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7648333硬化性液状シリコーン組成物、その硬化物、それを含む光学充填剤、およびその硬化物からなる層を含む表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】硬化性液状シリコーン組成物、その硬化物、それを含む光学充填剤、およびその硬化物からなる層を含む表示装置
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20250311BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20250311BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20250311BHJP
   H10H 20/854 20250101ALI20250311BHJP
   H10H 20/00 20250101ALI20250311BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
G02B1/04
H10H20/854
H10H20/00 L
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022502007
(86)(22)【出願日】2021-02-19
(86)【国際出願番号】 JP2021006286
(87)【国際公開番号】W WO2021167052
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2024-01-30
(31)【優先権主張番号】P 2020028127
(32)【優先日】2020-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】719000328
【氏名又は名称】ダウ・東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小川 琢哉
(72)【発明者】
【氏名】須藤 通孝
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-184574(JP,A)
【文献】特開2014-205823(JP,A)
【文献】特開2016-003311(JP,A)
【文献】特表2019-520438(JP,A)
【文献】特開2012-140617(JP,A)
【文献】特開2013-139547(JP,A)
【文献】国際公開第2018/159725(WO,A1)
【文献】特開2009-215420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
G02B 1/00- 3/14
H10H 20/00- 20/858
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記の(A1)成分および(A2)成分から選ばれる1種類または2種類以上の有機ケイ素化合物
(A1)ケイ素原子数が1~5であり、一分子中に炭素原子数2~12のアルケニル基を少なくとも2個有し、さらに、炭素数6~12の芳香族基および炭素数7~12のアラルキル基から選択される一価官能基を少なくとも1個有するオルガノシランまたはオルガノポリシロキサン、
(A2)ケイ素原子数が2~5であり、一分子中に炭素原子数2~12のアルケニル基を少なくとも2個有し、かつ、炭素数6~12の芳香族基および炭素数7~12のアラルキル基から選択される一価官能基を有さず、常圧下での沸点が180℃以上である、鎖状または分岐鎖状のオルガノポリシロキサン、
(B)下記式(1):
【化1】
(1)
(式中、R は炭素数2~12のアルケニル基、R およびR はそれぞれ独立に、非置換又はフッ素で置換された炭素数1~10の一価アルキル基であり、R はそれぞれ独立に、非置換又はフッ素で置換された炭素数6~12の芳香族基および炭素数7~12のアラルキル基から選択される一価官能基であり、R およびR はそれぞれ独立に、非置換又はフッ素で置換された炭素数1~10の一価アルキル基もしくは炭素数6~12の芳香族基および炭素数7~12のアラルキル基から選択される一価官能基であり、m、nは、0≦m<1,000、0≦n<500、3≦m+n<1,500の関係を満たす数であり、全てのR ~R の数の34モル%以上が炭素数6~12の芳香族基および炭素数7~12のアラルキル基から選択される一価官能基である)
で表される、分子鎖末端にアルケニル基を有する直鎖状ポリシロキサン、
(C)一分子中、ケイ素結合水素原子を少なくとも2個有する化合物{組成物中のアルケニル基の合計量1モルに対して、本成分中のケイ素結合水素原子が0.2~3モルとなる量}、および
(D)ヒドロシリル化反応用触媒
を含み、上記の(A)、(C)、(D)および(B)成分の合計量を100質量部としたとき、(B)成分の含有量が1~90質量部の範囲であり、硬化前の液状組成物全体の25℃、波長847nmにおける屈折率が1.47以上であり、かつ、E型粘度計を用いて25℃で測定した液状組成物全体の粘度が5~200mPa・sの範囲である硬化性液状シリコーン組成物。
【請求項2】
(A)成分が、ケイ素原子数が2~5の鎖状または分岐鎖状のオルガノポリシロキサンである、請求項1に記載の硬化性液状シリコーン組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の硬化性液状シリコーン組成物を硬化させてなる硬化物。
【請求項4】
25℃、波長847nmにおける屈折率が1.50以上である、請求項に記載の硬化物。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の硬化性液状シリコーン組成物を含む、光学充填剤。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の硬化性液状シリコーン組成物の硬化物からなる層を含む表示装置。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載の硬化性液状シリコーン組成物を、光源用基板と透明基板間に注入する工程、および、注入後の硬化性液状シリコーン組成物を加熱することにより硬化させる工程を有する、表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱処理によって硬化可能であり、特に、注入成形に好適に利用可能な低粘度を有し、かつ、高い屈折率を有する硬化物を与える硬化性液状シリコーン組成物、その硬化物およびその用途に関する。本発明の硬化性液状シリコーン組成物は、屈折率および透明性が高く、電子・電気デバイス、光学デバイスのための光透過層を形成する材料として適している。
【背景技術】
【0002】
白色および紫外LEDを光源とする電子・電気デバイス、光学デバイスが幅広く実用化されている。その周辺材料としては、高い透明性、信頼性が求められることから、シリコーン材料が活発に検討されている。光源を直接封止する液状封止材料としては、例えば特許文献1に開示されているような、高屈折率液状シリコーン組成物がすでに実用化されている。また、各種センサー、監視カメラ、赤外データ通信等の大きな市場を見据え、赤外LED光源およびそれを用いたデバイスも活発に開発されている。一方、これら従来のLEDに加え、その高いエネルギー効率を生かしたマイクロLED技術が急速に研究・開発され、様々な用途に応用され始めている。
【0003】
