(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】血管内カテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/14 20060101AFI20250311BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20250311BHJP
【FI】
A61M25/14 510
A61M25/00 534
A61M25/00 610
A61M25/00 540
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020210005
(22)【出願日】2020-12-18
【審査請求日】2023-10-31
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515248931
【氏名又は名称】ニューラヴィ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】デビッド・ベイル
【審査官】黒田 暁子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-528402(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0253284(US,A1)
【文献】特表2003-517870(JP,A)
【文献】国際公開第2011/055308(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0165944(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0266419(US,A1)
【文献】特表2011-527601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/14
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位端と、反対側の遠位端とを有する血管内カテーテルであって、前記血管内カテーテルは、
環状膨張チャンバから半径方向外側に画定された複数の塞がれていない開口部を有する遠位の多孔質のカフ区画であって、非回転可能である遠位の多孔質のカフ区画と、
前記遠位の多孔質のカフ区画の近位に配設されている管状本体であって、近位端から前記遠位の多孔質のカフ区画まで延在する側壁を有し、内側管腔が軸方向にその中を通って画定されている、管状本体と、を備え、前記管状本体の前記側壁は、前記血管内カテーテルの軸方向に平行な方向に延在する膨張供給チャネルを有
し、
前記遠位の多孔質のカフ区画は、前記環状膨張チャンバと前記内側管腔との間で流体連通している、半径方向内側に画定された複数の第2の開口部を有する、血管内カテーテル。
【請求項2】
前記管状本体の前記側壁は、単一の層又は複数の層の積層体を含む単一の壁であり、前記膨張供給チャネルは前記単一の壁の中に成形されている、請求項1に記載の血管内カテーテル。
【請求項3】
前記側壁は、内壁と、外壁とを含む2つの壁を含み、前記膨張供給チャネルは、互いに所定の距離だけ半径方向に隔てられた、前記2つの壁の間に画定された環状膨張供給チャネルである、請求項1に記載の血管内カテーテル。
【請求項4】
前記遠位の多孔質のカフ区画内にある前記複数の
塞がれていない開口部の少なくとも一部は、前記血管内カテーテルの軸方向に対して垂直に配置されている、請求項1に記載の血管内カテーテル。
【請求項5】
前記遠位の多孔質のカフ区画内にある前記複数の
塞がれていない開口部の少なくとも一部は、前記血管内カテーテルの軸方向に対して非垂直の角度で配置されており、前記非垂直の角度は、前記血管内カテーテルの前記近位端に向かって傾斜した角度であるか、又は前記血管内カテーテルの前記遠位端に向かって傾斜した角度である、請求項1に記載の血管内カテーテル。
【請求項6】
前記環状膨張チャンバは、内部接続リブを有さず、超膨張状態では、前記遠位の多孔質のカフ区画の外側表面の少なくとも一部は半径方向外向きに膨張可能である、請求項1に記載の血管内カテーテル。
【請求項7】
近位端と、反対側の遠位端とを有する血管内カテーテルであって、前記血管内カテーテルは、
環状膨張チャンバから半径方向外側に画定された複数の塞がれていない開口部を有する遠位の多孔質のカフ区画であって、非回転可能である遠位の多孔質のカフ区画と、
前記遠位の多孔質のカフ区画の近位に配設されている管状本体であって、近位端から前記遠位の多孔質のカフ区画まで延在する側壁を有し、内側管腔が軸方向にその中を通って画定されている、管状本体と、を備え、前記管状本体の前記側壁は、前記血管内カテーテルの軸方向に平行な方向に延在する膨張供給チャネルを有し、
前記環状膨張チャンバは複数の内部接続リブを有し、超膨張状態では、前記遠位の
多孔質のカフ区間はフレア状になって円錐漏斗を形成する
、血管内カテーテル。
【請求項8】
前記複数の
