(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】光化学的酸素貯蔵および放出を使用するシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
C01B 13/02 20060101AFI20250311BHJP
【FI】
C01B13/02 B
(21)【出願番号】P 2022512792
(86)(22)【出願日】2020-08-25
(86)【国際出願番号】 US2020047829
(87)【国際公開番号】W WO2021041430
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-08-08
(32)【優先日】2019-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515207422
【氏名又は名称】ポートランド ステート ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】マコーミック, テレサ
(72)【発明者】
【氏名】ルトクス, ルーク
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-215757(JP,A)
【文献】米国特許第04436715(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0271297(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0069470(US,A1)
【文献】特表2012-523507(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0296085(US,A1)
【文献】国際公開第2012/056225(WO,A1)
【文献】Damir POSAVEC et al.,“Functionalized derivatives of 1,4-dimethylnaphthalene as precursors for biomedical applications: synthesis, structures, spectroscopy and photochemical activation in the presence of dioxygen”,Organic and Biomolecular Chemistry,2012年,Vol. 10, No. 35,p.7062,DOI: 10.1039/c2ob26236c
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 13/00 - 13/36
A61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多環式芳香族化合物および光増感剤を含む第1の混合物を第1の温度で酸素ガスの第1の部分および光に曝露して、エンドペルオキシドを含む第2の混合物を形成するステップであって、前記第1の温度が、前記エンドペルオキシドが分解するのを実質的に阻止するよう選択され
、前記第1の混合物を酸素ガスの前記第1の部分に曝露することが、前記第1の混合物を周囲空気に曝露することを含む、ステップと、
前記第2の混合物の温度を前記第1の温度よりも高い第2の温度に昇温させ、かつ/または照射を停止して、前記エンドペルオキシドの分解を促進して、再生成した多環式芳香族化合物を形成し、酸素を放出するステップと、
前記放出された酸素を空気ストリームと混合して、酸素に富む空気ストリームを形成するステップと
を含む、方法
であって、前記多環式芳香族化合物が、式II
【化16】
(式中、R
1
、R
2
およびR
3
はそれぞれ、独立して、H;OH;C
1~25
脂肪族;C
6~15
アリール;式-O-C
1~25
アルキルまたは-O-C
3~15
シクロアルキルのアルコキシ;式-O-C(O)H、-O-C(O)C
1~25
脂肪族または-O-C(O)-芳香族の-O-アシル(式中、芳香族が5~15個の環原子を有する環部分を指す);-O-Si(C
1~25
アルキル)
3
;-O-アミノ酸;または-O-炭水化物であり、
nは0~6である)
の構造を有する、方法。
【請求項2】
前記第2の混合物の前記温度を前記第2の温度に昇温させる前の選択された期間にわたって、前記第1の温度またはそれ未満に前記第2の混合物を維持するステップをさらに含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記再生成した多環式芳香族化合物および前記光増感剤を酸素ガス
の第2の部分に曝露して、
第2のエンドペルオキシド
を形成するステップをさらに含む、請求項1
または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
n=0である、
R
1およびR
2がどちらも
C
1~25
アルキルである、または
それらの組合せである、請求項
1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記多環式芳香族化合物が、1,4-ジメチルナフタレンである、請求項1~
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の温度が、-78℃~25℃である、
前記第2の温度が、-40℃~100℃である、または
それらの組合せである、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記光増感剤が三重項光増感剤である、請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記三重項光増感剤が、ローズベンガル、メチレンブルー、エオシンB、Ru(bpy)
3、メチルグリーン、ルブレン、フルオレン、フラーレン、ナノ粒子またはそれらの組合せから選択される、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記フラーレンが、アルキル、アリール、アルコキシまたはそれらの組合せにより必要に応じて置換されているC
20~94フラーレンであり、
前記フルオレンが、9,9-置換フルオレンまたは2,7-置換フルオレンであり、
前記ナノ粒子が、CdTe、ZnSe、SiNP、CNP、AuNP、もしくはBiNPナノ粒子であるか、三重項光増感剤を含むシリカ、タンパク質もしくはポリマーナノ粒子、またはそれらの組合せである、
請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記光が、380nm~1000nmの波長を有する光を含む、請求項1~
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記光が自然光またはLED光源からの光を含む、請求項1
0に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の混合物が溶液であり、溶媒をさらに含む、請求項1~1
1のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記溶媒が、アセトニトリル、エタノール、メタノール、ジクロロメタン、ヘキサン、水、エーテル、ジメチルホルムアミド、四塩化炭素、クロロホルム、プロピレンカーボネート、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラヒドロフランまたはそれらの組合せである、請求項1
2に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の混合物が固体であり、必要に応じて、ゼオライト、珪藻土、ヒドロゲル、ポリマー、金属-有機フレームワークモチーフまたはそれらの組合せをさらに含む、請求項1~1
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリマーが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ペプチド、ポリアクリル酸またはそれらの組合せを含む、請求項1
4に記載の方法。
【請求項16】
酸素に富む空気ストリームの投与を必要とする患者
への投与に適した酸素に富む空気ストリーム
を作製する方法であって、前記方法は、
多環式芳香族化合物および光増感剤を含む第1の混合物を第1の温度で酸素ガスの第1の部分および光に曝露して、エンドペルオキシドを含む第2の混合物を形成するステップであって、前記第1の温度が、前記エンドペルオキシドが分解するのを実質的に阻止するよう選択され
、前記第1の混合物を酸素ガスの前記第1の部分に曝露することが、前記第1の混合物を周囲空気に曝露することを含む、ステップと、
前記第2の混合物の温度を前記第1の温度よりも高い第2の温度に昇温させ、かつ/または照射を停止して、前記エンドペルオキシドの分解を促進して、再生成した多環式芳香族化合物を形成し、酸素を放出するステップと、
前記放出された酸素を空気ストリームと混合して、前記酸素に富む空気ストリームを形成するステップ
と
を含
み、前記多環式芳香族化合物が、式II
【化17】
(式中、R
1
、R
2
およびR
3
はそれぞれ、独立して、H;OH;C
1~25
脂肪族;C
6~15
アリール;式-O-C
1~25
アルキルまたは-O-C
3~15
シクロアルキルのアルコキシ;式-O-C(O)H、-O-C(O)C
1~25
脂肪族または-O-C(O)-芳香族の-O-アシル(式中、芳香族が5~15個の環原子を有する環部分を指す);-O-Si(C
1~25
アルキル)
3
;-O-アミノ酸;または-O-炭水化物であり、
nは0~6である)
の構造を有する、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2019年8月28日出願の米国仮特許出願第62/892,758号の出願日遡及の利益を主張しており、この米国仮特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
分野
本出願は、光化学反応を使用する、酸素貯蔵および放出のためのシステムおよび方法、ならびに光の力学的エネルギーへの変換に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
酸素は、通常、液化空気の蒸留などのエネルギー集約プロセスを使用して精製され、酸素を効率的に貯蔵するには、通常、高圧および/または液化のために圧縮することを必要とする。酸素はまた、高温に曝露される過塩素酸アルカリからなどの、ある特定の非可逆的反応から生成することができるが、これもやはり、毒性塩素ガスを放出する恐れがある。酸素貯蔵のための化学的に可逆的なシステムはほとんど報告されておらず、それらのシステムは、通常、酸素放出のために高温を必要とする。
【0004】
さらに、太陽エネルギーなどの光エネルギーを力学的エネルギーに変換するための方法はほとんど報告されていない。力学的エネルギーは、塩化ニトロシル(NOCl)ガスの分裂および再結合反応を使用して、紫外線(UV)照射して、NOおよびCl2を生成することから発生する。しかし、このプロセスの最大電位は、NOClの最初のモル数の2倍の圧力/体積変化が限界であり、UV光をやはり必要とする。さらに、塩化ニトロシルは、目、肺および皮膚に対して非常に毒性で刺激性があり、強力な酸化剤であり、反応生成物である塩素とNOガスのどちらもやはり、毒性である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
光エネルギーを力学的エネルギーに変換する、ならびに/または酸素貯蔵、精製、単離および/もしくは濃縮のためのシステムおよび方法の実施形態が、本明細書において開示されている。方法の実施形態は、多環式芳香族化合物および光増感剤を含む第1の混合物を酸素ガスおよび光に曝露して、エンドペルオキシドを含む第2の混合物を形成するステップと、第2の混合物の温度を変化させて、かつ/または第2の混合物の光による照射を停止して、多環式芳香族化合物の少なくとも一部を再生成し、酸素ガスの少なくとも一部を放出するステップとを含むことができる。一部の実施形態では、方法は、多環式芳香族化合物および光増感剤を含む第1の混合物を第1の温度で酸素ガスの第1の部分および光に曝露して、エンドペルオキシドを含む第2の混合物を形成するステップであって、第1の温度が、エンドペルオキシドが分解するのを実質的に阻止するよう選択される、ステップを含む。方法は、第2の混合物の温度を、エンドペルオキシドの分解を促進するのに好適な第2の温度に昇温させ、再生成した多環式芳香族化合物を形成し、酸素を放出するステップをさらに含む。通常、第2の温度は、第1の温度よりも高い。方法はまた、放出された酸素を空気ストリームと混合して、それを必要とする患者に必要に応じて供給することができる、酸素に富む空気ストリームを形成するステップを含む。第1の混合物を酸素ガスに曝露するステップは、第1の混合物を周囲空気に曝露するステップを含むことができ、そして/または方法は、第2の混合物の温度を第2の温度に昇温させる前の選択された期間にわたって、第1の温度またはそれ未満に第2の混合物を維持するステップをさらに含むことができる。必要に応じて、方法は、再生成した多環式芳香族化合物および光増感剤を酸素ガスに第2の部分に曝露して、エンドペルオキシドの少なくとも一部を再形成するステップを含むことができる。
