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  • 特許-手指消毒剤用エアゾール製品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】手指消毒剤用エアゾール製品
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/045 20060101AFI20250311BHJP
   A61P 31/02 20060101ALI20250311BHJP
   A01N 31/02 20060101ALI20250311BHJP
   A01N 25/00 20060101ALI20250311BHJP
   A01N 25/06 20060101ALI20250311BHJP
   A01N 33/12 20060101ALI20250311BHJP
   A01N 59/26 20060101ALI20250311BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20250311BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20250311BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20250311BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20250311BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20250311BHJP
   A61L 2/18 20060101ALI20250311BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20250311BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20250311BHJP
   A61L 101/34 20060101ALN20250311BHJP
【FI】
A61K31/045
A61P31/02
A01N31/02
A01N25/00 101
A01N25/06
A01N33/12 101
A01N59/26
A61K8/02
A61K8/19
A61K8/34
A61K9/12
A61K47/02
A61L2/18
A61Q19/10
A01P3/00
A61L101:34
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020103037
(22)【出願日】2020-06-15
(65)【公開番号】P2021195336
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000149181
【氏名又は名称】株式会社大阪製薬
(74)【代理人】
【識別番号】100119725
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 希世士
(74)【代理人】
【識別番号】100168790
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英之
(72)【発明者】
【氏名】得野 克成
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-014082(JP,A)
【文献】特開2013-241347(JP,A)
【文献】特表2017-514827(JP,A)
【文献】特開2019-104719(JP,A)
【文献】特開平06-327750(JP,A)
【文献】特開2016-166134(JP,A)
【文献】特開2012-067089(JP,A)
【文献】特開2019-167328(JP,A)
【文献】特開2016-210807(JP,A)
【文献】特開2004-283670(JP,A)
【文献】特開2002-201464(JP,A)
【文献】特開2003-313101(JP,A)
【文献】特開平07-187264(JP,A)
【文献】特開平7-136237(JP,A)
【文献】特開平6-279268(JP,A)
【文献】特開2006-131597(JP,A)
【文献】特開平7-187264(JP,A)
【文献】特開2005-200341(JP,A)
【文献】登録実用新案第3165375(JP,U)
【文献】特開2011-167665(JP,A)
【文献】特開2007-145350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
A01N
A01P
A61L
A61Q
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装容器と、
前記外装容器に収容される、20w/v%~65w/v%の炭素数1~3の低級アルコ ール、0.1w/v%~3.0w/v%のリン酸、0.1w/v%~3.0w/v%の 前記リン酸に対応する塩、0.01w/v%~2.0w/v%の第四級アンモニウム塩 、水を含有する手指消毒剤と、
