(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】表面外観に優れた電気めっき鋼板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C25D 5/52 20060101AFI20250311BHJP
B21B 1/22 20060101ALI20250311BHJP
C22C 18/00 20060101ALI20250311BHJP
C25D 5/26 20060101ALI20250311BHJP
【FI】
C25D5/52
B21B1/22 H
C22C18/00
C25D5/26 G
(21)【出願番号】P 2021535769
(86)(22)【出願日】2019-12-18
(86)【国際出願番号】 KR2019017931
(87)【国際公開番号】W WO2020130603
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-08-05
【審判番号】
【審判請求日】2023-07-24
(31)【優先権主張番号】10-2018-0165595
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(74)【代理人】
【識別番号】100134382
【氏名又は名称】加藤 澄恵
(72)【発明者】
【氏名】クウォン、 ムン-ジェ
(72)【発明者】
【氏名】イ、 ジェ-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ス-ヤン
【合議体】
【審判長】粟野 正明
【審判官】井上 猛
【審判官】佐藤 陽一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/230716(WO,A1)
【文献】特開昭60-106992(JP,A)
【文献】特開平01-298192(JP,A)
【文献】特開平08-165594(JP,A)
【文献】特公昭63-048959(JP,B2)
【文献】特開昭63-143294(JP,A)
【文献】特許第2675152(JP,B1)
【文献】国際公開第2019/194229(WO,A1)
【文献】大和康二 外4名、「Zn-Ni合金電気めっき鋼板「リバーハイジンク」および「リバーハイジンクスーパー」の開発」、川崎製鉄技報、1984年、Vol.16、No.4、72-80頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 1/22
C22C 18/00
C25D 5/52,5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
素地鋼板;及び
前記素地鋼板の少なくとも一面に位置し、ヘアラインパターンが形成された亜鉛-ニッケルめっき層
からなり、
前記亜鉛-ニッケルめっき層との界面を形成する素地鋼板表面の表面粗度が中心線平均粗度(Ra)を基準として0.7μm以上1.0μm未満であり、
前記亜鉛-ニッケルめっき層がガンマ(Ni
5Zn
21)単一相からなることを特徴とする、亜鉛-ニッケル合金電気めっき鋼板。
【請求項2】
前記亜鉛-ニッケルめっき層の硬度が250~400Hvであることを特徴とする、請求項1に記載の亜鉛-ニッケル合金電気めっき鋼板。
【請求項3】
素地鋼板を調質圧延する段階;
前記調質圧延された素地鋼板を硫酸ニッケル水和物及び硫酸亜鉛水和物を含む硫酸浴に浸漬させて前記素地鋼板上に亜鉛-ニッケルめっき層を形成させる段階;及び
前記亜鉛-ニッケルめっき層をポリシング及びヘアラインパターン加工する段階を含み、
前記調質圧延された素地鋼板表面の表面粗度が中心線平均粗度(Ra)を基準として0.7μm以上1.0μm未満であり、
前記亜鉛-ニッケルめっき層がガンマ(Ni
5Zn
21)単一相からなることを特徴とする、亜鉛-ニッケル合金電気めっき鋼板の製造方法。
【請求項4】
前記調質圧延する段階がキャパシティ(-)モードの放電加工ロールを用いて行われることを特徴とする、請求項3に記載の亜鉛-ニッケル合金電気めっき鋼板の製造方法。
【請求項5】
前記ロールの表面には、クロムがコーティングされていることを特徴とする、請求項4に記載の亜鉛-ニッケル合金電気めっき鋼板の製造方法。
【請求項6】
前記調質圧延する段階は、0.3~1.2%の延伸率で行われることを特徴とする、請求項3乃至請求項5のいずれか一項に記載の亜鉛-ニッケル合金電気めっき鋼板の製造方法。
【請求項7】
前記素地鋼板上に形成された亜鉛-ニッケルめっき層の硬度が250~400Hvであることを特徴とする、請求項3乃至請求項6のいずれか一項に記載の亜鉛-ニッケル合金電気めっき鋼板の製造方法。
【請求項8】
