(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】ステッパーモータドライバのための改善された電流感知及びレギュレーション
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20250311BHJP
【FI】
H02M7/48 M
(21)【出願番号】P 2022519443
(86)(22)【出願日】2020-09-28
(86)【国際出願番号】 US2020053083
(87)【国際公開番号】W WO2021062369
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-09-21
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230129078
【氏名又は名称】佐藤 仁
(73)【特許権者】
【識別番号】390020248
【氏名又は名称】日本テキサス・インスツルメンツ合同会社
(72)【発明者】
【氏名】ガナパシ シャンカール クリシュナムルティ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンカタ ナレシュ コティケラプディ
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-135077(JP,A)
【文献】特開平03-262209(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0372678(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積回路であって、
Hブリッジ回路であって、
第1のローサイドパワー電界効果トランジスタ(FET)と、
モータ供給電圧と下側供給電圧との間で前記第1のローサイドパワーFETと直列に結合される第1のハイサイドパワーFETと、
第2のローサイドパワーFETと、
前記モータ供給電圧と前記下側供給電圧との間で前記第2のローサイドパワーFETと直列に結合される第2のハイサイドパワーFETと、
前記第1のハイサイドパワーFETと前記第1のローサイドパワーFETとの間の第1の出力ノードであって、インダクタのハイサイド端子に結合される、前記第1の出力ノードと、
前記第2のハイサイドパワーFETと前記第2のローサイドパワーFETとの間の第2の出力ノードであって、前記インダクタのローサイド端子に結合される、前記第2の出力ノードと、
を含む、前記Hブリッジ回路と、
電流源と前記下側供給電圧との間に結合される電流感知FETであって、前記電流源と前記電流感知FETとの間の感知ノードにピーク電流制限を含む基準電流を提供する、前記電流感知FETと、
前記感知ノードに結合される第1の入力と前記第2の出力ノードに結合される第2の入力とドライバ制御回路に結合される出力とを含む電流感知コンパレータと、
FET線形検出回路であって、
デジタル上側供給電圧と前記下側供給電圧との間に電流シンクと直列に結合される検出P型電界効果トランジスタ(PFET)であって、前記第2のローサイドパワーFETのゲート電圧を受け取るように
前記第2のローサイドパワーFETのゲートに結合される
ゲートを有する、前記検出PFET
と、
前記デジタル上側供給電圧と前記下側供給電圧との間に結合されるシュミットトリガであって、前記検出PFETと前記電流シンクとの間のゲート感知ノードに結合される入力と、前記第2のローサイドパワーFETが線形領域で動作しているときに前記電流感知コンパレータをイネーブルするように結合される出力
とを有する、
前記シュミットトリガと、
を含む、前記FET線形検出回路と、
を含む集積回路。
【請求項2】
請求項1に記載の集積回路であって、
前記FET線形検出回路が、前記ゲート電圧が前記デジタル上側供給電圧を下回る1つの閾値電圧である値を上回って上昇するときに前記電流感知コンパレータをイネーブルするように
構成される、集積回路。
【請求項3】
請求項1に記載の集積回路であって、
前記電流感知FETのゲートが、前記第2のローサイドパワーFETのゲートに結合される、集積回路。
【請求項4】
請求項1に記載の集積回路であって、
前記電流源が、
デジタル・アナログ・コンバータ(DAC)と、
