(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】耐火性小売製品包装材料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
D21H 21/34 20060101AFI20250311BHJP
C09K 21/14 20060101ALI20250311BHJP
C09K 21/02 20060101ALI20250311BHJP
C09D 11/00 20140101ALI20250311BHJP
C09D 11/107 20140101ALI20250311BHJP
D21H 19/20 20060101ALI20250311BHJP
D21H 19/10 20060101ALI20250311BHJP
D21H 19/84 20060101ALI20250311BHJP
B32B 29/00 20060101ALI20250311BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20250311BHJP
【FI】
D21H21/34
C09K21/14
C09K21/02
C09D11/00
C09D11/107
D21H19/20 A
D21H19/10 Z
D21H19/84
B32B29/00
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2024520815
(86)(22)【出願日】2023-08-23
(86)【国際出願番号】 US2023030939
(87)【国際公開番号】W WO2024049688
(87)【国際公開日】2024-03-07
【審査請求日】2024-04-12
(32)【優先日】2022-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524126574
【氏名又は名称】パッケージング アンド クレーティング テクノロジーズ,リミテッド ライアビリティー カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】モート,ロジャー,エー.
(72)【発明者】
【氏名】ゲトル,ガイ,リース
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-066289(JP,A)
【文献】特開2021-021056(JP,A)
【文献】特開2000-094620(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0157741(US,A1)
【文献】特開平08-073212(JP,A)
【文献】特表2023-504171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H 21/34
C09K 21/14
C09K 21/02
C09D 11/00
C09D 11/107
D21H 19/20
D21H 19/10
D21H 19/84
B32B 29/00
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火紙を作成する方法であって
a. クラフト紙を提供することと、
b. 前記クラフト紙の各面に耐火
性インクを塗布することと、を含み、
前記耐火
性インクは、アクリル樹脂、分散剤、及び
ホウ酸およびホウ砂のうちの1つ以上を含む約2~約10重量%のホウ素化合物を含む、方法。
【請求項2】
前記クラフト紙の各面に前記耐火性インクを塗布するために、フレキソ印刷プロセスを使用することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前
記ホウ素化合物が、ホウ酸およびホウ
砂を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記分散剤が非イオン性界面活性剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記耐火性インクがタルクをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記耐火性インクが、モリブデン酸塩化合物をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記モリブデン酸塩化合物がモリブデン酸亜鉛である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記耐火性インクが、