【0006】
方法の代替的な実施形態は、a)第1の多環式芳香族化合物および第1の光増感剤を含む第1の混合物を第1の温度で酸素ガスの第1の部分および第1の光源からの光に曝露して、第1のエンドペルオキシドを含む第2の混合物を形成するステップであって、第1の温度が、第1のエンドペルオキシドの分解を実質的に阻止するよう選択される、ステップと、
b)第2の混合物の温度を第1の温度よりも高く、第1のエンドペルオキシドを分解するのに好適な第2の温度に昇温させ、これによって、第1の多環式芳香族化合物の少なくとも一部を再生成し、第1の空気ストリームと混合した酸素ガスの第2の部分を形成して、第1の酸素に富む空気ストリームを形成するステップと、
c)第2の多環式芳香族化合物および第2の光増感剤を含む第3の混合物を第3の温度で酸素ガスの第3の部分および第2の光源からの光に曝露して、第2のエンドペルオキシドを含む第4の混合物を形成するステップであって、第3の温度が、第2のエンドペルオキシドの分解を実質的に阻止するよう選択される、ステップと、
d)第2の混合物中の第1のエンドペルオキシドが実質的に分解すると、第3の混合物の温度を第3の温度よりも高く、第2のエンドペルオキシドを分解するよう選択された第4の温度に昇温させ、これによって、第2の多環式芳香族化合物の少なくとも一部を再生成し、第2の空気ストリームと混合した酸素ガスの第4の部分を形成して、第2の酸素に富む空気ストリームを形成するステップと、
e)第1の多環式芳香族化合物および第1の光増感剤を酸素ガスの第5の部分および第1の光源からの光に曝露して、第1のエンドペルオキシドの少なくとも一部を再形成するステップとを含む。必要に応じて、ステップbおよびcは、同時に行われてもよく、かつ/またはステップdおよびeは、同時に行われてもよい。
【0007】
方法の追加的な実施形態は、多環式芳香族化合物、光増感剤および酸素ガスを含む第1の混合物を、第1の体積を有する密閉空間中で光に曝露して、多環式芳香族化合物と酸素ガスとの間の反応によって、エンドペルオキシドを形成し、これによって、密閉空間の体積を第1の体積よりも小さい第2の体積に変化させるステップを含む。方法は、光を除去して、多環式芳香族化合物を再生成し、密閉空間中に酸素ガスの少なくとも一部を放出して、これによって、密閉空間の体積を第2の体積よりも大きく、第1の体積と実質的に同じであってもよい、第3の体積に変化させるステップをさらに含むことができる。密閉空間の体積を変化させると、ピストンを動かすなどの、力学的仕事を生み出すことができる。
【0008】
方法のさらなる実施形態は、多環式芳香族化合物、光増感剤および酸素ガスを含む第1の混合物を、第1の圧力を有する密閉空間中で光に曝露して、多環式芳香族化合物と酸素ガスとの間の反応によって、エンドペルオキシドを形成し、これによって、密閉空間の圧力を第1の圧力よりも小さい第2の圧力に変化させるステップを含む。方法は、光を除去して、多環式芳香族化合物を再生成し、密閉空間中に酸素ガスの少なくとも一部を放出して、これによって、密閉空間の圧力を第2の圧力よりも大きく、第1の体積と実質的に同じであってもよい、第3の圧力に変化させるステップをさらに含むことができる。密閉空間において圧力を変化させることにより、力学的仕事をもたらすことができる。
【0009】
開示されている方法の実施形態は、再生成した多環式芳香族化合物を光に曝露して、エンドペルオキシドの少なくとも一部を再形成するステップと、次に、光源を除去して、もう一度多環式芳香族化合物を再生成するステップとをさらに含むことができる。第1の混合物を光へ曝露するステップは、第1の温度で行うことができ、かつ/または光を除去するステップは、温度を第1の温度よりも高い第2の温度に昇温させることを含むことができる。
【0010】
任意の実施形態では、光を除去するおよび/または光による照射を停止もしくは阻止することは、混合物から光源を物理的に除去すること、光源から混合物を物理的に除去すること、もしくはそれらの組合せ;光源を遮断すること;光源の電源をオフにすること;またはそれらの任意の組合せを含むことができる。
【0011】
開示されている実施形態のいずれかでは、多環式芳香族化合物は、ナフタレン化合物またはアントラセン化合物であり得、そして/または式I
【化1】
を有することができる。
【0012】
式Iに関すると、R
1、R
2およびR
3はそれぞれ、独立して、H、OH、脂肪族、アリール、アルコキシ、-O-アシル、-O-Si(アルキル)
3、-O-アミノ酸または-O-炭水化物であり、nは0~6であり、「---」は、存在していても、存在していなくてもよい、結合を表す。ある特定の実施形態では、化合物は、
【化2】
から選択される式を有する。
【0013】
一部の実施形態では、n=0である、ならびに/またはR1およびR2の少なくとも1つは、Hではない。R1およびR2は、どちらもアルキルであり得、そして/または互いに同じであっても異なっていてもよい。ある特定の実施形態では、R1およびR2は同じであり、Hではない。また、特定の実施形態では、多環式芳香族化合物は、1,4-ジメチルナフタレンである。
【0014】
同様に、任意の開示されている実施形態では、第1の温度は、0℃~20℃などの、-78℃~100℃であり得る。さらにまたは代替的に、第2の温度は、-40℃~50℃または15℃~25℃などの、-40℃~100℃またはそれより高くてもよい。
【0015】
光増感剤は、ローズベンガル、メチレンブルー、エオシンB、Ru(bpy)3、メチルグリーン、ルブレン、フラーレン、ナノ粒子またはそれらの組合せであってもよく、ある特定の開示されている実施形態では、光増感剤は、ローズベンガルである。さらにまたは代替的に、光は、可視光および/もしくは近赤外であってもこれらを含んでもよく、ならびに/または380nm~740nmもしくは530nm~575nmなどの380nm~1000nmの波長を有することができる。任意の実施形態では、光は、自然光であってもこれを含んでもよく、または光は、LED光などの人工光源からの光を含んでいてもよい。
【0016】
任意の実施形態では、第1の混合物は、溶液または固体であってもよい。第1の混合物が溶液である実施形態では、溶液は、溶媒をさらに含んでもよい。溶媒は、アセトニトリル、エタノール、メタノール、ジクロロメタン、ヘキサン、水、エーテル、ジメチルホルムアミド、四塩化炭素、クロロホルム、プロピレンカーボネート、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラヒドロフランまたはそれらの組合せなどの任意の好適な溶媒であり得る。第1の混合物が固体である代替的な実施形態では、固体は、ゼオライト、珪藻土などのシリカ、ヒドロゲル、ポリマー、金属-有機フレームワークモチーフまたはそれらの組合せなどの固体支持体をさらに含んでもよい。ある特定の実施形態では、多環式芳香族化合物および/または光増感剤化合物は、固体支持体の少なくとも一部を形成するポリマーに、吸収されている、吸着されているまたは共有結合により結合しているなどで、関係付けられている。ポリマーは、ポリエチレンもしくはポリプロピレンなどのポリアルキルポリマー;ポリエチレングリコールもしくはポリプロピレングリコールなどのポリアルキルグリコール;ポリペプチド;コンジュゲートされているポリマー鎖;ポリアクリル酸、またはそれらの組合せであり得る。一部の実施形態では、多環式芳香族化合物および/または光増感剤は、ポリマーに共有結合により結合されており、ある特定の実施形態では、多環式芳香族化合物および光増感剤の両方が、ポリマーに共有結合により結合されている。一部の実施形態では、ポリマーは、5kDa~50kDaなどの、3kDaまたはそれ未満~1000kDaまたはそれより大きい分子量を有する。本明細書で使用する場合、ポリマーに関する用語「分子量」は、プロトンNMRおよびサイズ排除クロマトグラフィーによって決定される重量平均分子量である。
【0017】
開示されている方法を行うのに好適なシステムの実施形態もまた、本明細書において開示されている。システムは、第1の多環式芳香族化合物および第1の光増感剤を含む第1の混合物、第1のガス入口、第1のガス出口、第1のポンプおよび第1の光源を備える第1のチャンバと、第1の多環式芳香族化合物および第2の光増感剤の第2の混合物、第2のガス入口、第2のガス出口、第2のポンプおよび第2の光源を備える第2のチャンバと、第1のガス入口と第2のガス入口との間で空気ストリームを切り替えるよう構成されている制御装置とを備えることができる。システムはまた、ヒーター、冷却器またはそれらの組合せなどの、温度制御装置を備えてもよい。
【0018】
システムの代替的な実施形態は、多環式芳香族化合物、光増感剤、および酸素を含むガス、ならびに必要に応じて溶媒を含む混合物を含む、体積および/または圧力が変動し得る密閉空間に関する。システムは、光源をさらに含むことができる。
【0019】
本開示の上述のおよび他の目的、特徴ならびに利点は、以下の詳細な説明から一層明白になり、添付の図面を参照しながら進める。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
多環式芳香族化合物および光増感剤を含む第1の混合物を第1の温度で酸素ガスの第1の部分および光に曝露して、エンドペルオキシドを含む第2の混合物を形成するステップであって、前記第1の温度が、前記エンドペルオキシドが分解するのを実質的に阻止するよう選択される、ステップと、
前記第2の混合物の温度を前記第1の温度よりも高い第2の温度に昇温させ、かつ/または照射を停止して、前記エンドペルオキシドの分解を促進して、再生成した多環式芳香族化合物を形成し、酸素を放出するステップと、
前記放出された酸素を空気ストリームと混合して、酸素に富む空気ストリームを形成するステップと
を含む、方法。
(項目2)
前記第1の混合物を酸素ガスに曝露するステップが、前記第1の混合物を周囲空気に曝露するステップを含む、請求項1に記載の方法。
(項目3)
前記方法が、前記酸素に富む空気ストリームを、それを必要とする患者に供給するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
(項目4)
前記第2の混合物の前記温度を前記第2の温度に昇温させる前の選択された期間にわたって、前記第1の温度またはそれ未満に前記第2の混合物を維持するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
(項目5)
前記再生成した多環式芳香族化合物および前記光増感剤を酸素ガスに第2の部分に曝露して、前記エンドペルオキシドの少なくとも一部を再形成するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
(項目6)
a)第1の多環式芳香族化合物および第1の光増感剤を含む第1の混合物を第1の温度で酸素ガスの第1の部分および第1の光源からの光に曝露して、第1のエンドペルオキシドを含む第2の混合物を形成するステップであって、前記第1の温度が、前記第1のエンドペルオキシドの分解を実質的に阻止するよう選択される、ステップと、
b)前記第2の混合物の温度を前記第1のエンドペルオキシドを分解するのに好適な前記第1の温度よりも高い第2の温度に昇温させ、これによって、前記第1の多環式芳香族化合物の少なくとも一部を再生成し、第1の空気ストリームと混合した酸素ガスの第2の部分を形成して、第1の酸素に富む空気ストリームを形成するステップと、
c)第2の多環式芳香族化合物および第2の光増感剤を含む第3の混合物を第3の温度で酸素ガスの第3の部分および第2の光源からの光に曝露して、第2のエンドペルオキシドを含む第4の混合物を形成するステップであって、前記第3の温度が、前記第2のエンドペルオキシドの分解を実質的に阻止するよう選択される、ステップと、
d)前記第1のエンドペルオキシドが実質的に分解すると、前記第3の混合物の温度を前記第3の温度よりも高く、前記第2のエンドペルオキシドを分解するよう選択された第4の温度に昇温させ、これによって、前記第2の多環式芳香族化合物の少なくとも一部を再生成し、第2の空気ストリームと混合した酸素ガスの第4の部分を形成して、第2の酸素に富む空気ストリームを形成するステップと、
e)前記第1の多環式芳香族化合物および前記第1の光増感剤を酸素ガスの第5の部分および前記第1の光源からの光に曝露して、前記第1のエンドペルオキシドの少なくとも一部を再形成するステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
(項目7)
