IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ SEIオプティフロンティア株式会社の特許一覧

特許7648039融着接続機、融着接続システム、及び光ファイバを融着接続する方法
<>
  • 特許-融着接続機、融着接続システム、及び光ファイバを融着接続する方法 図1
  • 特許-融着接続機、融着接続システム、及び光ファイバを融着接続する方法 図2
  • 特許-融着接続機、融着接続システム、及び光ファイバを融着接続する方法 図3
  • 特許-融着接続機、融着接続システム、及び光ファイバを融着接続する方法 図4
  • 特許-融着接続機、融着接続システム、及び光ファイバを融着接続する方法 図5
  • 特許-融着接続機、融着接続システム、及び光ファイバを融着接続する方法 図6
  • 特許-融着接続機、融着接続システム、及び光ファイバを融着接続する方法 図7
  • 特許-融着接続機、融着接続システム、及び光ファイバを融着接続する方法 図8
  • 特許-融着接続機、融着接続システム、及び光ファイバを融着接続する方法 図9
  • 特許-融着接続機、融着接続システム、及び光ファイバを融着接続する方法 図10
  • 特許-融着接続機、融着接続システム、及び光ファイバを融着接続する方法 図11
  • 特許-融着接続機、融着接続システム、及び光ファイバを融着接続する方法 図12
  • 特許-融着接続機、融着接続システム、及び光ファイバを融着接続する方法 図13
  • 特許-融着接続機、融着接続システム、及び光ファイバを融着接続する方法 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】融着接続機、融着接続システム、及び光ファイバを融着接続する方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/255 20060101AFI20250311BHJP
【FI】
G02B6/255
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022515384
(86)(22)【出願日】2021-04-12
(86)【国際出願番号】 JP2021015225
(87)【国際公開番号】W WO2021210552
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2024-02-21
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2020/016859
(32)【優先日】2020-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000110309
【氏名又は名称】住友電工オプティフロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】大木 一芳
(72)【発明者】
【氏名】遊佐 英明
【審査官】奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-020997(JP,A)
【文献】特開2013-054192(JP,A)
【文献】特開2002-169050(JP,A)
【文献】特開2018-106562(JP,A)
【文献】特開2016-152011(JP,A)
【文献】特開2016-097228(JP,A)
【文献】特開2015-172736(JP,A)
【文献】特開2020-020998(JP,A)
【文献】特開2019-118940(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102567745(CN,A)
【文献】国際公開第2005/017585(WO,A1)
【文献】壁谷 佳典,機械学習のビジネス適用事例紹介,情報処理学会 デジタルプラクティス Vol.7 No.4 [online],日本,情報処理学会,2016年10月,第370-377頁
【文献】進藤 智則,古野電気が船舶向け自動運転を強化学習で実現 ガウス過程でダイナミクス自動獲得、実機学習可能に,NIKKEI Robotics 第51号,日本,日経BP Nikkei Business Publications,Inc.,2019年10月,第3-11頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/24
G02B 6/255
G02B 6/36- 6/40
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の光ファイバを撮像して撮像データを生成する撮像部と、
前記撮像部から提供された撮像データから得られる複数の特徴量に基づいて前記一対の光ファイバそれぞれの種類を判別する判別部であって、光ファイバの種類を判別するための第1及び第2の判別アルゴリズムを有し、前記第1及び第2の判別アルゴリズムのいずれかによる判別結果を採用し、前記第1の判別アルゴリズムは光ファイバの撮像データから得られる複数の特徴量と前記特徴量を得た光ファイバの種類との相関に基づいて機械学習以外の方法により予め規定されたものであり、前記第2の判別アルゴリズムは接続しようとする光ファイバの種類を前記接続しようとする光ファイバの撮像データに基づいて判別するための判別モデルを含み、前記判別モデルは光ファイバの撮像データから得られる複数の特徴量と前記特徴量を得た光ファイバの種類との対応関係を示すサンプルデータを用いた機械学習により作成されたものである前記判別部と、
前記判別部における判別結果に基づいて、前記一対の光ファイバの種類の組み合わせに応じた接続条件にて前記一対の光ファイバを相互に融着接続する接続部と、
を備え、
前記判別部は、
前記複数の特徴量に含まれる所定の特徴量が閾値よりも大きい場合に前記第1及び第2の判別アルゴリズムのうち一方による判別結果を採用し、前記所定の特徴量が前記閾値よりも小さい場合に前記第1及び第2の判別アルゴリズムのうち他方による判別結果を採用する第1の動作、
前記第1の判別アルゴリズムにより前記一対の光ファイバそれぞれの種類を判別できた場合にその判別結果を採用し、前記第1の判別アルゴリズムにより前記一対の光ファイバそれぞれの種類を判別できなかった場合に前記第2の判別アルゴリズムによる判別結果を採用する第2の動作、
前記撮像部が前記一対の光ファイバを少なくとも2回撮像して生成した少なくとも2回分の撮像データそれぞれから、前記複数の特徴量からなる少なくとも2つの特徴量群それぞれを得て、前記少なくとも2つの特徴量群間における所定の特徴量のばらつきが閾値よりも大きい場合に、前記第1及び第2の判別アルゴリズムのうち前記所定の特徴量のばらつきに起因する判別精度の低下が小さい方の判別アルゴリズムによる判別結果を採用する第3の動作、および
前記撮像部が前記一対の光ファイバを少なくとも2回撮像して生成した少なくとも2回分の撮像データそれぞれから、前記複数の特徴量からなる少なくとも2つの特徴量群それぞれを得て、前記少なくとも2つの特徴量群のそれぞれに基づいて前記第1及び第2の判別アルゴリズムを実行し、前記第1の判別アルゴリズムによる、前記少なくとも2つの特徴量群にそれぞれ対応する少なくとも2つの判別結果と、前記第2の判別アルゴリズムによる、前記少なくとも2つの特徴量群にそれぞれ対応する少なくとも2つの判別結果とのうち、前記少なくとも2つの判別結果間のばらつきが小さい方を採用する第4の動作、
のうち少なくとも一つの動作を行う、融着接続機。
【請求項2】
前記機械学習は深層学習である、請求項1に記載の融着接続機。
【請求項3】
前記閾値は、前記所定の特徴量が変化したときの、前記第1の判別アルゴリズムによる判別精度と前記第2の判別アルゴリズムによる判別精度との比較に基づいて決定された値である、請求項1または請求項2に記載の融着接続機。
【請求項4】
前記判別部は、前記第2の動作において、先ず前記第1の判別アルゴリズムを実行し、前記第1の判別アルゴリズムにより前記一対の光ファイバそれぞれの種類を判別できなかった場合に前記第2の判別アルゴリズムを実行する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の融着接続機。
【請求項5】
前記判別部は、前記第2の動作において、前記第1の判別アルゴリズムと、前記第2の判別アルゴリズムとを並行して実行する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の融着接続機。
【請求項6】
前記第3の動作および前記第4の動作の少なくとも一方において、前記一対の光ファイバの光軸方向における、前記少なくとも2回分の撮像データの撮像位置が互いに同じである、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の融着接続機。
【請求項7】