前記外装容器に前記手指消毒剤と混合されて充填されている窒素を備え、
前記手指消毒剤が、25℃におけるpHが3.0~5.0であり、
前記窒素の圧力としては、35℃において0.10MPa以上1.0MPa未満であ
前記手指消毒剤を噴霧口から噴霧したとき、前記噴霧口から20cmにおける平均粒子 径が21~104μmであることを特徴とする手指消毒剤用エアゾール製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、使用者の手や指に付着した細菌、カビやウイルス等を死滅、不活化させるための消毒剤を内包するエアゾール製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用者の手や指に付着した細菌、カビやウイルス等を死滅、不活化させるために、有効成分としてエタノールなどを配合した消毒剤が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、実施例1において、エアゾール耐圧容器に、塩化ベンゼトニウム、99%イソプロピルアルコール、グリセリン、精製水からなる原液を入れ、噴射剤として炭酸ガスを充填したエアゾール製品、実施例2において、エアゾール耐圧容器に、塩化ベンザルコニウム、99%エタノール、精製水からなる原液を入れ、噴射剤として炭酸ガスを充填したエアゾール製品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-327750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のエアゾール製品においては、消毒剤の原液そのものが殺菌性を有していたとしても、容器から噴霧して使用者の手や指に付着したときに、その付着物が十分な殺菌性を有しているか明らかではなかった。すなわち、特許文献1のエアゾール製品において、イソプロピルアルコールやエタノールなどの低級アルコールは、殺菌消毒性を付与するために配合されているが、揮発性が高いために、エアゾール製品の噴霧口から微粒子として噴霧されると、使用者の手指に付着する前にある程度は揮発してしまい、手指に付着したときには十分な殺菌消毒性を有していないおそれがあった。
【0006】
また、特許文献1のエアゾール製品において、消毒剤の原液を噴霧口から噴霧して使用者の手指に付着させるときに、途中で少々揮発しても十分な殺菌消毒性を付与するために、過分のイソプロピルアルコールやエタノールなどの低級アルコールが噴霧されると、そのような低級アルコールは引火性の液体であるために身近に火気が存在すると引火して火元から燃え広がる恐れがあった。とりわけ、COVID-19が広まって以降、消毒に対する世の中の意識が高くなり、台所、食卓などの火気が存在する場所においても頻繁に使用されていることから、イソプロピルアルコールやエタノールなどの低級アルコールを含有する消毒剤の使用によって生じる引火による延焼が懸念されている。
【0007】
そこで、本件発明では、炭素数1~3の低級アルコールを含有する消毒剤に関するエアゾール製品について、エアゾール製品の噴霧口から噴霧して使用者の手指に付着したときに十分な殺菌消毒性を呈するとともに、台所、食卓など身近に火気が存在し引火したとしても火元から燃え広がりにくい手指消毒剤用エアゾール製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
〔1〕すなわち、本発明は、外装容器と、前記外装容器に収容される、20w/v% ~65w/v%の炭素数1~3の低級アルコール、0.1w/v%~3.0w/v%の リン酸、0.1w/v%~3.0w/v%の前記リン酸に対応する塩、0.01w/v %~2.0w/v%の第四級アンモニウム塩、水を含有する手指消毒剤と、前記外装容 器に前記手指消毒剤と混合されて充填されている窒素を備え、前記手指消毒剤が、25 ℃におけるpHが3.0~5.0であり、前記窒素の圧力としては、35℃において0 .10MPa以上1.0MPa未満であり、前記手指消毒剤を噴霧口から噴霧したとき 、前記噴霧口から20cmにおける平均粒子径が21~104μmであることを特徴と する手指消毒剤用エアゾール製品である。
【発明の効果】
【0011】
本件発明によれば、炭素数1~3の低級アルコールを含有する消毒剤に関するエアゾール製品について、エアゾール製品の噴霧口から噴霧して使用者の手指に付着したときに十分な殺菌消毒性を呈するとともに、台所、食卓など身近に火気が存在し引火したとしても火元から燃え広がりにくいようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の手指消毒剤用エアゾール製品における中央断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本件発明の手指消毒剤用エアゾール製品に関する実施形態について詳しく説明する。なお、説明中における範囲を示す表記「~」のある場合は、上限と下限を含有するものである。
