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7648012エレベーターにおける紛失物の回収支援システムおよび回収支援方法
<図1>
  • -エレベーターにおける紛失物の回収支援システムおよび回収支援方法 図1
  • -エレベーターにおける紛失物の回収支援システムおよび回収支援方法 図2
  • -エレベーターにおける紛失物の回収支援システムおよび回収支援方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】エレベーターにおける紛失物の回収支援システムおよび回収支援方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20250311BHJP
   B66B 11/02 20060101ALI20250311BHJP
   B66B 3/02 20060101ALI20250311BHJP
【FI】
B66B5/00 G
B66B11/02 C
B66B3/02 P
B66B5/00 D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2024541358
(86)(22)【出願日】2022-08-18
(86)【国際出願番号】 JP2022031266
(87)【国際公開番号】W WO2024038563
(87)【国際公開日】2024-02-22
【審査請求日】2024-12-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 誠一
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-029312(JP,A)
【文献】国際公開第2020/059075(WO,A1)
【文献】特開2019-202867(JP,A)
【文献】特開2019-182610(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108033329(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00 - 5/28
B66B 3/00 - 3/02
B66B 11/00 - 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路を上下方向に走行するかごの外側に取り付けられ、前記昇降路内にある紛失物に取り付けられている発信機が発信する無線信号を受信する受信機と、
前記受信機が前記発信機から受信する無線信号に基づいて前記紛失物が前記昇降路内にあることを検知する検知部と、
前記受信機が前記発信機からの無線信号を受信するときの前記かごの前記昇降路における上下方向の位置を表す位置情報を取得する取得部と、
前記紛失物が前記昇降路内にあることを前記検知部が検知するときに、前記取得部が取得する前記かごの位置情報に基づいて前記昇降路における前記紛失物の上下方向の位置を判定する判定部と、
前記判定部が判定した前記紛失物の位置を報知する報知部と、
を備える、エレベーターにおける紛失物の回収支援システム。
【請求項2】
前記検知部は、前記受信機が前記発信機から無線信号を複数回受信するときに、前記紛失物が前記昇降路内にあることを検知する、
請求項1に記載のエレベーターにおける紛失物の回収支援システム。
【請求項3】
前記検知部は、前記受信機が前記発信機から無線信号を複数回受信し、かつ、複数回の無線信号の受信の各々について前記取得部が取得する前記かごの位置情報が予め設定された誤差範囲内で一致するときに、前記紛失物が前記昇降路内にあることを検知する、
請求項1に記載のエレベーターにおける紛失物の回収支援システム。
【請求項4】
前記発信機が自身の識別情報を含む無線信号を発信する場合に、
前記検知部は、前記受信機が前記発信機から無線信号を複数回受信し、かつ、複数回受信した無線信号の各々に含まれる識別情報が一致するときに、前記紛失物が前記昇降路内にあることを検知する、
請求項1に記載のエレベーターにおける紛失物の回収支援システム。
【請求項5】
前記受信機が前記発信機から受信する無線信号に基づいて前記紛失物が前記昇降路内にあることを前記検知部が検知したときに、前記受信機が当該無線信号を受信したときの前記かごの位置を含む捜索範囲を、前記受信機が当該無線信号を受信したときの走行速度より低い速度で走行させる捜索運転を行う走行制御部
を備え、
前記判定部は、前記捜索運転の間に前記取得部が取得する前記かごの位置情報に基づいて前記昇降路における前記紛失物の上下方向の位置を判定する、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のエレベーターにおける紛失物の回収支援システム。
【請求項6】
前記取得部は、前記捜索運転の間に、前記かごの前記昇降路における上下方向の位置に対応付けて前記受信機が受信する無線信号の信号強度の情報を取得し、
前記判定部は、前記昇降路における前記紛失物の上下方向の位置の判定において、前記取得部が取得する信号強度の情報を用いる、
請求項5に記載のエレベーターにおける紛失物の回収支援システム。
【請求項7】
前記走行制御部は、前記かごに呼びが登録されている間、前記捜索運転を保留する、
請求項5に記載のエレベーターにおける紛失物の回収支援システム。
【請求項8】
前記受信機は、前記かごの下側に取り付けられる、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のエレベーターにおける紛失物の回収支援システム。
【請求項9】
利用者が所持する物品に取り付けられ、前記利用者が前記物品を紛失したときに無線信号を発信する発信機と、
昇降路を上下方向に走行するかごの外側に取り付けられ、前記昇降路内にある前記発信機が発信する無線信号を受信する受信機と、