前記第3の動作および前記第4の動作の少なくとも一方において、前記一対の光ファイバの光軸方向における、前記少なくとも2回分の撮像データの撮像位置が互いに異なる、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の融着接続機。
【請求項8】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の融着接続機である複数の融着接続機と、
前記複数の融着接続機から前記サンプルデータを集めて前記機械学習を行って前記判別モデルを作成し、前記判別モデルを前記複数の融着接続機に提供するモデル作成装置と、
を備える、融着接続システム。
【請求項9】
前記モデル作成装置は、前記複数の融着接続機を撮像データの傾向が類似していると推定される二以上のグループに分類してグループ毎に前記判別モデルを作成し、
各融着接続機の前記判別部の前記第2の判別アルゴリズムは、前記各融着接続機が属する前記グループに対応する前記判別モデルを前記モデル作成装置から得る、請求項に記載の融着接続システム。
【請求項10】
前記モデル作成装置の前記機械学習に供される前記サンプルデータには、前記第1の判別アルゴリズムにより前記一対の光ファイバそれぞれの種類を判別できたときの前記サンプルデータと、前記第1の判別アルゴリズムにより前記一対の光ファイバそれぞれの種類を判別できなかったとき及び誤判別したときの前記サンプルデータとの双方が含まれる、請求項又は請求項に記載の融着接続システム。
【請求項11】
前記モデル作成装置の前記機械学習に供される前記サンプルデータには、前記第1の判別アルゴリズムにより前記一対の光ファイバそれぞれの種類を判別できたときの前記サンプルデータのみが含まれ、
各融着接続機の前記判別部は、前記第1の判別アルゴリズムにより前記一対の光ファイバそれぞれの種類を判別できなかったとき及び誤判別したときの自らの前記サンプルデータを用いて前記機械学習を行って前記判別モデルを改良する、請求項又は請求項に記載の融着接続システム。
【請求項12】
前記モデル作成装置の前記機械学習に供される前記サンプルデータには、前記第1の判別アルゴリズムにより前記一対の光ファイバそれぞれの種類を判別できたときの前記サンプルデータと、前記第1の判別アルゴリズムにより前記一対の光ファイバそれぞれの種類を判別できなかったとき及び誤判別したときの前記サンプルデータとの双方が含まれ、
各融着接続機の前記判別部は、前記第1の判別アルゴリズムにより前記一対の光ファイバそれぞれの種類を判別できなかったときの自らの前記サンプルデータ(但し、前記モデル作成装置に提供した前記サンプルデータを除く)を用いて前記機械学習を行って前記判別モデルを改良する、請求項又は請求項に記載の融着接続システム。
【請求項13】
一対の光ファイバを撮像して撮像データを生成する工程と、
前記生成する工程において取得された撮像データから得られる複数の特徴量に基づいて前記一対の光ファイバそれぞれの種類を判別する工程であって、光ファイバの種類を判別するための第1及び第2の判別アルゴリズムのいずれかによる判別結果を採用し、前記第1の判別アルゴリズムは光ファイバの撮像データから得られる複数の特徴量と前記特徴量を得た光ファイバの種類との相関に基づいて機械学習以外の方法により予め規定されたものであり、前記第2の判別アルゴリズムは接続しようとする光ファイバの種類を前記接続しようとする光ファイバの撮像データに基づいて判別するための判別モデルを含み、前記判別モデルは光ファイバの撮像データから得られる複数の特徴量と前記特徴量を得た光ファイバの種類との対応関係を示すサンプルデータを用いた機械学習により作成されたものである工程と、
前記判別する工程における判別結果に基づいて、前記一対の光ファイバの種類の組み合わせに応じた接続条件にて前記一対の光ファイバを相互に融着接続する工程と、
を含み、
前記判別する工程は、
前記複数の特徴量に含まれる所定の特徴量が閾値よりも大きい場合に前記第1及び第2の判別アルゴリズムのうち一方による判別結果を採用し、前記所定の特徴量が前記閾値よりも小さい場合に前記第1及び第2の判別アルゴリズムのうち他方による判別結果を採用する工程、
前記第1の判別アルゴリズムにより前記一対の光ファイバそれぞれの種類を判別できた場合にその判別結果を採用し、前記第1の判別アルゴリズムにより前記一対の光ファイバそれぞれの種類を判別できなかった場合に前記第2の判別アルゴリズムによる判別結果を採用する工程、
前記一対の光ファイバを少なくとも2回撮像して生成した少なくとも2回分の撮像データそれぞれから、前記複数の特徴量からなる少なくとも2つの特徴量群それぞれを得て、前記少なくとも2つの特徴量群間における所定の特徴量のばらつきが閾値よりも大きい場合に、前記第1及び第2の判別アルゴリズムのうち前記所定の特徴量のばらつきに起因する判別精度の低下が小さい方の判別アルゴリズムによる判別結果を採用する工程、および
前記一対の光ファイバを少なくとも2回撮像して生成した少なくとも2回分の撮像データそれぞれから、前記複数の特徴量からなる少なくとも2つの特徴量群それぞれを得て、前記少なくとも2つの特徴量群に基づいて前記第1及び第2の判別アルゴリズムを実行し、前記第1の判別アルゴリズムによる、前記少なくとも2つの特徴量群にそれぞれ対応する少なくとも2つの判別結果と、前記第2の判別アルゴリズムによる、前記少なくとも2つの特徴量群にそれぞれ対応する少なくとも2つの判別結果とのうち、前記少なくとも2つの判別結果間のばらつきが小さい方を採用する工程、
のうち少なくとも一つの工程を含む、光ファイバを融着接続する方法。
【請求項14】
種類が既知である二以上の光ファイバを撮像して撮像データを生成し、その撮像データから得られる複数の特徴量に基づいて、前記第1及び第2の判別アルゴリズムにより前記二以上の光ファイバの種類を判別し、前記第1及び第2の判別アルゴリズムのうち判別精度が高い方を前記判別する工程において採用する、請求項13に記載の光ファイバを融着接続する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、融着接続機、融着接続システム、及び光ファイバを融着接続する方法に関する。本出願は、2020年4月17日出願の国際出願第PCT/JP2020/016859号に基づく優先権を主張し、前記国際出願に記載された全ての記載内容を援用する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2には、融着接続機、融着接続システム、及び光ファイバを融着接続する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-169050号公報
【文献】特開2020-20997号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示の融着接続機は、撮像部、判別部及び接続部を備える。撮像部は、一対の光ファイバを撮像して撮像データを生成する。判別部は、撮像部から提供された撮像データから得られる複数の特徴量に基づいて一対の光ファイバそれぞれの種類を判別する。判別部は、光ファイバの種類を判別するための第1及び第2の判別アルゴリズムを有し、第1及び第2の判別アルゴリズムのいずれかによる判別結果を採用する。第1の判別アルゴリズムは、光ファイバの撮像データから得られる複数の特徴量と前記特徴量を得た光ファイバの種類との相関に基づいて機械学習以外の方法により予め規定されたものである。第2の判別アルゴリズムは、接続しようとする光ファイバの種類を前記接続しようとする光ファイバの撮像データに基づいて判別するための判別モデルを含む。判別モデルは、光ファイバの撮像データから得られる複数の特徴量と前記特徴量を得た光ファイバの種類との対応関係を示すサンプルデータを用いた機械学習により作成されたものである。接続部は、判別部における判別結果に基づいて、一対の光ファイバの種類の組み合わせに応じた接続条件にて一対の光ファイバを相互に融着接続する。
【0005】
本開示の融着接続システムは、上記融着接続機である複数の融着接続機とモデル作成装置とを備える。モデル作成装置は、複数の融着接続機からサンプルデータを集めて機械学習を行って判別モデルを作成し、前記判別モデルを複数の融着接続機に提供する。
【0006】
