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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20250311BHJP
   G01N 24/08 20060101ALI20250311BHJP
【FI】
A61B5/055 311
G01N24/08 510D
G01N24/08 510L
G01N24/08 510Y
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021008512
(22)【出願日】2021-01-22
(65)【公開番号】P2022112647
(43)【公開日】2022-08-03
【審査請求日】2023-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】葛西 由守
(72)【発明者】
【氏名】油井 正生
【審査官】嵯峨根 多美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/206553(WO,A1)
【文献】特開2019-195421(JP,A)
【文献】特開平06-000170(JP,A)
【文献】特開平06-063029(JP,A)
【文献】特開平05-317282(JP,A)
【文献】特開平10-066684(JP,A)
【文献】特開2014-210175(JP,A)
【文献】国際公開第2019/233881(WO,A1)
【文献】特表2015-517375(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0369892(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01N 24/08
G01R 33/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の繰り返し時間の間隔で被検体に励起パルスを印加することによって前記繰り返し時間の間に発生するエコー信号を取得し、当該エコー信号を用いて、k空間に設定された複数のトラジェクトリのデータを収集する収集部を備え、
前記収集部は、前記励起パルスを印加してから前記エコー信号が発生するまでの時間であるエコー時間を複数の繰り返し時間それぞれで異なる長さに設定して複数のエコー信号を取得し、前記エコー時間の長さが異なる前記複数のエコー信号を用いて、前記複数のトラジェクトリのうちの同一トラジェクトリについて、前記エコー時間の長さが異なる複数のデータを収集する、
磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記収集部は、前記エコー時間を前記複数の繰り返し時間それぞれで所定時間ずつ変化させることによって異なる長さに設定して、前記複数のエコー信号を取得する、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記収集部は、前記エコー時間を所定時間ずつ連続して変化させる、
請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記収集部は、前記エコー時間を所定時間ずつ連続して増加させる、前記エコー時間を所定時間ずつ連続して減少させる、又は、前記エコー時間を所定時間だけ増加させること及び所定時間だけ減少させることを混在させて連続して行う、
請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記収集部は、前記エコー時間を複数の繰り返し時間それぞれで異なる長さに設定して複数の第1エコー信号を取得し、かつ、前記エコー時間を複数の繰り返し時間それぞれで固定の長さに設定して複数の第2エコー信号をさらに取得し、前記複数の第1エコー信号及び前記複数の第2エコー信号を用いて、前記同一トラジェクトリについて、前記複数のデータを収集する、
請求項1~4のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記収集部は、前記k空間を中心領域と周辺領域とに分割し、前記トラジェクトリごとに、前記中心領域に含まれる範囲は前記第1エコー信号を用いてデータを収集し、前記周辺領域に含まれる範囲は前記第2エコー信号を用いてデータを収集する、
請求項5に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記収集部は、前記k空間を中心領域と周辺領域とに分割し、前記中心領域に含まれる範囲は、前記第1エコー信号を用いて、カルテシアン収集によって点ごとにデータを収集し、前記周辺領域に含まれる範囲は、前記第2エコー信号を用いて、ラジアル収集によって前記k空間の中心から放射状に伸びる直線に沿ってデータを収集する、
請求項5に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
繰り返し時間の間隔で被検体に励起パルスを印加することによって前記繰り返し時間の間に発生するエコー信号を取得し、当該エコー信号を用いて、k空間に設定された複数のトラジェクトリのデータを収集する収集部を備え、
前記収集部は、前記励起パルスを印加してから前記エコー信号が発生するまでの時間であるエコー時間を複数の繰り返し時間それぞれで異なる長さに設定して複数の第1エコー信号を取得し、かつ、前記エコー時間を複数の繰り返し時間それぞれで固定の長さに設定して複数の第2エコー信号をさらに取得し、前記k空間を中心領域と周辺領域とに分割し、前記トラジェクトリごとに、前記中心領域に含まれる範囲は前記第1エコー信号を用いてデータを収集し、前記周辺領域に含まれる範囲は前記第2エコー信号を用いてデータを収集することで、前記複数の第1エコー信号及び前記複数の第2エコー信号を用いて、前記複数のトラジェクトリのうちの同一トラジェクトリのデータを収集する、
磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
繰り返し時間の間隔で被検体に励起パルスを印加することによって前記繰り返し時間の間に発生するエコー信号を取得し、当該エコー信号を用いて、k空間に設定された複数のトラジェクトリのデータを収集する収集部を備え、
前記収集部は、前記励起パルスを印加してから前記エコー信号が発生するまでの時間であるエコー時間を複数の繰り返し時間それぞれで異なる長さに設定して複数の第1エコー信号を取得し、かつ、前記エコー時間を複数の繰り返し時間それぞれで固定の長さに設定して複数の第2エコー信号をさらに取得し、前記k空間を中心領域と周辺領域とに分割し、前記中心領域に含まれる範囲は、前記第1エコー信号を用いて、カルテシアン収集によって点ごとにデータを収集し、前記周辺領域に含まれる範囲は、前記第2エコー信号を用いて、ラジアル収集によって前記k空間の中心から放射状に伸びる直線に沿ってデータを収集することで、前記複数の第1エコー信号及び前記複数の第2エコー信号を用いて、前記複数のトラジェクトリのうちの同一トラジェクトリのデータを収集する、
磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
前記収集部は、特定の組織の信号を強調又は抑制するプリパルスを前記被検体に印加した後に、所定の待ち時間が経過した時点で、前記複数のトラジェクトリのデータを収集する、
請求項1~のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
前記収集部は、UTE(Ultra Short TE)を用いて前記エコー信号を取得する、
請求項1~10のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置に関する技術として、UTE(Ultra Short TE)と呼ばれる技術が知られている。
【0003】
UTEは、被検体に励起パルスを印加した直後にエコー信号を取得し、当該エコー信号を用いて、ラジアル収集によってk空間のデータを収集して画像を生成する技術であり、励起パルスを印加してからエコー信号が発生するまでの時間であるエコー時間(Echo Time:TE)を例えば0.1ms未満の短い時間に設定することによって、関節部や肺野部等のようにT又はT 緩和時間が短い組織を描出することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-195421号公報
【文献】特開2016-123865号公報
【文献】特開2017-225501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、T又はT 緩和時間が短い組織を含む部位を撮像する際の空間分解能及び時間分解能を向上させることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置付けることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係るMRI装置は、収集部を備える。前記収集部は、繰り返し時間の間隔で被検体に励起パルスを印加することによって前記繰り返し時間の間隔ごとに発生するエコー信号を取得し、当該エコー信号を用いて、k空間に設定された複数のトラジェクトリのデータを収集する。ここで、前記収集部は、前記励起パルスを印加してから前記エコー信号が発生するまでの時間であるエコー時間を複数の繰り返し時間それぞれで異なる長さに設定して複数のエコー信号を取得し、当該複数のエコー信号を用いて同一トラジェクトリのデータを収集する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態に係るMRI装置の構成例を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る収集機能によって用いられるk空間のトラジェクトリの一例を示す図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る収集機能によって用いられるパルスシーケンスを示す図である。
図4図4は、第1の実施形態に係るMRI装置によって行われる撮像法の処理手順を示すフローチャートである。
図5図5は、第2の実施形態に係る収集機能によって用いられるパルスシーケンスを示す図である。
図6図6は、第2の実施形態の変形例に係る収集機能によって用いられるk空間のトラジェクトリの一例を示す図である。
図7図7は、第3の実施形態に係るコントラスト強調撮像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本願に係るMRI装置の実施形態について詳細に説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るMRI装置の構成例を示す図である。
【0010】
例えば、図1に示すように、MRI装置100は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、全身用RF(Radio Frequency)コイル4、局所用RFコイル5、送信回路6、受信回路7、RFシールド8、架台9、寝台10、入力インタフェース11、ディスプレイ12、記憶回路13、及び処理回路14~16を備える。
【0011】
静磁場磁石1は、被検体Sが配置される撮像空間に静磁場を発生させる。具体的には、静磁場磁石1は、中空の略円筒状(中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成されており、その内周側に形成された撮像空間に静磁場を発生させる。例えば、静磁場磁石1は、超伝導磁石や永久磁石等である。ここでいう超伝導磁石は、例えば、液体ヘリウム等の冷却剤が充填された容器と、当該容器に浸漬された超伝導コイルとから構成される。
【0012】
傾斜磁場コイル2は、静磁場磁石1の内側に配置されており、被検体Sが配置される撮像空間に傾斜磁場を発生させる。具体的には、傾斜磁場コイル2は、中空の略円筒状(中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成されており、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸それぞれに対応するXコイル、Yコイル及びZコイルを有している。Xコイル、Yコイル及びZコイルは、傾斜磁場電源3から供給される電流に基づいて、各軸方向に沿って線形に変化する傾斜磁場を撮像空間に発生させる。ここで、Z軸は、静磁場磁石1によって発生する静磁場の磁束に沿うように設定される。また、X軸は、Z軸に直交する水平方向に沿うように設定され、Y軸は、Z軸に直交する鉛直方向に沿うように設定される。これにより、X軸、Y軸及びZ軸は、MRI装置100に固有の装置座標系を構成する。
【0013】
傾斜磁場電源3は、傾斜磁場コイル2に電流を供給することで、撮像空間に傾斜磁場を発生させる。具体的には、傾斜磁場電源3は、傾斜磁場コイル2のXコイル、Yコイル及びZコイルに個別に電流を供給することで、互いに直交するリードアウト方向、位相エンコード方向及びスライス方向それぞれに沿って線形に変化する傾斜磁場を撮像空間に発生させる。なお、以下では、リードアウト方向に沿った傾斜磁場をリードアウト傾斜磁場と呼び、位相エンコード方向に沿った傾斜磁場を位相エンコード傾斜磁場と呼び、スライス方向に沿った傾斜磁場をスライス傾斜磁場と呼ぶ。
【0014】
