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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】高気圧室装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 10/02 20060101AFI20250311BHJP
【FI】
A61G10/02 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021134012
(22)【出願日】2021-08-19
(65)【公開番号】P2023028355
(43)【公開日】2023-03-03
【審査請求日】2024-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】516347857
【氏名又は名称】パスカル・ユニバース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久野 祐功
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 純
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 博紀
(72)【発明者】
【氏名】戸田 真弓
(72)【発明者】
【氏名】戸田 南帆
【審査官】白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-108943(JP,A)
【文献】実開平06-006303(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2012/0073434(US,A1)
【文献】特開2007-044194(JP,A)
【文献】登録実用新案第3233039(JP,U)
【文献】特開2013-001562(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0169284(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101623229(CN,A)
【文献】独国実用新案第202019104175(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 9/00-15/12
A61G 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の身体を収容可能な高気圧室を形成するシェルと、前記高気圧室に空気を供給するエア供給部とを備え、使用者が前記高気圧室に入った状態で内部の気圧を高めることが可能な高気圧室装置であって、
前記シェルは、開口を有する筐体である本体部と、前記本体部の開口である本体側開口と連なる連結部と、からなり、
前記本体部は、前記本体側開口から内側に向かうにつれて内部空間が広がる形状のものとされ、
前記連結部は、可撓性を有する材料から成形されて前記本体側開口より大きな形状の連結部側開口を有する袋体と、前記連結部側開口の開口縁に沿って固定された弾性変形可能な環状の弾性部材と、からなり、
前記弾性部材は、弾性変形させた状態において、前記本体部の前記本体側開口から出し入れ可能とされ、
前記連結部における前記連結部側開口側の部分が前記本体部の内側に挿入され前記弾性部材が展開させられた状態で、前記エア供給部によってエアを供給することで、前記連結部における前記連結部側開口側の部分が、前記本体部の前記本体側開口の開口縁に当接して、前記本体部と前記連結部によって前記高気圧室が形成される構成とされ、
前記本体部は、内面における前記本体側開口の内側に、前記弾性部材が嵌まり込む溝部を有し、
前記連結部における前記連結部側開口側の部分は、前記本体部の内面における前記本体側開口から前記溝部までの間に、内圧によって押し付けられる、高気圧室装置。
【請求項2】
前記本体部の前記本体側開口は、上下方向に対する水平方向に開口するものとされた請求項1に記載の高気圧室装置。
【請求項3】
前記本体部は、内部に使用者が着座するための座部を備え、
前記連結部の前記袋体は、有底筒状のものとされた請求項2に記載の高気圧室装置。
【請求項4】
前記本体側開口が、曲線状に形成されている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の高気圧室装置。
【請求項5】
前記本体側開口は、円形状に形成されており、
前記弾性部材は、前記本体側開口の内径より大きな直径の円形状の部材とされた請求項4に記載の高気圧室装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部の気圧を高めることが可能な高気圧室装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、閉鎖された空間の気圧や空気の質を制御することにより、その空間に存在する人の健康を増進させることができる装置が検討されている。その装置は、空間の容積が比較的大きいものが多く、所定の気圧に到達するまでに時間が掛かることや、個人で使用する場合は効率が悪いという問題があった。そこで、下記特許文献1,2のように、使用者の身体の一部を収容した状態で、その収容空間内の気圧や空気質を制御する装置が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-45611号公報