前記ポリシング及びヘアラインパターン加工後の亜鉛-ニッケルめっき層の中心線平均粗度の変化が-1.00~-0.35μmであることを特徴とする、請求項3乃至請求項7のいずれか一項に記載の亜鉛-ニッケル合金電気めっき鋼板の製造方法。
【請求項9】
前記ポリシングによる亜鉛-ニッケルめっき層の表面粗度の変化率は、60~85%であり、ヘアラインパターン加工による亜鉛-ニッケルめっき層の表面粗度の変化率は、15~40%であることを特徴とする、請求項3乃至請求項8のいずれか一項に記載の亜鉛-ニッケル合金電気めっき鋼板の製造方法。
【請求項10】
前記ポリシング及びヘアラインパターン加工後のめっき層の厚さは、ポリシング及びヘアラインパターン加工前のめっき層の厚さの0.2~0.75であることを特徴とする、請求項3乃至請求項9のいずれか一項に記載の亜鉛-ニッケル合金電気めっき鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面外観に優れた電気めっき鋼板及びその製造方法に関するものであって、より詳細には、表面外観及び写像性に優れた亜鉛-ニッケル合金電気めっき鋼板及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
結晶組織の側面で純亜鉛めっき鋼板がイータ状の六方最密結晶構造(Hexagonal close packing)の薄い六角板状結晶組織が集合された形態を示す一方、亜鉛-ニッケルめっき鋼板は、板状結晶が消滅され、粒状結晶形態の表面組織を示す。
【0003】
また、亜鉛-ニッケルめっき鋼板は、電気化学的に安定して軽い元素であるニッケルが添加されて、純亜鉛めっき鋼板に対して非常に優れた耐食性及び高いめっき層の微小硬度を有する。亜鉛-ニッケルめっき鋼板の優れた耐食性は、腐食過程で亜鉛の選択的な腐食が先に行われ、表面に亜鉛水酸化物の腐食生成物が形成され、下層にはニッケル濃縮層が形成されることで素地鉄溶出による赤錆発生が抑制されることに起因する。亜鉛-ニッケルめっき鋼板のめっき層のニッケル含有量の増加に伴う微小硬度の増加は、線形的ではなく、ガンマ相の単独領域で急激な増加が示される非線形的な挙動を示す。
【0004】
最近、炭素鋼基盤のめっき鋼板を活用、鋼板表面にヘアライン(Hairline)パターンを付与してステンレス鋼と類似した表面外観を有する鋼板が映像家電用素材の分野で脚光を浴びている。このように、めっき層を研磨したヘアラインパターン鋼板は、既存のステンレス鋼またはビニール積層鋼板(Vinyl Coated Metal)に対して低い製造原価で同等以上の表面外観を実現することができるという利点がある。
【0005】
めっき鋼板のヘアライン加工時にはっきりしたヘアラインパターンを確保し、優れた研磨効率を確保するためには、めっき層の硬度が高く、耐食性に優れる必要がある。亜鉛-ニッケルめっき鋼板の競争材として注目されている電気亜鉛めっき鋼板(EG)、溶融亜鉛めっき鋼板(GI)の場合、めっき層の硬度が60~70Hv水準と、亜鉛-ニッケルめっき鋼板に対して非常に低く、表面研磨効率及び研磨後の表面外観が劣化するという欠点がある。
【0006】
また、電気亜鉛めっき鋼板及び溶融亜鉛めっき鋼板は、白錆発生に脆弱であるため、鋼板の輸送、保管過程で表面に形成された白錆形態の腐食生成物が研磨後にも鋼板表面に残存して表面品質を阻害させることはもちろん、研磨前に対する研磨後の残存めっき量が少ない条件下で急激な腐食の進行により、表面外観の劣化が発生するという欠点がある。
【0007】
亜鉛-ニッケルめっき鋼板のヘアライン加工後の写像性、光沢度などの表面外観を向上させるための様々な研究が行われているが、ヘアラインの加工前後のめっき層の物理的な特性変化を勘案した相関関係に対する考察は、不十分な実情にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような実情に鑑みて案出されたものであって、ヘアライン加工後の表面外観が美麗であり、写像性に優れた亜鉛-ニッケル合金電気めっき鋼板及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面によると、素地鋼板;及び上記素地鋼板の少なくとも一面に位置し、ヘアラインパターンが形成された亜鉛-ニッケルめっき層を含み、上記亜鉛-ニッケルめっき層との界面を形成する素地鋼板表面の表面粗度が中心線平均粗度(Ra)を基準として0.7~1.0μmである、亜鉛-ニッケル合金電気めっき鋼板が提供される。
【0010】
上記亜鉛-ニッケルめっき層は、ガンマ(Ni5Zn21)単一相からなるものであることができる。
【0011】
上記亜鉛-ニッケルめっき層の硬度は、250~400Hvであることができる。
【0012】
