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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】皮膚貼付材
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/02 20240101AFI20250311BHJP
【FI】
A61F13/02 A
A61F13/02 380
A61F13/02 310F
A61F13/02 355
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021031700
(22)【出願日】2021-03-01
(65)【公開番号】P2021168904
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2024-02-29
(31)【優先権主張番号】P 2020072868
(32)【優先日】2020-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】598015084
【氏名又は名称】学校法人福岡大学
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100186185
【弁理士】
【氏名又は名称】高階 勝也
(72)【発明者】
【氏名】吉田 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】武智 健斗
(72)【発明者】
【氏名】水原 隆
(72)【発明者】
【氏名】中川 剛
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/173126(WO,A1)
【文献】特表2015-505689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/02
A61F 13/0246
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視において、非貼着部と、該非貼着部の少なくとも幅方向両側に位置する固定部とを有する皮膚貼付材であって、
断面視において、第1の基材と、第1の粘着剤層とを表面側からこの順に備え、
該皮膚貼付材を被着体に貼着した際、該固定部が被着体に貼着し、かつ、該非貼着部が被着体に貼着しないように構成され、
該皮膚貼付材を貼着する際に、非粘着部の後方において、起立部が形成されるように構成された、
皮膚貼付材。
【請求項2】
前記非貼着部が、非粘着部であり、
該非粘着部が、被着体に対して粘着性を有さないように構成されている、
請求項1に記載の皮膚貼付材。
【請求項3】
平面視において、非貼着部と、該非貼着部の少なくとも幅方向両側に位置する固定部とを有する皮膚貼付材であって、
断面視において、第1の基材と、第1の粘着剤層とを表面側からこの順に備え、
該皮膚貼付材を被着体に貼着した際、該固定部が被着体に貼着し、かつ、該非貼着部が被着体に貼着しないように構成され、
該非貼着部が、非粘着部であり、
該非粘着部が、被着体に対して粘着性を有さないように構成され、
該皮膚貼付材がカバー材をさらに備え、
該非粘着部において、該第1の基材と、該第1の粘着剤層と、該カバー材とがこの順に配置されている、
皮膚貼付材。
【請求項4】
第2の基材および第2の粘着剤層をさらに備え、
断面視において、前記第1の基材と、前記第1の粘着剤層と、該第2の基材と、該第2の粘着剤層がこの順に配置されている、
請求項2または3のいずれかに記載の皮膚貼付材。
【請求項5】
前記第2の基材が、不織布である、請求項に記載の皮膚貼付材。
【請求項6】
平面視において、非貼着部と、該非貼着部の少なくとも幅方向両側に位置する固定部とを有する皮膚貼付材であって、
断面視において、第1の基材と、第1の粘着剤層とを表面側からこの順に備え、
該皮膚貼付材を被着体に貼着した際、該固定部が被着体に貼着し、かつ、該非貼着部が被着体に貼着しないように構成され、
該非貼着部が、非粘着部であり、
該非粘着部が、被着体に対して粘着性を有さないように構成され、
該皮膚貼付材が、第2の基材および第2の粘着剤層をさらに備え、
断面視において、該第1の基材と、該第1の粘着剤層と、該第2の基材と、該第2の粘着剤層がこの順に配置され、
該第2の基材が、不織布である、
皮膚貼付材。
【請求項7】
カバー材をさらに備え、
前記非粘着部において、前記第1の基材と、前記第1の粘着剤層と、該カバー材とがこの順に配置されている、
請求項1、請求項2、請求項2を引用する請求項4から5、または請求項6に記載の皮膚貼付材。
【請求項8】
前記固定部に、窓部が形成されている、請求項1からのいずれかに記載の皮膚貼付材。
【請求項9】
前記非粘着部が、透明である、請求項2からのいずれかに記載の皮膚貼付材。
【請求項10】
前記皮膚貼付材の第1の基材とは反対側面を保護する剥離ライナーをさらに備える、請求項1からのいずれかに記載の皮膚貼付材。
【請求項11】
前記剥離ライナーが、複数の分割片から構成されている、請求項10に記載の皮膚貼付材。
【請求項12】
前記第2の基材の厚みが、100μm~500μmである、請求項4、請求項5、請求項6、請求項4から6のいずれかを引用する請求項7、請求項4から7のいずれかを引用する請求項8、請求項4から8のいずれかを引用する請求項9、請求項4から9のいずれかを引用する請求項10、または請求項4から10のいずれかを引用する請求項11に記載の皮膚貼付材。
【請求項13】
平面視において、非貼着部と、該非貼着部の少なくとも幅方向両側に位置する固定部とを有する皮膚貼付材であって、
断面視において、第1の基材と、第1の粘着剤層とを表面側からこの順に備え、
該皮膚貼付材を被着体に貼着した際、該固定部が被着体に貼着し、かつ、該非貼着部が被着体に貼着しないように構成され、
該非貼着部が粘着性を有し、かつ、
該皮膚貼付材を貼着する際に、該非貼着部の後方において、起立部が形成されるように構成された、