【0014】
外装容器1は、本発明の手指消毒剤用エアゾール製品において、使用者から視認することができる最も外側に位置し、内部に手指消毒剤2を収容する部材である。外装容器1の内部に不燃性圧縮気体を充填することから、アルミ合金などの金属、所定厚みを有する合成樹脂など所定の圧力以下では破断しないように耐圧性を有している。本実施形態において、外装容器1は、上部に開口を有する中空の有底円筒状である。その上部の開口は、図1に示すように、マウンティングカップ3によって封止される。また、後述する手指消毒剤2において、25℃におけるpHが3.0~5.0である酸性であるときには、外装容器1が腐食による穴あきなどが生じないようにするために、手指消毒剤2と接触する外装容器1の内側には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどのポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂によって所定の厚みで塗布されコーティング層を有していることが好ましい。
【0015】
次に、外装容器1に内包される手指消毒剤2について説明する。
【0016】
本発明における炭素数1~3の低級アルコールは、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどの分子中における炭素数が1個から3個のアルコールである。当該低級アルコールを用いることにより、細菌の細胞膜やウイルスのエンベロープの破壊並びに酵素等のたんぱく質の凝固によりウイルスや細菌を死滅させて、それら細菌やウイルスによる病気など人体への害を予防することができる。
【0017】
炭素数1~3の低級アルコールの手指消毒剤2における含有割合としては、20w/v%~65w/v%であることが好ましく、そして25~63w/v%であることがより好ましい。炭素数1~3の低級アルコールの含有割合がこの範囲であると、細菌、カビやウイルス等を死滅、不活化させることがき、さらには酸との組み合わせによりウイルスに対してより効果を発揮することができる。なお、濃度の表記については、100mLあたりのグラム数(g)の割合である。
【0018】
本発明の手指消毒剤2において酸を配合することができる。当該酸は、エタノールや第四級アンモニウム塩等と併存することにより、核酸を保護するカプシドを破壊することで、エタノールや第四級アンモニウム塩等の細胞への浸透を促進させ、とりわけエンベロープの有無を問わず幅広いRNAウイルス及びDNAウイルスに対しても不活化などの効力を増強させる成分である。
【0019】
酸としては、具体的に、クエン酸、リンゴ酸、酢酸、ホウ酸、乳酸、ギ酸、シュウ酸、プロピオン酸などの有機酸や、リン酸、硫酸などの無機酸が好ましい。これらの酸は単独して使用することができるが、二種以上組み合わせて使用されてもよい。
【0020】
酸の含有割合は、手指消毒剤2のうち、0.1w/v%~3.0w/v%が好ましく、0.2w/v%~2.5w/v%がさらに好ましい。酸の含有割合がこの範囲にあると、ウイルスの不活化、菌の死滅などの効力を奏することができる。
【0021】
本発明の手指消毒剤2において、前記酸の塩を配合することができる。前記酸の塩は、上述した有機酸や無機酸に対応する塩である。具体的には、例えば、酸としてクエン酸を用いているときはクエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウムなどの塩であり、リンゴ酸を用いているときはリンゴ酸ナトリウム、リンゴ酸カリウム、リンゴ酸カルシウムなどの塩であり、リン酸を用いているときはリン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウムなどの塩である。このように、前記酸に対応する塩が含まれることによって、手指消毒剤2が所定範囲のpHとなるとともに、手指消毒剤2において炭素数1~3の低級アルコールや水が長く使用して少々揮発したとしても、pHの大きな変動が抑制されるため、使用者は所定範囲の液性にて使用することができる。
【0022】
前記酸の塩の含有割合は、手指消毒剤2のうち0.1w/v%~3.0w/v%が好ましく、0.2w/v%~2.5w/v%がさらに好ましい。前記酸の塩の含有割合がこの範囲にあると、手指消毒剤2のpHを所定の範囲に保つことができる。
【0023】
本発明の手指消毒剤2において第四級アンモニウム塩を配合することができる。当該第四級アンモニウム塩は、一般的に化学式N+RX-(R:アルキル基,X-:塩化物イオンなど)で表されるように、第四級アンモニウムイオンとカウンターアニオンとからなる化合物である。第四級アンモニウム塩としては、具体的に、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化メチルベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、臭化ヘキサドデシルトリメチリアンモニウム、臭化テトラアンモニウムなどが好ましい。これらの第四級アンモニウム塩は単独して使用することができるが、二種以上組み合わせて使用されてもよい。このように、第四級アンモニウム塩が含まれることによって、細菌の細胞膜が破壊されやすくなり、あるいはコロナウイルス(とりわけCOVID-19)、インフルエンザウイルス、エボラウイルス、ヒト免疫不全ウイルスなどのエンベロープを有するRNAウイルスやヘルペスウイルス、天然痘ウイルスなどのエンベロープを有するDNAウイルスに対して、エンベロープが破壊されやすくなり、より不活化することができる。