本発明の他の側面によると、素地鋼板を調質圧延する段階;上記調質圧延された素地鋼板を硫酸ニッケル水和物及び硫酸亜鉛水和物を含む硫酸浴に浸漬させて上記素地鋼板上に亜鉛-ニッケルめっき層を形成させる段階;及び上記亜鉛-ニッケルめっき層をポリシング及びヘアラインパターン加工する段階を含む亜鉛-ニッケル合金電気めっき鋼板の製造方法が提供される。
【0013】
上記調質圧延する段階は、キャパシティ(-)モードの放電加工ロールを用いて行うことができる。
【0014】
上記ロールの表面には、クロムがコーティングされていることができる。
【0015】
上記調質圧延する段階は、0.3~1.2%の延伸率で行われることができる。
【0016】
上記調質圧延された素地鋼板表面の表面粗度は、中心線平均粗度(Ra)を基準として0.7~1.0μmであることができる。
【0017】
上記素地鋼板上に形成された亜鉛-ニッケルめっき層は、ガンマ(Ni5Zn21)単一相からなるものであることができる。
【0018】
上記素地鋼板上に形成された亜鉛-ニッケルめっき層の硬度が250~400Hvであることができる。
【0019】
上記ポリシング及びヘアラインパターン加工後の亜鉛-ニッケルめっき層の中心線平均粗度の変化が-1.00~-0.35μmであることができる。
【0020】
上記ポリシングによる亜鉛-ニッケルめっき層の表面粗度の変化率は、60~85%であり、ヘアラインパターン加工による亜鉛-ニッケルめっき層の表面粗度の変化率は、15~40%であることができる。
【0021】
上記ポリシング及びヘアラインパターン加工後のめっき層の厚さは、ポリシング及びヘアラインパターン加工前のめっき層の厚さの0.2~0.75であることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、ヘアライン加工後の表面外観が美麗であることはもちろん、既存のステンレス鋼またはビニール積層鋼板に対して価格競争力に優れるだけでなく、コイル研磨ライン(Coil Polishing Line)での高い生産性の確保が可能な亜鉛-ニッケル電気めっき鋼板及びこの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係るポリシング及びヘアライン加工を終えた鋼板表面のイメージ及び走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)を用いて2,000倍の倍率で分析した結果を示したものであって、(a)は実施例1、(b)は比較例1を示す。
【
図2】本発明の実施例1に係るポリシング及びヘアライン加工前後の鋼板の圧延垂直方向の粗度プロファイルを分析した結果を示したものであって、(a)は加工前、(b)は加工後を示す。
【
図3】本発明の比較例1に係るポリシング及びヘアライン加工前後の鋼板の圧延垂直方向の粗度プロファイルを分析した結果を示したものであって、(a)は加工前、(b)は加工後を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、様々な実施例を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は、いくつかの他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下説明する実施形態に限定されるものではない。
【0025】
本発明は、表面外観に優れた電気めっき鋼板及びその製造方法に関するものであって、より詳細には、表面外観及び写像性に優れた亜鉛-ニッケル合金電気めっき鋼板及びその製造方法に関するものである。
【0026】
ヘアラインパターンが形成された亜鉛-ニッケル合金電気めっき鋼板は、通常的にコイル研磨ラインにおいて、ポリシング、ヘアライン研磨、ブラッシング、表面洗浄、及び熱風乾燥工程を順に経た後、後続するカラーコーティングラインでの塗装処理によって最終製品が完成するようになる。本発明者は、亜鉛-ニッケルめっき鋼板のヘアライン加工後の写像性、光沢度などの表面外観を向上させるための様々な研究中に、亜鉛-ニッケルめっき層の硬度、ポリシング、及びヘアライン加工前の原素材の表面粗度がコイル研磨時の生産性及び加工後の光沢度及び写像性などの表面外観に影響を与える主な因子であることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0027】
本発明の一側面によると、素地鋼板;及び上記素地鋼板の少なくとも一面に位置し、ヘアラインパターンが形成された亜鉛-ニッケルめっき層を含み、上記亜鉛-ニッケルめっき層との界面を形成する素地鋼板表面の表面粗度が中心線平均粗度(Ra)を基準として0.7~1.0μmである、亜鉛-ニッケル合金電気めっき鋼板が提供される。
【0028】
