/m2となるように抄紙したこと以外は、紙層1と同様にして紙層2を得た。
【0103】
離解フリーネスが600mLとなるまで高濃度叩解を実施したこと以外は、紙層1と同様にして紙層3を得た。
【0104】
坪量が250g/m2となるように抄紙したこと以外は、紙層1と同様にして紙層4を得た。
【0105】
坪量が200g/m2となるように抄紙したこと以外は、紙層1と同様にして紙層5を得た。
【0106】
坪量が100g/m2となるように抄紙したこと以外は、紙層1と同様にして紙層6を得た。
【0107】
離解フリーネスが600mLとなるまで叩解を実施したことと、坪量が350g/m2となるように、長網ヤンキー抄紙機を用いて抄紙したこと以外は、紙層1と同様にして紙層7を得た。
【0108】
坪量が75g/m2となるように抄紙したこと以外は、紙層1と同様にして紙層8を得た。
【0109】
[合紙1~4、及び単紙1~4の製造]
PP接着樹脂を単軸押出機(D2025、東洋精機製)へ投入し、紙層1の上に樹脂の厚みが25μmになるよう330℃で溶融積層させつつ、接着樹脂層上に、厚さ40μmのPPフィルムを貼り合わせ、速やかに20℃に調温した冷却ロールで挟持しながら急冷して、熱可塑性樹脂層、接着樹脂層、及び紙層1がこの順に積層された単紙を得た。
さらに上記と同様に、単軸押出機を用いて、得られた単紙の紙層1の上に樹脂の厚みが25μmになるようPP接着樹脂を330℃で溶融積層させつつ、接着樹脂層上に、紙層1を貼り合わせ、速やかに20℃に調温した冷却ロールで挟持しながら急冷して、熱可塑性樹脂層、接着樹脂層、紙層1、接着樹脂層、及び紙層1がこの順に積層された合紙1を得た。
【0110】
紙層1ではなく紙層2を用いたこと以外は、合紙1と同様にして合紙2を得た。
【0111】
PE樹脂(LC522、日本ポリエチレン株式会社製)を単軸押出機へ投入し、紙層3の上に樹脂の厚みが30μmになるよう320℃で溶融積層させつつ、接着樹脂層上に、紙層3を貼り合わせ、速やかに20℃に調温した冷却ロールで挟持しながら急冷して、紙層3、接着樹脂層、及び紙層3がこの順に積層された合紙を得た。
さらに上記と同様に、単軸押出機を用いて、得られた合紙の紙層3の上に樹脂の厚みが18μmになるようPE樹脂を320℃で溶融積層させた後、速やかに20℃に調温した冷却ロールで挟持しながら急冷して、熱可塑性樹脂層、紙層3、接着樹脂層、及び紙層3がこの順に積層された合紙3を得た。
【0112】
紙層1ではなく紙層4を用いたこと以外は、合紙1と同様にして合紙4を得た。
【0113】
紙層1ではなく紙層5を用いて、熱可塑性樹脂層、接着樹脂層、及び紙層5がこの順に積層された単紙を得たこと以外は、合紙1と同様にして単紙1を得た。
【0114】
紙層5ではなく紙層6を用いたこと以外は、単紙1と同様にして単紙2を得た。
【0115】
PE樹脂を単軸押出機へ投入し、紙層7の上に樹脂の厚みが18μmになるよう320℃で溶融積層させた後、速やかに20℃に調温した冷却ロールで挟持しながら急冷して、熱可塑性樹脂層、及び紙層7がこの順に積層された単紙3を得た。
【0116】
紙層5ではなく紙層8を用いたこと以外は、単紙1と同様にして単紙4を得た。
【0117】
合紙1~4、及び単紙1~4の構成を表1に示し、各層の厚さを表2に示す。
【0118】
【0119】
【0120】
[実施例1~8、及び比較例1~6]
紙基材として表4に示される合紙又は単紙を使用して絞り成形を行った。紙基材をヒーターで事前に60℃に加温し、120℃に加熱した下型まで紙基材を送り、上型を圧空圧0.50bar、成形時間5秒で押し込んで成形して、紙容器を得た。
【0121】
なお、実施例1~4、及び比較例1~4は、紙容器の開口部の展開倍率、開口部角部の曲率、開口部の深さ、開口部角部の角度、及び紙容器角部の曲率が、同じ値(表4に記載の値)となるように、同じ形状の金型を使用した。
実施例5~8、及び比較例5~6は、紙容器の開口部の展開倍率、開口部角部の曲率、開口部の深さ、開口部角部の角度、及び紙容器角部の曲率が、表4に記載の値となるように、実施例1~4、及び比較例1~4とは異なる形状の金型をそれぞれ使用した。