前記受信機が前記発信機から受信する無線信号に基づいて前記物品が前記昇降路内にあることを検知する検知部と、
前記受信機が前記発信機からの無線信号を受信するときの前記かごの前記昇降路における上下方向の位置を表す位置情報を取得する取得部と、
前記物品が前記昇降路内にあることを前記検知部が検知するときに、前記取得部が取得する前記かごの位置情報に基づいて前記昇降路における前記物品の上下方向の位置を判定する判定部と、
前記判定部が判定した前記物品の位置を報知する報知部と、
を備える、エレベーターにおける紛失物の回収支援システム。
【請求項10】
昇降路を上下方向に走行するかごの外側に取り付けられた受信機によって、前記昇降路内にある紛失物に取り付けられている発信機が発信する無線信号を受信する受信ステップと、
前記受信機が前記発信機から受信する無線信号に基づいて前記紛失物が前記昇降路内にあることを検知する検知ステップと、
前記受信機が前記発信機からの無線信号を受信するときの前記かごの前記昇降路における上下方向の位置を表す位置情報を取得する取得ステップと、
前記紛失物が前記昇降路内にあることを前記検知ステップにおいて検知するときに、前記取得ステップにおいて取得する前記かごの位置情報に基づいて前記昇降路における前記紛失物の上下方向の位置を判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおいて判定した前記紛失物の位置を報知する報知ステップと、
を備える、エレベーターにおける紛失物の回収支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベーターにおける紛失物の回収支援システムおよび回収支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、エレベーターの例を開示する。エレベーターにおいて、乗場を撮影するカメラが設けられる。カメラが撮影する乗場の画像に基づいて、乗場に落とし物があるかが判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本特開2019-202871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エレベーターの利用者が乗場およびかごの間を行き来するときに所持している物品を落としてしまう場合に、乗場およびかごの隙間から昇降路に当該物品が落ちて紛失してしまうことがある。特許文献1のエレベーターは、昇降路に落ちた紛失物を検出しない。このため、利用者からの依頼によってエレベーターの保守員などが昇降路において紛失物を捜索して回収するが、紛失物の発見が容易でなく、回収作業に時間を要することがある。
【0005】
本開示は、エレベーターの昇降路にある紛失物をより回収しやすくできる回収支援システムおよび回収支援方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る、エレベーターにおける紛失物の回収支援システムは、昇降路を上下方向に走行するかごの外側に取り付けられ、前記昇降路内にある紛失物に取り付けられている発信機が発信する無線信号を受信する受信機と、前記受信機が前記発信機から受信する無線信号に基づいて前記紛失物が前記昇降路内にあることを検知する検知部と、前記受信機が前記発信機からの無線信号を受信するときの前記かごの前記昇降路における上下方向の位置を表す位置情報を取得する取得部と、前記紛失物が前記昇降路内にあることを前記検知部が検知するときに、前記取得部が取得する前記かごの位置情報に基づいて前記昇降路における前記紛失物の上下方向の位置を判定する判定部と、前記判定部が判定した前記紛失物の位置を報知する報知部と、を備える。
【0007】
本開示に係る、エレベーターにおける紛失物の回収支援システムは、利用者が所持する物品に取り付けられ、前記利用者が前記物品を紛失したときに無線信号を発信する発信機と、昇降路を上下方向に走行するかごの外側に取り付けられ、前記昇降路内にある前記発信機が発信する無線信号を受信する受信機と、前記受信機が前記発信機から受信する無線信号に基づいて前記物品が前記昇降路内にあることを検知する検知部と、前記受信機が前記発信機からの無線信号を受信するときの前記かごの前記昇降路における上下方向の位置を表す位置情報を取得する取得部と、前記物品が前記昇降路内にあることを前記検知部が検知するときに、前記取得部が取得する前記かごの位置情報に基づいて前記昇降路における前記物品の上下方向の位置を判定する判定部と、前記判定部が判定した前記物品の位置を報知する報知部と、を備える。
【0008】
本開示に係る、エレベーターにおける紛失物の回収支援方法は、昇降路を上下方向に走行するかごの外側に取り付けられた受信機によって、前記昇降路内にある紛失物に取り付けられている発信機が発信する無線信号を受信する受信ステップと、前記受信機が前記発信機から受信する無線信号に基づいて前記紛失物が前記昇降路内にあることを検知する検知ステップと、前記受信機が前記発信機からの無線信号を受信するときの前記かごの前記昇降路における上下方向の位置を表す位置情報を取得する取得ステップと、前記紛失物が前記昇降路内にあることを前記検知ステップにおいて検知するときに、前記取得ステップにおいて取得する前記かごの位置情報に基づいて前記昇降路における前記紛失物の上下方向の位置を判定する判定ステップと、前記判定ステップにおいて判定した前記紛失物の位置を報知する報知ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る回収支援システムまたは回収支援方法によれば、エレベーターの昇降路にある紛失物がより回収しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係るエレベーターシステムの構成図である。