塞がれていない開口部は、外側が覆われていないままである、請求項1に記載の血管内カテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管内カテーテルに関し、詳細には血栓又は血塊、又は血管を通る流れを閉塞する他の物質を捕捉し回収するための血管内カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
急性虚血性脳卒中は、脳の動脈における血栓性又は塞栓性の閉塞物(例えば、妨害物)によって主に引き起こされる。閉塞は、典型的には、身体の別の部分から遊離した血塊によって引き起こされ、このような血塊は、血管を通って順行性方向(通常の血流の方向)に移動し、最終的に神経血管動脈内に詰まり、その場所で脳の特定の領域への血流を妨げることになる。
【0003】
血栓除去術として既知の手順を使用して、機械的回収装置を使用して血管内に詰まった血栓、閉塞物、妨害物、又は血塊を除去することができる。血栓除去処置若しくは治療において、医師若しくは介入医は、典型的には鼠径部又は腕に位置する動脈内の脈管構造を通して、或いは頸動脈を通る直接のアクセスによって、ガイドワイヤとマイクロカテーテルを一緒に血管内に導入する。ガイドワイヤ及びマイクロカテーテルは一緒に、標的とする血塊、妨害物、又は閉塞物の近位側に向いている場所まで進められる。次いで、ガイドワイヤを血塊を横切るように前進させ、続いてマイクロカテーテルも前進させる。圧縮状態にある間に、機械的血栓除去装置が、マイクロカテーテルの管腔を通して標的部位まで誘導されてよい。機械的血栓除去装置はマイクロカテーテルから出た後は、典型的にはその元々の拡大した状態まで自動的に拡張する。機械的血栓除去装置は、典型的には、ニッケル-チタンなどの自己拡張型生体適合性材料で作製される。カテーテルを通した吸引が、血塊を除去するために付随する、又は機械的回収装置の代わりに使用されてもよい。
【0004】
妨害物の回収中、カテーテルの遠位端又は先端部を、血栓、閉塞物、妨害物、又は血塊の外面又は外部表面に可能な限り接近させることが好ましい。血管の内壁の組織への外傷を低減させつつ、蛇行した脈管経路を通るカテーテルの操作性を向上させるために、それらの間の摩擦を最小限に抑える(すなわち、低摩擦)ことが望ましい。典型的には、摩擦は、親水性コーティング、又はシリコーン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルピロリドン(PVP)などの他の潤滑性コーティングをカテーテルの外側表面に適用することによって低減される。しかしながら、このような低摩擦コーティングの使用は、1つ以上の関連する欠点を有する場合があり、例えば、望ましくない領域に広がり易いこと、及び/又は望ましくない下流の粒状物質を容易に分解/破壊する場合がある。カテーテルの遠位部分の内側表面上の低摩擦表面はまた、血塊がカテーテルによって採取されるときに、血塊に対する剪断力を最小限にすることが望ましい。更に、完全な血塊の採取を最適にするために血塊回収カテーテルの遠位先端部又は遠位端の直径を拡大/拡張することで、より高い初回通過の再疎通の成功をもたらすことが望ましい場合がある。単純に遠位先端部を拡大又は拡張することは、カテーテルの剛性を高める場合があり、したがって、血管を通る標的部位へのナビゲーションの間に有益な柔軟性を不必要に妨げる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、これらの前述の欠点を克服する改善された血管内カテーテルを開発することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、カテーテルの遠位部分/遠位区画/遠位先端部/遠位端と血管の内壁との間の摩擦が最小限にされることで、カテーテルは、血管の蛇行経路を通って血塊の面に至る位置まで容易に進む、低摩擦の血管内カテーテルを対象とする。
【0007】
本発明の別の態様は、完璧な血塊採取を最適にするために血塊に近接して位置決めされたときに拡張可能/拡大可能である遠位区画を有し、その結果、より高い初回通過の再疎通の成功をもたらし、かつ遠位の塞栓の発生を最小限に抑え、更に標的血塊まで蛇行経路を通ってナビゲートする間、遠位区画が非拡張/非拡大状態のままであることによってカテーテルはその可撓性を維持する、血管内カテーテルに関する。
【0008】
本発明の更に別の可能な態様は、カテーテルの遠位区画の少なくとも一部は、血管の内壁と物理的に接触して封止を形成し、これによりそこを通る血流を阻止するために、直径を増大させるために拡大可能/拡張可能である、血管内カテーテルに関する。
【0009】
本発明の更に別の態様は、カテーテルの遠位の多孔質のカフ区画/先端部内のオリフィスを通して逆行方向に流体ジェットを誘導することによって、脈管構造を通るカテーテルの前進を補助することに関する。
【0010】
本発明の更に別の態様は、カテーテルの遠位の多孔質のカフ区画/先端部の内側表面の摩擦係数を低下させることに関する。
【0011】
