(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】圧延製品の品質不良分析支援システム
(51)【国際特許分類】
B21B 38/00 20060101AFI20250311BHJP
B21B 1/00 20060101ALI20250311BHJP
【FI】
B21B38/00 F
B21B38/00 G
B21B1/00 A
(21)【出願番号】P 2024513058
(86)(22)【出願日】2023-03-30
(86)【国際出願番号】 JP2023013237
(87)【国際公開番号】W WO2024201912
(87)【国際公開日】2024-10-03
【審査請求日】2024-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長尾 英紀
【審査官】▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-192915(JP,A)
【文献】特開2021-023941(JP,A)
【文献】特開2014-179060(JP,A)
【文献】特開2010-115692(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101482744(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 38/00 - 38/12
B21B 1/00 - 1/46
B21C 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延プラントで製造された鋼板の品質が不良と判定された際に、品質不良の分析作業を支援する圧延製品の品質不良分析支援システムにおいて、
過去に製造された鋼板の製品IDに関連付けて、圧延時間単位の鋼板の板厚及び温度を含む鋼板時間単位情報と、前記圧延プラントに設置される圧延設備の圧延荷重を含む圧延設備時間単位情報と、前記圧延プラントのオペレータによる手動操作の時間単位情報とを、時間軸実績データベースに記録する第1記録装置と、
前記鋼板時間単位情報と前記圧延設備時間単位情報と前記手動操作の時間単位情報とを、
長さ単位の情報に夫々変換する変換装置と、
前記製品IDに関連付けて、前記変換装置により変換された各情報を製品単位データベースに記録する第2記録装置と、
前記製品IDに関連付けて、前記圧延プラントの圧延計画と、前記圧延設備のエラー発生記録とを、前記製品単位データベースに記録する第3記録装置と、
前記製品IDに関連付けて、前記圧延設備の機械系メンテナンス情報を機械単位データベースに記録する第4記録装置と、
前記製品IDに関連付けて、前記圧延設備の電気系メンテナンス情報を電気単位データベースに記録する第5記録装置と、
不良品と判定された前記鋼板の前記製品IDを検索キーとして、不良品に関する情報を前記時間軸実績データベース、前記製品単位データベース、前記機械単位データベース及び前記電気単位データベースから抽出する検索装置と、
を備える圧延製品の品質不良分析支援システム。
【請求項2】
前記検索装置は、前記製品IDを検索キーとして、前記不良品に関する情報と共に、良品に関する情報を前記時間軸実績データベース、前記製品単位データベース、前記機械単位データベース及び前記電気単位データベースから抽出し、
前記検索装置により抽出された前記不良品に関する情報と前記良品に関する情報との差分を検出する差分検出装置をさらに備える請求項1に記載の圧延製品の品質不良分析支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧延製品の品質不良分析支援システムに関し、より詳しくは、圧延プラントで製造された鋼板が品質不良と判定された際に、品質不良の分析作業を支援するものに関する。
【背景技術】
【0002】
熱間圧延プラントのような圧延プラントでは、鋼板の厚み及び幅、幅方向の平坦度、長手方向の平坦度、圧延時の温度などの物理量を圧延ラインに配置された各種センサにより計測し、計測値を実績データとして保存している。計算機は、例えば、実績データが予め定められた目標範囲内であるか否かを判別し、実績データが目標範囲から外れた場合に、鋼板の品質が不良であると判定する。鋼板の品質の良否を判定するための目標範囲や判定式を含めた判定方法は、従来から種々提案されている。
【0003】
下記特許文献1には、製品品質分析支援システムが開示されている。このシステムでは、各種センサにより計測された物理量を実績データとし、実績データから鋼板の所定長さごとのサンプリングデータを作成し、サンプリングデータを先端部、中央部及び尾端部に分割し、分割したサンプリングデータに基づき各部の品質の良否を判定している。品質不良と判定された場合、各部のサンプリングデータの波形パターンがIDと共にデータベースに登録される。登録後、鋼板の品質が不良であると判定された場合、登録済みの波形パターンの中から類似する波形パターンを特定し、特定した波形パターンに対応するIDを決定し、決定したIDに対応する対策情報を提示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1が対策情報を提示する製品品質分析支援システムは、圧延ラインのオペレータに対して対策情報を提示することを目的とする。圧延ラインのオペレータは、提示された対策情報に基づき、圧延機の手動介入(手動操作)を行うことで、鋼板の品質を維持することができる。