上記素地鋼板の種類は特に制限されず、熱延鋼板、冷延鋼板など、本発明が属する技術分野で使用することができるものであれば、いずれであっても関係ない。但し、本発明において、上記素地鋼板は、亜鉛-ニッケル電気めっきの際、亜鉛またはニッケル粒子の電着特性に影響を与えてめっき鋼板表面粗度を決定するため、後述するように、素地鋼板の最終的な表面粗度を決定する調質圧延工程において好ましいロール加工方法及びこれに伴う素地鋼板の表面粗度を設定する必要がある。
【0029】
上記素地鋼板の少なくとも一面には、電気めっき方式で形成された亜鉛-ニッケルめっき層が形成されており、上記亜鉛-ニッケルめっき層には、ヘアラインパターンが形成されていることができる。
【0030】
上記亜鉛-ニッケルめっき層と界面を形成する素地鋼板表面の表面粗度は、中心線平均粗度(Ra)を基準として0.7~1.0μmであることが好ましい。0.7μm未満の場合には、めっき時の表面粗度は均一であるが、めっき密着性が劣化するようになるという欠点がある。これに対し、表面粗度が1.0μmを超える場合には、めっき材が素地鋼板の粗度特性の影響を受けて表面粗度が増加し、これにより、ヘアライン加工後の表面外観が劣化するという欠点がある。但し、ヘアライン加工後の美麗な表面外観の確保及び亜鉛-ニッケル電気めっき後の素地鋼板に対する表面粗度の上昇を鑑みる場合、素地鋼板の表面粗度は、0.7~0.9μmであることがより好ましい。
【0031】
上記素地鋼板上に形成された亜鉛-ニッケルめっき層は、ガンマ(Ni5Zn21)単一相からなることが好ましい。亜鉛基盤合金の電気めっきにおいて、優れた耐食性を確保するためには、腐食環境下で電気化学的反応性が大きい(activeな)亜鉛の腐食速度を減少させ、犠牲防食性を長い時間維持する必要がある。このような側面でガンマ単一相である場合、ガンマ相が電気化学的に安定するだけでなく、イータ+ガンマなどの混合相で結晶相間の電位差によって発生するガルバニック腐食がないため、優れた耐食性を確保することができる。また、ガンマ単一相の領域内でめっき層内のニッケル含有量の増加に伴うめっき層の硬度が急激に向上して高いめっき層の硬度の確保が容易になる。
【0032】
特に、後述するように、本発明で素地鋼板上に亜鉛-ニッケルめっき層の形成のために適用された酸性浴は、アルカリ浴に対して厚さ方向のニッケル分布が不均一であり、表面からめっき層/素地鋼板の界面方向にニッケル含有量が徐々に増加する分布挙動を示し、めっき層内のニッケル含有量が増加するほど、表面領域でのニッケル空乏(depletion)領域は縮小するようになる。これにより、ヘアライン研磨が行われる表面領域での実質的なめっき層高硬度及びこれに伴う優れた表面外観を達成することができる。
【0033】
また、本発明の素地鋼板上に形成された亜鉛-ニッケルめっき層の硬度は250~400Hvであることが好ましい。亜鉛-ニッケルめっき層の硬度が250Hv未満の場合には、ヘアラインパターン加工時にめっき層の一部が剥がされて圧延方向の均一なヘアラインパターンの確保を阻害し、素材に対する圧下力を増加させて操業時の表面組織相に微細クレーターが発生するという問題がある。めっき層の硬度が高いほど、表面研磨が容易であり、効率も高いといえるが、亜鉛-ニッケルめっき層の硬度が400Hvを超える場合には、表面研磨の容易性のさらなる向上が僅かである一方、めっき層内の亜鉛に対して比較的高価であるニッケル含有量の増加により、亜鉛-ニッケルめっき層の残留応力が増加するようになって、表面に微細クラックが発生し、価格競争力が劣化するため、好ましくない。
【0034】
本発明の他の側面によると、素地鋼板を調質圧延する段階;上記調質圧延された素地鋼板を硫酸ニッケル水和物及び硫酸亜鉛水和物を含む硫酸浴に浸漬させて上記素地鋼板上に亜鉛-ニッケルめっき層を形成させる段階;及び上記亜鉛-ニッケルめっき層をポリシング及びヘアラインパターン加工する段階を含む亜鉛-ニッケル合金電気めっき鋼板の製造方法が提供される。
【0035】
まず、素地鋼板を用意する。上記素地鋼板は脱脂または酸洗などの前処理工程によって表面の清浄性が確保されることができ、本発明では、前処理条件については特に限定しない。
【0036】
上記素地鋼板は亜鉛-ニッケル電気めっき時の亜鉛またはニッケル粒子の電着特性に影響を与えてめっき鋼板の表面粗度を決定するため、素地鋼板の最終的な表面粗度を決定する調質圧延工程において好ましいロール加工方法及びこれに伴う素地鋼板の表面粗度を設定する必要がある。
【0037】
これにより、上記素地鋼板を調質圧延する段階は、キャパシティ(-)モードの放電加工ロールを用いて行われることが好ましい。調質圧延ロールを用いた加工方法において、ショットブラスト加工(Shot Blast Texturing)は、金属グリット(Grit)をロール表面に投射して粗度を付与する物理的方法であるのに対し、放電加工は、絶縁液内のロールと電極間の電気的スパークでロール表面の粒子を除去して粗度を付与する電気的方法である。したがって、放電加工法を用いて製作されたロールは、ショットブラスト加工を介して製作されたロールに対して粗度均一性が増大して粗度偏差が低減し、写像性に優れるという利点がある。