本開示の光ファイバを融着接続する方法は、撮像データを生成する工程と、判別する工程と、融着接続する工程と、を含む。撮像データを生成する工程では、一対の光ファイバを撮像して撮像データを生成する。判別する工程では、撮像データを生成する工程において取得された撮像データから得られる複数の特徴量に基づいて一対の光ファイバそれぞれの種類を判別する。判別する工程では、光ファイバの種類を判別するための第1及び第2の判別アルゴリズムのいずれかによる判別結果を採用する。第1の判別アルゴリズムは、光ファイバの撮像データから得られる複数の特徴量と前記特徴量を得た光ファイバの種類との相関に基づいて、機械学習以外の方法により予め規定されたものである。第2の判別アルゴリズムは、接続しようとする光ファイバの種類を前記接続しようとする光ファイバの撮像データに基づいて判別するための判別モデルを含む。判別モデルは、光ファイバの撮像データから得られる複数の特徴量と前記特徴量を得た光ファイバの種類との対応関係を示すサンプルデータを用いた機械学習により作成されたものである。融着接続する工程では、判別する工程における判別結果に基づいて、一対の光ファイバの種類の組み合わせに応じた接続条件にて一対の光ファイバを相互に融着接続する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る光ファイバ融着接続システムの構成を概略的に示す図である。
図2図2は、融着接続機の外観を示す斜視図であって、風防カバーが閉じている状態の外観を示す。
図3図3は、融着接続機の外観を示す斜視図であって、風防カバーが開けられて融着接続機の内部構造が見える状態の外観を示す。
図4図4は、融着接続機の機能的な構成を示すブロック図である。
図5図5は、融着接続機のハードウェア構成を示すブロック図である。
図6図6は、接続部の動作を示す図である。
図7図7は、接続部の動作を示す図である。
図8図8は、接続部の動作を示す図である。
図9図9は、一方の光ファイバの端面を正面から見た図である。
図10図10は、撮像部において得られる撮像データを模式的に示す図である。
図11図11は、モデル作成装置の機能的な構成を示すブロック図である。
図12図12は、モデル作成装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図13図13は、一実施形態に係る方法を示すフローチャートである。
図14図14は、変形例に係る方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示が解決しようとする課題]
光ファイバには様々な種類が存在する。光ファイバの種類は、例えば、用途及び光学特性に関する特徴、並びに構造的な特徴によって区別される。用途及び光学特性に関する特徴としては、シングルモードファイバ(SMF:Single Mode Fiber)、マルチモードファイバ(MMF:Multi Mode Fiber)、汎用シングルモードファイバ、分散シフト・シングルモードファイバ(DSF:Dispersion Shifted SMF)、及び非零分散シフト・シングルモードファイバ(NZDSF:Non-Zero DSF)といった特徴がある。構造的な特徴としては、光ファイバの直径、コア径、コア及びクラッドの材質、径方向の屈折率分布等がある。そして、一対の光ファイバ同士を融着接続する際の最適な融着条件、例えば放電時間及び光ファイバ同士の相対位置は、一対の光ファイバの種類の組み合わせに応じて変化する。しかしながら、既に敷設された光ファイバの種類は不明であることが多い。したがって、接続対象である一対の光ファイバの種類の組み合わせを、融着接続機において正確に判別することが重要となる。
【0009】
例えば、特許文献2に記載されたシステムでは、光ファイバの径方向の輝度分布データからその光ファイバの種類を判別し得る判別モデルを、機械学習を用いて作成している。しかしながら、機械学習による判別モデルのみを用いても、その判別精度には限りがある。
【0010】
[本開示の効果]
本開示によれば、光ファイバ種類の判別精度を高めることができる融着接続機、融着接続システム、及び光ファイバを融着接続する方法を提供することが可能となる。
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態を列記して説明する。一実施形態に係る融着接続機は、撮像部、判別部及び接続部を備える。撮像部は、一対の光ファイバを撮像して撮像データを生成する。判別部は、撮像部から提供された撮像データから得られる複数の特徴量に基づいて一対の光ファイバそれぞれの種類を判別する。判別部は、光ファイバの種類を判別するための第1及び第2の判別アルゴリズムを有し、第1及び第2の判別アルゴリズムのいずれかによる判別結果を採用する。第1の判別アルゴリズムは、光ファイバの撮像データから得られる複数の特徴量と前記特徴量を得た光ファイバの種類との相関に基づいて、機械学習以外の方法により予め規定されたものである。第2の判別アルゴリズムは、接続しようとする光ファイバの種類を前記接続しようとする光ファイバの撮像データに基づいて判別するための判別モデルを含む。判別モデルは、光ファイバの撮像データから得られる複数の特徴量と前記特徴量を得た光ファイバの種類との対応関係を示すサンプルデータを用いた機械学習により作成されたものである。接続部は、判別部における判別結果に基づいて、一対の光ファイバの種類の組み合わせに応じた接続条件にて一対の光ファイバを相互に融着接続する。
【0012】
一実施形態に係る融着接続システムは、上記融着接続機である複数の融着接続機とモデル作成装置とを備える。モデル作成装置は、複数の融着接続機からサンプルデータを集めて機械学習を行って判別モデルを作成し、該判別モデルを複数の融着接続機に提供する。
【0013】
一実施形態に係る光ファイバを融着接続する方法は、撮像データを生成する工程と、判別する工程と、融着接続する工程と、を含む。撮像データを生成する工程は、一対の光ファイバを撮像して撮像データを生成する。判別する工程では、生成する工程において取得された撮像データから得られる複数の特徴量に基づいて一対の光ファイバそれぞれの種類を判別する。判別する工程では、光ファイバの種類を判別するための第1及び第2の判別アルゴリズムのいずれかによる判別結果を採用する。第1の判別アルゴリズムは、光ファイバの撮像データから得られる複数の特徴量と前記特徴量を得た光ファイバの種類との相関に基づいて、機械学習以外の方法により予め規定されたものである。第2の判別アルゴリズムは、接続しようとする光ファイバの種類を前記接続しようとする光ファイバの撮像データに基づいて判別するための判別モデルを含む。判別モデルは、光ファイバの撮像データから得られる複数の特徴量と前記特徴量を得た光ファイバの種類との対応関係を示すサンプルデータを用いた機械学習により作成されたものである。融着接続する工程では、判別する工程における判別結果に基づいて、一対の光ファイバの種類の組み合わせに応じた接続条件にて一対の光ファイバを相互に融着接続する。
【0014】
上記の融着接続機、融着接続システム、及び融着接続する方法では、第1及び第2の判別アルゴリズムを用いて光ファイバの種類を判別する。このうち第1の判別アルゴリズムは、光ファイバの撮像データから得られる複数の特徴量とその光ファイバの種類との相関に基づいて機械学習以外の方法により予め規定されたものであり、従来と同等の判別精度を期待できる。第2の判別アルゴリズムは、複数の特徴量と光ファイバの種類との対応関係を示すサンプルデータを用いた機械学習により作成された判別モデルを含む。したがって、第1の判別アルゴリズムにて判別不能又は誤判別をしがちな光ファイバの種類に対して、機械学習に基づく高精度な判別を期待できる。故に、上記の融着接続機、融着接続システム、及び融着接続する方法によれば、第1及び第2の判別アルゴリズムのいずれかによる判別結果を採用することによって、従来と比較して光ファイバ種類の判別精度を高めることができる。
【0015】
上記の融着接続機、融着接続システム、及び融着接続する方法において、機械学習は深層学習であってもよい。この場合、光ファイバ種類の判別精度を更に高めることができる。
【0016】
上記の融着接続機、融着接続システム、及び融着接続する方法において、判別部は(判別する工程では)、複数の特徴量に含まれる所定の特徴量が閾値よりも大きい場合に第1及び第2の判別アルゴリズムのうち一方による判別結果を採用し、所定の特徴量が閾値よりも小さい場合に第1及び第2の判別アルゴリズムのうち他方による判別結果を採用してもよい。例えばこのような方式によって、第1及び第2の判別アルゴリズムのうちいずれの判別結果を採用するかを容易に選択することができる。この場合、閾値は、所定の特徴量が変化したときの、第1の判別アルゴリズムによる判別精度と第2の判別アルゴリズムによる判別精度との比較に基づいて決定された値であってもよい。これにより、光ファイバ種類の判別精度を更に高めることができる。
【0017】
上記の融着接続機、融着接続システム、及び融着接続する方法において、判別部は(判別する工程では)、第1の判別アルゴリズムにより一対の光ファイバそれぞれの種類を判別できた場合にその判別結果を採用し、第1の判別アルゴリズムにより一対の光ファイバそれぞれの種類を判別できなかった場合に第2の判別アルゴリズムによる判別結果を採用してもよい。例えばこのような方式によって、光ファイバ種類の判別精度を高めることができる。この場合、判別部は(判別する工程では)、先ず第1の判別アルゴリズムを実行し、第1の判別アルゴリズムにより一対の光ファイバそれぞれの種類を判別できなかった場合に第2の判別アルゴリズムを実行してもよい。これにより、判別部の(判別する工程における)演算量を低減することができる。或いは、判別部は(判別する工程では)、第1の判別アルゴリズムと、第2の判別アルゴリズムとを並行して実行してもよい。これにより、最終的な判別結果を得るまでの所要時間を短縮することができる。