本発明は、環状膨張チャンバから半径方向外側に画定された複数の塞がれていない開口部を有する遠位の多孔質のカフ区画を含む血管内カテーテルを対象とし、この場合、遠位の多孔性カフ区画は非回転可能である。カテーテルはまた、遠位の多孔質のカフ区画の近位に配設された管状本体を更に含み、管状本体は、近位端から遠位の多孔質のカフ区画まで延在する側壁を有し、内側管腔が軸方向にその中を通って画定されている。管状本体の側壁は、血管内カテーテルの軸方向に平行な方向に延在する膨張供給チャネルを有する。
【0012】
加えて、本発明はまた、近位端と、反対側の遠位端とを有する血管内カテーテルを使用するための方法に関する。血管内カテーテルは、環状膨張チャンバから半径方向外側に画定された複数の塞がれていない開口部を有する遠位の多孔質のカフ区画を含み、この場合、遠位の多孔性カフ区画は非回転可能である。血管内カテーテルはまた、遠位の多孔質のカフ区画の近位に配設された管状本体も有し、管状本体は、近位端から遠位の多孔質のカフ区画まで延在する側壁を有し、内側管腔がその中を軸方向に通って画定されている。管状本体の側壁は、血管内カテーテルの軸方向に平行な方向に延在する膨張供給チャネルを有する。本発明の方法は、遠位端が血管内の血塊に近接するように血管内カテーテルをナビゲートしている間に、加圧流体を膨張供給チャネル内に注入し、管状本体の遠位の多孔質のカフ区画内に画定された複数の開口部から血管内に排出される流体ジェットのカフを形成することによって、血管内カテーテルの外表と、血管の内壁との間の摩擦を最小限にするステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の上記及び他の特徴は、本発明を例示する以下の発明を実施するための形態及び図面からより容易に明らかになるものであり、いくつかの図面にわたり類似の参照番号は類似の要素を示す。
【
図1】標的血塊に近接して配設された、本発明の血管内カテーテルの遠位の多孔質のカフ区画/先端部を示す血管の一部分の断面図である。
【
図2】
図1の本発明の血管内カテーテルの第1の実施形態の側面図であり、遠位の多孔質のカフ区画/先端部の近位のカテーテルの管状本体は、単一の壁として構成されており、単一の軸方向の膨張供給チャネルがその中に画定されている図である。
【
図2A】遠位の多孔質のカフ区画/先端部を通る線II(A)-II(A)に沿った、
図2の血管内カテーテルの断面図である。
【
図2B】遠位の多孔質のカフ区画/先端部の近位の管状本体を通る線II(B)-II(B)に沿った、
図2の血管内カテーテルの断面図である。
【
図2C】遠位の多孔質のカフ区画/先端部を含む、線II(C)-II(C)に沿った、
図2の血管内カテーテルを通る断面図である。
【
図2D】
図2Bのものと同様であるが、内部に複数の軸方向の膨張供給チャネルが画定されている、単一の壁の側壁を有する本発明の血管内カテーテルの管状本体の代替構成を描いている、遠位の多孔質のカフ区画/先端部の近位の半径方向の断面図である。
【
図3A】環状膨張チャンバと流体連通する開口部を通して半径方向外向きに放出される流体を描いている、本発明の血管内カテーテルの遠位の多孔質のカフ区画/先端部の長手方向の断面図であり、これら開口部は、非垂直で(すなわち、カテーテルの軸方向に対してカテーテルの近位端に向いている傾斜した角度で)配置されている図である。
【
図3B】環状膨張チャンバと流体連通する開口部を通して半径方向外向きに放出される流体を描いている、本発明の血管内カテーテルの遠位の多孔質のカフ区画/先端部の長手方向の断面図であり、これら開口部は、非垂直で(すなわち、カテーテルの軸方向に対してカテーテルの遠位端に向いている傾斜した角度で)配置されている図である。
【
図4】環状膨張チャンバと流体連通する開口部を通して半径方向外向き及び半径方向内向きの両方に放出される流体を描いている、本発明の血管内カテーテルの遠位の多孔質のカフ区画/先端部の長手方向の断面図である。
【
図5A】拡大され/拡張され膨らんだ状態にある、本発明の血管内カテーテルの遠位の多孔質のカフ区画/先端部の1つの構成を描く図である。
【
図5B】非拡大/非拡張状態にある、
図5Aの本発明の血管内カテーテルの遠位多孔質のカフ部分を描く図である。
【
図5C】血管内カテーテルの管状本体の単一の壁の中に画定された単一の半径方向区画の膨張供給チャネルを描いている、
図5Bの線V(C)-V(C)に沿った、遠位の多孔質のカフ区画/先端部の近位の管状本体の断面図である。
【
図6A】環状膨張チャンバ内に配設された内部接続リブを示す、円錐漏斗を形成するフレア状の状態の本発明の血管内カテーテルの別の構成の遠位の多孔質のカフ区画/先端部の長手方向の断面図である。
【
図6B】非フレア状態にある、
図6Aの本発明の血管内カテーテルの遠位の多孔質のカフ区画/先端部の側面図である。
【
図7】本発明の血管内カテーテルの更に別の構成の側面図であり、遠位の多孔質のカフ区画/先端部の近位の管状本体は、互いに所定の距離で半径方向に隔てられて、それらの間に環状膨張供給チャネルを画定する2つの同心の壁として構成されている図である。