前記DACに結合される電圧-電流演算増幅器であって、前記基準電流を提供するように結合される、前記電圧-電流演算増幅器と、
を含む、集積回路。
【請求項5】
請求項
1に記載の集積回路であって、
前記基準電流が、バレー電流制限を更に含むヒステリシス基準電流である、集積回路。
【請求項6】
請求項
5に記載の集積回路であって、
前記FET線形検出回路が、前記第1のローサイドパワーFETが線形領域で動作しているときに、前記電流感知コンパレータをイネーブルするように前記第1のローサイドパワーFETのゲートに切り替え可能に結合される、集積回路。
【請求項7】
システムであって、
ステッパーモータと、
第1のHブリッジ回路であって、
第1のローサイドパワーFETと、
モータ供給電圧と下側供給電圧との間で前記第1のローサイドパワーFETと直列に結合される第1のハイサイドパワーFETと、
第2のローサイドパワーFETと、
前記モータ供給電圧と前記下側供給電圧との間で前記第2のローサイドパワーFETと直列に結合される第2のハイサイドパワーFETと、
前記第1のハイサイドパワーFETと前記第1のローサイドパワーFETとの間の第1の出力ノードに結合されるハイサイド端子と前記第2のハイサイドパワーFETと前記第2のローサイドパワーFETとの間の第2の出力ノードに結合されるローサイド端子とを含む第1のインダクタと、
を含む、前記第1のHブリッジ回路と、
第1の電流源と、
前記第1の電流源と前記下側供給電圧との間に結合される第1の電流感知FETであって、前記電流源と前記第1の電流感知FETとの間の第1の感知ノードにピーク電流制限を含む基準電流を提供する、前記第1の電流感知FETと、
前記第1の感知ノードに結合される第1の入力と前記第2の出力ノードに結合される第2の入力とドライバ制御回路に結合される出力とを含む第1の電流感知コンパレータと、
第1のFET線形検出回路であって、
電流シンクと、
デジタル上側供給電圧と前記下側供給電圧との間に前記電流シンクと直列に結合される検出P型電界効果トランジスタ(PFET)であって、前記第2のローサイドパワーFETのゲート電圧を受け取るように
前記第2のローサイドパワーFETのゲートに結合される
ゲートを有する、前記検出PFET
と、
前記デジタル上側供給電圧と前記下側供給電圧との間に結合されるシュミットトリガであって、前記検出PFETと前記電流シンクとの間のゲート感知ノードに結合される入力と、前記第2のローサイドパワーFETが線形領域で動作しているときに前記第1の電流感知コンパレータをイネーブルするように結合される出力
とを有する、
前記シュミットトリガと、
を含む、前記第1のFET線形検出回路と、
を含む、システム。
【請求項8】
請求項
7に記載のシステムであって、
前記第1の電流源が、
第1の基準電圧を提供するように結合される第1のデジタル-アナログコンバータ(DAC)と、
前記第1の基準電圧を受け取り、第1の基準電流を提供するように結合される第1の演算増幅器と、
を含む、システム。
【請求項9】
請求項
8に記載のシステムであって、
前記第1の基準電流が、バレー電流制限を更に含むヒステリシス基準電流である、システム。
【請求項10】
請求項
7に記載のシステムであって、
第2のHブリッジ回路であって、
第3のローサイドパワーFETと、
前記モータ供給電圧と前記下側供給電圧との間で前記第3のローサイドパワーFETと直列に結合される第3のハイサイドパワーFETと、
第4のローサイドパワーFETと、
前記モータ供給電圧と前記下側供給電圧との間で前記第4のローサイドパワーFETと直列に結合される第4のハイサイドパワーFETと、
前記第3のハイサイドパワーFETと前記第3のローサイドパワーFETとの間の第3の出力ノードに結合されるハイサイド端子と、前記第4のハイサイドパワーFETと前記第4のローサイドパワーFETとの間の第4の出力ノードに結合されるローサイド端子とを含む第2のインダクタと、
を含む、前記第2のHブリッジ回路と、
第2の電流源と、
前記第2の電流源と前記下側供給電圧との間に結合される第2の電流感知FETであって、前記第2の電流源と前記第2の電流感知FETとの間の第2の感知ノードに第2のピーク電流制限を含む第2の基準電流を提供する、前記第2の電流感知FETと、
前記第2の感知ノードに結合される第1の入力と前記第4の出力ノードに結合される第2の入力と前記ドライバ制御回路に結合される出力とを含む第2の電流感知コンパレータと、