前記ホウ素化合物の融点を超える温度まで加熱されると、前記クラフト紙を不燃性材料に変換する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記耐火性インクが、
前記ホウ素化合物の融点を超える温度まで加熱されると、前記クラフト紙と反応して、炭化したガラス状表面を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ホウ素化合物がホウ酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記耐火性インクが、約5~約30重量%の前記アクリル樹脂、約2~約20重量%の前記分散剤、及び約10~約20重量%のタルクを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
a. 3000 ft
2当たり40~60ポンドの坪量を有するクラフト紙と、
b. 前記クラフト紙の各側に耐火
性インクのコーティングと、を含む耐火紙であって、
前記耐火
性インクは、アクリル樹脂、分散剤、及び
ホウ酸およびホウ砂のうちの1つ以上を含む約2~約10重量%のホウ素化合物を含む、耐火紙。
【請求項13】
前
記ホウ素化合物が、ホウ酸およびホウ
砂を含む、請求項
12に記載の耐火紙。
【請求項14】
前記分散剤が、非イオン性界面活性剤を含む、請求項
12に記載の耐火紙。
【請求項15】
前記耐火
性インクが、タルクをさらに含む、請求項
12に記載の耐火紙。
【請求項16】
前記耐火性インクが、モリブデン酸塩化合物をさらに含む、請求項
12に記載の耐火紙。
【請求項17】
前記モリブデン酸塩化合物が、モリブデン酸亜鉛である、請求項
16に記載の耐火紙。
【請求項18】
前記耐火性インクが、
前記ホウ素化合物の融点を超える温度まで加熱されると、前記クラフト紙を不燃性材料に変換する、請求項
12に記載の耐
火紙。
【請求項19】
前記耐火性インクが、
前記ホウ素化合物の融点を超える温度まで加熱されると、前記クラフト紙と反応して、炭化したガラス状表面を形成する、請求項12に記載の耐
火紙。
【請求項20】
前記ホウ素化合物が、ホウ酸を含む、請求項12に記載の耐火紙。
【請求項21】
前記耐火性インクが、約5~約30重量%の前記アクリル樹脂、約2~約20重量%の前記分散剤、及び約10~約20重量%のタルクを含む、請求項12に記載の耐火紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、リチウムイオン電池に関連するものを含む、高強度かつ長時間の火災を封じ込めることができる耐火特性を有する小売製品包装用途のための紙スリーブ、パウチ、ラップなど、およびそのような紙製品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
技術の進歩にもかかわらず、リチウムイオン電池は潜在的に危険であり続けている。リチウムイオン電池は、可燃性電解質を含み、プラスチックの薄い片のみが電極を分離するため、独特の安全上の問題をもたらす。リチウムイオン電池は、損傷したり、誤って取り扱われたり、製造が不完全であったりすると、発火して爆発する可能性がある。具体的には、プラスチックセパレータが破損した場合、電極が接触し、短絡し、電解質を発火させる電荷を生成する可能性がある。1つのバッテリセルが点火されると、熱暴走が発生し、同じバッテリ内の他のセルおよび隣接するバッテリ内のセルを点火する可能性がある。
【0003】
それらの固有の危険性にもかかわらず、リチウムイオン電池の需要は、特に電気自動車および携帯機器での使用の需要の増加とともに、指数関数的に増加し続けている。例えば、リチウムイオン電池は、携帯電話、ラップトップコンピュータ、カメラ、及び充電式電動工具にますます使用されている。自動車、家庭用電化製品、およびあらゆる種類の装置が、電力用のリチウム系電池に依存するようになってきているので、リチウムイオン電池の安全性の問題はますます深刻になっている。
【0004】
