(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】空気電池用正極シート、および、それを用いた空気電池
(51)【国際特許分類】
H01M 12/08 20060101AFI20250311BHJP
H01M 4/96 20060101ALI20250311BHJP
【FI】
H01M12/08 K
H01M4/96 M
(21)【出願番号】P 2020203242
(22)【出願日】2020-12-08
【審査請求日】2023-11-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年5月31日発行 一般社団法人日本太陽エネルギー学会発行 太陽エネルギー Vol.46,No.3,通巻257号
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「空気電気統合化技術並びに要素技術開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(72)【発明者】
【氏名】野村 晃敬
(72)【発明者】
【氏名】久保 佳実
(72)【発明者】
【氏名】亀田 隆
(72)【発明者】
【氏名】藤井 恵美子
【審査官】川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/235638(WO,A1)
【文献】Akihiro NOMURA et al,CNT Sheet Air Electrode for the Development of Ultra-High Cell Capacity in Lithium-Air Batteries,Scientific Reports,2017年04月05日,Vol.7,P.1-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00 - 4/98
H01M 10/05 -10/0587
H01M 12/00 -12/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維状炭素からなり、
直径0.1~10μmの細孔の細孔容積は、2.0~10.0cm
3/gの範囲を満たし、
BET法比表面積は、400~1300m
2/gの範囲を満た
し、
直径2~1000nmの細孔の細孔容積は、0.5~2.0cm
3
/gの範囲を満たす、
空気電池用正極シート。
【請求項2】
見かけ密度は、0.05~0.2g/cm
3の範囲を満たす、請求項1に記載の正極シート。
【請求項3】
前記見かけ密度は、0.07~0.19g/cm
3の範囲を満たす、請求項2に記載の正極シート。
【請求項4】
前記直径0.1~10μmの細孔の細孔容積は、2.3~8.0cm
3/gの範囲を満たす、請求項1~3のいずれかに記載の記載の正極シート。
【請求項5】
前記直径0.1~10μmの細孔の細孔容積は、2.5~5.0cm
3/gの範囲を満たす、請求項4に記載の記載の正極シート。
【請求項6】
前記BET法比表面積は、500~1200m
2/gの範囲を満たす、請求項1~5のいずれかに記載の正極シート。
【請求項7】
前記BET法比表面積は、550~1000m
2/gの範囲を満たす、請求項6に記載の正極シート。
【請求項8】
前記繊維状炭素は、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、および、カーボンナノファイバからなる群から選択される、請求項1~7のいずれかに記載の正極シート。
【請求項9】
前記繊維状炭素の一部は、バンドル状である、請求項1~8のいずれかに記載の正極シート。
【請求項10】
ラマン分光より得られる結晶構造炭素由来のピーク強度Gに対する、乱層構造炭素由来のピーク強度Dの強度比D/Gは、0.1~1.0の範囲を満たす、請求項1~9のいずれかに記載の正極シート。
【請求項11】
前記強度比D/Gは、0.2~0.8の範囲を満たす、請求項10に記載の正極シート。
【請求項12】
前記直径2~1000nmの細孔の細孔容積は、0.7~1.0cm
3/gの範囲を満たす、請求項1
~11のいずれかに記載の正極シート。
【請求項13】
空孔率は、80~95%の範囲を満たす、請求項1~1
2のいずれかに記載の正極シート。
【請求項14】
液滴10μLを前記正極シートに浸透させたときの電解液浸透時間は、0分より大きく6分以下の範囲を満たす、請求項1~1
3のいずれかに記載の正極シート。
【請求項15】
前記電解液浸透時間は、0分より大きく2分以下の範囲を満たす、請求項1
4に記載の正極シート。
【請求項16】
50~400μmの範囲の厚さを有する、請求項1~1
5のいずれかに記載の正極シート。
【請求項17】
目付は、2~3.5mg/cm
2の範囲を満たす、請求項1~1
6のいずれかに記載の正極シート。
【請求項18】
正極と、負極と、前記正極と負極との間に金属イオンを伝導可能な電解液とを備え、
前記正極が、請求項1~1
7のいずれかに記載の正極シートを備える、空気電池。
【請求項19】
前記負極は、リチウム金属層を備え、
前記金属イオンは、リチウムイオンである、請求項1
8に記載の空気電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気電池用正極シート、および、それを用いた空気電池に関し、詳細には、繊維状炭素を用いた空気電池用正極シート、および、それを用いた空気電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、再生可能エネルギーの普及や自動車の電動化への要請により、軽量かつ大容量、すなわちより高いエネルギー密度をもつ蓄電池の開発が要求されている。実現が想定されうる二次電池の中でも、リチウム空気電池は最も高い理論エネルギー密度を有しており、現在普及しているリチウムイオン電池を大幅に超えるエネルギー密度を達成しうる。
【0003】
リチウム空気電池は負極活物質にリチウム金属、正極活物質に大気酸素を用いるものである。放電時はリチウム金属負極が溶出し(Li⇔Li++e-)、正極にて大気から吸収された酸素と反応し過酸化リチウムが析出する(2Li++2e-+O2⇔Li2O2)。充電時はこれと逆の反応が起こり、これらを繰り返して充放電を行うものである。ここで正極は、充放電にあわせて大気酸素を吸収・排出するはたらきを有する電極であることから、空気極とも呼ばれる。
【0004】
このような正極としてカーボンナノチューブからなるシート状電極が開発された(例えば、非特許文献1を参照)。非特許文献1は、単層カーボンナノチューブをイソプロパノールに分散したスラリーを、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルタを介して、真空ろ過することによって、自立したカーボンナノチューブシートが得られることを報告する。このようなカーボンナノチューブシートを空気電池の正極に用いることにより、セルの容量が飛躍的に向上した。しかしながら、高速での放電特性(出力レートを上げたより大きな電流密度で電流を取り出す場合の放電容量)が十分ではない。また、サイクル特性においても充放電できる回数に制限がある。
【0005】