ここで、近年検討が進んでいるマイクロLED等は、その光源基板のサイズが非常に小さいため、周辺材料も小面積、かつ薄層が求められる場合が多い。この場合、光源基板と透明基板の間に封止層を形成する手法としては、両者の間隙に硬化性組成物を注入して硬化する、注入成形法が有望とされている。この加工法に適した材料として、迅速な硬化が可能で、硬化後に高い透明性を有する低粘度の液状シリコーン材料が求められている。さらに、界面反射を低減し、光取り出し効率を高めるために、高屈折率の材料が望まれている。
【0004】
しかしながら、従来公知の高屈折率液状シリコーン組成物は、組成物の全体粘度が高く、注入成型法に適用した場合、部材間の微小な間隙(以下、「小さなギャップ」と呼ぶことがある)に注入できなかったり、十分なギャップフィル性を実現できない場合がある。たとえば、上記の特許文献1に開示された硬化性液状シリコーン組成物は、25℃における組成物の全体粘度が3,000mPas以上と非常に高く、注入成形法に供することはできない。具体的には、このように高粘度の硬化性液状シリコーン組成物を光源基板と透明基板の間に注入して封止しようとしても、両者間の間隙を十分に埋めるように注入することが困難であるために、工程における欠陥および封止不良の原因となる場合があり、最終的な表示デバイスの生産効率および歩留まりの低下、品質低下および故障の原因となり、好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-008996号公報(特許5392805号公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、小さなギャップにも容易に注入可能な低粘度性を有し、室温保持または加熱処理によって速やかに硬化し、硬化後の屈折率が、可視領域のみならず赤外領域でも高く、特に赤外LED光源を用いたデバイス用材料として有用な、硬化性液状シリコーン組成物、その硬化物、およびその用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の硬化性液状シリコーン組成物は、
(A)下記の(A1)成分および(A2)成分から選ばれる1種類または2種類以上の有機ケイ素化合物
(A1)ケイ素原子数が1~5であり、一分子中に炭素原子数2~12のアルケニル基を少なくとも2個有し、さらに、炭素数6~12の芳香族基および炭素数7~12のアラルキル基から選択される一価官能基を少なくとも1個有するオルガノシランまたはオルガノポリシロキサン、
(A2)ケイ素原子数が2~5であり、一分子中に炭素原子数2~12のアルケニル基を少なくとも2個有し、かつ、炭素数6~12の芳香族基および炭素数7~12のアラルキル基から選択される一価官能基を有さず、常圧下での沸点が180℃以上である、鎖状または分岐鎖状のオルガノポリシロキサン、
(C)一分子中、ケイ素結合水素原子を少なくとも2個有する化合物{組成物中のアルケニル基の合計量1モルに対して、本成分中のケイ素結合水素原子が0.2~3モルとなる量}、および
(D)ヒドロシリル化反応用触媒を
を含み、硬化前の液状組成物全体の25℃、波長847nmにおける屈折率が1.47以上であり、かつ、E型粘度計を用いて25℃で測定した液状組成物全体の粘度が500mPa・s以下であることを特徴とする。ここで、E型粘度計を用いて25℃で測定した液状組成物全体の粘度は200mPa・s以下であることが好ましく、3~175mPa・sの範囲が特に好ましい。
【0008】
本発明の硬化物は、上記の硬化性液状シリコーン組成物を硬化させてなるものであることを特徴とする。
【0009】
本発明の光学充填剤は、上記の硬化性液状シリコーン組成物を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明の表示装置は、上記の硬化性液状シリコーン組成物の硬化物からなる層を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の硬化性液状シリコーン組成物は、表示装置、特に、赤外LED光源を用いた表示装置の製造に好適に利用することができる。すなわち、本発明の表示装置の製造方法は、上記の硬化性液状シリコーン組成物を、光源用基板と透明基板間に注入する工程、および、注入後の硬化性液状シリコーン組成物を加熱することにより硬化させる工程を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の硬化性液状シリコーン組成物は、小さなギャップにも容易に注入可能な低粘度性を有し、室温保持または加熱処理により速やかに硬化する。また、硬化後の屈折率は、可視領域のみならず、赤外領域においても高いという特徴があり、赤外LED光源を用いたデバイス用材料として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
はじめに、本発明の硬化性液状シリコーン組成物について詳細に説明する。
(A)成分は本組成物の特徴的な構成の一つであり、硬化性液状シリコーン組成物について、その硬化性を損なうことなく低粘度化させる成分であり、下記の(A1)成分および(A2)成分から選ばれる1種類または2種類以上の有機ケイ素化合物である。このような(A)成分は、揮発性が低く、本発明の組成物の硬化を阻害しないという特徴がある。
(A1)ケイ素原子数が1~5であり、一分子中に炭素原子数2~12のアルケニル基を少なくとも2個有し、さらに、炭素数6~12の芳香族基および炭素数7~12のアラルキル基から選択される一価官能基を少なくとも1個有するオルガノシランまたはオルガノポリシロキサン、
(A2)ケイ素原子数が2~5であり、一分子中に炭素原子数2~12のアルケニル基を少なくとも2個有し、かつ、炭素数6~12の芳香族基および炭素数7~12のアラルキル基から選択される一価官能基を有さず、常圧下での沸点が180℃以上である、鎖状または分岐鎖状のオルガノポリシロキサン
【0014】
(A)成分は、ケイ素原子数が5以下であるため、分子量が小さいシランまたはシロキサンオリゴマー(ポリシロキサンであって、シロキサン重合度が5以下のもの)であり、かつ、分子内に、硬化反応に関与する炭素原子数2~12のアルケニル基を少なくとも2個有するので、後述する(C)成分との間で架橋反応が進行する。一方、(A)成分の範囲からは、ビニル基等のアルケニル基を有しても、芳香族基もアラルキル基も有さず、かつ、環状構造を有するメチルシロキサンのように、屈折率を向上させず、かつ、硬化反応に悪影響を与えうる成分は除外されている。このような(A)成分は、比較的低分子量、低粘度の成分でありながら揮発性が低く、かつ、硬化反応を阻害しにくいという性質を有する。このため、(A)成分を含む本発明の組成物においては、優れた硬化反応性と、注入成型に適した組成物全体の粘度を低下させ、ギャップフィル性を著しく改善することができる。
【0015】
(A)成分は、分子内に炭素数6~12の芳香族基および炭素数7~12のアラルキル基から選択される一価官能基を有しても有しなくてもよいが、これらの芳香族基またはアラルキル基を有することで、後述する硬化前の液状シリコーン組成物およびその硬化物の屈折率を向上させることができるため、これらの官能基を含む成分を、(A)成分の少なくとも一部に用いることが好ましい。
【0016】
具体的には、(A)成分は、下記の(A1)成分および(A2)成分から選ばれる1種類または2種類以上の有機ケイ素化合物である。
(A1)ケイ素原子数が1~5であり、一分子中に炭素原子数2~12のアルケニル基を少なくとも2個有し、さらに、炭素数6~12の芳香族基および炭素数7~12のアラルキル基から選択される一価官能基を少なくとも1個有するオルガノシランまたはオルガノポリシロキサン、