ここで、リードアウト傾斜磁場、位相エンコード傾斜磁場及びスライス傾斜磁場は、それぞれ静磁場磁石1によって発生する静磁場に重畳されることで、被検体Sから発生する磁気共鳴信号に空間的な位置情報を付与する。具体的には、リードアウト傾斜磁場は、リードアウト方向の位置に応じて磁気共鳴信号の周波数を変化させることで、リードアウト方向に沿った位置情報を磁気共鳴信号に付与する。また、位相エンコード傾斜磁場は、位相エンコード方向に沿って磁気共鳴信号の位相を変化させることで、位相エンコード方向に沿った位置情報を磁気共鳴信号に付与する。また、スライス傾斜磁場は、スライス方向に沿った位置情報を磁気共鳴信号に付与する。例えば、スライス傾斜磁場は、撮像領域がスライス領域(2D撮像)の場合には、スライス領域の方向、厚さ及び枚数を決めるために用いられ、撮像領域がボリューム領域(3D撮像)の場合には、スライス方向の位置に応じて磁気共鳴信号の位相を変化させるために用いられる。これにより、リードアウト方向に沿った軸、位相エンコード方向に沿った軸、及びスライス方向に沿った軸は、撮像の対象となるスライス領域又はボリューム領域を規定するための論理座標系を構成する。
【0015】
全身用RFコイル4は、傾斜磁場コイル2の内周側に配置されており、撮像空間に配置された被検体SにRF磁場(励起パルス等)を印加し、当該RF磁場によって被検体Sから発生する磁気共鳴信号(エコー信号等)を受信する。具体的には、全身用RFコイル4は、中空の略円筒状(中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成されており、送信回路6から供給されるRFパルスに基づいて、その内周側に位置する撮像空間に配置された被検体SにRF磁場を印加する。また、全身用RFコイル4は、RF磁場の影響によって被検体Sから発生する磁気共鳴信号を受信し、受信した磁気共鳴信号を受信回路7へ出力する。
【0016】
局所用RFコイル5は、被検体Sから発生した磁気共鳴信号を受信する。具体的には、局所用RFコイル5は、被検体Sの部位ごとに用意されており、被検体Sの撮像が行われる際に、撮像対象の部位の表面近傍に配置される。そして、局所用RFコイル5は、全身用RFコイル4によって印加されたRF磁場の影響によって被検体Sから発生した磁気共鳴信号を受信し、受信した磁気共鳴信号を受信回路7へ出力する。なお、局所用RFコイル5は、被検体SにRF磁場を印加する機能をさらに有していてもよい。その場合には、局所用RFコイル5は、送信回路6に接続され、送信回路6から供給されるRFパルスに基づいて、被検体SにRF磁場を印加する。例えば、局所用RFコイル5は、サーフェスコイルや、複数のサーフェスコイルをコイルエレメントとして組み合わせて構成されたフェーズドアレイコイルである。
【0017】
送信回路6は、静磁場中に置かれた対象原子核に固有のラーモア周波数に対応するRFパルスを全身用RFコイル4に出力する。具体的には、送信回路6は、パルス発生器、RF発生器、変調器、及び増幅器を有する。パルス発生器は、RFパルスの波形を生成する。RF発生器は、共鳴周波数のRF信号を発生する。変調器は、RF発生器によって発生したRF信号の振幅をパルス発生器によって発生した波形で変調することで、RFパルスを生成する。増幅器は、変調器によって生成されたRFパルスを増幅して全身用RFコイル4に出力する。
【0018】
受信回路7は、全身用RFコイル4又は局所用RFコイル5から出力される磁気共鳴信号に基づいて磁気共鳴データを生成し、生成した磁気共鳴データを処理回路15に出力する。例えば、受信回路7は、選択器、前段増幅器、位相検波器、及び、A/D(Analog/Digital)変換器を備える。選択器は、全身用RFコイル4又は局所用RFコイル5から出力される磁気共鳴信号を選択的に入力する。前段増幅器は、選択器から出力される磁気共鳴信号を増幅する。位相検波器は、前段増幅器から出力される磁気共鳴信号の位相を検波する。A/D変換器は、位相検波器から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換することで磁気共鳴データを生成し、生成した磁気共鳴データを処理回路15に出力する。なお、ここで、受信回路7が行うものとして説明した各処理は、必ずしも全ての処理が受信回路7で行われる必要はなく、全身用RFコイル4又は局所用RFコイル5で一部の処理(例えば、A/D変換器による処理等)が行われてもよい。
【0019】
RFシールド8は、傾斜磁場コイル2と全身用RFコイル4との間に配置されており、全身用RFコイル4によって発生するRF磁場から傾斜磁場コイル2を遮蔽する。具体的には、RFシールド8は、中空の略円筒状(円筒の中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成されており、傾斜磁場コイル2の内周側の空間に、全身用RFコイル4の外周面を覆うように配置されている。
【0020】
架台9は、略円筒状(中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成された中空のボア9aを有し、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、全身用RFコイル4、及びRFシールド8を収容している。具体的には、架台9は、ボア9aの外周側に全身用RFコイル4を配置し、全身用RFコイル4の外周側にRFシールド8を配置し、RFシールド8の外周側に傾斜磁場コイル2を配置し、傾斜磁場コイル2の外周側に静磁場磁石1を配置した状態で、それぞれを収容している。ここで、架台9が有するボア9a内の空間が、撮像時に被検体Sが配置される撮像空間となる。
【0021】
寝台10は、被検体Sが載置される天板10aを備え、被検体Sの撮像が行われる際に、被検体Sが載置された天板10aを撮像空間に移動する。例えば、寝台10は、天板10aの長手方向が静磁場磁石1の中心軸と平行になるように設置されている。
【0022】
なお、ここでは、MRI装置100が、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2及び全身用RFコイル4それぞれが略円筒状に形成された、いわゆるトンネル型の構造を有する場合の例を説明するが、実施形態はこれに限られない。例えば、MRI装置100は、被検体Sが配置される撮像空間を挟んで対向するように一対の静磁場磁石、一対の傾斜磁場コイル及び一対のRFコイルを配置した、いわゆるオープン型の構造を有していてもよい。このようなオープン型の構造では、一対の静磁場磁石、一対の傾斜磁場コイル及び一対のRFコイルによって挟まれた空間が、トンネル型の構造におけるボアに相当する。
【0023】
入力インタフェース11は、操作者から各種指示及び各種情報の入力操作を受け付ける。具体的には、入力インタフェース11は、処理回路17に接続されており、操作者から受け取った入力操作を電気信号へ変換して処理回路17に出力する。例えば、入力インタフェース11は、撮像条件や関心領域(Region Of Interest:ROI)の設定等を行うためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路等によって実現される。なお、本明細書において、入力インタフェース11は、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース11の例に含まれる。
