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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/01 20060101AFI20250311BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20250311BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20250311BHJP
【FI】
G06F3/01 510
G06F3/041 600
G09F9/00 366A
G09F9/00 350A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021205738
(22)【出願日】2021-12-20
(65)【公開番号】P2023091156
(43)【公開日】2023-06-30
【審査請求日】2024-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】524066085
【氏名又は名称】FCNT合同会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 欣也
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】北田 宏明
(72)【発明者】
【氏名】加納 英和
(72)【発明者】
【氏名】大西 克己
【審査官】槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-060308(JP,A)
【文献】特開2012-199697(JP,A)
【文献】国際公開第2018/221288(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/083678(WO,A1)
【文献】特開2020-109622(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0285864(US,A1)
【文献】国際公開第2020/043940(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01-3/04895
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に並ぶ上主面及び下主面を有する操作パネルであって、ユーザの身体の一部又は操作部材が前記操作パネルの前記上主面に接触する、操作パネルと、
上下方向に並ぶ上主面及び下主面を有し、かつ、前記操作パネルの下主面に固定されている表示パネルと、
上下方向に並ぶ上主面及び下主面を有し、かつ、前記表示パネルの下主面に固定されている板状部材と、
前記板状部材の下主面に固定されており、前記操作パネルの変形を検知するセンサと、
を備えており、
前記操作パネルの上主面及び下主面、前記表示パネルの上主面及び下主面、並びに、前記板状部材の上主面及び下主面のそれぞれは、前後方向に延びる2本の辺及び左右方向に延びる2本の辺を有する矩形状を有しており、
上下方向に見て前記センサより前の第1領域又は前記センサより後の第2領域において、線状の1以上のスリット又は線状の1以上のリブが前記板状部材に設けられている、
電子機器。
【請求項2】
前記1以上のスリット又は前記1以上のリブは、前後方向に延びている、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記1以上のスリット又は前記1以上のリブの数は、複数であり、
複数の前記スリット又は前記1以上のリブは、前記第1領域において左右方向に並ぶように配列されている複数の第1スリット又は複数の第1リブを、含んでいる、
請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記複数の第1スリットの後端と前記センサとの前後方向の距離は、5mm以上10mm以下である、
請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記複数の第1スリットの内の前記板状部材の左右方向の中央から最も近くに位置する前記第1スリットを中央第1スリットと呼び、
前記複数の第1スリットの内の前記板状部材の左右方向の中央から最も遠くに位置する前記第1スリットを外側第1スリットと呼び、
前記外側第1スリットの後端と前記センサとの前後方向の距離は、前記中央第1スリットの後端と前記センサとの前後方向の距離より短い、
請求項3に記載の電子機器。
【請求項6】
前記複数の第1リブの内の前記板状部材の左右方向の中央から最も近くに位置する前記第1リブを中央第1リブと呼び、
前記複数の第1リブの内の前記板状部材の左右方向の中央から最も遠くに位置する前記第1リブを外側第1リブと呼び、
前記外側第1リブの後端と前記センサとの前後方向の距離は、前記中央第1リブの後端と前記センサとの前後方向の距離より短い、
請求項3に記載の電子機器。
【請求項7】
複数の前記スリット又は複数の前記リブは、前記第2領域において左右方向に並ぶように配列されている複数の第2スリット又は複数の第2リブを、含んでいる、
請求項2又は請求項3に記載の電子機器。
【請求項8】
前記1以上のスリット又は前記1以上のリブは、前後方向及び左右方向に交差する方向に延びている、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項9】
前記1以上のスリット又は前記1以上のリブは、左右方向に延びている、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項10】
前記前後方向に延びる2本の辺は、長辺であり、
前記左右方向に延びる2本の辺は、短辺である、
請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の電子機器。
【請求項11】
前記板状部材の左右方向の端部が曲げられている、
請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の電子機器。
【請求項12】
前記センサは、上下方向に見て、前記板状部材の前後方向の中央に位置している、