(A2)ケイ素原子数が2~5であり、一分子中に炭素原子数2~12のアルケニル基を少なくとも2個有し、かつ、炭素数6~12の芳香族基および炭素数7~12のアラルキル基から選択される一価官能基を有さず、常圧下での沸点が180℃以上である、鎖状または分岐鎖状のオルガノポリシロキサン
【0017】
ここで、(A1)成分のケイ素原子数は1~5であり、(A2)成分のケイ素原子数は2~5であるが、好適には、(A1)成分または(A2)成分中のケイ素原子数は2~5の範囲であり、2、3、または4であってよく、かつ、好ましい。これにより、硬化性組成物の低粘度化への寄与を増大させることができる。
【0018】
(A)成分中のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基が例示され、経済性、反応性の点から、ビニル基、アリル基、5-ヘキセニル基、7-オクテニル基が好ましい。これは、(A1)、(A2)成分において共通である。
【0019】
前記の(A1)成分は、分子中に、前記のアルケニル基に加えて、炭素数6~12の芳香族基および炭素数7~12のアラルキル基から選択される一価官能基を少なくとも1個有するものであり、これらの官能基として、フェニル基、トリル基、キシリル基等の炭素数6~12のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等の炭素数7~12のアラルキル基が例示され、経済性の観点から、フェニル基およびフェネチル基が好ましい。
【0020】
一方、(A)成分中のケイ素原子に結合するその他の基(具体的には、前記のアルケニル基、炭素数6~12の芳香族基および炭素数7~12のアラルキル基から選択される一価官能基以外の基)としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数1~12のアルキル基;3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換の炭素数1~12のアルキル基が例示され、経済性、耐熱性の観点から、メチル基が好ましい。また、(A)成分中のケイ素原子には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基等のアルコキシ基や水酸基が少量結合していてもよい。これは、(A1)、(A2)成分においても共通である。
【0021】
具体的には、本発明における(A1)成分として、下記の化合物A1-1~A1-13が例示される。
A1-1:ジビニルジフェニルシラン
A1-2:1,3-ジビニル-1,3-ジメチル-1,3-ジフェニルジシロキサン
A1-3:1,5-ジビニル-3,3-ジフェニル-1,1,5,5-テトラメチルトリシロキサン
A1-4:1,5-ジビニル-1,5-ジフェニル-1,3,3,5-テトラメチルトリシロキサン
A1-5:1,5-ジフェニル-3,3-ジビニル-1,1,5,5-テトラメチルトリシロキサン
A1-6:1,5-ジフェネチル-3,3-ジビニル-1,1,5,5-テトラメチルトリシロキサン
A1-7:1,7-ジビニル-3,3,5,5-テトラフェニル-1,1,7,7-テトラメチルテトラシロキサン
A1-8:1,7-ジビニル-1,7-ジフェニル-1,3,3,5,5,7-ヘキサメチルテトラシロキサン
A1-9:1,7-ジビニル-3,3-ジフェニル-1,1,5,5,7,7-ヘキサメチルテトラシロキサン
A1-10:1,7-ジビニル-3,5-ジフェニル-1,1,3,5,7,7-ヘキサメチルテトラシロキサン
A1-11:1,3-ジビニル-5,7-ジフェニル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン
A1-12:1,5-ジビニル-3,7-ジフェニル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン
A1-13:フェニル-トリス(ジメチルビニルシロキシ)シラン
【0022】
具体的には、本発明における(A2)成分として、下記の化合物A2-1~A2-9が例示される。
A2-1:1,3-ジ(3-ブテニル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン
A2-2:1,3-ジ(5-ヘキセニル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン
A2-3:1,3-ジ(7-オクテニル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン
A2-4:1,5-ジビニル-1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルトリシロキサン
A2-5:1,5-ジ(3-ブテニル)-1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルトリシロキサン
A2-6:1,5-ジ(5-ヘキセニル)-1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルトリシロキサン
A2-7:1,5-ジ(7-オクテニル)-1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルトリシロキサン
A2-8:メチル-トリス(ジメチルビニルシロキシ)シラン
A2-9:テトラキス(ジメチルビニルシロキシ)シラン
【0023】
(A)成分の含有量は、本発明の硬化性液状シリコーン組成物について、E型粘度計を用いて25℃で測定した液状組成物全体の粘度が500mPa・s以下である限り制限はないが、当該粘度範囲内での設計のためには、上記の(A)成分、後述する(C)、(D)および(B)成分の合計量を100質量部としたとき、5~99質量部が適正であり、好ましい含有量は5~80質量部であり、より好ましい含有量は5~60質量部である。これは、(A)成分の含有量が上記範囲の下限以上であると、得られる硬化性組成物を低粘度化し易いからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、得られる硬化物の機械的特性が向上するからである。
【0024】
本発明の硬化性液状シリコーン組成物においては、(A)成分として、(A1)成分と(A2)成分のいずれか一方を使用することもできるし、両者を併用してもよい。ここで、硬化性液状シリコーン組成物およびその硬化物の屈折率を高める視点からは(A1)成分の使用が有利であり、一方、液状組成物の全体粘度を効率よく低粘度化するためには、(A2)成分の使用が有利である。このため、本発明の硬化性液状シリコーン組成物における所望の屈折率および粘度等の特性に応じ、(A1)成分または(A2)成分を各々単独で使用するか、両者の配合比率を適宜設計することが好ましい。
【0025】
なお、(A2)成分である、炭素数6~12の芳香族基および炭素数7~12のアラルキル基から選択される一価官能基を有しない鎖状または分岐鎖状のオルガノポリシロキサン(=シロキサンオリゴマー)のみを(A)成分として用いる場合、次に述べる(B)成分の使用が特に好ましい。これは、(A)成分の使用だけでは、硬化前の液状組成物全体の25℃、波長847nmにおける屈折率を1.47以上に設計することが困難になる場合があるからである。
【0026】
(B)成分は、本発明の硬化性液状シリコーン組成物の任意の構成であり、一分子中のケイ素原子数の平均が5より大きく、炭素数2~12のアルケニル基を少なくとも1個有し、ケイ素原子上の置換基の数の34モル%以上が炭素数6~12の芳香族基および炭素数7~12のアラルキル基から選択される一価官能基であるオルガノポリシロキサンである。このような(B)成分は、分子内に芳香族基またはアラルキル基を多く含むので、組成物全体およびその硬化物の屈折率を、効率よく向上させる。(B)成分は、また、分子内に少なくとも2個の炭素数2~12のアルケニル基を有することが好ましく、分子鎖両末端に炭素数2~12のアルケニル基を有することが特に好ましい。
