(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】写真撮影用ビュレットスタンド、試薬滴定装置、及び、試薬滴定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 31/18 20060101AFI20250311BHJP
G01F 23/292 20060101ALN20250311BHJP
【FI】
G01N31/18
G01F23/292 Z
(21)【出願番号】P 2021175614
(22)【出願日】2021-10-27
【審査請求日】2024-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】593213342
【氏名又は名称】株式会社日向製錬所
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】村田 朋之
(72)【発明者】
【氏名】梅田 裕治
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109115941(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106383201(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0138404(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0339291(US,A1)
【文献】中国実用新案第204287136(CN,U)
【文献】特開2021-038987(JP,A)
【文献】特開平04-256857(JP,A)
【文献】実開平04-118646(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 31/18
G01F 23/292
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台部と、
支柱と、
前記支柱の頂部に設けられていて、試薬滴定用のビュレットを把持するビュレット把持部と、
前記支柱の中間部に設けられていて、前記ビュレット内の試薬の液面と該液面に対応する前記ビュレットの計測用目盛りとが合わせて撮影されている記録画像を撮影するカメラを載置するカメラ載置部と、
前記支柱を間に挟んで前記カメラ載置部と対向する位置に設けられていて、撮影画像品位調整用の背景板を設置する、背景板設置部と、
を備え
、
前記支柱がL字アングル材からなり、
前記L字アングル材の第1の平面部分が支柱正面部を構成していて、第2の平面部分が、支柱側面部を構成しており、
前記カメラ載置部は、前記支柱側面部の両側辺のうちの前記支柱正面部が接続している側辺に設けられていて、
前記背景板設置部は、前記支柱側面部の両側辺のうちの前記支柱正面部が接続していない側辺に設けられていて、
前記支柱正面部には撮影用スリットが形成されている、
写真撮影用ビュレットスタンド。
【請求項2】
前記記録画像を撮影する際に、前記計測用目盛りの視認性を向上させる表面色を有する前記背景板が前記背景板設置部に設置されている、
請求項
1に記載の写真撮影用ビュレットスタンド。
【請求項3】
前記背景板の前記表面色が白色である、
請求項
2に記載の写真撮影用ビュレットスタンド。
【請求項4】
請求項
1から3の何れかに記載の写真撮影用ビュレットスタンドにおいて、
前記ビュレット把持部に前記ビュレットが把持されていて、
前記カメラ載置部に前記カメラが載置されている、
試薬滴定装置。
【請求項5】
請求項
4の試薬滴定装置を用いて行う試薬滴定方法であって、
前記写真撮影用ビュレットスタンドの前記背景板設置部に設置する前記背景板として、前記ビュレット内の試薬及び前記ビュレットの計測用目盛の色味に応じた最適な表面色を有する前記背景板を、複数種の有色の板のうちから選択する工程を含んでなる、