図2】実施の形態1に係る回収支援システムの動作の例を示すフローチャートである。
図3】実施の形態1に係る回収支援システムの主要部のハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の対象を実施するための形態について添付の図面を参照しながら説明する。各図において、同一または相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化または省略する。なお、本開示の対象は以下の実施の形態に限定されることなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、実施の形態の任意の構成要素の変形、または実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【0012】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るエレベーターシステム1の構成図である。
【0013】
エレベーターシステム1は、エレベーター2を備える。エレベーター2は、例えば複数の階床を有する建物に適用される。建物において、エレベーター2の昇降路3が設けられる。昇降路3は、複数の階床にわたる上下方向に長い空間である。昇降路3の下部において、ピット4が設けられる。建物の各々の階床において、昇降路3に隣接する乗場5が設けられる。各々の階床の乗場5において、乗場ドア6が設けられる。乗場ドア6は、昇降路3および乗場5を区画するドアである。エレベーター2は、巻上機7と、主ロープ8と、かご9と、釣合い錘10と、制御盤11と、を備える。
【0014】
巻上機7は、例えば昇降路3の上部または下部などに配置される。例えば昇降路3の上方などにエレベーター2の機械室が設けられる場合に、巻上機7は、機械室に配置されてもよい。巻上機7は、モータおよびシーブを備える。巻上機7のモータは、駆動力を発生させる装置である。巻上機7のシーブは、巻上機7のモータが発生させる駆動力によって回転する機器である。
【0015】
主ロープ8は、巻上機7のシーブに巻き掛けられる。主ロープ8は、巻上機7のシーブの一方側においてかご9の荷重を支持する。主ロープ8は、巻上機7のシーブの他方側において釣合い錘10の荷重を支持する。主ロープ8は、巻上機7のシーブの回転によって、巻上機7のシーブのいずれかの側が巻き上げられるように移動する。
【0016】
かご9は、昇降路3を上下方向に走行することでエレベーター2の利用者などを複数の階床の間で輸送する装置である。かご9は、巻上機7のシーブの回転による主ロープ8の移動に連動して昇降路3を上下方向に走行する。かご9は、かごドア12を備える。かごドア12は、かご9の内部および外部を区画するドアである。かごドア12は、かご9がいずれかの階床に停止するときに、当該階床の乗場ドア6を連動させて開閉する機器である。
【0017】
釣合い錘10は、巻上機7のシーブの両側にかかる荷重の釣合いをかご9との間でとる装置である。釣合い錘10は、巻上機7のシーブの回転による主ロープ8の移動に連動して、上下方向においてかご9の反対側に昇降路3を走行する。
【0018】
制御盤11は、エレベーター2の動作を制御する装置である。制御盤11は、例えば昇降路3の上部または下部などに配置される。例えば昇降路3の上方などにエレベーター2の機械室が設けられる場合に、制御盤11は、機械室に配置されてもよい。制御盤11が制御するエレベーター2の動作は、かご9の走行およびかごドア12の開閉などを含む。例えば、制御盤11は、登録された呼びに応答させるように、かご9を複数の階床の間で走行させる。制御盤11は、かご9をいずれかの階床に停止させるときに、乗場ドア6を連動させてかごドア12を開く。制御盤11は、予め設定された戸開時間の間、かごドア12および乗場ドア6の全開の状態を維持する。制御盤11は、かごドア12が全開してから戸開時間が経過した後に、乗場ドア6を連動させてかごドア12を閉める。
【0019】
エレベーターシステム1は、遠隔監視装置13を備える。遠隔監視装置13は、エレベーター2の状態の遠隔監視などに用いられる装置である。遠隔監視装置13は、エレベーター2の状態の情報を収集しうるように、制御盤11などに接続される。遠隔監視装置13は、例えば制御盤11に入力される情報および制御盤11から出力される情報などをエレベーター2の状態の情報として収集する。遠隔監視装置13が収集した情報は、インターネットまたは電話回線網などの通信網14を通じて、例えば中央管理装置15などに出力される。中央管理装置15は、エレベーター2の状態の情報などの収集、蓄積、または管理などを行う装置である。中央管理装置15は、例えば情報センターなどに配置される。情報センターは、エレベーター2の状態の情報を収集して管理する拠点である。ここで、エレベーター2の制御盤11は、エレベーター2の外部から遠隔制御の制御信号などを受け付けてもよい。遠隔制御の制御信号は、例えば遠隔監視装置13などを通じて制御盤11に入力される。
【0020】
エレベーター2の利用者は、出発階において乗場5からかご9の内部に乗車する。また、利用者は、到着階において、かご9の内部から乗場5に降車する。このようにかご9の乗降のときに、利用者は、乗場5およびかご9の間を通る。乗場5およびかご9の間において、かご9が上下方向に走行しうるように隙間がある。ここで、利用者が乗場5およびかご9の間を行き来するときに、所持している物品を落としてしまうことがある。当該物品は、例えば鍵などのように、乗場5およびかご9の間の隙間より小さいことがある。このとき、当該物品が乗場5およびかご9の間の隙間から昇降路3に落ちてしまい、利用者は当該物品を紛失してしまうことがある。このように紛失物16となった物品は、昇降路3内の構造物17の上に乗ったり引っ掛かったりすることで、ピット4まで落下せずに昇降路3内の上下方向におけるいずれかの位置に留まることがある。なお、昇降路3内の構造物17は、例えば梁もしくは柱、昇降路3内の機器の筐体もしくはケーブル、または昇降路3内の機器を支持するサポートもしくはアームなどを含む。紛失物16が昇降路3内のいずれかの位置に留まっている場合に、紛失物16の位置が特定できないとその発見が難しくなることがある。