【0024】
第四級アンモニウム塩の含有割合は、手指消毒剤2のうち、0.01w/v%~2.0w/v%が好ましく、0.03w/v%~1.0w/v%がさらに好ましい。第四級アンモニウム塩の含有割合がこの範囲にあると、細菌の細胞膜が破壊されやすくなり、エンベロープを有するRNAウイルスやDNAウイルスが、より不活化されやすくなる。
【0025】
本発明の水は、炭素数1~3の低級アルコール、酸、前記酸の塩、第四級アンモニウム塩を均一な溶液とするための溶媒である。具体的に、水としては、日本薬局方規格の水が好ましく、例えば、水道水、井戸水などである常水、そして、蒸留、イオン交換膜によるイオン交換処理、限外ろ過膜による限外ろ過処理のいずれか、またはそれらの組み合わせにより常水を処理した精製水、そして、加熱等により精製水を滅菌処理した滅菌精製水などが好ましい。そして、水の配合割合は、本発明に用いられる炭素数1~3の低級アルコール、酸、前記酸の塩、第四級アンモニウム塩などを除く残余であり、30w/v%~75w/v%であることが好ましく、32w/v%~65w/v%であることが好ましい。
【0026】
手指消毒剤2には、上記した成分の他に、必要に応じて、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ソルビットなどの多価アルコールやヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウムなどの多糖類又はその塩である保湿剤、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの増粘剤、香料、色素などを配合することもできる。例えば、保湿剤を添加することでさらに肌荒れを防止することができる。
【0027】
上述した成分が配合されている手指消毒剤2は、酸性・アルカリ性の程度を示す液性として、25℃におけるpHが3.0~5.0であることが好ましく、3.0~4.0であることがさらに好ましい。手指消毒剤2のpHがこの範囲であると、細菌の死滅や各種ウイルスの不活化に効果を奏する。
【0028】
このようにして配合された手指消毒剤2は、噴霧口71から噴霧されたとき、噴霧口71から20cmにおける平均粒子径が15~150μmであることが好ましく、さらに20~120であることがより好ましい。平均粒子径がこの範囲であると、エアゾール製品の噴霧口71から噴霧して使用者の手指に付着したときに、途中で炭素数1~3の低級アルコールが揮発したとしても十分な殺菌消毒性を呈するとともに、過分の炭素数1~3の低級アルコールが含まれていないためもし身近に存在する火気に引火しても火元から燃え広がりにくいようにすることができる。なお、平均粒子径は、レーザー回折・散乱法によって計測されることが好ましい。
【0029】
本発明の不燃性圧縮気体は、手指消毒剤2とともに外装容器1に充填され、通常使用される10~30℃程度の常温において、火気により引火及び燃焼が起きず、外装容器1内にて大気圧より高い圧力の状態である気体である。後述するアクチュエータ7が押されることにより、手指消毒剤2とともに不燃性圧縮気体が外部へ排出されることとなる。具体的に、不燃性圧縮気体は、窒素、二酸化炭素、亜酸化窒素、ヘリウム、アルゴンから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。不燃性圧縮気体がこれらの気体であると、使用者の近くに火気が存在していても引火等しないために本発明の手指消毒剤用エアゾール製品を安全に使用することができる。
【0030】
また、手指消毒剤2とともに外装容器1に充填されている不燃性圧縮気体の圧力としては、35℃において0.10MPa以上1.0MPa未満であることが好ましく、0.2MPa以上0.9MPa以下であることが好ましい。不燃性圧縮気体の圧力がこの範囲であると、不燃性圧縮気体とともに手指消毒剤2が円滑に排出される。
【0031】
当該エアゾール製品は、図1に示すように、外装容器1、手指消毒剤2、マウンティングカップ3、ステム4、弾性バネ5、チューブ6、アクチュエータ7などから構成されている。外装容器1に収容されている手指消毒剤2と不燃性圧縮気体は、外装容器1の外部より圧力が高くなっている。このため、アクチュエータ7が押下されると、弾性バネ5が付勢力に抗ってステム4も押下されることにより、ステム孔41が袋体2の内部と連通し、袋体2を介して手指消毒剤2と不燃性圧縮気体が、チューブ6、ステム4を通じてアクチュエータ7の噴霧口71から外部に排出される。
【実施例
【0032】