【0038】
また、放電加工モードにおいても、キャパシティ(+)、インパルス(-)モードは、作業時の粗度再現性が他のモードに比べて劣化し、インパルス(+)モードは、作業性は優れるものの、単位長さ当たりの粗度山のピーク数が最も多くて亜鉛-ニッケル電気めっき時に均一な電着を阻害する欠点があるため、キャパシティ(-)モードの放電加工ロールを利用して、素地鋼板を調質圧延することが好ましい。
【0039】
このとき、上記ロールの使用寿命を延長して作業時間経過に伴うロール粗度の平坦化及びこれに伴う作業材間の表面粗度の偏差を減少させるために、上記ロールの表面にクロムをコーティングすることがより好ましい。
【0040】
一方、鋼板の表面粗度及び強度を考慮して、上記調質圧延する段階は、0.3~1.2%の延伸率で行われることが好ましい。より詳細には、調質圧延時の延伸率が0.3%未満である場合、転写率減少によって素地鋼板の表面粗度の調整効果が不十分になる。これに対し、調質圧延時の延伸率が1.2%を超える場合、素地鋼板の表面粗度が増加するとともに、電位増殖による加工硬化が発生し、これにより、降伏強度が増加して、最終製品のプレス成形時の加工クラックが発生するという問題点がある。
【0041】
上記のように、調質圧延された素地鋼板表面の表面粗度が中心線平均粗度(Ra)を基準として0.7~1.0μmであることが好ましい。0.7μm未満の場合には、めっき時の表面粗度は均一であるものの、めっき密着性が劣化するという欠点がある。一方、表面粗度が1.0μmを超える場合には、めっき材が素地鋼板の粗度特性の影響を受けるようになって、表面粗度が増加し、これにより、ヘアライン加工後の表面外観が劣化するという欠点がある。但し、ヘアライン加工後の美麗な表面外観の確保及び亜鉛-ニッケル電気めっき後の素地鋼板に対する表面粗度の上昇を鑑みる場合、素地鋼板の表面粗度は、0.7~0.9μmであることがより好ましい。
【0042】
上記調質圧延された素地鋼板を硫酸ニッケル水和物及び硫酸亜鉛水和物を含む硫酸浴に浸漬させて上記素地鋼板上に亜鉛-ニッケルめっき層を形成させる。亜鉛-ニッケルめっき層を形成する方式は、特に限定するものではないが、例えば、素地鋼板を垂直めっきセルタイプの電気めっきシミュレータの負極に位置させた後、硫酸浴めっき溶液を循環させて一面に亜鉛-ニッケルめっき層を形成させ、他の一面に上記と同様の方法で亜鉛-ニッケルめっき層を形成させる方法を利用することができる。
【0043】
上記硫酸浴は、pH0.5~3.5の酸性浴であることが好ましい。通常的に酸性浴はアルカリ浴に対して高い電気伝導度により、電流効率が高く、通常の電流密度の範囲で厚さ方向に不均一な合金元素分布を示す。すなわち、酸性浴の条件で製造された亜鉛-ニッケル合金電気めっき鋼板は、めっき層の表面において、素地鋼板から亜鉛-ニッケルめっき層の界面に行くほど、ニッケル含有量が増加する分布を示すようになる。亜鉛-ニッケル合金電気めっき鋼板は、腐食進行時にニッケル濃縮層(Ni-enriched layer)が形成されて腐食を抑制させることができるため、酸性浴の場合、素地鋼板とめっき層の界面におけるニッケル濃度が比較的高く、亜鉛-ニッケルめっき鋼板の耐食性の強化メカニズムである上記ニッケル濃縮層が強化して、ポリシング及びヘアライン研磨後にも安定した耐食性を確保することに寄与する。
【0044】
また、酸性浴の条件下で亜鉛めっき浴のニッケル供給源である硫酸ニッケルまたは炭酸ニッケルの溶解速度が速いため、商業的生産側面でニッケル補充のための原料投入時に未溶解粒子による凹みなどの表面欠陥を防止するためには、酸性浴がアルカリ浴に対して有利である。
【0045】
上記硫酸浴は、硫酸ニッケル水和物40~60g/L、硫酸亜鉛水和物60~90g/Lの含有量を含むことが好ましい。硫酸ニッケル水和物が40g/L未満及び硫酸亜鉛水和物が90g/Lを超える場合、形成される亜鉛-ニッケルめっき層の硬度が250Hv未満であることがあり、これにより、ヘアラインパターン加工時にめっき層の一部が剥がれて圧延方向の均一なヘアラインパターンの確保を阻害し、素材に対する圧下力を増加させて操業時の表面組織相に微細クレーターが発生するという問題がある。一方、硫酸ニッケル水和物60g/L超過及び硫酸亜鉛水和物60g/L未満の場合、形成される亜鉛-ニッケルめっき層の硬度が400Hvを超えることがあり、これにより、表面研磨の容易性のさらなる向上が僅かである一方、めっき層内の亜鉛に対して比較的高価であるニッケル含有量の増加により、亜鉛-ニッケルめっき層の残留応力が増加するようになって、表面に微細クラックが発生し、価格競争力が劣化するようになるため、好ましくない。
