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  • 特許-ダクトおよびイオン発生ユニット 図1
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  • 特許-ダクトおよびイオン発生ユニット 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】ダクトおよびイオン発生ユニット
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/02 20060101AFI20250311BHJP
   F24F 13/24 20060101ALI20250311BHJP
   F24F 8/30 20210101ALI20250311BHJP
   B60H 3/06 20060101ALI20250311BHJP
【FI】
F24F13/02 H
F24F13/24 245
F24F8/30
B60H3/06 A
B60H3/06 611B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021152373
(22)【出願日】2021-09-17
(65)【公開番号】P2023044374
(43)【公開日】2023-03-30
【審査請求日】2024-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 基
(74)【代理人】
【識別番号】100147854
【弁理士】
【氏名又は名称】多賀 久直
(72)【発明者】
【氏名】丹下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】杉本 寛樹
(72)【発明者】
【氏名】笹澤 和也
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-180017(JP,A)
【文献】特開2009-234400(JP,A)
【文献】特開平07-217511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/02
F24F 13/24
F24F 8/30
B60H 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン発生装置から空調ダクトへイオンを導く流通路が曲がる屈曲部を有するダクトであって、
連通口が前記流通路に通じる共鳴型の消音器を備え、
前記連通口が、前記屈曲部における曲がりの外側以外の領域の下流側に配置されている
ことを特徴とするダクト。
【請求項2】
イオン発生装置から空調ダクトへイオンを導く流通路が45°以上の曲がり角度で曲がる屈曲部を有するダクトであって、
連通口が前記流通路に通じる共鳴型の消音器を備え、
前記連通口が、前記屈曲部における曲がりの内側の下流側に配置されている
ことを特徴とするダクト。
【請求項3】
前記消音器は、該ダクトを固定するダクト固定座を備えている請求項1または2記載のダクト。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載のダクトと、
イオン発生装置と、を備えているイオン発生ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、消音器を有するダクトおよびこのダクトを備えたイオン発生ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
イオン発生装置で生成されたイオンを、イオン放出ダクトを介して空調ダクトに送り込み、空気と共にイオンを空調ダクトから室内に放出し、イオンによって室内の除菌や消臭などが行われている。イオン発生装置においてイオンを生成する際に音が出るので、筒状のゴムスポンジ製の吸音部材をイオン放出ダクトの途中に設置し、吸音部材によって音を吸収して、室内への音漏れを防止することが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5698033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、別部品の吸音部材をイオン放出ダクトに取り付ける構成であると、コストが嵩んでしまう。
【0005】
本発明は、従来の技術に係る前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、消音にかかるコストを抑えたダクトおよびイオン発生ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本発明に係るダクトは、
イオン発生装置から空調ダクトへイオンを導く流通路が曲がる屈曲部を有するダクトであって、
連通口が前記流通路に通じる共鳴型の消音器を備え、
前記連通口が、前記屈曲部における曲がりの外側以外の領域の下流側に配置されていることを要旨とする。
【0007】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本発明に係るダクトは、
イオン発生装置から空調ダクトへイオンを導く流通路が45°以上の曲がり角度で曲がる屈曲部を有するダクトであって、
連通口が前記流通路に通じる共鳴型の消音器を備え、
