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  • -純水製造方法及び製造装置 図1A
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  • -純水製造方法及び製造装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】純水製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/42 20230101AFI20250311BHJP
   B01J 49/06 20170101ALI20250311BHJP
   B01J 49/07 20170101ALI20250311BHJP
   B01J 49/09 20170101ALI20250311BHJP
【FI】
C02F1/42 B
B01J49/06
B01J49/07
B01J49/09
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020098528
(22)【出願日】2020-06-05
(65)【公開番号】P2021191566
(43)【公開日】2021-12-16
【審査請求日】2023-03-06
【審判番号】
【審判請求日】2024-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一重
(72)【発明者】
【氏名】須藤 史生
(72)【発明者】
【氏名】菅原 広
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 惟
【合議体】
【審判長】深草 祐一
【審判官】原 賢一
【審判官】田口 裕健
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-043222(JP,A)
【文献】特開2018-030079(JP,A)
【文献】特開昭62-114662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/42
B01J39/00-49/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能なイオン交換体が充填され並列配置され複数のイオン交換装置において、被処理水を処理する運転状態と、被処理水の供給を停止して、前記イオン交換体を再生し、次の運転状態まで待機する再生待機状態とを前記複数のイオン交換装置の間で交互に繰り返すことを有し、
前記再生待機状態において、前記イオン交換体の再生終了後次の運転状態が始まるタイミングまで連続して、洗浄水を前記イオン交換体に通水する、純水製造方法。
【請求項2】
前記洗浄水と、前記イオン交換体の再生のために供給する再生剤は、前記被処理水の通水方向と反対方向に通水される、請求項1に記載の純水製造方法。
【請求項3】
前記洗浄水は前記イオン交換装置で生成された処理水と同程度またはそれ以上の比抵抗を有する、請求項1または2に記載の純水製造方法。
【請求項4】
前記洗浄水は、前記運転状態にある前記イオン交換装置で生成された処理水である、請求項に記載の純水製造方法。
【請求項5】
前記洗浄水として利用された水は前記イオン交換装置からの溶出成分を除去できる機能を1つ以上備えた装置の前段に戻される、請求項1からのいずれか1項に記載の純水製造方法。
【請求項6】
前記イオン交換装置における前記洗浄水の空間速度は、前記イオン交換装置における前記被処理水の空間速度より小さい、請求項1からのいずれか1項に記載の純水製造方法。
【請求項7】
再生可能なイオン交換体が充填され並列配置され複数のイオン交換装置であって、被処理水を処理する運転状態と、被処理水の供給を停止して、前記イオン交換体を再生し、次の運転状態まで待機する再生待機状態とを前記複数のイオン交換装置の間で交互に繰り返すことが可能な複数のイオン交換装置と、
前記再生待機状態において、前記イオン交換体の再生終了後次の運転状態が始まるタイミングまで連続して、洗浄水を前記イオン交換体に通水する洗浄水供給ラインと、
を有する純水製造装置。
【請求項8】
請求項に記載の純水製造装置と、
前記純水製造装置の上流側に設けられた前処理システムと、
前記純水製造装置の下流側に設けられたサブシステムと、
