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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 19/00 20060101AFI20250311BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20250311BHJP
   B60C 9/22 20060101ALI20250311BHJP
   B60C 9/18 20060101ALI20250311BHJP
【FI】
B60C19/00 G
B60C1/00 C
B60C9/22 B
B60C9/18 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021202086
(22)【出願日】2021-12-13
(65)【公開番号】P2023087600
(43)【公開日】2023-06-23
【審査請求日】2024-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】助川 新
(72)【発明者】
【氏名】星野 裕紀
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/230773(WO,A1)
【文献】特開2019-209750(JP,A)
【文献】国際公開第2019/230771(WO,A1)
【文献】特表2007-537090(JP,A)
【文献】特表2018-503085(JP,A)
【文献】特開2013-126838(JP,A)
【文献】特開平11-042915(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0212791(US,A1)
【文献】特開2019-217998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 19/00
B60C 1/00
B60C 9/22
B60C 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方のビード部から他方のビード部に跨るカーカスと、
前記カーカスのタイヤ径方向外側に配置され、複数本の補強コードを樹脂で被覆して構成された樹脂被覆コードがタイヤ周方向に螺旋状に巻回されて形成されたベルトと、
前記カーカスと前記ベルトとの間に配置され、タイヤ周方向に延びる樹脂製のベースリングと、
前記ベースリングに付着されたRFIDタグと、
を有するタイヤ。
【請求項2】
前記ベースリングのタイヤ幅方向外側の端部は、前記ベルトのタイヤ幅方向外側の端部よりもタイヤ幅方向外側に位置しており、
前記RFIDタグは、前記ベースリングにおいて前記ベースリングのタイヤ幅方向外側の端部と前記ベルトのタイヤ幅方向外側の端部との間の領域に配置されている、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記RFIDタグは、前記ベースリングの前記カーカスと反対側の部分に配置されている、請求項1又は請求項2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記RFIDタグは、前記ベースリングの前記カーカス側の部分に配置されている、請求項1又は請求項2に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記RFIDタグは、前記ベースリングに埋め込まれている、請求項1又は請求項2に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記RFIDタグは、可撓性を有する樹脂製のケースと、前記ケースに収容されたRFIDチップ及びアンテナと、を備えており、
前記ケースは、前記ベースリングに溶着されている、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記ケースは、前記ベースリングを形成する樹脂材料と同種の樹脂材料によって形成されている、請求項6に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記ベースリングには、前記ケースの少なくとも一部が収容される収容凹部が形成されている、請求項6又は請求項7のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記アンテナは、タイヤ周方向に延びている、請求項6~請求項8のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