Mortらの米国特許第11,028,535号(その主題は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、少なくとも1枚のクラフト紙の平面シートと1枚のクラフトのプリーツ状シートとを含む、輸送中にパッケージを保護するためのプリーツ状紙を開示している。防火インクは、プリーツ状および平面状の両方のクラフト紙の表面に適用される。防火インクは、インクが特定の温度に加熱されたときに脱水または分解によって水を放出する少なくとも1つの無機可融性塩を含む。Mortらは、このように、輸送されるパッケージを保護するためのプリーツ紙の固有の利点(環境に優しく、弾性的に剛性で、保護的で、可撓性で、成形可能である)を保持しながら、同時に、防火インクが加熱されるときに水分の放出によって火災を抑制する能力も提供するプリーツ包装紙を開示した。
【0005】
Mortらによって開示された発明は、輸送中にリチウムイオン電池および他の可燃性商品を保護することに成功していることが分かっているが、Mortらは、他のすべての時間におけるリチウムイオン電池の危険に対処し、緩和することができていない。例えば、リチウムイオン電池の流通チェーンは、電池が保管または陳列され、出荷のために梱包されない、相手先商標製品の製造業者、卸売業者、および小売業者を含む。したがって、Mortらによって開示された解決策、および輸送中にリチウム電池のパッケージを保護することにおけるその成功にもかかわらず、リチウムイオン電池および他の可燃性製品を、保管および小売陳列を含む他のすべてのときに火災および熱暴走から保護する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、リサイクル可能で、生分解性で、環境に優しく、リチウムイオン電池などの物品のための難燃性を有し、長期間にわたって高強度の火災を発生させることができる耐火紙を製造する方法を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、熱暴走を回避するために、長期間の強烈な火災に耐え、かつそれを封じ込めることができる耐火紙を製造する方法を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、火災を封じ込め、高強度の火災および熱暴走から製品を保護する、リチウムイオン電池などの製品のための、スリーブ、パウチ、ラップなどの小売製品包装ソリューションを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書で使用される「A」、「an」および「the」は、文脈が明らかに他を指示しない限り、単数および複数の指示対象の両方を指す。
【0010】
本明細書で使用される場合、用語「約」または「およそ」は、パラメータ、量、時間的期間などの測定可能な値を指し、特に列挙された値の±15%以下の変動、好ましくは±10%以下の変動、より好ましくは±5%以下の変動、さらにより好ましくは±1%以下の変動、さらにより好ましくは±0.1%以下の変動を、そのような変動が本明細書に記載される本発明において実施するのに適切である限り、含むことを意味する。さらに、修飾語「約」または「およそ」が指す値は、それ自体が本明細書に具体的に開示されていることも理解されるべきである。
【0011】
本明細書で使用される場合、「備える(comprises)」および/または「備えている(comprising)」という用語は、述べられた特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を指定するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらのグループの存在または追加を排除しない。
【0012】
本明細書で使用される場合、用語「から本質的になる」は、プリーツ紙が火災を抑制するかまたは火災に耐える能力に影響を及ぼすであろう任意の追加の成分を含有しない組成物を特定する。
【0013】
本発明の発明者らは、リチウムイオン電池に関連するものなどの、耐火性であり、高強度の火災を封じ込めることができる、環境に優しい小売紙包装ソリューションを製造する方法を開発した。一実施形態において、本発明者らは、クラフト紙などの包装材料が、特殊な難燃性インクでコーティングされた場合、長期間の高強度の火災を抑制し、封じ込めることができることを発見した。
【0014】
一実施形態において、本発明は、概して、
a. クラフト紙を提供することと、
b. 前記クラフト紙の各面に耐火インクを塗布することと、を含む、耐火紙を生成する方法であって、
前記耐火インクは、アクリル樹脂、分散剤、及び少なくとも1つのホウ素化合物を含む、方法に関する。
【0015】
一実施形態において、包装材料は、クラフト紙、段ボール、新聞用紙、または本発明の耐火性インクを吸収することができる他の包装紙を含む。
【0016】
