(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】部品実装機及び部品実装システム
(51)【国際特許分類】
H05K 13/04 20060101AFI20250311BHJP
【FI】
H05K13/04 A
(21)【出願番号】P 2021142325
(22)【出願日】2021-09-01
【審査請求日】2024-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井村 仁哉
【審査官】森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/128584(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/049253(WO,A1)
【文献】特開2014-116357(JP,A)
【文献】特開2018-46091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00 - 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を吸着可能なノズルと、
複数種類の前記ノズルが着脱可能とされており、ヘッド本体と、該ヘッド本体に対して前記ノズルを昇降するノズル昇降機構と、を備えるヘッドと、
前記ノズルの種類毎に、当該ノズルが前記ヘッド本体に対して昇降可能となる高さ方向の長さである昇降可能高さを記憶する記憶部と、
前記ノズル昇降機構を制御する制御部であって、前記ヘッドに装着されている前記ノズルの種類に対応する前記記憶部に記憶された前記昇降可能高さに基づいて、前記ノズル昇降機構を制御する、制御部と、
を備える、部品実装機。
【請求項2】
前記記憶部は、前記ノズルの種類毎に、当該ノズルの前記高さ方向と直交するX方向及びY方向の寸法を記憶しており、
前記昇降可能高さは、前記ノズルのX方向及びY方向の寸法が所定値未満の場合は一定値となり、前記ノズルのX方向及びY方向の寸法が所定値以上の場合は前記ノズルのX方向及びY方向の寸法に応じて設定されている、請求項1に記載の部品実装機。
【請求項3】
前記ヘッドは、前記ノズルに吸着した部品を基板に実装可能に構成されており、
前記記憶部は、前記基板に先付けされた部品の高さ方向の寸法である先付け部品寸法をさらに記憶しており、
前記制御部は、前記記憶部に記憶された前記昇降可能高さと前記先付け部品寸法に基づいて計算される前記ノズルの昇降可能範囲で前記ノズルを昇降させる、請求項1又は2に記載の部品実装機。
【請求項4】
前記部品実装機は、前記ヘッドを前記X方向及び前記Y方向に移動させるXY方向移動機構をさらに備えており、
前記ヘッドは、前記ヘッド本体を前記XY方向移動機構に対して昇降するヘッド本体昇降機構をさらに備えており、
前記ノズルの昇降可能範囲は、前記昇降可能高さと、前記先付け部品寸法と、前記XY方向移行機構に対する前記ヘッド本体の前記高さ方向の位置と、に基づいて計算される、請求項3に記載の部品実装機。
【請求項5】
部品を吸着可能なノズルと、
複数種類の前記ノズルが着脱可能とされており、ヘッド本体と、該ヘッド本体に対して前記ノズルを昇降するノズル昇降機構と、を備えるヘッドと、
を備え、
前記ノズルに吸着した前記部品を基板に実装する部品実装機において、前記ノズルの昇降可能範囲を決定する方法であって、
前記ヘッドに装着されたノズルの種類を特定する工程と、
前記特定したノズルの種類に応じて設定された、当該ノズルが前記ヘッド本体に対して昇降可能となる高さ方向の長さである昇降可能高さを取得する工程と、
前記取得した前記昇降可能高さに基づいて、前記ノズルの昇降可能範囲を決定する工程と、
を備える、方法。
【請求項6】
部品実装機と、該部品実装機と通信可能に接続されるコンピュータと、を備える部品実装システムであって、
前記部品実装機は、
部品を吸着可能なノズルと、
複数種類の前記ノズルが着脱可能とされており、ヘッド本体と、該ヘッド本体に対して前記ノズルを昇降するノズル昇降機構と、を備えるヘッドと、
前記コンピュータから送信される情報を受信する受信部と、
前記ノズル昇降機構を制御する制御部と、
を備えており、
前記コンピュータは、
前記ノズルの種類毎に、当該ノズルが前記ヘッド本体に対して昇降可能となる高さ方向の長さである昇降可能高さを記憶する昇降高さ記憶部と、
前記昇降高さ記憶部に記憶された前記昇降可能高さを前記部品実装機の前記受信部に送信する送信部と、
を備えており、