【0021】
この例において、利用者は、紛失物16となった物品を発見するための発信機18を当該物品に取り付けている。発信機18は、無線信号を発信する機能を搭載する。発信機18は、例えば無線タグである。発信機18が発信する無線信号は、例えば、近距離無線通信などの無線信号である。無線信号は、例えば電磁波による信号などである。無線信号は、例えば無線PAN(Personal Area Network)またはUWB(Ultra Wide Band)などの無線信号である。発信機18は、当該発信機18を識別する識別情報を含む無線信号を発信する。発信機18は、無線信号を常時発信していてもよいし、当該発信機18が取り付けられた物品が紛失されたときに無線信号の発信を開始してもよい。
【0022】
例えば、建物の通路などにおいて発信機18が取り付けられた物品が紛失されたときに、当該物品の近傍を通る通行者が所持する携帯端末が発信機18からの無線信号を受信することがある。このとき、当該通行者の携帯端末から通信網14および通信網14に接続されたサーバ装置などを通じて、利用者が所持する携帯端末19に当該物品の位置などが通知される。利用者が所持する携帯端末19は、例えば、スマートフォンなどの可搬な汎用の情報処理端末などである。
【0023】
一方、昇降路3内に紛失物16がある場合に、昇降路3を通行する通行者はいないため、通行者が所持する携帯端末などによっては紛失物16は発見されない。また、金属などからなるかご9の内部において紛失物16に取り付けられた発信機18からの無線信号を受信することは難しく、かご9に乗車している乗客が所持する携帯端末などによって紛失物16は発見されない。このため、昇降路3内に紛失物16がある場合に、付近を通行する人の携帯端末によって紛失物16の位置を特定することは難しい。このため、エレベーターシステム1において、回収支援システム20が適用される。
【0024】
回収支援システム20は、エレベーター2の保守員などによる昇降路3内にある紛失物16の回収を支援するシステムである。回収支援システム20は、エレベーターシステム1の外部システムであってもよいし、エレベーターシステム1に含まれる内部システムであってもよい。この例において、回収支援システム20は、エレベーター2の制御盤11を含む。紛失物16に取り付けられた発信機18は、回収支援システム20の外部装置であってもよいし、内部装置であってもよい。
【0025】
回収支援システム20は、受信機21を含む。受信機21は、かご9の外側に取り付けられる。この例において、受信機21は、かご9の下側に取り付けられる。受信機21は、例えば、かご9の底面に取り付けられる。受信機21は、かご9の走行に伴って昇降路3内を上下方向に移動する。受信機21は、紛失物16に取り付けられた発信機18が発信する無線信号を受信する機能を搭載する。受信機21は、例えば発信機18が発する無線信号の通信範囲内をかご9が通過する間、当該発信機18からの無線信号を継続して受信する。このとき、受信機21は、当該無線信号を受信し始めてから受信しなくなるまでの受信期間を、当該無線信号の1回の受信として扱ってもよい。
【0026】
制御盤11は、呼び管理部22と、走行制御部23と、取得部24と、検知部25と、判定部26と、報知部27と、を備える。
【0027】
呼び管理部22は、かご9が応答する呼びの管理の機能を搭載する部分である。かご9が応答する呼びは、例えば、利用者の出発階などへの走行に対応する乗場呼び、および利用者の行先階などへの走行に対応するかご呼びなどを含む。
【0028】
走行制御部23は、かご9の走行を制御する機能を搭載する部分である。走行制御部23は、例えば、呼び管理部22が管理する呼びに応じてかご9を走行させる。走行制御部23は、かご9の位置情報に基づいてかご9の走行を制御する。走行制御部23は、例えば、取得部24が取得するかご9の位置情報に基づいてかご9の走行を制御する。かご9の位置情報は、昇降路3におけるかご9の上下方向の位置を表す情報である。かご9の位置情報は、例えば巻上機7のモータの回転量などに基づいて取得される。エレベーター2においていずれかの階床へのかご9の階床を検知する図示されない着床検知装置などが設けられている場合に、かご9の位置情報は、例えば当該着床検知装置などの検知情報を用いて取得されてもよい。
【0029】
この例において、走行制御部23は、運転モードを切り替えてかご9の走行を制御する。運転モードは、通常運転を含む。通常運転は、利用者などを複数の階床の間で輸送する通常の運転モードである。通常運転において、走行制御部23は、例えば出発階および行先階に応じて設定される速度パターンなどに従ってかご9を走行させる。速度パターンは、例えば、出発階から出発したかご9を定格速度まで加速させ、定格速度でかご9を定速走行させた後、定格速度からかご9を減速させて行先階に停止させるパターンなどである。
【0030】
取得部24は、かご9の位置情報を取得する機能を搭載する部分である。取得部24は、受信機21が発信機18からの無線信号を受信するときに、そのときのかご9の位置情報を取得する。取得部24は、受信機21が発信機18からの無線信号を受信するときに、例えば走行制御部23からかご9の位置情報を取得してもよいし、巻上機7のモータの回転量などからかご9の位置情報を直接取得してもよい。また、取得部24は、受信機21が発信機18から受信する無線信号の信号強度の情報を取得する。取得部24は、例えば、信号強度の情報を受信機21から取得する。取得部24は、例えば、受信機21が発信機18から無線信号を受信するときに、そのときに取得したかご9の位置情報に対応づけて信号強度の情報を取得する。