ステップbがステップcと同時に行われる、請求項6に記載の方法。
(項目8)
多環式芳香族化合物、光増感剤および酸素ガスを含む第1の混合物を、第1の体積を有する密閉空間中で光に曝露して、前記多環式芳香族化合物と前記酸素ガスとの間の反応によって、エンドペルオキシドを形成し、これによって、前記密閉空間の体積を前記第1の体積よりも小さい第2の体積に変化させるステップと、
前記光による照射を停止して、前記多環式芳香族化合物を再生成し、前記密閉空間中に前記酸素ガスの少なくとも一部を放出して、これによって、前記密閉空間の前記体積を、前記第1の体積と実質的に同じである第3の体積に変化させるステップと
を含む、方法。
(項目9)
前記密閉空間の前記体積の変化によりピストンが動く、請求項8に記載の方法。
(項目10)
前記再生成した多環式芳香族化合物を光に曝露して、前記エンドペルオキシドの少なくとも一部を再形成するステップと、次に、前記光源を除去して、前記多環式芳香族化合物を再生成するステップとをさらに含む、請求項8に記載の方法。
(項目11)
前記第1の混合物を前記光に曝露するステップが、第1の温度で行われ、前記光を除去するステップが、前記温度を前記第1の温度よりも高い第2の温度に昇温させるステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
(項目12)
多環式芳香族化合物、光増感剤および酸素ガスを含む第1の混合物を、第1の圧力を有する密閉空間中で光に曝露して、前記多環式芳香族化合物と前記酸素ガスとの間の反応によって、エンドペルオキシドを形成し、これによって、前記密閉空間の圧力を前記第1の圧力よりも小さい第2の圧力に変化させるステップと、
前記光による照射を停止して、前記多環式芳香族化合物を再生成し、前記密閉空間中に前記酸素ガスの少なくとも一部を放出して、これによって、前記密閉空間の前記圧力を、前記第1の圧力と実質的に同じである第3の圧力に変化させるステップと
を含む、方法。
(項目13)
前記密閉空間の前記圧力の変化により仕事が生じる、請求項12に記載の方法。
(項目14)
前記再生成した多環式芳香族化合物を光に曝露して、前記エンドペルオキシドの少なくとも一部を再形成するステップと、次に、前記光源を除去して、前記多環式芳香族化合物を再生成するステップとをさらに含む、請求項12に記載の方法。
(項目15)
前記第1の混合物を前記光に曝露するステップが、第1の温度で行われ、前記光を除去するステップが、前記温度を前記第1の温度よりも高い第2の温度に昇温させるステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
(項目16)
前記多環式芳香族化合物が、ナフタレン化合物またはアントラセン化合物である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
前記多環式芳香族化合物が式I
【化14】
(式中、
R
1
、R
2
およびR
3
はそれぞれ、独立して、H、OH、脂肪族、アリール、アルコキシ、-O-アシル、-O-Si(アルキル)
3
、-O-アミノ酸または-O-炭水化物であり、
nは0~6であり、
「---」は、存在していても、存在していなくてもよい、結合を表す)
を有する、請求項16に記載の方法。
(項目18)
前記化合物が
【化15】
から選択される式を有する、請求項17に記載の方法。
(項目19)
n=0である、請求項17に記載の方法。
(項目20)
R
1
およびR
2
の少なくとも1つがHではない、請求項17に記載の方法。
(項目21)
R
1
およびR
2
がどちらもアルキルである、請求項20に記載の方法。
(項目22)
R
1
およびR
2
が同じであり、Hではない、請求項20に記載の方法。
(項目23)
前記多環式芳香族化合物が、1,4-ジメチルナフタレンである、請求項16に記載の方法。
(項目24)
前記第1の温度が、-78℃~25℃である、請求項16に記載の方法。
(項目25)
前記第1の温度が、0℃~20℃である、請求項24に記載の方法。
(項目26)
前記第2の温度が、-40℃~100℃である、請求項16に記載の方法。
(項目27)
前記第2の温度が、15℃~25℃である、請求項26に記載の方法。
(項目28)
前記光増感剤が、ローズベンガル、メチレンブルー、エオシンB、Ru(bpy)
3
、メチルグリーン、ルブレン、フルオレン、フラーレン、ナノ粒子またはそれらの組合せである、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
(項目29)
前記フラーレンが、アルキル、アリール、アルコキシまたはそれらの組合せにより必要に応じて置換されているC
20~94
フラーレンであり、
前記フルオレンが、9,9-置換フルオレンまたは2,7-置換フルオレンであり、
前記ナノ粒子が、CdTe、ZnSe、SiNP、CNP、AuNP、もしくはBiNPナノ粒子であるか、三重項光増感剤を含むシリカ、タンパク質もしくはポリマーナノ粒子、またはそれらの組合せである、
請求項28に記載の方法。
(項目30)
前記光増感剤がローズベンガルである、請求項28に記載の方法。
(項目31)
前記光が、380nm~1000nmの波長を有する光を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
(項目32)
前記光が可視光である、請求項31に記載の方法。
(項目33)
前記可視光が、380nm~740nmの波長を有する、請求項32に記載の方法。
(項目34)
前記可視光が、530nm~575nmの波長を有する光を含む、請求項33に記載の方法。
(項目35)
前記光が自然光を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
(項目36)
前記光が太陽光である、請求項35に記載の方法。
(項目37)
前記光がLED光源からの光を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
(項目38)
前記第1の混合物が溶液であり、溶媒をさらに含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
(項目39)
前記溶媒が、アセトニトリル、エタノール、メタノール、ジクロロメタン、ヘキサン、水、エーテル、ジメチルホルムアミド、四塩化炭素、クロロホルム、プロピレンカーボネート、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラヒドロフランまたはそれらの組合せである、請求項38に記載の方法。
(項目40)
前記溶媒がアセトニトリルである、請求項38に記載の方法。
(項目41)
前記第1の混合物が固体である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
(項目42)
前記固体が、ゼオライト、珪藻土、ヒドロゲル、ポリマー、金属-有機フレームワークモチーフまたはそれらの組合せをさらに含む、請求項41に記載の方法。
(項目43)
前記ポリマーが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ペプチド、ポリアクリル酸またはそれらの組合せを含む、請求項42に記載の方法。
(項目44)
前記ポリマーが、5kDa~500kDaの分子量を有する、請求項43に記載の方法。
(項目45)
第1の多環式芳香族化合物および第1の光増感剤を含む第1の混合物、第1のガス入口、第1のガス出口、第1のポンプおよび第1の光源を備える第1のチャンバと、
第1の多環式芳香族化合物および第2の光増感剤の第2の混合物、第2のガス入口、第2のガス出口、第2のポンプおよび第2の光源を備える第2のチャンバと、
前記第1のガス入口と第2のガス入口との間で空気ストリームを切り替えるよう構成されている制御装置と
を備えるシステム。
(項目46)
温度制御装置をさらに備える、請求項45に記載のシステム。
(項目47)
前記温度制御装置が、ヒーター、冷却器またはそれらの組合せである、請求項46に記載のシステム。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、様々な市販の三重項光増感剤の吸光度プロファイルを示す、吸光度対波長のグラフである。
【0021】
【
図2】
図2は、1,4-ジメチルナフタレンおよびローズベンガルの混合物の場合の、22℃における、緑色光の照射下でのO
2の消費とその後の酸素の放出に起因する、経時的な圧力の変化を示す、時間に対する圧力(PSI)の変化のグラフである。
【0022】
【
図3】
図3は、大気圧条件下、25℃で4時間毎の、光のオンおよびオフを循環させることに起因する、経時的な圧力の変化を示す、時間に対する圧力(PSI)の変化のグラフである。
【0023】
【
図4】
図4は、大気圧条件下、25℃で6時間毎の、光のオンおよびオフを循環させることに起因する、経時的な圧力の変化を示す、時間に対する圧力(PSI)の変化のグラフである。
【0024】
【
図5】
図5は、緑色光を照射した酸素雰囲気中の、20%、30%および50%の1,4-ジメチルナフタレン(1,4-DMN)の、経時的な圧力変化を示す、時間に対する圧力(PSI)の変化のグラフである。
【0025】
【
図6】
図6は、酸素取込みおよび放出による圧力変化により、光エネルギーを力学的エネルギーへ変換するためのシステムの例示的な実施形態の模式図である。
【0026】
【
図7】
図7は、酸素精製、濃縮および/または単離のための連続流システムの例示的な実施形態の模式図である。
【0027】
【
図8】
図8は、酸素濃縮器の例示的な実施形態の模式図である。
【0028】
【
図9】
図9は、3サイクルの場合の、酸素のヘッドスペース下、25℃において、90分間の1,4-DMNおよびローズベンガルの照射、次いで180分間の照射なしに起因する圧力変化を示す、時間に対する圧力(PSI)の変化のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
詳細な説明
I.定義
用語および方法の以下の説明は、本開示をよりよく説明し、本開示の実施において当業者に案内するために提示されている。単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈が特に明確に指示しない限り、1つまたは1つより多くを指す。用語「または」は、文脈が特に明白に示さない限り、明記した代替要素のうちの単一要素、または2つもしくはそれより多くの要素の組合せを指す。本明細書で使用する場合、「含む(comprises)」は、「含む(includes)」を意味する。したがって、「AまたはBを含むこと」は、追加の要素を除外することなく、「A、BまたはAとBを含むこと」を意味する。本明細書において引用されている特許および特許出願を含めた参照文献はすべて、参照により組み込まれている。
【0030】
特に示さない限り、本明細書または特許請求の範囲において使用されている、構成成分、分子量、百分率、温度、時間などの量を表現している数はすべて、用語「約」によって修飾されていると理解されたい。したがって、特に示さない限り、暗示的または明示的に、説明されている数値パラメータは、標準試験条件/方法の下で、所望の求められる特性および/または検出限界に依存し得る概数である。実施形態を議論されている先行技術と直接および明示的に区別する場合、実施形態の数値は、語「約」が引用されていない限り、概数ではない。
【0031】
特に説明されない限り、本明細書において使用される技術および科学用語はすべて、本開示が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものに類似した、またはこれに等価な方法および材料が、本開示の実施または試験に使用することができるが、好適な方法および材料は、以下に記載されている。材料、方法および例は、単なる例示であり、限定することを意図するものではない。
【0032】
「置換されている」は、指定した基または部分を修飾するために使用される場合、指定した基または部分の、少なくとも1個、および恐らくは2個またはそれより多く、例えば、2個、3個、4個またはそれより多くの水素原子が、以下に定義されている、および原子価規則によって許容される、同じまたは異なる置換基により独立して、置き換えられていることを意味する。任意の特定の実施形態では、基、部分または置換基は、「無置換である」または「置換されている」のどちらか一方として明示的に定義されていない限り、置換されていても無置換であってもよい。したがって、本明細書において指定されている基のいずれかは、無置換であっても置換されていてもよい。特定の実施形態では、置換基は、置換されていると明示的に定義されていてもよく、または定義されていなくてもよいが、必要に応じて置換されることがとやはり企図される。例えば、「アルキル」または「アリール」部分は、無置換であっても置換されていてもよいが、「無置換アルキル」または「無置換アリール」は、置換されていない。例示的な置換基には、以下に限定されないが、OH;F、Cl、BrまたはIなどのハロゲン;メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチルまたはtert-ブチルなどのアルキル;アルコキシ;アシル;ベンジル;フェニルもしくはナフチルなどのアリール;またはそれらの組合せが含まれる。