【
図7A】遠位の多孔質のカフ区画/先端部を通る線VII(A)-VII(A)に沿った、
図7の血管内カテーテルの断面図である。
【
図7B】遠位の多孔質のカフ区画/先端部の近位の管状本体を通る線VII(B)-VII(B)に沿った、
図7の血管内カテーテルの断面図である。
【
図7C】血管内カテーテルの遠位の多孔質のカフ区画/先端部を含む、線VII(C)-VII(C)に沿った、
図7の血管内カテーテルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
「遠位」又は「近位」という用語は、以下の説明において、治療医師若しくは医療介入医に対する位置又は方向に関して使用される。「遠位」又は「遠位に」は、医師若しくは介入医から離れた位置又は離れる方向である。「近位」又は「近位に」又は「近接した」とは、医師若しくは医療介在医に近い位置又は向かう方向である。「閉塞物」、「血塊」又は「妨害物」という用語は、区別なく使用される。
【0015】
図1は、血塊、妨害物、血栓又は閉塞物150が中に詰まっている血管102を通る部分的な軸方向の断面図を示す。その近位端から反対側の遠位端まで軸方向にその中に画定された内側中央管腔105を有する本発明の血管内カテーテル100を血塊150に近接するまで前進させる。内側中央管腔105の遠位端及び近位端は、除去中に捕捉された血塊をその中を通して収容するように開放されており、そのようにサイズが決められている。補助装置、例えば、ガイドワイヤ、送達ワイヤ、機械的血栓除去装置、収容カテーテルなどを、内側中央管腔105を通って遠位方向に前進させてもよい。生体適合性流体、好ましくは生理食塩水を、カテーテルの管状本体内に画定され、かつ内側中央管腔105の半径方向外側に配置された1つ以上の膨張供給チャネルのみを介して圧力下で注入することが可能である。
【0016】
図2は、遠位の多孔質のカフ区画/先端部127及び管状本体(すなわち、遠位の多孔質のカフ区画/先端部の近位に配設された血管内カテーテルの残りの部分)を含む、本発明の血管内カテーテルの第1の実施形態の遠位部分の側面図を示す。この第1の実施形態では、管状本体の側壁115は、単一の層、又は複数の層の積層体/複合体(例えば、ライナー、編組、ポリマージャケット及び/又はコーティング)のいずれかを含む単一の壁として構成される。単一の壁の側壁115内に形成又は画定される(例えば、成形される)場合、単一の膨張供給チャネル120はカテーテルの軸方向に対して平行に延在する。
図2Bは、カテーテルの遠位の多孔質のカフ区画/先端部127の近位の管状本体を通る、
図2の線II(B)-II(B)に沿った断面図を示す。単一の軸方向膨張チャネル120のみが
図2Bでは単一の壁の側壁内に示されているが、
図2Dは、その中に画定された3つの軸方向膨張供給チャネル120を有し、各軸方向の膨張チャネルは互いに半径方向に等距離だけ隔てられている、カテーテルの管状本体の単一の壁の側壁115の代替設計を示している。1つ以上の軸方向膨張供給チャネル120の任意の数、並びにカテーテルの管状本体の単一の壁の側壁内でのこのような軸方向の膨張供給チャネルの直径及び配置は、所望に応じて修正されてもよい。
図5Cに見られるように、本発明の血管内カテーテルの管状本体の単一の壁の中に半径方向区画の膨張供給チャネルが形成され得ることも更に企図されている。
図7~
図7Dに示され、以下により詳細に記載されるように、膨張供給チャネルが2つの壁のカテーテルの2つの壁の間の空間によって画定される、2つの壁の管状本体構成も可能である。
【0017】
血管内カテーテル100の遠位の区画は、1つ以上の膨張供給チャネル(複数可)(軸方向又は半径方向)120と流体連通する環状膨張チャンバ122を有する固定された(それに対して近位の残りの管状本体に対して回転しない)遠位の多孔質のカフ区画/先端部127として機能する。
図2Aに明確に示されるように、複数の開口部125が、遠位の多孔質のカフ区画/先端部127内に画定され、環状膨張チャンバ122から半径方向外側に配置される。好ましくは、開口部125は、遠位の多孔質のカフ区画/先端部127内に360度配置される。
図2Cの例示的な軸方向の断面図は、管状本体の単一の軸方向の膨張供給チャネル120と流体連通する遠位の多孔質のカフ区画/先端部127の環状膨張チャンバ122、並びに半径方向外側に画定され、かつ環状膨張チャンバ122と流体連通する複数の開口部125を示す。1つ以上の軸方向膨張供給チャネル(複数可)120を介して加圧下で分配されると、遠位の多孔質のカフ区画/先端部127内に画定された開口部125から出てくる生体適合性流体(例えば、生理食塩水)は、カテーテルの外周の遠位区画の周りに、血管壁との摩擦を最小限にし、周囲の組織への損傷を最小限にし、ナビゲーションを支援し、流体ジェットの「カフ」、「クラウド」、「ピロー」、「プール」を形成し、カテーテルの遠位端又は先端部が血塊面に近接して前進することを可能にする。膨張流体から形成される流体ジェットの「カフ」は、カテーテルの外面と血管の内壁との間に流体境界を形成するのに十分な圧力で注入されて、血塊を粉砕又は破壊することなく、それらの間の摩擦を最小限に抑える。