【0018】
上記の融着接続機、融着接続システム、及び融着接続する方法において、撮像部は(撮像データを生成する工程では)、一対の光ファイバを少なくとも2回撮像して少なくとも2回分の撮像データを生成してもよい。そして、判別部は(判別する工程では)、少なくとも2回分の撮像データから得られる、複数の特徴量からなる少なくとも2つの特徴量群間における所定の特徴量のばらつきが閾値よりも大きい場合に、第1及び第2の判別アルゴリズムのうち一方による判別結果を採用してもよい。判別部は(判別する工程では)、所定の特徴量のばらつきが閾値よりも小さい場合に、第1及び第2の判別アルゴリズムのうちいずれかによる判別結果を採用してもよい。これにより、光ファイバ種類の判別精度を更に高めることができる。
【0019】
上記の融着接続機、融着接続システム、及び融着接続する方法において、撮像部は(撮像データを生成する工程では)、一対の光ファイバを少なくとも2回撮像して少なくとも2回分の撮像データを生成してもよい。そして、判別部は(判別する工程では)、少なくとも2回分の撮像データから得られる、複数の特徴量からなる少なくとも2つの特徴量群に基づいて第1及び第2の判別アルゴリズムを実行してもよい。判別部は(判別する工程では)、第1の判別アルゴリズムによる少なくとも2つの判別結果と、第2の判別アルゴリズムによる少なくとも2つの判別結果とのうち、判別結果のばらつきが小さい方を採用してもよい。これにより、光ファイバ種類の判別精度を更に高めることができる。
【0020】
上記の融着接続機、融着接続システム、及び融着接続する方法において、一対の光ファイバの光軸方向における、上記少なくとも2回分の撮像データの撮像位置は、互いに同じであってもよく、或いは互いに異なってもよい。
【0021】
上記の融着接続システムにおいて、モデル作成装置は、複数の融着接続機を撮像データの傾向が類似していると推定される二以上のグループに分類してグループ毎に判別モデルを作成してもよい。そして、各融着接続機の判別部の第2の判別アルゴリズムは、その融着接続機が属するグループに対応する判別モデルをモデル作成装置から得てもよい。これにより、撮像データの傾向が類似しているグループ内、例えば、融着接続機の機械的及び構造的なばらつきが少ないグループ内、撮像部の機械的及び構造的なばらつきが少ないグループ内に限定して機械学習を行うことができる。故に、第2の判別アルゴリズムによる光ファイバ種類の判別精度を更に高めることができる。
【0022】
上記の融着接続システムにおいて、モデル作成装置の機械学習に供されるサンプルデータには、第1の判別アルゴリズムにより一対の光ファイバそれぞれの種類を判別できたときのサンプルデータと、第1の判別アルゴリズムにより一対の光ファイバそれぞれの種類を判別できなかったとき及び誤判別したときのサンプルデータとの双方が含まれてもよい。この場合、第1の判別アルゴリズムが苦手とする光ファイバ種類をモデル作成装置の機械学習に含めることができ、総合的な光ファイバ種類の判別精度を高めることができる。
【0023】
上記の融着接続システムにおいて、モデル作成装置の機械学習に供されるサンプルデータには、第1の判別アルゴリズムにより一対の光ファイバそれぞれの種類を判別できたときのサンプルデータのみが含まれ、各融着接続機の判別部は、第1の判別アルゴリズムにより一対の光ファイバそれぞれの種類を判別できなかったとき及び誤判別したときの自らのサンプルデータを用いて機械学習を行って判別モデルを改良してもよい。この場合、各融着接続機の機械的及び構造的なばらつき、例えば撮像部の機械的及び構造的なばらつき等により第1の判別アルゴリズムでは判別できない光ファイバ種類に対して、第2の判別アルゴリズムの判別精度を融着接続機毎に高めることができる。
【0024】
上記の融着接続システムにおいて、モデル作成装置の機械学習に供されるサンプルデータには、第1の判別アルゴリズムにより一対の光ファイバそれぞれの種類を判別できたときのサンプルデータと、第1の判別アルゴリズムにより一対の光ファイバそれぞれの種類を判別できなかったとき及び誤判別したときのサンプルデータとが含まれてもよい。そして、各融着接続機の判別部は、第1の判別アルゴリズムにより一対の光ファイバそれぞれの種類を判別できなかったとき及び誤判別したときの自らのサンプルデータを用いて機械学習を行って判別モデルを改良してもよい。但し、モデル作成装置に提供したサンプルデータを除く。この場合、第1の判別アルゴリズムが苦手とする光ファイバ種類をモデル作成装置の機械学習に含めることができる。加えて、各融着接続機の機械的及び構造的なばらつき、例えば撮像部の機械的及び構造的なばらつき等により第1の判別アルゴリズムでは判別できない光ファイバ種類に対して、第2の判別アルゴリズムの判別精度を融着接続機毎に高めることができる。故に、総合的な光ファイバ種類の判別精度をより高めることができる。
【0025】
上記の融着接続する方法において、種類が既知である二以上の光ファイバを撮像して撮像データを生成し、その撮像データから得られる複数の特徴量に基づいて、第1及び第2の判別アルゴリズムにより二以上の光ファイバの種類を判別してもよい。そして、第1及び第2の判別アルゴリズムのうち判別精度が高い方を、上記の判別する工程において採用してもよい。これにより、光ファイバ種類の判別精度を更に高めることができる。
【0026】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の、融着接続機、融着接続システム、及び光ファイバを融着接続する方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0027】
図1は、本開示の一実施形態に係る融着接続システム1Aの構成を概略的に示す図である。この融着接続システム1Aは、複数の融着接続機10と、モデル作成装置20とを備える。融着接続機10は、光ファイバの融着接続を行う装置である。モデル作成装置20は、光ファイバの種類を判別するための判別モデルを作成する装置である。モデル作成装置20は、情報通信網30を介して複数の融着接続機10と通信可能なコンピュータである。情報通信網30は、例えばインターネットである。モデル作成装置20の所在地域は、融着接続機10の所在地域から離れている。
【0028】
図2及び図3は、融着接続機10の外観を示す斜視図である。図2は風防カバーが閉じている状態の外観を示し、図3は風防カバーが開けられて融着接続機10の内部構造が見える状態の外観を示す。図2及び図3に示すように、融着接続機10は箱状の筐体2を備えている。この筐体2の上部には、光ファイバ同士を融着接続するための接続部3と、加熱器4とが設けられている。加熱器4は、接続部3において融着接続された光ファイバ同士の接続部分に被せられたファイバ補強スリーブを加熱収縮させる部分である。融着接続機10は、筐体2の内部に配置された撮像部(後述)によって撮像された光ファイバ同士の融着接続状況を表示するモニタ5を備えている。さらに、融着接続機10は、接続部3への風の進入を防止するための風防カバー6を備えている。
【0029】
接続部3は、一対の光ファイバホルダ3aを載置可能なホルダ載置部と、一対のファイバ位置決め部3bと、一対の放電電極3cとを有している。融着対象の光ファイバそれぞれは光ファイバホルダ3aに保持固定され、光ファイバホルダ3aはそれぞれホルダ載置部に載置固定される。ファイバ位置決め部3bは、一対の光ファイバホルダ3aの間に配置され、光ファイバホルダ3aのそれぞれに保持された光ファイバの先端部を位置決めする。放電電極3cは、アーク放電によって光ファイバの先端同士を融着するための電極であって、一対のファイバ位置決め部3bの間に配置されている。
【0030】
風防カバー6は、接続部3を開閉自在に覆うように筐体2に連結されている。風防カバー6の側面6aのそれぞれには、接続部3へ、すなわち光ファイバホルダ3aのそれぞれへ光ファイバを導入するための導入口6bが形成されている。
【0031】
図4は、融着接続機10の機能的な構成を示すブロック図である。図5は、融着接続機10のハードウェア構成を示すブロック図である。図4に示すように、融着接続機10は、機能的には、接続部3、通信部11、撮像部12、特徴量抽出部13、判別部14、及び融着制御部15を備える。撮像部12は、撮像素子と、撮像対象物の拡大像を撮像素子に出力する観察用光学部とを含む。観察用光学部は、例えば一又は複数のレンズを含む。融着接続機10は、図5に示すように、CPU10a、RAM10b、ROM10c、入力装置10d、補助記憶装置10e、及び出力装置10f等のハードウェアを備えるコンピュータを制御部として含む。これらの構成要素がプログラム等により動作することにより、融着接続機10の各機能が実現される。制御部におけるこれらの要素は、前述した接続部3、モニタ5、通信部11としての無線通信モジュール、及び撮像部12と電気的に接続されている。入力装置10dは、モニタ5に一体として設けられたタッチパネルを含んでもよい。