を備える超純水製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は純水製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体デバイス、液晶ディスプレイ、シリコンウエハ、プリント基板等の電子部品製造工程、医薬品の製造工程等においては、イオン状物質、微粒子、有機物、溶存ガス、生菌等の不純物含有量の極めて少ない超純水が使用されている。特に、半導体デバイスをはじめとする電子部品製造工程においては、多くの超純水が使用されており、半導体デバイスの集積度の向上に伴って、超純水の純度に対する要求は益々厳しくなってきている。例えば、半導体製造用超純水では、抵抗率18.2MΩ・cm以上、0.05μm以上の微粒子数1個/mL未満、全有機炭素(TOC:Total Organic Carbon)1μg/L未満、金属成分1ng/L未満等のスペックが要求され、要求水質はさらに厳しくなる傾向にある。
【0003】
なかでも、近年微量の不純物として、例えばホウ素及びTOCの低減が求められている。一般的にホウ素は、非再生式イオン交換装置しか持たない超純水製造装置(サブシステム)では完全に除去することが難しく、一次純水システムで除去することが検討されている。一次純水システムでホウ素やTOCを除去する方法としては、酸及びアルカリを再生剤とする再生式イオン交換装置が広く利用されている。一方、再生式イオン交換装置は、一次純水システムから隔離して再生操作を行った後、運転を開始するまでの間、一定時間待機している。この待機時間中にイオン交換体から有機物である母体の一部が溶出し、処理水の水質に影響を及ぼす可能性がある。
【0004】
特許文献1には、汽力発電所の復水脱塩装置における脱塩塔の再生後の保管方法が開示されている。カチオン層とアニオン層の再生が終了した後、これらを逆洗で分離し、その後、カチオン層とアニオン層に連続的または間歇的に洗浄水が通水される。これによって、カチオン樹脂から溶出する有機物成分がアニオン樹脂を汚染することが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-116526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された脱塩塔の再生後の保管方法は、復水の水質を早期に安定させることが目的であり、純水製造方法に関するものではない。
【0007】
本発明の目的は、再生式イオン交換装置を迅速かつ低溶出で立ち上げることができる、純水製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の純水製造方法は、再生可能なイオン交換体が充填され並列配置され複数のイオン交換装置において、被処理水を処理する運転状態と、被処理水の供給を停止して、イオン交換体を再生し、次の運転状態まで待機する再生待機状態とを複数のイオン交換装置の間で交互に繰り返すことを有し、複数のイオン交換装置の各々の再生待機状態において、イオン交換体の再生終了後次の運転状態が始まるタイミングまで連続して、洗浄水をイオン交換体に通水する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、再生式イオン交換装置を迅速かつ低溶出で立ち上げることができる、純水製造方法を提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】本発明の一実施形態に係る純水製造装置の概要図(A塔運転時)である。
図1B】本発明の一実施形態に係る純水製造装置の概要図(A塔カチオン樹脂再生時)である。
図1C】本発明の一実施形態に係る純水製造装置の概要図(A塔アニオン樹脂再生時)である。
図1D】本発明の一実施形態に係る純水製造装置の概要図(A塔待機時)である。
図1E】本発明の一実施形態に係る純水製造装置の概要図(A塔運転再開時)である。
図2】実施例と比較例における試験装置の概略構成図である。
図3】実施例と比較例における通水量と処理水のTOCの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の純水製造方法と純水製造装置の一実施形態について説明する。図1A~1Eは純水製造装置1の概略構成と再生式イオン交換装置2の再生方法を示している。各図において、太線は被処理水、処理水または洗浄水が流通しているラインを示す。純水製造装置(1次システム)は上流側の前処理システムと下流側のサブシステム(2次システム)とともに超純水製造装置を構成する。再生式イオン交換装置2は定期的な再生が必要とされるが、半導体製造工程などに利用される超純水は連続的に製造する必要がある。このため、本実施形態では3つの樹脂塔(以下、A塔2A、B塔2B、C塔2Cという)を並列に設け、2塔が運転し1塔が純水製造装置1から隔離されるように、3塔の間で運転状態と再生待機状態とを交互に繰り返す。以下の説明では、A塔2Aを運転状態から再生待機状態に切り替え、再生後所定時間待機した後、運転状態に切り替える方法について説明する。