一方、カーボンナノチューブを用いた自立膜が知られる(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1は、過酸化物により表面処理したスーパーグロース法によるカーボンナノチューブを含有する分散液を濾過し、自立膜を得ることを開示する。このような自立膜は、導電性を有し、タッチパネル、太陽電池、燃料電池等の電子機器や電子部材に適用されるが、空気電池の正極としての検討はされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Akihiro Nomuraら,Scientific Reports 7, Article number:45596,2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上から、本発明の課題は、高速での優れた放電特性を発揮し得る空気電池用正極シートおよびそれを用いた空気電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の空気電池用正極シートは、繊維状炭素からなり、直径0.1~10μmの細孔の細孔容積は、2.0~10.0cm3/gの範囲を満たし、BET法比表面積は、400~1300m2/gの範囲を満たし、これにより上記課題を解決する。
見かけ密度は、0.05~0.2g/cm3の範囲を満たしてもよい。
前記見かけ密度は、0.07~0.19g/cm3の範囲を満たしてもよい。
前記直径0.1~10μmの細孔の細孔容積は、2.3~8.0cm3/gの範囲を満たしてもよい。
前記直径0.1~10μmの細孔の細孔容積は、2.5~5.0cm3/gの範囲を満たしてもよい。
前記BET法比表面積は、500~1200m2/gの範囲を満たしてもよい。
前記BET法比表面積は、550~1000m2/gの範囲を満たしてもよい。
前記繊維状炭素は、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、および、カーボンナノファイバからなる群から選択されてもよい。
前記繊維状炭素の一部は、バンドル状であってもよい。
ラマン分光より得られる結晶構造炭素由来のピーク強度Gに対する、乱層構造炭素由来のピーク強度Dの強度比D/Gは、0.1~1.0の範囲を満たしてもよい。
前記強度比D/Gは、0.2~0.8の範囲を満たしてもよい。
直径2~1000nmの細孔の細孔容積は、0.5~2.0cm3/gの範囲を満たしてもよい。
前記直径2~1000nmの細孔の細孔容積は、0.7~1.0cm3/gの範囲を満たしてもよい。
上記正極シートの空孔率は、80~95%の範囲を満たしてもよい。
液滴10μLを前記正極シートに浸透させたときの電解液浸透時間は、0分より大きく6分以下の範囲を満たしてもよい。
前記電解液浸透時間は、0分より大きく2分以下の範囲を満たしてもよい。
上記正極シートは50~400μmの範囲の厚さを有してもよい。
上記正極シートの目付は、2~3.5mg/cm2の範囲を満たしてもよい。
本発明の空気電池は、正極と、負極と、前記正極と負極との間に金属イオンを伝導可能な電解液とを備え、前記正極が、上記正極シートを備え、これにより上記課題を解決する。
前記負極は、リチウム金属層を備え、前記金属イオンは、リチウムイオンであってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の空気電池用正極シートは、繊維状炭素からなり、直径0.1~10μmの細孔の細孔容積は、2.0~10.0cm3/gの範囲を満たし、BET法比表面積は、400~1300m2/gの範囲を満たす。このような特定の条件を満たすよう調整することにより、酸素およびリチウムイオン等の金属イオンが十分に拡散し、電解液との親和性が高くなるので、高速での優れた放電特性を有し、優れたサイクル特性を有する空気電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の空気電池用正極シートを製造する工程を示すフローチャート
【
図2】本発明の実施形態に係る空気電池の模式的な断面図
【
図3】本発明の空気電池の他の実施形態である積層型金属電池である空気電池の模式的な断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。なお、同様の要素には同様の番号を付し、その説明を省略する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に制限されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0013】
(実施の形態1)
実施の形態1では、本発明の空気電池用正極シートおよびその製造方法について説明する。
【0014】
空気電池セル(例えば、リチウム空気電池)の出力および容量を向上させるには、正極である空気極が電極として十分な導電性を有すると同時に、電池反応が起きる電気化学活性面を有すること、および、電気化学活性面に電池反応物である酸素とリチウムイオンとを供給可能とする拡散経路を有する必要がある。この拡散経路は放電反応により析出する固体生成物(主には過酸化リチウム(Li2O2))の成長を阻害せず多量に蓄積する空間を提供する役割も兼ねる。すなわち正極は、その電極内部に物質拡散が容易な連続した空孔構造に加え、大きな細孔容積と表面積とを有する必要がある。
【0015】
このような観点から、本願発明者らは、繊維状炭素を用いた自立可能なシートを作製し、その細孔容積および表面積を空気電池の正極用に制御することを試みた。以降では、主としてリチウム空気電池に正極シートを用いた場合について説明するが、空気電池は、リチウム空気電池以外にもナトリウム空気電池、空気亜鉛電池、空気鉄電池、空気アルミニウム電池、空気マグネシウム電池等の外部ガスのやり取りをする空気電池を含む。
【0016】
[空気電池用正極シート]
本発明の空気電池用正極シート(以降では単に正極シートと称する)は、繊維状炭素からなり、直径0.1~10μmの細孔の細孔容積は、2.0~10.0cm3/gの範囲を満たし、BET法比表面積は、400~1300m2/gの範囲を満たす。このような特定の細孔容積およびBET法比表面積を有することにより、自立したシートを維持しつつ、高速での優れた放電特性(レート特性)を有し、優れたサイクル特性を有する空気電池を提供できることが分かった。
【0017】
正極シートの厚さに制限はないが、好ましくは、50~400μmの範囲を有する。これにより、空気電池の正極として機能し得る。空気電池の小型化や優れた放電特性、サイクル特性の観点から、より好ましくは、100~200μmの範囲の厚さを有する。
【0018】
(繊維状炭素)
本願明細書において、繊維状炭素は、sp2混成軌道により結合された層状炭素から構成され、平均直径0.1~50nm、平均長さ1~100μm程度の繊維状形態を有する炭素を意図する。平均直径は、一般に0.1~50nmが好ましく、平均長さは1~100μmが好ましい。平均アスペクト比(繊維状炭素の直径に対する長さの平均;長さ/直径)は、一般に100以上が好ましく、500以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、100000以下が好ましい。一般的に直径が小さく、アスペクト比が高い繊維状炭素ほど、互いに強い凝集力がはたらき、繊維状炭素がたとえば後述する0.1~10μm程度の太い束状(バンドル)に連なった不織布状の集合体を形成しやすい。
【0019】