皮膚貼付材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚貼付材に関する。より詳細には、本発明は、操作性に優れ、かつ、カテーテル等の医療器具をその穿刺部において良好に固定し得る皮膚貼付材に関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテル等の医療器具の固定用として、皮膚貼付材が広く用いられている。例えば、カテーテルの生体への穿刺部に対して、皮膚貼付材が当該穿刺部を含む広い領域を覆うように貼り付けられて、カテーテルを生体表面に対して固定するとともに、外部からの細菌等の侵入を防止する(例えば、特許文献1)。この際、カテーテルの生体表面への固定が不十分であると、カテーテルの留置針が動くことによる血管外への薬液漏れ、留置針の抜去リスク、カテーテルの動きによって皮膚貼付材に浮きや剥がれが生じ、その部分が細菌感染ルートになるという問題がある。
【0003】
上記のような問題を解決するために、貼り付けた皮膚貼付材の上側(生体表面と反対側)から医療テープや包帯テープを用いて固定を補強することが行われている。しかし、このような医療テープや包帯テープを用いる方法は、操作が煩雑であり、医療従事者から操作性の改善が強く求められている。また、カテーテル等の医療器具を生体表面に固定する際には、医療器具に押しつけられて生体表面に生じる圧痕、不快感等も問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-068721号公報
【文献】特開2014-045874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、操作性に優れ、かつ、医療器具による生体への圧迫を防止し得る皮膚貼付材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の皮膚貼付材は、平面視において、非貼着部と、固定部とを有する皮膚貼付材であって、断面視において、第1の基材と、第1の粘着剤層とを表面側からこの順に備え、該皮膚貼付材を被着体に貼着した際、該固定部が被着体に貼着し、かつ、該非貼着部が被着体に貼着しないように構成されている。このような構成とすることで、被着体への貼着の際に、非貼着部で生体への圧迫可能性のある医療器具部位の位置調整ができ、位置決めした上で、固定部で固定する一連の操作(以下、本明細書にてこの一連の行程を操作性という)を確実、かつ、簡単に行うことができ、医療器具による生体への圧迫を防止しうる。
1つの実施形態においては、上記非貼着部が、非粘着部であり、該非粘着部が、被着体に対して粘着性を有さないように構成されている。
1つの実施形態においては、上記皮膚貼付材は、第2の基材および第2の粘着剤層をさらに備え、断面視において、上記第1の基材と、上記第1の粘着剤層と、該第2の基材と、該第2の粘着剤層がこの順に配置されている。
1つの実施形態においては、上記固定部に、窓部が形成されている。
1つの実施形態においては、上記非粘着部が、透明である。
1つの実施形態においては、上記皮膚貼付材は、カバー材をさらに備え、上記非粘着部において、上記第1の基材と、上記第1の粘着剤層と、該カバー材とがこの順に配置されている。
1つの実施形態においては、上記皮膚貼付材は、上記皮膚貼付材の第1の基材とは反対側面を保護する剥離ライナーをさらに備える。
1つの実施形態においては、上記剥離ライナーが、複数の分割片から構成されている。
1つの実施形態においては、上記第2の基材が、不織布である。
1つの実施形態においては、上記第2の基材の厚みが、100μm~500μmである。
1つの実施形態においては、上記第1の基材を構成する材料が、ポリウレタンである。
1つの実施形態においては、上記皮膚貼付材は、上記皮膚貼付材を貼着する際に、非粘着部の後方において、起立部が形成されるように構成される。
1つの実施形態においては、上記非貼着部が粘着性を有し、かつ、上記皮膚貼付材を貼着する際に、非貼着部部の後方において、起立部が形成されるように構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、非貼着部を設けることにより、操作性に優れ、かつ、医療器具による生体への圧迫を防止し得る皮膚貼付材を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】(a)は、本発明の1つの実施形態による皮膚貼付材の概略平面図であり、(b)は、(a)の皮膚貼付材のIb-Ib線による概略断面図である。
図2】(a)~(e)は、本発明の1つの実施形態による皮膚貼付材の非粘着部の形態を説明する概略断面図である。
図3】本発明の1つの実施形態による皮膚貼付材の使用状態を説明する図である。
図4】(a)は、本発明の別の実施形態による皮膚貼付材の概略平面図であり、(b)は、(a)の皮膚貼付材のIVb-IVb線による概略断面図である。
図5】(a)および(b)は、本発明の1つの実施形態による皮膚貼付材に用いられる別のカバー材を説明する図である。
図6】本発明の1つの実施形態による皮膚貼付材の概略裏面図である。
図7】本発明の1つの実施形態による皮膚貼付材の概略断面図である。
図8】本発明の別の実施形態による皮膚貼付材の概略裏面図である。
図9】本発明の1つの実施形態による皮膚貼付材の概略断面図である。
図10】(a)は、本発明の1つの実施形態による皮膚貼付材の概略平面図であり、(b)は、(a)の皮膚貼付材のXb-Xb線による概略断面図である。
図11】本発明の1つの実施形態による皮膚貼付材の具体的な貼り付け手順を説明するための概略図である。
図12】本発明の別の実施形態による皮膚貼付材の具体的な貼り付け手順を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれらの具体的な実施形態には限定されない。
【0010】
A.皮膚貼付材の全体構成