【0012】
図1AはA塔2A、B塔2Bが運転状態、C塔2Cが再生待機状態にある純水製造装置1を示している。本実施形態の純水製造装置1は、原水タンク3、原水ポンプ4、ろ過器5、活性炭塔6、カチオン樹脂塔7、脱炭酸装置8、アニオン樹脂塔9、逆浸透膜装置10、逆浸透膜装置処理水タンク(以下、RO処理水タンクという)11、逆浸透膜装置処理水移送ポンプ(以下、RO処理水ポンプという)12、紫外線酸化装置13を有し、これらは被処理水の流通方向Dに関し上流から下流に向かって、ラインL1上に沿って直列に配置されている。前処理システムで製造され原水タンク3に貯蔵された原水(以下、被処理水という)は原水ポンプ4で昇圧された後、ろ過器5で比較的粒径の大きな塵埃等が除去され、活性炭塔6で過酸化水素や塩素、有機物などの不純物が除去される。被処理水はカチオン樹脂塔7でカチオン成分を、脱炭酸装置8で炭酸を、アニオン樹脂塔9でアニオン成分を除去され、逆浸透膜装置10でイオン成分をさらに除去される。さらに逆浸透膜装置10の処理水はRO処理水タンク11に送られ、RO処理水ポンプ12によって昇圧された後、紫外線酸化装置13によって有機物成分が分解され、その後再生式イオン交換装置2に送られる。
【0013】
再生式イオン交換装置2のA塔2A、B塔2B、C塔2Cには、再生可能なイオン交換体、本実施形態ではイオン交換樹脂が充填されている。イオン交換樹脂は被処理水中の有機物成分やイオン成分を除去する。特に、ホウ素は樹脂に対する吸着力が弱いため、樹脂から離脱しやすい。サブシステムに設けられるイオン交換装置は、被処理水のイオン負荷が小さいこともあり、通常はカートリッジ型の非再生式である。非再生式イオン交換装置は、イオン交換性能が低下し交換時期に至るまで長時間使用されるため、捕捉したホウ素が被処理水中に流出しやすい。これに対して、再生式イオン交換装置2は、樹脂に捕捉されたホウ素が、樹脂から破過する前に再生によって除去することが可能であることから、ホウ素の除去手段として有効である。
【0014】
3つの樹脂塔(A塔2A、B塔2B、C塔2C)はすべて同じ構成を有しているため、以下主にA塔2Aについて説明する。説明は省略するが、ラインL6~L9,弁V3~V8はB塔2B及びC塔2Cにも同様に設けられている。A塔2A、B塔2B、C塔2Cは入口側で、ラインL1から分岐するラインL2A、ラインL2B、ラインL2Cにそれぞれ接続され、出口側で、ラインL4に合流するラインL3A、ラインL3B、ラインL3Cにそれぞれ接続されている。ラインL4は、サブシステムに接続するラインL5に接続されている。ラインL2A、ラインL2B、ラインL2Cにはそれぞれ弁V1A,V1B,V1Cが、ラインL3A、ラインL3B、ラインL3Cにはそれぞれ弁V2A,V2B,V2Cが設けられている。弁V1A,V1BとV2A,V2Bは開かれており、弁V1C,V2Cは閉じられている。従って、A塔2A、B塔2Bは被処理水の処理をする運転状態にあり、C塔2Cは純水製造装置1から隔離された再生待機状態にある。
【0015】
A塔2Aは下部にアニオン交換樹脂からなるアニオン層21が、上部にカチオン交換樹脂からなるカチオン層22が充填された、複床式のイオン交換樹脂塔である。アニオン層21とカチオン層22はイオン交換繊維、モノリス状イオン交換体等で形成してもよい。アニオン層21とカチオン層22との間には、アニオン層21の再生剤を供給するためのヘッダ23が設けられている。ラインL2AはA塔2Aの底部に接続され、ラインL3AはA塔2Aの頂部に接続されている。従って、被処理水は上向流としてA塔2Aに導入され、アニオン層21でアニオン成分を除去され、次にカチオン層22でカチオン成分を除去され、その後ラインL3Aから排出される。再生式イオン交換装置2は、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂を一つの樹脂塔内に混合充填した混床式、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂を異なる樹脂塔に充填して、これらの樹脂塔を直列に接続した2床2塔型のものであってもよい。また、カチオン層22が下部に、アニオン層21が上部に充填されていてもよく、被処理水が下向流として供給されてもよい。