【0033】
「アシル」は、Rが、H、脂肪族または芳香族である、基-C(O)Rを指す。例示的なアシル部分には、以下に限定されないが、-C(O)H、-C(O)アルキル、-C(O)C1~C6アルキル、-C(O)シクロアルキル、-C(O)アルケニル、-C(O)シクロアルケニル、-C(O)アルキニルまたは-C(O)アリールが含まれる。具体例には、-C(O)H、-C(O)Me、-C(O)Etまたは-C(O)フェニルが含まれる。
【0034】
「脂肪族」は、実質的に炭化水素をベースとする基または部分を指す。脂肪族基または部分は、非環式(これは、アルキル、アルケニルまたはアルキニル基を含む)、
その環式型(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニルまたはシクロアルキニルを含む脂環式基または部分)であり得、さらに、直鎖状および分枝鎖状の鎖の配置、ならびに、同様にすべての立体および位置異性体を含み得る。特に明示的に記載されていない限り、脂肪族基は、飽和の非環式脂肪族基もしくは部分の場合、1~25個の炭素原子(C1~25);例えば、1~15個(C1~15)、1~10個(C1~10)、1~6個(C1~6)もしくは1~4個の炭素原子(C1~4)、不飽和の非環式脂肪族基もしくは部分の場合、2~25個の炭素原子(C2~25);例えば2~15個(C2~15)、2~10個(C2~10)、2~6個(C2~6)もしくは2~4個の炭素原子(C2~4)、または脂環式基もしくは部分の場合、3~15個(C3~15)、3~10個(C3~10)、3~6個(C3~6)もしくは3~4個(C3~4)の炭素原子を含有する。脂肪族基は、「無置換脂肪族」もしくは「置換脂肪族」、または、例えば、無置換アルキル、アルケニルもしくはアルキニルまたはその環式型、あるいは置換アルキル、アルケニルもしくはアルキニルまたはその環式型と明示的に言及されていない限り、置換されていても無置換であってもよい。脂肪族基は、1つまたはそれより多くの置換基(脂肪族鎖中に、各メチレン炭素に対して最大で2つの置換基、または脂肪族鎖中に、-C=C-二重結合の各炭素に対して最大で1つの置換基、または末端メチン基の炭素に対して最大で1つの置換基)により置換され得る。
【0035】
「アルコキシ」は、Rが、置換もしくは無置換アルキル基、または置換もしくは無置換シクロアルキル基である、基-ORを指す。ある特定の例では、Rは、C1~6アルキル基またはC3~6シクロアルキル基である。メトキシ(-OCH3)およびエトキシ(-OCH2CH3)は、例示的なアルコキシ基である。置換アルコキシでは、Rは、置換アルキルまたは置換シクロアルキルであり、それらの例には、-OCF2Hまたは-OCF3などのハロアルコキシ基が含まれる。
【0036】
「アルキル」は、1~25(C1~25)個またはそれより多くの炭素原子、より典型的には1~10(C1~10)個の炭素原子、例えば、1~6(C1~6)個の炭素原子または1~4(C1~4)個の炭素原子を有する、飽和脂肪族ヒドロカルビル基を指す。アルキル部分は、置換されていても無置換であってもよい。この用語には、例として、メチル(CH3)、エチル(-CH2CH3)、n-プロピル(-CH2CH2CH3)、イソプロピル(-CH(CH3)2)、n-ブチル(-CH2CH2CH2CH3)、イソブチル(-CH2CH2(CH3)2)、sec-ブチル(-CH(CH3)(CH2CH3)、t-ブチル(-C(CH3)3)、n-ペンチル(-CH2CH2CH2CH2CH3)およびネオペンチル(-CH2C(CH3)3)などの直鎖状および分枝鎖状のヒドロカルビル基が含まれる。
【0037】
「芳香族」は、特に指定しない限り、単環(例えば、フェニル、ピリジニルまたはピラゾリル)または縮合多環を有する、5~15個の環原子の、環式共役基または部分を指し、ここで、少なくとも1つの環は、芳香族(例えば、ナフチル、インドリルまたはピラゾロピリジニル)であり、すなわち、少なくとも1つの環および必要に応じて縮合多環は、連続した非局在化π電子系を有する。通常、平面π電子からの数は、Huckel則(4n+2)に相当する。親構造への結合点は、通常、縮合環系の芳香族部分を介する。例えば、
【化3】
。しかし、ある特定の例では、文脈または明白な開示は、結合点が、縮合環系の非芳香族部分を介すると示すことができる。例えば、
【化4】
。芳香族基または部分は、アリール基もしくは部分中などの環中に、炭素原子のみを含み得るか、または、ヘテロアリール基もしくは部分中などに、1個もしくはそれより多くの環炭素原子および電子の孤立電子対を含む1個もしくはそれより多くの環ヘテロ原子(例えば、S、O、N、PまたはSi)を含むことができる。特に明記しない限り、芳香族基は、置換されていても無置換であってもよい。
【0038】
「アリール」は、特に明記しない限り、単環(例えば、フェニル)または縮合多環を有する、6~15個の炭素原子の芳香族炭素環式基を指し、ここで、少なくとも1つの環は、芳香族縮合多環であり、ここで、少なくとも1つの環は、芳香族(例えば、1,2,3,4-テトラヒドロキノリン、ベンゾジオキソールなど)であり、但し、結合点は、環系の芳香族部分を介することを条件とする。任意の芳香族環部分がヘテロ原子を含有する場合、基は、ヘテロアリールであり、アリールではない。アリール基は、例えば、単環式、二環式、三環式または四環式であってもよい。特に明記しない限り、アリール基は、置換されていても無置換であってもよい。
II.概説
【0039】
必要に応じて置換されているナフタレン化合物またはアントラセン化合物などのある特定の多環式芳香族化合物は、一重項酸素と反応して、可逆的にエンドペルオキシドを形成することができる。本明細書で使用する場合、用語ナフタレン化合物およびアントラセン化合物は、明示的に除外されていない限り、または文脈が特に指示している場合を除き、親化合物、すなわちナフタレンまたはアントラセンをそれぞれ含む。スキーム1は、対応する1,4-DMNエンドペルオキシドを生成するための1,4-ジメチルナフタレン(1,4-DMN)の例示的な可逆反応を示している。一重項酸素(
1O
2)は、三重項酸素(
3O
2)として公知の、基底状態の酸素の反応性と比較して、特有の反応性を有する、励起状態の酸素である。
1O
2の特有の反応性は、有機酸化およびがん処置に利用性が見出されている。置換ナフタレンおよびアントラセンエンドペルオキシドの安定性は、ナフタレンの1および4位、またはアントラセンの9および10位における異なる基によって様々となり得る。特定の温度においてそれほど安定ではないエンドペルオキシドは、より容易に分解して、
1O
2を放出し、エンドペルオキシドよりも安定な元のナフタレンまたはアントラセン化合物を再生成する。
【化5】
【0040】
1,4-DMNエンドペルオキシドなどのエンドペルオキシドの形成は、三重項光増感剤(PS)を使用して生成することができる一重項酸素との反応から生じ、これによって、好適な可視光の照射時に、基底状態の酸素にエネルギーを伝達する(スキーム1)。多数の三重項光増感剤が市販されており、
1O
2、多環式芳香族化合物または生じたエンドペルオキシドと反応しない限り、任意の特定の光増感剤の適合性は、溶解度によってのみ制限される。したがって、特定の光増感剤または光増感剤の組合せを選択することによって、可視スペクトルおよびNIRのほぼすべてを使用して、
1O
2、したがってエンドペルオキシドを創出することができる(
図1)。好適な光増感剤には、以下に限定されないが、ローズベンガル、メチレンブルー、エオシンB、Ru(bpy)
3、メチルグリーン、ルブレン、フラーレン(アルキル、アリール、アルコキシ置換または無置換のC
20~94)、フルオレン(例えば、9,9-置換または2,7-置換フルオレンを含む)、ナノ粒子(例えば、CdTe、ZnSe、SiNP、CNP、AuNP、BiNP、またはシリカ、タンパク質もしくはポリマーによって結合もしくはカプセル封入されている、カプセル封入された低分子三重項光増感剤を含むナノ粒子)またはそれらの組合せが含まれる。
【0041】
典型的な太陽エネルギー変換反応は、太陽エネルギーを、必要になるまで貯蔵しなければならない電気に変換する。人工光合成では、太陽エネルギーは、必要になるまで貯蔵することができる太陽燃料の形態の化学ポテンシャルに変換される。対照的に、エネルギーまたは酸素貯蔵および放出用途における使用のための、多環式芳香族化合物の、一重項酸素との反応を活用するシステムおよび方法の実施形態が、本明細書において開示されている。ある特定の実施形態は、ピストンなどの機械装置を駆動することができる、システムの圧力および/または体積変化を生じることによって、太陽エネルギーを力学的エネルギーに直接変換することを可能にする。他の実施形態により、酸素をガス混合物から可逆的に取り出すことが可能となり、酸素貯蔵、精製、濃縮および/または除去などの代替的な用途がもたらされる。
【0042】
ナフタレンまたはアントラセン化合物および一重項酸素の反応によって形成されるエンドペルオキシドは、温度依存速度で酸素を放出する。したがって、酸素の消費は、光への曝露を制御することによって制御することができる一方、酸素放出は、熱を使用して制御することができる。このようなシステムおよび方法は、光からの圧力または体積変化の形態で、力学的仕事の発生に有望性を示す。発明者ら知る限りでは、可視光の力学的エネルギーへの直接的な変換は、以前に報告されていない。さらに一重項酸素との選択的な反応のために、この手法は、大気空気などのガス状混合物からの酸素の精製および/または除去のために使用することができる。
III.化合物
【0043】
開示技術における使用のための好適な化合物は、一重項酸素を有するエンドペルオキシドを形成することができる芳香族化合物を含む。一部の実施形態では、化合物は、2つまたはそれより多くの環、例えば、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれより多くの芳香族環および好ましくは2つまたは3つの芳香族環を含む、多環式芳香族化合物である。ある特定の実施形態は、式Iを有する化合物に関する。
【化6】
【0044】
式Iに関すると、破線(---)は、必要に応じた結合を示す、すなわち、化合物は、式II
【化7】
を有するナフタレン化合物または式III
【化8】
を有するアントラセン
【化9】
化合物のどちらか一方である。
【0045】
同様に、式I、IIおよびIIIに関して、R
1およびR
2はそれぞれ、独立して、H;OH;脂肪族、例えば、アルキル(例えば、メチル、エチル、イソプロピルまたはn-プロピル)、アルケニル(例えば、エテニルまたはプロペニル)もしくはアルキニル(例えば、エチニルまたはプロピニル)またはその環式型;芳香族、例えば、アリール(例えば、フェニルまたはナフチル);ベンジルなどの-CH
2アリール;アルコキシ、例えば、-O-アルキル、好ましくは-O-CH
3、-O-Etまたは-O-iPr;-O-アシル、例えば、-O-C(O)アルキルまたは-O-C(O)アリール、好ましくは-O-C(O)CH
3または-O-C(O)フェニル;-O-Si(Me)
3または-O-Si(iPr)
3などの-O-Si(アルキル)
3;F、Cl、BrまたはIなどのハロゲン;シアノ;-O-Gluなどの-O-アミノ酸;
【化10】
などの-O-炭水化物;あるいはポリマーである。nは、0、1、2、3、4、5または6などの0~6である。また、R
3は、存在する場合、OH;脂肪族、例えば、アルキル(例えば、メチル、エチル、イソ-プロピルまたはn-プロピル)、アルケニル(例えば、エテニルまたはプロペニル)もしくはアルキニル(例えば、エチニルまたはプロピニル)またはその環式型;芳香族、例えば、アリール(例えば、フェニル);アルコキシ、例えば、-O-アルキル、好ましくは-O-CH
3、-O-Etまたは-O-iPr;-O-アシル、例えば、-O-C(O)アルキルまたは-O-C(O)アリール、好ましくは、-O-C(O)CH
3または-O-C(O)フェニル;-O-Si(Me)
3または-O-Si(iPr)
3などの-O-Si(アルキル)
3;F、Cl、BrまたはIなどのハロゲン;シアノ;-O-Gluなどの-O-アミノ酸;あるいは
【化11】
などの-O-炭水化物、あるいはポリマーである。
【0046】
各ポリマーは、存在する場合、独立して、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどのポリアルキルポリマー;ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールなどのポリアルキルグリコール;ポリペプチド;ポリアクリル酸ポリマーまたはコンジュゲートされているポリマー鎖であり得る。ある特定の実施形態では、光増感剤はまた、ポリマーにコンジュゲートされていてもよい。