カテーテルの遠位の多孔質のカフ区画/先端部127内の開口部125の配置は、血塊が流体ジェットによって粉砕又は破壊されないことを保証する。開口部125から流体を排出している間、遠位の多孔質のカフ区画/先端部127は、カテーテルの管状本体に対して静止したまま、固定されたまま、又は非回転のままである。カテーテルの遠位の多孔質のカフ区画/先端部127の半径方向の開口部125は、カテーテルからの流体の通過のための排出ポートとしてのみ機能する。流体及び/又は物質が、カテーテルの外部から半径方向の開口部125を介してカテーテルの内部に取り込まれることは決してない。換言すれば、流体はひとたび半径方向の開口部125を通って放出されると、その後、半径方向の開口部(同じ半径方向の開口部、又はカテーテルの側面に沿った任意の他の半径方向の開口部のいずれか)を通って戻るように循環しない。更に、カテーテルの側面に沿った全ての半径方向の開口部は、遮られないままであり、外側には開口部の上に延在するいかなるカバーも存在しない。
【0018】
図7に示される代替構成では、本発明のカテーテルの遠位の多孔質のカフ区画/先端部の近位の管状本体は、
図2に描かれる単一の壁構造ではなく、2つの壁の側壁構造を有してよい。
図7A及び
図7Bは、それぞれ、(遠位の多孔質のカフ区画/先端部を通る)線VII(A)-VII(A)及び(遠位の多孔質のカフ区画/先端部の近位の管状本体を通る)VII(B)-VII(B)に沿った、
図7の2つの壁のカテーテル構造を示す。遠位の多孔質のカフ区画/先端部127の近位の管状本体の2つの壁の側壁構造が
図7Bに示されており、それらの間に環状、半径方向、円形、リング形状、又は円周方向の膨張供給チャネル120’を形成するために互いに所定の距離だけ隔てられた、外壁114の半径方向内側に配設された内壁113を含む。内壁113及び外壁114は、
図7Bに示されるように、好ましくは同心であるが、そうでなければ偏心して配置されてもよい。ここでもまた、複数の開口部125が、遠位の多孔質のカフ区画/先端部127の環状膨張チャンバ122から半径方向外側に画定される(
図7A)。
【0019】
壁の間に環状膨張供給チャネル120’を形成する(
図7Bに示されるような)本発明の血管内カテーテルの2つの壁の管状本体構造の場合、導入された流体は、流体ジェットとして遠位の多孔質のカフ区画/先端部の開口部125から実質的に等しく分配される。1つ以上の軸方向膨張チャネル(複数可)120(
図2B又は
図2D)がカテーテルの管状本体の単一の壁の中に形成される場合、導入された流体は、遠位の多孔質のカフ区画/先端部の開口部125から不均等に分配される。すなわち、流体は、カテーテルの反対側の遠位端に最も近い開口部125に対して、カテーテルの近位端に最も近い開口部125からより速い速度で分配されてよい。開口部125の直径は、そのような開口部125からの流体の分配を実質的に均一化するように変更されてもよい。
【0020】
図2Cを参照すると、遠位の多孔質のカフ区画/先端部127内で半径方向外側に画定される開口部125は、カテーテルの軸方向に垂直に配置されてもよい。遠位の多孔質のカフ区画/先端部のこれらの開口部125は、代替的に、非垂直の角度(すなわち、傾斜した角度)で配置されてもよい。
図3Aに示される遠位の多孔質のカフ区画/先端部を通る例示的な軸方向の断面図では、遠位の多孔質のカフ区画/先端部内の開口部125が、非垂直に(すなわち、カテーテルの近位端に向かって近位方向に向いている傾斜した角度で)半径方向外側に画定されており、その結果、形成される流体ジェットはカテーテルを遠位方向に前方に押し出し/前進させて、血管を通して所望の位置までのカテーテルを操作するのを補助する。遠位の多孔質のカフ区画/先端部内の半径方向外側に画定された開口部125の更に別の非垂直の(すなわち、カテーテルの遠位端に向かって遠位に向いている傾斜した角度)配置が
図3Bに示されている。開口部を遠位側に向けて配置することで(
図3B)、カテーテルと血塊との間の空間に追加の流体を供給し、これによって、血塊を取り囲み、吸引下でカテーテル先端部に流れ込む流体の「プール」又は「クラウド」を形成する。この流体はまた、血塊とカテーテルとの間の摩擦を低減する働きもすることができる。また更に、開口部は、一部が垂直に配置されてもよく、一方で、他の開口部は、カテーテルの軸方向に対して非垂直に配置されてもよい(すなわち、近位及び/又は遠位に向いている傾斜した角度)という点において、全て一致する必要はない。
【0021】
図2Cでは、開口部125は、血管を通って標的部位へとカテーテルを前進させるのを補助するために、遠位の多孔質のカフ区画/先端部127内の環状膨張チャンバ122から半径方向外側にしか画定されない。開口部125はまた、吸引中に、捕捉された血塊をカテーテル内に引き込むのを支援するか、又は採取するのを支援するために、遠位の多孔質のカフ区画/先端部127内の環状膨張チャンバ122から半径方向内側に画定される場合もあることが更に企図されている。