【0016】
弁V1AとA塔2Aとの間の位置でラインL2Aから分岐するラインL6が設けられている。ラインL6は、RO処理水タンク11を介してラインL1に合流している。ラインL6がラインL1に合流する位置は逆浸透膜装置10の入口側(アニオン樹脂塔9と逆浸透膜装置10の間)でもよく、カチオン樹脂塔7の入口側(活性炭塔6とカチオン樹脂塔7の間)でもよく、紫外線酸化装置13の入口側(RO処理水ポンプ12と紫外線酸化装置13の間)でもよい。少なくともA塔2A(再生式イオン交換装置2)からの溶出成分を除去できる機能を1つ以上備えた装置の前段に戻すことが望ましい。A塔2Aの運転中は、ラインL6上の弁V6、V8は閉じられている。
【0017】
塩酸を供給するラインL7がラインL3Aに合流している。A塔2Aの運転中は、ラインL7上の弁V3は閉じられている。A塔2Aの側壁には、ヘッダ23に接続され苛性ソーダを供給するラインL8が設けられている。A塔2Aの運転中は、ラインL8上の弁V4は閉じられている。ラインL8からは排水ラインであるラインL9が分岐しており、ラインL9上の弁V5は閉じられている。ラインL6からは排水ラインであるラインL10が分岐しており、ラインL10上の弁V7は閉じられている。
【0018】
次に、A塔2Aの再生方法について説明する。図1Bに示すように、弁V1A,V2Aを閉じA塔2Aを隔離するとともに、弁V1C,V2Cを開きC塔2Cを運転状態とする。弁V3,V5を開き、ラインL7からA塔2Aに塩酸を供給し、塩酸によるカチオン交換樹脂の再生を行う。ラインL7から供給された塩酸はA塔2Aの頂部に供給され、カチオン層22の内部を下向流となって流通し、ヘッダ23、ラインL8、ラインL9を通って、排水タンク(図示せず)に回収される。被処理水と反対方向に塩酸を流すことで、カチオン交換樹脂に捕捉されたカチオン成分をより効果的に除去することができる。すなわち、カチオン層22の下側部分は被処理水の入口側となるため、出口側となる上側部分より多くのカチオン成分が捕捉されている。上から下に塩酸を流すことで、カチオン成分が上側に逆流してカチオン層22の上側部分が汚染されることが防止される。なおカチオン層22を塩酸で再生する際には、アニオン層21に塩酸が接触することを防ぐため、アニオン層21下部から上向流にてRO処理水タンク11の水を供給する。続いて、塩酸と同様のラインを用いて残留した塩酸をRO処理水タンク11の水を用いて洗浄する(図示せず)。
【0019】
次に、図1Cに示すように、弁V3,V5を閉じ、弁V4,V7,V8を開き、ラインL8からA塔2Aに苛性ソーダを供給し、苛性ソーダによるアニオン交換樹脂の再生を行う。ラインL8から供給された苛性ソーダはヘッダ23を通ってA塔2Aのアニオン層21の頂部に供給され、アニオン層21を下向流となって流通し、ラインL10を通り、排水タンク(図示せず)に回収される。被処理水と反対方向に苛性ソーダを流す理由は上述の塩酸の場合と同様である。なおアニオン層21を苛性ソーダで再生する際には、カチオン層22に苛性ソーダが接触することを防ぐため、カチオン層22上部から下向流にてRO処理水タンク11の水を供給する。続いて、同様のラインを用いて残留した苛性ソーダをRO処理水タンク11の水を用いて洗浄する(図示せず)。
【0020】
次に、図1Dに示すように、弁V4,V7を閉じ、弁V2A,V6を開き、ラインL4,L3AからA塔2Aに洗浄水を供給する。この際、ラインL3B,L3C,L4,L3Aは洗浄水をA塔2Aに供給する洗浄水供給ラインとして機能する。洗浄水はB塔2BとC塔2Cの出口水、すなわち純水であるため純度が高い。洗浄水の流量はB塔2BとC塔2Cから排出される純水の合計流量の0.5~5%の間とすることが好ましい。洗浄水として利用された純水はカチオン層22、アニオン層21の順に流通し、戻りラインであるラインL6を通ってRO処理水タンク11に戻される。この際、ラインL2A,L6は洗浄水を回収する洗浄水回収ラインとして機能する。このようにして洗浄水が再利用されるため、水回収率が低下することはほとんどない。洗浄水は再生式イオン交換装置2の上流側であればRO処理水タンク11以外の位置に戻してもよい。ただし、洗浄水にはA塔2Aの樹脂から溶出した有機物が含まれている可能性があるため、前述のように、少なくともA塔2Aからの溶出成分を除去できる機能を1つ以上備えた装置の前段に戻すことが望ましい。
【0021】