前記部品実装機の前記制御部は、前記受信部で受信した前記昇降可能高さであって、前記ヘッドに装着されている前記ノズルの種類に対応する前記昇降可能高さに基づいて、前記ノズル昇降機構を制御する、
部品実装システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、ヘッドに装着したノズルで部品を基板に実装する部品実装機に関する。詳しくは、部品を吸着するノズルの昇降可能高さを決定するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
部品実装機では、ヘッドに装着したノズルで部品を吸着し、その吸着した部品を基板に実装する。部品を吸着するノズルが他の部品等と干渉すると、基板の所望の位置に部品を実装することができない。このため、部品を吸着するノズルと他の部品等との干渉を回避する技術が開発されている(例えば、特許文献1)。特許文献1に開示する部品実装機では、複数のノズルがヘッドに装着され、複数のノズルのそれぞれに部品が吸着される。隣接するノズルに吸着された部品同士が干渉する場合には、ノズルの姿勢を変更して部品同士の干渉を回避している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の部品実装機では、ヘッドに対してノズルが昇降可能とされており、部品の吸着及び実装時にノズルがヘッドに対して昇降する。ヘッドに装着されるノズルの径方向の寸法が大きいと、ノズル昇降時にノズルとヘッドとの干渉が生じる。このため、従来の技術では、ノズルの径方向の寸法が設定値より大きい場合は、ノズルの昇降可能高さを制限し、ノズルとヘッドとの干渉を回避している。
【0005】
ところで、ノズルには様々な種類があり、ノズルの種類によってその形状が異なる。例えば、ノズルの下端部の寸法のみが設定値を超え、ノズルの下端部のみがヘッドと干渉するものがある一方で、ノズルの下端部だけでなくノズルの中央部や上端部の寸法まで設定値を超え、ノズルの上端部からヘッドと干渉するものもある。しかしながら、従来の技術では、ノズルの上端部から下端部まで一ヶ所でもその寸法が設定値より大きい場合、ノズルの昇降可能高さを一律に制限していた。このため、ノズルの種類によっては、ノズルの昇降可能高さが制限され過ぎているという問題が生じている。
【0006】
本明細書は、ノズルの種類に応じて適切にノズルの昇降可能高さを制限することができる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示する部品実装機は、部品を吸着可能なノズルと、複数種類のノズルが着脱可能とされているヘッドと、を備える。ヘッドは、ヘッド本体と、該ヘッド本体に対してノズルを昇降するノズル昇降機構と、を備える。部品実装機は、さらに、ノズルの種類毎に、当該ノズルがヘッド本体に対して昇降可能となる高さ方向の長さである昇降可能高さを記憶する記憶部と、ノズル昇降機構を制御する制御部と、を備える。制御部は、ヘッドに装着されているノズルの種類に対応する記憶部に記憶された昇降可能高さに基づいて、ノズル昇降機構を制御する。
【0008】
この部品実装機では、ノズルの種類毎にヘッドに対する昇降可能高さが記憶され、その記憶された昇降可能高さに基づいてノズル昇降機構が制御される。このため、ノズルの種類に応じてノズルの昇降可能高さを適切に制限することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例に係る部品実装機の概略構成を示す図。
【
図2】ヘッドを上下方向に移動させるヘッド昇降装置を説明するための図。
【
図3】ノズルを側面から見た図であり、ノズルの各部の寸法を説明するための図。
【
図4】ノズルと、そのノズルに吸着された部品と、基板に先付けされた部品とを合わせて示す模式図。
【
図5】実施例に係る部品実装システムの構成を示すブロック図。
【
図6】実装処理時におけるノズル高さを決定するノズル高さ決定処理の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書に開示する部品実装機では、記憶部は、ノズルの種類毎に、当該ノズルの高さ方向と直交するX方向及びY方向の寸法を記憶していてもよい。そして、昇降可能高さは、ノズルのX方向及びY方向の寸法が所定値未満の場合は一定値となる一方で、ノズルのX方向及びY方向の寸法が所定値以上の場合は、ノズルのX方向及びY方向の寸法に応じて設定されていてもよい。
【0011】