【0046】
このように形成された上記亜鉛-ニッケルめっき層の硬度は250~400Hvであることが好ましい。亜鉛-ニッケルめっき層の硬度が250Hv未満の場合には、ヘアラインパターン加工時にめっき層の一部が剥がれて圧延方向の均一なヘアラインパターンの確保を阻害し、素材に対する圧下力を増加させて操業時の表面組織相に微細クレーターが発生するという問題がある。めっき層の硬度が高いほど、表面研磨が容易であり、効率も高いといえるが、亜鉛-ニッケルめっき層の硬度が400Hvを超える場合には、表面研磨の容易性のさらなる向上が僅かである一方、めっき層内の亜鉛に対して比較的高価であるニッケル含有量の増加により、亜鉛-ニッケルめっき層の残留応力が増加するようになって表面に微細クラックが発生し、価格競争力が劣化するようになるため、好ましくない。
【0047】
また、亜鉛-ニッケルめっき層は、ガンマ(Ni5Zn21)単一相からなることが好ましい。亜鉛基盤合金の電気めっきにおいて、優れた耐食性を確保するためには、腐食環境下で電気化学的反応性が大きい(activeな)亜鉛の腐食速度を減少させ、犠牲防食性を長い時間維持する必要がある。このような側面でガンマ単一相である場合、ガンマ相が電気化学的に安定するだけでなく、イータ+ガンマなどの混合相で結晶相間の電位差によって発生するガルバニック腐食がないため、優れた耐食性を確保することができる。また、ガンマ単一相の領域内でめっき層内のニッケル含有量の増加に伴うめっき層の硬度が急激に向上して高いめっき層の硬度確保が容易になる。
【0048】
次に、上記亜鉛-ニッケルめっき層をポリシング及びヘアラインパターン加工する段階を行う。上記ポリシング及びヘアラインパターン加工は、通常的に使用される研磨ベルト方式を用いて行うことができ、これに限定されない。
【0049】
ポリシングは、ヘアライン加工前の素材を平坦化してヘアライン加工後の素材の光沢度を高め、圧下力付与程度を調節して研磨されるめっき量、すなわち、加工後の残存めっき量を決定する役割を果たす。また、ヘアライン加工の場合、ポリシングを介して平坦化した亜鉛-ニッケルめっき鋼板の表面に髪の毛状のパターンを付与する役割を果たす。
【0050】
より詳細には、表層めっき層の除去及び平坦化効果の確保の側面からポリシング研磨ベルトの回転速度がヘアライン研磨ベルトの回転速度に対して速く、ポリシング研磨ベルトの表面粗度がヘアライン研磨ベルトの表面粗度に対して大きいことが好ましい。
【0051】
これに伴い、ポリシング及びヘアライン加工前に対して加工後の表面粗度の変化値の全体を100%とするとき、ポリシングの表面粗度の変化寄与率は、60~85%であり、ヘアラインパターン加工の表面粗度の変化寄与率は、15~40%であることが好ましい。ポリシングの表面粗度の変化寄与率が60%未満の場合、粗度平坦化の程度が不十分であって加工後の美麗な表面外観の確保が難しく、85%を超える場合には、めっき層の損失が過多であって残存めっき量が達さないようになるとともにめっき層の表面にクレーター形状などの損傷が発生することがある。一方、ヘアラインパターン加工の表面粗度の変化寄与率が15%未満の場合、鋼板表面にヘアラインパターンが目視でよく認知されなくなり、40%を超える場合には、ヘアラインパターンプロファイルの不均一によって表面外観が低下するという問題点がある。
【0052】
ポリシング及びヘアライン加工前に対する加工後の表面粗度の変化値は、次のような計算式によって導出することができる。
ポリシング表面粗度の変化寄与率=(加工前Ra-ポリシング後Ra)×100/(加工前Ra-加工後Ra)
ヘアライン表面粗度の変化寄与率=(ポリシング後Ra-ヘアライン後Ra)×100/(加工前Ra-加工後Ra)
【0053】
一方、上記ポリシング及びヘアラインパターン加工後の亜鉛-ニッケルめっき層の中心線平均粗度の変化が-1.00~-0.35μmであることが好ましい。-1.00μm未満の場合、表面平坦化のための圧下力の増大により、めっき層に微細クラックまたはクレーターが発生するという問題点がある。一方、-0.35μmを超える場合、表面平坦化の効果が不十分であるか、または圧延垂直方向の粗度プロファイル上で山と谷の深さが大きくなって表面品質が劣化するという問題点がある。さらに、加工前後の素材の圧延垂直方向の粗度プロファイルは、規則的であり、均一なサイン(sine)曲線であることが好ましい。
【0054】