【0047】
一部の実施形態では、R1およびR2は、同じであるが、他の実施形態では、R1およびR2は異なる。一部の実施形態では、R1およびR2の少なくとも1つは、Hではなく、ある特定の実施形態では、R1およびR2の両方がHではない。
【0048】
ある特定の実施形態では、n=0である。
【0049】
一部の実施形態では、n=0であり、R1およびR2はどちらも、メチルなどのアルキルである。特定の実施形態では、化合物は、1,4-ジメチルナフタレン(1,4-DMN)である。
IV.酸素取込みおよび放出
【0050】
酸素取込みは、ナフタレンおよび/もしくはアントラセン、またはそれらの誘導体などの多環式芳香族化合物ならびに光増感剤の混合物の光による照射によって促進される。混合物は、好適な溶媒中に多環式芳香族化合物および光増感剤を含む溶液であり得る。開示技術における使用に好適な溶媒は、ナフタレンおよび/またはアントラセン化合物などの多環式芳香族化合物、ならびに光増感剤を溶解するが、多環式芳香族化合物、光増感剤、一重項酸素または生じたエンドペルオキシドと化学的に反応しない、任意の溶媒を含む。好適な溶媒には、以下に限定されないが、アセトニトリル;ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、四塩化炭素およびクロロホルムなどの塩素化溶媒;プロピレンカーボネート;エチレングリコール;プロピレングリコール;テトラヒドロフラン;ヘキサン;エーテル;ジメチルホルムアミド;水;エタノール;メタノール;またはそれらの重水素化アナログ;またはそれらの組合せが含まれる。
【0051】
代替的な実施形態では、開示されているシステムおよび方法は、固体状態の多環式芳香族化合物/光増感剤組成物を含むことができる。固体状態のシステムへ適応することは、空気などのガスを通気または混合する必要性を低減またはなくして、酸素の溶解を促進することができる。このような固体状態のシステムでは、光増感剤、および1,4-DMNなどの多環式芳香族化合物は、吸着、吸収などによる、好適な固体状態の支持体上にロードされており、そして/または共有結合もしくはイオン性結合により結合されている。好適な固体状態の支持体には、以下に限定されないが、ゼオライト、珪藻土などのシリカ、ヒドロゲル、ポリマー、金属-有機フレームワークモチーフまたはそれらの組合せなどの多孔質および/またはガス透過性材料が含まれる。固体支持体は、三重項光増感剤を励起するのに好適な光の波長に透過性となるよう選択することができ、例えば、可視NIRの波長では珪藻土である。そして/または固体支持体の経路長は、例えば、ポリマーと透明性を増大するよう、かつ/または光の透過の最大深さと同等な深さを有するよう選択することができる。さらにまたは代替的に、固体支持体は、光を吸収し、例えば、ナノ粒子と共に一重項酸素光増感剤として働くことができる。
【0052】
光は、多色性もしくは単色性の可視および/もしくは近赤外光であってもよく、ならびに/または380nm~740nm、380nm~700nmなどの、380nmもしくはそれ未満~1000nmもしくはそれより長い波長を有することができるか、もしくはこれらを含むことができる。ある特定の実施形態では、光は、530nm~575nmなどの500nm~600nmの波長を有するか、またはこれを含む。光の波長は、光増感剤の吸光度に基づいて選択することができる。ローズベンガルは、500~570nmの緑色光によって励起され得、またはメチレンブルーは、580~640nmの赤色光を使用して励起され得る。光は、太陽光などの自然光であってもよく、フィルターをかけないで使用されても所望の波長範囲だけにフィルターをかけて使用されてもよい。さらにまたは代替的に、光は、所望の波長を有する光をもたらすよう必要に応じて選択されるLED光などの人工光を含んでもよい。
【0053】
開示されているシステムおよび方法の一部の実施形態では、酸素取込みおよび酸素放出は、通常、個別のステップで行われる。各ステップは、それぞれの反応を促進するのに好適な温度で行われる。例えば、酸素取込みは、-78℃~50℃、-78℃~20℃、-50℃~20℃、-25℃~20℃、0℃~20℃または10℃~20℃などの、-78℃またはそれ未満~100℃またはそれより高い温度で行うことができる。また、酸素放出は、-20℃~50℃、-20℃~30℃、-10℃~30℃、0℃~30℃、10℃~30℃、15℃~25℃または20℃~25℃などの、-40℃~100℃またはそれより高い温度で進行することができる。
【0054】
一部の実施形態では、酸素放出は、酸素取込みが起こる温度よりも高い温度で行われる。他の実施形態では、2つの反応が行われる温度は、重なっても実質的に同じであってもよいが、多環式芳香族化合物および光増感剤の混合物が照射されていると、酸素取込みが、酸素放出よりも優位になり、エンドペルオキシドの濃度の総合的な向上、および酸素ガスの濃度の低下をもたらす。このような実施形態では、照射が一旦停止されると、酸素放出が優位になり、したがって、酸素ガス濃度の向上がもたらされる。
【0055】
一部の実施形態では、エンドペルオキシドは、酸素放出温度未満の温度で貯蔵され、こうして、ガスから取り出された酸素を貯蔵することができる。エンドペルオキシドは、ゼロより長い~52週間、ゼロより長い~30週間、ゼロより長い~20週間、ゼロより長い~10週間、ゼロより長い~4週間、ゼロより長い~1週間、ゼロより長い~5日間、ゼロより長い~3日間、ゼロより長い~2日間、ゼロより長い~24時間、ゼロより長い~18時間、ゼロより長い~12時間、1時間~6時間または1時間~3時間などの、ゼロ超~1年間またはそれより長い間などの、所望の期間にわたって貯蔵され得る。一部の実施形態では、エンドペルオキシドは、航空機の緊急酸素システムにおける使用のためなどの、緊急状況のための酸素を貯蔵するために使用される。
【0056】
予備検討に関すると、その入手可能性および高い1O2量子収率(φ≒0.76)のために、ローズベンガルを光増感剤として使用した。閉システムにおいて、緑色光の照射下でのアセトニトリル(10mL)中での1,4-DMN(6.4×10-2M)のローズベンガル(1×10-4M)による光触媒酸化を、酸素消費からの対応する圧力低下によってモニタリングした。対応するエンドペルオキシドの安定性は、温度に応じて変動した。緑色光の照射の電源を切ると、1O2はもはや生成せず、1,4-DMNのエンドペルオキシドは、20℃またはそれ未満の温度で貯蔵することが可能となった。
【0057】
温度を20℃を超えて上昇させると、酸素が放出され、1,4-DMNが再生成された。酸素の放出は、対応する圧力の上昇によってモニタリングした。
図2に示される通り、
1O
2の初期生成は、エンドペルオキシドの形成をもたらし、1,4-DMNによる酸素消費のため、系の圧力が低下した。結果はまた、緑色光の照射の電源を切ると、これらの温度で圧力上昇が観察されなかったので、エンドペルオキシドは、16℃~20℃の間では、比較的安定であることを示した。
【0058】
温度が22℃まで上昇すると、恐らくエンドペルオキシドの不安定化、およびその結果生じた酸素放出および1,4-DMNの再生成のために圧力上昇が観察された。22℃で緑色光を照射すると、酸化速度が、酸素放出よりも優位になり、酸素の総合的な消費および圧力低下をもたらした。
【0059】
光増感剤は、酸素の消費および放出の間、化学的に反応も、実質的に分解もせず、多環式芳香族化合物が再生成されるので、システムは、有効性の実質的な喪失なしに、繰り返し循環させることができる。これは、4時間の間隔で、緑色LEDの電源をオンおよびオフにすることによって、25℃での2サイクルにわたり、1,4-DMNを使用して実証された(
図3)。ローズベンガルの励起に由来する
1O
2の生成により、4時間後に約0.5PSIの圧力低下が生じた。4時間、光の電源をオフにした後、圧力は、貯蔵した酸素の放出のために、開始圧力付近に戻った。第2の4時間のオン/4時間のオフ照射サイクルの間に、類似の圧力低下/圧力上昇パターンが観察された(
図3)。
【0060】
1,4 DMNの量を0.32Mに拡大すると、循環させた場合、類似の結果をもたらしたが、12時間の間隔にわたり、ほぼ1.5PSIの圧力変化を伴った(
図4)。両方の1,4-DMN濃度において、同じ割合の圧力変化が観察され、酸素が限界試薬であることを示唆している。1,4-DMNの量を50%(3.2M)に増加させると、酸素消費速度が低下し、90%(5.8M)の1,4-DMNでは、酸素消費は観察されなかった。結果により、1,4-DMNの濃度が高くなると、1,4-DMN溶液中の酸素の溶解度は、低下し、これによって、システムの有効性が低下した可能性があることが示された。一部の実施形態では、多環式芳香族化合物の濃度は、ゼロ超~3.5M、0.01M~3M、0.02M~2M、0.05M~1Mまたは0.05M~0.75Mなどの、ゼロ超~4Mまたはそれより高い。ある特定の実施形態では、例えば、25℃、大気圧条件下では、1,4-DMNの濃度範囲は、0.064M~0.64Mなどの、0.064またはそれ未満~1Mまたはそれより高かった。
【0061】
より高い1,4-DMN濃度において酸素消費量を改善する選択肢の1つは、実質的に純粋な酸素ガスを使用するなどによって、酸素の濃度を高くすることである。酸素消費のほぼ同じ速度が、酸素ヘッドスペース(16.9PSI、1.13atm)下、20%、30%および50%(1.3M、2.0Mおよび3.2M)溶液に対して観察された(
図5)。高い酸素消費速度が観察されたが、ほぼ同一の速度により、1,4-DMNは、これらの濃度では、酸素消費速度を制限しなかったことが依然として示された。しかし、大気圧条件下での酸素精製用途の場合、アセトニトリルなどのある特定の溶媒中、25℃において溶液中で酸素を溶解するために、1,4-DMNの0.064Mもしくはそれ未満~1M、または0.064M~0.64Mなどの、より低い濃度がより適していた。
【0062】
本システムは、太陽エネルギーシステムを含めた多くの光エネルギーシステムと比較して、いくつかの大きな利点を示す。三重項光増感剤の役割は、単に、1O2を生成するだけなので、NIR光を含めた可視スペクトル全体を吸収させるために、幅広い色素を使用することができる。同様に、吸収された各光子は、エンドペルオキシドを生成する同じ目的に利用可能であるので、より低いエネルギー照射で効率が増大する。さらに、逆反応は酸素を放出するために光を必要とせず、したがって、このようなシステムは、大部分の太陽エネルギー技術にとって大きな課題である、夜間での酸素放出のために使用することができる。光熱技法は、太陽エネルギーを熱エネルギーに変換するために使用されてきたが、開示されているシステムはまた、光を供給する、および除去することによって、一定温度で循環させることもできる。開示されている例示的なシステムは、約0.34というエンドペルオキシド形成の量子収率を生じ、これは、550nmの光を使用して、約2%のPV仕事への変換効率をもたらす。
V.用途
【0063】
開示されているシステムおよび方法の実施形態は、太陽および/もしくは人工光を力学的仕事へ変換すること、ならびに/または酸素精製、濃縮、単離、貯蔵および/もしくは除去などの多数の用途に有用である。
A.力学的仕事の生成
【0064】
密閉システムでは、循環させたオン-オフの照射に起因する圧力変化は、機械システムを駆動するため、体積の変化をもたらすことができる。等温条件では、システムからの仕事量(W)は、方程式1から計算することができる。
【数1】
【0065】
方程式1に関して、nは、O
2のモル数であり、Rは、理想気体の法則定数であり、Tは、温度であり、V2は、最終体積であり、V1は、初期体積である。
図6に実証される通り、体積の変化を使用してピストンを駆動させることができる。
図6に関すると、三重項光増感剤および1,4-DMNなどの多環式芳香族化合物を含有する溶液は、好適な光源に曝露すると、ヘッドスペース中のガスから酸素を除去し、ピストンを下げることができる体積の低下をもたらす。光が除去されるか、電源をオフにすると、溶液は、酸素を放出してヘッドスペースに戻して、初期体積を回復させ、ピストンを押し上げる。総合的な結果は、光への曝露を循環させることに由来する力学的仕事の発生である。これは、照射下、O
2取込みがO
2放出よりも優位になる温度の1つで行うことができ、代替として、システムは、照射中に冷却されて、O
2放出速度を低下させ、O
2放出速度を向上させるため、照射から遮蔽、または他には、照射されるのを阻止することができる。
【0066】
力学的エネルギーは、塩化ニトロシル(NOCl)ガスの分裂および再結合を使用して生じて、NOおよびCl2を生成する。しかし、このプロセスの最大電位は、NOClの初期モル数の2倍の圧力/体積変化に制限され、作動させるために、可視光とは対照的に、UV光をやはり必要とする。さらに、塩化ニトロシルは、目、肺および皮膚に対して非常に毒性で刺激性があり、強力な酸化剤である。また、塩素とNOガスのどちらもやはり、毒性である。