【0031】
検知部25は、昇降路3内の紛失物16に取り付けられた発信機18から受信機21が受信する無線信号に基づいて、紛失物16が昇降路3内にあることを検知する機能を搭載する部分である。検知部25は、例えば、受信機21が発信機18から無線信号を複数回受信したときに、紛失物16が昇降路3内にあることを検知する。検知部25は、例えば、受信機21が発信機18から無線信号を受信するたびに取得部24が取得したかご9の位置情報を比較し、取得された複数の位置情報が予め設定された誤差範囲内で一致するときに、紛失物16が昇降路3内にあることを検知してもよい。誤差範囲は、例えば、発信機18が発する無線信号の通信範囲を含む程度などに設定される。検知部25は、例えば、取得された複数の位置情報の最高値および最低値の差が誤差範囲の大きさより小さい場合に、複数の位置情報が誤差範囲内で一致すると判定する。あるいは、検知部25は、例えば、発信機18からの無線信号を受信するたびに当該無線信号に含まれる識別情報を読み取り、複数回受信した各々の無線信号に含まれる識別情報が一致するときに、紛失物16が昇降路3内にあることを検知してもよい。検知部25は、上述の複数の条件などを組み合わせて紛失物16が昇降路3内にあることを検知してもよい。なお、検知部25は、例えば、受信機21が発信機18から無線信号を1回受信したときに、紛失物16が昇降路3内にあることを検知してもよい。
【0032】
判定部26は、昇降路3における紛失物16の上下方向の位置を判定する機能を搭載する部分である。判定部26は、例えば、紛失物16が昇降路3内にあることを検知部25が検知するときに、当該紛失物16の位置を判定する。判定部26は、例えば、取得部24が取得するかご9の位置情報に基づいて、紛失物16の位置を判定する。判定部26は、例えば、受信機21が発信機18からの無線信号を受信するときに取得部24が取得したかご9の位置を、紛失物16の位置として判定する。あるいは、判定部26は、当該かご9の位置にかご9の高さ、またはかご9における受信機21の設置位置などに基づく補正値を加えて紛失物16の位置を判定してもよい。検知部25が発信機18からの無線信号の複数回の受信に基づいて紛失物16を検知する場合に、判定部26は、各回の受信に対応して取得部24が取得したかご9の位置の平均値に基づいて紛失物16の位置を判定してもよい。
【0033】
報知部27は、判定部26が判定した紛失物16の位置の報知を行う機能を搭載する部分である。報知部27は、例えば、通信網14などを通じて中央管理装置15に報知を行う。あるいは、報知部27は、エレベーター2の保守員が所持する保守端末などに通信網14などを通じて報知を行ってもよい。保守端末は、例えば、スマートフォンなどの可搬な汎用の情報処理端末などである。また、報知部27は、エレベーター2が適用される建物に管理室などが設けられる場合に、管理室に報知を行ってもよい。報知部27は、発信機18からの無線信号に含まれる識別情報をあわせて報知を行ってもよい。当該識別情報に基づいて発信機18が取り付けられた紛失物16を紛失した利用者の携帯端末19に通知を行うサーバ装置などがある場合に、報知部27は、当該サーバ装置に識別情報を報知してもよい。当該識別情報に基づいて発信機18が取り付けられた紛失物16を紛失した利用者の携帯端末19に通知を行う情報が取得できる場合に、報知部27は、利用者の携帯端末19にエレベーター2が適用される建物などの情報を報知してもよい。
【0034】
この例において、走行制御部23が切り替える運転モードは、捜索運転を含む。捜索運転は、昇降路3内にある紛失物16を捜索する運転モードである。走行制御部23は、例えば、通常運転での運転中に紛失物16が昇降路3内にあることを検知部25が検知したときに、運転モードを捜索運転に切り替える。走行制御部23は、呼び管理部22によってかご9に乗場呼びまたはかご呼びが登録されている間、捜索運転への切替を保留してもよい。捜索運転において、走行制御部23は、捜索範囲の開始位置から終了位置までかご9を走行させる。捜索範囲の開始位置は、当該範囲の上下の境界の一方である。捜索範囲の終了位置は、当該範囲の上下の境界の他方である。捜索範囲は、例えば、通常運転中に受信機21が発信機18からの無線信号を受信したかご9の位置を含む。例えば、通常運転においてかご9が階床間の位置にあるときに受信機21が無線信号を受信するときに、捜索範囲は、当該位置をその間に含むように隣接した階床間の範囲などである。このとき、捜索範囲の開始位置は、隣接した階床の一方の停止位置である。また、捜索範囲の終了位置は、隣接した階床の他方の停止位置である。なお、捜索範囲は、隣接した階床間の範囲に限定されない。捜索運転において、走行制御部23は、通常運転より低速でかご9を走行させる。走行制御部23は、例えば、定格速度より低速でかご9を走行させる。あるいは、走行制御部23は、例えば通常運転における速度パターンに予め設定された係数を乗じて速度を低減させた速度パターンに従ってかご9を走行させてもよい。あるいは、通常運転においてかご9が階床間の位置にあるときに受信機21が無線信号を受信するときに、走行制御部23は、そのときのかご9の走行速度より低速でかご9を走行させるように捜索運転をおこなってもよい。
【0035】
なお、回収支援システム20において、受信機21は、1つのかご9に複数取り付けられてもよい。例えば、1つのかご9の底面および上面などのそれぞれに受信機21が取り付けられていてもよい。
【0036】