【文献】特開2009-285249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献に記載の装置は、確かにコンパクトではあるものの、人体を露出させる部分において、気密性の確保が困難である。例えば、使用中においても、使用者が動くことで、容易にずれが生じ、内部の空気が漏れてしまう虞がある。
【0005】
本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、コンパクトでありながら気密性が高い高気圧室装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の高気圧室装置は、
使用者の身体を収容可能な高気圧室を形成するシェルと、前記高気圧室に空気を供給するエア供給部とを備え、使用者が前記高気圧室に入った状態で内部の気圧を高めることが可能な高気圧室装置であって、
前記シェルは、開口を有する筐体である本体部と、前記本体部の開口である本体側開口と連なる連結部と、からなり、
前記本体側開口は、前記本体部の内寸より小さな寸法とされ、
前記連結部は、可撓性を有する材料から成形されて前記本体側開口の寸法より大きな寸法の連結部側開口を有する袋体と、前記連結部側開口の開口縁に沿って固定された弾性変形可能な環状の弾性部材と、からなり、
前記弾性部材は、弾性変形させた状態において、前記本体部の前記本体側開口から出し入れ可能とされ、
前記連結部における前記連結部側開口側の部分が前記本体部の内側に挿入され前記弾性部材が展開させられた状態で、前記エア供給部によってエアを供給することで、前記連結部における前記連結部側開口側の部分が、前記本体部の前記本体側開口の開口縁に当接して、前記本体部と前記連結部によって前記高気圧室が形成されることを特徴とする
【0007】
この構成の高気圧室装置は、使用者が本体部内に身体の一部あるいは全体を入れた状態で、本体部の開口から突出する状態となるように連結部を装着することで、高気圧室が形成される。この構成の高気圧室装置は、シェルが、筐体である本体部と、可撓性を有する袋体を主体とする連結部との2つの部分から構成されており、連結部を使用時のみ広げて、高気圧室を形成するため、装置自体がコンパクトなものとなる。また、本体部に対して連結部を装着した後、エア供給部によって高気圧室内の気圧を高めると、連結部の袋体の開口縁側が、本体部の開口縁近傍に押し付けられ、高気圧室が密閉されることとなる。したがって、この構成の高気圧室装置は、コンパクトで簡易なものでありながら、気密性の高いものとなる。
【0008】
なお、この構成の高気圧室装置における「本体部」は、使用者の身体全体が収容可能なものであってもよいが、コンパクト化という観点からすれば、使用者の身体の一部は、連結部側に収容されるような構成の方が望ましい。また、「本体部」は、例えば、使用者が着座した状態で、その使用者の身体の一部を収容できるもの、使用者が寝転んだ状態で、その使用者の身体の一部を収容できるものとすることができる。そして、この構成における「連結部」は、本体部に収容されていない使用者の身体の一部、例えば上半身や脚部を収容するものとすることができる。
【0009】
上記構成において、前記本体部は、内面における前記本体側開口の内側に、前記弾性部材が嵌まり込む溝部を有している構成とすることができる。
【0010】
この構成の高気圧室装置によれば、本体部に対して連結部を定められた位置に取り付けることができるため、使用時における連結部のずれを防止することや、本体部と袋体とのラップ長を確実に確保することができるため、高気圧室の気密性をより高めることが可能である。
【0011】
上記構成において、前記本体部の前記本体側開口は、側方に開口するものとすることができる。
【0012】
この構成の高気圧室装置は、本体部が側方に開口しているため、使用者が本体部に出入りし易い構成となっている。
【0013】
上記構成において、前記本体部は、内部に使用者が着座するための座部を備え、前記連結部の前記袋体は、有底筒状のものとされた構成とすることができる。
【0014】
この構成の高気圧室装置は、本体部が椅子として機能するように構成されており、本体部が使用者の上半身を収容し、連結部が使用者の脚部を収容するような態様で使用することができる。また、この構成の高気圧室装置は、高気圧室装置として使用しない場合でも、連結部は折り畳んで、本体部を椅子として利用することができるため、生活環境に取り入れ易いものとなる。
【0015】
上記構成において、前記本体側開口が、曲線状に形成されている構成とすることができる。
【0016】
例えば、本体側開口が四角形状とされた場合には、その角部において、連結部の袋体との間で隙間が生じ易いと考えられる。この構成の高気圧室装置は、本体側開口に対して、連結部の袋体が折れ曲がるような箇所がないため、本体部と袋体とが確実にラップして、高気圧室の気密性をより高めることが可能である。
【0017】
上記構成において、前記本体側開口は、円形状に形成されており、前記弾性部材は、前記本体側開口の内径より大きな直径の円形状の部材とされた構成とすることができる。