上記ポリシング及びヘアラインパターン加工後のめっき層の厚さは、ポリシング及びヘアラインパターン加工前のめっき層の厚さの0.2~0.75であることが好ましい。すなわち、上記ポリシング及びヘアラインパターン加工後のめっき層の厚さとポリシング及びヘアラインパターン加工前のめっき層の厚さの割合が0.2~0.75であることが好ましい。0.2未満の場合、ポリシング及びヘアライン加工前の原素材のめっき厚さが厚く、または加工材のめっき厚さが薄くて製造原価が上昇し、研磨を介して除去する必要があるめっき量が増加してコイル研磨時の負荷が増加するのみならず、加工材の耐食性が劣化するという問題点がある。一方、0.75を超える場合には、研磨効果が僅かであって美麗な表面外観の確保が難しいという欠点がある。
【0055】
上述のような本発明の亜鉛-ニッケル電気めっき鋼板は、ポリシング、ヘアラインパターン加工後の光沢度及び写像性に優れ、ヘアラインパターンの表面外観を実現することにおいて、ステンレス鋼またはビニール積層鋼板に対して価格競争力に優れるだけでなく、コイル研磨ラインでの高速操業によって高い生産性を確保することができる。
【実施例】
【0056】
(実施例)
以下、実施例を挙げてより具体的に説明する。以下の実施例は、本発明をより詳細に説明するためのものであって、これによって本発明を限定するものではない。
【0057】
調質圧延試験機を用いて、調質圧延ロール加工方法、加工モード及び延伸率を制御して表面粗度が異なる0.6mm、横140mm、縦250mmサイズの素地鋼板(極低炭素鋼)を製造した。
【0058】
この後、脱脂及び酸洗処理後の硫酸亜鉛7水和物と硫酸ニッケル6水和物を添加し、電気めっきを介して上記素地鋼板に亜鉛-ニッケルめっき層を形成させた。このとき、上記素地鋼板を垂直めっきセルタイプの電気めっきシミュレータの負極に位置させた後、めっき溶液を循環させて一面に亜鉛-ニッケルめっき層を形成させた後、他の一面に上記と同様の方法で亜鉛-ニッケルめっき層を形成させて素地鋼板の両面のめっき付着量を制御した。
【0059】
上記めっき層の形成時にめっき浴のpHは1.5~2.5、電流密度は100A/dm2、流速は1.5m/sであり、上記硫酸浴には、めっき浴の伝導度補正のために硫酸ナトリウムが30g/L添加された。
【0060】
この後、ポリシング及びヘアライン加工装置に上記亜鉛-ニッケルめっき層が形成された素地鋼板を通過させて、最終的にヘアラインパターンが実現された亜鉛-ニッケルめっき鋼板を製造した。このとき、ポリシング及びヘアラインそれぞれの研磨ベルトは120~180番、240~320番を用いた。各試験片の製造条件は、下記表1及び表2に整理して示した。
【0061】
【0062】
【0063】
上記のように製造された亜鉛-ニッケルめっき鋼板を対象としてめっき層の微小硬度及び結晶相を分析して、ヘアラインパターン形成時の表面外観に及ぼす鋼板の物理的な特性を事前に確認した。めっき層の硬度は、超微小硬度測定器(Simadzu、DUH-W201S)で5gfの荷重を加えて測定した。一方、めっき層結晶相は、X線回折分析器(Rigaku、D/MAX 2500V/PC)でCuKα放射線を用いて40kVの加速電圧を試験片に照射した後、取得したピークをJCPDSに分析した。
【0064】
また、調質圧延の延伸率による鋼板の降伏強度の影響度を調べるために、一部試験片についてKS 13Bに加工した後、インストロン(Instron)引張試験機で降伏区間まで10MPa/s、降伏後の変形率速度0.007s-1で降伏強度を評価した。
【0065】
上記のように製造された亜鉛-ニッケルめっき鋼板とポリシング及びヘアライン処理材に対して塩酸希釈溶液を用いてめっき層を溶解し、前後の重量差を分析してめっき量の変化を確認した。
【0066】
また、ポリシング及びヘアライン加工完了材のうち一部を対象として試験片の表面組織をJEOL JSM-7001F電界放出走査電子顕微鏡(FE-SEM)で分析し、写像性などの表面外観の差異が発生した原因について分析した。
【0067】
さらに、上記のように製造されためっき前の素地鋼板、亜鉛-ニッケルめっき鋼板、ポリシング単独及びポリシング後のヘアライン加工材に対してビーコ社(Veeco Instruments)の3次元非接触粗度測定装置を用いて横2.4mm、縦1.8mm領域の粗度を測定して工程による鋼板の表面粗度の変化を確認した。
【0068】
上記各工程段階別の分析項目以外に耐食性、写像性、及びプレス成形性を測定し、その結果を下記表3に記載した。耐食性、写像性、及びプレス成形性の評価方法は、次のとおりである。
【0069】
1.耐食性
耐食性(赤錆発生分率)は、試験片を75×150mmのサイズに切断した後、端をテフロンテープ(Nitto Denko Corp.NITOFLON、No.903UL)でマスキング処理し、上記試験片を塩水噴霧試験機STP-200(SUGA Test Instruments、Japan)に入れ、JIS(日本工業規格(Japan Industrial Standards)Z 2371に準じて放置する方式で進行し(5%塩化ナトリウム、時間当たりの噴霧量1~2ml、チャンバー温度35℃)、その結果が0~10%である場合を非常に優秀、10%超過~40%である場合を優秀、40%超過~70%である場合を普通、70%超過である場合を不十分と評価した。