【0024】
ディスプレイ12は、各種情報を表示する。具体的には、ディスプレイ12は、処理回路17に接続されており、処理回路17から送られる各種情報のデータを表示用の電気信号に変換して出力する。例えば、ディスプレイ12は、液晶モニタやCRTモニタ、タッチパネル等によって実現される。
【0025】
記憶回路13は、各種データを記憶する。具体的には、記憶回路13は、処理回路14~17に接続されており、各処理回路によって入出力される各種データを記憶する。例えば、記憶回路13は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子やハードディスク、光ディスク等によって実現される。
【0026】
処理回路14は、寝台制御機能14aを有する。寝台制御機能14aは、制御用の電気信号を寝台10へ出力することで、寝台10の動作を制御する。例えば、寝台制御機能14aは、入力インタフェース11を介して、天板10aを長手方向、上下方向又は左右方向へ移動させる指示を操作者から受け付け、受け付けた指示に従って天板10aを移動するように、寝台10が有する天板10aの移動機構を動作させる。
【0027】
処理回路15は、収集機能15aを有する。収集機能15aは、各種のパルスシーケンスを実行することで、k空間データを収集する。具体的には、収集機能15aは、処理回路17から出力されるシーケンス実行データに従って傾斜磁場電源3、送信回路6及び受信回路7を駆動することで、各種のパルスシーケンスを実行する。ここで、シーケンス実行データは、パルスシーケンスを表すデータであり、傾斜磁場電源3が傾斜磁場コイル2に電流を供給するタイミング及び供給する電流の強さ、送信回路6が全身用RFコイル4にRFパルスを供給するタイミング及び供給する高周波パルスの強さ、受信回路7が磁気共鳴信号をサンプリングするタイミング等を規定した情報である。そして、収集機能15aは、パルスシーケンスを実行した結果として受信回路7から出力される磁気共鳴データを受信し、記憶回路13に記憶させる。このとき、記憶回路13に記憶される磁気共鳴データは、前述した各傾斜磁場によってリードアウト方向、位相エンコード方向及びスライス方向の各方向に沿った位置情報が付与されることで、2次元又は3次元のk空間を表すk空間データとして記憶される。
【0028】
処理回路16は、生成機能16aを有する。生成機能16aは、処理回路15によって収集されたk空間データから画像を生成する。具体的には、生成機能16aは、処理回路15によって収集されたk空間データを記憶回路13から読み出し、読み出したk空間データにフーリエ変換等の再構成処理を施すことで、2次元又は3次元の画像を生成する。そして、生成機能16aは、生成した画像を記憶回路13に記憶させる。
【0029】
処理回路17は、撮像制御機能17aを有する。撮像制御機能17aは、MRI装置100が有する各構成要素を制御することで、MRI装置100の全体制御を行う。具体的には、撮像制御機能17aは、操作者から各種指示及び各種情報の入力操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)をディスプレイ12に表示し、入力インタフェース11を介して受け付けられた入力操作に応じて、MRI装置100が有する各構成要素を制御する。例えば、撮像制御機能17aは、操作者によって入力された撮像条件に基づいてシーケンス実行データを生成し、生成したシーケンス実行データを処理回路15に出力することで、k空間データを収集させる。また、例えば、撮像制御機能17aは、処理回路16を制御することで、処理回路15によって収集されたk空間データから画像を再構成させる。また、例えば、撮像制御機能17aは、操作者からの要求に応じて、記憶回路13から画像を読み出し、読み出した画像をディスプレイ12に表示させる。
【0030】
ここで、上述した処理回路14~17は、例えば、プロセッサによって実現される。この場合に、各処理回路が有する処理機能は、例えば、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路13に記憶される。そして、各処理回路は、記憶回路13から各プログラムを読み出して実行することで、各プログラムに対応する処理機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の各処理回路は、図1の各処理回路内に示された各機能を有することとなる。
【0031】
なお、ここでは、単一のプロセッサによって各処理回路が実現されるものとして説明するが、実施形態はこれに限られず、複数の独立したプロセッサを組み合わせて各処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することによって各処理機能を実現するものとしてもよい。また、各処理回路が有する処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。また、図1に示す例では、単一の記憶回路13が各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明したが、複数の記憶回路を分散して配置して、処理回路が個別の記憶回路から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。
【0032】
以上、本実施形態に係るMRI装置100の構成例について説明した。このような構成のもと、本実施形態に係るMRI装置100は、UTEと呼ばれる技術を用いて、被検体のT マップ画像を生成する機能を有する。
【0033】
UTEは、被検体に励起パルスを印加した直後にエコー信号を取得し、当該エコー信号を用いて、ラジアル収集によってk空間のデータを収集して画像を生成する技術であり、励起パルスを印加してからエコー信号が発生するまでの時間であるエコー時間(Echo Time:TE)を例えば0.1ms未満の短い時間に設定することによって、関節部や肺野部等のようにT又はT 緩和時間が短い組織を描出することが可能である。
【0034】
このようなUTEを用いてT マップ画像を生成する場合、例えば、励起パルスを印加した直後から短い時間間隔でTEを変えながら複数のエコー信号を取得することで、TEが異なる複数のデータを収集し、当該複数のデータに基づいてT 値を導出することによって、T マップ画像を生成する方法が考えられる。
【0035】
しかしながら、一般的に、MRI装置では、傾斜磁場のスイッチング速度がdB/dtによって制約されるため、複数のエコー信号を短い時間間隔で収集する場合は傾斜磁場の強度を低くせざるを得ず、その結果、空間分解能が低くなる。これに対して、画像の空間分解能を向上させるためには、エコー信号の間隔(Echo Train Spacing:ETS)を延長せざるを得ず、その結果、時間分解能が低くなる。