【0122】
<成形性の評価>
絞り成形後の紙容器を目視で確認し、破れ及び割れの有無について以下の基準で評価した。結果を表3に示す。結果を表3に示す。ここで、「破れ」とは、成型時に紙全体に作用する引張応力に耐えられず、厚み方向全体にわたって破断した状態のことをいう。また、「割れ」とは、成型時の曲げ変形により紙の最表層側(容器外側)に作用する引張応力に耐えられず、最表層付近のみが破断した状態(ひび割れ状態)のことをいう。
(評価基準)
A:紙容器を3個製造し、3個全てに破れも割れも見られなかった。
B:紙容器を3個製造し、1個以上に破れ及び/又は割れが見られた。
【0123】
<金型再現性の評価>
紙製絞り容器を3個以上製造し、破れも割れも見られなかった紙製絞り容器を3個製造した。3Dスキャナ型三次元測定機(VL-700シリーズ、株式会社キーエンス製)にて、紙製絞り容器の立体データを取り込み、3個の紙製絞り容器の深さの算術平均値を算出した。紙製絞り容器の深さの平均値と、絞り成形に用いた金型の深さとの差を、以下の基準で評価した。結果を表4に示す。
(評価基準)
A:紙製絞り容器の深さの平均値と、金型の深さとの差が1mm未満。
B:紙製絞り容器の深さの平均値と、金型の深さとの差が1mm以上3mm未満。
C:紙製絞り容器の深さの平均値と、金型の深さとの差が3mm以上。
【0124】
【0125】
実施例及び比較例の結果から、本開示の紙容器は、絞り成形による破れや割れが発生し
づらく、紙容器の生産性が高いことが分かる。また、本開示の紙容器は、金型再現性が高いことが分かる。
【0126】
[実施例1´~8´:底上げ部を有する紙容器]
紙基材として表5に示される合紙又は単紙を使用して絞り成形を行った。紙基材をヒーターで事前に60℃に加温し、120℃に加熱した下型まで紙基材を送り、上型を圧空圧0.50bar、成形時間5秒で押し込んで成形して、紙容器を得た。
【0127】
実施例1´~4´は、紙容器の開口部の展開倍率、開口部角部の曲率、開口部の深さ、開口部角部の角度、及び紙容器角部の曲率が、同じ値(表5に記載の値)となるように、同じ形状の金型を使用した。
実施例5´~8´は、紙容器の開口部の展開倍率、開口部角部の曲率、開口部の深さ、開口部角部の角度、及び紙容器角部の曲率が、表5に記載の値となるように、実施例1´~4´とは異なる形状の金型をそれぞれ使用した。
【0128】
なお実施例1´~8´は、いずれも得られる紙容器が、底面部と側面部とフランジ部とを備え、該底面部は、表面が曲面状となるように一部が底上げされた底上げ部を有し、且つ、底面部や側面部が滑らかな曲面状となるような、金型をそれぞれ使用した。
実施例1´~8´で得られた紙容器において、一部が底上げされた底上げ部を有する底面部と、フランジ部とを備え、且つ、底面部や側面部が滑らかな曲面状である以外の特徴は、それぞれ、実施例1~8で得られた紙容器と同様である。
【0129】
【0130】
実施例1´~8´で得られた紙容器は、実施例1~8で得られた紙容器同様、絞り成形による破れや割れが発生しづらく、紙容器の生産性が高かった。また、実施例1~8で得られた紙容器同様、金型再現性も高かった。
【0131】
加えて、実施例1´~8´で得られた紙容器は、実施例1~8で得られた紙容器と比較して、美麗性が高く、内容物の油分や水分を底上げ部の周囲に流して溜めることができ、内容物が熱い場合でも手に熱が伝わりにくい形状であった。また、長手方向の曲げに対する強度が向上しており、且つ落下時の衝撃が分散しやすかった。
【符号の説明】
【0132】
1 紙容器
2 底面部
3 側面部
4 開口部
5 紙容器角部
6 側面部の周縁部
7 開口部角部
8 フランジ部
10 紙基材
11 熱可塑性樹脂層
12 接着樹脂層
13 紙層
【要約】
【課題】本開示は、金型再現性が高く、且つ、紙容器の生産性を向上可能な技術を提供することを目的とする。
【解決手段】絞り成形紙容器用の紙基材であって、該紙基材の坪量が、150~400[g/m
2]未満であり、該紙基材の引張エネルギー吸収量(TEA)の縦横相乗平均値が、900~2000[J/m
2]である、紙基材。
【選択図】
図1