前記連通口が、前記屈曲部における曲がりの内側の下流側に配置されていることを要旨とする。
【0008】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本発明に係るイオン発生ユニットは、
本開示のダクトと、
イオン発生装置と、を備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るダクトによれば、消音にかかるコストを抑えることができる。
本発明に係るイオン発生ユニットによれば、消音にかかるコストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例に係るダクトを備えたイオン発生ユニットを示す平面図である。
図2】実施例のダクトを示す斜視図である。
図3】実施例のダクトを備えたイオン発生ユニットを示す断面図である。
図4図1のA-A線断面図である。
図5】(a)は変更例のダクトを示す平面図であり、(b)は(a)のX矢視図である。
図6】連通口の別例を示す図1のA-A線に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明に係るダクトおよびこのダクトを備えたイオン発生ユニットにつき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。
【実施例
【0012】
図1に示すように、イオン発生ユニット12は、イオンを生成可能なイオン発生装置14と、イオン発生装置14から空調ダクト10にイオンを導くイオンダクト(ダクト)16とを備えている。空調ダクト10は、図示しないエアコンユニットから送り出された空気を車両等の車室などの送り出し先に案内するものであり、イオン発生ユニット12から供給されたイオンを空気と共に送り出し先に放出するようになっている。イオン発生装置14は、例えば、放電電極に高電圧を印加してイオン化した水を霧化することで、ナノメータサイズの帯電粒子水やナノサイズミストや静電微粒子などとも呼ばれるイオンを生成するものを用いることができる。なお、イオン発生装置14は、図示しないファンやブロアなどの送風手段を備えていてもよい。
【0013】
図1図3に示すように、イオンダクト16は、イオン発生装置14から空調ダクト10へイオンを導く流通路18が曲がる屈曲部20,22を有している。実施例のイオンダクト16は、2つの屈曲部20,22を備えている。より具体的には、イオンダクト16は、イオン発生装置14に接続する流入口16aを有する第1管部24から第1屈曲部20で曲がって第2管部26に繋がり、第2管部26から第2屈曲部22で曲がって空調ダクト10に接続される流出口16bを有する第3管部28に繋がっている。実施例のイオンダクト16では、屈曲部20,22の下流側が、屈曲部20,22の上流側に対して、流路の向きが90°変わっている。なお、屈曲部20,22の曲がり角度(α)は、屈曲部20,22の上流側の流通路18を通る軸線の延長線と、屈曲部20,22の下流側の流通路18を通る軸線とがなす角を指している。
【0014】
図1図3に示すように、イオンダクト16は、連通口30a,32a,34aが流通路18に通じる共鳴型の消音器30,32,33を備えている。共鳴型の消音器30,32,33は、連通口30a,32a,34aを介して流通路18に通じる共鳴空間による音波の干渉によって音を低減させるものであり、干渉型とも呼ばれることがある。共鳴型の消音器30,32,33としては、ヘルムホルツ型やサイドブランチ型などの各種タイプを、単独でまたは複数組み合わせて用いることができる。実施例では、3つの消音器30,32,34が流通路18に沿って並べて設けられ、最も上流側に配置された第1消音器30および第1消音器30の下流側に配置された第2消音器32がヘルムホルツ型であり、最も下流側に配置された第3消音器34がサイドブランチ型である。
【0015】
図1図3に示すように、実施例のイオンダクト16において、消音器30,32,34の連通口30a,32a,34aは、第1屈曲部20および第2屈曲部22の間の第2管部26の流通路18に通じている。図3および図4に示すように、連通口30a,32a,34aが、第1屈曲部20における曲がりの外側以外の領域の下流側に配置されている。第1屈曲部20の下流側に連通口30a,32a,34aを設ける場合、例えば、第1屈曲部20における曲がりの内側の下流側に配置するとよい(図4参照)。また、ダクト16における第1屈曲部20の曲がりの軸方向に臨む面(図4におけるダクトの上面や下面)の第1屈曲部20の下流側に配置してもよい。また、図6に示すように、ダクト16における第1屈曲部20の曲がりの軸方向に臨む一面(図6のダクトの上面)から曲がりの内側を通って曲がりの軸方向に臨む他面(図6のダクトの下面)に亘る領域の第1屈曲部の下流側に配置してもよい。実施例では、連通口30a,32a,34aが、第1屈曲部20における曲がりの内側の下流側に配置されている(図4参照)。なお、実施例の連通口30a,32a,34aは、第2管部26の流通路18の断面積よりも小さく開口している。
【0016】
図1図3に示すように、複数の消音器30,32,34は、第1屈曲部20の曲がりの内側に対応する側に配置されている。複数の消音器30,32,34は、第2管部26と交差する方向へ延びている第1管部24の延在スペースを利用して配置している。