第1のステップは、クラフト紙または他の包装材料のシートを提供することである。クラフト紙は、一般に、クラフトプロセスで製造される化学パルプから製造される紙または厚紙として定義される。クラフト紙は、一般に、強く、耐久性があり、耐引裂性があり、したがって、製品に追加の保護層を提供する。クラフト紙もまた、テクスチャー加工され、多孔性である。これにより、紙は、機能的及び装飾的な目的のためにコーティング及びインクを吸収することができる。例えば、クラフト紙は、本発明の耐火性インク、並びにブランド化目的に使用可能な高品質印刷プロセスで使用されるインクを吸収することが見出されている。1つの好ましいクラフト紙は紙であり、最も好ましくはライナー紙である。一実施形態では、クラフト紙は、25ポンド~75ポンド/3,000
ft2、より好ましくは40~60ポンド/3,000 ft2、最も好ましくは約50ポンド/3,000 ft2の範囲の坪量を有する。
【0017】
本発明の第2のステップは、耐火性インクの生成である。耐火インクは、アクリル樹脂、分散剤および少なくとも1つのホウ素化合物を含む水性塗料を含む。
【0018】
一実施形態において、アクリル樹脂は、アクリル酸、メタクリル酸、ならびにアクリレートモノマーおよび/またはメタクリレートモノマーのうちの1つ以上から誘導される熱可塑性材料である。アクリル樹脂は、水性コーティング中に、約5~約30重量%、より好ましくは10~20重量%の範囲の濃度で存在してもよい。
【0019】
分散剤は界面活性剤であってもよく、界面活性剤は非イオン性界面活性剤であってもよい。一実施形態において、非イオン性界面活性剤は、親水性ポリエチレンオキシド鎖および芳香族炭化水素親油性または疎水性基を有する。一実施形態では、非イオン性界面活性剤は、商品名Triton(登録商標)X-100でSigma
Aldrichから入手可能なポリエチレングリコールtert-オクチルフェニルエーテルを含む。分散剤は、水性コーティング中に、約1~約25重量%、より好ましくは2~約20重量%の範囲の濃度で存在し得る。
【0020】
水性コーティング組成物はまた、少なくとも1つのホウ素化合物を含み、これは、ホウ酸塩または他のホウ酸塩化合物であり得、これには、限定ではなく例として、水に溶解可能な、ナトリウムの水和ホウ酸塩(すなわち、ホウ砂)またはホウ酸が挙げられる。ホウ砂は、火炎伝播および燃焼を抑制するという有益な属性を有し、一方、ホウ酸は、赤熱、くすぶりおよび煙を抑制する。これらの相補的な性質のために、ホウ砂とホウ酸を一緒に使用することができる。さらに、ホウ素化合物は、リン、窒素、アンチモン、および硫黄系化合物などの有益な難燃性を有する他の化合物と組み合わせることができる。ホウ素化合物は、水性コーティング中に、約2~約10重量%、より好ましくは4~約8重量%の範囲の濃度で存在し得る。
【0021】
一実施形態において、水性組成物は、任意選択的に、しかし好ましくは、タルクまたはタルカム粉末を含む。タルクは、水和ケイ酸マグネシウムからなる粘土材料である。タルクは可燃性ではなく、耐火性水性コーティングの遮熱特性を改善することが見出されている。高温化合物を形成することによって、タルクは、耐火インクの断熱性および遮熱性を改善する。使用される場合、タルクは、約5~約30重量%、より好ましくは約10~約20重量%の範囲の濃度で水性組成物中に存在する。
【0022】
一実施形態において、水性組成物は、任意選択的に、しかし好ましくは、モリブデン酸カルシウムまたはモリブデン酸亜鉛などのモリブデン酸塩化合物を含み、これは、約5~約50重量%、より好ましくは約10~約40重量%の範囲の濃度で組成物中に存在し得る。モリブデン酸塩化合物は、高い融点を有し、炭形成を促進し、煙を抑制するために組成物中で使用することができる。
【0023】
水性組成物は、シリカ、顔料、および他の不活性充填剤材料などの不活性成分を含むが、これらに限定されない追加の材料を含んでもよい。
【0024】
一実施形態において、水性組成物は、アクリル樹脂、分散剤(この分散剤は、非イオン性界面活性剤を含む)、少なくとも1つのホウ素化合物、タルク、および少なくとも1つのモリブデン酸塩化合物から本質的になる。
【0025】
一実施形態において、水性組成物は、アクリル樹脂、分散剤、少なくとも1つのホウ素化合物、タルク、および少なくとも1つのモリブデン酸塩化合物からなる。
【0026】