【0067】
対照的に、本明細書に開示されているシステムおよび方法は、光から力学的仕事を生成するための、これまでの試みよりもいくつかの利点を有する。第1に、開示されている方法は、周囲空気、酸素に富む空気、または実質的に純粋な酸素ガスなどの高い酸素濃度を有するガスを使用することができる。したがって、潜在的な環境リスクが、かなり低減される。また、三重項光増感剤の役割は、単に、1O2を生成するだけなので、NIR光を含めた可視スペクトル全体を吸収するために、幅広い色素を使用することができる。さらに、吸収される各光子を使用して、エンドペルオキシドを生成するので、より低いエネルギー照射で効率が増大する。さらに、放出反応は酸素を放出するために光を必要とせず、したがって、このようなシステムは、大部分の太陽エネルギー技術にとって大きな課題である、夜間で使用することができる。光熱技法は、太陽エネルギーを熱エネルギーに変換するために使用されてきたが、開示されている方法は、一定温度において循環させることができる。
B.連続流反応器
【0068】
さらに、大気から、またはガスの代替混合物からなど、酸素精製、濃縮、貯蔵、単離および/または除去に好適な連続流反応器の実施形態が、本明細書において開示されている。
図7は、連続流反応器の例示的な実施形態を示す模式図を提示する。
図7に関して、反応器2は、第1の反応管4および第2の反応管6を備える。反応器2はまた、第1の反応管4および第2の反応管6を流体連結する、第1の連結管8および第2の連結管10を備えており、こうして、流体は、矢印12によって示されているループで、または反対の方向で流れることができる。流体は、必要に応じて、本明細書において開示されている好適な溶媒中、ナフタレンおよび/またはアントラセン化合物などの多環式芳香族化合物、ならびに光増感剤を含む溶液であり得る。
【0069】
反応器2はまた、空気などのガスが第1の反応管4に導入されることを促進するガス入口14を備える。一部の実施形態では、ガスは、第1の反応管4中の流体に吹き込まれる。第1の反応管4において、多環式芳香族化合物および光増感剤を含む溶液などの流体は、ガスから多環式芳香族化合物への酸素取込みを促進するのに好適な波長を有する光16に曝露されて、エンドペルオキシドを形成する。光16は、自然光および/またはLED光源からなどの人工光であってもよい。
図7は、光源は、第1の反応管4の外側に存在していることを示すが、当業者は、光源が、第1の反応管4内に、かつ/または第1の反応管4の壁に配置することができることを認識する。
図7に示されているものなどの外部光源の場合、第1の反応管4は、光源から流体への光の通過を容易にする材料を含むことができる。一部の実施形態では、第1の反応管4は、材料から部分的にまたは実質的に全体が形成されていてもよいが、他の実施形態では、第1の反応管4は、光の通過を容易にする、1つまたはそれより多くの窓を備える。好適な材料には、以下に限定されないが、ガラス、アクリル、ポリビニリジエンクロリド(polyvinylidiene chloride)、ポリカーボネート、シリカおよびそれらの組合せが含まれる。
【0070】
反応器2はまた、酸素取込みおよび/またはエンドペルオキシド形成を促進するのに好適な第1の温度で流体の温度を低下させ、かつ/または維持する冷却装置18を備えてもよい。
図7は、第1の反応管4の底部に配置された必要に応じた冷却装置18を示しているが、当業者は、冷却装置18は、第1の反応管4において流体を第1の温度に低下させ、かつ/または維持するのに好適な、第1の反応管4に沿った任意の位置に配置してもよいことを認識する。
【0071】
さらにまたは代替的に、反応器2は、エンドペルオキシドの分解、および/または貯蔵した酸素の放出を促進するのに好適な第2の温度に、流体の温度を昇温させる、必要に応じたヒーター20を備えることができ、次に、貯蔵した酸素は、酸素出口22を通って反応器2を出ることができる。
図7に示される通り、ヒーター20は、第2の反応管6の底部などの、第2の反応管6に沿った任意の好適な位置に配置することができる。
図7は、反応器2における流体の流路内に存在する、必要に応じた冷却装置18およびヒーター20に関して例示的な場所を示しているが、当業者は、冷却装置および/またはヒーターは、代替として、それぞれの反応管の外側に配置し、これによって、管の壁を通して流体を加熱または冷却することができることを認識する。好適な加熱および/または冷却デバイスには、以下に限定されないが、熱交換デバイスが含まれる。抵抗器、フィラメントまたは光熱性材料などの加熱デバイスを使用して、チャンバと直接または間接的に接触させて加熱することができる。冷却は、ファンもしくはポンプによる、または熱電冷却による、空気または液体の通過によって実現することができる。
【0072】
さらにまたは代替的に、反応器2は、例えば、かき混ぜることによって、それぞれ、第1および第2の反応管4および6の一方または両方において、流体の混合を促進するための1つまたはそれより多くの撹拌器を備えてもよい。このような撹拌は、一重項酸素形成、および単一酸素と多環式芳香族化合物との間の反応を促進することができる。
【0073】
酸素が放出されると、多環式芳香族化合物の少なくとも一部は、流体中で再生成される。再生成した多環式芳香族化合物を含む流体は、第2の連結管10を通って、第1の反応管4に戻って、サイクルを完了する。一部の実施形態では、第2の反応管6内の流体は、不透明な第2の反応管6の壁を有するなどによって、光から遮蔽され、その結果、内部の流体は、暗所中で維持される。これは、放出された酸素からの一重項酸素形成、さらにエンドペルオキシド形成を実質的に阻止する。
C.酸素濃縮器
【0074】
開示されている技術のある特定の実施形態は、酸素濃縮器に関する。
図8は、酸素濃縮器の例示的な実施形態を提示する。
図8に関すると、濃縮器は、ガス取込み口102を備えるチャンバ100を備え、ガス取込み口102を通って、空気などのガスがチャンバ100に入り、媒体104に曝露される。媒体104は、ナフタレンおよび/またはアントラセン化合物などの多環式芳香族化合物、ならびに光増感剤を含む。媒体104は、多環式芳香族化合物および光増感剤の溶液などの液体媒体であってもよく、媒体104は、固体媒体であってもよく、一部の実施形態では、粉末、結晶性構造、ナノ構造体および/または顆粒などの多孔質固体媒体である。
【0075】
チャンバ100は、必要に応じて、ガス取込みを促進し、かつ/またはチャンバ内のガスを圧縮して、媒体104による酸素取込みをさらに促進する、ポンプ106を備えてもよい。
図8は、チャンバ100内に配置されたポンプ106を示しているが、当業者は、ポンプ106は、チャンバ100の外側に配置され、空気取込み口102に流体連結され得ることを理解する。一部の実施形態では、ポンプ106は、チャンバ100の内側に配置され、ガス取込み口102を通してチャンバにガスを引き込む。このような実施形態では、ガス取込み口102は、ガス透過性膜、多孔質材料、弁、または周囲空気などのガスへの開口部であり得る。
【0076】
チャンバ100は、1つまたはそれより多くの光源108をさらに備える。
図8に示される通り、光源108は、チャンバ100の1つまたはそれより多くの壁内に配置されてもよい。さらにまたは代替的に、光源108は、チャンバの壁にではなく、チャンバ100内に配置されてもよい。または、光源108は、チャンバ100の壁における窓、または太陽光および/もしくは外部人工光(図示せず)などの外部光源から光がチャンバに入るのを促進するチャンバ100の壁を構成する窓であってもよい。固体支持体、可視NIRの波長では珪藻土などは、三重項光増感剤を励起する光の波長に透過性であってもよい。そして/または、固体支持体の経路長を最小限にして、ポリマーなどと透明性を増大することができる。さらにまたは代替的に、固体支持体は、光を吸収し、ナノ粒子などと共に、一重項酸素光増感剤として働くことができる。
【0077】
チャンバ100はまた、加熱および/または冷却デバイスを備えてもよい。一部の実施形態では、加熱および/または冷却デバイスは、単一デバイス、例えば、
図8における要素110である。代替的に、チャンバ100は、チャンバを個別に加熱および冷却するため、個別のヒーターおよび冷却器を備えてもよい。好適な加熱および/または冷却デバイスには、以下に限定されないが、熱交換デバイスが含まれる。抵抗器、フィラメントまたは光熱性材料などの加熱デバイスを使用して、チャンバと直接または間接的に接触させて加熱することができる。冷却は、ファンもしくはポンプによる、または熱電冷却による、空気または液体の通過によって実現することができる。
【0078】
操作中、空気などのガスは、ガス取込み口102を通ってチャンバ100に入り、媒体に曝露される。光源108は、媒体による酸素取込みおよびエンドペルオキシド形成を促進するのに好適な波長の光をもたらす。残留ガスは、チャンバ100から出口112を通って排出され得る。代替的な実施形態では、残留ガスは、ガス取込み口102から放出され、ガス取込み口は、両方向の流れを可能にするよう構成されている。
【0079】
所望量の酸素が媒体104によって貯蔵されると、濃縮器は、酸素を放出するよう構成され得る。通常、光源108は、電源がオフにされる、除去される、もしくは遮断される、および/または加熱/冷却デバイス110は、媒体104を加熱するよう構成され、これによって、エンドペルオキシド分解および酸素放出を促進する。一部の実施形態では、ガス取込み口102は、ガスがチャンバ100に入るのを促進し続ける。放出酸素は、ガス、例えば空気と混合し、出口112を通ってチャンバ100を出る、酸素に富むガス混合物を形成する。一部の実施形態では、出口112は、それを必要とする対象に、酸素に富む空気を供給するための呼吸装置に接続される。
【0080】
一部の実施形態では、酸素濃縮器は、単一チャンバ100を備えるが、他の実施形態は、2つまたはそれより多くのチャンバ、例えば、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれより多くのチャンバを備える。ある特定の実施形態では、携帯型酸素濃縮器は、2つのチャンバを備える;第1のチャンバは、酸素を貯蔵するよう構成されている一方、第2のチャンバは、酸素を放出するよう構成されている。第2のチャンバが、貯蔵した酸素を実質的にすべて放出すると、および/または所望の酸素含有量を有する酸素に富むガスを供給することが不可能になると、第2のチャンバは、酸素を貯蔵するよう再構成される一方、第1のチャンバは、酸素を貯蔵するよう再構成される。2つまたはそれより多くのチャンバを備える一部の実施形態では、チャンバはまた、各チャンバにおいてポンプを備えてもよい。しかし、代替的な実施形態では、2つまたはそれより多くのチャンバを備えるシステムは、チャンバ毎に1個未満のポンプを備えてもよい。例えば、2つのチャンバを備えるシステムは、第1のチャンバもしくは第2のチャンバに個別にポンプ注入するよう構成されている、または両方のチャンバに同時にポンプ注入するよう構成されている単一ポンプを備えてもよい。
【0081】
開示されているシステムは、酸素消費の場合、太陽光またはLEDによって主に電力供給されるので、既存の酸素精製および/または貯蔵溶液が現在直面している課題の多くを克服する。酸素放出は、室温近くで開始するか、または25℃よりわずかに高い温度で増大させることができる。消費された酸素の貯蔵は、約16℃のより低い温度で、および/または密封容器中に溶液を保つことによって実現される。
【0082】
本明細書に記載されているシステムの利用性は、酸素貯蔵および放出のサイクルを繰り返すその寿命によって決まる。酸素雰囲気下、4サイクルの照射後に、各サイクルの照射からの圧力低下速度の緩慢化によって示される、酸化速度の明白な変化が見られた(
図9)。これにもかかわらず、類似した酸素放出速度により、1,4-DMNが安定であることが示された。そうでない場合、不可逆的な酸化が起こっていた場合、酸素の放出もまた、緩慢化され得る。特定の理論に拘泥することなく、結果は、ローズベンガルの光退色が発生しており、これにより、
1O
2の生成が少なくなり、したがって、酸化速度が変化したことを示唆し得る。しかし、これは、メチレンブルー、エオシンB、Ru(bpy)
3、メチルグリーン、ルブレン、フラーレン(アルキル、アリール、アルコキシ置換または無置換C
20~94)、フルオレン(例えば、9,9-置換または2,7-置換フルオレンを含む)、ナノ粒子(例えば、CdTe、ZnSe、SiNP、CNP、AuNP、BiNP、またはシリカ、タンパク質もしくはポリマーに結合している/もしくはこれらによってカプセル封入されているナノ粒子を形成するカプセル封入された低分子三重項光増感剤)、またはそれらの組合せなどの代替的な三重項光増感剤を使用することによって対処することができる。
VI.例示的な実施形態
【0083】
以下の番号付けした段落は、開示されている技術の例示的な実施形態を示す。
【0084】
段落1.