【0036】
これらのことから、上記の方法では、高い空間分解能及び高い時間分解能の両方が必要となる臨床要求に応えることができない場合があり得る。
【0037】
このようなことから、本実施形態に係るMRI装置100は、T又はT 緩和時間が短い組織を含む部位を撮像する際の空間分解能及び時間分解能を向上させることができるように構成されている。
【0038】
具体的には、本実施形態では、処理回路15の収集機能15aが、繰り返し時間(Repetition Time:TR)の間隔で被検体に励起パルスを印加することによってTRの間隔ごとに発生するエコー信号を取得し、当該エコー信号を用いて、k空間に設定された複数のトラジェクトリのデータを収集する。ここで、収集機能15aは、TEを複数のTRそれぞれで異なる長さに設定して複数のエコー信号を取得し、当該複数のエコー信号を用いて同一トラジェクトリのデータを収集する。
【0039】
以下、このようなMRI装置100の構成について詳細に説明する。なお、本実施形態では、収集機能15aが、ラジアル収集によって3次元のk空間のデータを収集し、生成機能16aが、3次元のT マップ画像を生成する場合の例を説明する。
【0040】
図2は、第1の実施形態に係る収集機能15aによって用いられるk空間のトラジェクトリの一例を示す図である。
【0041】
例えば、図2に示すように、収集機能15aは、3次元のk空間について、ラジアル収集によって、k空間の中心から放射状に伸びる複数の直線状のトラジェクトリ21に沿ってデータを収集する。
【0042】
ここで、k空間に設定された複数のトラジェクトリに沿って収集されるサンプリング点をpの総数をNとすると、各サンプリング点pの座標(x(p),y(p),z(p))は、以下の式(1)~(3)で表される。
【0043】
【数1】
【数2】
【数3】
【0044】
また、複数のトラジェクトリについて、m番目のトラジェクトをSeg(m)で表すと、各トラジェクトリは以下のように定義される。ここで、右辺に含まれる複数の要素は、各トラジェクトリに沿って収集される複数のサンプリング点sに対応する。
【0045】
Seg(0)=0,m,2m,・・・,N-m
Seg(1)=1,m+1,2m+1,・・・,N-m+1


Seg(m)=m-1,2m-1,3m-1,・・・,N-1
【0046】
図3は、第1の実施形態に係る収集機能15aによって用いられるパルスシーケンスを示す図である。
【0047】
例えば、図3に示すように、収集機能15aは、一定のTRの間隔で被検体に励起パルス31を複数回印加し、TRの間隔ごとに、UTEを用いてエコー信号33を取得する。このとき、収集機能15aは、リードアウト傾斜磁場、位相エンコード傾斜磁場及びスライス傾斜磁場を含む傾斜磁場32を印加しながらエコー信号33を取得し、その後、励起パルス31を印加してから一定の時間が経過したタイミングでスポイラー傾斜磁場34を印加する。
【0048】
ここで、収集機能15aは、TEを複数のTRそれぞれで所定時間ずつ変化させることによって異なる長さに設定して、複数のエコー信号33を取得する。このとき、収集機能15aは、連続又はできる限り近接した時間順序で複数のエコー信号33を取得する。
【0049】
例えば、収集機能15aは、TEを所定時間ずつ連続して変化させる。このとき、例えば、収集機能15aは、TEを所定時間ずつ連続して増加させる。または、収集機能15aは、TEを所定時間ずつ連続して減少させてもよい。または、収集機能15aは、TEを所定時間だけ増加させること及び所定時間だけ減少させることを混在させて連続して行ってもよい。
【0050】
例えば、収集機能15aは、一定のTRの間隔で励起パルス31をn回印加し、TEをTEminからTRの間隔ごとにΔtずつ連続して増加させることによってTE1からTEnまで変化させて、複数のエコー信号33を取得する。
【0051】
この場合に、例えば、収集機能15aは、撮像対象の組織のT又はT 緩和時間に応じて、TEmin及びΔtを設定する。例えば、収集機能15aは、撮像対象の組織のT又はT 緩和時間が短いほど、TEmin及びΔtを短くし、撮像対象の組織のT又はT 緩和時間が長いほど、TEmin及びΔtを長く設定する。また、例えば、収集機能15aは、TRについては、最長のTEであるTEnのエコー信号を取得することが可能な最短の長さに設定する。
【0052】
例えば、収集機能15aは、励起パルス31を5回印加し、TEをTRごとに0.1ms、0.12ms、0.14ms、0.16ms、0.18msと変化させて、5つのエコー信号33を収集する。UTEの場合、FLASH(Fast Low-Angle SHot)による磁気共鳴信号の生成が行われるため、励起パルスのフリップ角を5~10°以下に保つこと、適切なスポイラー傾斜磁場、RFパルスの位相制御を行うことで、これら複数のTE間の信号変化はT2緩和時間に依存した部分に限定することが可能である。
【0053】
そして、収集機能15aは、TEを変化させて取得した複数のエコー信号33を用いて、k空間に設定された複数のトラジェクトリのうちの同一トラジェクトリについて、TEが異なる複数のデータを収集する。
【0054】
その後、収集機能15aは、傾斜磁場32に含まれるリードアウト傾斜磁場、位相エンコード傾斜磁場及びスライス傾斜磁場の配分を変えることによってトラジェクトリの立体角を変えながら複数のエコー信号33の取得を繰り返すことで、k空間に設定された全てのトラジェクトリについて、TEが異なる複数のデータを収集する。
【0055】
このとき、例えば、収集機能15aは、Golden Angleと呼ばれる角度でトラジェクトリを設定することによって、データを間引いて収集してもよい。また、例えば、収集機能15aは、呼吸同期等を併用することによってk空間を複数のセグメントに分割し、セグメント数分の間引きを行ってデータを収集してもよい。
【0056】
そして、本実施形態では、処理回路16の生成機能16aが、収集機能15aによって収集されたTEが異なる複数のデータに基づいて、カーブフィッティング等の公知の技術を用いてT 値を導出することで、T マップ画像を生成する。
【0057】
図4は、第1の実施形態に係るMRI装置100によって行われる撮像法の処理手順を示すフローチャートである。
【0058】
例えば、図4に示すように、本実施形態では、撮像制御機能17aが、操作者からの入力に基づいて、撮像で用いられるTEやTR等を含む撮像条件を設定する(ステップS11)。そして、撮像制御機能17aは、操作者から撮像を開始する指示を受け付けた場合に(ステップS12,Yes)、以下の処理を開始させる。
【0059】