また、回収支援システム20は、複数のかご9を含むエレベーターシステム1に適用されてもよい。このとき、受信機21は、各々のかご9に取り付けられていてもよい。あるいは、各々のかご9の走行する昇降路3が壁などで区切られていない場合に、いずれかのかご9において受信機21が取り付けられていなくてもよい。エレベーターシステム1が複数のかご9を含む場合に、呼び管理部22は、いずれかのかご9に乗場呼びなどの呼びの割当てを行う機能を有していてもよい。呼び管理部22は、例えば、図示されない群管理装置などに搭載されていてもよい。
【0037】
回収支援システム20の呼び管理部22、走行制御部23、取得部24、検知部25、判定部26、および報知部27などの各機能の一部または全部は、制御盤11の他の装置に搭載されていてもよい。これらの機能の一部または全部は、遠隔監視装置13、中央管理装置15、群管理装置、または情報センター外のサーバ装置などを含むその他の装置などに搭載されていてもよい。
【0038】
続いて、図2を用いて、回収支援システム20の動作の例を説明する。
図2は、実施の形態1に係る回収支援システム20の動作の例を示すフローチャートである。
図2における処理は、例えば、通常運転の間に、予め設定されたタイミングで実行される。当該タイミングは、定期的なタイミングであってもよいし、例えば遠隔監視装置13などに処理開始の信号が入力されたタイミングなどであってもよい。
【0039】
ステップS01において、検知部25は、受信機21が無線信号を受信したかを判定する。判定結果がNOの場合に、回収支援システム20の処理は、例えば予め設定された時間が経過した後などに、ふたたびステップS01に進む。一方、判定結果がYESの場合に、回収支援システム20の処理は、ステップS02に進む。
【0040】
ステップS02において、検知部25は、受信機21が受信した無線信号に含まれる発信機18の識別情報を読み込む。その後、回収支援システム20の処理は、ステップS03に進む。
【0041】
ステップS03において、取得部24は、ステップS01で受信機21が無線信号を受信したときのかご9の位置情報を取得する。その後、回収支援システム20の処理は、ステップS04に進む。
【0042】
ステップS04において、検知部25は、受信機21による無線信号の受信回数が予め設定された閾値以上であるかを判定する。閾値は、例えば2回などである。判定結果がNOの場合に、回収支援システム20の処理は、ステップS01に進む。一方、判定結果がYESの場合に、回収支援システム20の処理は、ステップS05に進む。
【0043】
ステップS05において、検知部25は、閾値以上の回数受信した無線信号の各々に含まれる発信機18の識別情報が一致するかを判定する。判定結果がNOの場合に、回収支援システム20の処理は、ステップS01に進む。一方、判定結果がYESの場合に、回収支援システム20の処理は、ステップS06に進む。
【0044】
ステップS06において、検知部25は、閾値以上の無線信号の各回の受信についてステップS03で取得したかご9の位置情報を比較する。検知部25は、各回のかご9の位置情報が誤差範囲内で一致するかを判定する。判定結果がNOの場合に、回収支援システム20の処理は、ステップS01に進む。一方、判定結果がYESの場合に、回収支援システム20の処理は、ステップS07に進む。
【0045】
ステップS07において、検知部25は、紛失物16が昇降路3内にあることを検知する。その後、回収支援システム20の処理は、ステップS08に進む。
【0046】
ステップS08において、走行制御部23は、捜索運転の準備処理を行う。捜索運転の準備処理は、例えば、捜索範囲および捜索運転におけるかご9の低速の走行速度の設定を含む。捜索範囲は、例えば、ステップS03において取得されたかご9の位置を含むように設定される。かご9の走行速度は、例えば定格速度より低い予め定められた速度に設定される。あるいは、かご9の走行速度は、ステップS01において受信機21が無線信号を受信したときのかご9の走行速度より低い速度に設定される。このとき、かご9は、例えば定格速度で走行している。かご9の走行速度は、例えば取得部24が走行制御部23などから取得してもよいし、取得部24が取得する位置情報などに基づいて算出されてもよい。その後、回収支援システム20の処理は、ステップS09に進む。
【0047】
ステップS09において、走行制御部23は、呼び管理部22によってかご9に呼びが登録されているかを判定する。判定の対象となる呼びは、例えば乗場呼びおよびかご呼びを含む。かご9に少なくとも1つ呼びが登録されている場合に、回収支援システム20の処理は、例えば予め設定された時間が経過した後などに、ふたたびステップS09に進む。一方、かご9に1つも呼びが登録されていない場合に、回収支援システム20の処理は、ステップS10に進む。
【0048】
ステップS10において、走行制御部23は、捜索運転を開始する。走行制御部23は、ステップS08で設定した捜索範囲の開始位置までかご9を走行させる。その後、走行制御部23は、ステップS08で設定した捜索範囲の終了位置まで、ステップS08で設定した低速の走行速度でかご9を走行させる。かご9が捜索範囲を走行しているときに、受信機21が無線信号を受信している間、取得部24は、無線信号の信号強度をかご9の位置に対応づけて取得する。捜索範囲の終了位置までかご9が走行したときに、走行制御部23は、捜索運転を終了する。この時、走行制御部23は、運転モードを通常運転に切り替える。その後、回収支援システム20の処理は、ステップS11に進む。
【0049】
ステップS11において、判定部26は、ステップS10で取得部24が取得した信号強度が最大となるかご9の位置を算出する。判定部26は、算出したかご9の位置に基づいて、紛失物16の位置を判定する。判定部26は、例えば、算出したかご9の位置を、紛失物16の位置として判定する。あるいは、判定部26は、算出したかご9の位置に、かご9の高さまたはかご9における受信機21の設置位置などに基づく補正値を加えて紛失物16の位置を判定してもよい。その後、回収支援システム20の処理は、ステップS12に進む。
【0050】
