(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】天然繊維糸を使用したニットの衣服、及び天然繊維糸を使用したニットの衣服の製造方法
(51)【国際特許分類】
D04B 1/14 20060101AFI20250311BHJP
D04B 1/00 20060101ALI20250311BHJP
A41D 31/00 20190101ALI20250311BHJP
【FI】
D04B1/14
D04B1/00 B
A41D31/00 503M
A41D31/00 503Z
(21)【出願番号】P 2023567051
(86)(22)【出願日】2023-05-19
(86)【国際出願番号】 JP2023018819
(87)【国際公開番号】W WO2023224126
(87)【国際公開日】2023-11-23
【審査請求日】2023-10-31
(31)【優先権主張番号】P 2022082074
(32)【優先日】2022-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522198807
【氏名又は名称】株式会社ジェーピー・アバンス
(73)【特許権者】
【識別番号】522198232
【氏名又は名称】アバンス インターナショナル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】AVANCE INTERNATIONAL COMPANY LIMITED
【住所又は居所原語表記】Unit A2, 4/F Mai Wah Industrial Building, 1-7 Wah Sing Street, Kwai Chung, New Territories, Hong Kong
(74)【代理人】
【識別番号】110003823
【氏名又は名称】弁理士法人柳野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山尾 友厚
【審査官】緒形 友美
(56)【参考文献】
【文献】特公昭49-012148(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0148258(US,A1)
【文献】特表2008-537574(JP,A)
【文献】国際公開第2011/040359(WO,A1)
【文献】特開2004-149971(JP,A)
【文献】特開2022-007889(JP,A)
【文献】特開2014-173211(JP,A)
【文献】特開昭60-002755(JP,A)
【文献】特開2010-163712(JP,A)
【文献】登録実用新案第3096021(JP,U)
【文献】特開昭59-076904(JP,A)
【文献】特開昭59-053701(JP,A)
【文献】国際公開第2009/141921(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/075505(WO,A1)
【文献】特開平07-292547(JP,A)
【文献】特開平07-316959(JP,A)
【文献】特開平10-096144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B 1/00- 1/28
A41D 1/00- 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然繊維糸を使用した地糸と、
前記地糸に編み込んだ、繊度が30デニール以上150デニール以下である、105℃以下で融解する
、弾性糸ではない熱融着糸と、
からなり、
前記地糸の全部又は一部に前記熱融着糸が融着して
おり、
横編機で作成されたものである、
天然繊維糸を使用したニットの衣服。
【請求項2】
前記熱融着糸は、融点が75℃以上90℃以下のナイロン熱融着糸である、
請求項1
に記載の天然繊維糸を使用したニットの衣服。
【請求項3】
天然繊維糸を使用した地糸の全部又は一部に、繊度が30デニール以上150デニール以下である、105℃以下で融解する
、弾性糸ではない熱融着糸を編み込みながら、前記熱融着糸が融解していない状態のニットの衣服を横編機で製造する第1工程と、