【0027】
(B)成分中のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基が例示され、経済性、反応性の点から、ビニル基、アリル基、5-ヘキセニル基、7-オクテニル基が好ましい。また、(B)成分中のアルケニル基以外のケイ素原子に結合する基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数1~12のアルキル基;3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換の炭素数1~12のアルキル基が例示され、経済性、耐熱性の観点から、メチル基が好ましい。一方、炭素数6~12の芳香族基および炭素数7~12のアラルキル基から選択される一価官能基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基等の炭素数6~12のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等の炭素数7~12のアラルキル基が例示され、経済性の観点から、フェニル基およびフェネチル基が好ましい。(B)成分中のケイ素原子には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基等のアルコキシ基や水酸基が少量結合していてもよい。
【0028】
(B)成分の25℃における粘度に制限はないが、50~100,000mPa・sの範囲内であり、好ましくは、100~100,000mPa・sの範囲内、100~50,000mPa・sの範囲内、あるいは100~10,000mPa・sの範囲内である。これは、(B)成分の粘度が上記範囲の下限以上であると、得られる硬化物の機械的特性が向上するからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、得られる硬化性組成物を低粘度化し易いからである。
下記式(1)で表される直鎖状ポリシロキサンである。
【化1】
(1)
式中、Rは同じかまたは異なる炭素数2~12のアルケニル基(末端アルケニル基)であり、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基が例示され、経済性、反応性の点から、ビニル基、アリル基、5-ヘキセニル基、7-オクテニル基が好ましい。
およびRはそれぞれ独立に、非置換又はフッ素で置換された炭素数1~12の一価アルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基が例示され、経済性、耐熱性の観点から、メチル基が好ましい。
はそれぞれ独立に、非置換又はフッ素で置換された炭素数6~12の芳香族基および炭素数7~12のアラルキル基から選択される一価官能基であり、フェニル基、トリル基、キシリル基、ベンジル基、フェネチル基が例示され、経済性の観点からフェニル基、およびフェネチル基が好ましい。
およびRはそれぞれ独立に、非置換又はフッ素で置換された炭素数1~10の一価アルキル基もしくは炭素数6~12の芳香族基および炭素数7~12のアラルキル基から選択される一価官能基であり、各々、上に例示したのと同様の基が例示されるが、メチル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ベンジル基、フェネチル基が例示され、経済性の観点からメチル基、フェニル基およびフェネチル基から選ばれる基が好ましい。
但し、一分子中、ケイ素原子上の置換基、すなわち、全てのR~Rの数の34%以上が炭素数6~12の芳香族基および炭素数7~12のアラルキル基から選択される一価官能基である。
また、式中のmおよびnは、0≦m<1,000、0≦n<500、3≦m+n<1,500を満足させる数である。
【0029】
このような(B)成分としては、次のような一般式で表されるオルガノポリシロキサンの一種または二種以上の混合物が例示される。なお、式中、Me、Vi、Phは、それぞれ、メチル基、ビニル基、フェニル基を表し、a、bは、それぞれ25℃における粘度が50~100,000mPa・sの範囲内となる1以上の整数であることが好ましい。ここで、a+bの値は3以上であり、cは、25℃における粘度が50~100,000mPa・sの範囲内となることが好ましく、3以上の数である。
MeViSiO(MeSiO)(MePhSiO)SiMeVi
MeViSiO(MeSiO)(PhSiO)SiMeVi
MeViSiO(MePhSiO)(PhSiO)SiMeVi
MeViSiO(MePhSiO)SiMeVi
MeViSiO(Me(PhCHCH)SiO)SiMeVi
MeViSiO(PhSiO)SiMeVi
【0030】
(B)成分の配合量は、上記の(A)、後述する(C)、(D)および(B)成分の合計量を100質量部としたとき、(B)成分の含有量が1~90質量部の範囲となる量であり、1~80質量部となる範囲の量がより好ましい。
【0031】
(C)成分は本発明の硬化性液状シリコーン組成物の必須の構成であり、一分子中に少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンである。(C)成分中のケイ素結合水素原子以外のケイ素原子に結合する基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数1~12のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等の炭素数6~20のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等の炭素数7~20のアラルキル基;3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換の炭素数1~12のアルキル基が例示され、経済性、耐熱性の点から、メチル基、フェニル基が好ましい。さらに、(C)成分中のケイ素原子には、本発明の目的を損なわない範囲で、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基等のアルコキシ基や水酸基が少量結合していてもよい。なお、(C)成分は、(A)成分との親和性が優れることから、一分子中に少なくとも1個のアリール基を有するオルガノポリシロキサンが好ましい。
【0032】
(C)成分の25℃における粘度は限定されないが、好ましくは、1~10,000mPa・sの範囲内、1~1,000mPa・sの範囲内、あるいは1~500mPa・sの範囲内である。これは、(C)成分の粘度が上記範囲の下限以上であると、得られる硬化物の機械的特性が向上するからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、得られる組成物の透明性、および取扱作業性が向上するからである。
【0033】
(C)成分の分子構造は限定されず、例えば、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、環状、または三次元網状構造が挙げられる。(C)成分は、これらの分子構造を有する単独のオルガノポリシロキサン、あるいはこれらの分子構造を有する二種以上のオルガノポリシロキサンの混合物であってもよい。
【0034】
このような(C)成分としては、例えば、(C1)一般式:
SiO(R SiO)SiR
で表される直鎖状オルガノポリシロキサンおよび/または(C2)平均単位式:
(R SiO1/2)(R SiO2/2)(R8SiO3/2)(SiO4/2)
で表される分岐鎖状オルガノポリシロキサンが挙げられる。
【0035】
(C1)成分において、式中、Rは同じかまたは異なり、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基、もしくはハロゲン置換の炭素数1~12のアルキル基である。Rのアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基が例示される。また、Rのアリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基が例示される。また、Rのアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基が例示される。また、Rのハロゲン置換のアルキル基としては、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基が例示される。但し、一分子中の少なくとも2個のRは水素原子である。
【0036】
また、(C1)成分において、式中、kは0以上の整数であり、好ましくは、(C1)成分の25℃における粘度が1~10,000mPa・sの範囲内、1~1,000mPa・sの範囲内、あるいは1~500mPa・sの範囲内となるような整数である。
【0037】
このような(C1)成分としては、次のような一般式で表されるオルガノポリシロキサンの一種または二種以上の混合物が例示される。なお、式中、MeおよびPhは、それぞれメチル基およびフェニル基を表し、k、k’’は、それぞれ25℃における粘度が1~10,000mPa・sの範囲内となる1以上の整数であり、k’’’は、25℃における粘度が1~10,000mPa・sの範囲内となる2以上の整数である。
MeSiO(MeSiO)k’(MeHSiO)k’’’SiMe
MeSiO(MePhSiO)k’(MeHSiO)k’’’SiMe
MeSiO(PhSiO)k’(MeHSiO)k’’’SiMe
MeSiO(MeSiO)k’(PhSiO)k’’(MeHSiO)k’’’SiMe
HMeSiO(MeSiO)k’SiMe
HMeSiO(PhSiO)k’SiMe
HMeSiO(MeSiO)k’(PhSiO)k’’SiMe
【0038】
(C2)成分において、式中、Rは同じかまたは異なり、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基、もしくはハロゲン置換の炭素数1~12のアルキル基であり、前記と同様の基が例示される。但し、一分子中の少なくとも2個のRは水素原子である。
【0039】
また、(C2)成分において、式中、v、y、z、およびwは、それぞれ0~1の数であり、v,y,z,wの合計は1である。但し、y、z、およびwが同時に0になることはない。
【0040】
このような(C2)成分としては、次のような平均単位式で表されるオルガノポリシロキサンの一種または二種以上の混合物が例示される。なお、式中、MeおよびPhは、それぞれメチル基およびフェニル基を表し、v'、v’’、y’、z’、およびw’は、それぞれ1以下の数(但し、0を含まない)であり、但し、v'、v’’、y’、z’、およびw’の合計は1である。
(MeSiO1/2)v’(MeHSiO1/2)v’’(MeSiO2/2)y’(MeSiO3/2)z’
(MeSiO1/2)v’(MeHSiO1/2)v’’(MeSiO3/2)z’
(MeSiO1/2)v’(MeHSiO1/2)v’’(SiO4/2)w’
(MeHSiO1/2)v’’(MeSiO3/2)z’
(MeHSiO1/2)v’’(SiO4/2)w’
(MeSiO1/2)v’(MeHSiO1/2)v’’(MePhSiO2/2)y’(PhSiO3/2)z’
(MeSiO1/2)v’(MeHSiO1/2)v’’(PhSiO3/2)z’
(MeHSiO1/2)v’’(PhSiO3/2)z’
(MeHSiO1/2)v’’(MePhSiO2/2)y’(PhSiO3/2)z’
(MeHSiO1/2)v’’(PhSiO2/2)y’(PhSiO3/2)z’
【0041】
(C)成分は、上記の(C1)成分または(C2)成分を単独、あるいは混合して用いることができる。(C1)成分と(C2)成分を混合して用いることにより、得られる硬化物の機械的特性を向上させることができる。(C1)成分と(C2)成分を混合して用いる場合には、(C1)成分と(C2)成分の質量比が10:90~95:5の範囲内、30:70~95:5の範囲内、あるいは50:50~95:5の範囲内であることが好ましい。
【0042】
(C)成分の含有量は、組成物中のアルケニル基の合計量1モルに対して、本成分中のケイ素結合水素原子が0.2~3モルとなる量であり、より具体的には、(A)成分および任意で含まれる(B)成分中のアルケニル基(脂肪族不飽和炭素-炭素結合)の合計量1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.2~3モルの範囲内となる量であり、好ましくは、少なくとも0.3モル、少なくとも0.4モル、あるいは少なくとも0.5モルとなる量、または、多くとも2.5モル、多くとも2モル、あるいは多くとも1.5モルとなる量であり、これらの上限と下限の任意の範囲内となる量である。これは、(C)成分の含有量が上記範囲の下限以上であると、得られる組成物が十分に硬化するからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、得られる硬化物の機械的特性が向上するからである。
【0043】
(D)成分は、本組成物の硬化を促進するヒドロシリル化反応用触媒であり、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒が例示され、好ましくは、白金系触媒である。この白金系触媒としては、白金微粉末、白金黒、白金担持シリカ微粉末、白金担持活性炭、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体が例示される。
【0044】
(D)成分の含有量は、本組成物の硬化を促進する量であり、具体的には、本組成物に対して、この触媒中の白金原子が質量単位で0.1~1,000ppmの範囲内となる量である。これは、(D)成分の含有量が上記範囲の下限以上であると、得られる組成物の硬化が十分に進行するからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、得られる硬化物が着色し難くなるからである。
【0045】
本組成物には、硬化までの時間を制御するため、ヒドロシリル化反応遅延剤を含有してもよい。このヒドロシリル化反応遅延剤遅延剤としては、1-エチニルシクロヘキサン-1-オール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、2-フェニル-3-ブチン-2-オール等のアルキンアルコール;3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン等のエンイン化合物;1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン等のメチルアルケニルシロキサンオリゴマー;ジメチルビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)シラン、メチルビニルビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)シラン等のアルキンオキシシラン;メチルトリス(1-メチル-1-フェニル-プロピンオキシ)シラン、ジメチルビス(1-メチル-1-フェニル-プロピンオキシ)シラン、メチルトリス(1,1-ジメチル-プロピンオキシ)シラン、ジメチルビス(1,1-ジメチル-プロピンオキシ)シラン等のアルキンオキシシラン化合物;その他、ベンゾトリアゾールが例示される。