図4は、垂直に配置された開口部125が環状膨張チャンバ122から半径方向内側と、半径方向外側の両方に画定される、遠位の多孔質のカフ区画/先端部を描く。したがって、開口部125は、遠位の多孔質のカフ区画/先端127内の環状膨張チャンバ122から半径方向内側及び/又は半径方向外側に、そのような開口部の任意の所望の配置(例えば、垂直、非垂直/傾斜した角度)で画定されてよい。配置の角度は、開口部の間で同じである必要はない。
【0022】
血流を遮断するためにカテーテルの外側表面に接合されたり、接続されたり、取り付けられたり、又は溶接されたりする別個の従来の膨張可能バルーン構成要素の使用の代替として、本発明の血管内カテーテルの遠位の多孔質のカフ区画/先端部127の環状膨張チャンバ122は、半径方向の開口部125のいずれも塞いだり、隔離したり、覆ったりせずに、この目標を達成することができる。具体的には、環状膨張チャンバ122内に導入された流体の圧力及び/又は体積が、半径方向の開口部125を通して分配され得る速度を超える場合、環状膨張チャンバ122に導入された流体の圧力及び体積は増加/増大し、遠位の多孔質のカフ区画/先端部127の外側の輪郭を変化させる(すなわち、超膨張状態に)。
図5A~
図5Dに示される1つの構成では、遠位の多孔質のカフ区画/先端部127の外壁は、適合性のある材料から作製される。環状膨張チャンバ122の遠位端にあることは別にして、環状膨張チャンバ122の内部で、所定の距離だけ互いに隔てられた内側半径方向壁と、外側半径方向壁は、いかなる方法でも固定されない、接合されない、又は繋留されない(すなわち、環状膨張チャンバには、いずれの内部接続リブも存在しない)。したがって、環状膨張チャンバ122内に注入/導入された流体の圧力及び体積が増加/増大するにつれて、適合性のある外壁は半径方向外側に膨らむ。環状膨張チャンバ122内で十分な圧力が増加/増大した場合、遠位の多孔質のカフ区画の外壁の拡張した又は拡大した直径は、血管の内壁と物理的に接触し、それを封止して、そこを通る血流を阻止する。環状膨張チャンバ122には、いかなる内部接続リブも存在しないため、高度に加圧された流体による膨張は、遠位の多孔質のカフ区画/先端部127の、内壁の輪郭に対する、外壁の半径方向外側に膨らむ輪郭(膨張したバルーンと同様)を作り出す。
【0023】
外側輪郭を膨らますのではなくその代わりに、遠位の多孔質のカフ区画/先端部127は、遠位の多孔質のカフ区画/先端部が、開口部125を通して分配することができるのを超える圧力及び体積で環状膨張チャンバ122内への流体の注入を受けるときに、遠位の多孔質のカフ区画/先端部が外向きに広がって円錐漏斗形状を形成するように構成されてもよい。フレア状の円錐漏斗形状を有する拡大した/拡張した状態のカテーテルの遠位のカフ区画/先端部の軸方向の断面図が
図6Aに示され、その非拡大/非拡張状態が
図6Bに示されている。フレア状の円錐漏斗形状の遠位の多孔質のカフ区画/先端部の最大直径は、最も遠位の端部を占めており、反対側の近位端は、遠位の多孔質のカフ区画/先端部の近位のカテーテルの残りの管状本体のものと実質的に等しい直径を有する。非フレア状態では、遠位の多孔質のカフ区画/先端部の直径(内径及び外径の両方)は、遠位の多孔質のカフ区画/先端部の近位のカテーテルの残りの管状本体部分の直径(内径及び外径の両方)と実質的に等しい。遠位の多孔質のカフ区画/先端部を円錐漏斗形状に広げることは、環状膨張チャンバ122自体の内部に配設された複数の接続リブ130(エアベッドのものと同様)を有することによって達成される。内部接続リブ130の結果として、環状膨張チャンバ122内の流体の体積及び圧力が増加するにつれて、(バルーンのように膨らむ外壁ではなく)、内壁と外壁は互いに対して実質的に等距離のままであるが、遠位の多孔質のカフ区画/先端部127は、広がって円錐漏斗形状になる。有利には、このような代替的な円錐漏斗形状の構成は、血流を遮断することと、遠位端の拡大した直径がカテーテル内への血塊の完全な採取を最適化することの2つの目的を果たす。
【0024】
カテーテルの外面に封止された従来のバルーンで必要とされるように、収縮させるために吸引又は負圧の適用を必要とする代わりに、本発明の血管内カテーテルの遠位の多孔質のカフ区画/先端部の環状膨張チャンバに高度に加圧された流体を導入することによって生じる隆起又はフレア状の円錐漏斗は、有利にはそれ自体が自動的に収縮する。したがって、遠位の多孔質のカフ区画/先端部の外側輪郭を収縮させるための吸引又は負圧の適用の必要性は排除されている。すなわち、環状膨張チャンバ122内に注入される流体の停止又は圧力の低下は、開口部125を介するその中での加圧流体の自然な自動の自己収縮、及びカテーテルの外側で、かつ環状膨張チャンバ122内で平衡圧が達成されるまでの、遠位の多孔質のカフ区画/先端部の外側輪郭の直径の縮小/減少をもたらす。
【0025】