試薬滴定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、写真撮影用ビュレットスタンド、試薬滴定装置、及び、試薬滴定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被滴定物質に対して、濃度が既知である試薬を、ビュレットを用いて滴下することにより反応を進行させて、被滴定物質の濃度を求める定量滴定分析が広く行われている。この定量滴定分析においては、全ての被滴定物質が反応し終えた時点のことを、当量点と称している。そして、呈色指示薬や、pH、及び酸化還元電位等物性の変化を測定することによって、この当量点を具体的に特定している。被滴定物質の濃度は、当量点に達するまでに滴下した試薬の滴下量をビュレットの目盛りから求めて、化学量論的に計算することによって求めることができる。
【0003】
上述の定量滴定分析を行う際、その分析が正しく行われたことを証明するために、滴定の前後において、ビュレット内の試薬の液面と、この液面に対応するビュレットの目盛りとを合わせて撮影する記録画像の撮影が行われることがある。この撮影によって得られる記録画像の画像品位としては、液面と目盛りとの関係が明確、且つ、容易に視認できる程度の鮮明さが必須の要件として求められる。
【0004】
従来、上記の撮影は、作業者がカメラを手で持って行っていた。このため、撮影した画像にブレが生じてしまうことがあり、液面と目盛りとの関係を把握することが困難になってしまうことがあり、当該記録画像の画像品位を向上させることができる技術的手段が求められていた。
【0005】
併せて、繰り返して記録画像を撮影する場合には、撮影のたびにカメラの焦点調整等の作業が必要となる等、このような撮影作業の煩雑さも作業者の負担となっており、撮影作業者の作業負担を軽減させることも併せて求められていた。
【0006】
例えば、特許文献1には、ビュレット本体に容量を表す目盛りを付した副尺を摺動可能に取り付けたビュレットが開示されている。特許文献1に開示されるビュレットを用いることによって、滴定量を正しく把握することができる。しかし、特許文献1に開示されるビュレットは、定量滴定分析時の記録画像を撮影する作業に係る上記の各課題を解決し得るものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、試薬滴定用のビュレットを用いて行われる定量滴定分析の実施時において、記録画像の撮影を行う撮影作業者の作業負担を軽減しつつ、尚且つ、当該記録画像の画像品位も向上させることができる技術的手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、ビュレット把持部とカメラ載置部と背景板設置部とが、独自の形態で一体化されている写真撮影用ビュレットスタンドにより、上記課題を解決し得ることに想到し、本発明を完成するに至った。
【0010】
(1) 基台部と、支柱と、前記支柱の頂部に設けられていて、試薬滴定用のビュレットを把持するビュレット把持部と、前記支柱の中間部に設けられていて、前記ビュレット内の試薬の液面と該液面に対応する前記ビュレットの計測用目盛りとが合わせて撮影されている記録画像を撮影するカメラを載置するカメラ載置部と、前記支柱を間に挟んで前記カメラ載置部と対向する位置に設けられていて、撮影画像品位調整用の背景板を設置する、背景板設置部と、を備える、写真撮影用ビュレットスタンド。
【0011】
(1)の写真撮影用ビュレットスタンドによれば、試薬滴定用のビュレットを用いて行われる定量滴定分析の実施時において、記録画像の撮影を行う撮影作業者の作業負担を軽減しつつ、尚且つ、当該記録画像の画像品位も向上させることができる。
【0012】
(2) 前記支柱がL字アングル材からなり、前記L字アングル材の第1の平面部分が支柱正面部を構成していて、第2の平面部分が、支柱側面部を構成しており、前記カメラ載置部は、前記支柱側面部の両側辺のうちの前記支柱正面部が接続している側辺に設けられていて、前記背景板設置部は、前記支柱側面部の両側辺のうちの前記支柱正面部が接続していない側辺に設けられていて、前記支柱正面部には撮影用スリットが形成されている、(1)に記載の写真撮影用ビュレットスタンド。
【0013】
(2)の写真撮影用ビュレットスタンドは、支柱を断面L字型のアングル材で構成することにより、重量の小さい軽金属や樹脂材料であっても、十分な強度の支柱を構成することができる。又、カメラ載置部及び背景板設置部を、当該断面形状を構成する一つの面の各側辺に設置する構成とすることにより、両者の間に必要な撮影距離が確保される適切な位置にカメラ載置部及び背景板設置部を容易、且つ、正確に配置することができる。