本明細書に開示する部品実装機では、ヘッドは、ノズルに吸着した部品を基板に実装可能に構成されていてもよい。記憶部は、基板に先付けされた部品の高さ方向の寸法である先付け部品寸法をさらに記憶していてもよい。制御部は、記憶部に記憶された昇降可能高さと先付け部品寸法に基づいて計算されるノズルの昇降可能範囲でノズルを昇降させてもよい。
【0012】
本明細書に開示する部品実装機は、ヘッドをX方向及びY方向に移動させるXY方向移動機構をさらに備えていてもよい。ヘッドは、ヘッド本体をXY方向移動機構に対して昇降するヘッド本体昇降機構をさらに備えていてもよい。ノズルの昇降可能範囲は、昇降可能高さと、先付け部品寸法と、XY方向移行機構に対するヘッド本体の高さ方向の位置と、に基づいて計算されてもよい。
【実施例】
【0013】
図面を参照して、実施例に係る部品実装システム70について説明する。
図5に示すように、部品実装システム70は、部品実装機10と、部品実装機10に通信可能に接続された管理装置60と、を備えている。
【0014】
部品実装機10は、基板Sに部品18を実装する装置である。
図1に示すように、部品実装機10は、ハウジング12と、着脱可能に取付けられる部品フィーダ16と、ハウジング12内に収容される基板搬送装置14及びヘッド20を備えている。なお、本明細書においては、
図1に示す部品実装機10の左右方向をX軸方向、前後方向をY軸方向、上下方向(すなわち、高さ方向)をZ軸方向として説明する。
【0015】
基板搬送装置14は、ハウジング12内の部品実装位置への基板Sの搬入と、部品実装位置からハウジング12外への基板Sの搬出を行う装置である。本実施例では、ハウジング12内に2台の基板搬送装置14がY軸方向に並んで設置され、ハウジング12内に2枚の基板Sを同時に搬入可能となっている。
【0016】
部品フィーダ16は、テープ式の部品フィーダであり、複数の部品18(
図4に図示)を収容している。部品フィーダ12は、部品18を収容するテープを送ることで、ヘッド20に部品18を供給する。部品実装機10には、複数の部品フィーダ12が取付け可能となっている。このため、異なる種類の部品18を収容する部品フィーダ12を部品実装機10に取付けることで、ヘッド20には複数種類の部品18が供給可能となっている。
【0017】
ヘッド20は、複数のノズル40を着脱可能に保持するヘッド本体24(
図3に図示)を備える。複数のノズル40のそれぞれは、部品18を吸着可能となっている。ヘッド20は、複数のノズル40のそれぞれをヘッド本体24に対してZ軸方向に昇降させるノズル昇降装置28(
図5に図示;ノズル昇降機構の一例)を備えている。ノズル昇降装置28によってノズル40を昇降することで、ノズル40に部品18を吸着することができ、また、ノズル40に吸着した部品18を基板Sに実装することができる。
【0018】
ヘッド20は、XYロボット30(XY方向移動機構の一例)によりハウジング12内を移動可能となっている。XYロボット30は、Y軸スライダ32とX軸スライダ34を備えている。Y軸スライダ32は、ハウジング12に対してY軸方向に移動可能に取付けられており、図示しない駆動装置によって駆動されることでハウジング12に対してY軸方向に移動する。X軸スライダ34は、Y軸スライダ32に対してX軸方向に移動可能に取付けられており、図示しない駆動装置によって駆動されることでY軸スライダ32に対してX軸方向に移動する。X軸スライダ34にはヘッド20が取付けられている。X軸スライダ34及びY軸スライダ32が駆動されることで、ヘッド20はX軸方向及びY軸方向に移動することができる。
【0019】
ヘッド20は、さらにヘッド昇降装置26(
図5に図示;ヘッド本体昇降機構の一例)をさらに備えている。
図2に示すように、ヘッド昇降装置26は、X軸スライダ34にZ軸方向に移動可能に取付けられたZ軸スライダ36を備えている。Z軸スライダ36は、図示しない駆動装置によって駆動されることでX軸スライダ34に対してZ軸方向に移動する。Z軸スライダ34がZ方向に移動すると、Z軸スライダ34に取付けられたヘッド本体24もZ軸方向に移動する。これによって、ヘッド20は、
図2(a)に示す位置から
図2(b)に示す位置との間で移動可能となっている。X軸スライダ34とY軸スライダ32とZ軸スライダ34のそれぞれの位置は制御可能となっており、これによって、ハウジング12内のヘッド20の位置(x,y,z)が制御可能となっている。
【0020】