多環式芳香族化合物および光増感剤を含む第1の混合物を第1の温度で酸素ガスの第1の部分および光に曝露して、エンドペルオキシドを含む第2の混合物を形成するステップであって、前記第1の温度が、前記エンドペルオキシドが分解するのを実質的に阻止するよう選択される、ステップと、
前記第2の混合物の温度を前記第1の温度よりも高い第2の温度に昇温させ、かつ/または照射を停止して、前記エンドペルオキシドの分解を促進して、再生成した多環式芳香族化合物を形成し、酸素を放出するステップと、
前記放出された酸素を空気ストリームと混合して、酸素に富む空気ストリームを形成するステップと
を含む方法。
【0085】
段落2.前記第1の混合物を酸素ガスに曝露するステップが、前記第1の混合物を周囲空気に曝露するステップを含む、段落1の方法。
【0086】
段落3.前記方法が、前記酸素に富む空気ストリームを、それを必要とする患者に供給するステップをさらに含む、段落1または段落2の方法。
【0087】
段落4.前記第2の混合物の前記温度を前記第2の温度に昇温させる前の選択された期間にわたって、前記第1の温度またはそれ未満に前記第2の混合物を維持するステップをさらに含む、段落1~3のいずれか1つの方法。
【0088】
段落5.前記再生成した多環式芳香族化合物および前記光増感剤を酸素ガスに第2の部分に曝露して、前記エンドペルオキシドの少なくとも一部を再形成するステップをさらに含む、段落1~4のいずれか1つの方法。
【0089】
段落6.
a)第1の多環式芳香族化合物および第1の光増感剤を含む第1の混合物を第1の温度で酸素ガスの第1の部分および第1の光源からの光に曝露して、第1のエンドペルオキシドを含む第2の混合物を形成するステップであって、前記第1の温度が、前記第1のエンドペルオキシドの分解を実質的に阻止するよう選択される、ステップと、
b)前記第2の混合物の温度を前記第1のエンドペルオキシドを分解するのに好適な前記第1の温度よりも高い第2の温度に昇温させ、これによって、前記第1の多環式芳香族化合物の少なくとも一部を再生成し、第1の空気ストリームと混合した酸素ガスの第2の部分を形成して、第1の酸素に富む空気ストリームを形成するステップと、
c)第2の多環式芳香族化合物および第2の光増感剤を含む第3の混合物を第3の温度で酸素ガスの第3の部分および第2の光源からの光に曝露して、第2のエンドペルオキシドを含む第4の混合物を形成するステップであって、前記第3の温度が、前記第2のエンドペルオキシドの分解を実質的に阻止するよう選択される、ステップと、
d)前記第1のエンドペルオキシドが実質的に分解すると、前記第3の混合物の温度を前記第3の温度よりも高く、前記第2のエンドペルオキシドを分解するよう選択された第4の温度に昇温させ、これによって、前記第2の多環式芳香族化合物の少なくとも一部を再生成し、第2の空気ストリームと混合した酸素ガスの第4の部分を形成して、第2の酸素に富む空気ストリームを形成するステップと、
e)前記第1の多環式芳香族化合物および前記第1の光増感剤を酸素ガスの第5の部分および前記第1の光源からの光に曝露して、前記第1のエンドペルオキシドの少なくとも一部を再形成するステップと
を含む方法。
【0090】
段落7.ステップbがステップcと同時に行われる、段落6の方法。
【0091】
段落8.
多環式芳香族化合物、光増感剤および酸素ガスを含む第1の混合物を、第1の体積を有する密閉空間中で光に曝露して、前記多環式芳香族化合物と前記酸素ガスとの間の反応によって、エンドペルオキシドを形成し、これによって、前記密閉空間の体積を前記第1の体積よりも小さい第2の体積に変化させるステップと、
前記光を除去して、前記多環式芳香族化合物を再生成し、前記密閉空間中に前記酸素ガスの少なくとも一部を放出して、これによって、前記密閉空間の前記体積を前記第1の体積と実質的に同じである第3の体積に変化させるステップと
を含む方法。
【0092】
段落9.前記密閉空間の前記体積の変化によりピストンが動く、段落8の方法。
【0093】
段落10.
多環式芳香族化合物、光増感剤および酸素ガスを含む第1の混合物を、第1の圧力を有する密閉空間中で光に曝露して、前記多環式芳香族化合物と前記酸素ガスとの間の反応によって、エンドペルオキシドを形成し、これによって、前記密閉空間の圧力を前記第1の圧力よりも小さい第2の圧力に変化させるステップと、
前記光を除去して、前記多環式芳香族化合物を再生成し、前記密閉空間中に前記酸素ガスの少なくとも一部を放出して、これによって、前記密閉空間の前記圧力を前記第1の圧力と実質的に同じである第3の圧力に変化させるステップと
を含む方法。
【0094】
段落11.前記密閉空間の前記圧力の変化により仕事が生じる、段落10の方法。
【0095】
段落12.前記再生成した多環式芳香族化合物を光に曝露して、前記エンドペルオキシドの少なくとも一部を再形成するステップと、次に、前記光源を除去して、前記多環式芳香族化合物を再生成するステップとをさらに含む、段落8~11のいずれか1つの方法。
【0096】
段落13.前記第1の混合物を前記光に曝露するステップが、第1の温度で行われ、前記光を除去するステップが、前記温度を前記第1の温度よりも高い第2の温度に昇温させるステップをさらに含む、段落8~12のいずれか1つの方法。
【0097】
段落14.前記多環式芳香族化合物が、ナフタレン化合物またはアントラセン化合物である、段落1~13のいずれか1つの方法。
【0098】
段落15.前記多環式芳香族化合物が式I
【化12】
(式中、
R
1、R
2およびR
3はそれぞれ、独立して、H、OH、脂肪族、アリール、アルコキシ、-O-アシル、-O-Si(アルキル)
3、-O-アミノ酸または-O-炭水化物であり、
nは0~6であり、
「---」は、存在していても、存在していなくてもよい、結合を表す)
を有する、段落14の方法。
【0099】
段落16.前記化合物が
【化13】
から選択される式を有する、段落15の方法。
【0100】
段落17.n=0である、段落15または段落16の方法。
【0101】
段落18.R1およびR2の少なくとも1つがHではない、段落15~17のいずれか1つの方法。
【0102】
段落19.R1およびR2がどちらもアルキルである、段落15~18のいずれか1つの方法。
【0103】
段落20.R1およびR2が同じであり、Hではない、段落15~19のいずれか1つの方法。
【0104】
段落21.前記多環式芳香族化合物が、1,4-ジメチルナフタレンである、段落15~19のいずれか1つの方法。
【0105】
段落22.前記第1の温度が、-78℃~25℃である、段落1~7および13~21のいずれか1つの方法。
【0106】
段落23.前記第1の温度が、0℃~20℃である、段落22の方法。
【0107】
段落24.前記第2の温度が、-40℃~100℃である、段落1~7および13~23のいずれか1つの方法。
【0108】
段落25.前記第2の温度が、15℃~25℃である、段落24の方法。
【0109】
段落26.前記光増感剤が、ローズベンガル、メチレンブルー、エオシンB、Ru(bpy)3、メチルグリーン、ルブレン、フルオレン、フラーレン、ナノ粒子またはそれらの組合せである、段落1~25のいずれか1つの方法。
【0110】
段落27.前記フラーレンが、アルキル、アリール、アルコキシまたはそれらの組合せにより必要に応じて置換されているC20~94フラーレンであり、
前記フルオレンが、9,9-置換フルオレンまたは2,7-置換フルオレンであり、
前記ナノ粒子が、CdTe、ZnSe、SiNP、CNP、AuNP、もしくはBiNPナノ粒子であるか、三重項光増感剤を含むシリカ、タンパク質もしくはポリマーナノ粒子、またはそれらの組合せである、
段落26の方法。
【0111】
段落28.前記光増感剤がローズベンガルである、段落26の方法。
【0112】
段落29.前記光が、380nm~1000nmの波長を有する光を含む、段落1~28のいずれか1つの方法。
【0113】
段落30.前記光が可視光である、段落29の方法。
【0114】
段落31.前記可視光が、380nm~740nmの波長を有する、段落30の方法。
【0115】
段落32.前記可視光が、530nm~575nmの波長を有する光を含む、段落31の方法。
【0116】
段落33.前記光が自然光を含む、段落1~21のいずれか1つの方法。
【0117】
段落34.前記光が太陽光である、段落33の方法。
【0118】
段落35.前記光がLED光源からの光を含む、段落1~33のいずれか1つの方法。
【0119】
段落36.前記第1の混合物が溶液であり、溶媒をさらに含む、段落1~35のいずれか1つの方法。
【0120】
段落37.前記溶媒が、アセトニトリル、エタノール、メタノール、ジクロロメタン、ヘキサン、水、エーテル、ジメチルホルムアミド、四塩化炭素、クロロホルム、プロピレンカーボネート、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラヒドロフランまたはそれらの組合せである、段落36の方法。
【0121】
段落38.前記溶媒がアセトニトリルである、段落36の方法。
【0122】
段落39.前記第1の混合物が固体である、段落1~38のいずれか1つの方法。
【0123】
段落40.前記固体が、ゼオライト、珪藻土、ヒドロゲル、ポリマー、金属-有機フレームワークモチーフまたはそれらの組合せをさらに含む、段落39の方法。
【0124】
段落41.前記ポリマーが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ペプチド、ポリアクリル酸またはそれらの組合せを含む、段落40の方法。
【0125】
段落42.前記ポリマーが、5kDa~500kDaの分子量を有する、段落41の方法。
【0126】
段落43.