まず、収集機能15aが、撮像制御機能17aによって設定された撮像条件に基づいて、上述したように、TEを複数のTRそれぞれで異なる長さに設定して複数のエコー信号を取得し、当該複数のエコー信号を用いて同一トラジェクトリのデータを収集する方法でk空間データを収集する(ステップS13)。
【0060】
続いて、生成機能16aが、収集機能15aによって収集されたk空間データに基づいて、T マップ画像を生成する(ステップS14)。
【0061】
ここで、上記ステップS11及びS12の処理は、例えば、処理回路17が撮像制御機能17aに対応する所定のプログラムを記憶回路13から読み出して実行することにより実現される。また、上記ステップS13の処理は、例えば、処理回路15が収集機能15aに対応する所定のプログラムを記憶回路13から読み出して実行することにより実現される。また、上記ステップS14の処理は、例えば、処理回路16が生成機能16aに対応する所定のプログラムを記憶回路13から読み出して実行することにより実現される。
【0062】
上述したように、第1の実施形態では、収集機能15aが、TRの間隔で被検体に励起パルスを印加することによってTRの間隔ごとに発生するエコー信号を取得し、当該エコー信号を用いて、k空間に設定された複数のトラジェクトリのデータを収集する。ここで、収集機能15aは、TEを複数のTRそれぞれで異なる長さに設定して複数のエコー信号を取得し、当該複数のエコー信号を用いて同一トラジェクトリのデータを収集する。
【0063】
このような構成によれば、TRごとに一つのエコー信号を取得することによって、dB/dtによる制約を受けずに高い強度の傾斜磁場を用いることができるため、空間分解能を向上させることができる。また、TEをTRの間隔ごとに変更することによって、TEの時間差を小さくすることができ、時間分解能を向上させることができる。
【0064】
したがって、本実施形態によれば、T又はT 緩和時間が短い組織を含む部位を撮像する際の空間分解能及び時間分解能を向上させることができる。
【0065】
また、本実施形態によれば、TEを変化させて連続又はできる限り近接した時間順序で取得した複数のエコー信号を用いて同一トラジェクトリのデータを収集することによって、撮像対象の部位における動きや流れの影響を最小限に抑えることができる。
【0066】
さらに、本実施形態の撮像法では、二つのTE間で傾斜磁場の波形がほぼ変わらないという利点がある。従来法では、動きや流れのある部位を撮像する際に、傾斜磁場によって生じる位相成分であるGM(Gradient Moment)の効果によって、動きや流れに対する感受性が大きく変化する。これに対し、本実施形態の撮像法では、二つのTE間で傾斜磁場の波形がほぼ変わらないため、動きや流れに対する感受性が維持されるようになる。
【0067】
ここで、T *マップ画像を生成するために必要なデータの収集にかかる収集時間について、一般的なマルチエコー法(以下、従来法)によって1回の励起パルスで複数のエコー信号を取得する場合と、本実施形態の撮像法によってTEを変化させて複数のエコー信号を取得する場合とで比較してみる。なお、ここでは、従来法で1トラジェクト分のデータ収集に用いるエコー信号の数を5、エコー間隔を1.5msとした場合と、本実施形態の撮像法で1トラジェクト分のデータ収集に用いるエコー信号の数を5、TEの可変範囲を2.5msまでとした場合とで収集時間を比較する。
【0068】
この場合に、従来法では、TRが9ms程度となり、トラジェクトリ数を20000とすると、収集時間は180sとなる。一方、本実施形態の撮像法では、TRが4ms程度となり、同じくトラジェクトリ数を20000とすると、80s*5=400sとなり、従来法と比べると収集時間が倍以上となってしまう。
【0069】
しかしながら、撮像対象となる線維化部分や運動器の腱等の2ms以下のT 緩和時間を考慮すると、従来法では信号減衰によって測定精度が高くならないことが想定されるが、本実施形態の撮像法では、精度の高い測定が可能になる。
【0070】
例えば、単純な比較として、2つのTEに絞って考えた場合、従来法では、TEは0.1msと1.6msとなり、その間の減衰を画像化するのに対し、本実施形態の撮像法では、一つ目のTEを0.1msとし、二つ目のTEを0.2msから1.6ms程度まで自由に選択できるため、臨床応用の自由度が拡大する。
【0071】
また、この場合に、同じくトラジェクトリ数を20000とすると、従来法では、TRが4ms程度となるため、収集時間は80sとなり、本実施形態の方法では、二つ目のTEを0.5ms、TRを2.5msとすると、収集時間は50s*2=100sとなる。しかし、精度向上に対する撮像時間延長の不利益は大きくないと考えられる。
【0072】
また、本実施形態の撮像法によってTEを変化させて収集される複数のエコー信号は、従来法で収集される複数のエコー信号と収集順や形式が同じであるため、従来法で用いられているデータ収集や画像再構成のフレームワーク(例えば、バッファメモリの使用方法等)をそのまま利用することができる。
【0073】
以上、第1の実施形態について説明したが、本願に係るMRI装置の実施形態はこれに限ら得ない。そこで、以下では、本願に係るMRI装置の他の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態では、第1の実施形態と異なる点を中心に説明することとし、第1の実施形態と共通する内容については説明を省略する。
【0074】
(第2の実施形態)
まず、上述した第1の実施形態では、一回のTRで一つのエコー信号を取得する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。
【0075】
例えば、収集機能15aは、TEを複数のTRそれぞれで異なる長さに設定して複数の第1エコー信号を取得し、かつ、TEを複数のTRそれぞれで固定の長さに設定して複数の第2エコー信号をさらに取得し、取得された複数の第1エコー信号及び複数の第2エコー信号を用いて、同一トラジェクトリのデータを収集してもよい。
【0076】
図5は、第2の実施形態に係る収集機能15aによって用いられるパルスシーケンスを示す図である。
【0077】
例えば、図5に示すように、収集機能15aは、一定のTRの間隔で被検体に励起パルス51を複数回印加し、TRの間隔ごとに、UTEを用いて第1エコー信号53を取得する。このとき、収集機能15aは、リードアウト傾斜磁場、位相エンコード傾斜磁場及びスライス傾斜磁場を含む傾斜磁場52を印加しながら第1エコー信号53を取得し、その後、リワインダー傾斜磁場54を印加する。
【0078】
ここで、収集機能15aは、第1の実施形態と同様に、TEを複数のTRそれぞれで所定時間ずつ変化させることによって異なる長さに設定して、複数の第1エコー信号53を取得する。
【0079】