請求項1ないし請求項11のいずれかに記載の電子機器。
【請求項13】
前記センサは、左右方向に延びる長手方向を有している、
請求項1ないし請求項12のいずれかに記載の電子機器。
【請求項14】
前記板状部材の前後方向の端部が上方向又は下方向に曲がっている、
請求項1ないし請求項13のいずれかに記載の電子機器。
【請求項15】
上下方向に並ぶ上主面及び下主面を有する操作パネルであって、ユーザの身体の一部又は操作部材が前記操作パネルの前記上主面に接触する、操作パネルと、
上下方向に並ぶ上主面及び下主面を有し、かつ、前記操作パネルの下主面に固定されている表示パネルと、
上下方向に並ぶ上主面及び下主面を有し、かつ、前記表示パネルの下主面に固定されている板状部材と、
前記板状部材の下主面に固定されており、前記操作パネルの変形を検知するセンサと、
を備えており、
前記操作パネルの上主面及び下主面、前記表示パネルの上主面及び下主面、並びに、前記板状部材の上主面及び下主面のそれぞれは、前後方向に延びる2本の辺及び左右方向に延びる2本の辺を有する矩形状を有しており、
前記板状部材の左右方向の端部が上方向又は下方向に曲がっている、
電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示パネルを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子機器に関する発明としては、例えば、特許文献1に記載の押圧センサが知られている。この押圧センサは、操作面、板状部材及び圧電フィルムを備えている。利用者は、操作面に触れることにより押圧操作を行う。板状部材は、押圧操作により撓む。圧電フィルムは、板状部材に貼り付けられることにより、板状部材と共に撓む。これにより、圧電フィルムの出力により、押圧力を検知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2015/083678号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の押圧センサにおいて、ユーザが操作面を押す力の大きさを精度よく検知したいという要望がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、ユーザが操作パネルを押す力の大きさを精度良く検知できる電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る電子機器は、
上下方向に並ぶ上主面及び下主面を有する操作パネルであって、ユーザの身体の一部又は操作部材が前記操作パネルの前記上主面に接触する、操作パネルと、
上下方向に並ぶ上主面及び下主面を有し、かつ、前記操作パネルの下主面に固定されている表示パネルと、
上下方向に並ぶ上主面及び下主面を有し、かつ、前記表示パネルの下主面に固定されている板状部材と、
前記板状部材の下主面に固定されており、前記操作パネルの変形を検知するセンサと、
を備えており、
前記操作パネルの上主面及び下主面、前記表示パネルの上主面及び下主面、並びに、前記板状部材の上主面及び下主面のそれぞれは、前後方向に延びる2本の辺及び左右方向に延びる2本の辺を有する矩形状を有しており、
前記センサは、左右方向に延びる長手方向を有しており、
上下方向に見て前記センサより前の第1領域又は前記センサより後の第2領域において、線状の1以上のスリット又は前記1以上のリブが前記板状部材に設けられている。
【0007】
本発明の一形態に係る電子機器は、
上下方向に並ぶ上主面及び下主面を有する操作パネルであって、ユーザの身体の一部又は操作部材が前記操作パネルの前記上主面に接触する、操作パネルと、
上下方向に並ぶ上主面及び下主面を有し、かつ、前記操作パネルの下主面に固定されている表示パネルと、
上下方向に並ぶ上主面及び下主面を有し、かつ、前記表示パネルの下主面に固定されている板状部材と、
前記板状部材の下主面に固定されており、前記操作パネルの変形を検知するセンサと、
を備えており、
前記操作パネルの上主面及び下主面、前記表示パネルの上主面及び下主面、並びに、前記板状部材の上主面及び下主面のそれぞれは、前後方向に延びる2本の辺及び左右方向に延びる2本の辺を有する矩形状を有しており、
前記板状部材の左右方向の端部が上方向又は下方向に曲がっている。
【0008】
本明細書において、前後方向に延びる軸や部材は、必ずしも前後方向と平行である軸や部材だけを示すものではない。前後方向に延びる軸や部材とは、前後方向に対して±45°の範囲で傾斜している軸や部材のことである。同様に、上下方向に延びる軸や部材とは、上下方向に対して±45°の範囲で傾斜している軸や部材のことである。左右方向に延びる軸や部材とは、左右方向に対して±45°の範囲で傾斜している軸や部材のことである。
【0009】
以下では、第1部材、第2部材及び第3部材とは、電子機器が備えている構造物である。本明細書において、第1部材が第2部材に支持されているとは、第1部材が第2部材に対して移動不可能に第2部材に取り付けられている(すなわち、固定又は保持されている)場合、及び、第1部材が第2部材に対して移動可能に第2部材に取り付けられている場合を含む。また、第1部材が第2部材に支持されているとは、第1部材が第2部材に直接に取り付けられている場合、及び、第1部材が第3部材を介して第2部材に取り付けられている場合の両方を含む。
【0010】
本明細書において、前後方向に並ぶ第1部材及び第2部材とは、以下の状態を示す。前後方向に垂直な方向に第1部材及び第2部材を見たときに、第1部材及び第2部材の両方が前後方向を示す任意の直線上に配置されている状態である。本明細書において、上下方向に見たときに前後方向に並ぶ第1部材及び第2部材とは、以下の状態を示す。上下方向に第1部材及び第2部材を見たときに、第1部材及び第2部材の両方が前後方向を示す任意の直線上に配置されている。この場合、上下方向とは異なる左右方向から第1部材及び第2部材を見ると、第1部材及び第2部材のいずれか一方が前後方向を示す任意の直線上に配置されていなくてもよい。なお、第1部材と第2部材とが接触していてもよい。第1部材と第2部材とが離れていてもよい。第1部材と第2部材との間に第3部材が存在していてもよい。この定義は、前後方向以外の方向にも適用される。