【0017】
図1図3に示すように、イオンダクト16は、イオンダクト16を固定するためのダクト固定座36を備えている。イオンダクト16において、ダクト固定座36が消音器30,32,34に設けられている。より具体的には、実施例のダクト固定座36は、第2管部26に連なると共に複数の消音器30,32,34の間に連ねて設けられた板状部分であり、第1消音器30および第2消音器32から張り出した部位にボルトなどの締結具を通す通孔36aが形成されている。実施例のイオンダクト16は、締結具を通孔36aに通して車体側の構成部品に締結することで固定される。このようにダクト固定座36を備えていることで、イオンダクト16を簡単に取り付けることができ、取り付け後に安定させることができる。
【0018】
実施例のイオンダクト16は、屈曲部20,22、管部24,26,28、消音器30,32,34およびダクト固定座36を、一体的に形成した樹脂(例えば、ポリエチレン(HDPE、LDPE)、ポリプロピレン(PP)など)のブロー成形品である。
【0019】
イオンダクト16では、第1屈曲部20の下流側の流通路18において、慣性の影響によりイオンが第1屈曲部20の曲がりの外側に偏って流れることが判っている(図3の矢印参照)。消音器30,32,34の連通口30a,32a,34aを、第1屈曲部20における曲がりの外側以外の領域の下流側に配置することで、曲がりの外側に偏って流れるイオンが連通口30a,32a,34aから消音器30,32,34に入ることを抑えることができる。これにより、流通路18に通じる共鳴空間を有する共鳴型の消音器30,32,34を用いても、イオンを壊すことなく、空調ダクト10に効率よく供給することができ、イオンによる各種効果が適切に得られる。そして、共鳴空間を形成するだけの簡単な構造の共鳴型の消音器30,32,34を採用可能であるので、部品点数の増加や組み付け手間を抑えて、消音にかかるコストを抑えることができる。
【0020】
イオンダクト16において、管部24,26,28の周方向における連通口30a,32a,34aが配置される位置は、連通口30a,32a,34aの上流側にある曲がり角度45°以上の屈曲部のうち、連通口30a,32a,34aに最も近いものを基準として設定するとよい。図5に示す変更例は、第1屈曲部20と、第1屈曲部20の下流側に設けられ、第1屈曲部20の曲がりの軸方向へ曲がる第3屈曲部38とがあり、第3屈曲部38の下流側の管部29に連通口30a,32aが配置されている。ここで、第1屈曲部20の曲がり角度(α1)が45°以上(変更例では曲がり角度90°)であり、第3屈曲部38の曲がり角度(α2)が45°より小さい(変更例では10°)。この場合、第3屈曲部38を基準として管部29の周方向における連通口30a,32aの位置を設定するのではなく、第1屈曲部20の曲がりを基準として管部29の周方向における連通口30a,32aの位置を設定する。すなわち、第1屈曲部20における曲がりの内側の下流側に、連通口30a,32aを配置するとよい。このように、第3屈曲部38よりもイオンの流れに対する影響が大きい第1屈曲部20を基準として、管部29の周方向における連通口30a,32aの位置を設定することで、消音器30,32によってイオンを壊すことを回避できる。仮に、第1屈曲部20の曲がり角度(α1)が45°以上であり、第3屈曲部38の曲がり角度(α2)が45°以上である場合、第1屈曲部22ではなく、第3屈曲部38を基準として管部29の周方向における連通口30a,32aの位置を設定すればよい。このように、第1屈曲部20よりもイオンの流れに対する影響が大きい第3屈曲部38を基準として、管部29の周方向における連通口30a,32aの位置を設定することで、消音器30,32によってイオンを壊すことを回避できる。
【0021】
(変更例)
前述した事項に限らず、例えば以下のようにしてもよい。なお、本発明は、実施例および以下の変更例の具体的な記載のみに限定されるものではない。
(1)イオンダクトの形状は、実施例の形状に限らない。例えば、イオンダクトの断面形状は、円形に限らず、四角形やその他の形状であってもよい。イオンダクトにおける屈曲部の数は、1箇所であっても、3箇所以上であってもよい。また、屈曲部の曲がり角度は、実施例に限らず、様々な曲がり角度で設定することができる。実施例では、複数の屈曲部が同じ平面上で曲がっているが、例えば、変更例のように第1屈曲部の曲がりの軸方向へ第3屈曲部や第2屈曲部が曲がるなど、イオンダクトが三次元的に曲がっていてもよい。
(2)消音器の数は、1つであっても、4以上であってもよい。また、例えば、第1屈曲部の下流側に消音器を配置し、第2屈曲部の下流側に消音器を配置するなど、消音器の位置は適宜変更可能である。
(3)イオンダクトは、ブロー成形品に限らず、インジェクション成形品であってもよく、その他の製造方法で製造したものであってもよい。また、イオンダクトは、樹脂製に限るものではなく、金属製などのその他の材質であってもよい。
【符号の説明】
【0022】
10 空調ダクト、12 イオン発生ユニット、14 イオン発生装置、
16 イオンダクト(ダクト)、18 流通路、20 第1屈曲部(屈曲部)、
30,32,34 消音器、30a,32a,34a 連通口、36 ダクト固定座、
α 曲がり角度

図1
図2
図3
図4
図5
図6