【0018】
この構成の高気圧室装置は、本体側開口の形状と、連結部の連結部側開口の形状とを、円形状としたものであり、本体部に対する連結部の向きを考慮する必要がないため、本体部に対する連結部の装着を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、コンパクトでありながら気密性が高い高気圧室装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施例である空気調和装置の使用状態を示す斜視図
図2】本発明の実施例である空気調和装置の使用状態を示す側面図
図3】本体部から連結部を取り外した状態を示す斜視図
図4】本体部から連結部を取り外した状態を示す側面断面図
図5】本体部に対して連結部を取り付ける過程を示す側面断面図
図6】本体部に対して連結部を装着した状態を示す側面断面図
図7】高気圧室内に空気を供給した状態を示す側面断面図
図8】他の実施形態の空気調和装置に用いられるチェアを示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態として、本発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【0022】
本発明の実施例の高気圧室装置は、使用者が内部に入った状態で内部の空気の気圧や空気の質を調整して、使用者の健康状態の改善や健康増進を図ることができる空気調和装置10である。空気調和装置10は、図1に示すように、使用者12を内部に収容可能なシェル14と、シェル14の内部(高気圧室S)の気圧を高めるとともに、内部の空気の質、具体的には酸素濃度および二酸化炭素濃度を制御するエア制御装置(エア供給部)16と、を含んで構成される。
【0023】
シェル14は、使用者が着座可能なチェア20と、可撓性を有する袋状のカバー部材22と、からなり、チェア20に対してカバー部材22が装着されることで、その内部に高気圧室Sが形成されるものである。チェア20は、使用者が着座するための座部30と、その座部30を収容する概して球体状のハウジング32と、ハウジング32を支持する脚部34と、を含んで構成される。ハウジング32は、内部が空洞で、球体の側方を切断したような形状とされている。詳しくは、ハウジング32は、図2に示すように、球体の頂点より下がった位置を頂点とし、斜め下方に向けて切断されたような形状とされている。つまり、ハウジング32には、概して円形状の開口36(以下、「ハウジング側開口36」と呼ぶこととする。)が形成されており、そのハウジング側開口36は、側方で、かつ、やや斜め上方を向いて開口するものとなっている。また、ハウジング側開口36の内径R1は、ハウジング32の内径R2に比較して小さくされている。
【0024】
また、図3および図4に示すように、ハウジング32内に、座部30が設けられている。座部30は、クッション部40と、背もたれ部42とからなり、クッション部40が、ハウジング32内の底面部側に配されるとともに、背もたれ部42がハウジング側開口36と反対側の側面側にそのハウジング側開口36を向くような姿勢で配される。
【0025】
ハウジング32は、例えば、FRPやPPなどの材料により形成されたものとすることができる。クッション部40および背もたれ部42は、例えば、中材として、クッション性を有するスポンジやウレタンなどを採用することができ、表皮材として、合成皮革、人工皮革、皮革、木綿、ファブリックなどを採用することができる。ちなみに、座部30は、ハウジング32に対して着脱可能とされている。なお、ハウジング32の内面には、内装材を設けることが可能であり、その内装材として、樹脂製のものや、座部30と同じクッション性を有する材料などを採用することができる。
【0026】
このように構成されたチェア20は、使用者の体格等によっても異なるが、使用者が一般的な椅子と同様の姿勢で着座すると、図2に示すように、使用者12の身体のうち下肢の一部(図2においては、膝上部分から下腿部)を除いた部分が、ハウジング32の内部に収容された状態となる。換言すれば、ハウジング32は、着座した使用者12の頭部を上方から覆うとともに、頭部および上半身の左右両側を覆った状態となる。
【0027】
そして、このチェア20のハウジング32に対して、カバー部材22を装着可能とされている。カバー部材22は、可撓性を有する袋状のカバー本体(袋体)50を主体とするものである。そのカバー本体50は、塩化ビニル、ナイロン、ポリエチレンなどの軟質の合成樹脂により形成されており、無色透明で、伸縮可能なものとなっている。また、カバー本体50は、図3に示すように、有底円筒状に形成されており、開口52の開口縁には、円環状のワイヤ(弾性部材)54が固定されている。つまり、カバー部材22は、開口52(以下、「カバー側開口52」と呼ぶ場合こととする。)が、ワイヤ54によって、円形状に保持される。ただし、このワイヤ54は、使用者12が力を加えることで、容易に弾性変形させることが可能なものとなっている(図5参照)。なお、このカバー部材22は、上記のカバー側開口52と、エア制御装置16が有する2本の接続チューブ60,62を接続するための2つの接続口56,58以外は、開口箇所がなく、気密性の高いものとなっている。