【0011】
本明細書において、第1部材が第2部材の前に配置されるとは、以下の状態を指す。第1部材の一部は、第2部材が前方向に平行移動するときに通過する領域内に配置されている。よって、第1部材は、第2部材が前方向に平行移動するときに通過する領域内に収まっていてもよいし、第2部材が前方向に平行移動するときに通過する領域から突出していてもよい。この場合、第1部材及び第2部材は、前後方向に並んでいる。この定義は、前後方向以外の方向にも適用される。
【0012】
本明細書において、左右方向に見たときに、第1部材が第2部材の前に配置されるとは、以下の状態を指す。左右方向に見たときに、第1部材と第2部材が前後方向に並んでおり、かつ、左右方向に見たときに、第1部材の第2部材と対向する部分が、第2部材の前に配置される。この定義において、第1部材と第2部材は、3次元では、前後方向に並んでいなくてもよい。この定義は、前後方向以外の方向も適用される。
【0013】
本明細書において、第1部材が第2部材より前に配置されるとは、以下の状態を指す。第1部材は、第2部材の前端を通り前後方向に直交する平面の前に配置される。この場合、第1部材及び第2部材は、前後方向に並んでいてもよく、並んでいなくてもよい。この定義は、前後方向以外の方向にも適用される。
【0014】
本明細書において、特に断りのない場合には、第1部材の各部について以下のように定義する。第1部材の前部とは、第1部材の前半分を意味する。第1部材の後部とは、第1部材の後半分を意味する。第1部材の左部とは、第1部材の左半分を意味する。第1部材の右部とは、第1部材の右半分を意味する。第1部材の上部とは、第1部材の上半分を意味する。第1部材の下部とは、第1部材の下半分を意味する。第1部材の前端とは、第1部材の前方向の端を意味する。第1部材の後端とは、第1部材の後方向の端を意味する。第1部材の左端とは、第1部材の左方向の端を意味する。第1部材の右端とは、第1部材の右方向の端を意味する。第1部材の上端とは、第1部材の上方向の端を意味する。第1部材の下端とは、第1部材の下方向の端を意味する。第1部材の前端部とは、第1部材の前端及びその近傍を意味する。第1部材の後端部とは、第1部材の後端及びその近傍を意味する。第1部材の左端部とは、第1部材の左端及びその近傍を意味する。第1部材の右端部とは、第1部材の右端及びその近傍を意味する。第1部材の上端部とは、第1部材の上端及びその近傍を意味する。第1部材の下端部とは、第1部材の下端及びその近傍を意味する。
【0015】
本明細書において、第1部材と第2部材とが電気的に接続されているとは、以下の2通りの意味を含む。第1の意味は、第1部材と第2部材とが物理的に接触することによって、第1部材と第2部材とに直流電流が流れることができることである。第2の意味は、第1部材と第3部材とが物理的に接触し、かつ、第3部材と第2部材とが物理的に接触することによって、第1部材と第2部材とに直流電流が流れることができることである。第2の意味では、第1部材と第2部材とは物理的に接触していてもよいし、接触していなくてもよい。第2の意味では、第3部材は、単一の部材であってもよいし、複数の部材を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る電子機器によれば、ユーザが操作パネルを押す力の大きさを精度良く検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、電子機器1の分解斜視図である。
図2図2は、電子機器1のA-Aにおける断面図である。
図3図3は、センサ6の底面図及び断面図である。
図4図4は、モデル2のセンサ6及び板状部材7の上面図である。
図5図5は、電子機器1の上面図である。
図6図6は、点13を押したときにおけるモデル1の各部分の変形量を示した図である。
図7図7は、点13を押したときにおけるモデル2の各部分の変形量を示した図である。
図8図8は、点13,15を押したときにセンサ6が発生した電荷を示したグラフである。
図9図9は、モデル5のセンサ6及び板状部材7の上面図である。
図10図10は、モデル6のセンサ6及び板状部材7の上面図である。
図11図11は、モデル7のセンサ6及び板状部材7の上面図である。
図12図12は、モデル8のセンサ6及び板状部材7の上面図である。
図13図13は、点13を押したときにセンサ6が発生した電荷量を示したグラフである。
図14図14は、点5を押したときにセンサ6が発生した電荷量を示したグラフである。
図15図15は、点13を押したときにセンサ6が発生した電荷量を、点5を押したときにセンサ6が発生した電荷量で割った値を示したグラフである。
図16図16は、電子機器1aのセンサ6及び板状部材7の上面図である。
図17図17は、電子機器1bのセンサ6及び板状部材7の上面図である。
図18図18は、モデル9のセンサ6及び板状部材7の上面図である。
図19図19は、モデル10のセンサ6及び板状部材7の上面図である。
図20図20は、点13を押したときにセンサ6が発生した電荷量を示したグラフである。
図21図21は、点5を押したときにセンサ6が発生した電荷量を示したグラフである。
図22図22は、点13を押したときにセンサ6が発生した電荷量を、点5を押したときにセンサ6が発生した電荷量で割った値を示したグラフである。
図23図23は、電子機器1cのセンサ6及び板状部材7の斜視図である。
図24図24は、モデル3のセンサ6及び板状部材7の上面図である。
図25図25は、点13を押したときにおけるモデル3の各部分の変形量を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下に、本発明の第1実施形態に係る電子機器1の構成について図面を参照しながら説明する。図1は、電子機器1の分解斜視図である。図2は、電子機器1のA-Aにおける断面図である。図3は、センサ6の底面図及び断面図である。
【0019】
また、本明細書において、方向を以下の様に定義する。電子機器1において、操作パネル2の上主面及び下主面が並ぶ方向を上下方向と定義する。また、上下方向に見て、電子機器1の操作パネル2の長辺が延びる方向を前後方向と定義する。上下方向に見て、電子機器1の操作パネル2の短辺が延びる方向を左右方向と定義する。上下方向、左右方向及び前後方向は、互いに直交している。なお、本明細書における方向の定義は、一例である。従って、電子機器1の実使用時における方向と本明細書における方向とが一致している必要はない。また、図1において上下方向が反転してもよい。同様に、図1において左右方向が反転してもよい。図1において前後方向が反転してもよい。