【0006】
ところで、例えば、手動介入が頻繁に行われる場合、上位計算機で作成される操業計画である圧延計画を変更する必要がある。しかしながら、上記特許文献1の製品品質分析支援システムは、圧延計画の設計者に対して情報を提示するものではないため、設計者が圧延計画の変更に着手するまでに多大な時間を要していた。即ち、圧延計画の変更が必要である場合でも、その必要性がオペレータの手動介入によって隠れてしまうため(表面化しないため)、結果として、長時間に亘って不安定な状態で鋼板が製造されてしまう。また、メンテナンスオペレータによるメンテナンスに不備があった場合も同様に、その不備が手動介入により隠れてしまうため、長時間に亘って不安定な状態で鋼板が製造され得る。
【0007】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたものである。本開示は、圧延計画やメンテナンスに不備がある場合でも、不安定な状態で鋼板が製造される時間を短縮することを可能とする圧延製品の品質不良分析支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の観点は、圧延プラントで製造された鋼板の品質が不良と判定された際に、品質不良の分析作業を支援する圧延製品の品質不良分析支援システムに関連する。品質不良分析支援システムは、第1記録装置と、変換装置と、第2記録装置と、第3記録装置と、第4記録装置と、第5記録装置と、検索装置と、を備える。第1記録装置は、過去に製造された鋼板の製品IDに関連付けて、圧延時間単位の鋼板の板厚及び温度を含む鋼板時間単位情報と、圧延プラントに設置される圧延設備の圧延荷重を含む圧延設備時間単位情報と、圧延プラントのオペレータによる手動操作の時間単位情報とを、時間軸実績データベースに記録する。変換装置は、鋼板時間単位情報と圧延設備時間単位情報と手動操作の時間単位情報とを、長さ単位の情報に夫々変換する。第2記録装置は、製品IDに関連付けて、変換装置により変換された各情報を製品単位データベースに記録する。第3記録装置は、圧延プラントの圧延計画と、圧延設備のエラー発生記録とを、製品単位データベースに記録する。第4記録装置は、製品IDに関連付けて、圧延設備の機械系メンテナンス情報を機械単位データベースに記録する。第5記録装置は、製品IDに関連付けて、圧延設備の電気系メンテナンス情報を電気単位データベースに記録する。検索装置は、不良品と判定された鋼板の製品IDを検索キーとして、不良品に関する情報を時間軸実績データベース、製品単位データベース、機械単位データベース及び電気単位データベースから抽出する。
【0009】
第2の観点は、第1の観点に加えて、次の特徴を更に有する。検索装置は、製品IDを検索キーとして、不良品に関する情報と共に、良品に関する情報を時間軸実績データベース、製品単位データベース、機械単位データベース及び前記電気単位データベースから抽出する。品質不良分析支援システムは、検索装置により抽出された不良品に関する情報と良品に関する情報との差分を検出する差分検出装置をさらに備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、製品IDに関連付けて、鋼板の板厚及び温度だけでなく、圧延プラントの圧延計画や圧延設備のメンテナンス情報もデータベースに記録することで、製品IDを検索キーとして不良品に関するこれらの圧延計画やメンテナンス情報も抽出できる。これにより、抽出結果を受けた圧延計画の設計者は、早急に圧延計画を変更することができる。また、抽出結果を受けたメンテナンスオペレータは、早急にメンテンナンスを行って不備を解消することができる。このように手動操作により隠れていた圧延計画やメンテナンスの不備を表面化させることができるため、不安定な状態で鋼板が製造される時間を短縮することを可能とする圧延製品の品質不良分析支援システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】実施の形態1による圧延製品の品質不良分析支援システムを示すブロック図である。
【
図3】
図2に示す圧延製品の品質不良分析支援システムの動作例を示す図である。
【
図4】圧延製品の品質不良分析支援システムのハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図5】実施の形態2による圧延製品の品質不良分析支援システムを示すブロック図である。
【
図6】
図5に示す圧延製品の品質不良分析支援システムの動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、熱間圧延プラント(以下「圧延プラント」という)で製造される圧延製品である鋼板の品質が不良と判定された際に、品質不良の分析作業を支援する場合を例に、本発明の実施の形態による圧延製品の品質不良分析支援システムについて説明する。尚、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0013】
実施の形態1.