本発明の皮膚貼付材は、平面視において、非貼着部と、該非貼着部の少なくとも幅方向両側に位置する固定部とを有する。当該皮膚貼付材は、断面視において、第1の基材と、第1の粘着剤層とをこの順に備える。また、上記皮膚貼付材は、該皮膚貼付材を被着体に貼着した際、該固定部が被着体(代表的には皮膚)に貼着し、かつ、該非貼着部が被着体に貼着しないように構成されている。使用時、皮膚貼付材は、上記第1の粘着剤層が被着体側となるようにして、貼着される。「被着体に貼着しないように構成されている」非貼着部とは、第1の粘着剤層の粘着性を制限して皮膚貼付材の一部が被着体に対して粘着性を有さないように構成されている部分、または第1の粘着剤層が粘着性を有しつつも被着体から離間し得るように構成されている部分を意味する(詳細は後述)。本発明においては、非貼着部を設けることにより、操作性に優れ、かつ、医療器具による生体への圧迫を防止し得る皮膚貼付材を提供することができる。
【0011】
上記のとおり、1つの実施形態においては、上記非貼着部は非粘着部である(第1の実施形態)。非粘着部とは、被着体(皮膚)側に粘着剤層等を有さず、被着体に対して粘着性を有さない部分である。別の実施形態においては、非貼着部は、粘着性を有する(第2の実施形態)。この実施形態においては、皮膚貼付材は、皮膚貼付材を貼着する際に、非貼着部部の後方において、起立部が形成されるように構成される。非貼着部は、起立部が起立することにともなって、被着体への貼着がされないように構成される。いずれの構成によっても、操作性に優れ、かつ、医療器具による生体への圧迫を防止し得る皮膚貼付材を提供することができる。なお、本明細書において、「粘着性を有さない」および「粘着性を示さない」とは、SUS板に対する25℃における粘着力が、10mN/25mm以下であることを意味する。また、「粘着性を有する」とは、SUS板に対する25℃における粘着力が、10mN/25mmより大きいことを意味する。ここで、粘着力は、JIS Z 0237:2000に準じた方法(貼り合わせ条件:2kgローラー1往復、剥離速度:300mm/min、剥離角度180°)により測定される。
【0012】
A-1.第1の実施形態
上記のとおり、第1の実施形態において、非貼着部は非粘着部である。図1(a)は、本発明の好ましい実施形態による皮膚貼付材の概略平面図であり、図1(b)は、図1(a)の皮膚貼付材のIb-Ib線による概略断面図である。なお、見やすくするために、図示例における各層および各部分の縦、横および厚みの比率は実際とは異なって記載されていることに留意されたい。図1(a)に示すように、皮膚貼付材100は、平面視において、非貼着部(非粘着部)110と、固定部120とを有する。非貼着部(非粘着部)110は、使用時に、固定される医療器具(カテーテル)の周辺に空間が形成されるように構成される。固定部120は、非粘着部110以外の部分であり、被着体(皮膚)に対して粘着性を有し、医療器具の固定に寄与する。上記のとおり、固定部120は、非貼着部(非粘着部)110の少なくとも幅方向両側に位置する。好ましくは、固定部120は、非貼着部(非粘着部)110の周囲に位置する。固定部120が、非貼着部(非粘着部)110の周囲に位置していれば、より固定性に優れる皮膚貼付材を得ることができ、例えば、貼り付けた皮膚貼付材の上側(被着体と反対側)から医療テープまたは包帯テープを用いて固定を補強することなく、十分な固定性を発揮し得る皮膚貼付材を得ることができる。別の部材を要さないことは、操作性の観点からも有利である。本明細書において、便宜上、医療器具を固定する際に医療器具(例えば、カテーテル)と平行になる方向を、皮膚貼付材100の長さ方向Lとし、長さ方向Lに直交する方向を幅方向Wとする。また、医療器具(例えば、カテーテル)の先端に向いた方向を前方(図1(a)の紙面右側方向)、前方とは逆の方向を後方(図1(a)の紙面左側方向)とする。
【0013】
図1(b)に示すように、皮膚貼付材100は、断面視において、第1の基材11と、第1の粘着剤層12とを表面側(被着体とは反対側)からこの順に備える。代表的には、第1の粘着剤層12は透明である。本実施形態において、第1の基材11は、フィルム基材であり得る。代表的には、フィルム基材は透明である。1つの実施形態においては、非粘着部110においては、第1の粘着剤層12を覆うようにしてカバー材13が配置される。カバー材を配置することにより、第1の粘着剤層の被着体への貼着が阻害されて、非粘着部の非粘着性を実現することができる。
【0014】
1つの実施形態においては、図1(b)に示すように、皮膚貼付材100は第2の基材14を備える。本実施形態において、第2の基材14は、支持基材であり得る。上記フィルム基材と支持基材とは、例えば、材料、厚み等で区別され得る。1つの実施形態においては、支持基材は不織布から構成される。支持基材を備えていれば、適度に剛性を有し取り扱い性に優れる皮膚貼付材を得ることができる。皮膚貼付材100が第2の基材(支持基材)14を備える場合、当該第2の基材(支持基材)14は第1の粘着剤層12に接するように配置され得、また、第2の基材(支持基材)14の第1の粘着剤層12とは反対側には、第2の粘着剤層15が配置され得る。すなわち、本実施形態において、皮膚貼付材100は、第1の基材(フィルム基材)11と、第1の粘着剤層12と、第2の基材(支持基材)14と、第2の粘着剤層15とをこの順に備える。当該構成であれば、上記のとおり、適度に剛性を有し取り扱い性に優れる皮膚貼付材を得ることができる。使用時、皮膚貼付材は、第2の粘着剤層15が被着体側となるようにして、貼着される。また、後述のように、皮膚貼付材100に窓部121が形成されている場合、第2の基材(支持基材)14は窓部121に対応する位置に窓部121と同平面視形状の開口部を有する。また、後述のように非粘着部110が透明である場合、第2の基材(支持基材)14は、非粘着部110に対応する位置に非粘着部110と同平面視形状の開口部を有する。
【0015】