【0032】
通信部11は、例えば、無線LANモジュールにより構成される。通信部11は、インターネット等の情報通信網30を介して、モデル作成装置20との間で各種データの送受信を行う。撮像部12は、接続対象である一対の光ファイバを、その一対の光ファイバが互いに対向した状態で、観察用光学部(レンズ)を介して光ファイバの径方向から撮像し、撮像データを生成する。特徴量抽出部13は、撮像部12から得られる撮像データから、光ファイバの種類を特定するための複数の特徴量を抽出する。特徴量は、光ファイバの径方向における輝度情報を含む。光ファイバの径方向における輝度情報は、例えば、光ファイバの径方向における輝度分布、光ファイバの外径、コアの外径、コア外径と光ファイバの外径の比、光ファイバのコアとクラッドの面積の割合、光ファイバの輝度の総和、光ファイバの断面内における輝度分布の変曲点位置や数、光ファイバのコア部とクラッド部の輝度差、及び特定の輝度以上となるコア部の幅等のうち少なくとも一つを含む。また、特徴量の抽出に用いる撮像データには、接続対象である一対の光ファイバを互いに対向させた状態で放電しつつ取得したものが含まれてもよい。この場合、特徴量は、例えば、特定位置における光強度、及び特定位置における光強度の時間変化のうち少なくとも一つを含む。
【0033】
判別部14は、特徴量抽出部13から提供される複数の特徴量に基づいて、接続対象である一対の光ファイバそれぞれの種類を判別する。そのために、判別部14は、光ファイバの種類を判別するための第1の判別アルゴリズム14a及び第2の判別アルゴリズム14bを記憶して保持している。第1の判別アルゴリズム14aは、複数の特徴量と光ファイバの種類との相関に基づいて、機械学習以外の方法により予め規定されたものである。例えば、第1の判別アルゴリズム14aは、光ファイバの種類に応じた典型的な特徴量の閾値を経験的に、或いは試験により定め、その特徴量と閾値との大小関係に基づいて光ファイバの種類を判別する。一例としては、シングルモードファイバとマルチモードファイバとを判別するために、特徴量としてコア外径を用いる。その場合、特徴量としてのコア外径が所定の閾値より小さい場合にはシングルモードファイバと判定し、コア外径が所定の閾値より大きい場合にはマルチモードファイバと判定する。
【0034】
第2の判別アルゴリズム14bは、接続しようとする光ファイバの種類を前記接続しようとする光ファイバの撮像データに基づいて判別するための判別モデルMdを含む。判別モデルMdは、複数の特徴量と光ファイバの種類との対応関係を示すサンプルデータを用いた、モデル作成装置20による機械学習によって作成されたものである。判別モデルMdは、特徴量抽出部13から得られる特徴量の入力により、一対の光ファイバそれぞれの種類を判別する。これらの判別アルゴリズム14a,14bは、例えばROM10c又は補助記憶装置10eに記憶されている。判別部14は、下記の方式A,B,C,Dの何れかにより、判別アルゴリズム14a,14bのうち何れかによる判別結果を選択して採用する。
【0035】
(方式A)
判別部14は、第1の判別アルゴリズム14aによる誤判別のおそれが低い場合に第1の判別アルゴリズム14aの判別結果を採用し、第1の判別アルゴリズム14aによる誤判別のおそれが高い場合に第2の判別アルゴリズム14bの判別結果を採用する。誤判別のおそれの高低は、例えば、複数の特徴量に含まれる所定の特徴量と閾値との大小により決定され得る。すなわち、複数の特徴量に含まれる所定の特徴量が所定の閾値よりも大きい場合に、判別アルゴリズム14a,14bのうち一方による判別結果を採用し、所定の特徴量が所定の閾値よりも小さい場合に、判別アルゴリズム14a,14bのうち他方による判別結果を採用する。言い換えると、所定の特徴量が所定の閾値よりも小さい(又は大きい)場合に第1の判別アルゴリズム14aを採用し、前記所定の特徴量が所定の閾値よりも大きい(又は小さい)場合に第2の判別アルゴリズム14bを採用する。
【0036】
所定の閾値は、所定の特徴量が変化したときの、第1の判別アルゴリズム14aによる判別精度と、第2の判別アルゴリズム14bによる判別精度との比較に基づいて決定された値である。言い換えると、所定の閾値は、第1の判別アルゴリズム14aと第2の判別アルゴリズム14bとの間で判別精度の高さが逆転するときの所定の特徴量の値である。したがって、所定の特徴量が所定の閾値よりも小さい範囲においては、第1の判別アルゴリズム14aによる判別精度は第2の判別アルゴリズム14bによる判別精度よりも高い(又は低い)。所定の特徴量が所定の閾値よりも大きい範囲においては、第2の判別アルゴリズム14bによる判別精度は第1の判別アルゴリズム14aによる判別精度よりも高い(又は低い)。そして、判別部14は、所定の特徴量と所定の閾値との大小関係に基づき、判別アルゴリズム14a,14bのうち判別精度が高い方の判別結果を採用する。なお、融着接続機10を稼働するにしたがい、判別アルゴリズム14a,14bの判別精度は経時的に変化する。上記の所定の閾値は、例えば、融着接続機10の稼働中に判別アルゴリズム14a,14bの判別精度を逐次算出して決定される。
【0037】
(方式B)
判別部14は、第1の判別アルゴリズム14aにより一対の光ファイバそれぞれの種類を判別できた場合にその判別結果を採用する。判別部14は、第1の判別アルゴリズム14aにより一対の光ファイバそれぞれの種類を判別できなかった場合に、第2の判別アルゴリズム14bによる判別結果を採用する。ここで、「光ファイバ種類を判別できる」とは、特徴量抽出部13により抽出された複数の特徴量に対応する光ファイバ種類が第1の判別アルゴリズム14aにおいて存在することを意味する。「光ファイバ種類を判別できない」とは、特徴量抽出部13により抽出された複数の特徴量に対応する光ファイバ種類が第1の判別アルゴリズム14aにおいて存在しないことを意味する。この方式Bにおいて、判別部14は、先ず第1の判別アルゴリズム14aを実行し、第1の判別アルゴリズム14aにより一対の光ファイバそれぞれの種類を判別できなかった場合に、第2の判別アルゴリズム14bを実行してもよい。或いは、判別部14は、第1の判別アルゴリズム14aと、第2の判別アルゴリズム14bとを並行して実行してもよい。
【0038】
(方式C)
この方式では、まず、撮像部12が、一対の光ファイバF1,F2を少なくとも2回撮像して、少なくとも2回分の撮像データPX,PYを生成する。特徴量抽出部13は、少なくとも2回分の撮像データPX,PYから、複数の特徴量からなる少なくとも2つの特徴量群を抽出する。判別部14は、少なくとも2つの特徴量群間における所定の特徴量のばらつきが閾値よりも大きい場合に、判別アルゴリズム14a,14bのうち一方、すなわち所定の特徴量のばらつきに起因する判別精度の低下が小さい方のアルゴリズムによる判別結果を採用する。判別部14は、所定の特徴量のばらつきが閾値よりも小さい場合には、判別アルゴリズム14a,14bのうちいずれかによる判別結果を採用する。所定の特徴量は、例えばコアの外径である。この方式において、一対の光ファイバF1,F2の光軸方向における、少なくとも2回分の撮像データPX,PYの撮像位置は、互いに同じであってもよく、又は互いに異なってもよい。撮像位置が互いに異なる撮像データPX,PYは、例えば撮像部12を撮像毎に一対の光ファイバF1,F2の光軸方向に移動することによって得られる。
【0039】
(方式D)
この方式においても、まず、撮像部12が、一対の光ファイバF1,F2を少なくとも2回撮像して、少なくとも2回分の撮像データPX,PYを生成する。特徴量抽出部13は、少なくとも2回分の撮像データPX,PYから、複数の特徴量からなる少なくとも2つの特徴量群を抽出する。判別部14は、少なくとも2つの特徴量群に基づいて、判別アルゴリズム14a,14bの双方を実行する。判別部14は、第1の判別アルゴリズム14aによって得られる少なくとも2つの判別結果と、第2の判別アルゴリズム14bによって得られる少なくとも2つの判別結果とのうち、判別結果のばらつきが小さい方を採用する。この方式においても、一対の光ファイバF1,F2の光軸方向における、少なくとも2回分の撮像データPX,PYの撮像位置は、互いに同じであってもよく、又は互いに異なってもよい。
【0040】