[圧延プラント]
図1は、圧延プラント1の一例を示す図である。圧延プラント1には、主な圧延設備として、加熱炉2と、粗圧延機3と、クロップシャー4と、熱間圧延機としての仕上圧延機5と、冷却装置6と、巻取機7が設置されている。圧延プラント1には、圧延設備の間で鋼板Prを搬送するための搬送テーブル(図示省略)が設置されている。これらの圧延設備は、電動機やアクチュエータの電気系により駆動される。
【0014】
加熱炉2は、圧延前の鋼板(スラブ)Prを所定温度(例えば、1200℃)に加熱するように構成されている。粗圧延機3は、少なくとも1基(通常1基~3基)の圧延スタンドを有し、加熱炉2で加熱された鋼板(スラブ)Prを順方向(圧延ラインの上流から下流)、逆方向(圧延ラインの下流から上流)で複数パス圧延する。クロップシャー4は、後述する形状検出器81で測定された形状に基づいて、上下の刃により鋼板Prの先端部または尾端部に存する形状不良部分を切断する。仕上圧延機5は、鋼板Prの圧延方向に並設される例えば7基の圧延スタンドF1~F7を備えるタンデム圧延機である。各圧延スタンドF1~F7は、上下2本のワークロール51と、上下2本のバックアップロール52と、ロール回転用の電動機53を夫々備える。バックアップロール52には圧下装置54が設けられ、圧下装置54により上下のワークロール51間のギャップを調整可能に構成されている。各圧延スタンドF1~F7の圧延荷重は、圧延荷重センサ55により計測される。冷却装置6は、冷却バンクにより鋼板Prに注水することで、鋼板Prを冷却する。冷却された鋼板Prは巻取機7でコイル状に巻き取られる。
【0015】
圧延プラント1の要所には計測器としての各種センサが設置されている。圧延プラント1の要所とは、例えば、加熱炉2の出側、粗圧延機3の出側、仕上圧延機5の出側、及び巻取機7の入側などである。各種センサは、仕上圧延機5の圧延スタンドF1~F7の間にも設けられ得る。各種センサは、粗圧延機3出側で鋼板Prの形状を測定可能な形状検出器81と、仕上圧延機5の入側で鋼板Prの表面温度を計測する温度計82と、仕上圧延機5の出側で鋼板Prの速度Vaを計測する速度検出器83と、仕上圧延機5の出側で鋼板Prの板厚及び板幅を計測する板厚・板幅計84と、巻取機7の入側で鋼板Prの表面温度を計測する温度計85と、上記圧延荷重センサ55を含む。各種センサは、鋼板Prと各圧延設備の状態とを逐次的に計測している。
【0016】
圧延プラント1は、階層構造を有する計算機を用いた制御系により運転(操業)されている。計算機は、ネットワークを介して互いに接続された、レベル1のプロセス制御計算機11と、レベル2の上位計算機12とを含む。プロセス制御計算機11及び上位計算機12は、ネットワークを介して後述する圧延製品の品質不良分析支援システムに接続されている。プロセス制御計算機11は、PLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)等の制御用コントローラを有する。プロセス制御計算機11には、ネットワークを介して、圧延プラント1のオペレータによる手動操作が実行される操作画面としてのインターフェース画面13が接続されている。圧延計画の設計者により上位計算機12に圧延計画が入力されると、上位計算機12からプロセス制御計算機11に圧延計画が送られる。上位計算機12からプロセス制御計算機11には、圧延計画に加えて、圧延前の被圧延材Mであるスラブの厚さ・幅・長さ・鋼種等のスラブ情報や、圧延後の被圧延材Mであるコイルの目標板厚・目標板幅・目標温度等のコイル目標情報が入力される。プロセス制御計算機11は、上位計算機12からの入力を受けて、一連の圧延プロセスにおける、制御対象の設定計算・制御を実行する。
【0017】
[圧延製品の品質不良分析支援システム]
図2は、実施の形態1による圧延製品の品質不良分析支援システム20を示すブロック図である。品質不良分析支援システム20は、圧延プラント1で製造された鋼板Prの品質が不良と判定された場合に適用されるが、他の圧延プラントにも適用可能である。