RFIDチップとアンテナとを備えたRFIDタグを内蔵したタイヤが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、タイヤの骨格部分を形成するカーカスからタイヤ外側に離隔した位置にRFIDタグが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-256557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたタイヤでは、RFIDタグがタイヤサイド部に配置される、具体的には、カーカスからタイヤ外側に離隔した位置に配置されるため、接地時におけるタイヤサイド部の変形によりカーカスの外側に位置するRFIDタグに力(引張力)が作用する。RFIDタグに過剰な力(引張力)が作用した場合、RFIDタグが破損する虞がある。
【0006】
本発明は、RFIDタグを有するタイヤにおいて、RFIDタグの破損を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様のタイヤは、一方のビード部から他方のビード部に跨るカーカスと、前記カーカスのタイヤ径方向外側に配置され、複数本の補強コードを樹脂で被覆して構成された樹脂被覆コードがタイヤ周方向に螺旋状に巻回されて形成されたベルトと、前記カーカスと前記ベルトとの間に配置され、タイヤ周方向に延びる樹脂製のベースリングと、前記ベースリングに付着されたRFIDタグと、を有する。
【0008】
第1態様のタイヤでは、カーカスとベルトとの間に配置された樹脂製のベースリングにRFIDタグが付着されている。言い換えると、タイヤクラウン部に配置されるベースリングにRFIDタグが付着されている。このように、上記タイヤでは、RFIDタグがタイヤクラウン部に配置されるため、例えば、タイヤサイド部にRFIDタグが設けられるタイヤと比べて、タイヤ接地時の変形によってRFIDタグに作用する力が小さくなる。
また、上記タイヤでは、ベースリングにRFIDタグが付着されていることから、例えば、カーカスからタイヤ外側に離隔した位置にRFIDタグが配置されるタイヤと比べて、タイヤ接地時の変形によってRFIDタグに作用する力が小さくなる。
【0009】
したがって、第1態様のタイヤでは、上記のRFIDタグをタイヤサイド部に設けるタイヤと比べて、RFIDタグに作用する力が小さくなることから、RFIDタグの破損を抑制することができる。
【0010】
本発明の第2態様のタイヤは、第1態様のタイヤにおいて、前記ベースリングのタイヤ幅方向外側の端部は、前記ベルトのタイヤ幅方向外側の端部よりもタイヤ幅方向外側に位置しており、前記RFIDタグは、前記ベースリングにおいて前記ベースリングのタイヤ幅方向外側の端部と前記ベルトのタイヤ幅方向外側の端部との間の領域に配置されている。
【0011】
第2態様のタイヤでは、RFIDタグがベースリングにおいて該ベースリングのタイヤ幅方向外側の端部とベルトのタイヤ幅方向外側の端部との間の領域に配置されている。すなわち、上記タイヤでは、RFIDタグがベルトで覆われていない。このため、上記タイヤでは、例えば、RFIDタグがベルトで覆われている構成と比べて、RFIDタグの受信感度が向上する。
【0012】
本発明の第3態様のタイヤは、第1態様又は第2態様のタイヤにおいて、前記RFIDタグは、前記ベースリングの前記カーカスと反対側の部分に配置されている。
【0013】
第3態様のタイヤでは、RFIDタグがベースリングのカーカスと反対側の部分に配置されている。すなわち、上記タイヤでは、RFIDタグがカーカスから離隔している。このため、上記タイヤでは、例えば、RFIDタグがカーカスに密着している構成と比べて、RFIDタグの受信感度が向上する。また、RFIDタグがカーカスから離隔しているため、タイヤ加硫時の熱がカーカスからRFIDタグに伝わりにくい。このため、RFIDタグのタイヤ加硫時の熱による破損が抑制される。
【0014】
本発明の第4態様のタイヤは、第1態様又は第2態様のタイヤにおいて、前記RFIDタグは、前記ベースリングの前記カーカス側の部分に配置されている。
【0015】
第4態様のタイヤでは、RFIDタグがベースリングのカーカス側の部分に配置されている。このため、トレッドに生じた亀裂等の不具合がRFIDタグに到達しにくく、RFIDタグの破損が長期に亘り抑制される。
【0016】
本発明の第5態様のタイヤは、第1態様又は第2態様のタイヤにおいて、前記RFIDタグは、前記ベースリングに埋め込まれている。
【0017】