1つの実施形態においては(例えば、皮膚貼付材100が第2の基材(支持基材)14を有する場合においては)、固定部120には窓部121が形成されている。窓部121は、非貼着部(非粘着部)110の前方に配置される。窓部121は透明である。1つの実施形態においては、窓部121を有する皮膚貼付材100においては、窓部121を通して、医療器具の少なくとも一部(例えば、カテーテル穿刺部)を視認可能なように構成され得る。窓部を有する皮膚貼付材100を用いれば、カテーテル等の医療器具の固定位置を観察しながら、貼付することができる。本明細書において、「透明」とは、いわゆる半透明を含む概念であり、透明な部分(例えば、窓部)とは、該部分を介して医療器具が視認可能な程度に透明な部分(例えば、光透過率50%以上および/または光反射率50%以下)を意味する。
【0016】
図2は、本発明の1つの実施形態による皮膚貼付材の非粘着部の形態を説明する概略断面図である。非粘着部110は、透明であってもよく、不透明であってもよい。非粘着部110が透明であれば、医療器具を視認しながら当該医療器具を固定することが可能となり操作性に優れる。また、医療器具固定後の異常(例えば、液漏れ、脱離等)の早期発見が可能となる。透明な非粘着部110としては、例えば、孔として形成された非粘着部110a、すなわち、第1の基材(フィルム基材)11、第1の粘着剤層12、ならびに、必要に応じて配置される第2の基材(支持基材)14および第2の粘着剤層15を貫通して形成された非粘着部110a(図2(a));透明な第1の基材(フィルム基材)11のみを有する非粘着部110b(図2(b));透明な第1の基材(フィルム基材)11と透明な第1の粘着剤層12と透明なカバー材13とをこの順に有する非粘着部110c(図2(c))等が挙げられる。不透明な非粘着部110としては、例えば、第1の基材(フィルム基材)11と第1の粘着剤層12と第2の基材(支持基材)14とを有する非粘着部110d(図2(d))、第1の基材(フィルム基材)11と第1の粘着剤層12と不透明なカバー材13’とを有する非粘着部110e(図2(e))等が挙げられる。非粘着部110は、被着体(皮膚)に対して粘着性を示さない限り、任意の適切な形態を取り得、上記実施形態に限定されない。
【0017】
図3は、本発明の1つの実施形態による皮膚貼付材の使用状態を説明する図である。皮膚貼付材100は、カテーテル等の医療器具の穿刺部を固定する際に用いられ得る。図3においては、皮膚貼付材100により、カテーテル200を生体300上に固定する様子が示されている。カテーテル200を生体300上に固定する際には、皮膚貼付材100の非貼着部(非粘着部)110の位置に、カテーテル200の凹凸部分(例えば、カテーテルハブ210)を配置する。非粘着部110が孔として形成されている場合、カテーテル200の凹凸部分210を非粘着部110に通した状態とする。このようにすれば、非粘着部(孔部)によりカテーテルを良好に固定することができる。また、非粘着部110が、孔として形成されていない場合、非粘着部110を構成する第1の基材等によりカテーテル200の凹凸部分210を覆うようにする。このようにすれば、所定の固定性を維持しつつ、外部からの細菌等の侵入を防止することができる。
【0018】
本発明の皮膚貼付材においては、上記のように非粘着部110を有し、医療器具の皮膚への圧迫を低減することができる。また、非貼着部(非粘着部)110下においては、医療器具の周辺に所定の空間が形成されて、当該医療器具は適度に動くことが可能となる。その結果、医療器具に力が加わった際でも、医療器具あるいはこれを固定する貼付材に、皮膚が引っ張られて生じる負荷が、低減される。このような効果を発現する本発明の皮膚貼付材は、カテーテルハブのような凹凸が大きく皮膚への圧迫が強い部分を固定する際に、特に有用である。上記のとおり、本発明の皮膚貼付材は、医療器具の皮膚への圧迫が強い部分(例えば、カテーテルハブ)と非粘着部とを対応させて、皮膚に貼着され得る。
【0019】
また、本発明の皮膚貼付材においては、貼着の際、医療器具の一部(例えば、カテーテルハブ)を非粘着部により仮固定しつつ、段階的な貼着が可能となるため、操作性に優れる。
【0020】
1つの実施形態においては、カテーテル200を固定する際、非粘着部110の後方において、起立部122が形成され得る。起立部122は、カテーテル200の非粘着部110より後方(穿刺部と反対側)にある部分に、非粘着部110近傍の固定部120を1周巻き付けた後、巻き付けた箇所の下方で幅方向左右にある固定部120同士を貼り合わせて、形成される。上記のようにして形成した起立部122により、生体300に圧痕が生じることを防止して、カテーテル200を良好に固定することができる。上記皮膚貼付材は、複雑な操作を必要とせずに、圧痕を防止しつつ、カテーテルを良好に固定することができる。起立部の高さは、例えば5mm~20mmである。
【0021】
皮膚貼付材の平面視形状については、図示例に限定されず、目的に応じて任意の適切な形状(例えば、円形、正方形、長方形、台形;これらの形状をベースにして凹凸部、曲線部を有する形状)が採用され得る。
【0022】
皮膚貼付材の長さは、好ましくは30mm~150mmであり、より好ましくは50mm~100mmである。
【0023】
皮膚貼付材の最も幅が広い部分の幅は、好ましくは30mm~140mmであり、より好ましくは40mm~90mmである。
【0024】
皮膚貼付材の前方端から長さ方向に10mm中央側の部分の幅(図1の幅W1;以下、幅W1ともいう)は、好ましくは5mm~140mmであり、より好ましくは30mm~100mmである。
【0025】
皮膚貼付材の後方端から長さ方向に10mm中央側の部分の幅(図1の幅W2;以下幅W2ともいう)は、好ましくは45mm~140mmであり、より好ましくは60mm~120mmである。
【0026】
1つの実施形態においては、幅W2は幅W1よりも広い。1つの実施形態においては、幅W2と幅W1との差は、上記起立部の高さの1.5倍~2.5倍(好ましくは1.8倍~2.2倍、より好ましくは2倍)に相当する。このようにすれば、適切に起立部を設けて皮膚貼付材を貼着した際に、貼着後の皮膚貼付材の平面視形状が楕円に近い形となり、貼着後の皮膚貼付材の平面視形状が楕円に近い形か否かにより、起立部が適切であるかの否かの判断が容易にできることとなる。幅W2と幅W1との差は、好ましくは4mm~40mmである。1つの実施形態においては、W2のW1に対する比(W2/W1)は、1より大きく2以下であり、好ましくは1.2~1.8である。