【0014】
(3) 前記記録画像を撮影する際に、前記計測用目盛りの視認性を向上させる表面色を有する前記背景板が前記背景板設置部に設置されている、(1)又は(2)に記載の写真撮影用ビュレットスタンド。
【0015】
(3)の写真撮影用ビュレットスタンドによれば、試薬滴定用のビュレットを用いて行われる定量滴定分析の実施時において、記録画像の内容の視認性を更に向上させることができる。
【0016】
(4) 前記背景板の前記表面色が白色である、(3)に記載の写真撮影用ビュレットスタンド。
【0017】
(4)の写真撮影用ビュレットスタンドによれば、例えば、多様な色味の試薬を順次用いて定量滴定分析を実施する場合においても、比較的、安定して計測用目盛りの良好な視認性を維持することができる。
【0018】
(5) (1)から(4)の何れかに記載の写真撮影用ビュレットスタンドにおいて、前記ビュレット把持部に前記ビュレットが把持されていて、前記カメラ載置部に前記カメラが載置されている、試薬滴定装置。
【0019】
(5)の試薬滴定装置によれば、(1)から(4)の何れかに記載の写真撮影用ビュレットスタンドの奏する上記効果を享受して、試薬滴定用のビュレットを用いて行われる定量滴定分析の実施時において、記録画像の撮影を行う撮影作業者の作業負担を軽減しつつ、尚且つ、当該記録画像の画像品位も向上させることができる。
【0020】
(6) (5)の試薬滴定装置を用いて行う試薬滴定方法であって、前記写真撮影用ビュレットスタンドの前記背景板設置部に設置する前記背景板として、前記ビュレット内の試薬及び前記ビュレットの計測用目盛の色味に応じた最適な表面色を有する前記背景板を、複数種の有色の板のうちから選択する工程を含んでなる、試薬滴定方法。
【0021】
(6)の試薬滴定方法によれば、例えば、多様な色味の試薬を順次用いて定量滴定分析を実施する場合においても、常に、安定して計測用目盛りの視認性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、試薬滴定用のビュレットを用いて行われる定量滴定分析の実施時において、記録画像の撮影を行う撮影作業者の作業負担を軽減しつつ、尚且つ、当該記録画像の画像品位も向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の写真撮影用ビュレットスタンドと、それを用いて構成されている試薬滴定装置の全体構成を示す側面図である。
【
図2】
図1の試薬滴定装置を構成する写真撮影用ビュレットスタンドの要部の構成を示す部分拡大側面図である。
【
図3】
図1の試薬滴定装置を構成する写真撮影用ビュレットスタンドの要部の構成を示す水平断面図(
図1のA-A断面における断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について説明する。但し、本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0025】
<写真撮影用ビュレットスタンド>
本発明の写真撮影用ビュレットスタンドは、容量滴定分析と併せて記録画像の撮影を行う際に、ビュレット及び記録用のカメラを、当該記録画像の撮影中において、安定的に所定の位置に保持することができる治具である。そして、この写真撮影用ビュレットスタンドは、更に、記録画像の撮影品位の向上に寄与する、撮影画像品位調整用の背景板を適切な位置に配置することができる背景板設置部を備えることを特徴とする。
【0026】
そして、本発明の写真撮影用ビュレットスタンドに、試薬滴定用のビュレット、記録用のカメラを載置することで、本発明の試薬滴定装置を構成することができる。上記のビュレット、カメラは特定の機器に限定されず、様々な機器によって、上記の試薬滴定装置を構成して本発明の効果を享受することができる。試薬滴定装置、及びそれを用いて行うことができる試薬滴定方法の詳細については後述する。
【0027】
図1は、本発明の写真撮影用ビュレットスタンド1に、試薬滴定用のビュレット2、記録用のカメラ3が載置されることによって構成されている、本発明の試薬滴定装置10の全体構成を示す側面図である。同図に示されている通り、写真撮影用ビュレットスタンド1は、基台部16と、使用状態における鉛直方向に沿って基台部16の上面において鉛直方向に沿って立設されている支柱11によって本体部分が形成されている。