【0028】
次に、上記のように構成されたカバー部材22のハウジング32に対する装着方法について説明する。まず、図4に示すように、カバー部材22は、カバー側開口52の外径(ワイヤ54の外径)R3が、ハウジング側開口36の内径R1に比較して大きくされている。上述したように、ワイヤ54は使用者が容易に弾性変形させることが可能であるため、図5に示すように、ワイヤ54を弾性変形させた状態とすることで、ハウジング側開口36を挿通させて、カバー部材22のカバー側開口52側の部分を、ハウジング32の内部に挿入することができる。そして、ワイヤ54をハウジング32の内部で展開させて、そのワイヤ54を、ハウジング32の内面側で、かつ、ハウジング側開口36の開口縁に当接させることで、ハウジング32とカバー部材22とによって、閉塞した空間、つまり、高気圧室Sが形成される。
【0029】
なお、ハウジング32の内面には、ハウジング側開口36の開口縁から定められた距離だけ内側に、開口縁に沿って、円環状の溝部32Aが設けられている。この溝部32Aが形成された箇所における内径R4が、カバー側開口52の外径R3とほぼ等しくされており、ワイヤ54が固定されたカバー部材22のカバー側開口52側の端部が、溝部32Aに嵌まり込むことが可能とされている。つまり、ハウジング32とカバー部材22との間に隙間が出来て、気密性が失われるような事態を回避することができる。
【0030】
上記のような構成から、使用者12は、チェア20の座部30に着座するとともに、下肢もハウジング32内に一旦収容させた状態とし、あるいは、下腿部をカバー部材22のカバー側開口52からカバー本体50内に挿入した状態として、カバー部材22のカバー側開口52側の端部をハウジング32の溝部32Aに嵌め入れることで、カバー部材22をハウジング32に対して装着することができる。このように、本空気調和装置10は、使用者12が高気圧室S内に収容された状態で、高気圧室Sを閉塞した状態を形成することができるようになっている。
【0031】
次に、エア制御装置16について説明する。エア制御装置16は、気圧制御装置、酸素濃縮器および二酸化炭素除去装置が一体化された装置本体64と、その装置本体64とシェル14とを接続する前述の2本の接続チューブ60,62と、を含んで構成される。装置本体64は、高気圧室Sの気圧を制御するとともに、高気圧室Sの酸素濃度および二酸化炭素濃度を制御することが可能である。例えば、装置本体64は、高気圧室Sの気圧を外部の気圧よりも高い気圧に制御するとともに、高気圧室Sの酸素濃度を外部の酸素濃度よりも高い濃度に制御することで、本空気調和装置10は、高気圧室S内にいる使用者12に対して、副交感神経を活性化させてリラックス状態とさせ、使用者12の健康状態の改善や健康増進を図ることができる。なお、使用者12が高気圧室Sの中で呼吸すると、高気圧室Sの二酸化炭素濃度が上昇するため、装置本体64は、高気圧室S内の二酸化炭素濃度が減るように制御するようになっている。
【0032】
具体的には、エア制御装置16は、接続チューブ60を通じて高気圧室Sの空気を二酸化炭素除去装置に取り込む。二酸化炭素除去装置は、取り込んだ空気から二酸化炭素を分離し、分離した二酸化炭素を外部へ排出するとともに、二酸化炭素が除去された空気を気圧制御装置に送出する。そして、酸素濃縮器は、酸素が付加された空気(酸素濃度が高い空気)を気圧制御装置に送出し、気圧制御装置は、酸素が付加され、二酸化炭素が除去された空気を接続チューブ62から高気圧室Sに送出する。これにより、エア制御装置16は、高気圧室Sの二酸化炭素濃度を減少させるとともに、高気圧室Sの気圧および酸素濃度を高めるようになっている。ちなみに、二酸化炭素除去装置は、二酸化炭素を吸着するタイプのものでも良い。また、図7には、装置本体64が、床面に置かれた状態で記載されているが、ハウジング32の背面下側に取り付けることも可能とされており、チェア20とエア制御装置16とを、まとめて移動させることができる。
【0033】
なお、装置本体64は、高気圧室Sの気圧を調節するためのスイッチ、高気圧室Sの酸素濃度を調節するためのスイッチ、調節した気圧に到達するまでの加圧時間を調節するスイッチ、調節した気圧から加圧開始時の気圧に復圧するまえの復圧時間を調節するスイッチ、調節した気圧を維持している暴露時間を調節するスイッチ等を備えている。また、エア制御装置16は、装置本体64を無線または有線により遠隔操作するためのリモートコントローラを備えている。使用者12が、高気圧室S内に収容されている状態であっても、リモートコントローラを使用することにより、装置本体64を遠隔操作することができるようになっている。
【0034】