【0027】
1つの実施形態においては、皮膚貼付材の後方側端部において、切り欠き123が形成される。切り欠き123は皮膚貼付材の後方側端部において幅方向中央に設けられることが好ましい。切り欠き123を設けていれば、当該切り欠き123にカテーテル等の医療器具を通しつつ、皮膚貼付材を貼着することが可能となる。このような皮膚貼付材においては、医療器具に対する位置決めが容易であり、かつ、固定性に優れる。切り欠き123のサイズは任意の適切サイズとすることができるが、その長さは、例えば、3mm~10mmである。
【0028】
非粘着部の平面視形状は、任意の適切な形状であり得る。非粘着部の形状としては、例えば、矩形状、三角形状、多角形状、丸状、楕円状等が挙げられる。また、これらの形状をベースにして、凹部および/または凸部を有する形状であってもよい。また、矩形状、三角形状または多角形状をベースとして、コーナ部が曲線で構成された形状であってもよい。
【0029】
非貼着部(非粘着部)110の長さLnは、好ましくは5mm~50mmであり、より好ましくは20mm~40mmである。また、非貼着部(非粘着部)110の幅Wnは、好ましくは5mm~50mmであり、より好ましくは5mm~45mmであり、さらに好ましくは10mm~45mmである。孔部のサイズが上記範囲であれば、カテーテル等の医療器具を良好に固定し得る皮膚貼付材を得ることができる。なお、非貼着部(非粘着部)の形状は、上記のとおり、矩形状に限らず任意の適切な形状とし得るが、非貼着部(非粘着部)の長さとは最長部の長さであり、非貼着部(非粘着部)の幅とは最広幅部の幅を意味する。1つの実施形態においては、WnのW2に対する比(Wn/W2)は、0.2~0.8であり、好ましくは0.3~0.7である。
【0030】
非貼着部(非粘着部)110の後方側端部と、皮膚貼付材100の後方側端部との距離L1は、好ましくは3mm~25mmであり、より好ましくは3mm~20mmであり、特に好ましくは5mm~20mmである。このような範囲であれば、カテーテル等の医療器具を良好に固定し得る皮膚貼付材を得ることができる。また、カテーテル等の医療器具を固定する際に、起立部を容易に形成し得る皮膚貼付材を得ることができる。1つの実施形態においては、L1のLnに対する比(L1/Ln)は、0.25~2であり、好ましくは0.5~1.5である。1つの実施形態においては、L1の上記切り欠きの長さに対する比(L1/切り欠きの長さ)は、1.5~4であり、好ましくは2~3.2である。
【0031】
上記窓部121の形状およびサイズは、カテーテル等の医療器具の固定位置が観察し得る限りにおいて任意の適切な形状およびサイズが採用され得る。窓部の形状としては、例えば、矩形状、三角形状、多角形状、丸状、楕円状等が挙げられる。また、これらの形状をベースにして、凹部および/または凸部を有する形状であってもよい。また、矩形状、三角形状または多角形状をベースとして、コーナ部が曲線で構成された形状であってもよい。
【0032】
窓部121の長さLwは、好ましくは10mm~100mmであり、より好ましくは15mm~70mmであり、さらに好ましくは30mm~50mmである。また、窓部121の幅Wwは、好ましくは10mm~100mmであり、より好ましくは15mm~80mmであり、さらに好ましくは20mm~50mmである。窓部のサイズが上記範囲であれば、操作時、医療器具の穿刺部を目視することが容易であり、作業性に優れる皮膚貼付材を得ることができる。なお、窓部の形状は、上記のとおり、矩形状に限らず任意の適切な形状とし得るが、窓部の長さとは最長部の長さであり、窓部の幅とは最広幅部の幅を意味する。1つの実施形態においては、Lwの皮膚貼付材の長さに対する比(Lw/皮膚貼付材の長さ)は、0.1~0.6であり、好ましくは0.2~0.4である。1つの実施形態においては、WwのW1に対する比(Ww/W1)は、0.5~0.85であり、好ましくは0.5~0.8であり、好ましくは0.6~0.75である。
【0033】
好ましくは、非貼着部(非粘着部)および窓部はいずれも、平面視において閉じた形状を有する。すなわち、上記のとおり、固定部120は、非貼着部(非粘着部)110の周囲に位置し得る。また、固定部120は窓部121の周囲に位置し得る。
【0034】
図4(a)は、本発明の別の実施形態による皮膚貼付材の概略平面図であり、図4(b)は、図4(a)の皮膚貼付材のIVb-IVb線による概略断面図である。この皮膚貼付材100’においては、非粘着部110’が透明である。皮膚貼付材100’においては、上記のような粘着性を有する窓部を有さず、非粘着部110’を通して固定される医療器具を視認することができる。図4(b)に示すように、皮膚貼付材100’は、非粘着部110’以外の箇所の断面視において、第1の基材11’と、第1の粘着剤層12とをこの順に備える。代表的には、第1の粘着剤層12は透明である。本実施形態において、第1の基材11’は、フィルム基材または支持基材であり得る。皮膚貼付材100’によりカテーテル200を固定する際、非粘着部110’は、別のカバー材により覆われていてもよい。別のカバー材としては、例えば、図5(a)に示すような、所定の剛性を有し非粘着部110’上に空間を形成する半カプセル型のカバー材130a、図5(b)に示すような透明フィルム130b等が挙げられる。透明フィルム130bは、非粘着部110’において粘着性を示さないように構成される。別のカバー材は、皮膚貼付材とセットで提供され得る。
【0035】