制御部50は、CPU及び記憶装置を備えるコンピュータを用いて構成されている。制御部50は、記憶装置に記憶されたプログラムを実行することで、部品実装機10の各部(14,16,20,30等)の動作を制御する。制御部50が部品実装機10の各部(14,16,20,30等)の動作を制御することで、基板Sに複数の部品18が実装される。すなわち、基板Sは、基板搬送装置14によりハウジング12内の部品実装位置に搬入される。基板Sが部品実装位置に搬入されると、ヘッド20が部品フィーダ16の上方に移動し、ノズル40により部品18が吸着される。ノズル40に部品18を吸着すると、ヘッド20が基板Sの上方に移動し、ノズル40に吸着した部品18を基板Sに実装する。部品18が実装された基板Sは、基板搬送装置14によりハウジング12外に搬送される。また、制御部50は、通信部52を介して管理装置60に接続されており、管理装置60との間でデータの送受信を行う。例えば、制御部50は、管理装置60から送信される実装プログラムを受信する。また、制御部50は、管理装置60から送信される部品18に関する情報及びノズル40に関する情報を受信し、これらに用いてノズル40の昇降制御を行う。なお、管理装置60の構成については、後で詳述する。
【0021】
上記の説明から明らかなように、ノズル40のZ軸方向(高さ方向)の位置は、ヘッド昇降装置26により駆動されるZ軸スライダ36の位置(すなわち、X軸スライダ34に対するZ軸スライダ36(ヘッド本体24)のZ軸方向の位置)と、ノズル昇降装置28により駆動されるノズル40の位置(すなわち、ヘッド本体24に対するノズル40のZ軸方向の位置)により決まる。
【0022】
ここで、部品18を吸着するノズル40について説明する。
図3に示すように、ノズル40は、円筒状の本体48と、本体48の上端に設けられた上端フランジ42と、本体48の下端に設けられた下端当接部44を備えている。上端フランジ42は、ヘッド本体24の図示しない接続部に接続され、この接続部はヘッド本体24のノズル装着孔22内に位置している。上端フランジ42が接続される接続部がノズル昇降装置28によってZ軸方向に移動することで、ノズル40がヘッド本体24に対して昇降するようになっている。また、接続部がノズル装着孔22内に位置することから、上端フランジ42の径D1(すなわち、X方向及びY方向の寸法)は、ノズル装着孔22の径D2よりも小さくなる(D1<D2)。
【0023】
下端当接部44は、ノズル40に部品18を吸着する際に部品18と当接する部位である。下端当接部44には、部品18を把持するチャック46が設けられている。チャック46で部品18を把持することで、ノズル40に部品18を確実に保持することができる。
図3から明らかなように、下端当接部44の径D3(すなわち、X軸方向及びY軸方向の寸法)は、ノズル装着孔22の径D2よりも大きくなっている(D3>D2)。このため、ノズル昇降装置28によってノズル40がヘッド本体24に対して昇降すると、下端当接部44がヘッド本体24の下面と干渉することになる。このため、ノズル40は、下端当接部44がヘッド本体24の下面と干渉(当接)する位置まで上昇することはできるが、それ以上は上昇することはできない。
【0024】
なお、部品実装機10には、吸着する部品18の種類に応じて複数種類のノズル40が用意されている。複数種類のノズル40は、ヘッド本体24に着脱可能となっており、吸着する部品に応じて選択された種類のノズル40が使用される。ノズル40の形状は、種類毎に異なる形状を有している。例えば、ノズル40の上端から下端までの寸法(X軸方向及びY軸方向の寸法)がノズル装着孔22の径D2よりも小さく一定のものもあれば、ノズル40の中間部の寸法(X軸方向及びY軸方向の寸法)がノズル装着孔22の径D2よりも大きいものもある。上端から下端までの寸法(X軸方向及びY軸方向の寸法)がD2より小さいノズル40は、ノズル昇降装置28によって上昇し得る最も高い位置までノズル40が上昇することができる。一方、中間部の寸法(X軸方向及びY軸方向の寸法)がD2より大きいノズル40は、中間部がヘッド本体24の下面と干渉する位置(高さ)までしかノズル40は上昇できない。
【0025】