ステップS12において、報知部27は、ステップS11で判定部26が判定した紛失物16の位置、およびステップS02で読み込んだ発信機18の識別情報を報知する。その後、回収支援システム20の処理は、終了する。
【0051】
紛失物16の回収作業を行う保守員は、例えば保守端末などを通じて、報知部27が報知した情報を得る。保守員は、エレベーター2が適用される建物に到着した後に、エレベーター2の運転モードを通常運転から手動運転に切り替える。手動運転は、保守作業などの際に保守員が手動で運転を行う運転モードである。その後、保守員は、紛失物16の回収作業を開始する。紛失物16の回収作業において、保守員は、手動運転などによって報知部27が報知した紛失物16の位置の付近でかご9を運転しながら、昇降路3において紛失物16を捜索する。保守員は、紛失物16を発見して回収した後に、エレベーター2の運転モードを手動運転から通常運転に復旧する。
【0052】
なお、回収支援システム20において、捜索運転は行われなくてもよい。このとき、判定部26は、例えば、通常運転中に受信機21が発信機18からの無線信号を受信したときに取得部24が取得したかご9の位置に基づいて紛失物16の位置を判定する。また、取得部24が取得するかご9の位置情報は、最下階または最上階などからのかご9の走行距離で表されてもよいし、建物における階床番号などの階床の情報で表されてもよい。
【0053】
以上に説明したように、実施の形態1に係る回収支援システム20は、受信機21と、検知部25と、取得部24と、判定部26と、報知部27と、を備える。受信機21は、昇降路3を上下方向に走行するかご9の外側に取り付けられる。受信機21は、発信機18が発信する無線信号を受信する。発信機18は、昇降路3内にある紛失物16に取り付けられている。発信機18は、利用者が当該紛失物16を紛失したときに無線信号を発信する。検知部25は、受信機21が発信機18から受信する無線信号に基づいて、紛失物16が昇降路3内にあることを検知する。取得部24は、受信機21が発信機18からの無線信号を受信するときのかご9の位置情報を取得する。かご9の位置情報は、昇降路3におけるかご9の上下方向の位置を表す。判定部26は、紛失物16が昇降路3内にあることを検知部25が検知するときに、取得部24が取得するかご9の位置情報に基づいて、昇降路3における紛失物16の上下方向の位置を判定する。報知部27は、判定部26が判定した紛失物16の位置を報知する。
また、実施の形態1に係る回収支援方法は、受信ステップと、検知ステップと、取得ステップと、判定ステップと、報知ステップと、を備える。受信ステップは、受信機21によって、昇降路3内にある紛失物16に取り付けられている発信機18が発信する無線信号を受信するステップである。検知ステップは、受信機21が発信機18から受信する無線信号に基づいて、紛失物16が昇降路3内にあることを検知するステップである。取得ステップは、受信機21が発信機18からの無線信号を受信するときのかご9の位置情報を取得するステップである。判定ステップは、紛失物16が昇降路3内にあることを検知ステップにおいて検知するときに、取得ステップにおいて取得するかご9の位置情報に基づいて昇降路3における紛失物16の上下方向の位置を判定するステップである。報知ステップは、判定ステップにおいて判定した紛失物16の位置を報知するステップである。
【0054】
このような構成により、エレベーター2の昇降路3にある紛失物16が無線信号に基づいて検知され、その位置が報知される。紛失物16の位置が報知されない場合に、保守員は、利用者が当該紛失物16を紛失したと証言する階床より下方の範囲全てを捜索する必要がある。また、利用者が当該紛失物16を紛失した階床が明確でない場合に、保守員は、昇降路3の全範囲を捜索する場合がある。回収支援システム20においては紛失物16の位置が報知されるので、捜索の範囲を絞り込むことができ、紛失物16がより回収しやすくなる。これにより、紛失物16の回収作業が速やかに行われるようになるので、回収作業中でエレベーター2が利用できないダウンタイムが短くなる。このため、エレベーター2の稼働率がより高められる。
【0055】
また、検知部25は、受信機21が発信機18から無線信号を複数回受信するときに、紛失物16が昇降路3内にあることを検知する。
【0056】
このような構成により、紛失物16の誤検知などが抑制されるので、報知部27が報知する情報の信頼性がより高められる。例えば、乗場5にいる利用者が所持する物品に取り付けられた発信機18が無線信号を発信している場合に、当該無線信号の受信などによる紛失物16の誤検知が抑制される。
【0057】
また、検知部25は、受信機21が発信機18から無線信号を複数回受信し、かつ、各回の無線信号の受信について取得部24が取得するかご9の位置情報が予め設定された誤差範囲内で一致するときに、紛失物16が昇降路3内にあることを検知する。
【0058】
このような構成により、紛失物16の誤検知などが抑制されるので、報知部27が報知する情報の信頼性がより高められる。例えば、遮蔽物または反射体などの無線信号の伝播条件などの環境の変化によって無線信号が偶然受信されるような場合であっても、このような無線信号の受信などによる紛失物16の誤検知が抑制される。
【0059】
また、発信機18は、自身の識別情報を含む無線信号を発信する。この場合に、検知部25は、受信機21が発信機18から無線信号を複数回受信し、かつ、受信した各々の無線信号に含まれる識別情報が一致するときに、紛失物16が昇降路3内にあることを検知する。
【0060】
このような構成により、紛失物16の誤検知などが抑制されるので、報知部27が報知する情報の信頼性がより高められる。例えば、乗場5にいる利用者が所持する物品に取り付けられた発信機18が無線信号を発信している場合に、当該無線信号の受信などによる紛失物16の誤検知が抑制される。特に、混雑時などにおいて、発信機18が取り付けられた物品を各々が所持する複数の利用者が乗場5に順次訪れる場合であっても、これらの発信機18が発する無線信号などによる紛失物16の誤検知が抑制される。