【0046】
このヒドロシリル化反応遅延剤の含有量は限定されず、本組成物に十分なポットライフを与えることから、(A)成分~(D)成分の合計100質量部に対して、0.0001~5質量部の範囲内、0.01~5質量部の範囲内、あるいは、0.01~3質量部の範囲内であることが好ましい。
【0047】
また、本組成物には、得られる硬化物の架橋密度を下げ、その結果、機械的特性あるいは粘着性を向上させるため、一分子中、脂肪族不飽和結合を1個有し、シロキサン結合を有さない有機化合物を含有してもよい。このような化合物としては、(A)成分~(D)成分に対して良好な相溶性を示し、かつ、保存安定性が良好であることから、沸点が、例えば、大気圧下で200℃以上である有機化合物であることが好ましい。具体的には、ドデセン、テトラデセン、ヘキサデセン、オクタデセン等の直鎖状脂肪族オレフィン類;4-フェニル-1-シクロヘキセン等の環状脂肪族オレフィン類;9-デセン-1-オール、オレイルアルコール、テルペン-4-オール等の不飽和アルコール類が例示される。
【0048】
これらの化合物の含有量は限定されないが、本組成物の硬化性が良好であり、また、得られる硬化物の機械的特性が良好であることから、硬化性組成物の合計100質量部に対して、0~10質量部の範囲内、あるいは0~5質量部の範囲内であることが好ましい。
【0049】
さらに本組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、式:RSiO3/2で表されるシロキサン単位および/または式:SiOで表されるシロキサン単位を含み、炭素数6~12の芳香族基および炭素数7~12のアラルキル基から選択される一価官能基を有する分岐状オルガノポリシロキサンを含有することができる。式中、Rは、炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、水酸基、または炭素数1~6のアルコキシ基である。このアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基が例示される。また、このアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基が例示される。また、このアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基が例示される。なお、式:RSiO3/2で表されるシロキサン単位がアルケニル基を有さない場合には、その他のシロキサン単位として、R10 SiO1/2で表されるシロキサン単位および/または式:R10 SiO2/2で表されるシロキサン単位を有することが好ましい。なお、式中、R10は、炭素数1~12のアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、水酸基、または炭素数1~6のアルコキシ基であり、前記と同様の基が例示される。但し、一分子中、少なくとも1個のR10は前記アルケニル基である。
【0050】
この分岐状オルガノポリシロキサンとしては、次のような平均単位式で表されるオルガノポリシロキサンの一種または二種以上の混合物が例示される。なお、式中、Me、Vi、Phは、それぞれメチル基、ビニル基、フェニル基を表し、i、i’、j、k、lはそれぞれ構成単位の比率を表す0~1の数(但し、0を含まない)であり、但し、i、i’、j、k、lの合計は1である。
(MeSiO1/2)(MeViSiO1/2)i’(PhSiO3/2)
(MeSiO1/2)(MeViSiO1/2)i’(PhSiO3/2)(SiO4/2)
(MeSiO1/2)(PhSiO3/2)
(MeViSiO1/2)(PhSiO3/2)
(MeViSiO1/2)(MeSiO2/2)(PhSiO3/2)
(MeViSiO1/2)(MeSiO2/2)(PhSiO3/2)(SiO4/2)
(MeViSiO1/2)(MePhSiO2/2)(MeSiO3/2)
(MeViSiO1/2)(MePhSiO2/2)(PhSiO3/2)
(MeSiO1/2)(MeViSiO2/2)(PhSiO3/2)
(MeSiO1/2)(MeViSiO2/2)(PhSiO3/2)(SiO4/2)
(MeSiO1/2)(MeSiO2/2)(PhSiO3/2)
(MeSiO1/2)(MeSiO2/2)(PhSiO3/2)(SiO4/2)
【0051】
分岐状オルガノポリシロキサンの含有量は限定されないが、硬化性組成物の合計100質量部に対して、0~20質量部の範囲内であり、好ましくは、0~10質量部の範囲内、あるいは0~5質量部の範囲内である。これは、分岐状オルガノポリシロキサンの含有量が、上記範囲の上限以上となると、得られる硬化性組成物の粘度が高くなるからである。
【0052】
その他の添加剤
上記成分に加えて、所望によりさらなる添加剤を本発明の組成物に添加してもよい。添加剤としては、以下に挙げるものを例示できるが、これらに限定されない。
【0053】
〔接着性付与剤〕
本発明の組成物には、組成物に接触している基材に対する接着性や密着性を向上させるために接着促進剤を添加することができる。本発明の硬化性組成物をコーティング剤、シーリング材などの、基材に対する接着性又は密着性が必要な用途に用いる場合には、本発明の硬化性組成物に接着性付与剤を添加することが好ましい。この接着促進剤としては、本発明の組成物の硬化反応を阻害しない限り、任意の公知の接着促進剤を用いることができる。
【0054】
本発明において用いることができる接着促進剤の例として、トリアルコキシシロキシ基(例えば、トリメトキシシロキシ基、トリエトキシシロキシ基)もしくはトリアルコキシシリルアルキル基(例えば、トリメトキシシリルエチル基、トリエトキシシリルエチル基)と、ヒドロシリル基もしくはアルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基)を有するオルガノシラン、またはケイ素原子数4~20程度の直鎖状構造、分岐状構造又は環状構造のオルガノシロキサンオリゴマー;トリアルコキシシロキシ基もしくはトリアルコキシシリルアルキル基とメタクリロキシアルキル基(例えば、3-メタクリロキシプロピル基)を有するオルガノシラン、またはケイ素原子数4~20程度の直鎖状構造、分岐状構造又は環状構造のオルガノシロキサンオリゴマー;トリアルコキシシロキシ基もしくはトリアルコキシシリルアルキル基とエポキシ基結合アルキル基(例えば、3-グリシドキシプロピル基、4-グリシドキシブチル基、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピル基)を有するオルガノシランまたはケイ素原子数4~20程度の直鎖状構造、分岐状構造又は環状構造のオルガノシロキサンオリゴマー;トリアルコキシシリル基(例えば、トリメトキシリル基、トリエトキシシリル基)を二個以上有する有機化合物;アミノアルキルトリアルコキシシランとエポキシ基結合アルキルトリアルコキシシランの反応物、エポキシ基含有エチルポリシリケートが挙げられ、具体的には、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ハイドロジェントリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,6-ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、1,3-ビス[2-(トリメトキシシリル)エチル]-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランと3-アミノプロピルトリエトキシシランの反応物、シラノール基封鎖メチルビニルシロキサンオリゴマーと3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランの縮合反応物、シラノール基封鎖メチルビニルシロキサンオリゴマーと3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランの縮合反応物、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートが挙げられる。