なお、本明細書において、平均アスペクト比は、走査型電子顕微鏡により観察した、100本の繊維状炭素の繊維長と繊維直径から、繊維長/繊維直径として算出される値を意味する。
【0020】
繊維状炭素は、好ましくは、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、および、カーボンナノファイバからなる群から選択される。これらの繊維状炭素はいずれも入手可能である。中でも、カーボンナノチューブは、円筒状であり、上述の細孔容積および比表面積を達成しやすいため、好ましい。
【0021】
繊維状炭素としてカーボンナノチューブを用いた際には、平均アスペクト比の下限値は、好ましくは2000以上、より好ましくは2500以上、さらに好ましくは3000以上である。カーボンナノチューブの平均アスペクト比が下限値以上であると、カーボンナノチューブ同士の絡み合いがより強くなり、優れた強度を有する正極シートが得られる。
【0022】
カーボンナノチューブの平均アスペクト比の上限値は、好ましくは100000以下、より好ましくは50000以下である。平均アスペクト比が上限値以下であると、カーボンナノチューブはより優れた分散性を有するため、正極シートを歩留まりよく製造できる。
【0023】
カーボンナノチューブとしては、特に制限されず、単層カーボンナノチューブ(SWNT:single-walled carbon nanotube;シングルウォールカーボンナノチューブ)であってもよく、多層カーボンナノチューブ(MWNT:multi-walled carbon nanotube)であってもよい。なお、本明細書において、二層カーボンナノチューブ(DWNT)は、多層カーボンナノチューブに含まれるものとする。なかでも、リチウム空気電池の正極に適用したとき、より優れた電池特性を有する点で、カーボンナノチューブとしては、SWNTが好ましい。
【0024】
繊維状炭素の一部がバンドル状であってよい。これにより、強度が増すため自立シートとなり得、上述の細孔容積を達成しやすい。このとき、バンドルの幅は、好ましくは、0.1μm~10μの範囲を有する。
【0025】
(BET法比表面積)
本発明の正極シートのBET(Brunauer Emett Teller)法比表面積は、400~1300m2/gの範囲を満たす。BET法比表面積が400m2/g未満であると、イオン輸送の効率が低下し、リチウムイオンと酸素とが反応して過酸化リチウムを生成する場合、正極から供給される電子を酸素が受け取るに必要な反応場が少なくなり、放電容量が小さくなり得る。一方、BET法比表面積が1300m2/gを超えると、正極表面における電池副反応の寄与が増大するため、望ましい充放電特性を得ることが困難になり得る。なお、BET法比表面積は小数第1位を四捨五入して求めるものとする。
【0026】
BET法比表面積の下限値および上限値は、それぞれ、正極シートが本発明の効果を奏する点で、好ましくは500m2/g以上、より好ましくは550m2/g以上であり、好ましくは1200m2/g以下、より好ましくは、1000m2/g以下である。これにより、正極シートは、優れた放電特性を有し、強度を有し得る。BET法比表面積の範囲は、上記下限値および上限値を任意に設定してよいが、正極シートのBET法比表面積は、例えば、500~1200m2/g、550~1000m2/gの範囲を満たしてよい。
【0027】
(直径0.1~10μmの細孔の細孔容積)
本発明の正極シートの直径0.1~10μmの細孔の細孔容積は、2.0~10.0cm3/gの範囲を満たす。直径0.1~10μmの細孔の細孔容積は、水銀圧入法により測定した値を用いて得られる。なお、BET法比表面積は小数第2位を四捨五入して求めるものとする。
【0028】
この領域の細孔は主に、電池外部の酸素が正極シートの内部に侵入するために働く。この領域の細孔容積が上記範囲を満たすことにより、リチウムイオンが酸素と反応して過酸化リチウムを生成するにあたり、十分な量の酸素が侵入でき、しかも高速で侵入できる。これにより、本発明の正極シートを用いれば、高電流密度での放電容量が大きい、すなわち高速での放電特性に優れた電池を提供できる。
【0029】
また、充電においては、過酸化リチウムが電極に電子を渡して、Liイオンと酸素になるが、直径0.1~10μm以下の細孔容積がこの範囲にあることで、発生した酸素の正極シートからの抜けがよくなり、高速での充電が可能となる。
【0030】
直径0.1~10μmの細孔の細孔容積の下限値および上限値は、それぞれ、正極シートが本発明の効果を奏する点で、好ましくは2.3cm3/g以上、より好ましくは2.5cm3/g以上であり、好ましくは8.0cm3/g以下、より好ましくは、5.0cm3/g以下である。これにより、正極シートは、優れた放電特性を有し、強度を有し得る。直径0.1~10μmの細孔の細孔容積の範囲は、上記下限値および上限値を任意に設定してよいが、正極シートの直径0.1~10μmの細孔の細孔容積は、例えば、2.3~8.0m3/g、2.5~5.0m3/gの範囲を満たしてよい。
【0031】
(直径2~1000nmの細孔の細孔容積)
本発明の空気電池用正極シートの直径2~1000nmの細孔の細孔容積は、好ましくは、0.5~2.0cm3/gの範囲を満たす。直径2~1000nmの細孔の細孔容積は、窒素吸着測定より得られた吸着等温線からBJH(Barrett-Joyner-Hallenda)法を用いて得られる。なお、小数第2位を四捨五入して求めるものとする。
【0032】
本発明の正極シートが上記細孔容積を有することにより、特に、充電反応において、過酸化リチウムが正極に電子を渡して、リチウムイオンと酸素とになるための反応場が多くなり、より多くの電子の受け渡しを可能となる。この結果、より優れた放電特性を有する電池を提供できる。
【0033】
直径2~1000nmの細孔の細孔容積の下限値および上限値は、それぞれ、正極シートが本発明の効果を奏する点で、より好ましくは0.6cm3/g以上、さらに好ましくは0.7cm3/g以上であり、より好ましくは1.5cm3/g以下、さらに好ましくは1.0cm3/g未満である。これにより、正極シートは、強度を維持しつつ、優れた放電特性を有し得る。直径2~1000nmの細孔の細孔容積の範囲は、上記下限値および上限値を任意に設定してよいが、正極シートの直径2~1000nmの細孔の細孔容積は、例えば、0.6~1.0m3/g未満、0.7~1.0m3/g未満の範囲を満たしてよい
【0034】
(D/G)
本発明の正極シートのラマン分光より得られる結晶構造炭素由来のピーク強度Gに対する、乱層構造炭素由来のピーク強度Dの強度比D/Gは、好ましくは、0.1~1.0の範囲を満たす。このように結晶性が比較的に低いことにより、シートと電解液との親和性が高まり、サイクル特性に優れた正極シートとなる。なお、D/Gは、小数第2位を四捨五入して求めるものとする。
【0035】
D/Gの下限値および上限値は、それぞれ、正極シートが本発明の効果を奏する点で、より好ましくは0.2以上、さらに好ましくは0.3以上であり、より好ましくは0.8以下、さらに好ましくは0.6以下である。D/Gの範囲は、上記下限値および上限値を任意に設定してよいが、正極シートのD/Gは、例えば、0.2~0.8、0.3~0.6の範囲を満たしてよい。
【0036】
(見かけ密度)