【0020】
電子機器1は、スマートフォンやタブレット型コンピュータ等の携帯型電子端末である。電子機器1は、図1及び図2に示すように、操作パネル2、筐体3、表示パネル4、接着部材5、センサ6及び板状部材7を備えている。
【0021】
操作パネル2は、上下方向に並ぶ上主面及び下主面を有している。操作パネル2の上主面及び下主面は、前後方向に延びる2本の辺及び左右方向に延びる2本の辺を有する矩形状を有している。前後方向に延びる2本の辺は、長辺である。左右方向に延びる2本の辺は、短辺である。ユーザの身体の一部又は操作部材が、操作パネル2の上主面に接触する。操作パネル2は、透明板である。操作パネル2は、例えば、ガラス板である。
【0022】
表示パネル4は、上下方向に並ぶ上主面及び下主面を有している。表示パネル4の上主面及び下主面は、前後方向に延びる2本の辺及び左右方向に延びる2本の辺を有する矩形状を有している。前後方向に延びる2本の辺は、長辺である。左右方向に延びる2本の辺は、短辺である。表示パネル4は、操作パネル2の下主面に固定されている。表示パネル4は、接着剤や両面テープ等により操作パネル2に固定されている。表示パネル4の全体は、上下方向に見て、操作パネル2と重なっている。従って、表示パネル4は、上下方向に見て、操作パネル2の外縁からはみ出していない。表示パネル4は、例えば、有機ELディスプレイや、液晶ディスプレイである。また、表示パネル4は、ユーザが操作パネル2に触れた位置を検知するためのタッチパネルを含んでいてもよい。
【0023】
板状部材7は、上下方向に並ぶ上主面及び下主面を有している。板状部材7の上主面及び下主面は、前後方向に延びる2本の辺及び左右方向に延びる2本の辺を有する矩形状を有している。前後方向に延びる2本の辺は、長辺である。左右方向に延びる2本の辺は、短辺である。板状部材7は、表示パネル4の下主面に固定されている。板状部材7は、接着剤や両面テープ等により表示パネル4に固定されている。板状部材7の全体は、上下方向に見て、表示パネル4と重なっている。従って、板状部材7は、上下方向に見て、表示パネル4の外縁からはみ出していない。板状部材7の剛性は、後述するセンサ6の剛性よりも高い。このような板状部材7の材料は、例えば、SUS(Stainless Used Steel)等の金属である。ただし、板状部材7の材料は、金属以外の材料であってもよい。金属以外の材料は、例えば、樹脂である。
【0024】
筐体3は、操作パネル2より下に位置している。筐体3は、箱である。筐体3は、上下方向に見て、矩形状を有している。筐体3の長辺は、前後方向に延びている。筐体3の短辺は、左右方向に延びている。上下方向に見た筐体3の外縁は、上下方向に見た操作パネル2の外縁と一致する。ただし、筐体3の上面は、開口している。筐体3の開口Opは、上下方向に見て、矩形状を有している。
【0025】
接着部材5は、操作パネル2の下主面の一部分を筐体3に固定している。より詳細には、接着部材5は、筐体3の開口Opの周囲と操作パネル2の外縁近傍とを固定している。そこで、接着部材5は、上下方向に見て、表示パネル4を囲む矩形状の枠形状を有している。従って、接着部材5は、上下方向に見て、表示パネル4と重なっていない。以上のような接着部材5は、防水性を有している。
【0026】
センサ6は、操作パネル2の変形を検知する。より詳細には、センサ6は、図1に示すように、板状部材7の下主面に固定されている。より詳細には、センサ6は、上下方向に見て、矩形状を有している。センサ6は、左右方向に延びる長手方向を有している。そして、センサ6は、上下方向に見て、板状部材7の前後方向の中央に位置している。
【0027】
ユーザが操作パネル2を押すことによって操作パネル2が下方向に撓むと、表示パネル4及び板状部材7も下方向に撓む。そして、センサ6は、板状部材7と共に下方向に撓む。これにより、センサ6は、ユーザが操作パネル2を押すことにより操作パネル2に生じる変形に応じた検知信号を出力する。以下に、図3を参照しながら、センサ6の詳細について説明する。
【0028】
センサ6は、圧電フィルム14、上電極15a、下電極15b、基材16及び接着層18,20を備えている。圧電フィルム14は、シート形状を有している。従って、圧電フィルム14は、上主面及び下主面を有している。圧電フィルム14の左右方向の長さは、圧電フィルム14の前後方向の長さより長い。本実施形態では、圧電フィルム14は、上下方向に見て、左右方向に延びる長辺を有する矩形状を有している。圧電フィルム14は、圧電フィルム14の変形量に応じた電荷を発生する。本実施形態では、圧電フィルム14は、PLAフィルムである。以下に、圧電フィルム14についてより詳細に説明する。
【0029】
圧電フィルム14は、圧電フィルム14が左右方向に伸張されたときに発生する電荷の極性が、圧電フィルム14が前後方向に伸張されたときに発生する電荷の極性と逆となる特性を有している。具体的には、圧電フィルム14は、キラル高分子から形成されるフィルムである。キラル高分子とは、例えば、ポリ乳酸(PLA)、特にL型ポリ乳酸(PLLA)である。キラル高分子からなるPLLAは、主鎖が螺旋構造を有する。PLLAは、一軸延伸されて分子が配向する圧電性を有する。圧電フィルム14は、d14の圧電定数を有している。圧電フィルム14の一軸延伸方向(配向方向)は、前後方向及び左右方向のそれぞれに対して45度の角度を形成している。この45度は、例えば、45度±10度程度を含む角度を含む。これにより、圧電フィルム14は、圧電フィルム14が前後方向及び左右方向に伸張されること又は前後方向及び左右方向に圧縮されることにより、電荷を発生する。圧電フィルム14は、例えば、左右方向に伸張されると正の電荷を発生する。圧電フィルム14は、例えば、左右方向に圧縮されると負の電荷を発生する。圧電フィルム14は、例えば、前後方向に伸張されると負の電荷を発生する。圧電フィルム14は、例えば、前後方向に圧縮されると正の電荷を発生する。すなわち、圧電フィルム14から発生する電荷の極性は、a)圧縮か伸長か、b)圧縮又は伸長の方向、により逆の極性となる。電荷の大きさは、伸張又は圧縮による圧電フィルム14の変形量に依存する。より正確には、電荷の大きさは、伸張又は圧縮による圧電フィルム14の変形量の微分値に比例する。