以上のように、本実施例の高気圧室装置である空気調和装置10は、使用者12の身体を収容可能な高気圧室Sを形成するシェル14と、高気圧室Sに空気を供給するエア供給部としてのエア制御装置16とを備える。そのシェル14は、開口を有する筐体である本体部としてのハウジング32と、そのハウジング32の開口であるハウジング側開口(本体側開口)36と連なる連結部としてのカバー部材22と、からなる。ハウジング側開口36は、ハウジング32の内寸(内径)より小さな寸法とされ、カバー部材22は、可撓性を有する材料から成形されてハウジング側開口36の寸法より大きな寸法のカバー側開口(連結部側開口)52を有する袋体としてのカバー本体50と、カバー側開口52の開口縁に沿って固定された弾性変形可能な環状のワイヤ(弾性部材)54と、からなる。そのワイヤ54は、弾性変形させた状態において、ハウジング32のハウジング側開口から出し入れ可能とされ、カバー部材22におけるカバー側開口52側の部分がハウジング32の内側に挿入されワイヤ54が展開させられた状態で、エア制御装置16によってエアを供給することで、カバー部材22におけるカバー側開口52側の部分が、ハウジング32のハウジング側開口36の開口縁に当接して、ハウジング32とカバー部材22によって高気圧室Sが形成されることを特徴とする。
【0035】
本実施例の空気調和装置10は、シェル14が、筐体であるハウジング32と、可撓性を有するカバー本体50を主体とするカバー部材22との2つの部分から構成されており、カバー部材22を使用時のみ広げて、高気圧室Sを形成するため、装置自体がコンパクトなものとなる。換言すれば、空気調和装置10として使用しない場合は、可撓性を有するカバー部材22は折り畳んでおくことができるとともに、チェア20として使用することができる。また、本実施例の空気調和装置10は、ハウジング32に対してカバー部材22を装着した後、エア制御装置16によって高気圧室S内の気圧を高めると、カバー部材22のカバー本体50の開口縁側が、ハウジング32の開口縁近傍に張り付いて、高気圧室Sが密閉されることとなる。したがって、本空気調和装置10は、コンパクトで簡易なものでありながら、気密性の高いものとなっている。
【0036】
また、本実施例の空気調和装置10は、ハウジング32が、内面におけるハウジング側開口36の内側に、カバー部材22のワイヤ54が嵌まり込む溝部32Aを有している。それにより、ハウジング32に対してカバー部材22を定められた位置に取り付けることができるため、使用時におけるカバー部材22のずれを防止することや、ハウジング32とカバー本体50とのラップ長を確実に確保することができるため、高気圧室Sの気密性がより高いものとなっている。
【0037】
<他の実施形態>
上記実施例の空気調和装置10は、本体部としてのハウジング32に設けられたハウジング側開口36が円形状とされるとともに、連結部としてのカバー部材22の開口縁に固定されたワイヤ54も円形状のものとされていたが、その形状に限定されない。例えば、第1実施例におけるチェア20に替えて、図8に示すようなチェア80とすることもできる。このチェア80は、第1実施例におけるチェア20と同様に、使用者が着座するための座部82と、シェルを構成する本体部としてのハウジング84と、ハウジング84を支持する脚部86と、を含んで構成される。ただし、ハウジング84は、卵形状とされ、その開口88も、卵形とされている。なお、この場合、連結部としてのカバー部材も、開口縁に固定されたワイヤが卵形に形成されることで、高い気密性を確保することができる。
【0038】
前述の実施例の空気調和装置10および図8に示したチェア80を用いた空気調和装置は、いずれも、本体部としてのハウジング32,84の開口36,88は、側方に開口するものとされており、使用者12がハウジング32,84に出入りし易い構成となっている。なお、本発明の高気圧室装置は、本体部の開口が側方に限定されない。例えば、上方に開口するものであってもよい。その場合、本体部が、使用者の身体のうち少なくとも下半身を収容するものとし、連結部側に、上半身が収容されるような構成とすることができる。
【0039】
また、前述の実施例の空気調和装置10および図8に示したチェア80を用いた空気調和装置は、いずれも、本体部としてのハウジング32,84の開口36,88は、曲線状に形成されていたが、それに限定されない。例えば、矩形状や多角形状であってもよい。ただし、矩形状や多角形状の開口に比較して、曲線状の開口とすれば、連結部の袋体が折れ曲がるような箇所がないため、本体部と袋体とが確実にラップして、高気圧室の気密性をより高めることが可能である。
【0040】
前述の実施例の空気調和装置10は、本体部がチェアとして機能するものであったが、それに限定されない。例えば、本体部は、使用者が寝転んだ状態で身体の一部あるいは全体を収容するような形状のものとすることもできる。具体的には、本体部と連結部とによってカプセル形状のシェルを形成するような構成のものとすることができる。この場合には、例えば、カプセル形状の上方あるいは側方の一部を連結部としたような構成とすることができる。つまり、本発明の空気圧室装置において、本体部の形状および連結部の形状は、特に限定されず、種々の形状のものを採用することができる。
【符号の説明】
【0041】
10…空気調和装置〔高気圧室装置〕、12…使用者、14…シェル、16…エア制御装置〔エア供給装置〕、20…チェア、22…カバー部材〔連結部〕、30…座部、32…ハウジング〔本体部〕、32A…溝部、36…ハウジング開口〔本体部側開口〕、50…カバー本体〔袋体〕、52…カバー側開口〔連結部側開口〕、54…ワイヤ〔弾性部材〕、80…チェア、82…座部、84…ハウジング〔本体部〕、88…開口〔本体部側開口〕
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8