さらに、収集機能15aは、TRの間隔ごとに、リワインダー傾斜磁場54を印加した後に、GRE(Gradient Echo)法によって第2エコー信号56を取得する。このとき、収集機能15aは、リードアウト傾斜磁場、位相エンコード傾斜磁場及びスライス傾斜磁場を含む傾斜磁場55を印加して第2エコー信号56を取得し、その後、励起パルス31を印加してから一定の時間が経過したタイミングでスポイラー傾斜磁場57を印加する。
【0080】
ここで、収集機能15aは、TEを複数のTRそれぞれで固定の長さに設定して、複数の第2エコー信号56を取得する。
【0081】
例えば、収集機能15aは、TEを0.1msから2.5msまで5段階に変化させて複数の第1エコー信号53を取得し、TEを4ms程度に固定して複数の第2エコー信号56を取得する。
【0082】
そして、収集機能15aは、TEを変化させて取得した複数の第1エコー信号53と、TEを固定して取得した複数の第2エコー信号56とを用いて、k空間に設定された複数のトラジェクトリのうちの同一トラジェクトリについて、TEが異なる複数のデータを収集する。
【0083】
例えば、収集機能15aは、k空間を中心領域と周辺領域とに分割し、トラジェクトリごとに、中心領域に含まれる範囲は第1エコー信号を用いてデータを収集し、周辺領域に含まれる範囲は第2エコー信号を用いてデータを収集する。
【0084】
このとき、例えば、収集機能15aは、Keyhole法と呼ばれる撮像法を用いて、トラジェクトリごとに、コントラストを定めるk空間の中心領域の範囲は、TEを変化させて取得した複数の第1エコー信号53を用いて複数のデータを収集する一方で、k空間の周辺領域の範囲は、TEを固定して取得した第2エコー信号を同一トラジェクト内で共通に用いて複数のデータを収集する。
【0085】
上述したように、第2の実施形態では、収集機能15aが、TEを複数のTRそれぞれで異なる長さに設定して複数の第1エコー信号を取得し、かつ、TEを複数のTRそれぞれで固定の長さに設定して複数の第2エコー信号をさらに取得し、取得された複数の第1エコー信号及び複数の第2エコー信号を用いて、同一トラジェクトリのデータを収集する。そして、収集機能15aは、k空間を中心領域と周辺領域とに分割し、トラジェクトリごとに、中心領域に含まれる範囲は第1エコー信号を用いてデータを収集し、周辺領域に含まれる範囲は第2エコー信号を用いてデータを収集する。
【0086】
本実施形態では、第1エコー信号及び第2エコー信号について、k空間上に占める位置が独立に制御できることから、このような収集パターンが可能になる。さらに、時間分解能に制約のある第1エコー信号については、収集帯域をWide Band、すなわち強めの傾斜磁場強度を使う必要があるのに対し、TE、TR時間の設定に自由度のある第2エコーについては、収集帯域をNarrow Band、すなわち弱めの傾斜磁場を使ってSNRを増強させるような制御を取り入れることも可能である。
【0087】
このような構成によれば、TEを固定して取得した第2エコー信号を同一トラジェクト内で共通に用いることによって、T *マップ画像を生成するために必要なデータの収集にかかる収集時間を短縮することができる。
【0088】
これにより、例えば、TRは6msに延長するが、トラジェクトリ数を20000とすると、120sの収集時間で5つのTEのエコー信号を収集することが可能になる。これにより、短いTEでのサンプリング点密度を上げ、かつ長めのTEを収集することでT2値の計算に関する精度向上も期待できる。
【0089】
(第2の実施形態の変形例)
なお、上述した第2の実施形態は、PETRA(Pointwise Encoding Time Reduction With Radial Acquisition)と呼ばれる撮像法に適用することも可能である。
【0090】
PETRAは、UTEを利用した撮像法であり、k空間の中心領域はカルテシアン収集によって点ごとにデータを収集し、k空間の周辺領域はラジアル収集によってデータを収集することによって、空間分解能を向上させることが可能な撮像法である。
【0091】
図6は、第2の実施形態の変形例に係る収集機能15aによって用いられるk空間のトラジェクトリの一例を示す図である。
【0092】
例えば、図6に示すように、PETRAでは、k空間が中心領域と周辺領域とに分割され、中心領域については、カルテシアン収集によって点61ごとにデータが収集され、周辺領域については、ラジアル収集によってk空間の中心から放射状に伸びる直線62に沿ってデータが収集される。
【0093】
この場合に、収集機能15aは、上述した第2の実施形態と同様に、TEを複数のTRそれぞれで異なる長さに設定して複数の第1エコー信号を取得し、かつ、TEを複数のTRそれぞれで固定の長さに設定して複数の第2エコー信号をさらに取得し、取得された複数の第1エコー信号及び複数の第2エコー信号を用いて、同一トラジェクトリのデータを収集する。
【0094】
例えば、収集機能15aは、TEを0.1msからTRごとに0.1msずつ増加させながら、複数のエコー信号を収集する。
【0095】
そして、収集機能15aは、k空間を中心領域と周辺領域とに分割し、中心領域に含まれる範囲は、第1エコー信号を用いて、カルテシアン収集によって点61ごとにデータを収集し、周辺領域に含まれる範囲は、第2エコー信号を用いて、ラジアル収集によってk空間の中心から放射状に伸びる直線62に沿ってデータを収集する。
【0096】
このとき、例えば、収集機能15aは、撮像対象の部位に応じて、k空間内における中心領域と周辺領域との比率や、各領域内に設定されるサンプリング点の数を設定する。
【0097】
そして、収集機能15aは、Keyhole法と同様に、トラジェクトリごとに、コントラストを定めるk空間の中心領域の範囲については、TEを変化させて取得した複数の第1エコー信号53を用いて複数のデータを収集する一方で、k空間の周辺領域の範囲については、TEを固定して取得した第2エコー信号を同一トラジェクト内で共通に用いて複数のデータを収集する。
【0098】
なお、上述した第2の実施形態及び変形例では、一回のTRで二つのエコー信号を取得する場合の例を説明したが、一回のTRで取得するエコー信号の数はこれに限られない。例えば、収集機能15aは、TRごとに、第2エコー信号に続いて一つ以上のエコー信号をさらに収集してもよい。その場合、収集機能15aは、第2エコー信号以降で収集される各エコー信号については、それぞれ、TRごとにTEを固定して収集する。
【0099】
(第3の実施形態)
なお、上述した各実施形態で説明した撮像法は、特定の組織の信号を強調又は抑制して撮像を行うコントラスト強調撮像にも適用することが可能である。
【0100】
ここで、コントラスト強調撮像は、特定の組織の信号を強調又は抑制するプリパルスを被検体に印加した後に、所定の待ち時間が経過した時点でk空間のデータを収集するものである。例えば、このようなコントラスト強調撮像の手法として、Time-SLIP(time-spatial labeling inversion pulse)法や脂肪抑制法等が挙げられる。ここで、Time-SLIP法は、血液やCSF等をラベリングするラベリングパルスを印加することによって、血液やCSF等の流れや移動を可視化する方法である。また、脂肪抑制法は、脂肪のスピンを選択的に飽和させる脂肪抑制パルスを印加することによって、画像化される脂肪の信号を抑制する方法である。