前記第1工程を経た前記ニットの衣服に対し、スチームアイロンで前記熱融着糸を融解させ、前記地糸に前記熱融着糸を融着させる第2工程と、
を含む、
天然繊維糸を使用したニットの衣服の製造方法。
【請求項4】
前記熱融着糸は、融点が75℃以上90℃以下のナイロン熱融着糸である、
請求項
3に記載の天然繊維糸を使用したニットの衣服の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セーター、カーディガン等の天然繊維糸を使用したニットの衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
ガードル、レギンス、及びブラジャー等の補型インナー商品、並びに、スポーツ用ボトムウェア、及びスポーツ用アンダーウェア等のコンプレッションウェア等のニット製品に用いる丸編地として、高伸度部及び低伸度部を有するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の丸編地において、低伸度部と高伸度部とで地糸は同一であり、低伸度部は熱融着糸を含有し、熱融着糸の少なくとも一部は互いに熱融着している。特許文献1の丸編地における地糸としては、ポリウレタン系、ポリエーテルエステル系等の弾性糸が用いられる。特許文献1の丸編地における熱融着糸は、乾熱120℃で1分間の熱処理、又は湿熱110℃で30秒間の熱処理によって溶融して融着する性質を有する繊維であり、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、ポリウレタン系繊維等が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ニットは、ループが連続してつながっているので、織物と比べて、伸縮性が高く柔軟性があること、及び保温効果に富むこと等の長所がある。
【0006】
しかしながら、天然繊維糸及び/又は合成繊維糸を使用したニットの衣服において、例えばハンガーに掛けておいた際に重力で伸びてしまう等、型くずれしやすいこと、及び洗濯等により縮むこと等の短所がある。
【0007】
特に、天然繊維糸を使用したニットの衣服の場合には、水洗いした際に親水性の繊維が水分を吸収して太く短くなり、例えば10%程度も縮んでしまうことがある。
【0008】
また、天然繊維糸がウールである場合、天然繊維糸を使用したニットの衣服を水洗いすること等により、濡れた状態で、揉む、擦る、押す等の力が掛かることで、繊維が絡み合って収縮(フェルト化)が起こるという短所がある。
【0009】
天然繊維糸を使用したセーター、カーディガン等のニットの衣服において、地糸の伸縮を抑制するために特許文献1の丸編地における熱融着糸を用いる場合、地糸に熱融着糸を融着させるために、乾熱120℃で1分間の熱処理、又は湿熱110℃で30秒間の熱処理を行う必要がある。乾熱120℃で1分間の熱処理、又は湿熱110℃で30秒間の熱処理を行う場合、前記ニットの衣服に使用する天然繊維糸によっては、繊維が損傷して風合いを損ねるおそれがある。
【0010】
その上、乾熱120℃で1分間の熱処理、又は湿熱110℃で30秒間の熱処理を行うには、熱融着糸を含んだ編地を編み立てした後、ピンテンター乾熱セット機やオートクレーブ湿熱セット機等の大掛かりな熱処理装置を使用する必要がある。したがって、所要の設備投資が必要になるとともに小ロットの生産が困難となる。前記大掛かりな熱処理装置を保有している工場へ熱融着糸を含んだ編地の熱処理を依頼する場合は、生産期間が長くなってしまう。
【0011】
本発明は、天然繊維糸を使用したニットの衣服の地糸の伸縮の抑制を、風合いを損ねずに、大掛かりな熱処理装置を使用せずに効果的に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1観点に係る天然繊維糸を使用したニットの衣服は、天然繊維糸を使用した地糸と、前記地糸に編み込んだ、繊度が30デニール以上150デニール以下である、105℃以下で融解する、弾性糸ではない熱融着糸と、からなり、前記地糸の全部又は一部に前記熱融着糸が融着しており、横編機で作成されたものである。