【0070】
2.写像性
写像性は、ポリシング及びヘアライン加工された最終試験片上にローポイント社(Rhopoint Instruments)の写像性測定器を載置し、DOI(Distinctness Of Image)値を測定する方法で行った。
【0071】
DOI値が30超過である場合を非常に優秀、20超過~30である場合を優秀、10~20である場合を普通、10未満である場合を不十分と評価した。
【0072】
3.プレス成形性
プレス成形性は、ヘアライン及びポリシング加工完了材の一部試験片を塗装処理した最終素材に対して(株)VS&EinケミカルのMVP 840TW非水溶性塑性加工油を塗布した後、シムパック(SIMPAC)250トンサーボプレス(SV1P-250)を用いて13トンの荷重を加えて鋼板をプレスして確認した。ビード部またはドローイング部側面における塗膜剥離発生長さを全体周りで割って塗膜損傷の発生率を導出した。このとき、ビード部及びドローイング部のいずれか一方で剥離が発生した場合にも、塗膜剥離と判定した。
【0073】
評価方法は、塗膜損傷の発生率が10%未満の場合を優秀、10~20%である場合を普通、20%を超える場合を不十分と評価した。
【0074】
【0075】
上記表1~3を参照すると、本発明が提案する条件を満たす実施例1~5の場合には、優れた耐食性、写像性、及びプレス加工性を有することが確認できる。しかし、比較例1~16の場合には、本発明が提案する調質圧延、亜鉛-ニッケル電気めっき、ポリシング、及びヘアライン研磨条件を満たしていないことから耐食性、写像性、及びプレス加工性を確保していないことが確認できる。
【0076】
具体的に、比較例1~5及び比較例13の場合には、本発明が提案する調質圧延条件(ロール加工方法及び加工モード、調質圧延の延伸率及びこれに伴う鋼板粗度)を満たしていないことから耐食性、写像性、及びプレス加工性を同時に優れた水準に確保していないことが分かる。特に、調質圧延の延伸率の増加時に素地鋼板の降伏強度も増加するようになるが、亜鉛-ニッケルめっき層が一般的な純亜鉛組成のめっき層に対して硬度が非常に高く、素地鋼板の変形をめっき層が制限することによって、最終製品の成形性を劣化させる主要な要因となることがあるという点で、調質圧延の延伸率を適正水準に管理することが重要であることが確認できる。
【0077】
比較例6~12の場合には、本発明が提案する亜鉛-ニッケル電気めっき条件(硫酸亜鉛及び硫酸ニッケル水和物の量、めっき時間(めっき量)、めっき層の硬度、結晶相)を満たしていないことから、優れた水準の耐食性及び写像性を同時に確保できていないことが分かる。
【0078】
また、比較例14~16の場合には、ポリシング及びヘアライン研磨工程のそれぞれでの表面粗度の変化寄与率が本発明が提案する条件を満たしていないことから、耐食性及び写像性を同時に優れた水準で確保できていないことが確認できる。
【0079】
一方、
図1は、本発明に係るポリシング及びヘアライン加工を終えた鋼板表面のイメージ及び走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)を用いて2,000倍の倍率で分析した結果を示したものであって、(a)は実施例1、(b)は比較例1を示したものである。
図1を参照すると、実施例1によって製造された鋼板は、表面及び微細構造上で圧延方向のヘアラインパターンが鮮明で表面品質に優れるのに対し、比較例1の場合、表面及び微細構造上のヘアラインパターンが鮮明でなく、表面品質に優れていないことが確認できる。
【0080】
図2は、本発明の実施例1に係るポリシング及びヘアライン加工前後の鋼板の圧延垂直方向の粗度プロファイルを分析した結果を示したものであって、(a)は加工前、(b)は加工後を示し、
図3は、本発明の比較例1に係るポリシング及びヘアライン加工前後の鋼板の圧延垂直方向の粗度プロファイルを分析した結果を示したものであって、(a)は加工前、(b)は加工後を示す。
【0081】
図2及び3を参照すると、実施例1によって製造された鋼板は、加工前後の素材が山及び谷の深さが小さく、規則的かつ均一な曲線の形態を有していることが分かる。一方、比較例1によって製造された鋼板の場合、実施例1に対して山及び谷の深さが比較的大きいだけでなく、曲線の周期も不規則であることが確認できる。
【0082】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。