【0101】
この場合に、収集機能15aは、特定の組織の信号を強調又は抑制するプリパルスを被検体に印加した後に、所定の待ち時間が経過した時点で、k空間に設定された複数のトラジェクトリのデータを収集する。
【0102】
図7は、第3の実施形態に係るコントラスト強調撮像の一例を示す図である。
【0103】
例えば、図7に示すように、収集機能15aは、特定の組織の信号を強調又は抑制するプリパルス(Prep-Pulse)を被検体に印加した後に、所定の待ち時間が経過した時点で、上述した各実施形態で説明したように、k空間に設定されたトラジェクトリごとに一定のTRの間隔で励起パルス72を複数回印加して、TEをTRの間隔ごとに変化させて複数のエコー信号73を収集するループ(図7に示すTR*n)を連続して実行する。
【0104】
ここで、撮像対象の部位を複数時相で撮像する場合には、収集機能15aは、所定の時間間隔(図7に示すTrepeat)でプリパルスを複数回印加し、当該時間間隔ごとに、上記のループを連続して実行する。
【0105】
(その他の実施形態)
なお、上述した第2及び第3の実施形態では、第1エコー信号を用いてk空間の中心領域に含まれる範囲のデータを収集し、第2エコー信号を用いてk空間の周辺領域に含まれる範囲のデータを収集する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。
【0106】
例えば、第2及び第3の実施形態で説明した撮像法は、腹部の検査等でIn phase画像及びOut of phase画像を撮像する場合にも適用することが可能である。
【0107】
ここで、In phase画像は、水と脂肪の周波数差が同位相となるようにTEを設定することによって得られる画像であり、Out of phase画像は、水と脂肪の周波数差が逆位相となるようにTEを設定することによって得られる画像である。
【0108】
この場合に、収集機能15aは、上述した第2及び第3の実施形態と同様に、TEを複数のTRそれぞれで異なる長さに設定して複数の第1エコー信号を取得し、かつ、TEを複数のTRそれぞれで固定の長さに設定して複数の第2エコー信号をさらに取得し、取得された複数の第1エコー信号及び複数の第2エコー信号を用いて、同一トラジェクトリのデータを収集する。
【0109】
そして、収集機能15aは、第1エコー信号を用いて、In phase画像を生成するためのデータを収集し、第2エコー信号を用いて、Out of phase画像を生成するためのデータを収集する。または、収集機能15aは、第1エコー信号を用いて、Out of phase画像を生成するためのデータを収集し、第2エコー信号を用いて、In phase画像を生成するためのデータを収集してもよい。特に、3T以上の静磁場強度でIn PhaseとOut of Phaseとの時間差が小さくなる(例えば、7Tでは0.95ms)場合に、有効性が高く、さらに上述したようにGMによる流れの影響の変動も最小限に止めることが可能である。
【0110】
また、上述した各実施形態では、3次元のk空間のデータを収集して3次元の画像を生成する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、各実施形態で説明撮像法は、2次元のk空間データを収集して2次元の画像を生成する場合にも同様に適用することが可能である。
【0111】
また、上述した各実施形態では、本明細書における収集部を処理回路15の収集機能15aによって実現する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、本明細書における収集部は、実施形態で述べた収集機能15aによって実現する他にも、ハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、又は、ハードウェアとソフトウェアとの混合によって同機能を実現するものであっても構わない。
【0112】
また、上記説明では、「プロセッサ」が各処理機能に対応するプログラムを記憶回路から読み出して実行する例を説明したが、実施形態はこれに限定されない。「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出して実行することで、各処理機能を実現する。一方、プロセッサがASICである場合、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、当該処理機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれるなお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて一つのプロセッサとして構成され、その処理機能を実現するようにしてもよい。さらに、図1における複数の構成要素を一つのプロセッサへ統合して、その処理機能を実現するようにしてもよい。
【0113】
ここで、プロセッサによって実行されるプログラムは、ROM(Read Only Memory)や記憶回路等に予め組み込まれて提供される。なお、このプログラムは、これらの装置にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disk)-ROM、FD(Flexible Disk)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記録されて提供されてもよい。また、このプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードされることにより提供又は配布されてもよい。例えば、このプログラムは、上述した各機能部を含むモジュールで構成される。実際のハードウェアとしては、CPUが、ROM等の記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより、各モジュールが主記憶装置上にロードされて、主記憶装置上に生成される。
【0114】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、T又はT 緩和時間が短い組織を含む部位を撮像する際の空間分解能及び時間分解能を向上させることができる。
【0115】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0116】
100 MRI装置
15 処理回路
15a 収集機能
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7