第1の多環式芳香族化合物および第1の光増感剤を含む第1の混合物、第1のガス入口、第1のガス出口、第1のポンプおよび第1の光源を備える第1のチャンバと、
第1の多環式芳香族化合物および第2の光増感剤の第2の混合物、第2のガス入口、第2のガス出口、第2のポンプおよび第2の光源を備える第2のチャンバと、
前記第1のガス入口と第2のガス入口との間で空気ストリームを切り替えるよう構成されている制御装置と
を備えるシステム。
【0127】
段落44.温度制御装置をさらに備える、段落43のシステム。
【0128】
段落45.前記温度制御装置が、ヒーター、冷却器またはそれらの組合せである、段落44のシステム。
【0129】
段落46.多環式芳香族化合物、光増感剤、および酸素を含むガスを含む混合物を含む、体積が変動し得る密閉空間
を備えるシステム。
【0130】
段落47.多環式芳香族化合物、光増感剤、および酸素を含むガスを含む混合物を含む、圧力が変動し得る密閉空間
を備えるシステム。
【0131】
段落48.光源をさらに備える、段落46または段落47のシステム。
【0132】
本開示の原理を適用することができる、多くの可能な実施形態に鑑みると、示される実施形態は、本技術の好ましい例に過ぎないことを認識すべきであり、本発明の範囲を限定するものと捉えるべきではない。より正確に言えば、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定義される。したがって、本発明者らは、本発明者らの発明として、これらの特許請求の範囲および趣旨に収まるすべてを特許請求している。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
多環式芳香族化合物および光増感剤を含む第1の混合物を酸素ガスおよび光に曝露して、エンドペルオキシドを含む第2の混合物を形成するステップと、
前記第2の混合物の温度を変化させ、かつ/または前記第2の混合物の前記光による照射を停止して、前記多環式芳香族化合物の少なくとも一部を再生成し、前記酸素ガスの少なくとも一部を放出するステップと
を含む方法。
(項目2)
多環式芳香族化合物および光増感剤を含む第1の混合物を第1の温度で酸素ガスの第1の部分および光に曝露して、エンドペルオキシドを含む第2の混合物を形成するステップであって、前記第1の温度が、前記エンドペルオキシドが分解するのを実質的に阻止するよう選択される、ステップと、
前記第2の混合物の温度を前記第1の温度よりも高い第2の温度に昇温させ、かつ/または照射を停止して、前記エンドペルオキシドの分解を促進して、再生成した多環式芳香族化合物を形成し、酸素を放出するステップと、
前記放出された酸素を空気ストリームと混合して、酸素に富む空気ストリームを形成するステップと
を含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記第1の混合物を酸素ガスに曝露するステップが、前記第1の混合物を周囲空気に曝露するステップを含む、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記方法が、前記酸素に富む空気ストリームを、それを必要とする患者に供給するステップをさらに含む、項目2に記載の方法。
(項目5)
前記第2の混合物の前記温度を前記第2の温度に昇温させる前の選択された期間にわたって、前記第1の温度またはそれ未満に前記第2の混合物を維持するステップをさらに含む、項目2に記載の方法。
(項目6)
前記再生成した多環式芳香族化合物および前記光増感剤を酸素ガスに第2の部分に曝露して、前記エンドペルオキシドの少なくとも一部を再形成するステップをさらに含む、項目2に記載の方法。
(項目7)
a)第1の多環式芳香族化合物および第1の光増感剤を含む第1の混合物を第1の温度で酸素ガスの第1の部分および第1の光源からの光に曝露して、第1のエンドペルオキシドを含む第2の混合物を形成するステップであって、前記第1の温度が、前記第1のエンドペルオキシドの分解を実質的に阻止するよう選択される、ステップと、
b)前記第2の混合物の温度を前記第1のエンドペルオキシドを分解するのに好適な前記第1の温度よりも高い第2の温度に昇温させ、これによって、前記第1の多環式芳香族化合物の少なくとも一部を再生成し、第1の空気ストリームと混合した酸素ガスの第2の部分を形成して、第1の酸素に富む空気ストリームを形成するステップと、
c)第2の多環式芳香族化合物および第2の光増感剤を含む第3の混合物を第3の温度で酸素ガスの第3の部分および第2の光源からの光に曝露して、第2のエンドペルオキシドを含む第4の混合物を形成するステップであって、前記第3の温度が、前記第2のエンドペルオキシドの分解を実質的に阻止するよう選択される、ステップと、
d)前記第1のエンドペルオキシドが実質的に分解すると、前記第3の混合物の温度を前記第3の温度よりも高く、前記第2のエンドペルオキシドを分解するよう選択された第4の温度に昇温させ、これによって、前記第2の多環式芳香族化合物の少なくとも一部を再生成し、第2の空気ストリームと混合した酸素ガスの第4の部分を形成して、第2の酸素に富む空気ストリームを形成するステップと、
e)前記第1の多環式芳香族化合物および前記第1の光増感剤を酸素ガスの第5の部分および前記第1の光源からの光に曝露して、前記第1のエンドペルオキシドの少なくとも一部を再形成するステップと
を含む、項目1に記載の方法。
(項目8)
ステップbがステップcと同時に行われる、項目7に記載の方法。
(項目9)
多環式芳香族化合物、光増感剤および酸素ガスを含む第1の混合物を、第1の体積を有する密閉空間中で光に曝露して、前記多環式芳香族化合物と前記酸素ガスとの間の反応によって、エンドペルオキシドを形成し、これによって、前記密閉空間の体積を前記第1の体積よりも小さい第2の体積に変化させるステップと、
前記光による照射を停止して、前記多環式芳香族化合物を再生成し、前記密閉空間中に前記酸素ガスの少なくとも一部を放出して、これによって、前記密閉空間の前記体積を、前記第1の体積と実質的に同じである第3の体積に変化させるステップと
を含む、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記密閉空間の前記体積の変化によりピストンが動く、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記再生成した多環式芳香族化合物を光に曝露して、前記エンドペルオキシドの少なくとも一部を再形成するステップと、次に、前記光源を除去して、前記多環式芳香族化合物を再生成するステップとをさらに含む、項目9に記載の方法。
(項目12)
前記第1の混合物を前記光に曝露するステップが、第1の温度で行われ、前記光を除去するステップが、前記温度を前記第1の温度よりも高い第2の温度に昇温させるステップをさらに含む、項目9に記載の方法。
(項目13)
多環式芳香族化合物、光増感剤および酸素ガスを含む第1の混合物を、第1の圧力を有する密閉空間中で光に曝露して、前記多環式芳香族化合物と前記酸素ガスとの間の反応によって、エンドペルオキシドを形成し、これによって、前記密閉空間の圧力を前記第1の圧力よりも小さい第2の圧力に変化させるステップと、
前記光による照射を停止して、前記多環式芳香族化合物を再生成し、前記密閉空間中に前記酸素ガスの少なくとも一部を放出して、これによって、前記密閉空間の前記圧力を、前記第1の圧力と実質的に同じである第3の圧力に変化させるステップと
を含む、項目1に記載の方法。
(項目14)
前記密閉空間の前記圧力の変化により仕事が生じる、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記再生成した多環式芳香族化合物を光に曝露して、前記エンドペルオキシドの少なくとも一部を再形成するステップと、次に、前記光源を除去して、前記多環式芳香族化合物を再生成するステップとをさらに含む、項目13に記載の方法。
(項目16)
前記第1の混合物を前記光に曝露するステップが、第1の温度で行われ、前記光を除去するステップが、前記温度を前記第1の温度よりも高い第2の温度に昇温させるステップをさらに含む、項目13に記載の方法。
(項目17)
前記多環式芳香族化合物が、ナフタレン化合物またはアントラセン化合物である、項目1~16のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記多環式芳香族化合物が式I
【化14】
(式中、
R
1、R
2およびR
3はそれぞれ、独立して、H、OH、脂肪族、アリール、アルコキシ、-O-アシル、-O-Si(アルキル)
3、-O-アミノ酸または-O-炭水化物であり、
nは0~6であり、
「---」は、存在していても、存在していなくてもよい、結合を表す)
を有する、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記化合物が
【化15】
から選択される式を有する、項目18に記載の方法。
(項目20)
n=0である、項目18に記載の方法。
(項目21)
R
1およびR
2の少なくとも1つがHではない、項目18に記載の方法。
(項目22)
R
1およびR
2がどちらもアルキルである、項目21に記載の方法。
(項目23)
R
1およびR
2が同じであり、Hではない、項目21に記載の方法。
(項目24)
前記多環式芳香族化合物が、1,4-ジメチルナフタレンである、項目17に記載の方法。
(項目25)
前記第1の温度が、-78℃~25℃である、項目17に記載の方法。
(項目26)
前記第1の温度が、0℃~20℃である、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記第2の温度が、-40℃~100℃である、項目17に記載の方法。
(項目28)
前記第2の温度が、15℃~25℃である、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記光増感剤が、ローズベンガル、メチレンブルー、エオシンB、Ru(bpy)
3、メチルグリーン、ルブレン、フルオレン、フラーレン、ナノ粒子またはそれらの組合せである、項目1~16のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
前記フラーレンが、アルキル、アリール、アルコキシまたはそれらの組合せにより必要に応じて置換されているC
20~94フラーレンであり、
前記フルオレンが、9,9-置換フルオレンまたは2,7-置換フルオレンであり、
前記ナノ粒子が、CdTe、ZnSe、SiNP、CNP、AuNP、もしくはBiNPナノ粒子であるか、三重項光増感剤を含むシリカ、タンパク質もしくはポリマーナノ粒子、またはそれらの組合せである、
項目29に記載の方法。
(項目31)
前記光増感剤がローズベンガルである、項目29に記載の方法。
(項目32)
前記光が、380nm~1000nmの波長を有する光を含む、項目1~16のいずれか一項に記載の方法。
(項目33)
前記光が可視光である、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記可視光が、380nm~740nmの波長を有する、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記可視光が、530nm~575nmの波長を有する光を含む、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記光が自然光を含む、項目1~16のいずれか一項に記載の方法。
(項目37)
前記光が太陽光である、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記光がLED光源からの光を含む、項目1~16のいずれか一項に記載の方法。
(項目39)
前記第1の混合物が溶液であり、溶媒をさらに含む、項目1~16のいずれか一項に記載の方法。
(項目40)
前記溶媒が、アセトニトリル、エタノール、メタノール、ジクロロメタン、ヘキサン、水、エーテル、ジメチルホルムアミド、四塩化炭素、クロロホルム、プロピレンカーボネート、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラヒドロフランまたはそれらの組合せである、項目39に記載の方法。
(項目41)
前記溶媒がアセトニトリルである、項目39に記載の方法。
(項目42)
前記第1の混合物が固体である、項目1~16のいずれか一項に記載の方法。
(項目43)
前記固体が、ゼオライト、珪藻土、ヒドロゲル、ポリマー、金属-有機フレームワークモチーフまたはそれらの組合せをさらに含む、項目42に記載の方法。
(項目44)
前記ポリマーが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ペプチド、ポリアクリル酸またはそれらの組合せを含む、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記ポリマーが、5kDa~500kDaの分子量を有する、項目44に記載の方法。
(項目46)
第1の多環式芳香族化合物および第1の光増感剤を含む第1の混合物、第1のガス入口、第1のガス出口、第1のポンプおよび第1の光源を備える第1のチャンバと、
第1の多環式芳香族化合物および第2の光増感剤の第2の混合物、第2のガス入口、第2のガス出口、第2のポンプおよび第2の光源を備える第2のチャンバと、
前記第1のガス入口と第2のガス入口との間で空気ストリームを切り替えるよう構成されている制御装置と
を備えるシステム。
(項目47)
温度制御装置をさらに備える、項目46に記載のシステム。
(項目48)
前記温度制御装置が、ヒーター、冷却器またはそれらの組合せである、項目47に記載のシステム。
(項目49)
多環式芳香族化合物、光増感剤、および酸素を含むガスを含む混合物を含む、体積が変動し得る密閉空間
を備えるシステム。
(項目50)
多環式芳香族化合物、光増感剤、および酸素を含むガスを含む混合物を含む、圧力が変動し得る密閉空間
を備えるシステム。
(項目51)
光源をさらに備える、項目49または項目50に記載のシステム。