【0014】
本発明の第2観点に係る天然繊維糸を使用したニットの衣服は、第1観点に係る天然繊維糸を使用したニットの衣服において、前記熱融着糸は、融点が75℃以上90℃以下のナイロン熱融着糸である。
【0015】
本発明の第3観点に係る天然繊維糸を使用したニットの衣服の製造方法は、天然繊維糸を使用した地糸の全部又は一部に、繊度が30デニール以上150デニール以下である、105℃以下で融解する、弾性糸ではない熱融着糸を編み込みながら、前記熱融着糸が融解していない状態のニットの衣服を横編機で製造する第1工程と、前記第1工程を経た前記ニットの衣服に対し、スチームアイロンで前記熱融着糸を融解させ、前記地糸に前記熱融着糸を融着させる第2工程とを含む。
【0016】
本発明の第4観点に係る天然繊維糸を使用したニットの衣服の製造方法は、第3観点に係る天然繊維糸を使用したニットの衣服の製造方法において、前記熱融着糸は、融点が75℃以上90℃以下のナイロン熱融着糸である。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る天然繊維糸を使用したニットの衣服、及び本発明に係る天然繊維糸を使用したニットの衣服の製造方法により製造したニットの衣服は、地糸に天然繊維糸を使用したものである。天然繊維糸を使用した地糸の全部又は一部に繊度が30デニール以上150デニール以下である、弾性糸ではない熱融着糸が融着しているので、天然繊維糸を使用した地糸の伸縮を抑制できる。
【0018】
天然繊維糸を使用した地糸の全部又は一部に前記熱融着糸を編み込みながら、前記熱融着糸が融解していない状態の天然繊維糸を使用したニットの衣服を、横編機を用いることによる成形編みで製造することで、糸の使用量及び裁断ロスを減らしつつ、前記熱融着糸が融解していない状態の天然繊維糸を使用したニットの衣服を効率的に製造できる。
【0019】
前記熱融着糸は105℃以下で融解するので、大掛かりな熱処理装置を使用することなく、天然繊維糸を使用したニットの衣服の前記熱融着糸が存在する所要箇所にスチームを当てるようにスチームアイロンを移動させる、スチームアイロンによる効率的な作業で前記熱融着糸を融解させて前記地糸に前記熱融着糸を融着させることができる。したがって、天然繊維糸を使用したニットの衣服の風合いを損ねることがないとともに、消費者ニーズの個性化・多様化に適合する小ロット短サイクル生産が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【発明を実施するための形態】
【0021】
<天然繊維糸を使用したニットの衣服>
本発明の天然繊維糸を使用したニットの衣服は、地糸に天然繊維糸を使用したものである。すなわち前記ニットの衣服は、天然繊維糸だけを使用したもの、又は、天然繊維と合成繊維とを所定の混合率で混合した混紡糸を使用したものである。前記糸の繊度は、1番手ないし100番手である。天然繊維糸としては、例えば、綿糸、羊毛糸、獣毛糸等を用いる。合成繊維糸としては、アクリル、ポリエステル等を用いる。
【0022】
本発明の天然繊維糸を使用したニットの衣服は、横編機で作成するニットの衣服であり、例えば、セーター、カーディガン、ワンピース及びスカート等である。
【0023】
本発明の天然繊維糸を使用したニットの衣服の編み方の種類は限定されない。すなわち、本発明の天然繊維糸を使用したニットの衣服の編み方は、横編みできるものであればよく、天竺編み、リブ編み、ミラノリブ編み、畦編み、鹿の子編み、ガーター編み(パール編み)、透かし編み等である。
【0024】
本発明の天然繊維糸を使用したニットの衣服は、天然繊維糸を使用した地糸の全部又は一部に、105℃以下で融解する、弾性糸ではない熱融着糸が融着している。前記熱融着糸は105℃以下で融解するものであり、例えば、融点が75℃以上90℃以下のナイロン熱融着糸である。
【0025】
前記熱融着糸の繊度は、30デニール以上150デニール以下であり、編地の厚みと硬さによって所要の風合いになるように使い分ける。
【0026】