耐火性インクは、加熱されると、他の可燃性クラフト紙または他の包装材料を、耐火性および不燃性材料に変換する。ホウ素化合物は比較的低い融点を有し、融点を超える温度に加熱されると、クラフト紙と化学的に反応して炭化したガラス状構造を形成する。この炭化したガラス状構造は、他の可燃性クラフト紙を耐火性および不燃性にする。炭化したガラス状構造はまた、可燃性揮発性物質の流れを阻害する。さらに、ホウ素化合物はクラフト紙に浸透し、それによってクラフト紙の厚さ全体(すなわち、表面だけではない)を不燃性および耐火性にする。従って、耐火性インクで被覆されたクラフト紙は、火災のための可燃性燃料として使用することができず、その代わりに、火災を遮断し、封じ込め、遮蔽するための有効なバリアとなる。
【0027】
耐火性インクの性能は、その化学的構成だけでなく、塗布手段および塗布されるコーティングの品質にも依存する。
【0028】
一実施形態では、耐火インクは、フレキソ印刷プロセスによってクラフト紙または他の包装材料に塗布される。フレキソ印刷は、太くて非常に詳細な色の付いたグラフィックスを印刷するように設計されている。しかしながら、フレキソ印刷プロセスは、本発明の耐火性インクをクラフト紙に塗布するように変更することができる。
【0029】
典型的なフレキソ印刷版は、感光性印刷層を含む様々な層を含み、印刷層は、典型的には、アニロックスローラーからインクを受容し、印刷する隆起領域と、アニロックスローラーからインクを受容せず、印刷しない非隆起領域とを有する。しかしながら、本発明のフレキソ印刷版の印刷層は、隆起領域および非隆起領域を有さない。その代わりに、それは平面であり、アニロックスローラーは、本明細書に記載されるフレキソ印刷版を使用してクラフト紙に正確な量の耐火性インクを均一に適用するために使用される。適用されるインクの総量は、好ましくは約0.01~約0.002ポンド/ft2、より好ましくは約0.0010~約0.0015ポンド/ft2、より好ましくは約0.0014ポンド/ft2の範囲内である。一実施形態において、耐火性インクは、クラフト紙の各面上に1つ以上のコートで塗布され、より好ましくは、耐火性インクは、クラフト紙の各面上に2つのコートとして塗布されて、クラフト紙の各面に耐火性インクの総量を塗布する。これは、クラフト紙3,000 ft2当たり約1ポンドの乾燥コーティングをもたらす。
【0030】
その後、フレキソ印刷プロセスまたは他の印刷プロセスを使用して、任意選択であるが好ましくは、ブランド情報、ロゴ画像、または小売製品パッケージ用の他の画像などの画像を、コーティングされた耐火紙上に印刷する。このようにして、本発明の耐火紙は、機能的目的とブランド化目的の両方を果たす。
【0031】
開示された発明の機能的な利点および属性は、以下の実施例によって例示される。
【0032】
実施例1:本明細書に記載された耐火性インクでクラフト紙をコーティングし、次いで接合してリチウムイオン電池を取り囲む電池スリーブを形成する、開示された発明に従って電池スリーブを作製した。次いで、電池スリーブを3つのリチウムイオン電池の周囲に配置した。3つのリチウムイオン電池を、ガラス繊維テープで互いに密接に保持した。
【0033】
中央の電池を釘で刺し、炎にぶつけた。電池スリーブは、火を封じ込め、火が2つの隣接する電池に広がるのを防止した。温度プローブは、中央の電池が600℃に近い温度に達したことを示したが、本発明の耐火性紙スリーブは、2つの隣接する電池の温度を100℃に維持した。
【0034】
比較例2:実施例1で使用したものと同じタイプおよびサイズの3つのリチウムイオン電池を、ガラス繊維テープで互いに密接に保持した。本発明の紙スリーブを有する電池はなかった。中央の電池を釘で刺し、炎にぶつけた。この火災は、2つの隣接する電池が引火するほど強烈であった。温度プローブは、3つの電池全てが600℃に近い温度に達したことを示した。
【0035】
上記の実験は、本発明の紙スリーブがリチウム電池に関連する激しい火災を封じ込め、熱暴走を防止することができることを容易に実証する。いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、本発明の紙スリーブは、可燃性電池に関連する火災及び熱を封じ込める不燃性熱シールドを提供すると同時に、水素及びフッ化水素酸などの毒性ハロゲン酸ガスの形成を抑制することによって隣接する電池も保護すると考えられる。
【0036】
本発明の耐火紙は、高い強度および長い持続時間の火災を封じ込めることができる、改善された防火性を有する環境に優しい包装材料である。本発明の耐火紙は、特に、小売用包装、および車両、ドローンなどに電力を供給するために使用されるリチウム電池の保護に有用である。