以下、本件発明における手指消毒剤2について具体的に説明する。なお、本件発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0033】
<処方1>
20℃の室温中において、容量が200mlのグリフィンビーカーに、炭素数1~3の低級アルコールとしてエタノールを28.2g、酸としてリン酸を0.5g、前記酸に対応する塩としてリン酸三ナトリウムを0.25g、第四級アンモニウム塩として濃ベンザルコニウム塩化物液50を0.1g(塩化ベンザルコニウムとして0.05g)、保湿剤としてグリセリンを0.2g、同じく保湿剤としてヒアルロン酸ナトリウム(2)を0.01g、そして、残余として精製水を加え、攪拌し、合計100mlの手指消毒剤を得た。
【0034】
<処方2~5>
処方2~5は、炭素数1~3の低級アルコールを必須成分とし、必要に応じて、酸、前記酸に対応する塩、第四級アンモニウム塩を、それぞれ表1に示したように処方し、実施例1と同様にして、合計100mlの手指消毒剤を得た。
【0035】
【表1】
【0036】
このようにして得られた手指消毒剤を内包するエアゾール製品は、以下の評価方法において性能が確認された。
【0037】
〔殺菌消毒性試験〕
殺菌消毒性について、エアゾール製品から噴霧した手指消毒剤2における大腸菌及びブドウ球菌に対する効果を確認した。具体的には、まず、エアゾール製品の使用時に手指に噴霧することを想定して、噴霧口71から20cm離れた位置で、シャーレ内の平板培地に塗抹した約105個の菌に対して、噴霧口71の口径が異なる種々のアクチュエータ7を所定の力で押下して約1秒間噴霧した。そして、それぞれの培地を35℃で約8時間培養し、菌数を計測した。培地に塗抹した当初の菌数に対して、手指消毒剤2と接触したことにより死滅した菌数の割合が99.9%以上の効力であったものを「◎」と評価し、99%以上99.9%未満の効力であったものを「○」と評価し、99%未満の効力であったものを「×」と評価した。このとき、「◎」と「○」を十分に殺菌消毒性があるとして優良と、「×」を殺菌消毒性が不十分として不良と判断した。
【0038】
また、液温25℃の手指消毒剤2を用いて、それぞれのアクチュエータ7の噴霧口71から20cm離れた位置での噴霧液の平均粒子径も併せて測定した。噴霧された手指消毒剤2の平均粒子径については、スプレー用のレーザー回折・散乱式装置(マイクロトラックベル社製 AerotracII)を用いて測定した。手指消毒剤2が噴霧されたときにおける平均粒子径と殺菌消毒性の関係についての結果を表2及び表3に示す。
【0039】
〔火炎長試験〕
一般社団法人日本エアゾール協会による「「エアゾール等試験検査要領」に係る自主基準規定」(平成29年4月25日改訂)における噴霧状の火炎長の試験に準じて、エアゾール製品の噴霧口71から15cm離れた位置に点火したバーナーを静置し、バーナーの炎の上部3分の1を通過するようにして、アクチュエータ7を所定の力で押下してエアゾール製品の噴霧口71から手指消毒剤2を噴霧する。このとき、バーナーの炎に引火して、噴霧した下流方向に沿ってバーナーの炎から延びる引火炎の長さを計測した。バーナーの炎から延びる引火炎の長さが5cm未満であったものを「◎」と評価し、5cm以上20cm未満のものを「○」と評価し、20cm以上のものを「×」と評価した。このとき、「◎」と「○」を火元から燃え広がりにくいとして優良と、「×」を火元から燃え広がりやすいとして不良と判断した。手指消毒剤2が噴霧されたときにおける火炎長試験の結果を表2及び表3に示す。
【0040】
これらの殺菌消毒性試験及び火炎長試験の結果を受けた総合評価として、各処方及び噴霧口71から20cm離れた位置での噴霧液の平均粒子径について、殺菌消毒性試験及び火炎長試験において共に「◎」又は「○」の評価のものを実際に使用し得るものとして「○」と評価し、一方でも「×」の評価のものを実際に使用することができないとして「×」と評価した。
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
表2、表3に示すように、処方1~4の手指消毒剤のうち、噴霧口71から20cm離れた位置での噴霧液の平均粒子径が21~116μmであるものについては、噴霧中にエタノールが揮発していても大腸菌やブドウ球菌といった細菌に対して殺菌消毒性を示すとともに、火元であるバーナーの炎から延びる引火炎の長さが20cm未満であり引火しても燃え広がりにくいことが分かり、実際に使用し得るものであった。しかしながら、噴霧液の平均粒子径が15μm未満となるものでは、表面積が大きくなるためエタノールが揮発して殺菌消毒性が十分ではなく、また、平均粒子径が150μmより大きいものでは、エタノールが揮発しにくいことから殺菌消毒性は有するものの引火炎の長さが20cm以上となり引火したときに燃え広がりやすいため、いずれのものも実際に使用することは困難であった。
【符号の説明】
【0044】
1・・・外装容器
2・・・袋体
3・・・マウンティングカップ
4・・・ステム
41・・・ステム孔
5・・・弾性バネ
6・・・チューブ
7・・・アクチュエータ
71・・・噴霧口
図1