前記第4のローサイドパワーFETのゲート電圧を受け取るように結合される第2のFET線形検出回路であって、前記第4のローサイドパワーFETが前記線形領域で動作しているときに前記第2の電流感知コンパレータをイネーブルするように結合される出力を有する、前記第2のFET線形検出回路と、
を更に含む、システム。
【請求項11】
ステッパーモータを動作させる方法であって、
Hブリッジ回路における第1の出力ノードをインダクタのハイサイド端子に取り付けることであって、前記第1の出力ノードがモータ供給電圧に結合される第1のハイサイドパワーFETと下側供給電圧に結合される第1のローサイドパワーFETとの間にある、前記ハイサイド端子に取り付けることと、
前記Hブリッジ回路における第2の出力ノードを前記インダクタのローサイド端子に取り付けることであって、前記第2の出力ノードが前記モータ供給電圧に結合される第2のハイサイドパワーFETと前記下側供給電圧に結合される第2のローサイドパワーFETとの間にある、前記ローサイド端子に取り付けることと、
前記Hブリッジ回路が駆動モードで動作しているときに
、前記第2のローサイドパワーFETが線形領域で動作しているときを判定するために前記第2のローサイドパワーFET上のゲート電圧を追跡し、前記第2のローサイドパワーFETが前記線形領域で動作しているときに前記第2の出力ノードにおける電流をピーク電流制限と比較するように結合される第1の電流感知コンパレータをイネーブルすることと、
前記Hブリッジ回路が減衰モードで動作しているときに、前記第1のローサイドパワーFETと前記第2のローサイドパワーFETとの選択された1つが線形領域で動作しているときを判定するために前記第1のローサイドパワーFETと前記第2のローサイドパワーFETとの選択された1つのゲート電圧を追跡することと、
を含む、方法。
【請求項12】
請求項
11に記載の方法であって、
前記
減衰モードが低速減衰モードで
あり、前記第1のローサイドパワーFETと前記第2のローサイドパワーFET
との選択された1つが前記第2のローサイドパワーFET
であり、
前記
方法が
、前記第2の出力ノードにおける電流をバレー電流制限と比較するように結合される前記第1の電流感知コンパレータをイネーブルすることを更に含む、方法。
【請求項13】
請求項
11に記載の方法であって、
前記
減衰モードが高速減衰モードで
あり、前記第1のローサイドパワーFET
と前記第2のローサイドパワーFETとの選択された1つが前記第1のローサイドパワーFET
であり、
前記
方法が
、バレー電流制限と組み合わされる前記第1の出力ノードにおける電流を前記下側供給電圧と比較するように結合される第2の電流感知コンパレータをイネーブルすることを更に含む、方法。
【請求項14】
請求項
13に記載の方法であって、
前記第1の電流感知コンパレータと前記第2の電流感知コンパレータとが単一コンパレータである、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ステッパーモータにおいて、モータ位置は、二つ又はそれ以上のモータ巻き線における電流をレギュレートすることによって制御される。異なるステッパーモータ設計が異なる数の巻き線を有し得、各巻き線における電流波形は、他の巻き線に関連する電流波形を先行(leading)又は遅行(lagging)している。電流レギュレーションの多くの態様が良好に理解されているが、制御に関して問題がある分野が依然として存在する。
【発明の概要】
【0002】
開示される実施形態が、FET線形検出回路を提供する。このFET線形検出回路は、いつブランキングをオフにするか及びいつ電流感知コンパレータをイネーブルするかを判定するために、アクティブローサイドパワーFET上のゲート電圧を追跡する。電流感知コンパレータは、アクティブローサイドパワーFETが線形領域にあるときにイネーブルされ得る。一実施形態において、電流感知コンパレータは、アクティブローサイドパワーFETのゲート上の電圧が、デジタル上側供給電圧を下回る一つの閾値電圧より大きいときにイネーブルされる。
【0003】