【0055】
本発明の硬化性組成物に添加する接着促進剤の量は特に限定されないが、硬化性組成物の硬化特性や硬化物の変色を促進しないことから、(A)、(C)および(D)成分の合計100質量部に対して、0~5質量部の範囲内、あるいは、0~2質量部の範囲内であることが好ましい。
【0056】
さらに、本組成物には、硬化物中に残存しても、その特性に影響を与えず、本組成物の粘度を低くするための成分を含有させても良い。その構造に制限はないが、(A)~(C)成分との混和性を考慮すると、炭素数6~12の芳香族基および炭素数7~12のアラルキル基から選択される一価官能基を分子中に少なくとも1個有する化合物が好ましい。具体的には、炭素数6~12の芳香族基および炭素数7~12のアラルキル基から選択される一価官能基を分子中に少なくとも1個有するジオルガノシロキサンオリゴマーが例示される。
【0057】
炭素数6~12の芳香族基および炭素数7~12のアラルキル基から選択される一価官能基としては、前記したものが挙げられ、フェニル基、フェネチル基が好ましい。この化合物は、分子中にヒドロシリル化反応性の官能基を有さない。このヒドロシリル化反応性の官能基としては、アルケニル基およびケイ素原子結合水素原子が例示される。この化合物中の上記一価官能基以外のケイ素原子に結合する基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数1~12のアルキル基;3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換の炭素数1~12のアルキル基が例示され、経済性、耐熱性の点から、メチル基が好ましい。
【0058】
このような化合物の具体的な分子構造は、例えば、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、環状、または三次元網状構造が挙げられ、本組成物を硬化して得られる硬化物に対する親和性が良好であること、粘度低下効果が大きいことから、環状であることが好ましい。このような化合物は、一般式:
【化2】
で表される。式中、Rは同じかまたは異なる、脂肪族不飽和結合を有さない炭素数1~12の一価炭化水素基であり、前記と同様のアルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン置換のアルキル基が例示される。但し、一分子中、少なくとも1個のRは素数6~12の芳香族基および炭素数7~12のアラルキル基から選択される一価官能基であり、特に、一分子中、全Rの5~60モル%が前記一価官能基であることが好ましい。また、式中、xは3~10の整数である。
【0059】
この化合物の25℃における粘度は、特に限定されないが、好ましくは、1~500mPa・sの範囲内、1~300mPa・sの範囲内、あるいは1~100mPa・sの範囲内である。これは、この化合物の粘度が上記範囲の下限以上であると、得られる硬化物の機械的特性を変化させないからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、得られる組成物の粘度を十分に低下させることができるからである。
【0060】
このような化合物の含有量は、硬化性組成物の合計100質量部に対して、0~25質量部の範囲内であり、好ましくは、その上限が20質量部、15質量部、あるいは10質量部である。
【0061】
〔その他の添加剤〕
本発明の組成物には、上述した接着性付与剤に加えて、あるいは接着性付与剤に代えて、所望によりその他の添加剤を添加してもよい。用いることができる添加剤としては、レベリング剤、上述した接着性付与剤として挙げたものに含まれないシランカップリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、重合禁止剤、フィラー(補強性フィラー、絶縁性フィラー、および熱伝導性フィラー等の機能性フィラー)などが挙げられる。必要に応じて、適切な添加剤を本発明の組成物に添加することができる。また、本発明の組成物には必要に応じて、特にポッティング剤又はシール材として用いる場合には、チキソ性付与剤を添加してもよい。
【0062】
本発明の硬化性組成物の屈折率は、硬化前の液状組成物全体の25℃、波長847nmにおける値で1.47以上である。この条件下における屈折率の値が1.48以上であることが好ましい。この特性により、本組成物を硬化することにより得られる硬化物の屈折率が十分高く、赤外LEDを光源とする各種デバイスにおいて、光学ガラスおよびその他の光透過層との間における界面反射を低減し、光取り出し効率を高めことができる。
【0063】
本組成物の粘度は、注入成形法への適用を可能にするため、E型粘度計を用いて25℃で測定した粘度値が500mPa・s以下である。好ましい粘度範囲は、前記測定条件下の値で、5~200mPa・s、より好ましい範囲は、5~100mPa・s、さらに好ましい範囲は、10~100mPa・sである。これは、本組成物の粘度が前記範囲の下限以上であると、得られる硬化物の機械的特性が良好であるからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、得られる組成物の注入成形性が良好であり、硬化物中に空気を巻き込み難くなるからである。
【0064】
本組成物は、(A)、(C)、および(D)成分、必要に応じて、その他任意の成分を、均一に混合することにより調製することができる。本組成物を調製する際に、各種攪拌機あるいは混練機を用いて、常温で混合することができ、必要に応じて、加熱下で混合してもよい。また、各成分の配合順序についても限定はなく、任意の順序で混合することができる。
また、本組成物は、全ての成分を同一の容器中に配合する一液型組成物とすることも出来るし、保存安定性を考慮し、使用時に混合する二液型組成物とすることも可能である。二液型組成物とする場合には、一方の組成物は(A)成分、(B)成分、(D)成分、およびその他の任意成分からなる混合物とし、他方の組成物は(A)成分、(B)成分、(C)成分、およびその他の任意成分からなる混合物とすることが一般的である。
【0065】
本組成物は、室温もしくは比較的低温(例えば、80℃以下)で硬化することができる。なお、本組成物の硬化反応は、(D)成分中の触媒金属の濃度や、前述のヒドロシリル化反応遅延剤の種類や含有量により所望の速度に調節することができる。
【0066】
本組成物を硬化させてなる硬化物は、高い屈折率を有し、硬化物の屈折率は、25℃、波長847nmにおける値で1.50以上であることが好ましい。この条件下における硬化物の屈折率の値が1.52以上であることが好ましく、1.54以上であることがより好ましい。この特性により、本組成物を硬化することにより得られる硬化物の屈折率が十分高く、赤外LEDを光源とする各種デバイスにおいて、光学ガラスおよびその他の光透過層との間における界面反射を低減し、光取り出し効率を高めことができる。