判別部14により採用された判別結果は、モニタ5に表示される。使用者は、モニタ5に表示された一対の光ファイバそれぞれの種類が誤りである場合、正しい種類を入力装置10dを介して入力し、判別結果を訂正する。この場合、判別部14は誤判別をしたこととなり、この訂正は、前述した各判別アルゴリズム14a,14bの判別精度にフィードバックされる。或いは、使用者は、判別部14による判別結果に関わりなく、一対の光ファイバそれぞれの種類を入力装置10dを介して入力してもよい。その場合、使用者による入力が優先して採用され、一対の光ファイバそれぞれの種類が特定される。或いは、光ファイバの種類ごとに予め設定された製造条件の一を選択することで、対応する光ファイバの種類そのものの入力に代えても良い。この場合においても、各判別アルゴリズム14a,14bの判別結果の正誤が判別精度にフィードバックされる。
【0041】
融着制御部15は、接続部3の動作を制御する。すなわち、融着制御部15は、使用者によるスイッチの操作を受けて、接続部3における一対の光ファイバの先端同士の当接動作およびアーク放電を制御する。一対の光ファイバの先端同士の当接動作には、ファイバ位置決め部3bによる光ファイバの位置決め処理、すなわち各光ファイバの先端位置の制御が含まれる。アーク放電の制御には、放電パワー、放電開始タイミング及び放電終了タイミングの制御が含まれる。光ファイバの先端位置及び放電パワーといった各種の接続条件は、一対の光ファイバの種類の組み合わせ毎に予め設定されており、例えばROM10cに格納されている。融着制御部15は、判別部14によって判別された、又は使用者によって入力された一対の光ファイバの種類の組み合わせに応じて、接続条件を選択する。すなわち、接続部3は、判別部14における判別結果又は使用者による入力結果に基づいて、一対の光ファイバの種類の組み合わせを認識し、その組み合わせに応じた接続条件にて、一対の光ファイバを相互に融着接続する。
【0042】
接続部3の動作は次のとおりである。まず、図6に示されるように、使用者が、接続対象である一対の光ファイバF1及びF2を、それぞれ光ファイバホルダ3aに保持させる。このとき、光ファイバF1の端面F1aと、光ファイバF2の端面F2aとが、互いに対向して配置される。次に、使用者が、融着接続機10に融着接続の開始を指示する。この指示は、例えばスイッチ入力を介して行われる。この指示を受けて、図7に示すように、融着制御部15が、接続条件として設定された端面F1a,F2aの位置に基づいて、光ファイバF1,F2の位置決めを行う。その後、図8に示すように、融着制御部15が、一対の放電電極3c間のアーク放電を開始する。
【0043】
アーク放電の開始直後は、端面F1a,F2aが互いに離れている。そのアーク放電は、端面F1a,F2aを融着前に予め軟化させるための予備放電に相当する。アーク放電が開始されると、融着制御部15は、ファイバ位置決め部3bの位置を制御することにより、端面F1a,F2aを互いに近づけ、互いに当接させる。そして、融着制御部15は、アーク放電を継続することにより本放電を行う。これにより、端面F1a,F2aが更に軟化し、互いに融着する。
【0044】
本実施形態において、接続条件には、放電開始前における端面F1a,F2aの位置、放電開始前における各端面F1a,F2a同士の間隔、予備放電時間、本放電時間、端面F1a,F2a同士が接した後の押し込み量、端面F1a,F2a同士を押し込んだ後の引き戻し量、予備放電パワー、本放電パワー、及び引戻し時の放電パワーのうち少なくとも一つが含まれる。
【0045】
放電開始前における各端面F1a,F2aの位置とは、図7に示された状態、すなわち予備放電の開始時点における、一対の放電電極3cの中心軸を結ぶ線すなわち放電中心軸を基準とした各端面F1a,F2aの位置をいう。これらの端面位置に応じて、放電中心軸と各端面F1a,F2aとの距離が変わる。これにより加熱量すなわち溶融量が増減する。加えて、また端面F1a,F2a同士が当接するまでの移動に要する時間が変化する。放電開始前における各端面F1a,F2a同士の間隔とは、図7に示された状態、すなわち予備放電の開始時点における端面F1a,F2a同士の間隔をいう。この間隔に応じて、端面F1a,F2a同士が当接するまでの移動に要する時間が変化する。予備放電時間とは、図7に示された状態でアーク放電を開始してから、端面F1a,F2a同士を当接させるために光ファイバF1,F2の相対的な移動を開始するまでの時間をいう。本放電時間とは、端面F1a,F2a同士が当接してから、アーク放電を終了するまでの時間、言い換えると、一対の放電電極3cへの電圧の印加を停止するまでの時間をいう。予備放電と本放電とは、時間的に連続して行われる。端面F1a,F2a同士が接した後の押し込み量とは、光ファイバF1,F2を相対的に移動させて端面F1a,F2a同士を当接させてから、放電中において更に同じ向きに光ファイバF1,F2を相対的に移動させる際の光ファイバホルダ3aの移動距離をいう。端面F1a,F2a同士を押し込んだ後の引き戻し量とは、端面F1a,F2a同士を当接させた後、更に端面F1a,F2aを押し込んでから、放電中において逆向き、すなわち端面F1a,F2a同士が離れる向きに光ファイバF1,F2を相対的に移動させる際の各光ファイバホルダ3aの移動距離をいう。予備放電パワーとは、図7に示された状態でアーク放電を開始してから、端面F1a,F2a同士を当接させるために光ファイバF1,F2の相対的な移動を開始するまでの期間におけるアーク放電パワーをいう。
【0046】
ここで、図9は、一方の光ファイバF2の端面F2aを正面すなわち光軸方向から見た図である。図中の矢印MSX及びMSYは、撮像部12による撮像方向を示している。すなわち、この例では撮像部12が少なくとも2個設置され、2つの撮像部12が、光ファイバF1,F2の径方向であって互いに直交する方向から端面F1a,F2aをそれぞれ撮像する。光ファイバF1,F2を挟んで撮像部12と対向する位置には、光ファイバF1,F2を照明するための光源が配置される。光源は例えば発光ダイオードである。
【0047】
図10は、方向MSXから撮像する撮像部12において得られる撮像データPXと、方向MSYから撮像する撮像部12において得られる撮像データPYとを模式的に示す図である。図10に示されるように、これらの撮像データPX,PYにおいて、光ファイバF1,F2の位置及び形状は、コアCR及びクラッドCLの輪郭により確認される。コアCRは、光源からの照明光によって明るくなる。クラッドCLは、光源からの照明光の屈折により暗くなる。
【0048】
図11は、モデル作成装置20の機能的な構成を示すブロック図である。図12は、モデル作成装置20のハードウェア構成を示すブロック図である。図11に示すように、モデル作成装置20は、機能的には、通信部21及び判別モデル作成部22を備える。モデル作成装置20は、図12に示されるように、CPU20a、RAM20b、ROM20c、入力装置20d、通信モジュール20e、補助記憶装置20f、及び出力装置20g等のハードウェアを備えるコンピュータを含む。これらの構成要素がプログラム等により動作することによって、モデル作成装置20の各機能が実現される。
【0049】
図11に示される通信部21は、インターネット等の情報通信網30(図1を参照)を介して複数の融着接続機10との間で通信を行う。通信部21は、情報通信網30を介して、複数の融着接続機10から、撮像データPX,PYから抽出された特徴量、及び光ファイバF1,F2の種類に関する情報を受信する。通信部21は、撮像データPX,PYから抽出された特徴量に代えて、撮像データPX,PYそのものを受信してもよい。その場合、モデル作成装置20が撮像データPX,PYから特徴量を抽出する。光ファイバF1,F2の種類に関する情報は、使用者によって入力された情報のみであってもよい。言い換えると、通信部21は、使用者によって入力された光ファイバF1,F2の種類に関する情報と、光ファイバF1,F2の撮像データPX,PYから抽出された特徴量又は撮像データそのものを、各融着接続機10から受信する。使用者によって入力された光ファイバF1,F2の種類に関する情報は、光ファイバF1,F2の種類そのものの入力に代えて、光ファイバF1,F2の種類ごとに予め設定された製造条件の一を選択する場合を含む。通信部21は、受信したこれらの情報を、光ファイバF1,F2の撮像データPX,PYから得られる特徴量と、光ファイバF1,F2の種類との対応関係を示すサンプルデータDaとして、判別モデル作成部22に提供する。
【0050】