通常、A塔2A、B塔2B、C塔2Cの切り替えは週単位または月単位で行われるが、再生は数時間で完了する。従来は、再生が終了した後切り替えのタイミングまで、樹脂塔内に純水を張った状態(すなわち樹脂が浸漬した状態)で次の運転開始まで待機しているが、待機時間が長い場合樹脂の母体が剥離し、剥離した有機物や微粒子が樹脂塔内の浸漬水に流出しやすくなる。流出した有機物や微粒子は樹脂塔中滞留するほか、樹脂塔の内壁や樹脂に付着する可能性がある。このため、樹脂塔を純水製造装置に接続し、被処理水の供給を開始した後しばらくの間、処理水の水質(TOC、比抵抗、微粒子数等)が不安定になる可能性がある。この結果、後段のサブシステムにおける負荷の増加や、ユースポイントにおける水質の変動が生じる可能性がある。本実施形態では、再生が終了した後、次の運転状態までの間の待機状態で洗浄水を流通させているため、樹脂から剥離した有機物や微粒子が洗浄水で流され、樹脂塔内に蓄積しにくくなる。このため、樹脂塔を純水製造装置1に接続したときに、樹脂塔内に存在する有機物や微粒子の量が減少し、被処理水の供給を開始した後、処理水の水質が早期に安定する。
【0022】
次に、図1Eに示すように、弁V6、V8を閉じ、弁V1Aを開き、A塔2Aの運転を再開する。これと同時に、弁V1B,V2Bを閉じ、B塔2Bを純水製造装置1から隔離する。A塔2AとC塔2Cを運転しながら、上述の手順に従いB塔2Bの再生と待機を行う。
【0023】
本実施形態は既存の設備の運転方法を変えるだけで実施できるため、新たなラインや弁の追加は不要である。洗浄水は上流の原水ポンプ4及びRO処理水ポンプ12によって昇圧されているため、新たにポンプを設ける必要はない。洗浄水としては運転中の樹脂塔(本実施形態ではB塔2B及びC塔2C)の出口水を用いることが最も簡便であるが、待機中の再生式イオン交換装置2の樹脂を汚染しない、一定の純度を有する洗浄水であれば特に限定されない。洗浄水は、再生式イオン交換装置2で生成された処理水と同程度またはそれ以上の比抵抗を有する水であればよい。
【0024】
(実施例)
図2に示す装置を用いて本発明の効果を確認した。φ25mmのアクリルカラムに300mLの強酸性カチオン樹脂を充填して、カチオン塔を作成した。同様に、φ25mmのアクリルカラムに300mLの強塩基性アニオン樹脂を充填して、アニオン塔を作成した。アニオン塔とカチオン塔を直列で接続し、このような2床2塔型のイオン交換装置を2系統作成した。予め、塩酸を各カチオン塔に下向流で供給し、強酸性カチオン樹脂を再生した。同様に、予め、苛性ソーダを各アニオン塔に下向流で供給し、強塩基性アニオン樹脂を再生した。次に、神奈川県相模原市の市水をフィルタ、活性炭装置、イオン交換装置(実施形態と同様、カチオン交換樹脂塔と脱炭酸装置とアニオン交換樹脂塔とを直列に接続した2床3塔型のもの)、逆浸透膜装置で順次処理した被処理水を、アニオン塔、カチオン塔の順に通水した。連続的に処理水を得るため、系統1と系統2を交互に且つ定収量で運転した(運転→再生→洗浄水を通水しながら待機→運転)。
【0025】
実施例では、系統1のイオン交換装置に、空間速度SV90で被処理水を通水した。すなわち、被処理水をアニオン塔下部から上部に向けて上向流にて通水し、さらにカチオン塔下部から上部に向けて上向流にて通水した。系統1の運転中、待機状態の系統2のイオン交換装置に、空間速度SV1で洗浄水を通水した。すなわち、系統1の処理水の一部を、洗浄ラインを通してカチオン塔上部から下向流で通水し、さらにアニオン塔上部から下向流で通水した(洗浄水の流れを破線で示す)。系統1に65時間被処理水を通水し、その後交互運転を行うため系統2を運転状態に切り替え、系統2の処理水のTOCを測定した。TOCはスエズ社製TOC計SIEVERS M9eを用いて測定した。比較例は、系統2が待機状態にあるときに通水洗浄を行わなかったことを除き、実施例と同じである。図3に結果を示す。横軸は樹脂の単位体積当たりの通水量、縦軸は処理水のTOCを示す。実施例では、待機時に系統2を通水洗浄したため、樹脂体積に対して約500倍の通水を行った時点で処理水のTOCが安定した。比較例では、処理水のTOCが安定するまでに、樹脂体積に対して約1000倍の通水が必要であり、実施例のほうが短時間でTOCが安定することが確認された。
【符号の説明】
【0026】
1 純水製造装置
2 再生式イオン交換装置
2A,2B,2C イオン交換樹脂塔(A塔,B塔,C塔)
21 イオン交換体(アニオン層)
22 イオン交換体(カチオン層)
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2
図3