本発明の正極シートの見かけ密度(シート密度とも称する)は、好ましくは、0.05~0.2g/cm3の範囲を有する。これにより、酸素が透過拡散するに必要な空孔を十分に有し、優れた強度を有する正極シートを提供できる。
【0037】
シート密度の下限値および上限値は、それぞれ、正極シートが本発明の効果を奏する点で、より好ましくは0.07g/cm3以上、さらに好ましくは0.1g/cm3以上であり、より好ましくは0.19g/cm3以下、さらに好ましくは0.18g/cm3以下である。シート密度の範囲は、上記下限値および上限値の範囲であれば制限はないが、正極シートの見かけ密度は、例えば、0.07~0.19g/cm3、0.1~0.18g/cm3の範囲を満たしてよい。
【0038】
(空孔率)
本発明の正極シートの空孔率は、好ましくは、80~95%の範囲を満たす。これにより、正極シートは、放電時に生成する過酸化リチウムを多く蓄えることができ、電池外部から正極内への空気や酸素の侵入が抵抗なく行われるため、高い放電容量を有し、高速放電可能な電池を提供できる。
【0039】
ここで、空孔率は、正極シートの見かけ密度と真密度とから、以下の計算式:[1-(正極シートの見かけ密度/正極シートを構成する材料の真密度)]×100により求められる。
【0040】
空孔率の下限値および上限値は、それぞれ、正極シートが本発明の効果を奏する点で、より好ましくは83%以上、さらに好ましくは85%以上であり、より好ましくは93%以下、さらに好ましくは90%以下である。
【0041】
(電解液浸透時間)
本発明の正極シートの液滴10μLを正極シートに浸透させたときの電解液浸透時間は、好ましくは、0分より大きく6分以下の範囲を満たす。これにより、電解液との親和性に優れた正極シートとなるので、高速での優れた放電特性およびサイクル特性を有する空気電池を提供できる。
【0042】
電解液浸透時間は、対象となる正極シートの上面に液滴(標準溶液)10μLを滴下してから、滴下された液滴のすべてが完全に浸透し、上面から消失するまでの時間である。本願明細書では、電解液浸透時間は、面積2cm2で50~150μmの範囲の厚さを有する正極シートに、20℃において8~13mPa・Sの範囲の粘度を有する電解液10μLを滴下してから、上面から消失するまでの時間とする。このような電解液としてLiTFS(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム)の1Mテトラエチレングリコールジメチルエーテル溶液がある。
【0043】
電解液浸透時間の上限値は、正極シートが本発明の効果を奏する点で、より好ましくは2分以下、さらに好ましくは1分以下である。
【0044】
(目付)
本発明の正極シートの目付は、好ましくは、2~3.5mg/cm2の範囲を満たす。これにより、正極シートは、高い放電容量を有し、高速放電可能な電池を提供できる。目付は、対象となる正極シートを直径(φ)16mmに打ち抜き、その重量(mg)を測定し、面積当たりの重量とした。
【0045】
[空気電池用正極シートの製造方法]
次に、上述の空気電池用正極シートの製造方法について説明する。
図1は、本発明の空気電池用正極シートを製造する工程を示すフローチャートである。
【0046】
ステップS110:繊維状炭素を分散媒に分散させ、繊維状炭素の分散液を得る。
繊維状炭素は、ここでも主としてsp2混成軌道により結合された層状炭素を有するものを意図し、上述した繊維状炭素を用いることができるが、原料としての繊維状炭素は、400~1300m2/gの範囲を満たすBET法比表面積、および、8.0~15.0cm3/gの範囲を満たす直径2~1000nmの細孔の細孔容積を有する。原料としての繊維状炭素のBET法比表面積が上述の範囲を満たすことにより、反応場を維持し、自立性を有する正極シートが得られる。原料としての繊維状炭素の細孔容積が上述の範囲を満たすことにより、充電反応における反応場が多くなり、優れた放電特性を有する電池を提供できる。
【0047】
原料としての繊維状炭素のBET法比表面積の下限値および上限値は、それぞれ、正極シートが本発明の効果を奏する点で、好ましくは800m2/g以上、より好ましくは1000m2/g以上であり、好ましくは1280m2/g以下、より好ましくは1250m2/g以下である。
【0048】
原料としての繊維状炭素の直径2~1000nmの細孔の細孔容積の下限値および上限値は、それぞれ、正極シートが本発明の効果を奏する点で、好ましくは8.5cm3/g以上、より好ましくは9.0m2/g以上であり、好ましくは12.0m2/g以下、より好ましくは11.5m2/g以下である。
【0049】
上述した繊維状炭素としては、好ましくは、単層カーボンナノチューブである。
【0050】
分散媒としては、水および一般に入手可能な有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミドの他、各種アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール)、エーテル類、エステル類、カーボネート類、芳香族炭化水素溶媒、炭化水素溶媒などが挙げられるが、これらに限定されない。溶媒は、使用する繊維状炭素の特性(平均長さ、平均外径、分散性等)を考慮して選択することができる。溶媒は、単一溶媒であってもよく、混合溶媒であってもよい。
【0051】
分散液中の繊維状炭素の濃度の下限値および上限値は、それぞれ、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上であり、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。分散液中の繊維状炭素の濃度は、好ましくは0.01~0.3質量%の範囲であり、より好ましくは、0.01~0.1質量%の範囲である。これにより、歩留まりよく上述の正極シートが得られる。
【0052】
さらに、発振周波数が20kHより大きく60kH以下の範囲であり、定格出力が110Wより大きく250W以下の範囲であり、120分より多く300分の間の超音波処理を行うことによって繊維状炭素の分散液が得られる。
【0053】
本願発明者らは、このような特定条件を満たすように超音波処理することにより、分散液中の繊維状炭素は、完全にばらばらになることなく、一部バンドルを維持し得る。このように一部がバンドルの繊維状炭素を含有する分散液を用いることにより、上述のBET法比表面積および細孔容積を有し、自立した正極シートが得られることを実験から見出した。
【0054】
より好ましくは、発振周波数が30~50kHの範囲であり、定格出力が130~170Wの範囲であり、150~300分の間の超音波処理を行う。これにより、歩留まりよく本発明の正極シートが得られる。
【0055】
超音波処理は、室温で行ってもよく、冷却条件下(例えば、氷浴中)で行ってもよく、加熱条件下で行ってもよい。このような超音波処理は、超音波洗浄装置を用いて行うことができる。超音波洗浄装置を用いれば、超音波振動を分散液中の繊維状炭素に直接照射することがないので、繊維状炭素のすべてをばらばらにすることなく、一部バンドルとできる。
【0056】
ステップS120:ステップS110で得られた繊維状炭素の分散液をフィルタ上にろ過する。
【0057】