【0028】
又、同じく
図1に示す通り、写真撮影用ビュレットスタンド1においては、支柱11の頂部に、試薬滴定用のビュレット2を把持するビュレット把持部12が設けられていて、支柱11におけるビュレット把持部12の設置位置よりは下方側である支柱11の中間部の何れかの位置に、記録用のカメラ3を載置するカメラ載置部13設けられている。
【0029】
又、同じく
図1に示す通り、写真撮影用ビュレットスタンド1においては、支柱11を間に挟んでカメラ載置部13とは反対側の位置に、撮影画像品位調整用の背景板15を設置するための背景板設置部14が設けられている。撮影画像品位調整用の背景板15は、背景板設置部14に恒常的に固定される態様で設置されていてもよいが、必要に応じて、異なる色味の他の背景板に適宜交換可能な態様で設置されていることがより好ましい。
【0030】
[基台部]
基台部16は、写真撮影用ビュレットスタンド1において、支柱11を支持する部材であり、支柱11の倒壊を防止するために必要十分な広さや重さを有するものであればよく、特定の形状には限定されない。但し、基台部16は、被滴定物質が収容された容器を、その上面に安定的に載置できる板状の部材であって、且つ、当該上面が、試薬滴定用のビュレット2の滴下口の直下に、被滴定物質が収容された上記容器を安定した状態で配置することができるだけの広さを有している部材であることが好ましい。
【0031】
[支柱]
支柱11は、ビュレット把持部12にビュレット2、カメラ載置部13にカメラ3、そして背景板設置部14に背景板15を夫々設置した状態において、これらの全てを安定的に支持することができる強度を有する棒状或いは柱状の部材であって上記の容量滴定分析の記録画像の撮影を行うために必要十分な長さを有するものであればよい。支柱11の長さ(即ち、使用時における支柱11の高さ)について、より具体的には、ビュレット把持部12にビュレット2を把持して、その滴下口の下方に被滴定物質を保持する容器を配置した状態でビュレット2の位置を高さ方向において変化させたときに、被滴定物質を保持する上記の容器内に滴下口が侵入することなく、且つ、読み取りが想定される目盛りを、カメラ載置部13のほぼ正面に配置するために必要十分な長さ(高さ)を有するものとする。
【0032】
そして、支柱11は、その材質や大きさに係る上述の各要件を満たした上で、更には、
図1及び
図3に示されるように、断面L字型の柱材である所謂アングル材(本明細書において「L字アングル材」と言う)によって構成することがより好ましい。支柱11を上記のL字アングル材で構成する場合、L字アングル材を構成する2つの直交する板部のうち、一方の板部の平面部(本明細書において「第1の平面部分」と言う)によって、支柱正面部111を構成し、これに直交する他の板部(本明細書において「第2の平面部分」と言う)によって、支柱側面部113を構成することができる。
【0033】
支柱11がL字アングル材で構成されている場合、支柱側面部113の両側辺のうちの支柱正面部111が接続している側辺にカメラ載置部13を設け、支柱側面部113の両側辺のうちの支柱正面部111が接続していない側辺に、背景板設置部14を設ける構成とすることが好ましい。又、支柱正面部111にはこれを貫通して形成されている撮影用スリット112が設けられていることが好ましい。この場合において、撮影用スリット112に対向する位置にカメラ3を載置して撮影を行えば、支柱正面部111及び支柱側面部113の双方に対面する立体領域
M(
図3参照)内の対象物を撮影することができるので、撮影時には、立体領域
M(
図3参照)内に含まれる撮影領域MRに、ビュレット2内の試薬の液面位置が含まれることとなるように、ビュレット2の位置を高さ方向においてのみ調整すればよい。
【0034】