第5態様のタイヤでは、RFIDタグがベースリングに埋め込まれていることから、トレッドに生じた亀裂等の不具合がRFIDタグに到達しにくくなる。また、上記タイヤでは、例えば、RFIDタグがベースリングから突出しているタイヤと比べて、ベースリングのタイヤ周方向の剛性を均一に近づけられる。
【0018】
本発明の第6態様のタイヤは、第1態様~第5態様のいずれか一態様のタイヤにおいて、前記RFIDタグは、可撓性を有する樹脂製のケースと、前記ケースに収容されたRFIDチップ及びアンテナと、を備えており、前記ケースは、前記ベースリングに溶着されている。
【0019】
第6態様のタイヤでは、RFIDチップ及びアンテナを収容するケースをベースリングに溶着させることでRFIDタグを簡単に組み込むことができる。また、ケースをベースリングに溶着させていることから、例えば、ケースを接着剤でベースリングに接着させる構成と比べて、簡単且つ強固にケースがベースリングに付着される。
【0020】
本発明の第7態様のタイヤは、第6態様のタイヤにおいて、前記ケースは、前記ベースリングを形成する樹脂材料と同種の樹脂材料によって形成されている。
【0021】
第7態様のタイヤでは、RFIDタグのケースを形成する樹脂材料を、ベースリングを形成する樹脂材料と同種とすることで、例えば、異種とする構成と比べて、ケースをベースリングに強固に固定することができる。
【0022】
本発明の第8態様のタイヤは、第6態様又は第7態様のタイヤにおいて、前記ベースリングには、前記ケースの少なくとも一部が収容される収容凹部が形成されている。
【0023】
第8態様のタイヤでは、ベースリングに形成された収容凹部をベースリングに対するケースの位置決めとして用いることで、RFIDタグ(ケース)の位置決めが容易になる。また、上記タイヤでは、収容凹部にケースの少なくとも一部が収容されるため、例えば、ベースリングの外周面上にケースを配置する構成と比べて、ベースリング外周面からのケースの突出量が少なくなる。
【0024】
本発明の第9態様のタイヤは、第6態様~第8態様のいずれか一態様のタイヤにおいて、前記アンテナは、タイヤ周方向に延びている。
【0025】
第9態様のタイヤでは、RFIDタグのアンテナがタイヤ周方向に延びていることから、例えば、アンテナがサイド部に沿ってビード部側からクラウン部側に向けて延びている構成と比べて、タイヤ接地時の変形によってアンテナが引っ張られ、RFIDチップから外れるのが抑制される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、RFIDタグを有するタイヤにおいて、RFIDタグの破損を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態に係るタイヤのタイヤ幅方向に沿った断面の片側を示す断面図である。
図2図1の矢印2Xで指し示す部分の拡大図である。
図3図2で示す部分をタイヤ外側から見た平面図である。
図4】(A)図1のタイヤが有するRFIDタグの平面図である。(B)図4(A)のRFIDタグの側面図である。
図5】本発明の他の実施形態に係るタイヤのタイヤ幅方向に沿った断面における要部拡大図(図2に対応する拡大図)である。
図6】本発明の他の実施形態に係るタイヤのタイヤ幅方向に沿った断面における要部拡大図(図2に対応する拡大図)である。
図7】本発明の他の実施形態に係るタイヤのタイヤ幅方向に沿った断面における要部拡大図(図2に対応する拡大図)である。
図8図7で示す部分をタイヤ外側から見た平面図である。
図9】本発明の他の実施形態に係るタイヤのタイヤ幅方向に沿った断面における要部拡大図(図2に対応する拡大図)である。
図10】本発明の他の実施形態に係るタイヤのタイヤ幅方向に沿った断面における要部拡大図(図2に対応する拡大図)である。
図11】本発明の他の実施形態に係るタイヤのタイヤ幅方向に沿った断面における要部拡大図(図2に対応する拡大図)である。
図12図11で示す部分をタイヤ外側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一又は同様の構成要素であることを意味する。なお、以下に説明する実施形態において重複する説明及び符号については、省略する場合がある。また、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0029】