一態様において、或る集積回路の実施形態が開示される。この集積回路は、モータ供給電圧と下側供給電圧との間で第1のローサイドパワーFETと直列に結合される第1のハイサイドパワー電界効果トランジスタ(FET)、モータ供給電圧と下側供給電圧との間で第2のローサイドパワーFETと直列に結合される第2のハイサイドパワーFET、インダクタのハイサイド端子に結合するための、第1のハイサイドパワーFETと第1のローサイドパワーFETとの間の第1の出力ノード、及び、インダクタのローサイド端子に結合するための、第2のハイサイドパワーFETと第2のローサイドパワーFETとの間の第2の出力ノードを含むHブリッジ回路と、電流源と下側供給電圧との間に結合される電流感知FETであって、電流源と電流感知FETとの間の感知ノードにおいてピーク電流制限を含む基準電流を提供する電流感知FETと、感知ノードに結合される第1の入力、第2の出力ノードに結合される第2の入力、及びドライバ制御回路に向かって出力信号を送るように結合される出力を含む電流感知コンパレータと、第2のローサイドパワーFETのゲート電圧を受け取るように結合され、第2のローサイドパワーFETが線形領域で動作しているとき、電流感知コンパレータをイネーブルするように結合される出力を有するFET線形検出回路と、を含む。
【0004】
別の態様において、或るシステムの実施形態が開示される。このシステムは、第1のインダクタ及び第2のインダクタを有するステッパーモータと、モータ供給電圧と下側供給電圧との間で第1のローサイドパワーFETと直列に結合される第1のハイサイドパワーFET、モータ供給電圧と下側供給電圧との間で第2のローサイドパワーFETと直列に結合される第2のハイサイドパワーFET、第1のインダクタのハイサイド端子に結合するための、第1のハイサイドパワーFETと第1のローサイドパワーFETとの間の第1の出力ノード、及び、第1のインダクタのローサイド端子に結合するための、第2のハイサイドパワーFETと第2のローサイドパワーFETとの間の第2の出力ノードを含む第1のHブリッジ回路と、電流源と下側供給電圧との間に結合される第1の電流感知FETであって、電流源と第1の電流感知FETとの間の第1の感知ノードにおいてピーク電流制限を含む基準電流を提供する第1の電流感知FETと、第1の感知ノードに結合される第1の入力、第2の出力ノードに結合される第2の入力、及び、ドライバ制御回路に向かって出力信号を送るように結合される出力を含む第1の電流感知コンパレータと、第2のローサイドパワーFETのゲート電圧を受け取るように結合され、第2のローサイドパワーFETが線形領域で動作しているとき、第1の電流感知コンパレータをイネーブルするように結合される出力を有する、第1のFET線形検出回路と、を含む。
【0005】
更に別の態様において、ステッパーモータを動作させる方法の実施形態が開示される。この方法は、Hブリッジ回路における第1の出力ノードをインダクタのハイサイド端子に取り付けることと、Hブリッジ回路における第2の出力ノードをインダクタのローサイド端子に取り付けることと、Hブリッジ回路が駆動モードで動作しているとき、第2のローサイドパワーFET上のゲート電圧を、第2のローサイドパワーFETが線形領域で動作しているときを判定するために追跡することと、第2のローサイドパワーFETが線形領域で動作しているとき、第2の出力ノードにおける電流をピーク電流制限と比較するように結合される第1の電流感知コンパレータをイネーブルすることと、を含み、第1の出力ノードが、モータ供給電圧に結合される第1のハイサイドパワーFETと、下側供給電圧に結合される第1のローサイドパワーFETとの間にあり、第2の出力ノードが、モータ供給電圧に結合される第2のハイサイドパワーFETと、下側供給電圧に結合される第2のローサイドパワーFETとの間にある。
【0006】
本開示の実施形態が、添付の図面の図において、限定としてではなく一例として図示される。図面において、同様の参照は同様の要素を示す。本開示における「或る」又は「一つの」実施形態に対する異なる参照が、必ずしも同じ実施形態に対するものではなく、そのような参照は、少なくとも一つを意味し得ることに留意すべきである。また、特定の特徴、構造、又は特性が、或る実施形態に関連して記載されるとき、明示的に記載されていようとなかろうと、他の実施形態に関連してそのような特徴、構造、又は特性を達成することは当業者の知識の範囲内にあることが提起される。本願において用いられるように、「結合する」という用語は、ワイヤレス接続を含み得る「通信可能に結合される」と限定されない限り、間接的或いは直接的な電気接続を意味することが意図される。このように、第1のデバイスが第2のデバイスに結合する場合、そうした接続は、直接的な電気接続を介するもの、又は、他のデバイス及び接続を介した間接的な電気接続を介するものであり得る。