尚、本発明の写真撮影用ビュレットスタンドにおいて、支柱11の形状や構成を変更した他の実施形態として、写真撮影用ビュレットスタンド1における1本の支柱11に代えて、3本の独立した支柱を併設して、ビュレット把持部12、カメラ載置部13、背景板設置部14を、夫々別途の支柱に個別に設ける構成とする実施形態(図示は割愛)を挙げることができる。或いは、写真撮影用ビュレットスタンドは、支柱11を、適切な幅を有する帯状の部材で構成し、この帯状の部材の頂部にビュレット把持部12を設け、この帯状の部材の幅方向の夫々の側縁部にカメラ載置部13、背景板設置部14を設ける実施形態(図示は割愛)として実施することもできる。これらの各実施形態による場合にも、写真撮影用ビュレットスタンド1と同様に、試薬滴定用のビュレット内の滴下剤の液面とビュレットの測定用目盛りとの位置関係を示す記録写真を鮮明に撮影することができる。
【0035】
[ビュレット把持部]
ビュレット把持部12は、支柱11の頂部に設けられていて、試薬滴定用のビュレット2を、その径方向において把持し、試薬滴定用のビュレット2が鉛直方向に沿って立設されている状態で安定的に把持して保持することができる機構であればよい。一例として、ビュレット把持部12は、ビュレット2に当接する部分に半円形の切り欠きが設けられた開閉可能な可動部材にボルトを締めこむことによってビュレットを把持する機構とすることができる。
【0036】
上述したように、試薬滴定用のビュレット2を任意の鉛直位置において安定的に把持することができるビュレット把持部12が、支柱11の頂部に設けられていることにより、試薬滴定用のビュレットを用いて行われる定量滴定分析の実施時に、試薬滴定用のビュレット2を、カメラ3の撮影領域内に試薬の液面が含まれることとなる任意の適切な鉛直位置において安定的に保持した状態で記録画像を撮影することができる。
【0037】
[カメラ載置部]
カメラ載置部13は、支柱11の中間部であって、ビュレット把持部12よりは下方の位置に設置されていることによって、当該位置において、記録用のカメラ3を載置して安定的に保持できる台状の部材であればよい。カメラ3は、ビュレット2内の試薬の液面と当該液面に対応するビュレット2の計測用目盛りとを合わせて撮影することができる位置に保持される必要があるが、カメラ載置部13は、カメラ3をこのような位置において安定して静置できる構造であれば、カメラを上面に載置する台状の部材には限られない。例えば、カメラの底面のねじ穴に螺合可能な螺子部を有する接合構造等により、カメラ3を所望の位置に固定するカメラ固定構造をカメラ載置部とすることもできる。
【0038】
[背景板設置部]
背景板設置部14は、支柱11の中間部であって、ビュレット把持部12より下方の位置であり、カメラ載置部13と略同一高さであって、支柱11を間に挟んでカメラ載置部13とは反対側の位置に設置される。そして、背景板設置部14は、撮影画像品位調整用の背景板15を、鉛直方向に沿って立設した状態で、この位置に安定的に保持することができる構造であればよい。一例として、
図2に示すように背景板15の端部を挟持して吊り下げることができる挟み込み構造によって背景板設置部14を構成することができる。又、背景板15を支柱11に直接接合してもよく、この場合には支柱11の当該接合部分が、背景板設置部14となる。
【0039】
[背景板]
背景板15は、滴定に用いる試薬の色や用いられるビュレット2の計測用目盛りの色の視認性を高める目的に適した背景色を、表面色として有する板状の部材である。カメラ3が、カメラ載置部13に載置されている状態において、カメラ3のレンズの側から視た場合におけるビュレット2の背後に、このような背景板15を配置することによって、ビュレット2の計測用目盛りの視認性を向上させることができ、撮影者は少ない作業負担で、より鮮明な記録画像の撮影を容易に行うことができるようになる。
【0040】
背景板15の表面色、即ち、背景色は、具体的には、試薬の色と明度差のある色調のものを選択すればよい。試薬の色が黄色でビュレット2の計測用目盛りの色が黒色である場合であれば、灰色の背景色を選択することによって、ビュレット2内の試薬の液面と、この液面に対応するビュレット2の計測用目盛りと、を合わせて鮮明に撮影することができる。
【0041】
又、背景板15の表面色を白色とすることも好ましい実施形態の一つである。これにより、例えば、多様な色味の試薬を順次用いて定量滴定分析を実施する場合においても、比較的、安定して計測用目盛りの良好な視認性を維持することができる。
【0042】