操作中、血管内カテーテルが血管を通って標的血塊に近接する部位まで進む間の操作性を支援するために、生体適合性流体、好ましくは生理食塩水が、本発明の血管内カテーテルの管状本体の側壁に画定された1つ以上の膨張チャネル120、120’を通して正圧下で注入される。加圧流体は環状膨張チャンバ122に進入し、遠位の多孔質のカフ区画/先端部127の環状膨張チャンバ122から、半径方向外側及び/又は半径方向内側に画定された複数の開口部125を通って(流体ジェットとして)放出される。本発明の血管内カテーテルの遠位の多孔質のカフ区画/先端部の開口部から形成される流体ジェットの「カフ」、「クラウド」又は「ピロー」は、摩擦を最小にし、周囲組織に対する刺激又は外傷のリスクを低減する。低摩擦「カフ」、「クラウド」又は「ピロー」により、流体ジェットによって形成される「クラウド」又は「ピロー」は、血管内カテーテルの遠位端を血塊の面又は表面に近づけるように操作することが可能である。開口部が、遠位の多孔質のカフ区画/先端内の環状膨張チャンバ122から半径方向内側に画定される場合、このとき、内側中央管腔105内でそこから形成される流体ジェットは、カテーテル内への血塊の完全な採取を補助する。
【0026】
カテーテルの遠位端が血塊の近位に位置付けられると、真空(例えば、陰圧)が内側中央管腔105に適用されて、吸引によって血塊をカテーテル内に回収することができる。血塊の完全かつ完全な摂取を最適にするために、カテーテルの遠位端の直径は、血塊の直径よりも大きいことが好ましい。しかしながら、拡張した又は拡大した直径は、蛇行経路のナビゲーションの間は望ましくない。したがって、本発明の血管内カテーテルは、血塊の近位側に近接する血管内の標的部位に前進させるときは、通常の(非拡大/非拡張の)外径サイズの遠位の多孔質のカフ区画/先端部を有する。ひとたび適切に配置されると、圧力下で生体適合性流体を導入するために使用される同じ膨張チャネルを使用して、カテーテルの遠位の多孔質のカフ区画の外側輪郭を、非拡大/非拡張直径を有する第1の状態から拡大した/拡張した直径を有する第2の状態に移行させて、血塊をその中に収容し易くし、それによって血塊の完全な摂取を最適にすることができる。拡大した/拡張した状態にある間、遠位の多孔質のカフ区画の外面の一部が、血管の内壁と物理的に接触し、それらの間に封止を形成する場合、血管内の血流を遮断するという追加の利点が実現されてよい。
【0027】
本発明の血管内カテーテルの遠位の多孔質のカフ区画/先端の周囲で形成される流体ジェットの「カフ」、「クラウド」又は「ピロー」は、標的部位へのカテーテルの送達中に血管の内壁の表面摩擦を低減する。したがって、本発明の血管内カテーテルは、いくつかの用途において、カテーテルの外側表面に適用される低摩擦潤滑性コーティングの必要性を排除することができる。しかしながら、本発明のカテーテルの本発明の範囲内では、低摩擦コーティングも使用することが企図されている。
【0028】
以上、本発明の好ましい実施形態に適用されるような本発明の基本的な新規特徴を示し、記載し、かつ指摘してきたが、当業者であれば、例示されたシステム/装置の形態及び詳細、並びにそれらの操作における様々な省略、置換、及び変更を、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく実施し得ることが理解されよう。例えば、実質的に同じ機能を実質的に同じ方法で実行して同じ結果を達成する要素及び/又は工程の組み合わせは全て、本発明の範囲内に包含されるように明らかに意図される。また、上述のある実施形態から別の実施形態への要素の置き換えも、完全に意図及び想定の範囲内である。また、図面は必ずしも一定の比例尺で描かれておらず、あくまでも概念的なものにすぎない点も理解されるべきである。したがって、添付の特許請求の範囲に示される内容によってのみ限定されるものとする。
【0029】
本明細書に引用された全ての発行済み特許、係属中の特許出願、刊行物、論文、書籍、又は他の参照文献はいずれも、その全体が参照により本明細書に各々援用されている。
【0030】
〔実施の態様〕
(1) 近位端と、反対側の遠位端とを有する血管内カテーテルであって、前記血管内カテーテルは、
環状膨張チャンバから半径方向外側に画定された複数の塞がれていない開口部を有する遠位の多孔質のカフ区画であって、非回転可能である遠位の多孔質のカフ区画と、
前記遠位の多孔質のカフ区画の近位に配設されている管状本体であって、近位端から前記遠位の多孔質のカフ区画まで延在する側壁を有し、内側管腔が軸方向にその中を通って画定されている、管状本体と、を備え、前記管状本体の前記側壁は、前記血管内カテーテルの軸方向に平行な方向に延在する膨張供給チャネルを有する、血管内カテーテル。
(2) 前記管状本体の前記側壁は、単一の層又は複数の層の積層体を含む単一の壁であり、前記膨張供給チャネルは前記単一の壁の中に成形されている、実施態様1に記載の血管内カテーテル。
(3) 前記側壁は、内壁と、外壁とを含む2つの壁を含み、前記膨張供給チャネルは、互いに所定の距離だけ半径方向に隔てられた、前記2つの壁の間に画定された環状膨張供給チャネルである、実施態様1に記載の血管内カテーテル。