本実施例では、ノズル40の種類に応じて、ヘッド本体24に対してノズル40が昇降可能となる高さ(以下、昇降可能高さという)が設定される。ここで、昇降可能高さとは、ヘッド本体24に対してノズル40が最下点から上昇し得る最上点まで移動したときの移動距離(Z軸方向の長さ)と考えることができる。上記の説明から明らかなように、ノズル40の径(X軸方向及びY軸方向の寸法)が大きくなると、ヘッド本体24とノズル40が干渉する高さがノズル40の上昇し得る最上点となる。したがって、ノズル40の昇降可能高さは、ノズルの種類(形状)によって異なる値となる。例えば、ノズル40の最大径がD2(詳細には、D2からクリアランス分を減じた値)よりも小さい場合、ノズル40の昇降可能高さは、ノズル昇降装置28によってノズル40が上昇し得る最も高い最上点と最下点との距離(一定値)となる。一方、ノズル40の最大径が径D2(詳細には、径D2からクリアランス分を減じた値)よりも大きい場合、例えば、
図3に示すノズル40では、下端当接部44がヘッド本体24の下面と干渉する点が最上点となり、この最上点から最下点までの距離が昇降可能高さとなる。
【0026】
次に、
図4を用いて、ノズル40に吸着した部品18bと、基板Sに実装されている部品18a(いわゆる、先付け部品)との干渉について説明する。
図4に示すように、基板Sに部品18aが先付けされている場合、ノズル40に吸着した部品18bは、先付け部品18aとの干渉を回避する必要がある。すなわち、基板Sに部品18bを実装するためには、ノズル40に吸着した部品18bの下面が部品18aの上面よりも上方となる位置までノズル40を上昇させなければならない。(ノズル40の上端から基板Sまでの距離h
maxが、
図4に示すような状態となる必要がある。)
【0027】
既に説明したように、ノズル40は下端当接部44に最大径を有しており、下端当接部44がヘッド本体24と干渉する。すなわち、ノズル40のヘッド本体24に対する昇降可能高さは、ノズル40の上端から下端までの長さl1ではなく、上端フランジ42から下端当接部44までの長さl2となっている。このため、ヘッド昇降装置26によりヘッド本体24を上昇させ、基板Sから上端フランジ42までの距離をh1(詳細には、クリアランスaを考慮した値)とする必要がある。したがって、ヘッド昇降装置26によりヘッド本体24を上昇させる最大昇降高さがh1未満であると、部品18aと部品18bの干渉を回避することができないこととなる。一方、ヘッド昇降装置26によりヘッド本体24を上昇させる最大昇降高さがh1以上であると、部品18aと部品18bの干渉を回避することができることとなる。
【0028】
上記したことから明らかなように、ノズル40が昇降できる最大高さは、ヘッド昇降装置26によりヘッド本体24を上昇できる最大昇降高さと、ヘッド本体24に対してノズル40が昇降可能となる昇降可能高さとの和となる。一方、ノズル40が降下できる最低高さは、ノズル40に吸着した部品18bの高さ方向の寸法と、基板Sに実装されている先付け部品18aの高さ方向の寸法との和(実際には、両部品18a,18b間に設定されるクリアランスcも含む)となる。したがって、ノズル40の昇降可能範囲は、上記の最大高さ(ヘッド昇降装置26による最大昇降高さ+ヘッド本体24に対するノズル40の昇降可能高さ)と、部品18a,18bの高さ方向の寸法で算出することができる。本実施例では、上記のように算出されるノズル40の昇降可能範囲の中から、
図4に示す各種クリアランスa,b,cを考慮して、実装処理で用いられるノズル40の高さ(ノズル高さ)が決定される。ここで、クリアランスaは、ノズル40の下端当接部44とヘッド本体24との間に設定されるクリアランスである。クリアランスbは、ノズル40の下端当接部44と部品18aとの間に設定されるクリアランス(チャック46により生じ得る、下端当接部44と部品18aとの隙間)である。クリアランスcは、上記したように吸着した部品18aと先付け部品18bとの間に設定されるクリアランスである。
【0029】
なお、ノズル40の昇降可能な最大高さ(ヘッド昇降装置26による最大昇降高さ+ヘッド本体24に対するノズル40の昇降可能高さ)が、ノズル40が降下できる最低高さ(部品18a,18bの高さ方向の寸法の和)より低い場合は、吸着した部品18aと先付け部品18bとが干渉することとなる。したがって、このような部品18aについては部品実装機10では基板Sに実装できないこととなる。
【0030】
次に、部品実装機10と通信可能に接続される管理装置60(コンピュータの一例)について説明する。管理装置60は、CPU及び記憶装置を備えるコンピュータを用いて構成されており、演算部62と、入力部64と、記憶部66と、通信部68を備えている。
【0031】
入力部64は、部品実装機10において回路基板Sに実装する部品18の種類及び位置が入力される。すなわち、回路基板Sに実装する複数の部品18のそれぞれについて、その種類と、その実装位置が入力される。