【0007】
添付の図面は、本開示の一つ又は複数の例示的な実施形態を図示するために、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を形成する。添付の特許請求の範囲に関連して以下の詳細な説明を参照することにより、及び、添付の図面の図を参照することにより、本開示の種々の利点及び特徴が理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】本開示の或る実施形態に従った、アダプティブブランキングを提供する、Hブリッジ回路とFET線形検出回路とを有する集積回路を図示する。
【0009】
【
図1B】本開示の或る実施形態に従ったFET線形検出回路の一例を示す。
【0010】
【
図1C】駆動モードが開始されるときの、アクティブローサイドパワーFET上のゲート電圧と第2の出力ノードOUT2上の電圧の両方を示す。
【0011】
【
図1D】本開示の或る実施形態に従ったFET線形検出回路の一例を示す。
【0012】
【
図1E】
図1Aの電流レギュレーション装置によって提供される、ブランキング時間の適時の終了及びオーバーシュートが無いことを示す。
【0013】
【
図2A】本開示の或る実施形態に従った、ステッパーモータを動作させる方法を示す。
【
図2B】本開示の或る実施形態に従った、ステッパーモータを動作させる方法を示す。
【
図2C】本開示の或る実施形態に従った、ステッパーモータを動作させる方法を示す。
【0014】
【
図3A】本開示の或る実施形態に従った、高速減衰モードの間、電流感知を有するHブリッジ及び電流感知回路を図示する。
【0015】
【
図3B】本開示の或る実施形態に従った、駆動モード及び高速減衰モードの間の電流感知を有するHブリッジ及び電流感知回路を図示し、駆動モード動作を示す。
【0016】
【
図3C】本開示の或る実施形態に従った、駆動モード及び高速減衰モードの間の電流感知を有するHブリッジ及び電流感知回路を図示し、高速減衰モード動作を示す。
【0017】
【
図4A】本開示の或る実施形態に従った、開示される電流感知回路を用いる幾つかの例示の状況におけるインダクタ電流に対する改善を示す。
【
図4B】本開示の或る実施形態に従った、開示される電流感知回路を用いる幾つかの例示の状況におけるインダクタ電流に対する改善を示す。
【0018】
【
図5A】本開示の或る実施形態に従った、ステッパーモータを動作させる方法を示す。
【0019】
【
図5B】本開示の或る実施形態に従った、ステッパーモータを動作させる方法における付加的な要素を示す。
【
図5C】本開示の或る実施形態に従った、ステッパーモータを動作させる方法における付加的な要素を示す。
【0020】
【
図6】本開示の或る実施形態に従った、電流レギュレーション装置を含むシステムを図示する概略。
【0021】
【
図7A】ステッパーモータの二つのコイルの各々を介する電流と、各ステップにおける電流制御の一例とを示す。
【0022】
【
図7B】
図7Aの電流図の各ステップにおける電流制御の一例を示す。
【0023】
【
図8】ステッパーモータと共に用いられ得る電流レギュレーション回路のベースライン実装を示す。
【0024】
【
図9】Hブリッジ回路を示し、3つのフェーズの各々における電流の流れを図示する。
【0025】
【
図10】Hブリッジが高速減衰モードから駆動モードに切り替えられたときの、第2の出力ノードOUT2上のインダクタ電流及び電圧を示し、駆動モードが開始するときのブランキングの必要性を図示する。
【0026】
【
図11A】ブランキング時間が長すぎるときに生じ得るオーバーシュートを示す。
【0027】
【
図11B】オーバーシュートの一つの潜在的な結果を示す。
【0028】
【
図12A】一定の減衰時間を用いて生じ得る潜在的な問題を示す。
【