【0018】
品質不良分析支援システム20は、5つの記録装置(登録装置)21~25と、変換装置26と、を備える。なお、記録装置21~25を一体化した単一の記録装置で構成することもできる。
【0019】
第1記録装置21は、過去に製造された鋼板Prの製品IDに関連付けて、プロセス制御計算機11から入力される鋼板時間単位情報と圧延設備時間単位情報と手動操作の時間単位情報とを、時間軸実績データベース(DB)31に記録する。鋼板時間単位情報は、例えば、圧延途中の圧延時間単位の鋼板Prの板厚、板幅、温度及びそれらの波形等を含む。圧延設備時間単位情報は、圧延プラント1に設置される圧延設備の圧延途中の情報であり、仕上圧延機5の各スタンドF1~F7の圧延荷重、加熱炉2の温度及びそれらの波形等を含む。手動操作の時間単位情報は、圧延プラント1のオペレータが操作画面13上で実行するボタン操作やレバー操作のような手動操作に関する情報である。
【0020】
時間軸実績データベース31に記録された各時間単位情報は、プロセス制御計算機11から変換装置26にも入力される。変換装置26は、鋼板時間単位情報、圧延設備時間単位情報及び手動操作の時間単位情報を、鋼板Prの圧延方向の長さ単位の情報(以下「鋼板長さ単位情報」、「圧延設備長さ単位情報」及び「手動操作の長さ単位情報」という)に夫々変換する。時間単位から長さ単位への変換方法としては、公知の方法を利用できるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0021】
第2記録装置22は、製品IDに関連付けて、変換装置26により変換された鋼板長さ単位情報、圧延設備長さ単位情報及び手動操作の長さ単位情報を製品単位データベース32に記録する。
【0022】
第3記録装置23は、製品IDに関連付けて、上位計算機12から入力される圧延プラント1の圧延計画と、圧延設備のエラー発生記録とを、製品単位データベース32に記録する。圧延計画は、製品サイズ、鋼種、圧延スケジュール、通板時間、使用したスラブの情報等を含む。圧延設備のエラー発生記録は、鋼板Prの製造途中に発生した圧下装置54のリミット抵触、製造途中に発生したアラームの種別及び場所、並びに、対処(操作)方法を含む。
【0023】
第4記録装置24は、製品IDに関連付けて、圧延設備の機械系メンテナンス情報を機械単位データベース33に記録する。機械系メンテナンス情報は、メンテナンス、調整などの手入れの日時及び内容を含む。
【0024】
第5記録装置25は、製品IDに関連付けて、圧延設備の電気系メンテナンス情報を電気単位データベース34に記録する。電気系メンテナンス情報は、メンテナンス、補修、キャリブレーション、調整などの手入れの日時及び内容を含む。
【0025】
検索装置27には、不良品と判定された鋼板Prの製品IDが自動入力または手入力される。検索装置27は、入力された製品IDを検索キーとして、不良品に関する情報を時間軸実績データベース31、製品単位データベース32、機械単位データベース33及び電気単位データベース34から抽出する。検索装置27は、各データベース31~34から抽出した情報を出力する。出力方法としては、図示省略する表示装置に表示する方法だけでなく、レポート形式での出力を含む。表示装置に表示する場合、例えば、上位計算機12のモニタ(図示省略)に表示することで、圧延計画の設計者に対して表示する。これと共に、操作画面13に表示することで、手動操作を行うオペレータに対して表示することができる。
【0026】
次に、上記品質不良分析支援システム20の動作について説明する。
図3は、品質不良分析支援システム20の動作の一例を示す図である。
【0027】
品質不良分析支援システム20の検索装置27に不良が現出した製品の製品IDが入力されると、検索装置27は、入力された製品IDを検索キーとして、時間軸実績データベース31に問合せし、各時間単位情報を取得する(ステップS1)。