【0032】
記憶部66は、部品18の種類毎に、その種類の部品18の寸法(X軸方向の寸法、Y軸方向の寸法、Z軸方向の寸法)と、当該種類の部品18を吸着するためのノズル40の種類が記憶されている。また、記憶部66は、ノズル40の種類毎に、当該種類のノズル40の寸法(X軸方向の寸法、Y軸方向の寸法)と、当該種類のノズル40の昇降可能高さが記憶されている。
【0033】
演算部62は、入力部64から入力された部品18の種類及び位置に基づいて、部品実装機10で実行される部品実装プログラムを生成する。部品実装プログラムは、基板Sに実装される複数の部品18の実装順序と、その実装位置を規定する。また、演算部62は、入力部64から入力された複数の部品18の種類に基づいて、記憶部66から部品18に関する情報と、ノズル40に関する情報を取得する。具体的には、部品18の種類から当該部品18の寸法と、当該部品40を吸着するノズル40の種類を取得し、また、その取得したノズル40の種類からノズル40の昇降可能高さ(ヘッド本体24に対してノズル40が昇降可能となる高さ)を取得する。
【0034】
通信部68は、演算部62で生成した部品実装プログラムと、演算部62で取得した部品18に関する情報及びノズル40に関する情報を部品実装機10に送信する。通信部68から部品実装機10に送信された各種データは、通信部52を介して制御部50のメモリ50a(記憶部の一例)に記憶される。
【0035】
部品実装機10の制御部50は、管理装置60から送信されるデータを処理する。すなわち、制御部50は、管理装置60から送信される部品実装プログラムと、部品18に関する情報及びノズル40に関する情報に基づいて、実装処理時のノズル40の高さ(ノズル高さ)を決定するノズル高さ決定処理を行う。また、制御部50は、ノズル高さ決定処理で決定したノズル高さと、受信した部品実装プログラムに基づいて、基板Sに部品を実装する部品実装処理を実行する。まず、ノズル高さ決定処理について説明する。
【0036】
図6に示すように、制御部50は、まず、部品実装プログラムで規定される実装順序に従って、部品18の種類と、その部品18の寸法(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向の寸法)をメモリ50aより取得する(S10)。すなわち、部品実装プログラムと部品18に関する情報及びノズル40に関する情報は、管理装置60から送信され、メモリ50aに記憶されている。S10では、基板Sに1番目に実装される部品18から最後に実装される部品18まで、その種類と寸法がメモリ50aから取得される。
【0037】
次に、制御部50は、実装順序にしたがって部品を選択する(S12)。後述するように、ノズル高さ決定処理は、基板Sに実装される部品18の全てについて実行される。このため、S12では、ノズル高さが決定されていない部品18のうち、最先に実装される部品18が選択される。
【0038】
次に、制御部50は、S12で選択した部品18を吸着するノズル40に関する情報を取得する(S14)。既に説明したように、本実施例では、部品18の種類に応じて、その部品18を吸着するノズル40の種類が決まっている。部品18の種類毎にノズル40の種類を指定するノズル40に関する情報は、管理装置60から送信され、メモリ50aに記憶されている。S14では、メモリ50aに記憶されているノズル情報に基づいて、S12で選択した部品18を吸着するノズル40の種類を特定し、そのノズル40の種類からそのノズル40の昇降可能高さ(ヘッド本体24に対してノズル40が昇降可能となる高さ)を取得する。
【0039】
次に、制御部50は、基板Sに先付け部品18(例えば、
図4における部品18a)が実装されているか否かを判断する(S16)。基板Sには複数の部品18が実装され、基板Sに実装される部品18の順序が決まっている。このため、S12で選択された部品18より前に基板Sに部品18が実装されているときは、S16の判断はYESとなる。一方、S12で選択された部品18より前に基板Sに部品18が実装されていないとき(すなわち、S12で選択された部品18が1番目に実装される部品18であるとき)は、S16の判断はNOとなる。
【0040】