1つの実施形態においては、図4(b)に示すように、皮膚貼付材100’は第2の基材14を備える。本実施形態において、第2の基材14は、支持基材であり得る。また、皮膚貼付材100’が第2の基材(支持基材)14を備える場合、第1の基材11’はフィルム基材であることが好ましい。皮膚貼付材100’が第2の基材(支持基材)14を備える場合、当該第2の基材(支持基材)14は第1の粘着剤層12に接するように配置され得、また、第2の基材(支持基材)14の第1の粘着剤層12とは反対側には、第2の粘着剤層15が配置され得る。すなわち、本実施形態において、皮膚貼付材100は、第1の基材(フィルム基材)11’と、第1の粘着剤層12と、第2の基材(支持基材)14と、第2の粘着剤層15とをこの順に備える。
【0036】
1つの実施形態においては、上記皮膚貼付材は、第1の基材とは反対側面(貼着面)を保護する剥離ライナーをさらに備える。剥離ライナーを備えていれば、貼着面が保護され得る。
【0037】
剥離ライナーは、1枚構成であってもよく、複数の分割片から構成されていてもよい。好ましくは、上記剥離ライナーは、複数の分割片から構成される。剥離ライナーが複数の分割片から構成されていれば、段階的に粘着剤層を露出させることができ、操作性に優れる皮膚貼付材を得ることができる。上記剥離ライナーが分割される位置は、本発明の効果が得られる限りにおいて、任意の適切な位置に設定され得る。以下、図6図9を用いて、分割された剥離ライナーの例を説明する。
【0038】
図6は、本発明の1つの実施形態による皮膚貼付材の概略裏面図である。図6においては、剥離ライナー140を有する皮膚貼付材の剥離ライナー140の形態が示され、点線が剥離ライナー140の分割線である。1つの実施形態においては、図6に示すように、剥離ライナー140は、幅方向で3分割され、第1の分割片141、第2の分割片142および第3の分割片143から構成される。
【0039】
図7は、本発明の1つの実施形態による皮膚貼付材の概略断面図である。図7においては、皮膚貼付材の前方から見た断面図が示されている。1つの実施形態においては、図7に示すように、剥離ライナーを構成する分割片は、折り返し部141a、143aを有し得る。折り返し部141a、143aは任意の適切な箇所を折り返し線141b、14baとして、該折り返し線141b、14baから折り返して形成される部分である。より詳細には、幅方向両端に位置する第1の分割片141および第3の分割片143に折り返し部が設けられる。第1の分割片141の折り返し部141aは、第1の分割片141と第2の分割片142との境界において折り返し線141bを有し、当該折り返し線を基準に折り返される。また、第3の分割片143の折り返し部143aは、第3の分割片143と第2の分割片142との境界において折り返し線143bを有し、当該折り返し線を基準に折り返される。
【0040】
図8は、本発明の別の実施形態による皮膚貼付材の概略裏面図である。図8においては剥離ライナー140を有する皮膚貼付材の剥離ライナー140の形態が示され、点線が剥離ライナー140の分割線である。本実施形態においては、剥離ライナー140は、皮膚貼付材の後方において幅方向で3分割された第1の分割片141’、第2の分割片142’および第3の分割片143’、ならびに、皮膚貼付材の前方において全幅域を覆う第4の分割片144’から構成される。
【0041】
図9は、本発明の別の実施形態による皮膚貼付材の概略断面図である。図9においては、皮膚貼付材のVIII-VIII線による断面図が示されている。1つの実施形態においては、図9に示すように、第1の分割片141’は、折り返し部141a’を有し、折り返し部141a’は、第1の分割片141’と第2の分割片142’との境界において折り返し線141b’を有し、当該折り返し線を基準に折り返される。また、第3の分割片143’は、折り返し部143a’を有し、折り返し部143a’は、第3の分割片143’と第2の分割片142’との境界において折り返し線143b’を有し、当該折り返し線を基準に折り返される。また、第2の分割片142'は、幅方向両端に折り返し部142a'を有し、折り返し部142a'は、第1の分割片141’と第2の分割片142’との境界および第3の分割片143’と第2の分割片142’との境界において、それぞれ、折り返し線142b’を有し、当該折り返し線を基準に折り返される。
【0042】
1つの実施形態においては、上記第1の分割片の折り返し部および/または第2の分割片の折り返し部は、延出部を有する。延出部は、分割片を折り返した際に、皮膚貼付材の第1の基材から延出する部分である。折り返し部が延出部を有すれば、把持部となって生体表面への貼り付け操作性が顕著に優れた皮膚貼付材を得ることができる。延出部の長さは、好ましくは1mm~30mmであり、より好ましくは5mm~20mmである。
【0043】
A-2.第2の実施形態
上記のとおり、第2の実施形態において、非貼着部は粘着性を有する。この実施形態においては、皮膚貼付材は、皮膚貼付材を貼着する際に、非貼着部部の後方において、起立部が形成されるように構成される。非貼着部は、起立部が起立することにともなって、被着体への貼着がされないように構成される。図10(a)は、本発明の好ましい実施形態による皮膚貼付材の概略平面図であり、図10(b)は、図10(a)の皮膚貼付材のXb-Xb線による概略断面図である。図10(a)に示すように、皮膚貼付材200は、平面視において、非貼着部110’’と、固定部120とを有する。固定部120は、被着体(皮膚)に対して粘着性を有し、医療器具の固定に寄与する。
【0044】
図10(b)に示すように、皮膚貼付材200は、断面視において、第1の基材11と、第1の粘着剤層12とをこの順に備える。代表的には、第1の粘着剤層12は透明である。本実施形態において、第1の基材11は、フィルム基材であり得る。代表的にはフィルム基材は透明である。第1の実施形態と異なる点は、第2の実施形態においては、非貼着部がカバー材等で覆われておらず、使用時には第1の粘着剤層が露出する点である。
【0045】