背景板設置部14への背景板15の設置は、上述の挟み込み構造等、背景板15を交換可能に安定的に固定することができる何らかの固定用構造を介したものによることが好ましいが、これには限られず、例えば、支柱11の表面に粘着テープ等で直接貼着する態様によることもできる。一例として、背景板を、端部寄りの一部が直角に内側に向けて折り曲げられていて、外側面の表面色として所定の背景色を有する矩形の厚紙等で構成し、この背景板の上記の折り曲げ部分を、支柱側面部113の両側辺のうちの支柱正面部111が接続していない側の側辺周辺部に粘着テープで貼り付けることによって、背景板を設置することもできる。上述した通り、この場合は、支柱側面部113の背景板の設置部分が、即ち、背景板設置部14となる。
【0043】
又、背景板の設置の他の実施形態として、例えば、カメラ3のレンズに対向する位置において支柱11の適切な位置に、予め板状の基板を設置しておき、この板状の基板の表面に、適宜、所望の表面色を有する色紙を選択して貼り付けることによっても背景板を構成することができる。この場合は、上記の基板が背景板設置部14に相当し、上記の色紙が背景板15に相当することになり、これらの各部が、本発明の効果発現に寄与する夫々の機能を発揮する。
【0044】
<試薬滴定装置>
以上説明した背景板15を備える写真撮影用ビュレットスタンド1に、ビュレット2及びカメラ3を、上述した態様で設置することによって、
図1に全体構成を示す本発明の試薬滴定装置10を構成することができる。
【0045】
[ビュレット]
ビュレット2は、試薬滴定装置10において、ビュレット把持部12を介して写真撮影用ビュレットスタンド1の支柱11に設置されることによって、試薬滴定装置10を構成する。このようにして、試薬滴定装置10を構成することができる試薬滴定用のビュレットとしては、一例として、「JISR3505:1994 ガラス製体積計」に規定される試薬滴定用のビュレットを用いることができる。但し、試薬滴定装置10を構成するビュレットは、これに限られず、本発明においては、公知の各種のビュレットを幅広く採用することができる。
【0046】
[カメラ]
カメラ3は、試薬滴定装置10において、カメラ載置部13を介して写真撮影用ビュレットスタンド1の支柱11に設置されることによって、試薬滴定装置10を構成する。このようにして、試薬滴定装置10を構成することができる記録用のカメラは、試薬滴定用のビュレット内の試薬の液面と、この液面に対応するビュレット2測定用目盛りとを撮影することができる撮影装置であればよく、一例として、デジタル式のコンパクトカメラを用いることができる。但し、試薬滴定装置10を構成するカメラは、これに限られず、本発明においては、公知の各種のカメラを幅広く採用することができる。
【0047】
<試薬滴定方法>
上記において詳細を説明した写真撮影用ビュレットスタンド1を用いて構成されている試薬滴定装置10によって、本発明の試薬滴定方法(以下、単に「試薬滴定方法」とも言う)を実施することができる。試薬滴定装置10を用いた「試薬滴定方法」は、一例として、下記表1に示す(1)~(8)の各工程を順次行うことによって実施することができる。
【0048】
【0049】
上記(1)~(8)工程のうち、(2)の工程は必ずしも必須ではなく、例えば、背景板として表面色が白色の板を恒常的に用いることもできる。但し、(2)の工程を含めて実施することによって、例えば、多様な色味の試薬を順次用いて定量滴定分析を実施する場合においても、常に、安定して計測用目盛りの視認性を向上させることができる。
【0050】
尚、本発明の試薬滴定方法を採用することにより、カメラ3として、焦点距離等を手動調整する所謂マニュアル操作型のカメラを用いる場合であっても、上記(7)の工程における「焦点距等離を調整する作業」のやり直しが不要となる。又、カメラ3として、焦点距離等を自動調整する所謂オートフォーカス型のカメラを用いる場合においても、本発明の試薬滴定方法を採用することによって、画角の統一された必要枚数の高品位の記録画像を、撮影作業者に負担をかけずに、効率良く、確実に撮影することができるようになる。
【符号の説明】
【0051】
1 写真撮影用ビュレットスタンド
11 支柱
111 支柱正面部
112 撮影用スリット
113 支柱側面部
12 ビュレット把持部
13 カメラ載置部
14 背景板設置部
15 背景板
16 基台部
2 ビュレット
3 カメラ
10 試薬滴定装置