また、図面において、矢印TCはタイヤ周方向を示し、矢印TWはタイヤ幅方向を示し、矢印TRはタイヤ径方向を示している。ここで、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸(図示せず)と直交する方向を意味する。また、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸と平行な方向(矢印X方向)を意味する。なお、タイヤ幅方向をタイヤ軸方向と言い換えることもできる。また、以下では、タイヤ径方向に沿ってタイヤ回転軸に近い側を「タイヤ径方向内側」、タイヤ径方向に沿ってタイヤ回転軸に対して遠い側を「タイヤ径方向外側」と記載する。一方、タイヤ幅方向に沿ってタイヤ赤道面CLに近い側を「タイヤ幅方向内側」、タイヤ幅方向に沿ってタイヤ赤道面CLに対して遠い側を「タイヤ幅方向外側」と記載する。
【0030】
各部の寸法測定方法は、JATMA(日本自動車タイヤ協会)が発行する2021年度版YEAR BOOKに記載の方法による。使用地又は製造地において、TRA規格、ETRTO規格が適用される場合は、各々の規格に従う。
【0031】
図1において、本実施形態に係るタイヤ10は、例えば、乗用車に用いられる所謂ラジアルタイヤであり、カーカス16と、ベルト26と、ベースリング38と、RFIDタグ40と、を備えている。図1は、タイヤ10の空気充填前の自然状態の形状を示している。
【0032】
(カーカス)
カーカス16は、一方のビード部20から他方のビード部20に跨っている。カーカス16は、例えば1枚のカーカスプライ14から構成されている。なお、一対のビード部20には、ビードコア12がそれぞれ埋設されている。
【0033】
カーカスプライ14は、タイヤ10のラジアル方向に延びる複数本のコード(図示せず)をコーティングゴム(図示せず)で被覆して形成されている。カーカスプライ14のコードの材料は、例えば、PETであるが、従来公知の他の材料であってもよい。
【0034】
カーカスプライ14のタイヤ幅方向の端部分は、ビードコア12のタイヤ径方向内側から外側に折り返されている。カーカスプライ14のうち、一方のビードコア12から他方のビードコア12に跨る部分が本体部14Aと呼ばれ、ビードコア12から折り返されている部分が折返し部14Bと呼ばれる。
【0035】
カーカスプライ14の本体部14Aと折返し部14Bとの間には、ビードコア12からタイヤ径方向外側に向けて厚さが漸減するビードフィラー18が配置されている。なお、タイヤ10において、ビードフィラー18のタイヤ径方向外側端18Aからタイヤ径方向内側の部分がビード部20とされている。
【0036】
カーカス16のタイヤ内側にはゴムからなるインナーライナー22が配置されており、カーカス16のタイヤ幅方向外側の部分(外側部)には、サイドゴム層24が配置されている。すなわち、カーカス16のタイヤ幅方向の外側部がゴム材料で被覆されている。
【0037】
なお、本実施形態では、ビードコア12、カーカス16、ビードフィラー18、インナーライナー22、及びサイドゴム層24によってタイヤケース25が構成されている。タイヤケース25は、言い換えれば、タイヤ10の骨格を成すタイヤ骨格部材のことである。
【0038】
(ベルト)
カーカス16のクラウン部の外側、言い換えればカーカス16のタイヤ径方向外側には、ベルト26が配置されている。このベルト26は後述するベースリング38の外周面に密着している。図2に示されるように、ベルト26は、複数本(例えば2本)の補強コード30を樹脂32で被覆した樹脂被覆コード34を有している。この樹脂被覆コード34は、ベースリング38の外周に対してタイヤ周方向に沿って巻回されている。具体的には、樹脂被覆コード34は、カーカス16の外周に対してタイヤ軸方向に沿った軸線周りに旋回する螺旋状に巻回されている。
【0039】
そして、樹脂被覆コード34におけるタイヤ幅方向に互いに隣接する樹脂32同士が接合されることで、ベルト26が構成されている。
【0040】
以上のように、樹脂被覆コード34がカーカス16の外周に対してタイヤ周方向に沿って巻回されることで、複数本の補強コード30はタイヤ周方向に沿って延設される。すなわち、複数本の補強コード30は、タイヤ径方向視にて直線状に設けられる。さらに、図2に示されるように、タイヤ幅方向断面において、複数本の補強コード30がタイヤ幅方向に沿って並んで配置される。
【0041】
補強コード30としては、カーカスプライ14のコードよりも太く、且つ、強力(引張強度)が大きいものを用いることが好ましい。補強コード30は、金属繊維や有機繊維等のモノフィラメント(単線)、又はこれらの繊維を用いた素線を撚ったマルチフィラメント(撚り線)で構成することができる。
【0042】