1つの実施形態においては、図10(b)に示すように、皮膚貼付材200は第2の基材14を備える。本実施形態において、第2の基材14は、支持基材であり得る。皮膚貼付材100が第2の基材(支持基材)14を備える場合、当該第2の基材(支持基材)14は第1の粘着剤層12に接するように配置され得、また、第2の基材(支持基材)14の第1の粘着剤層12とは反対側には、第2の粘着剤層15が配置され得る。すなわち、本実施形態において、皮膚貼付材100は、第1の基材(フィルム基材)11と、第1の粘着剤層12と、第2の基材(支持基材)14と、第2の粘着剤層15とをこの順に備える。また、皮膚貼付材100に窓部121が形成されている場合、第2の基材(支持基材)14は窓部121に対応する位置に窓部121と同平面視形状の開口部を有する。また、非貼着部110’’が透明である場合、支持基材14は、非貼着部110’’に対応する位置に非貼着部110’’と同平面視形状の開口部を有する。
【0046】
第2の実施形態による皮膚貼付材は、カテーテル200を固定する際、図3に示すように、非貼着部110’’の後方において、起立部122が形成される。起立部122は、カテーテル200の非貼着部110’’より後方(穿刺部と反対側)にある部分に、非貼着部110’’近傍の固定部120を幅方向両側から半周ずつ巻き付けた後、巻き付けた箇所の下方で幅方向左右にある固定部120同士を貼り合わせて、形成される。上記皮膚貼付材は、複雑な操作を必要とせずに、圧痕を防止しつつ、カテーテルを良好に固定することができる。起立部の高さは、例えば5mm~20mmである。
【0047】
第2の実施形態におけるその他の構成(平面視構成、窓部の構成等)は、A-1項で説明したとおりであり得る。
【0048】
本実施形態の皮膚貼付材においては、上記のように非貼着部110’’が形成されることにより、医療器具の皮膚への圧迫を低減することができる。また、皮膚貼付材下においては、医療器具の周辺に所定の空間が形成されて、当該医療器具は適度に動くことが可能となる。その結果、医療器具に力が加わった際でも、医療器具あるいはこれを固定する貼付材に、皮膚が引っ張られて生じる負荷が、低減される。このような効果を発現する本発明の皮膚貼付材は、カテーテルハブのような凹凸が大きく皮膚への圧迫が強い部分を固定する際に、特に有用である。
【0049】
B.各構成部分の説明
B-1.支持基材
上記支持基材を構成する材料としては、本発明の効果が得られる限りにおいて任意の適切な材料が用いられ得る。支持基材の材料の具体例としては、コットン、レーヨン、ナイロン、ウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、パルプ等が挙げられる。このような材料であれば、適度な強度と柔軟性を有するので、カテーテル等の医療器具による圧迫感が小さい皮膚貼付材を得ることができる。また、医療器具を固定する際に、上記起立部を良好に形成することができる。
【0050】
1つの実施形態においては、上記支持基材として不織布が用いられる。不織布であれば、適度な強度と柔軟性を有するので、カテーテル等の医療器具による圧迫感が小さい皮膚貼付材を得ることができる。また、医療器具を固定する際に、上記起立部を良好に形成することができる。不織布の形態としては、例えば、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布等が挙げられる。上記支持基材は、単層構造であってもよく、2層以上の積層構造であってもよい。積層構造の場合は、各層は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0051】
上記支持基材の厚みは、目的に応じて任意の適切な厚みに設定され得る。上記支持基材の厚みは、好ましくは100μm~500μmであり、さらに好ましくは200μm~400μmである。このような範囲であれば、医療器具を固定する際に、上記起立部を良好に形成することができる。また、上記支持基材の厚みが100μm未満の場合、皮膚貼付材に必要な強度が得られないおそれがある。500μmより大きい場合、適度な柔軟性が得られないおそれがある。
【0052】
B-2.粘着剤層
上記第1の粘着剤層および第2の粘着剤層を構成する粘着剤としては、任意の適切な粘着剤が採用され得る。好ましくは、生体表面に貼り付けて使用可能な粘着剤が用いられる。このような粘着剤の具体例としては、天然ゴム系、合成ゴム系、アクリル系、シリコーン系、ホットメルト系等の感圧性粘着剤が挙げられる。アクリル系感圧性粘着剤が好ましい。皮膚貼付材の透明部分の透明性をより高め、皮膚に与える刺激をより抑えることができるからである。アクリル系感圧性粘着剤の中でも、油性ゲル状のアクリル系感圧性粘着剤が特に好ましい。瘢痕部や縫合創、ならびに光過敏症や光アレルギーの皮膚に対しても低刺激だからである。油性ゲル状のアクリル系感圧性粘着剤の詳細は、例えば特開平6-319793号公報に記載されており、その記載は本明細書に参考として援用される。
【0053】
上記第1の粘着剤層および第2の粘着剤層の厚みとしては、目的や用途に応じて任意の適切な厚みが採用され得る。上記第1の粘着剤層の厚みは、好ましくは5μm~60μmであり、さらに好ましくは10μm~50μmである。上記第2の粘着剤層の厚みは、好ましくは20μm~100μmであり、さらに好ましくは30μm~70μmである。上記粘着剤層の厚みがこのような範囲であれば、生体表面への密着性に優れるので、貼り付けられた皮膚貼付材の浮きや剥がれが良好に防止され得る。また、皮膚貼付材を長期間貼り付けた場合の皮膚貼付材端部のめくれも良好に防止され得る。
【0054】
上記第1の粘着剤層および第2の粘着剤層を設ける方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。具体例としては、粘着剤組成物を粘着剤層配置面に塗布し乾燥させる方法、粘着剤組成物を所定の形状に成形した粘着剤層を粘着剤層配置面上に転写積層する方法が挙げられる。
【0055】
B-3.フィルム基材