基板Sに先付け部品18が実装されていない場合(S16でNO)は、制御部50は、S18をスキップしてS20に進む。一方、基板Sに先付け部品18が実装されている場合(S16でYES)は、制御部50は、先付け部品18の寸法(詳細には、先付け部品18のZ軸方向の寸法)を取得する(S18)。S10で基板Sに実装される全ての部品18の寸法(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向の寸法)が取得されているため、S18では、これらの取得した部品18に関する情報から、全ての先付け部品18のZ軸方向の寸法をそれぞれ特定し、特定した全ての寸法のうち最も大きい寸法を特定する。すなわち、先付け部品18が複数ある場合、これら複数の先付け部品18のうち、最もZ軸方向の寸法の大きい部品18のZ軸方向の寸法を取得する。
【0041】
次に、制御部50は、S18で特定した先付け部品18のZ軸方向の寸法から、その時点で基板Sに実装可能な部品18の最大高さ(最大部品高さ)を算出する(S20)。既に説明したように、ノズル40が昇降できる最大高さは、ヘッド昇降装置26によりヘッド本体24を上昇できる最大昇降高さと、ヘッド本体24に対してノズル40が昇降可能となる昇降可能高さとの和となる。ここで、ヘッド昇降装置26によりヘッド本体24を上昇できる最大昇降高さは、既知であり、制御部50のメモリ50aに記憶されている。また、ヘッド本体24に対してノズル40が昇降可能となる昇降可能高さは、ノズル40の種類毎にメモリ50aに記憶されている。したがって、メモリ50aに記憶されている情報に基づいてノズル40が昇降できる最大高さが算出でき、その算出した最大高さからS18で取得した先付け部品18の最大寸法(Z軸方向の寸法)を減算した値が、その時点で基板Sに実装できる部品18の最大部品高さとなる。したがって、S20では、メモリ50aに記憶されている情報と、S18で取得した先付け部品18の最大寸法(Z軸方向の寸法)とから、その時点で基板Sに実装できる部品18の最大部品高さを算出する。なお、先付け部品18がない場合は、ヘッド昇降装置26によりヘッド本体24を上昇できる最大昇降高さと、ヘッド本体24に対してノズル40が昇降可能となる昇降可能高さとの和が、最大部品高さとなる。
【0042】
次に、制御部50は、S20で算出した最大部品高さが、S12で選択した部品18のZ軸方向の寸法よりも大きいか否かを判定する(S22)。S20で算出した最大部品高さがS12で選択した部品18のZ軸方向の寸法よりも小さい場合(S22でNO)は、S12で選択した部品18を基板Sに実装できないため、その旨をオペレータに報知し(S26)、ノズル高さ決定処理を終了する。S26によって管理装置60で生成された部品実装プログラムを部品実装機10では実行できないことがオペレータに報知されるため、オペレータは、適切な対応(例えば、他の部品実装機10で部品実装プログラムを実行する等)の処置をとることができる。
【0043】
一方、S20で算出した最大部品高さがS12で選択した部品18のZ軸方向の寸法よりも大きい場合(S22でYES)は、制御部50は、S12で選択した部品18を基板Sに実装する際のノズル40の高さ(ノズル高さ)を決定する(S24)。既に説明したように、ノズル40の昇降可能範囲は、ノズル40が昇降できる最大高さ(ヘッド昇降装置26による最大昇降高さ+ヘッド本体24に対するノズル40の昇降可能高さ)と、ノズルに吸着した部品18のZ軸方向の寸法と先付け部品18のZ軸方向の寸法との和で算出することができる。S24では、上記のように算出されるノズル40の昇降可能範囲から、各種クリアランスa,b,cを考慮して、部品実装時のノズル40のノズル高さを決定する。
【0044】
次に、制御部50は、部品実装機10において基板Sに実装される全ての部品18について、S12からの処理が実行されたか否かを判断する(S28)。全ての部品18についてS12からの処理が実行されている場合(S28でYES)は、制御部50は、ノズル高さ決定処理を終了する。一方、全ての部品18についてS12からの処理が実行されていない場合(S28でNO)は、制御部50は、S12に戻って、S12からの処理を実行する。これによって、基板Sに実装される全ての部品18について、当該部品18を実装する際のノズル40のノズル高さが決定される。
【0045】
なお、制御部50は、部品実装プログラムを実行する際は、ノズル40に部品を吸着すると、その吸着した部品18について決定されたノズル高さにノズル40を昇降させる。そして、基板Sの上方を基板Sの実装位置までノズル40を移動させ、実装位置に部品18を実装する。上記のようにノズル40のノズル高さが決定されているため、ノズル40に吸着された部品18は、基板Sに先付けされた先付け部品18に干渉することなく、基板Sに実装することができる。