補強コード30を被覆する樹脂32には、サイドゴム層24を構成するゴム、及び後述するトレッド36を構成するゴム材料よりも引張弾性率の高い樹脂材料が用いられている。補強コード30を被覆する樹脂32としては、弾性を有する熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー(TPE)、及び熱硬化性樹脂等を用いることができる。走行時の弾性と製造時の成形性を考慮すると、熱可塑性エラストマーを用いることが望ましい。
【0043】
熱可塑性エラストマーとしては、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPC)、動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)等が挙げられる。
【0044】
また、熱可塑性樹脂としては、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。さらに、熱可塑性樹脂材料としては、例えば、ISO75-2又はASTM D648に規定されている荷重たわみ温度(0.45MPa荷重時)が78°C以上、JIS K7113に規定される引張降伏強さが10MPa以上、同じくJIS K7113に規定される引張破壊伸びが50%以上、JIS K7206に規定されるビカット軟化温度(A法)が130°C以上であるものを用いることができる。
【0045】
補強コード30を被覆する樹脂32の引張弾性率(JIS K7113:1995に規定される)は、50MPa以上が好ましい。また、補強コード30を被覆する樹脂32の引張弾性率の上限は、1000MPa以下とすることが好ましい。なお、補強コード30を被覆する樹脂32の引張弾性率は、200~700MPaの範囲内が特に好ましい。
【0046】
(ベースリング)
図1及び図2に示されるように、ベースリング38は、カーカス16とベルト26との間に配置されてタイヤ周方向に延びる環状の樹脂部材である。このベースリング38は、カーカス16のクラウン部に密着して配置されている。また、ベースリング38のタイヤ幅方向外側の端部38Aは、ベルト26のタイヤ幅方向外側の端部26Aよりもタイヤ幅方向外側に位置している。つまり、ベースリング38の幅は、ベルト26の幅よりも広く、ベースリング38のタイヤ幅方向の両端部38Aは、ベルト26のタイヤ幅方向の両端部26Aよりもそれぞれタイヤ幅方向外側に位置している。また、ベースリング38を構成する樹脂材料は、ベルト26の樹脂32と同種の樹脂材料を用いてもよい。
【0047】
(RFIDタグ)
図2及び図3に示されるように、RFIDタグ40は、ベースリング38に付着されている。このRFIDタグ40は、図示しないリーダと無線通信可能に構成されている。そして、RFIDタグ40は、ベースリング38においてベースリング38の端部38Aとベルト26の端部26Aとの間の領域38Rに配置されている。また、RFIDタグ40は、ベースリング38におけるカーカス16と反対側(トレッド36側)の部分に配置されている。言い換えると、RFIDタグ40は、ベースリング38の外周部に配置されている。なお、本実施形態では、RFIDタグ40は、ベースリング38の外周面に付着されている。また、本実施形態では、図1に示されるように、RFIDタグ40がベースリング38の片側の領域38Rのみに配置されているが本発明はこの構成に限定されず、RFIFタグ40がベースリング38の両側の領域38Rにそれぞれ配置されてもよい。
【0048】
図4(A)及び図4(B)に示されるように、RFIDタグ40は、可撓性を有する樹脂製のケース42と、ケース42に収容されたRFIDチップ44及びアンテナ46と、を備えている。本実施形態では、一対のアンテナ46がRFIDチップ44から互いに逆方向へ延びている。また、本実施形態では、ケース42がベースリング38を形成する樹脂材料と同種の樹脂材料によって形成されている。このケース42は、ベースリング38の領域38Rに溶着されている。具体的には、RFIDタグ40は、ベースリング38の領域38Rに対応する外周面に溶着されている。本実施形態のケース42は、板状とされ、平面視において短辺が円弧状に湾曲する略四角形とされているが、ケース42の形状はこの略四角形状に限定されない。また、ケース42を例えば、膜状としてもよい、
【0049】
本実施形態のタイヤ10では、図3に示されるように、平面視でRFIDタグ40のアンテナ46がタイヤ周方向に延びている。なお、本発明はこの構成に限定されず、RFIFタグ40のアンテナ46は、平面視で、タイヤ周方向に対して±10度の範囲内で傾斜する方向に延びていてもよい。
【0050】