(4) 前記遠位の多孔質のカフ区画内にある前記複数の開口部の少なくとも一部は、前記血管内カテーテルの軸方向に対して垂直に配置されている、実施態様1に記載の血管内カテーテル。
(5) 前記遠位の多孔質のカフ区画内にある前記複数の開口部の少なくとも一部は、前記血管内カテーテルの軸方向に対して非垂直の角度で配置されており、前記非垂直の角度は、前記血管内カテーテルの前記近位端に向かって傾斜した角度であるか、又は前記血管内カテーテルの前記遠位端に向かって傾斜した角度である、実施態様1に記載の血管内カテーテル。
【0031】
(6) 前記遠位の多孔質のカフ区画は、前記環状膨張チャンバと前記内側管腔との間で流体連通している、半径方向内側に画定された複数の開口部を有する、実施態様1に記載の血管内カテーテル。
(7) 前記環状膨張チャンバは、内部接続リブを有さず、超膨張状態では、前記遠位の多孔質のカフ区画の外側表面の少なくとも一部は半径方向外向きに膨張可能である、実施態様1に記載の血管内カテーテル。
(8) 前記環状膨張チャンバは複数の内部接続リブを有し、超膨張状態では、前記遠位のカフ区間はフレア状になって円錐漏斗を形成する、実施態様1に記載の血管内カテーテル。
(9) 前記複数の開口部は、外側が覆われていないままである、実施態様1に記載の血管内カテーテル。
(10) 近位端と、反対側の遠位端とを有する血管内カテーテルを使用するための方法であって、前記血管内カテーテルは、環状膨張チャンバから半径方向外側に画定された複数の塞がれていない開口部を有する遠位の多孔質のカフ区間であって、非回転可能である遠位の多孔質のカフ区画と、前記遠位の多孔質のカフ区画の近位に配設されている管状本体であって、近位端から前記遠位の多孔質のカフ区画まで延在する側壁を有し、内側管腔がその中を通って軸方向に画定されている、管状本体と、を含み、前記管状本体の前記側壁は、前記血管内カテーテルの軸方向に平行な方向に延在する膨張供給チャネルを有する、方法であって、前記方法は、
前記遠位端が血管内の血塊に近接するように前記血管内カテーテルをナビゲートしている間に、加圧流体を前記膨張供給チャネル内に注入し、前記管状本体の前記遠位の多孔質のカフ区画内に画定された前記複数の開口部から前記血管内に排出される流体ジェットのカフを形成することによって、前記血管内カテーテルの外面と、前記血管の内壁との間の摩擦を最小限にするステップを含む、方法。
【0032】
(11) ひとたび前記血管内カテーテルの前記遠位端が前記血塊に近接して位置決めされると、前記遠位の多孔質のカフ区画の外側表面の少なくとも一部が半径方向外向きに拡大するように、前記環状膨張チャンバ内に注入される前記流体の前記圧力を増加させるステップを更に含み、
前記遠位の多孔質のカフ区画の前記拡大された外側表面の少なくとも一部は、前記血管の前記内壁に物理的に接触し、そこを通る血流を阻止する、実施態様10に記載の方法。
(12) 前記環状膨張チャンバは内部接続リブを有さず、前記遠位の多孔質のカフ区画の前記外側表面の前記拡大した部分が半径方向外向きに膨らむ超膨張状態に移行させるために、前記環状膨張チャンバ内に十分な流体を導入するステップを更に含む、実施態様11に記載の方法。
(13) 前記環状膨張チャンバは複数の内部接続リブを有し、前記遠位の多孔質のカフ区画の前記拡大した部分がフレア状の円錐漏斗を形成するように、前記環状膨張チャンバ内に十分な流体を導入するステップを更に含む、実施態様11に記載の方法。
(14) 前記管状本体の前記側壁は、単一の層又は複数の層の積層体を含む単一の壁であり、前記膨張供給チャネルは前記単一の壁の中に成形されている、実施態様10に記載の方法。
(15) 前記側壁は、内壁と、外壁とを含む2つの壁を含み、前記膨張供給チャネルは、互いに所定の距離だけ半径方向に隔てられた、前記2つの壁の間に画定された環状膨張供給チャネルである、実施態様10に記載の方法。
【0033】
(16) 前記遠位の多孔質のカフ区画内にある前記複数の開口部の少なくとも一部は、前記血管内カテーテルの軸方向に対して垂直に配置されている、実施態様10に記載の方法。
(17) 前記遠位の多孔質のカフ区画内にある前記複数の開口部の少なくとも一部は、前記血管内カテーテルの軸方向に対して非垂直の角度で配置されており、前記非垂直の角度は、前記血管内カテーテルの前記近位端に向かって傾斜した角度であるか、又は前記血管内カテーテルの前記遠位端に向かって傾斜した角度である、実施態様10に記載の方法。
(18) 前記遠位の多孔質のカフ区画は、前記環状膨張チャンバと前記内側管腔との間で流体連通している、半径方向内側に画定された複数の開口部を有する、実施態様10に記載の方法。
(19) 前記複数の開口部は、外側が覆われていないままである、実施態様10に記載の方法。
(20) 前記複数の開口部から排出される流体ジェットの前記カフは、前記血管内カテーテルの前記遠位端と前記血管の前記内壁との間に潤滑性を提供する、実施態様10に記載の方法。
【0034】
(21) 前記複数の開口部から排出される前記流体ジェットの前記カフは、潤滑性コーティングの必要性を排除する、実施態様20に記載の方法。