図12B】一定の減衰時間を用いて生じ得る潜在的な問題を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明の特定の実施形態を添付の図面を参照して詳細に説明する。本発明の実施形態の以下の詳細な説明において、多数の特定の詳細が、本発明の一層完全な理解を提供するために述べられる。しかし、本発明がこれらの特定の詳細を伴わずになされ得ることが当業者には明らかである。他の事例において、よく知られた特徴は、説明を不必要に複雑にすることを避けるために、詳細に説明されない。
【0030】
ステッパーモータ動作
ステッパーモータは、典型的に二つのコイル、すなわち、インダクタを有し、これらのインダクタは、コイル間が90度の角度で配される。スムーズな動作のため、各コイルを介する電流は、ローターが追従するための回転磁界をつくるために、90度の位相分離を有する必要がある。コイルにおける電流は矩形波或いは正弦波を用いてレギュレートされ得、正弦波外形を用いた電流レギュレーションは、一層スムーズな動作及び増加した位置分解能を有する。本開示のため、単一巻き線における電流レギュレーションが、各巻き線における電流レギュレーションの一例として参照される。
【0031】
電流実装において、所与のモータ巻き線における電流波形は、デジタル-アナログコンバータ(正弦DAC)の出力によって成形される。DAC出力波形が、充分な倍率で見たとき、階段状の形状に形成される。各デジタル入力コード(「DACコード」)に対し、理想的なDACが、対応するアナログ出力電圧レベルを維持する。
図7Aは、ステッパーモータの二つのコイルにおける出力電流のグラフ700Aを示し、「A」コイルが、正弦波に従う電流Aoutを提供しており、「B」コイルが、余弦波に従う電流Boutを提供している。示される例において、電流信号の各四分円は、16個のステップに分割される。一層優れた位置精度を必要とする応用例は、より一層多くのステップを、例えば、256、1024又は4096個のマイクロステップを利用し得る。
【0032】
ステッパーモータの場合、各DAC入力コードが、ステッパーモータローターの異なる機械的回転位置をもたらす。そうして、波形の任意の特定のセクションが、電流を増加させるために上方に向かって階段状になり、また、電流を低減させるために下方に向かって階段状になる。DAC入力コードが適用され、巻き線電流が、DACステップアップの頂部に又はDACステップダウンの底部に対応するレベルに到達すると、巻き線電流のそうしたレベルは、異なるDAC入力コードが適用されるまで、ローターの任意の更なる機械的回転又は振動を避けるためにレギュレートされる。そのようなレギュレートが無ければ、ステッパーモータ上の供給電圧変動や機械的負荷の変化などの要因が、所望のステップの期間の間、巻き線電流を変化させるおそれがある。
【0033】
グラフ700Aにおいて丸で囲ったステップ705など、波形における各ステップにおいて、複数のパルス幅変調サイクルが、
図7Bにおいてグラフ700Bによって図示されるように生じ得る。グラフ700Bは、電流レギュレーションがドライバ制御によって提供されるときの電流、例えば電流Boutを示しており、本例におけるドライバ制御は、ピーク電流レギュレーション方式を用いる。コイルが新たな立ち上がりステップを備えるとき、Itripとして識別される新たなピーク電流制限に電流が到達したことを電流レギュレーション回路が検出し得るまで、電流Boutは駆動モードで上昇する。その後、電流は、或る時間期間にわたって、高速減衰モード或いは低速減衰モードで減衰し、その後、所望の電流を維持するために、駆動サイクルと減衰サイクルとを交互に行うことが続く。
【0034】
図8は、ステッパーモータの一つのインダクタを駆動するために用いられ得る電流レギュレーション回路800のベースライン実装を示す。電流レギュレーション回路800はHブリッジ回路802を含み、Hブリッジ回路802は、モータ供給電圧Vmと、接地面であり得る下側供給電圧との間で第1のローサイドパワーFET Mls1と直列に結合される第1のハイサイドパワーFET Mhs1を含む。第1の出力ノードOUT1が、第1のハイサイドパワーFET Mhs1と第1のローサイドパワーFET Mls1との間に位置する。また、Hブリッジ回路802は、モータ供給電圧Vmと下側供給電圧との間で第2のローサイドパワーFET Mls2と直列に結合される第2のハイサイドパワーFET Mhs2を含み、第2の出力ノードOUT2が、第2のハイサイドパワーFET Mhs2と第2のローサイドパワーFET Mls2との間に位置する。動作の間、インダクタ803が第1の出力ノードOUT1と第2の出力ノードOUT2との間に結合され、インダクタ803を介する電流は、例えば、ステッパーモータを駆動するために用いられる。それぞれのゲート制御信号HS1、LS1、HS2、及びLS2が、パワーFET Mhs1、Mls1、Mhs2、及びMls2のために提供される。