【0067】
本組成物は、各種の注入剤、ポッティング剤、封止剤、接着剤として有用であり、特に、赤外LEDを用いた各種デバイス、特に表示装置用光透過層形成用光学充填剤として有用である。その硬化物は、高温または高温・高湿下で着色が少なく、濁りを生じにくいことから、赤外LEDを用いた表示装置用光透過層として好適である。
【0068】
本組成物は、比較的低温で硬化が進行するため、耐熱性の乏しい基材のコーティングにも適用することができる。かかる基材の種類としては、ガラス、合成樹脂フィルム・シート・透明電極塗膜等透明基材であることが一般的である。また、本組成物の塗工方法としては、その低粘度特性を生かし、注入(インジェクション)成形が例示される。
【0069】
次に、本発明の硬化物について詳細に説明する。
本発明の硬化物は、上記の硬化性シリコーン組成物を硬化させてなることを特徴とする。本硬化物の形状は限定されず、例えば、シート状、フィルム状、テープ状、塊状が挙げられる。また、各種基材と一体となっていてもよい。
【0070】
本硬化物の形成方法としては、例えば、フィルム状基材、テープ状基材、またはシート状基材に本組成物を塗工した後、室温もしくは低温加熱により硬化させ、前記基材の表面に本硬化物からなる硬化皮膜を形成することができる。また、二種の基材間に本組成物を注入し、室温保持もしくは加熱処理により硬化させ、基材と一体化した硬化物とすることもできる。この硬化物の膜厚は限定されないが、好ましくは、1~3000μmであり、より好ましくは10~2000μmである。
【0071】
本発明の表示装置は、本発明の硬化性液状シリコーン組成物を用いて作製されたものであり、例えば、LCD(液晶ディスプレイ)、ECD(エレクトロクロミックディスプレイ)等の受光型表示装置、およびELD(電界発光ディスプレイ)等の発光型表示装置が上げられる。本発明の表示装置では、液晶・有機EL等の表示部と、タッチパネル、カバーレンズ等のディスプレイ形成部材との間、あるいはディスプレイ形成部材間を、本発明の硬化性液状シリコーン組成物の硬化物により充填することにより、界面反射を低減し、光取り出し効率を高めことができる。
【0072】
本発明の表示装置の典型的な製造法としては、本発明の硬化性液状シリコーン組成物の低粘度特性を生かし、注入成形法を挙げることができる。具体的には、赤外LED光源用基板と各種透明基板との間の狭い隙間に本組成物を注入し、加熱することにより硬化させ、表示装置を製造する方法が挙げられる。
【0073】
以下で実施例に基づいて本発明をさらに説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【実施例
【0074】
本発明の硬化性液状シリコーン組成物およびその硬化物を実施例により詳細に説明する。なお、式中、Me、Vi、Phは、それぞれメチル基、ビニル基、フェニル基を表す。また、実施例中の測定および評価は次のようにして行った。
【0075】
[硬化性液状シリコーン組成物および各成分の粘度]
トキメック株式会社製のE型粘度計VISCONIC EMDを使用して、硬化性液状シリコーン組成物および各成分の25℃における粘度(mPa・s)を測定した。
【0076】
[オルガノポリシロキサンの化学構造]
核磁気共鳴スペクトル分析により、オルガノポリシロキサンの化学構造を同定した。
【0077】
[硬化性液状シリコーン組成物の外観]
硬化性液状シリコーン組成物の外観を目視で観察し、次のように評価した。
A:透明
B:わずかな濁り
【0078】
[硬化物の透明性およびヘイズ]
硬化後の厚さが200ミクロンになるように、硬化性液状シリコーン組成物を二枚のガラス板の間に充填し(充填面積:40×40mm)、オーブン中で90℃にて1時間加熱した。2枚のガラス板の間で生成した硬化物シートの全光線透過率およびヘイズを日本電色工業株式会社製、SH7000ヘーズメーターによりJIS K7361-1に規定される方法に従い測定した。
【0079】
[硬化物の硬度]
直径25mm、深さ10mmのガラスカップに硬化性液状シリコーン組成物を投入し、オーブン中で90℃にて1時間加熱した。生成した硬化物の室温での針入度を、JIS K2207に準拠し、針入度試験機にて測定した。硬度が高いものについては、ASTM D 2240に準拠のA型デュロメータにて測定した。
【0080】
[硬化物の屈折率]
上記した硬度測定用に作製した硬化物を用い、波長847nmにおける屈折率をメトリコン製モデル2010/Mプリズムカプラーにて25℃で測定した。
【0081】
[実施例1~9、比較例1]
下記の成分を用いて、無溶剤型の硬化性液状シリコーン組成物を調製した。(A)~(E)成分を室温にて自転公転ミキサーを用い混合し、硬化性組成物とした。成分の混合比率(質量部)と硬化性組成物の物性および硬化物の特性を表1にまとめた。
【0082】
(A)成分として、次の化合物を用いた。
(A1)1,5-ジビニル-3,3-ジフェニル-1,1,5,5-テトラメチルトリシロキサン
(A2)フェニル-トリス(ジメチルビニルシロキシ)シラン
(A3)1,3-ジ(5-ヘキセニル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン
【0083】
(B)成分として、次のオルガノポリシロキサンを用いた。
25℃における粘度が3,000mPa・sであり、下記式で表される分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたポリメチルフェニルシロキサン
MeViSiO(MePhSiO)25SiMeVi
【0084】
(C)成分として、次の成分を用いた。
(C1):1,1,5,5-テトラメチル-3,3-ジフェニルトリシロキサン
(C2):平均単位式:(MeHSiO1/2)0.6(PhSiO3/2)0.4
で表される、粘度20mPa・sのオルガノポリシロキサン
【0085】
(D)成分として、次の成分を用いた。
白金含有量が0.45質量%である、白金(0)-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のフェニル-トリス(ジメチルビニルシロキシ)シラン溶液。
【0086】
(E)成分として、次の成分を用いた。
1-エチニルシクロヘキサン-1-オールの1質量%、1,5-ジビニル-1,1,5,5-テトラメチル-3,3-ジフェニルトリシロキサン溶液
【0087】
【表1】


*(A1)、(A2),(A3),および(B)成分中のビニル基合計量1モルに対する(C1)および(C2)成分中のケイ素結合水素原子合計量のモル数
【0088】
実施例1~9の結果から、本発明の硬化性液状シリコーン組成物は、粘度が非常に低く、透明性が良好である。硬化して得られる硬化物の透明性も高く、なおかつ屈折率、特に赤外領域での屈折率が高いことも確認された。また、使用する成分、その含有量を適宜変更することにより、硬化物の硬度を広範囲に調整可能であることも実証された。一方、比較例1の結果から、(A)成分を含まない硬化性液状シリコーン組成物では、粘度が非常に高いことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の硬化性液状シリコーン組成物は、室温での粘度が非常に低く、注入成形に適している。また、加熱処理により速やかに硬化するため、生産性の向上に貢献する。さらに得られた硬化物は、透明性に優れ、屈折率、特に赤外領域での屈折率が高い(1.50以上)ため、赤外LED光源を用いたデバイス用材料として有用である。