フィルタとしては、例えば、表面が親水化処理されたポリテトラフルオロメチレン(PTFE)メンブレン、表面が親水化処理されたポリフッ化ビニリデン(PVDF)メンブレン、グラスファイバーメンブレン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
ろ過する方法は特に制限されないが、好ましくは、吸引ろ過(減圧ろ過とも呼ぶ)または加圧ろ過である。これにより、自然ろ過の場合と比べて、繊維状炭素同士が絡み合い、自立したシートが得られやすい。
【0059】
ステップS130:ステップS120のフィルタ上のろ物を剥離する。これにより、上述した正極シートとなる。剥離後、ろ物を乾燥させてもよい。これにより、分散媒が除去される。乾燥は、剥離に先立って、ステップS120後に行ってもよい。乾燥は、例えば、真空中、50~150℃の温度範囲で1~24時間行ってもよい。
【0060】
(実施の形態2)
実施の形態2では、本発明の空気電池用正極シートを用いた空気電池を説明する。
図2は、本発明の実施形態に係る空気電池の模式的な断面図である。
【0061】
空気電池600は、負極構造体610(構造は後述する。)と正極構造体620(構造は後述する。)とがセパレータ660を介して積層された積層体と、上記積層体を拘束する拘束具630とを有する、一般に「コインセル型」と呼ばれる空気電池である。
【0062】
なお、拘束具630と金属メッシュ680との間には絶縁性のオーリングが配置され(図示なし)、拘束具630と正極構造体620との絶縁性が確保されている。
【0063】
空気電池は空気中の酸素が正極活物質になるという意味で命名されたことからもわかるように最低限空気中の酸素濃度である21%以上の酸素が供給されればよいが、拡散律速の影響を減らすためにはより高濃度の方が好ましく、純酸素を供給できれば最高の特性を発揮させることができる。
【0064】
負極構造体610は、集電体635と、集電体635上に配置された金属層640と、その両端に配置された柱状のスペーサ650とにより構成され、金属層640と、セパレータ660との間には、空間670が設けられ、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン等の金属イオンを伝導可能な電解液が充填されている。
【0065】
金属層640は、アルカリ金属、及び/又は、アルカリ土類金属を含有する。なかでも、リチウム金属からなる層が好ましい。電解液がリチウムイオンを伝導可能であり、負極構造体610がリチウム金属を備える場合、リチウム空気電池を提供できる。
【0066】
正極構造体620は、集電体である金属含有のメッシュ(金属メッシュ)680に機械的にも電気的にも接触した正極シート690を備える。この場合、金属メッシュ680は、正極基材となり、空気又は酸素が通る流路の機能も兼ね備える。正極シート690は、実施の形態1で説明した正極シートであるため、説明を省略する。また、
図2では、金属メッシュ680を備えるものとして説明するが、正極シート690は自立性を有するため、金属メッシュ680を有しなくてもよい。これにより、軽量化を可能にする。
【0067】
負極構造体610と正極構造体620との間には両者を隔てるセパレータ660が配置される。
【0068】
次に、空気電池600の製造方法について説明する。まず、負極構造体610が準備される。円盤状の集電体635の上に、集電体635と同心状で集電体635より径の小さな円盤状のリチウム等による金属層640が積層され、集電体635の上に柱状のスペーサ650が押し付けられ、負極構造体610が得られる。
【0069】
スペーサ650は、絶縁体である。素材としては、金属酸化物、金属窒化物、及び、金属酸窒化物等であってよい。例えば、Al2O3、Ta2O5、TiO2、ZnO、ZrO、SiO2、B2O3、P2O5、GeO2、Li2O、Na2O、K2O、MgO、CaO、SrO、BaO、Si3N4、AlN、及び、AlOxN1-x(0<x<1)等であよい。なかでも、Al2O3、及び、SiO2は、入手が容易であり、加工性に優れるという特徴がある。
【0070】
スペーサ650は、樹脂であってもよい。樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、及び、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)系樹脂等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、及び、ポリプロピレン等が挙げられる。ポリエステル系樹脂は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、及び、ポリトリブチレンテレフタレート(PTT)等が挙げられる。これらの樹脂は、入手が容易であり、加工性に優れる。
【0071】
次に、セパレータ660が準備され、これがスペーサ650上に押し付けられる。
セパレータ660は、アルカリ金属イオン、及び/又は、アルカリ土類金属イオンを通過させることが可能な多孔質の絶縁体である。セパレータ660は、金属層640、及び、電解液との反応性を有さない任意の無機材料(金属材料を含む)、及び、有機材料である。
【0072】
セパレータ660の素材は、ポリエチレン、ポリプロピレン、及び、ポリオレフィン等の樹脂、及び、ガラス等でよい。セパレータ660は、不織布であってもよい。
金属層640(リチウム金属)とスペーサ650とセパレータ660との間には、空間670が設けられている。
【0073】
その後、セパレータ660内に電解液を充填させる。このとき、併せて空間670も電解液で充填される。
【0074】
電解液としては、アルカリ金属塩、及び/又は、アルカリ土類金属塩を含有する、水系又は非水系の任意の電解液が使用できる。水系電解液がリチウム塩を含む場合、リチウム塩としては、例えば、LiOH、LiCl、LiNO3、及び、Li2SO4等が使用できる。なお、溶媒は水、又は、水溶性の溶媒を用いることができる。
【0075】
非水系電解液(非水電解液)がリチウム塩を含む場合、リチウム塩としては、例えば、LiNO3、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiSiF6、LiAsF6、LiN(SO2C2F5)2、Li(FSO2)2N、LiCF3SO3(LiTfO)、Li(CF3SO2)2N(LiTFSI)、LiC4F9SO3、LiClO4、LiAlO2、LiAlCl4、及び、LiB(C2O4)2等が使用できる。
【0076】
非水電解液において、非水溶媒は、グライム類(モノグライム、ジグライム、トリグライム、テトラグライム)、メチルブチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルブチルエーテル、ジブチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、2,2-ジメチルテトラヒドロフラン、2,5-ジメチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸ジメチル、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ポリエチレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、デカノリド、バレロラクトン、メバロノラクトン、カプロラクトン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ニトロメタン、ニトロベンゼン、トリエチルアミン、トリフェニルアミン、テトラエチレングリコールジアミン、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホン、トリエチルホスフィンオキシド、1,3-ジオキソラン、及び、スルホラン等が挙げられる。