【0028】
検索装置27は、上記ステップS1と並行して、製品IDを検索キーとして、製品単位データベース32に問合せし、各長さ単位情報を取得する(ステップS2)。このステップS2では、各長さ単位情報と共に、圧延計画及び圧延設備のエラー発生記録を取得する。
【0029】
検索装置27は、上記ステップS1,S2と並行して、製品IDを検索キーとして、機械単位データベース33及び電気単位データベース34に問合せし、機械系メンテンナンス情報及び電気系メンテナンス情報を取得する(ステップS3,S4)。
【0030】
検索装置27は、上記ステップS1~S4で取得した情報を圧延計画の設計者に表示する(ステップS5)。
【0031】
図4は、品質不良分析支援システム20のハードウェア構成の一例を示す図である。品質不良分析支援システム20の上述した各機能は、
図4に示す処理回路により実現することができる。この処理回路20は、専用ハードウェア20aであってもよい。この処理回路は、プロセッサ20b及びメモリ20cを備えていてもよい。この処理回路は、一部が専用ハードウェア20aとして形成され、更にプロセッサ20b及びメモリ20cを備えていてもよい。
図4の例は、処理回路20の一部が専用ハードウェア20aとして形成されるとともに、処理回路20がプロセッサ20b及びメモリ20cをも備えている。処理回路20が、少なくとも1つの専用ハードウェア20aであってもよい。この場合、処理回路20は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又はこれらを組み合わせたものが該当する。処理回路20が、少なくとも1つのプロセッサ20b及び少なくとも1つのメモリ20cを備えてもよい。この場合、品質不良分析支援システム20の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェア及びファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ20cに格納される。プロセッサ20bは、メモリ20cに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各記録装置21~25、変換装置26及び検索装置27、並びに、後述する実施の形態2の差分検出装置28の各機能を実現する。プロセッサ20bは、CPU(Central Processing Unit)、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSPとも呼ばれる。メモリ20cは、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリー、EPROM、EEPROM等の、不揮発性又は揮発性の半導体メモリ等が該当する。このように、処理回路20は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組み合わせによって、品質不良分析支援システム20の各機能を実現することができる。
【0032】
以上説明したように、本実施の形態によれば、製品IDに関連付けて、鋼板の板厚及び温度のような時間単位情報及び長さ単位情報だけでなく、圧延プラント1の圧延計画や圧延設備のメンテナンス情報もデータベース31~34に記録することで、製品IDを検索キーとして不良品に関するこれらの圧延計画やメンテナンス情報も抽出できる。これにより、抽出結果の表示を受けた圧延計画の設計者は、圧延計画を早急に変更することができる。また、抽出結果の表示を受けた圧延計画の設計者は、メンテナンスオペレータに通知し、メンテンナンスを早急に実行して不備を解消することができる。このように従来はオペレータの手動操作により隠れていた圧延計画やメンテナンスの不備を表面化させることができるため、不安定な状態で鋼板Prが製造される時間を短縮することを可能とする圧延製品の品質不良分析支援システム20を提供することができる。
【0033】
実施の形態2.