なお、図1に示されるように、ベルト26のタイヤ径方向外側には、ゴム材料からなるトレッド36が配置されている。トレッド36に用いるゴム材料は、従来一般公知のものが用いられる。トレッド36には、排水用の溝37が形成されている。また、トレッド36のパターンも従来一般公知のものが用いられる。
【0051】
(作用)
次に本実施形態の作用について説明する。
本実施形態のタイヤ10では、カーカス16とベルト26との間に配置された樹脂製のベースリング38にRFIDタグ40が付着されている。言い換えると、タイヤクラウン部に配置されるベースリング38にRFIDタグ40が付着されている。このように、タイヤ10では、RFIDタグ40がタイヤクラウン部に配置されるため、例えば、タイヤサイド部にRFIDタグ40が配置されるタイヤと比べて、タイヤ接地時の変形によってRFIDタグ40に作用する力が小さくなる。
また、タイヤ10では、ベースリング38にRFIDタグ40が付着されていることから、例えば、カーカス16からタイヤ外側に離隔した位置にRFIDタグ40が配置されるタイヤと比べて、タイヤ接地時の変形によってRFIDタグ40に作用する力が小さくなる。
【0052】
したがって、本実施形態のタイヤ10では、RFIDタグ40をタイヤサイド部に設けるタイヤと比べて、RFIDタグ40に作用する力が小さくなることから、RFIDタグ40の破損を抑制することができる。
【0053】
本実施形態のタイヤ10では、RFIDタグ40がベースリング38の領域38Rに配置されている。すなわち、タイヤ10では、RFIDタグ40がベルト26で覆われていない。このため、タイヤ10では、例えば、RFIDタグ40がベルト26で覆われている構成と比べて、RFIDタグ40の受信感度が向上する。
【0054】
本実施形態のタイヤ10では、RFIDタグ40がベースリング38におけるカーカス16と反対側の部分に配置されている。すなわち、タイヤ10では、RFIDタグ40がカーカス16から離隔している。このため、タイヤ10では、RFIDタグ40がカーカス16に密着している構成と比べて、RFIDタグ40の受信感度が向上する。また、RFIDタグ40がカーカス16から離隔しているため、タイヤ加硫時の熱がカーカス16からRFIDタグ40に伝わりにくい。これにより、RFIDタグ40がタイヤ加硫時の熱で破損するのが抑制される。
【0055】
本実施形態のタイヤ10では、RFIDチップ44及びアンテナ46を収容するケース42をベースリング38に溶着させることでRFIDタグ40を簡単に組み込むことができる。さらに、ケース42をベースリング38に溶着させていることから、例えば、ケース42を接着剤でベースリング38に接着させる構成と比べて、簡単且つ強固にケース42がベースリング38に付着される。
【0056】
本実施形態のタイヤ10では、RFIDタグ40のケース42を形成する樹脂材料を、ベースリング38を形成する樹脂材料と同種とすることで、例えば、異種とする構成と比べて、ケース42をベースリング38に強固に固定することができる。
【0057】
本実施形態のタイヤ10では、RFIDタグ40のアンテナ46がタイヤ周方向に延びていることから、例えば、アンテナ46がタイヤサイド部に沿ってビード部20側からタイヤクラウン部側に向けて延びている構成と比べて、タイヤ接地時の変形によってアンテナ46が引っ張られ、RFIDチップ44から外れるのが抑制される。
【0058】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、本発明の実施形態は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
例えば、図5に示されるタイヤ50のように、ケース42の厚み方向の片側半分の部分がベースリング38の内周部に埋まっていてもよい。なお、ベースリング38の領域38Rに対応する内周部に、後述するRFIDタグ40のケース42の少なくとも一部が収容される収容凹部38Bを形成しておいてもよい。
また、例えば、図6に示されるタイヤ52のように、RFIDタグ40がベースリング38に埋め込まれていてもよい。具体的には、RFIDタグ40は、ベースリング38から突出しないようにベースリング38に埋め込まれている。例えば、ベースリング38の領域38Rに対応する外周部に、後述するRFIDタグ40のケース42全体が収容される収容凹部38Bを形成しておいて、この収容凹部38BにRFIDタグ40を収容してもよい。また、ベースリング38の成形時にRFIDタグ40を埋め込んでもよい。このようにRFIDタグ40がベースリング38に埋め込まれることで、トレッド36に生じた亀裂等の不具合がRFIDタグ40に到達しにくくなる。また、上記タイヤ10では、例えば、RFIDタグ40がベースリング38から突出しているタイヤと比べて、ベースリング38のタイヤ周方向の剛性を均一に近づけられる。さらに、トレッド36においてベースリング38の領域38Rに対応する部分のゴム量の低下が抑制され、タイヤ走行時におけるRFIDタグ40への入力を緩和することができる。なお、ベースリング38に収容凹部38Bを形成した場合、ベースリング38に対するケース42(RFIDタグ40)の位置決めが容易になる。