上記フィルム基材としては、皮膚貼付材に使用可能である限りにおいて、任意の適切なフィルムが採用され得る。代表的には、透明性および可撓性を有し、皮膚などの生体表面に障害を与えないフィルムが採用され得る。そのようなフィルムの材料の具体例としては、アクリル重合体、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリエーテルポリエステルおよびポリアミド誘導体が挙げられる。なかでも、アクリル重合体、ポリウレタン、ポリエーテルポリエステルまたはポリアミド誘導体が好ましく、ポリウレタンがより好ましい。これらの材料から構成されるフィルム基材は、水蒸気透過性に優れているので、被覆した皮膚の呼吸を妨げることが少なく、かつ、皮膚の白化現象を抑制することができ、さらには、優れた透明性を有している点で好ましい。
【0056】
上記フィルム基材の厚みとしては、目的や用途に応じて任意の適切な厚みが採用され得る。フィルム基材の厚みは、好ましくは5μm~150μmであり、さらに好ましくは10μm~75μmである。このような厚みであれば、生体表面(例えば、皮膚)の凹凸への追従性に優れ、皮膚貼付材の基材として良好に機能し得る。
【0057】
B-4.カバー材
上記非粘着部を構成するカバー材としては、任意の適切なフィルムが採用され得る。カバー材を構成する材料としては、例えば、B-3項で説明したフィルム基材を構成する材料と同様の材料が用いられ得る。また、B-1項で説明した支持基材を構成する材料と同様の材料を用いてもよい。
【0058】
カバー材の厚みとしては、好ましくは5μm~150μmであり、さらに好ましくは10μm~75μmである。
【0059】
B-5.剥離ライナー
上記剥離ライナーとしては、本発明に用いられ粘着剤層と良好に剥離し得る限りにおいて任意の適切な剥離ライナーが採用され得る。代表的には、剥離ライナーは、基体と、当該基体表面に形成された剥離処理層とを有する。基体の具体例としては、プラスチックフィルム(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、またはこれらの積層複合体)、紙(例えば、上質紙、クラフト紙等)が挙げられる。剥離処理層は、基体表面にシリコーン系樹脂処理やフッ素系樹脂処理等を施すことによって形成され得る。本発明においては、剥離処理層は、好ましくは、基体の両面に形成されている。
【0060】
上記剥離ライナーの厚みは、目的に応じて適切に設定され得る。剥離ライナーの厚みは、好ましくは50μm~250μmであり、さらに好ましくは75μm~200μmである。
【0061】
C.皮膚貼付材の貼り付けの具体的手順
図11は、本発明の1つの実施形態による皮膚貼付材の具体的な貼り付け手順を説明するための概略図である。図11においては、図6に示すように3分割された剥離ライナー(すなわち、第1の分割片141と第2の分割片142と第3の分割片143とから構成された剥離ライナー140)を備える皮膚貼付材100により、カテーテルの穿刺部を固定する手順を示している。
【0062】
剥離ライナーが3分割されている場合、上記皮膚貼付材100の貼り付けにおいては、(a)に示すように、最初に、幅方向中央の第2の分割片142が剥離され得る。皮膚貼付材100が窓部121を有する場合、これにより、皮膚貼付材100の窓部121の少なくとも一部が露出する。
【0063】
その後、(b)に示すように、カテーテル200が置かれた生体300上に、カテーテル200のハブ部210の位置に非貼着部(非粘着部)110を合わすようにして、皮膚貼付材100を貼着する。1つの実施形態においては、皮膚貼付材100を貼着する際に、非貼着部(非粘着部)110の後方において、起立部122を形成する。起立部122は、カテーテル200の非貼着部(非粘着部)110の後方(穿刺部と反対側)にある部分に、固定部120を巻き付けた後、巻き付けた箇所の下方で幅方向左右にある固定部120同士を貼り合わせて、形成される。
【0064】
次いで、(c)に示すように、剥離ライナーの第1の分割片141と第3の分割片143とを剥離して、皮膚貼付材100全体を生体300に貼着し、(e)に示すような状態で、皮膚貼付材100の貼り付け操作が完了する。
【0065】
図12は、本発明の別の実施形態による皮膚貼付材の具体的な貼り付け手順を説明するための概略図aである。図12においては、図8に示すように4分割された剥離ライナー(すなわち、第1の分割片141’と第2の分割片142’と第3の分割片143’と第4の分割片144’とから構成された剥離ライナー140)を備える皮膚貼付材により、カテーテルの穿刺部を固定する手順を示している。
【0066】
本実施形態においては、図12(a)に示すように、最初に、第4の分割片144’が剥離される。皮膚貼付材100が窓部121を有する場合、これにより、皮膚貼付材100の窓部121の少なくとも一部が露出する。
【0067】
その後、図12(b)に示すように、カテーテル200が置かれた生体300上に、カテーテル200のハブ部210の位置に非貼着部(非粘着部)110を合わすようにして、皮膚貼付材100を貼着する。次いで、第2の分割片142’を剥離する。1つの実施形態においては、図12(c)に示すように、皮膚貼付材100を貼着する際に、非貼着部(非粘着部)110の後方において、起立部122を形成する。起立部122は、カテーテル200の非貼着部(非粘着部)110の後方(穿刺部と反対側)にある部分に、固定部120を巻き付けた後、巻き付けた箇所の下方で幅方向左右にある固定部120同士を貼り合わせて、形成される。
【0068】
次いで、図12(d)に示すように、第1の分割片141’と第2の分割片142’とを剥離し、皮膚貼付材100全体を生体300に貼着し、図12(e)に示すような状態で、皮膚貼付材100の貼り付け操作が完了する。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の皮膚貼付材は、医療用途に好適に利用され、カテーテル等の医療器具の固定に特に好適に利用され得る。
【符号の説明】
【0070】
11 第1の基材(フィルム基材)
12 第1の粘着剤層
13 カバー材
14 第2の基材(支持基材)
15 第2の粘着剤層
100 皮膚貼付材
110 非粘着部
120 固定部
121 窓部
122 起立部
140 剥離ライナー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12