【0061】
また、回収支援システム20は、走行制御部23を備える。走行制御部23は、受信機21が発信機18から受信する無線信号に基づいて紛失物16が昇降路3内にあることを検知部25が検知したときに、かご9に低速で捜索範囲を走行させる捜索運転を行う。捜索範囲は、受信機21が当該無線信号を受信したときのかご9の位置を含む。捜索運転におけるかご9の走行速度は、受信機21が当該無線信号を受信したときの走行速度より低い速度である。判定部26は、捜索運転の間に取得部24が取得するかご9の位置情報に基づいて、昇降路3における紛失物16の上下方向の位置を判定する。判定部26は、例えば、捜索運転中に受信機21が無線信号の受信を開始した位置から受信機21が無線信号の受信を終了する位置までの中点などを紛失物16の位置として判定してもよい。
【0062】
このような構成により、紛失物16の位置がより正確に判定されるようになる。また、捜索範囲が絞り込まれることで、捜索運転において低速で運転される時間がより短くなる。このため、巻上機7のモータまたは当該モータに交流電力を供給するインバータなどの回路の負荷が低減される。
【0063】
また、取得部24は、捜索運転の間に、かご9の昇降路3における上下方向の位置に対応付けて、受信機21が受信する無線信号の信号強度の情報を取得する。判定部26は、昇降路3における紛失物16の上下方向の位置の判定において、取得部24が取得する信号強度の情報を用いる。
【0064】
このような構成により、無線信号の信号強度に基づいて、紛失物16の位置がより正確に判定されるようになる。
【0065】
また、走行制御部23は、かご9に呼びが登録されている間、捜索運転を保留する。
【0066】
このような構成により、利用者がエレベーター2を利用していない間に捜索運転が行われるようになる。このため、捜索運転によって利用者の利便性が低下しにくくなる。
【0067】
また、受信機21は、かご9の下側に取り付けられる。
【0068】
このような構成により、受信機21は、かご9の下方からの無線信号を受信しやすくなる。紛失物16は、昇降路3においてかご9より下方に落下するため、受信機21は、紛失物16に取り付けられた発信機18からの無線信号を受信しやすくなる。
【0069】
続いて、図3を用いて、回収支援システム20のハードウェア構成の例について説明する。
図3は、実施の形態1に係る回収支援システム20の主要部のハードウェア構成図である。
【0070】
回収支援システム20における処理の各機能は、処理回路により実現し得る。処理回路は、少なくとも1つのプロセッサ100aと少なくとも1つのメモリ100bとを備える。処理回路は、プロセッサ100aおよびメモリ100bと共に、あるいはそれらの代用として、少なくとも1つの専用ハードウェア200を備えてもよい。
【0071】
処理回路がプロセッサ100aとメモリ100bとを備える場合、回収支援システム20の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせで実現される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、プログラムとして記述される。そのプログラムはメモリ100bに格納される。プロセッサ100aは、メモリ100bに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、回収支援システム20の各機能を実現する。
【0072】
プロセッサ100aは、CPU(Central Processing Unit)、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSPともいう。メモリ100bは、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROMなどの、不揮発性または揮発性の半導体メモリなどにより構成される。
【0073】
処理回路が専用ハードウェア200を備える場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、またはこれらの組み合わせで実現される。
【0074】
回収支援システム20における処理の各機能は、それぞれ処理回路で実現することができる。あるいは、回収支援システム20の各機能は、まとめて処理回路で実現することもできる。回収支援システム20の各機能について、一部を専用ハードウェア200で実現し、他部をソフトウェアまたはファームウェアで実現してもよい。このように、処理回路は、専用ハードウェア200、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせで回収支援システム20の各機能を実現する。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本開示に係る紛失物の回収支援システムおよび回収支援方法は、エレベーターシステムに適用できる。
【符号の説明】
【0076】
1 エレベーターシステム、 2 エレベーター、 3 昇降路、 4 ピット、 5 乗場、 6 乗場ドア、 7 巻上機、 8 主ロープ、 9 かご、 10 釣合い錘、 11 制御盤、 12 かごドア、 13 遠隔監視装置、 14 通信網、 15 中央管理装置、 16 紛失物、 17 構造物、 18 発信機、 19 携帯端末、 20 回収支援システム、 21 受信機、 22 呼び管理部、 23 走行制御部、 24 取得部、 25 検知部、 26 判定部、 27 報知部、 100a プロセッサ、 100b メモリ、 200 専用ハードウェア
図1
図2
図3