【0077】
しかる後、正極シート690上に金属メッシュが配置された正極構造体620が準備される。
金属メッシュ680としては、例えば、銅(Cu)、タングステン(W)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、及び、パラジウム(Pd)からなる群より選択される少なくとも1種の金属を有するメッシュが使用できる。すなわち、この群から選ばれる金属単体、この群から選ばれる金属を含む合金、この群から選ばれる金属と炭素(C)や窒素(N)などとの化合物からなるメッシュを挙げることができる。メッシュは、例えば、厚さ0.2mm、目開き1mmとすることができる。
【0078】
その後、電解液で充填させた負極構造体610に正極構造体620がセパレータ660を介して貼り合わされ、拘束具630で拘束されて空気電池600が得られる。ここで、実装は乾燥空気下、例えば露点温度-50℃以下の乾燥空気下で行うことが好ましい。
以上の工程により、コインセル型の空気電池600が製造される。
【0079】
なお、空気電池600は、正極構造体620として、正極シート690と、金属メッシュ680とを有しているが、本発明の空気電池は、上記に制限されず、正極構造体620として、正極シート690のみを有していてもよい。
【0080】
製造された空気電池600は、正極シート690を使用した正極構造体620が、優れた空気又は酸素透過性を有しており、多量の酸素を取り込むことが可能であり、高いイオン輸送効率を有しており、広い反応場を有しているため、小型、軽量でも大きな容量を有する優れた空気電池である。
【0081】
次に、空気電池の他の実施形態について、積層型金属電池(空気電池)を、図面を参照しながら説明する。
【0082】
図3は、本発明の空気電池の他の実施形態である積層型金属電池である空気電池の模式的な断面図である。
【0083】
本発明の空気電池500は、正極構造体510と負極構造体100とがセパレータ540を介して積層した積層構造を備える。積層数は、正極構造体510と負極構造体100とが各々1からなる1対を単位として、1対以上複数対でよく、対数に特段の上限はない。
【0084】
ここで、負極構造体100は、一対の負極構造体と、それらにより挟まれる負極用集電体電極520から構成されている。負極構造体は、空気電池600の負極構造体610と同様の負極構造体である。
【0085】
一方、正極構造体510は、正極シート550と、ガス拡散層560とからなる一対の積層体と、上記積層体により挟まれる正極用集電体電極525から構成されている。なお、正極用集電体電極525側から、順に、ガス拡散層560、正極シート550が配置されている。正極シート550は、実施の形態1で説明した正極であるため、説明を省略する。
【0086】
この正極用集電体電極525は空気又は酸素の流路の機能も有しているため、本空気電池500はより単純な構造でより大きな容量が得られるようになっている。
【0087】
負極用集電体電極520、正極用集電体電極525としては、例えば、銅(Cu)、タングステン(W)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、及び、パラジウム(Pd)等の金属、並びに、これらの合金、及び、これらの化合物(例えば、炭素及び/又は窒素との化合物)が使用できる。なお、空気電池500は、収納容器(図示せず)に収容されてもよい。
【0088】
空気電池500の正極構造体510は、正極シート550と正極用集電体電極525の間に、ガス拡散層560を具備し、空気、酸素、その他のガスは、このガス拡散層を通って、電池外部と正極シート550との間を行き来する。またガス拡散層は、正極シート550と正極用集電体電極525と間での電子の移動路としても働く。ガス拡散層は、上記のガスの移動路として働くため、通気性を有するための連通孔を持っていることが必要であり、また電子電導性を持っていることが必要となる。ガス拡散層としては、例えば、東レのカーボンペーパーTGP-H、クレハのクレカE704等が使用できる。
【0089】
なお、本発明の正極シートを上記のような空気電池以外にもナトリウム空気電池、空気亜鉛電池、空気鉄電池、空気アルミニウム電池、空気マグネシウム電池等の他の金属電池にも使用できる。
【0090】
次に具体的な実施例を用いて本発明を詳述するが、本発明がこれら実施例に限定されないことに留意されたい。
【実施例】
【0091】
[原料]
後述する例1~例10のシートの製造では、原料となる繊維状炭素として、表1に示すカーボンナノチューブを用いた。単層CNT1は、株式会社名城ナノカーボン製の単層カーボンナノチューブ(MEIJO eDIPS(EC2.0))であり、多層CNT1は、太陽日酸株式会社製の多層カーボンナノチューブ(DL)であり、多層CNT2は、CNano Technology Ltd.製の多層カーボンナノチューブ(FloTube9000)であり、単層CNT1は、ゼオンテクノロジー株式会社製の単層カーボンナノチューブ(ZEONANO(登録商標)SG101)である。
【0092】
【0093】
[性状評価]
後述する例1~例10のシートの性状を次のようにして評価した。
(1)目付
シートをそれぞれ直径(φ)16mmに打ち抜き重量(mg)を測定し、打ち抜いたシートの面積当たりの重量を目付(mg/cm2)とした。
【0094】
(2)シート密度(見かけ密度)
シート密度(ρsheet)は、目付をシート厚さで除することで算出した。
(3)空孔率
空孔率(Porosity)は、いずれのカーボンナノチューブの原料の真密度を1.3g/cm3と仮定し、以下の式に従い算出した。
Porosity(%)={1-(ρsheet/1.3)}×100
【0095】
(4)ラマンR値
ナノフォトン株式会社のラマン分光測定器Touch-VIS-NIRを用い、対物レンズ10倍、励起波長532nm、照射レザーパワー1mWで得られたラマンスペクトルの、結晶構造炭素由来のピーク強度をG、乱層構造炭素由来のピーク強度をDとして、D/Gの値を用いた。
【0096】
(5)BET法比表面積
3Flex(Micromeritics Instrument Corp.製)を用いて窒素吸着法により得られた吸着等温線からBET法に従って求めた。
【0097】
(6)直径2~1000nmの細孔の占める細孔容積
3Flex(Micromeritics Instrument Corp.製)を用いて窒素吸着法により得られた吸着等温線からBJH法を用いて求めた。
【0098】
(7)直径0.1~10μmの細孔の占める細孔容積
AutoPoreIV(Micromeritics Instrument Corp.製)を用いた水銀圧入法により、細孔径10~200000nm(0.01~200μm)の範囲の細孔容積を測定し、細孔直径0.1~10μmの細孔容積の値を用いた。
【0099】
(8)電解液浸透時間