【0046】
上記の実施例においては、ノズル40の種類毎にヘッド本体24に対するノズル40の昇降可能高さを記憶し、この昇降可能高さを用いてノズル40の昇降可能範囲を算出している。このため、ノズルの種類(形状)に応じて、ヘッド本体24に対してノズル40を最大限まで上昇させることができる。これによって、基板Sに実装可能な部品18の高さ方向(Z軸方向)の寸法を大きくすることができる。さらに、本実施例においては、ヘッド昇降装置26によるヘッド本体24の最大昇降高さを考慮して、ノズル40の昇降可能範囲を算出する。これによっても、基板Sに実装可能な部品18の高さ方向(Z軸方向)の寸法を大きくすることができる。
【0047】
また、本実施例においては、ノズル40に吸着した部品18の高さ方向(Z軸方向)の寸法と、先付け部品18の高さ方向(Z軸方向)の寸法を考慮してノズル40の昇降可能範囲を算出する。このため、ノズル40に吸着した部品18と、基板Sに先付けされた部品18の干渉を回避することができる。
【0048】
なお、上記の実施例においては、基板Sに実装する部品毎に、その部品18を実装する際のノズル40のノズル高さが決定されていたが、このような例に限られない。例えば、
図6のS24で決定された各部品に対するノズル高さのうち、最も高くなるノズル高さを用いて、全ての部品18を実装するようにしてもよい。このような形態によっても、ノズル40に吸着した部品18と、先付け部品18との干渉を回避することができる。
【0049】
また、上記の実施例においては、部品実装機10で実装処理を開始する前の基板Sに先付け部品18が存在しなかったが、このような例に限られず、他の部品実装機で既に部品が実装されている基板Sにさらに部品18を実装する処理を行ってもよい。この場合は、例えば、先付け部品18に関する情報(Z軸方向の寸法)を管理装置60から部品実装機10にさらに送信するようにすればよい。
【0050】
また、上記の実施例においては、ノズル40の種類毎に昇降可能高さ(ヘッド本体24に対するノズル40の昇降できる高さ)を記憶したが、このような例に限られない。例えば、ノズル40の種類毎に、当該ノズル40のX軸方向及びY軸方向の寸法(例えば、ノズル40の径方向の寸法D)を記憶してもよい。ノズル40のX軸方向及びY軸方向の寸法が所定値より小さくてヘッド本体24と干渉しない場合は、当該ノズル40の昇降可能高さは、ノズル昇降装置26によるノズル40を昇降できる最大の高さ(ノズル最大昇降高さ)となる。このため、ノズル40のX軸方向及びY軸方向の寸法が所定値より小さい場合は、当該ノズル40の昇降可能高さを記憶する必要はなく、ノズル昇降装置26によるノズル最大昇降高さを用いればよい。一方、ノズル40のX軸方向及びY軸方向の寸法が所定値以上となる場合は、ノズル40とヘッド本体20が干渉するため、当該ノズル40の形状に応じた昇降可能高さを記憶する。このような形態によると、部品実装機10の制御部50のメモリ50aに記憶するデータ量を少なくすることができる。
【0051】
上記の実施例では、管理装置60から部品実装機10に、部品18に関する情報及びノズル40に関する情報を送信するようにしたが、このような例に限られず、種々の態様を採ることができる。例えば、部品18に関する情報及びノズル40に関する情報を部品実装機10に直接入力するようにしてもよい。また、上記の実施例では、部品実装機10においてノズル高さ決定処理を実行したが、管理装置60においてノズル高さ決定処理を実行してもよい。この場合、管理装置60は、部品実装プログラムと、決定された実装時のノズル高さを、部品実装機10に送信する。部品実装機10は、管理装置60から送信される部品実装プログラムとノズル高さに基づいて、部品実装処理を行うだけでよい。このように、管理装置60と部品実装機10は、ノズル高さ決定処理を実行するために必要となる機能を、様々な態様で分担することができる。
【0052】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0053】
10:部品実装機
12:ハウジング
14:基板搬送装置
16:部品フィーダ
18:部品
20:ヘッド
22:ノズル装着孔
24:ヘッド本体
26:ヘッド昇降装置
28:ノズル昇降装置
30:XYロボット
32:Y軸スライダ
34:X軸スライダ
36:Z軸スライダ
40:ノズル
42:上端フランジ
44:下端当接部
46:チャック
48:本体
50:制御部
52:通信部
60:管理装置
62:演算部
64:入力部
66:記憶部
68:通信部