判別モデル作成部22は、通信部21から提供されたサンプルデータDaを用いて機械学習を行う。そして、判別モデル作成部22は、撮像データPX,PYに基づいて光ファイバF1,F2の種類を判別するための判別モデルMdを作成する。機械学習は、好ましくは深層学習(ディープラーニング)である。機械学習の技法としては、例えばニューラルネットワーク、サポートベクターマシン等、いわゆる教師あり学習に含まれる様々な技法を適用できる。判別モデル作成部22は、稼働中である多数の融着接続機10から得られる膨大なサンプルデータDaを用いて機械学習を継続的に行い、判別モデルMdの精度を高める。本実施形態の判別モデル作成部22は、複数の融着接続機10を、撮像データPX,PYの傾向が類似していると推定される二以上のグループに分類する。そして、判別モデル作成部22は、グループ毎にサンプルデータDaを集めて、判別モデルMdをグループ毎に作成する。判別モデルMdをグループ毎に作成するとは、或るグループに属する複数の融着接続機10から得られるサンプルデータDaのみを用いて機械学習を行い、作成された判別モデルMdを、そのグループに属する融着接続機10のみに提供することを意味する。
【0051】
撮像データPX,PYの傾向が類似していると推定される二以上のグループは、例えば、融着接続機10の検査結果の類似性、融着接続機10の検査条件の類似性、融着接続機10の製造者及び製造日時の類似性、撮像部12の製造者及び製造日時の類似性、融着接続機10の使用場所における環境条件の類似性、融着接続機10の劣化状態の類似性、及び、接続対象光ファイバの種類の類似性、などに基づいて分類される。融着接続機10の検査結果の類似性は、例えば撮像データPX,PYにおける輝度分布等の類似性である。融着接続機10の検査条件の類似性は、融着接続機10の検査の際に基準となる光ファイバを撮像した際の環境条件の類似性であって、例えば、基準となる光ファイバを撮像した際の温度(気温)、湿度、及び気圧のうち少なくとも1つの類似性である。融着接続機10の使用場所における環境条件の類似性は、例えば、融着接続機10の使用場所における温度、湿度、及び気圧のうち少なくとも1つの類似性である。融着接続機10の劣化状態の類似性は、例えば、融着接続機10の放電回数、接続頻度、放電電極3cの汚れ具合、撮像部12の反対側から光ファイバを照明する光源の調光状態、撮像部12の観察用光学部の汚れ具合、及び機器診断結果のうち少なくとも1つの類似性である。
【0052】
こうしてグループ毎にサンプルデータDaを集めて作成された判別モデルMdは、通信部21を介して、それぞれ対応するグループに属する融着接続機10に送信されて提供される。各融着接続機10の判別部14の第2の判別アルゴリズム14bは、その各融着接続機10が属するグループに対応する判別モデルMdをモデル作成装置20から得て、一対の光ファイバF1,F2それぞれの種類を判別する。
【0053】
判別モデル作成部22の機械学習に供されるサンプルデータDaには、第1の判別アルゴリズム14aにより一対の光ファイバF1,F2それぞれの種類を判別できたときのサンプルデータと、第1の判別アルゴリズム14aにより一対の光ファイバF1,F2それぞれの種類を判別できなかったとき及び誤判別したときのサンプルデータとの双方が含まれる。或いは、判別モデル作成部22の機械学習に供されるサンプルデータDaには、第1の判別アルゴリズム14aにより一対の光ファイバF1,F2それぞれの種類を判別できたときのサンプルデータのみが含まれてもよい。その場合、各融着接続機10の判別部14は、第1の判別アルゴリズム14aにより一対の光ファイバF1,F2それぞれの種類を判別できなかったとき及び誤判別したときの自らのサンプルデータを用いて追加の機械学習を行い、自らが保有する判別モデルMdを改良する。
【0054】
判別モデル作成部22の機械学習に供されるサンプルデータDaには、第1の判別アルゴリズム14aにより一対の光ファイバF1,F2それぞれの種類を判別できたときのサンプルデータと、第1の判別アルゴリズム14aにより一対の光ファイバF1,F2それぞれの種類を判別できなかったとき及び誤判別したときのサンプルデータとの双方が含まれてもよい。その場合、各融着接続機10の判別部14は、第1の判別アルゴリズム14aにより一対の光ファイバF1,F2それぞれの種類を判別できなかったとき及び誤判別したときの自らのサンプルデータを用いて追加の機械学習を行い、自らが保有する判別モデルMdを改良してもよい。但し、追加の機械学習に用いるサンプルデータには、モデル作成装置20に提供したサンプルデータDaは含まれない。この場合、融着接続機10の出荷から或る期間又は個数までの、判別できなかった及び誤判別したサンプルデータについては判別モデル作成部22の機械学習に供してもよい。そして、それ以後の判別できなかった及び誤判別したサンプルデータについては、各融着接続機10の判別部14における追加の機械学習に供してもよい。
【0055】
図13は、本実施形態に係る、光ファイバを融着接続する方法を示すフローチャートである。この方法は、上述した融着接続システム1Aを用いて好適に実現され得る。まず、モデル作成工程ST1として、光ファイバの撮像データから得られる複数の特徴量とその光ファイバの種類との対応関係を示すサンプルデータDaを用いて機械学習を行う。そして、接続しようとする光ファイバF1,F2の種類を光ファイバF1,F2の撮像データPX,PYに基づいて判別するための判別モデルMdを作成する。このモデル作成工程ST1では、複数の融着接続機10を、撮像データPX,PYの傾向が類似していると推定される二以上のグループに分類する。そして、グループ毎にサンプルデータDaを集めて判別モデルMdを作成する。
【0056】
次に、撮像工程ST2として、一対の光ファイバF1,F2を撮像して撮像データPX,PYを生成する。続いて、判別工程ST3として、撮像工程ST2において生成された撮像データPX,PYから得られる複数の特徴量に基づいて、一対の光ファイバF1,F2それぞれの種類を判別する。この判別工程ST3では、光ファイバF1,F2の種類を判別するための判別アルゴリズム14a,14bのいずれかによる判別結果を採用する。前述したように、第1の判別アルゴリズム14aは、光ファイバF1,F2の撮像データPX,PYから得られる複数の特徴量と光ファイバF1,F2の種類との相関に基づいて、機械学習以外の方法により予め規定されたものである。第2の判別アルゴリズム14bは、モデル作成工程ST1において作成された判別モデルMdを含む。判別モデルMdは、その判別工程ST3を行う融着接続機10が属するグループに対応するものである。続いて、接続工程ST4として、判別工程ST3における判別結果に基づいて、一対の光ファイバF1,F2の種類の組み合わせに応じた接続条件にて一対の光ファイバF1,F2を相互に融着接続する。
【0057】
図14に示すように、上記の方法において、工程ST5を追加してもよい。工程ST5では、判別アルゴリズム14a,14b毎に判別精度を測定する。この工程ST5は、撮像工程ST2又は判別工程ST3の前に実施される。具体的には、まず、種類が既知である二以上の光ファイバを撮像部12により撮像して、撮像データPX,PYを生成する。次に、特徴量抽出部13において、その撮像データPX,PYから複数の特徴量を抽出する。そして、複数の特徴量に基づいて、判別部14において判別アルゴリズム14a,14bの双方により上記二以上の光ファイバの種類を判別し、判別結果を既知の種類と照合して、判別アルゴリズム14a,14bそれぞれの判別精度を求める。判別工程ST3では、判別アルゴリズム14a,14bのうち、工程ST5における判別精度が高い方を採用する。
【0058】
以上に説明した本実施形態の融着接続システム1A、融着接続機10、及び融着接続する方法によって得られる効果について説明する。本実施形態では、判別アルゴリズム14a及び14bを用いて光ファイバF1,F2の種類を判別する。このうち第1の判別アルゴリズム14aは、光ファイバF1,F2の撮像データから得られる複数の特徴量と前記光ファイバF1,F2の種類との相関に基づいて機械学習以外の方法により予め規定されたものであり、従来と同等の判別精度を期待できる。第2の判別アルゴリズム14bは、複数の特徴量と光ファイバF1,F2の種類との対応関係を示すサンプルデータDaを用いた機械学習により作成された判別モデルMdを含む。したがって、第1の判別アルゴリズム14aにて判別不能又は誤判別をしがちな光ファイバF1,F2の種類に対して、機械学習に基づく高精度な判別を期待できる。故に、本実施形態によれば、判別アルゴリズム14a及び14bのいずれかによる判別結果を採用することによって、従来と比較して光ファイバF1,F2の種類の判別精度を高めることができる。
【0059】
前述したように、機械学習は深層学習であってもよい。この場合、光ファイバF1,F2の種類の判別精度を更に高めることができる。
【0060】
前述したように、判別部14は(判別工程ST3では)、複数の特徴量に含まれる所定の特徴量が閾値よりも大きい場合に判別アルゴリズム14a及び14bのうち一方による判別結果を採用し、所定の特徴量が閾値よりも小さい場合に判別アルゴリズム14a及び14bのうち他方による判別結果を採用してもよい。例えばこのような方式によって、判別アルゴリズム14a及び14bのうちいずれの判別結果を採用するかを容易に選択することができる。この場合、閾値は、所定の特徴量が変化したときの、第1の判別アルゴリズム14aによる判別精度と第2の判別アルゴリズム14bによる判別精度との比較に基づいて決定された値であってもよい。これにより、光ファイバF1,F2の種類の判別精度を更に高めることができる。