【0030】
上電極15aは、信号電極である。上電極15aから検知信号が出力される。上電極15aは、圧電フィルム14の上主面に設けられている。下電極15bは、グランド電極である。下電極15bは、グランドに接続される。下電極15bは、圧電フィルム14の下主面に設けられている。上電極15aの材料及び下電極15bの材料は、例えば、PEDOTのような導電性高分子である。
【0031】
基材16は、上電極15aの上に設けられている。基材16は、圧電フィルム14、上電極15a及び下電極15bを保持することにより、圧電フィルム14と共に変形する。基材16は、シート形状を有している。基材16は、上主面及び下主面を有している。基材16の左右方向の長さは、基材16の前後方向の長さより長い。本実施形態では、基材16は、上下方向に見て、左右方向に延びる長辺を有する矩形状を有している。基材16の長辺は、圧電フィルム14の長辺、上電極15aの長辺及び下電極15bの長辺より長い。基材16の短辺は、圧電フィルム14の短辺、上電極15aの短辺及び下電極15bの短辺より長い。圧電フィルム14、上電極15a及び下電極15bは、上下方向に見て、基材16の外縁に囲まれた領域内に配置されている。基材16の材料は、例えば、ポリウレタン、PETである。フレキシブル基板、プリント配線板で形成してもよい。
【0032】
接着層18は、圧電フィルム14、上電極15a及び下電極15bを基材16に固定する。より詳細には、接着層18は、基材16の下主面に設けられている。接着層18は、基材16の下主面の一部分を覆っている。また、接着層18は、上電極15aの上主面の全体を覆っている。接着層18の外縁は、上下方向に見て、基材16の外縁に囲まれている。接着層18は、上電極15aと基材16とを接着している。その結果、基材16の変形は、圧電フィルム14に伝達される。接着層18の材料は、例えば、両面テープ、熱硬化接着剤、熱可塑性接着剤である。
【0033】
接着層20は、基材16の上主面に設けられている。接着層20は、基材16を板状部材7の下主面に固定している。接着層20の材料は、例えば、両面テープ、熱硬化接着剤、熱可塑性接着剤である。
【0034】
ところで、電子機器1は、ユーザが操作パネル2を押す力の大きさを精度良く検知できる構造を有している。以下にこの構造について説明する。図1に示すように、上下方向に見てセンサ6より前の領域を第1領域A1と定義する。上下方向に見てセンサ6より後の領域を第2領域A2と定義する。
【0035】
第1領域A1及び第2領域A2において、線状の複数のスリットSLが板状部材7に設けられている。複数のスリットSLは、前後方向に延びている。複数のスリットSLは、直線状を有している。複数のスリットSLは、板状部材7を上下方向に貫通する空間である。従って、複数のスリットSL内には板状部材7の材料が存在しない。前記の通り、スリットSLは、線状を有している。従って、スリットSLの線幅は、スリットSLの長さより十分に短い。
【0036】
複数のスリットSLは、第1領域A1において左右方向に並ぶように配列されている複数の第1スリットSL1、及び、第2領域A2において左右方向に並ぶように配列されている複数の第2スリットSL2を、含んでいる。複数の第1スリットSL1の左右方向のピッチは、均一である。ピッチは、隣り合う2本の第1スリットSL1の線幅方向の中央間の距離である。
【0037】
また、複数の第1スリットSL1の内の左端に位置する第1スリットSL1を第1スリットSL1Lと定義する。複数の第1スリットSL1の内の右端に位置する第1スリットSL1を第1スリットSL1Rと定義する。第1スリットSL1Lは、センサ6の左端近傍に位置している。ただし、第1スリットSL1Lと板状部材7の左辺との左右方向の距離D1は、センサ6の左端と板状部材7の左辺との左右方向の距離D11より長い。第1スリットSL1Rは、センサ6の右端近傍に位置している。ただし、第1スリットSL1Rと板状部材7の右辺との左右方向の距離D2は、センサ6の右端と板状部材7の右辺との左右方向の距離D12より短い。
【0038】
また、複数の第1スリットSL1の長さは、互いに等しい。複数の第1スリットSL1の前端は、左右方向に一列に並んでいる。複数の第1スリットSL1の後端は、左右方向に一列に並んでいる。複数の第1スリットSL1の前端と板状部材7の前辺との前後方向の距離D3は、複数の第1スリットSL1の前端と第1領域A1の前後方向の中央C1との前後方向の距離D13より短い。複数の第1スリットSL1の後端とセンサ6との前後方向の距離D4は、複数の第1スリットSL1の後端と第1領域A1の前後方向の中央C1との前後方向の距離D14より短い。複数の第1スリットSL1の後端とセンサ6との前後方向の距離D4は、5mm以上10mm以下である。
【0039】
なお、複数の第2スリットSL2の構造は、複数の第1スリットSL1と前後対称である。従って、複数の第2スリットSL2の説明を省略する。
【0040】
[効果]
電子機器1によれば、ユーザが操作パネル2を押す力の大きさを精度良く検知できる。より詳細には、第1領域A1及び第2領域A2において、線状の複数のスリットSLが板状部材7に設けられている。これにより、板状部材7の剛性が低下する。そのため、ユーザが操作パネル2を押したときに、操作パネル2、表示パネル4及び板状部材7が下方向に大きく撓みやすくなる。このとき、板状部材7が左右方向に大きく延びるので、センサ6の左右方向の変形量が大きくなる。その結果、センサ6が発生する電荷量が大きくなる。以上より、電子機器1によれば、ユーザが操作パネル2を押す力の大きさを精度良く検知できる。
【0041】
電子機器1によれば、以下の理由によっても、ユーザが操作パネル2を押す力の大きさを精度良く検知できる。ユーザが操作パネル2を押すことにより、操作パネル2、表示パネル4及び板状部材7が下方向に撓む。このとき、板状部材7は、左右方向に延びるように変形する。電子機器1では、複数のスリットSLは、前後方向に延びている。そのため、複数のスリットSLの線幅が広がることによって、板状部材7が左右方向に大きく延びる。その結果、センサ6の左右方向の変形量が大きくなるので、センサ6が発生する電荷量が大きくなる。以上より、電子機器1によれば、ユーザが操作パネル2を押す力の大きさを精度良く検知できる。