【0035】
電流レギュレーション回路800はさらに、デジタル-アナログ(正弦DAC)回路808と、電圧-電流(V2I)演算増幅器810と、駆動モード電流感知FET SNS-DRVと、電流感知コンパレータ804と、ドライバ制御回路806とを含む。マイクロステッピングインデクサ807が、DAC回路808に結合される出力を有し、また、DAC回路808はアナログ基準電圧VREFを受け取るように結合される。DAC回路808の出力が、V2I演算増幅器810への入力に結合される。駆動モード電流感知FET SNS-DRVは、V2I演算増幅器810と下側供給電圧との間に結合され、駆動モード電流感知FET SNS-DRVのゲートは、第2のローサイドパワーFET Mls2のゲートに結合される。感知ノード812は、V2I演算増幅器810と駆動モード電流感知FET SNS-DRVとの間に位置する。電流感知コンパレータ804は、第2の出力ノードに結合される第1の入力と、感知ノード812に結合される第2の入力と、ドライバ制御回路806に結合される出力とを有する。
【0036】
図8に示す例において、電流レギュレーション回路800は駆動モードで動作しており、第1のハイサイドパワーFET Mhs1及び第2のローサイドパワーFET Mls2はオンにされている。インダクタ電流Ioutは、モータ供給電圧Vmから、第1のハイサイドパワーFET Mhs1、インダクタ803、及び第2のローサイドパワーFET Mls2を介して下側供給電圧に流れ、インダクタ803を介するインダクタ電流Ioutを増加させる。動作の間、マイクロステッピングインデクサ807は、マイクロステッピングインデクサビットを提供する。マイクロステッピングインデクサビットは、一つ又は複数のステッパーモータ位置コマンドに関連する電流波形の所望の形状に対応するDACコードのシーケンスである。DAC回路808は、これらのマイクロステッピングインデクサビット及びアナログ基準電圧VREFを受け取る。DAC回路808は、電流DACコードを、アナログ電圧セットポイントVtripに変換し、アナログ電圧セットポイントVtripはV2I演算増幅器810に提供され、V2I演算増幅器810は、電流マイクロステップに対応するピーク電流制限Itripを供給する。駆動モード電流感知FET SNS-DRVも、駆動モードの間オンにされるので、感知ノード812は、ピーク電流制限Itripの値を反映する。電流感知コンパレータ804は、駆動モードをいつオフにするかを判定するために、第2の出力ノードOUT2上の電流をピーク電流制限Itripと比較する。こうした比較はドライバ制御回路806に送られ、ドライバ制御回路806は、Hブリッジ回路におけるパワーFETを制御するためのゲート制御信号HS1、HS2、LS1、及びLS2を提供する。電流感知コンパレータ804が、インダクタ電流Ioutがピーク電流制限Itripより大きいことを検出するとき、駆動モードが終了し、減衰モードが開始する。
【0037】
図9は、Hブリッジ回路900を示し、ステッパーモータを駆動するために用いられ得る3つの導通モード、駆動モードDRV、高速減衰モードFD、及び低速減衰モードSDを図示する。駆動モードでは、第1のハイサイドパワーFET Mhs1及び第2のローサイドパワーFET Mls2がオンにされて、電流を、実線の矢印によって示すように、モータ供給電圧Vmから、第1のハイサイドパワーFET Mhs1、インダクタ903、及び第2のローサイドパワーFET Mls2を介して下側供給電圧へ駆動する。この電流は、インダクタ903においてVm/Lのレートでランプアップし、ここで、Lは、インダクタ903のインダクタンスである。下記でさらに説明される、駆動モードの開始時の初期のブランキング期間の後、インダクタ903を介する電流は、例えば、電流レギュレーション回路800の電流感知コンパレータ804などのコンパレータを用いて、ピーク電流制限Itripと比較される。前述のように、インダクタ電流Ioutがピーク電流制限Itripの値を超えるとき、駆動モードはオフにされる。その後、Hブリッジ回路は、高速減衰モード或いは低速減衰モードになるように制御される。