シート(面積2cm2、厚さ50~150μm)に電解液をマイクロピペットで10μLを滴下してから、電解液がシートに吸収されシート表面から消失するまでの時間を測定することで求めた。なお、電解液はLiTFS(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム)の1M-テトラエチレングリコールジメチルエーテル溶液を用いた。
【0100】
[電池特性評価]
後述する例のシートの電池特性として放電容量およびサイクル特性を評価した。
(1)放電容量(放電レート特性)
シートを直径(φ)16mmに打ち抜き、100℃、12時間以上真空乾燥させ、正極シートとした。負極構造体としてリチウム金属箔(直径(φ)16mm、厚さ0.2mm)、セパレータのガラス繊維ペーパ(Whatman(登録商標)、GF/A)を用い、リチウム金属箔/ガラス繊維ペーパ/正極シートの順に重ね、コインセルケース(CR2032型)に実装した。次いで、電解液(LiTFSI(リチウムビストリフルオロメタンスルホンイミド)の1M-テトラエチレングリコールジメチルエーテル溶液)を浸透させ、リチウム空気電池セルを製造した。
【0101】
電池充放電システム(北斗電工、HJ1001SD8)を用い、純酸素フロー環境下、室温(25℃)、定電流(0.4mA/cm2、1.0mA/cm2、2.0mA/cm2)条件下、2Vカットでリチウム空気電池セルの放電容量を測定した。
【0102】
(2)サイクル特性
電解液としてLITFSIに代えて、0.5MのLiTFSI、0.5MのLiNO3(硝酸リチウム)および0.2MのLiBr(臭化リチウム)を含むテトラエチレングリコールジメチルエーテル溶液を用いた以外は、同様にしてリチウム空気電池セルを製造した。
【0103】
電池充放電システム(北斗電工、HJ1001SD8)を用い、純酸素フロー環境下、室温、定電流(0.4mA/cm2)条件下、2-4.5Vカットで10時間、リチウム空気電池セルの放電・充電を繰り返し、最初に2Vカットオフ電圧に到達したサイクル回数から1引いた数を充放電サイクル数とした。
【0104】
[例1~例3]
例1~例3では、表1に示す単層CNT2のカーボンナノチューブを用い、表2に示す製造条件で本発明の正極シートを製造した。詳細に説明する。
【0105】
例1~例3のシートを次のようにして得た。単層CNT2(75mg)を、超純水(150g)を入れた容器に分散させ、超音波洗浄器(アズワン株式会社製、MCD-6)を用いて表2に示す超音波処理条件で超音波処理し、分散液を得た(
図1のステップS110)。得られた分散液をフィルタとして親水性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、メルク株式会社製、Omnipore(登録商標)JAWP、穴径1μm)上にろ過した(
図1のステップS120)。ろ過面積は、2.5cm
2であった。ろ過した分散液の量は16mLであり、ダイアフラム式真空ポンプ(KNF社製、N820.3FT.18)を用いて吸引ろ過した。得られたろ物をフィルタから剥離し(
図1のステップS130)、乾燥させた。乾燥の条件は、真空中60℃で12時間であった。
【0106】
例1~例3のシートが自立膜であるか否かを目視観察し、その細部を走査型電子顕微鏡(SEM、日本電子株式会社製、JSM-7800F)により観察した。例1~例3のシートについて上述の性状評価を行った。これらの結果を
図4、
図5および表3に示す。例1~例3のシートを正極に用いて上述の電池特性評価を行った。結果を表4および表5に示す。
【0107】
[例4]
例4では、表1に示す単層CNT2のカーボンナノチューブを用い、表2に示す製造条件で正極シートを製造した。例4は、超音波処理の時間を120分にした以外は例1~例3と同様の手順であるため、説明を省略する。
【0108】
なお、例4のシートを目視観察したところ、自立しなかったためこれ以上の試験を行っていない。
【0109】
[例5]
例5では、表1に示す単層CNT2のカーボンナノチューブを用い、表2に示す製造条件で正極シートを製造した。
【0110】
例5は、分散媒として特級イソプロパノールを用い、超音波ホモジナイザ(ブランソン製、450D)を用いて表2に示す超音波処理条件で超音波処理し、分散液を得た以外は、例1~例3と同様であった。例1~例3と同様に、例5のシートが自立膜であるか否か目視観察およびSEM観察し、性状評価を行った。結果を
図6および表3に示す。
【0111】
[例6]
例6では、表1に示す単層CNT1のカーボンナノチューブを用い、表2に示す製造条件で正極シートを製造した。例6は、原料CNTとして単層CNT1を用いた以外は例5と同様の手順であるため、説明を省略する。
【0112】
例1~例3と同様に、例6のシートが自立膜であるか否か目視観察およびSEM観察し、性状評価を行った。結果を
図7および表3に示す。例1~例3と同様に、例6のシートの電池特性評価を行った。結果を表4および表5に示す。
【0113】
[例7]
例7では、表1に示す多層CNT1のカーボンナノチューブを用い、表2に示す製造条件で正極シートを製造した。
【0114】
例7は、多層CNT1(113mg)に分散媒としてイソプロパノール(特級)226gを用い、BRONSONホモジナイザSFX550にて、表2に示す条件で超音波処理し、分散液を得た。得られた分散液をフィルタとして90mmφの親水性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、メルク株式会社製、Omnipore(登録商標)JAWP、穴径1μm)上にろ過した。ろ過面積は、43cm
2であった。ろ過した分散液の量は280mLであり、0.2MPaの圧縮窒素で加圧してろ過した。次に、フィルタ上に残ったカーボンナノチューブをフィルタから剥がし、真空中50℃で3hr乾燥を行い、更に真空中、110℃で16hr乾燥することでイソプロパノールを完全除去し、例7の正極シートを得た。例1~例3と同様に、例7のシートが自立膜であるか否か目視観察およびSEM観察し、性状評価を行った。結果を
図8および表3に示す。例1~例3と同様に、例7のシートの電池特性評価を行った。結果を表4および表5に示す。
【0115】
[例8]
例8では、表1に示す多層CNT2のカーボンナノチューブを用い、表2に示す製造条件で正極シートを製造した。例8は、原料CNTとして多層CN2を用いた以外は、例5と同様の手順であるため、説明を省略する。例1~例3と同様に、例7のシートが自立膜であるか否か目視観察およびSEM観察し、性状評価を行った。結果を表3に示す。
【0116】
[例9]
例9では、表1に示す単層CNT1および多層CNT2の混合カーボンナノチューブを用い、表2に示す製造条件で正極シートを製造した。例9は、原料CNTとして単層CNT1(30mg)および多層CNT2(45mg)の混合物を用いた以外は、例5と同様の手順であるため、説明を省略する。例1~例3と同様に、例9のシートが自立膜であるか否か目視観察およびSEM観察し、性状評価を行った。結果を
図9および表3に示す。
【0117】
[例10]
例10では、表1に示す単層CNT1および多層CNT2の混合カーボンナノチューブを用い、表2に示す製造条件で正極シートを製造した。例10は、原料CNTとして単層CNT1(7.5mg)および多層CNT2(67.5mg)の混合物を用いた以外は、例9と同様の手順であるため、説明を省略する。例1~例3と同様に、例10のシートが自立膜であるか否か目視観察およびSEM観察し、性状評価を行った。結果を表3に示す。