本発明の天然繊維糸を使用したニットの衣服は、天然繊維糸を使用した地糸の全部又は一部に前記熱融着糸が融着しているので、前記地糸の伸縮を抑制できる。前記地糸の天然繊維と熱融着糸を所要の配分で編み立てすることで、前記天然繊維の縮率をコントロールできる。
【0027】
<天然繊維糸を使用したニットの衣服の製造方法>
本発明の天然繊維糸を使用したニットの衣服は、パターン通りに形を作っていく横編機で製造される。すなわち、天然繊維糸を使用した地糸の全部又は一部に、105℃以下で融解する、弾性糸ではない熱融着糸を編み込みながら、前記熱融着糸が融解していない状態の天然繊維糸を使用したニットの衣服を横編機で製造する(第1工程)。例えば、横編機を用いることによる成形編みで天然繊維糸を使用したニットの衣服を製造することで、糸の使用量及び裁断ロスを減らしつつ、前記熱融着糸が融解していない状態の天然繊維糸を使用したニットの衣服を効率的に製造できる。
【0028】
次に、前記熱融着糸が融解していない状態の天然繊維糸を使用したニットの衣服に対し、底面の穴から高温の水蒸気を噴射するスチーム(蒸気)アイロンで前記熱融着糸を融解させ、前記地糸に前記熱融着糸を融着させる(第2工程)。前記熱融着糸は105℃以下で融解するので、大掛かりな熱処理装置を使用することなく、天然繊維糸を使用したニットの衣服の前記熱融着糸が存在する所要箇所にスチームを当てるように、例えば1000W~1500Wの電気スチームアイロンを移動させる、スチームアイロンによる効率的な作業で前記熱融着糸を融解させて前記地糸に前記熱融着糸を融着させることができる。
【0029】
<105℃以下で融解する、弾性糸ではない熱融着糸の例>
105℃以下で融解する、弾性糸ではない熱融着糸として、融点が75℃以上90℃以下のナイロン熱融着糸を用いるのが好ましい実施態様である。
【0030】
融点が75℃以上90℃以下のナイロン熱融着糸として、例えば、CHANGZHOU CITY LINGXIAN TEXTILE EQUIPMENT CO.,LTD.の「ナイロン熱融着糸」(融点80℃)、又は、三菱ケミカル株式会社の「日本製熱融着糸78T」(融点85℃)等が使用できる。
【0031】
<熱融着糸の入れ方の例>
(1) 縦伸び及び横伸びを抑える場合
天竺編み、リブ編み、畦編み等において、全体に地糸と熱融着糸を入れる。異なる2本の糸を同時に引き入れながら編む二重臼編みが望ましい。地糸と熱融着糸は、個別の糸挿入口から横編機のヘッドへ向かい、前記ヘッドで合流する。
【0032】
(2) 縦の伸縮を保ちながら、横伸びを止める場合
例えば
図1に示すミラノリブ編みの編成図において、(1)の前針床のベラ針及び後針床のベラ針でループする地糸(ゴム編み(リブ編み)の地糸)、(2)の後針床のベラ針のみでループする地糸、及び(3)の前針床のベラ針のみでループする地糸のうち、(2)及び(3)の地糸に熱融着糸を引き揃える(熱融着糸を編み込む)。
【0033】
また、例えば
図2に示す片畦編みの編成図において、(1)のタック編みの地糸、及び(2)のゴム編みの地糸のうち、(1)の地糸に熱融着糸を引き揃える(熱融着糸を編み込む)。
【0034】
(3) 編地の伸縮を保ちながら、形態安定を保つ場合
例えば
図1に示すミラノリブ編みの編成図において、(1)のゴム編みの地糸に熱融着糸を引き揃える(熱融着糸を編み込む)。
【0035】
また、例えば
図2に示す片畦編みの編成図において、(2)のゴム編みの地糸に熱融着糸を引き揃える(熱融着糸を編み込む)。
【0036】
<天然繊維糸を使用したニットの衣服のテンションの具体的な調整方法>
天然繊維糸を使用したニットの衣服のテンション(伸縮の幅)の大きさは、編地の横方向に並んだループの列であるコースの地糸への熱融着糸の入れ方により、例えば以下のように調整する。
【0037】
(1) テンションを非常に低くする場合
全コースの地糸を熱融着糸と共に編み立てする。
【0038】
(2) テンションを低くする場合
3コースの地糸を熱融着糸とともに編み立てし、2コースは地糸のみで編み立てし、それらを繰り返す。
【0039】
(3) テンションを普通にする場合
1コースの地糸を熱融着糸とともに編み立てし、1コースは地糸のみで編み立てし、それらを繰り返す。
【0040】
(4) テンションを高くする場合