【0042】
電子機器1では、複数のスリットSLが板状部材7に設けられている。これにより、板状部材7の剛性が更に低下する。そのため、ユーザが操作パネル2を押したときに、操作パネル2、表示パネル4及び板状部材7が下方向に大きく撓みやすくなる。その結果、電子機器1によれば、ユーザが操作パネル2を押す力の大きさを精度良く検知できる。
【0043】
電子機器1では、板状部材7は、表示パネル4の下主面に固定されている。これにより、表示パネル4が発生した熱が板状部材7により発散される。その結果、電子機器1の放熱性が向上する。また、表示パネル4が板状部材7により保護される。
【0044】
[シミュレーション1]
本願発明者は、電子機器1が奏する効果を確認するために、以下に説明するシミュレーション1を行った。図4は、モデル2のセンサ6及び板状部材7の上面図である。図5は、電子機器1の上面図である。図5の点1~点25は、操作パネル2の上主面の位置を示している。図6は、点13を押したときにおけるモデル1の各部分の変形量を示した図である。図7は、点13を押したときにおけるモデル2の各部分の変形量を示した図である。図6及び図7のカラーバーは、上に行くにしたがって変形量が大きくなっていることを意味する。図8は、点13,15を押したときにセンサ6が発生した電荷を示したグラフである。
【0045】
モデル1(図示せず)では、スリットSLが板状部材7に設けられていない。モデル2では、スリットSLのピッチが4mmであり、スリットSLの線幅が0.5mmである。モデル1及びモデル2において用いた板状部材7の材料は、SUSである。板状部材7の厚みは、0.15mmである。板状部材7の前後方向の長さは、110mmである。板状部材7の左右方向の長さは、60mmである。なお、モデル3については、後述するので、ここでは説明を省略する。
【0046】
シミュレーション1において、本願発明者は、モデル1及びモデル2の点13を1Nの力で押したときの板状部材7の左右方向の変形量と、モデル1及びモデル2の点13,15を1Nの力で押したときにセンサ6が発生する電荷量をコンピュータにより演算した。
【0047】
図6及び図7を参照すると、モデル2の左右方向の変形量がモデル1の左右方向の変形量より大きいことが分かる。モデル1の変形量は、130nmであった。モデル2の変形量は、280nmであった。このように、板状部材7に複数のスリットSLが設けられることにより、板状部材7が左右方向に変形しやすくなることが分かる。
【0048】
また、図8のグラフによれば、モデル2においてセンサ6が発生する電荷量が、モデル1においてセンサ6が発生する電荷量より大きくなっていることが分かる。これにより、操作パネル2の中央(点13)を押した場合、及び、操作パネル2の端(点15)を押した場合の両方において、センサ6の感度が向上していることが分かる。すなわち、線状の複数のスリットSLが板状部材7に設けられることにより、ユーザが操作パネル2を押す力の大きさを精度良く検知できることが分かる。
【0049】
[シミュレーション2]
本願発明者は、複数の第1スリットSL1の後端とセンサ6との前後方向の距離D4が5mm以上10mm以下であることが好ましいことを確認するために、以下に説明するシミュレーション2を行った。図9は、モデル5のセンサ6及び板状部材7の上面図である。図10は、モデル6のセンサ6及び板状部材7の上面図である。図11は、モデル7のセンサ6及び板状部材7の上面図である。図12は、モデル8のセンサ6及び板状部材7の上面図である。図13は、点13を押したときにセンサ6が発生した電荷を示したグラフである。図14は、点5を押したときにセンサ6が発生した電荷を示したグラフである。図13及び図14の縦軸の単位はpCである。図15は、点13を押したときにセンサ6が発生した電荷を、点5を押したときにセンサ6が発生した電荷で割った値(割合)を示したグラフである。
【0050】
モデル4(図示せず)では、スリットSLが板状部材7に設けられていない。モデル5では、複数の第1スリットSL1の後端とセンサ6との前後方向の距離D4が1mmである。モデル6では、複数の第1スリットSL1の後端とセンサ6との前後方向の距離D4が5mmである。モデル7では、複数の第1スリットSL1の後端とセンサ6との前後方向の距離D4が10mmである。
【0051】
モデル8は、以下に説明する構造を有している。複数のスリットSLの後端とセンサ6との前後方向の距離D4は、板状部材7の左右方向の中央から左又は右に行くにしたがって小さくなっている。より詳細には、複数の第1スリットSL1の内の板状部材7の左右方向の中央から最も近くに位置する第1スリットSL1を中央第1スリットSL1Cと定義する。複数の第1スリットSL1の内の板状部材7の左右方向の中央から最も遠くに位置する第1スリットSL1を外側第1スリット(第1スリットSL1L,SL1R)と定義する。外側第1スリット(第1スリットSL1L,SL1R)の後端とセンサ6との前後方向の距離D22は、中央第1スリットSL1Cの後端とセンサ6との前後方向の距離D21より短い。なお、複数の第2スリットSL2は、複数の第1スリットSL1と上下対称な構造を有している。
【0052】
モデル4ないしモデル8において、スリットSLのピッチが4mmであり、スリットSLの線幅が0.5mmである。板状部材7の材料は、SUSである。板状部材7の厚みは、0.15mmである。板状部材7の前後方向の長さは、110mmである。板状部材7の左右方向の長さは、60mmである。
【0053】
本願発明者は、シミュレーション2において、モデル4ないしモデル8の点5,13を1Nの力で押したときのセンサ6が発生する電荷量をコンピュータにより演算した。
【0054】
図13及び図14に示すように、モデル5ないしモデル8におけるセンサ6が発生する電荷量は、モデル4におけるセンサ6が発生する電荷量より大きいことが分かる。これにより、板状部材7に線状のスリットSLが設けられることにより、センサ6の感度が向上していることが分かる。
【0055】