【0118】
簡単のため製造条件を表2に示し、結果をまとめて説明する。
【0119】
【0120】
例1~例10のシートの性状評価の結果を表3に示す。
【0121】
【0122】
例1~例10によれば、原料として多層CNT2単体(例8)および多層CNT2を60質量%より多く含む(例10)場合は、超音波処理条件に関わらず自立したシートが得られなかったが、それ以外の原料を用いた場合は超音波処理条件の制御によって自立したシートが得られることが分かった。また、原料として単層CNT2を用い、超音波処理時間が120分(例4)の場合も、自立したシートが得られなかった。
【0123】
このように例1~例4によれば、400~1300m2/gの範囲を満たすBET法比表面積、および、8.0~15.0cm3/gの範囲を満たす直径2~1000nmの細孔の細孔容積を有する繊維状炭素を原料に用い、20kHより大きく60kH以下の範囲であり、定格出力が110Wより大きく250W以下の範囲であり、120分より多く300分の間の超音波処理を行うことによって得た分散液を用いることにより、自立性のあるシートが得られることがわかった。
【0124】
例1~例3によれば、分散媒としてカーボンナノチューブの分散能が劣る水を用い、所定の超音波処理条件によって分散した分散液を用いることにより、大きな細孔容積および大きな比表面積の両方を満たす、シートが得られることがわかった。詳細には、例1~例3のシートは、直径0.1~10μmの細孔の細孔容積が2.0~10.0cm3/gの範囲を満たし、BET法比表面積が400~1300m2/gの範囲を満たすことが分かった。
【0125】
例1~例3のシートは、さらに、0.05~0.2g/cm3の範囲の低いシート密度を有し、可撓性を有した。さらに、例1~例3のシートは、直径2~1000nmの細孔の細孔容積が0.5~2.0cm3/gの範囲を満たした。さらに、例1~例3のシートは、80~95%の範囲の高い空孔率を有した。
【0126】
図4は、例1のシートのSEM像を示す図である。
図5は、例3のシートのSEM像を示す図である。
図6は、例5のシートのSEM像を示す図である。
図7は、例6のシートのSEM像を示す図である。
図8は、例7のシートのSEM像を示す図である。
図9は、例9のシートのSEM像を示す図である。
【0127】
図4~
図9によれば、いずれのシートもカーボンナノチューブからなる不織布状のシートの様態であった。特に、
図4および
図5によれば、例1および例3のシートは、0.1~10μmの範囲の幅の太いカーボンナノチューブからなり、カーボンナノチューブの一部がバンドルであることが分かった。図示しないが、例2のシートも同様の様態を示した。例1~例3のシートは、バンドル間に大きな空隙を有しており、酸素拡散が容易な構造を有した。一方、
図6~
図9によれば、例5~例7および例9のシートは、一部バンドルのカーボンナノチューブを示すが、その幅は0.1μmよりも狭く、空隙も小さかった。
【0128】
注目すべきは、
図6の例5のシートは、例1~例3と同じ原料である単層CNT2を用いているが、バンドルが細く解砕され、稠密な構造を有した。このようなシートの様態の違いは、分散液を得る際の超音波処理の条件に大きく依存していることが分かった。
【0129】
再度表3を参照し、電解液浸透時間に注目すると、例1~例3のシートは、数秒~数十秒で電解液を完全に吸収し、高い電解液浸透性を有していることが分かった。これは、例1~例3のシートが、0.3~0.6の範囲のD/Gを有し、結晶性が低いことに起因する。
【0130】
以上から、特定のBET法比表面積および細孔容積を有する繊維状炭素を原料に用い、特定の超音波処理条件で分散させた分散液をろ過することによって、直径0.1~10μmの細孔の細孔容積が2.0~10.0cm3/gの範囲を満たし、BET法比表面積が400~1300m2/gの範囲を満たす、繊維状炭素からなるシートが得られることが示された。
【0131】
次に、例1~例3、例6、例7および例9のシートを正極に用いた際の電池特性評価として放電容量および充放電サイクル数の結果を表4および表5にそれぞれ示す。
【0132】
【0133】
表4によれば、例1~例3、例6および例9のシートを用いた電池は、0.4mAcm-2の低レートでは、4000mAhg-1を超える高い放電容量を示した。例7のシートを用いた電池の放電容量は、低レートでも1700mAhg-1程度であった。これは、例7のシートのBET法比表面積が小さいため、電気化学的に活性な表面が不足し、低レートであっても追いつけないためと考える。
【0134】
例1~例3のシートの放電容量は、1.0mAcm-2までレートを増大しても大きな値を維持した。さらにレートを2.0mAcm-2まで増大しても、例1~例3のシートは、比較的高い放電容量を維持した。一方、例6のシートは、1.0mAcm-2以上のレートではほとんど放電できなくなった。また、例7および例9のシートの放電容量は、1.0mAcm-2以上のレートで劇的に減少した。そのため、例6~例7のシートを用いた電池については、さらにレートを2.0mAcm-2まで増大した際の放電容量を測定しなかった。
【0135】
例1~例3のシートは、表3に示したように、シート密度が低く、大きな細孔容積およびBET法比表面積を有するため、シート内部の酸素拡散が容易であり、電気化学的に活性な表面を多く有する。その結果、例1~例3のシートは、レート特性(放電特性)に優れた空気電池用の正極シートとして機能することが分かった。
【0136】
【0137】
表5によれば、表4においてレート特性に優れた例1~例3のシートを正極に用いた空気電池の充放電サイクル数は、例6、例7および例9のそれよりも大きく、放電圧および充電圧ともに安定する傾向を示した。
【0138】
例1~例3のシートは、表3に示したように、シート密度が低く、大きな細孔容積、BET法比表面積に加えて、高い電解液浸透性を有するため、充放電サイクル中にシート内部に電解液を保持しやすい。その結果、例1~例3のシートは、レート特性、さらにはサイクル特性に優れた空気電池用の正極シートとして機能することが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明の空気電池用正極シートは、特定の細孔容積およびBET法比表面積を有する繊維状炭素からなり、これを空気電池の正極に使用することにより、高い空気又は酸素拡散性、高いイオン輸送効率及び広い反応場によって生まれる、高電池容量、高負荷特性を持った空気電池を提供することができる。また、繊維状炭素からなる正極シートは、金属メッシュ等の集電体用いずに、単独で正極に供用可能な自立性を持っていることで、小型・軽量で大容量化に適した空気電池を提供することができる。このため、本発明は、今後需要が大幅に拡大すると見込まれる空気電池に好んで用いられることが期待される。
【符号の説明】
【0140】
100:負極構造体
500:空気電池
510:正極構造体
520:負極用集電体電極
525:正極用集電体電極
540:セパレータ
550:正極シート
560:ガス拡散層
600:空気電池
610:負極構造体
620:正極構造体
630:拘束具
635:集電体
640:金属層
650:スペーサ
660:セパレータ
670:空間
680:金属メッシュ
690:正極シート