【0059】
前述の実施形態では、RFIDタグ40のアンテナ46がタイヤ周方向に延びているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、図7及び図8に示すタイヤ54のように、アンテナ46がタイヤ幅方向に延びるようにRFIDタグ40をベースリング38に付着させてもよい。
【0060】
前述の実施形態では、RFIDタグ40のアンテナ46がタイヤ周方向に延びているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、図7及び図8に示すタイヤ54のように、アンテナ46がタイヤ幅方向に延びるようにRFIDタグ40をベースリング38に付着させてもよい。
【0061】
前述の実施形態では、RFIDタグ40がベースリング38の外周部に配置されているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、図9に示されるタイヤ56のように、RFIDタグ40がベースリング38におけるカーカス16側の部分(言い換えるとベースリング38の内周部)に配置される構成としてもよい。このようにRFIDタグ40がベースリング38の内周部に配置された場合、トレッド36に生じた亀裂等の不具合がRFIDタグ40に到達しにくくなる。これにより、RFIDタグ40の破損が長期に亘り抑制される。
【0062】
前述の実施形態では、ベースリング38の幅がベルト26の幅よりも広い構成とされているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、図10に示されるタイヤ58のように、ベルト26よりも幅が狭い一対のベースリング59がベルト26の端部周りに配置されてもよい。このベースリング59は、図10に示されるように、ベルト26をタイヤ幅方向に跨るようにベルト26とカーカス16との間に配置されている。また、RFIDタグ40は、ベースリング59において該ベースリング59のタイヤ幅方向外側の端部59Aとベルト26の端部26Aとの間の領域59Rに配置されている。なお、タイヤ58では、ベースリング59の領域59RにRFIDタグ40の収容凹部59Bが形成され、この収容凹部59BにRFIDタグ40に埋め込まれ(収容され)ている。
【0063】
前述の実施形態では、RFIDタグ40のアンテナ46が互いに逆向きにRFIDチップ44から延びているが本発明はこの構成に限定されない。例えば、図11及び図12に示されるタイヤ60のように、RFIDタグ40のアンテナ46がRFIDチップ44から片側(図12では、タイヤ幅方向外側)のみに延びる構成としてもよい。このような構成とすることで、RFIDタグ40のケース42のサイズをコンパクトにできる。
【0064】
また、前述の実施形態では、RFIDタグ40のケース42をベースリング38に溶着しているが、本発明はこの構成に限定されず、ケース42をベースリング38に接着剤で接着してもよい。
【0065】
さらに、前述の実施形態では、ケース42を形成する樹脂材料とベースリング38を形成する樹脂材料を同種の樹脂材料としているが、本発明はこの構成に限定されず、ケース42を形成する樹脂材料とベースリング38を形成する樹脂材料を異種の樹脂材料としてもよい。
【0066】
前述の実施形態では、RFIDタグ40のアンテナ46がタイヤ周方向又はタイヤ幅方向に延びているが、本発明はこの構成に限定さない。例えば、アンテナ46は、アンテナ46の延びる方向に対して波状(例えば、三角波、サイン波状)に蛇行していてもよい。
【符号の説明】
【0067】
10…タイヤ、16…カーカス、20…ビード部、38…ベースリング、40…RFIDタグ、42…ケース、44…RFIDチップ、46…アンテナ、50,52,54,56,58,60…タイヤ、59…ベースリング、59R…領域。
図1
図2
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図5
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図7
図8
図9
図10
図11
図12