2コースの地糸を熱融着糸とともに編み立てし、3コースは地糸のみで編み立てし、それらを繰り返す。
【0041】
(5) テンションを非常に高くする場合
1コースの地糸を熱融着糸とともに編み立てし、9コースは地糸のみで編み立てし、それらを繰り返す。
【0042】
<耐洗濯性の評価>
(評価方法)
JIS L 1930:2014「繊維製品の家庭洗濯試験方法」のC4M法(洗濯は40℃で6分、すすぎは2分を2回、各脱水は3分、乾燥は吊り干し。)に基づき、洗濯及び乾燥後の寸法変化率を、[(処理後の長さ)-(処理前の長さ)]/(処理前の長さ)で計算する。
【0043】
(評価対象)
ミラノリブ編みの天然繊維糸を使用したセーター(地糸は2/100番手の綿100%)を評価対象とする。
【0044】
(実施例及び比較例)
図1に示すミラノリブ編みの編成図における(1)のゴム編み(1×1リブ)の地糸のみに、三菱ケミカル株式会社の50デニールの「日本製熱融着糸78T」(融点85℃)を引き揃えて横編機で前記セーターを製造し、スチームアイロンで前記熱融着糸を融解させて前記地糸に融着させたものを実施例とする。前記熱融着糸を入れない前記セーターを比較例とする。
【0045】
(評価結果)
前記評価方法の洗濯試験方法の洗濯及び乾燥を1回行った後、及び前記洗濯及び乾燥を5回繰り返した後に、身丈、身巾、袖丈、裾巾についての前記寸法変化率を計算したものを表1に示す。プラスの数値は「伸び」、マイナスの数値は「縮み」を表す。
【0046】
【0047】
比較例の天然繊維糸を使用したセーターの洗濯及び乾燥1回後は、身丈、身巾及び袖丈は縮んでおり、裾巾は伸びている。比較例の前記セーターの洗濯及び乾燥5回後は、身丈及び身巾は縮んでおり、袖丈及び裾巾は伸びている。比較例の前記セーターの洗濯及び乾燥5回後において、身丈の縮み量が6.3%と大きい。
【0048】
それに対して実施例の天然繊維糸を使用したセーターの洗濯及び乾燥1回後及び洗濯及び乾燥5回後の両方ともに、身丈、身巾、袖丈及び裾巾が縮んでいる。
【0049】
実施例の前記セーターの洗濯及び乾燥1回後において、最も縮み量が大きい身丈の縮み量は1.7%である。この身丈の縮み量(1.7%)は、比較例の前記セーターの洗濯及び乾燥1回後の身丈の縮み量(3.0%)と比較して、約57%に抑えられている。また、実施例の前記セーターの洗濯及び乾燥5回後において、最も縮み量が大きい身丈の縮み量は3.7%である。この身丈の縮み量(3.7%)は、比較例の前記セーターの洗濯及び乾燥5回後の身丈の縮み量(6.3%)と比較して、約59%に抑えられている。
【0050】
以上のとおり、比較例の天然繊維糸を使用したセーターよりも実施例の天然繊維糸を使用したセーターの方が、洗濯及び乾燥を繰り返した後の形態安定性が非常に高く、最大縮み量が大幅に小さいことが分かる。
【0051】
<作用効果>
以上のような本発明の実施の形態に係る天然繊維糸を使用したニットの衣服は、地糸に天然繊維糸を使用したものである。天然繊維糸を使用した地糸の全部又は一部に熱融着糸が融着しているので、前記地糸の伸縮を抑制できる。
【0052】
前記地糸の全部又は一部に前記熱融着糸を編み込みながら、前記熱融着糸が融解していない状態の天然繊維糸を使用したニットの衣服を、例えば、横編機を用いることによる成形編みで製造することで、糸の使用量及び裁断ロスを減らしつつ、前記熱融着糸が融解していない状態の天然繊維糸を使用したニットの衣服を効率的に製造できる。
【0053】
前記熱融着糸は105℃以下で融解するので、大掛かりな熱処理装置を使用することなく、天然繊維糸を使用したニットの衣服の前記熱融着糸が存在する所要箇所にスチームを当てるようにスチームアイロンを移動させる、スチームアイロンによる効率的な作業で前記熱融着糸を融解させて前記地糸に前記熱融着糸を融着させることができる。したがって、天然繊維糸を使用したニットの衣服の風合いを損ねることがないとともに、消費者ニーズの個性化・多様化に適合する小ロット短サイクル生産が可能となる。
【0054】
以上の実施の形態の記載はすべて例示であり、これに制限されるものではない。本発明の範囲から逸脱することなく種々の改良及び変更を施すことができる。