ところで、電子機器1では、操作パネル2の点1~25においてセンサ6の感度の差が小さいことが好ましい。すなわち、操作パネル2の点1~25が押されたときにセンサ6が発生する電荷量の差が小さいことが好ましい。そこで、本願発明者は、図15に示すように、センサ6の感度が高い点13が押されたときにセンサ6が発生する電荷量を、センサ6の感度が低い点5が押されたときにセンサ6が発生する電荷量で割った値を計算した。
【0056】
図15によれば、複数の第1スリットSL1の後端とセンサ6との前後方向の距離D4が5mm以上10mm以下(すなわち、モデル6,7)であれば、点13が押されたときにセンサ6が発生する電荷量を、点5が押されたときに発生する電荷量で割った値が小さくなることが分かる。すなわち、点5が押されたときのセンサ6の感度と点13が押されたときのセンサ6の感度との差が小さいことが分かる。以上より、本願発明者は、複数の第1スリットSL1の後端とセンサ6との前後方向の距離D4が5mm以上10mm以下であることが好ましいことを確認した。
【0057】
また、モデル8においても、モデル6,7と同様に、点13が押されたときにセンサ6が発生する電荷量を、点5が押されたときに発生する電荷量で割った値が小さくなることが分かる。よって、外側第1スリット(第1スリットSL1L,SL1R)の後端とセンサ6との距離D22が中央第1スリットSL1Cの後端とセンサ6との距離D21より短くなることにより、操作パネル2の点1~25においてセンサ6の感度の差が小さくなる。
【0058】
(第1変形例)
以下に、第1変形例に係る電子機器1aについて図面を参照しながら説明する。図16は、電子機器1aのセンサ6及び板状部材7の上面図である。
【0059】
電子機器1aは、スリットSLが延びている方向において電子機器1と相違する。より詳細には、複数のスリットSLは、左右方向に延びている。複数のスリットSLが左右方向に延びている場合も、板状部材7の剛性が低下する。そのため、電子機器1aでは、電子機器1と同様に、ユーザが操作パネル2を押す力の大きさを精度良く検知できる。
【0060】
(第2変形例)
以下に、第2変形例に係る電子機器1bについて図面を参照しながら説明する。図17は、電子機器1bのセンサ6及び板状部材7の上面図である。
【0061】
電子機器1bは、複数のスリットSLが延びている方向において電子機器1と相違する。より詳細には、複数のスリットSLは、前後方向及び左右方向に交差する方向に延びている。すなわち、複数のスリットSLは、前後方向に対して斜め方向に直線的に延びている。複数のスリットSLが前後方向及び左右方向に交差する方向に延びている場合も、板状部材7の剛性が低下する。そのため、電子機器1bでは、電子機器1と同様に、ユーザが操作パネル2を押す力の大きさを精度良く検知できる。
【0062】
(その他の変形例)
以下に、その他の変形例に係る電子機器について図面を参照しながら説明する。図18は、モデル9のセンサ6及び板状部材7の上面図である。図19は、モデル10のセンサ6及び板状部材7の上面図である。図20は、点13を押したときにセンサ6が発生した電荷量を示したグラフである。図21は、点5を押したときにセンサ6が発生した電荷量を示したグラフである。図22は、点13を押したときにセンサ6が発生した電荷量を、点5を押したときにセンサ6が発生した電荷量で割った値を示したグラフである。
【0063】
複数のスリットSLは、同じ方向に延びていなくてもよい。図18に示すモデル9では、複数の第1スリットSL1は、複数の第1スリットSL1l及び複数の第1スリットSL1rを含んでいる。複数の第1スリットSL1lは、第1領域A1の左部において板状部材7に設けられている。複数の第1スリットSL1lは、右前方向に延びている。複数の第1スリットSL1rは、第1領域A1の右部において板状部材7に設けられている。複数の第1スリットSL1rは、左前方向に延びている。複数の第2スリットSL2は、複数の第1スリットSL1と前後対称な構造を有しているので、説明を省略する。
【0064】
また、図19に示すモデル10では、複数の第1スリットSL1は、複数の第1スリットSL1l及び複数の第1スリットSL1rを含んでいる。複数の第1スリットSL1lは、第2領域A2の左部において板状部材7に設けられている。複数の第1スリットSL1lは、左前方向に延びている。複数の第1スリットSL1rは、第2領域A2の右部において板状部材7に設けられている。複数の第1スリットSL1rは、右前方向に延びている。複数の第2スリットSL2は、複数の第1スリットSL1と前後対称な構造を有しているので、説明を省略する。
【0065】
本願発明者は、モデル9及びモデル10についても、第2シミュレーションを行った。具体的には、本願発明者は、モデル9及びモデル10の点5,13を1Nの力で押したときのセンサ6が発生する電荷量をコンピュータにより演算した。
【0066】
図20及び図21に示すように、モデル9及びモデル10におけるセンサ6が発生する電荷量は、モデル4におけるセンサ6が発生する電荷量より大きいことが分かる。これにより、板状部材7に線状のスリットSLが設けられることにより、センサ6の感度が向上していることが分かる。
【0067】
ところで、電子機器1では、操作パネル2の点1~25においてセンサ6の感度の差が小さいことが好ましい。すなわち、操作パネル2の点1~25が押されたときにセンサ6が発生する電荷量の差が小さいことが好ましい。そこで、本願発明者は、図22に示すように、センサ6の感度が高い点13が押されたときにセンサ6が発生する電荷量を、センサ6の感度が低い点5が押されたときにセンサ6が発生する電荷量で割った値を計算した。
【0068】
図22によれば、モデル9では、モデル4よりも、点13が押されたときにセンサ6が発生する電荷量を、点5が押されたときに発生する電荷量で割った値が小さくなることが分かる。すなわち、モデル9では、モデル4よりも、点5が押されたときのセンサ6の感度と点13が押されたときのセンサ6の感度との差が小さいことが分かる。以上より、モデル9では、操作パネル2の点1~25においてセンサ6の感度の差が小さくなる。
【0069】
(第2実施形態)
以下に、第2実施形態に係る電子機器1cについて図面を参照しながら説明する。図23は、電子機器1cのセンサ6及び板状部材7の斜視図である。
【0070】