【0061】
前述したように、判別部14は(判別工程ST3では)、第1の判別アルゴリズム14aにより光ファイバF1,F2それぞれの種類を判別できた場合にその判別結果を採用し、第1の判別アルゴリズム14aにより光ファイバF1,F2それぞれの種類を判別できなかった場合に第2の判別アルゴリズム14bによる判別結果を採用してもよい。例えばこのような方式によって、光ファイバF1,F2の種類の判別精度を高めることができる。この場合、判別部14は(判別工程ST3では)、先ず第1の判別アルゴリズム14aを実行し、第1の判別アルゴリズム14aにより光ファイバF1,F2それぞれの種類を判別できなかった場合に第2の判別アルゴリズム14bを実行してもよい。これにより、判別部14の(判別工程ST3における)演算量を低減することができる。或いは、判別部14は(判別工程ST3では)、第1の判別アルゴリズム14aと、第2の判別アルゴリズム14bとを並行して実行してもよい。これにより、最終的な判別結果を得るまでの所要時間を短縮することができる。
【0062】
前述したように、撮像部12は(撮像工程ST2では)、一対の光ファイバF1,F2を少なくとも2回撮像して少なくとも2回分の撮像データPX,PYを生成してもよい。そして、判別部14は(判別工程ST3では)、少なくとも2回分の撮像データPX,PYから得られる、複数の特徴量からなる少なくとも2つの特徴量群間における所定の特徴量のばらつきが閾値よりも大きい場合に、判別アルゴリズム14a,14bのうち一方による判別結果を採用してもよい。判別部14は(判別工程ST3では)、所定の特徴量のばらつきが閾値よりも小さい場合に、判別アルゴリズム14a,14bのうちいずれかによる判別結果を採用してもよい。これにより、光ファイバF1,F2の種類の判別精度を更に高めることができる。
【0063】
前述したように、撮像部は(撮像工程ST2では)、一対の光ファイバF1,F2を少なくとも2回撮像して少なくとも2回分の撮像データPX,PYを生成してもよい。そして、判別部14は(判別工程ST3では)、少なくとも2回分の撮像データPX,PYから得られる、複数の特徴量からなる少なくとも2つの特徴量群に基づいて判別アルゴリズム14a,14bを実行してもよい。判別部14は(判別工程ST3では)、第1の判別アルゴリズム14aによる少なくとも2つの判別結果と、第2の判別アルゴリズム14bによる少なくとも2つの判別結果とのうち、判別結果のばらつきが小さい方を採用してもよい。これにより、光ファイバF1,F2の種類の判別精度を更に高めることができる。
【0064】
前述したように、モデル作成装置20は、複数の融着接続機10を撮像データPX,PYの傾向が類似していると推定される二以上のグループに分類してグループ毎に判別モデルMdを作成してもよい。そして、各融着接続機10の判別部14の第2の判別アルゴリズム14bは、前記各融着接続機10が属するグループに対応する判別モデルMdをモデル作成装置20から得てもよい。これにより、撮像データPX,PYの傾向が類似しているグループ内、例えば、各融着接続機10の機械的及び構造的なばらつきが少ないグループ内、又は撮像部12の機械的及び構造的なばらつきが少ないグループ内に限定して機械学習を行うことができる。故に、第2の判別アルゴリズム14bによる光ファイバF1,F2の種類の判別精度を更に高めることができる。
【0065】
前述したように、モデル作成装置20の機械学習に供されるサンプルデータDaには、第1の判別アルゴリズム14aにより光ファイバF1,F2それぞれの種類を判別できたときのサンプルデータと、第1の判別アルゴリズム14aにより光ファイバF1,F2それぞれの種類を判別できなかったとき及び誤判別したときのサンプルデータとの双方が含まれてもよい。この場合、第1の判別アルゴリズム14aが苦手とする光ファイバF1,F2の種類をモデル作成装置20の機械学習に含めることができ、総合的な光ファイバF1,F2の種類の判別精度を高めることができる。
【0066】
前述したように、モデル作成装置20の機械学習に供されるサンプルデータDaには、第1の判別アルゴリズム14aにより光ファイバF1,F2それぞれの種類を判別できたときのサンプルデータのみが含まれ、各融着接続機10の判別部14は、第1の判別アルゴリズム14aにより光ファイバF1,F2それぞれの種類を判別できなかったとき及び誤判別したときの自らのサンプルデータを用いて機械学習を行い、判別モデルMdを改良してもよい。この場合、各融着接続機10の機械的及び構造的なばらつき、例えば撮像部12の機械的及び構造的なばらつき等により第1の判別アルゴリズム14aでは判別できない光ファイバF1,F2の種類に対して、第2の判別アルゴリズム14bの判別精度を融着接続機10毎に高めることができる。
【0067】
前述したように、モデル作成装置20の機械学習に供されるサンプルデータDaには、第1の判別アルゴリズム14aにより光ファイバF1,F2それぞれの種類を判別できたときのサンプルデータと、第1の判別アルゴリズム14aにより光ファイバF1,F2それぞれの種類を判別できなかったとき及び誤判別したときのサンプルデータとが含まれてもよい。そして、各融着接続機10の判別部14は、第1の判別アルゴリズム14aにより光ファイバF1,F2それぞれの種類を判別できなかったとき及び誤判別したときの自らのサンプルデータを用いて機械学習を行い、判別モデルMdを改良してもよい。但し、モデル作成装置20に提供したサンプルデータを除く。この場合、第1の判別アルゴリズム14aが苦手とする光ファイバF1,F2の種類をモデル作成装置20の機械学習に含めることができる。加えて、各融着接続機10の機械的及び構造的なばらつき、例えば撮像部12の機械的及び構造的なばらつき等により第1の判別アルゴリズム14aでは判別できない光ファイバF1,F2の種類に対して、第2の判別アルゴリズム14bの判別精度を融着接続機10毎に高めることができる。故に、総合的な光ファイバF1,F2の種類の判別精度をより高めることができる。
【0068】
前述したように、種類が既知である二以上の光ファイバを撮像して撮像データPX,PYを生成し、その撮像データPX,PYから得られる複数の特徴量に基づいて、判別アルゴリズム14a,14bにより二以上の光ファイバの種類を判別してもよい。そして、判別アルゴリズム14a,14bのうち判別精度が高い方を、判別工程ST3において採用してもよい。これにより、光ファイバF1,F2の種類の判別精度を更に高めることができる。
【0069】
本開示による融着接続機、融着接続システム、及び光ファイバを融着接続する方法は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態の融着接続機10では、第2の判別アルゴリズム14bの判別結果を採用する基準として、第1の判別アルゴリズム14aにより判別できなかった場合、及び第1の判別アルゴリズム14aによる判別結果が誤りであるおそれが高い場合を例示した。総合的な判別精度を高め得るのであれば他の基準を用いてもよい。
【0070】
上記実施形態の融着接続機10では、一対の光ファイバの種類の組み合わせに応じた接続条件にて一対の光ファイバを相互に融着接続するために判別アルゴリズム14a,14bのいずれかを用いているが、加えて、一対の光ファイバの種類を判別した後に一対の光ファイバを調心する際に、例えばコアの位置を認識するために、判別アルゴリズム14a,14bのいずれかを用いてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1A…融着接続システム
2…筐体
3…接続部
3a…光ファイバホルダ
3b…ファイバ位置決め部
3c…放電電極
4…加熱器
5…モニタ
6…風防カバー
6a…側面
6b…導入口
10…融着接続機
10a…CPU
10b…RAM
10c…ROM
10d…入力装置
10e…補助記憶装置
10f…出力装置
11…通信部
12…撮像部
13…特徴量抽出部
14…判別部
14a…第1の判別アルゴリズム
14b…第2の判別アルゴリズム
15…融着制御部
20…モデル作成装置
20a…CPU
20b…RAM
20c…ROM
20d…入力装置
20e…通信モジュール
20f…補助記憶装置
20g…出力装置
21…通信部
22…判別モデル作成部
30…情報通信網
CL…クラッド
CR…コア
Da…サンプルデータ
F1,F2…光ファイバ
F1a,F2a…端面
Md…判別モデル
MSX,MSY…方向
PX,PY…撮像データ
ST1…モデル作成工程
ST2…撮像工程
ST3…判別工程
ST4…接続工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14