次に、
図5及び
図6を参照して、本発明の実施の形態2について説明するが、上述した実施の形態1との相違点を中心に説明し、同一部分または相当部分は同一符号を付し説明を省略する。
【0034】
図5は、実施の形態2による圧延製品の品質不良分析支援システムを示すブロック図である。
図5に示す品質不良分析支援システム20では、各記録装置21~25が、不良品の情報だけでなく、良品の情報を各データベース31~34に夫々記録する。即ち、各データベース31~34には、不良品と良品の両方の情報が記録される。検索装置27は、製品IDを検索キーとして、不良品の情報だけでなく、良品の情報を各データベース31~34から抽出することができる。ここで、良品の情報は、不良品の情報と比較して膨大であるため、良品の情報はリスト化し、良品リストの中から必要な良品の情報を選択可能に構成することで、不要な良品の情報をフィルタリングすることが好ましい。これにより、必要な良品の情報を絞り込むことができる。
【0035】
品質不良分析支援システム20は、差分検出装置28を更に備える。差分検出装置28は、検索装置27から入力された不良品の情報と良品の情報との差分を検出する。差分検出装置28は、検出した差分を出力する。この出力方法として、検索装置27からの出力方法と同様の方法を利用することができる。なお、
図5に示す例では、単一の差分検出装置28で構成しているが、複数に分割して構成することもできる。
【0036】
次に、上記品質不良分析支援システム20の動作について説明する。
図6は、
図5に示す圧延製品の品質不良分析支援システムの動作の一例を示す図である。
【0037】
上記実施の形態1と同様に検索装置27に不良が現出した製品の製品IDが入力されると、検索装置27は、入力された製品IDを検索キーとして、時間軸実績データベース31に問合せし、各時間単位情報を取得する(ステップS11)。検索装置27は、上記ステップS11と並行して、製品IDを検索キーとして、製品単位データベース32に問合せし、各長さ単位情報を取得する(ステップS12)。このステップS12では、各長さ単位情報と共に、圧延計画及び圧延設備のエラー発生記録を取得する。検索装置27は、上記ステップS11,S12と並行して、製品IDを検索キーとして、機械単位データベース33及び電気単位データベース34に問合せし、機械系メンテンナンス情報及び電気系メンテナンス情報を夫々取得する(ステップS13,S14)。
【0038】
これらのステップS11~S14では、不良品の各情報と良品の各情報の両方が取得される。良品の各情報を取得するのに際しては、良品の各情報のリストから必要な良品情報を選択することで、不要な良品情報をフィルタリングすることができる。
【0039】
ステップS11~S14で取得した不良品と良品の各情報は、差分検出装置28に入力される。差分検出装置28は、情報毎に、不良品の情報と、良品の情報との差分を検出し、検出した差分を圧延計画の設計者に表示する(ステップS15)。なお、ステップS15において、検索装置27が、上記ステップS11~S14で取得した不良品の情報を圧延計画の設計者に表示してもよい。
【0040】
以上説明したように、本実施の形態によれば、差分検出装置28により不良品の情報と良品の情報との差分を検出し圧延計画の設計者に表示する構成を採用したため、圧延計画の設計者に対して圧延計画の変更の必要性を検討するのに有用な情報を提示することができる。
【0041】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。上述した実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数にこの発明が限定されるものではない。また、上述した実施の形態において説明する構造等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、この発明に必ずしも必須のものではない。
【0042】
また、上記実施の形態では、良品の情報をフィルタリングしているが、フィルタリングすることなく全ての良品の情報を取得し、不良品の発生頻度を算出する不良発生頻度算出装置を更に備えるように構成してもよい。これにより、圧延計画の設計者に対してさらに有用な情報を提示することができる。
【符号の説明】
【0043】
1…圧延プラント、20…圧延製品の品質不良分析支援システム、21…第1記録装置、22…第2記録装置、23…第3記録装置、24…第4記録装置、25…第5記録装置、26…変換装置、27…検索装置、28…差分検出装置、31…時間軸実績データベース、32…製品単位データベース、33…機械単位データベース、34…電気単位データベース