電子機器1cは、板状部材7の左右方向の端部が下方向に折れ曲がっている点において電子機器1と相違する。ユーザが操作パネルを押すと、操作パネルは、ユーザが操作パネルを押した位置を中心に下方向に突出するように変形する。これにともない、板状部材も、操作パネルと同様に下方向に突出するように変形する。このとき、板状部材は、前後方向及び左右方向に伸長される。センサ及び圧電フィルムも、板状部材と同様に前後方向及び左右方向に伸長される。センサが前後方向及び左右方向に伸長されることによりセンサが発生する電荷の極性が異なるため、センサが発生する電荷が相殺される。この場合、ユーザが操作パネルを押す力の大きさの検出精度が低下する。
【0071】
そこで、電子機器1cでは、板状部材7の左右方向の端部が上方向又は下方向に曲がっている。これにより、ユーザが操作パネル2を押したときの板状部材7の前後方向の変形を低減できる。すなわち、板状部材7の前後方向の伸長量が低減する。これにより、センサ6及び圧電フィルム14の前後方向の伸長量も同様に低減される。そして、センサ6が発生する電荷の相殺量が減少する。以上より、電子機器1bでは、電子機器1と同様に、ユーザが操作パネル2を押す力の大きさを精度良く検知できる。
【0072】
(第3実施形態)
以下に、第3実施形態に係る電子機器1dについて図面を参照しながら説明する。図24は、電子機器1dのセンサ6及び板状部材7の上面図及び断面図である。図25は、点13を押したときにおけるモデル3の各部分の変形量を示した図である。図25のカラーバーは、上に行くにしたがって変形量が大きくなっていることを意味する。
【0073】
電子機器1dは、複数のスリットSLの代わりに複数のリブLBが板状部材7に設けられている点において、電子機器1と相違する。リブLBは、板状部材7が上方向又は下方向に溝が設けられることにより形成される筋状の突起である。電子機器1dのその他の構造は、電子機器1と同じであるので説明を省略する。電子機器1dは、電子機器1と同じ作用効果を奏することができる。
【0074】
本願発明者は、電子機器1dが奏する効果を確認するために、シミュレーション1を行った。図24のモデル3を作成した。モデル3では、スリットSLの代わりにリブLBが設けられている。リブLBの深さが0.2mmであり、リブLBの幅が0.5mmである。
【0075】
シミュレーション1において、本願発明者は、モデル3の点13を1Nの力で押したときの板状部材7の左右方向の変形量と、モデル3の点13,15を1Nの力で押したときにセンサ6が発生する電荷量をコンピュータにより演算した。
【0076】
図25に示すように、モデル3の左右方向の変形量がモデル1の左右方向の変形量より大きいことが分かる。モデル1の変形量は、130nmであった。モデル3の変形量は、220nmであった。このように、板状部材7に複数のリブLBが設けられることにより、板状部材7が左右方向に変形しやすくなることが分かる。
【0077】
また、図8のグラフによれば、モデル3においてセンサ6が発生する電荷量が、モデル1においてセンサ6が発生する電荷量より大きくなっていることが分かる。これにより、操作パネル2の中央(点13)を押した場合、及び、操作パネル2の端(点15)を押した場合の両方において、センサ6の感度が向上していることが分かる。すなわち、線状のリブLBが板状部材7に設けられることにより、ユーザが操作パネル2を押す力の大きさを精度良く検知できることが分かる。
【0078】
(その他の実施形態)
本発明に係る電子機器1,1a~1dは、電子機器1,1a~1dに限らず、その要旨の範囲において変更可能である。
【0079】
また、電子機器1,1a~1dの構造を任意に組わせてもよい。
【0080】
なお、電子機器1において、圧電フィルム14は、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)フィルムであってもよい。
【0081】
なお、電子機器1において、筐体3及び接着部材5は、必須の構成要件ではない。
【0082】
なお、接着部材5は、防水性を有していなくてもよい。
【0083】
なお、1以上のスリットSLが設けられていればよい。すなわち、1以上のスリットSLの数は、1であってもよいし、複数であってもよい。
【0084】
なお、1以上のスリットSLは、第1領域A1及び第2領域A2のいずれか一方に設けられていてもよい。
【0085】
なお、1以上のスリットSLは、直線でなくてもよい。従って、1以上のスリットSLは、曲がっていてもよい。
【0086】
なお、1以上のスリットSLは、上下方向に見て、板状部材7の外縁に接していてもよいし、板状部材7の外縁に接していなくてもよい。
【0087】
なお、複数の第1スリットSL1の後端とセンサ6との前後方向の距離D4は、5mmより短くてもよいし、10mmより長くてもよい。
【0088】
なお、前後方向に延びる2本の辺が短辺であり、左右方向に延びる2本の辺が長辺であってもよい。
【0089】
なお、センサ6は、上下方向に見て、板状部材7の前後方向の中央以外の位置に設けられていてもよい。
【0090】
なお、操作パネル2は、樹脂板であってもよい。
【0091】
なお、センサ6は、左右方向に延びる長手方向を有していなくてもよい。センサ6は、前後方向に延びる長手方向を有していてもよい。
【0092】
なお、電子機器1cの板状部材7にモデル2,5~10、電子機器1a,1bのスリットSLが設けられてもよい。このような電子機器1cも、電子機器1と同様の効果が得られる。なお、電子機器1cの板状部材7にリブLBが設けられてもよい。
【0093】
なお、電子機器1dの板状部材7のリブLBの配置を、モデル2,5~10、電子機器1a,1bのスリットSLの配置と同じにしてもよい。
【符号の説明】
【0094】
1,1a~1d:電子機器
2:操作パネル
3:筐体
4:表示パネル
5:接着部材
6:センサ
7:板状部材
14:圧電フィルム
15a:上電極
15b:下電極
16:基材
18,20:接着層
A1:第1領域
A2:第2領域
C1:中央
LB:リブ
Op:開口
SL:スリット
SL1,SL1R,SL1l,SL1r:第1スリット
SL1C:中央第1スリット
SL2:第2スリット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25