【0038】
高速減衰モードでは、第2のハイサイドFET Mhs2及び第1のローサイドパワーFET Mls1がオンにされる。インダクタ903のインダクタンスに起因して、電流は、点線の矢印によって示すように、下側供給電圧から、第1のローサイドパワーFET Mls1、インダクタ903、及び第2のハイサイドパワーFET Mhs2を介して、モータ供給電圧Vmへ流れるが、-Vm/Lの傾斜で減衰する。一実施形態において、高速減衰モードは、再び駆動モードに入る前の一定の時間の間、動作する。
【0039】
低速減衰モードでは、第1のハイサイドパワーFET Mhs1と第2のハイサイドパワーFET Mhs2の両方がオフにされ、第1のローサイドパワーFET Mls1と第2のローサイドパワーFET Mls2の両方がオンにされ、そのため、電流は、曲線の矢印によって示すように、下側供給電圧から、第1のローサイドパワーFET Mls1、インダクタ903、第2のローサイドパワーFET Mls2を介して、下側供給電圧まで戻るループにおいて進む。その名前によって示唆されるように、低速減衰モードでは、インダクタ903を介する電流は、高速減衰モードにおけるほど敏速には減衰しない。
【0040】
アダプティブブランキング時間
駆動モードが開始するとすぐに、インダクタ電流Ioutをピーク電流制限Itripと比較し始めることは可能であるが、回路におけるノイズに起因して、正確な比較を迅速に得ることはできない。
図10は、この問題を図示する。グラフ1000は、高速減衰モードの終了及び駆動モードの開始の間のインダクタ電流Ioutと第2の出力ノードOUT2上の電圧の両方を示す。高速減衰モードの終了の間、インダクタ電流Ioutは、安定したレートで低減し、一方で、出力ノード上の電圧は、およそモータ供給電圧Vmで安定している。
【0041】
高速減衰モードが時間T1でオフにされるとき、第2の出力ノードOUT2上の電圧は、ゼロに向かって敏速に降下し、一方で、インダクタ電流Ioutは、一時的に下方に向かって移動し続け、その後、駆動モードが効力を生じるにつれて、再び上昇し始める。第2の出力ノードOUT2上の電圧がゼロに到達するとき、電圧が上昇し始める前に、信号においてリンギングがあることがある。
【0042】
図8に示す電流感知回路が正確な測定を提供するために、第2のローサイドパワーFET Mls2は、第2の出力ノード上の電圧がゼロ付近の状態で、線形領域で動作する必要がある。駆動モードが始まった後、第2のローサイドパワーFET Mls2を介するインダクタ803における電流を感知することを試みる前に、例えば、時間T2近辺で、第2の出力ノードOUT2がモータ供給電圧Vmから0に傾きをもって変化する(slew)のを待つ必要がある。これは、ブランキング時間が、ドライバのスルー時間(slew time)より常に長くなければならないことを意味する。
【0043】
ブランキング時間の適切な量を決定することは、特に、電流レギュレーションシステムが、或る範囲のモータ電圧及びインダクタンスにわたって動作することが予期されるときに、困難であることが明らかとなっている。一層高いブランキング時間を提供すること、すなわち、駆動モードが開始した後、感知の前に一層長い時間待機することは、いくつかの場合において、ピーク電流制限Itripの値を超えるインダクタ電流Ioutをもたらすおそれがある。
図11Aは、この発生の事例を含むグラフ1100Aを示す。ブランキング時間Tblankが完了する時には、インダクタ電流Ioutは、既にピーク電流制限Itripを超えている。いくつかの実施形態において、例えば、減衰時間Toffが一定の値であるとき、高すぎるブランキング時間は、後続のサイクルおいてレギュレーションを失うこと及び暴走電流につながるおそれがある。この問題は、一層低い電流レベル、及び、モータ供給電圧対インダクタンス、すなわち、Vm/Lの一層高い比のレギュレーションの間、より顕著である。一方、少なすぎるブランキング時間を提供することは、駆動モードの早まったターンオフ及びレギュレートされていないインダクタ電流Ioutの要因となり得る。この電流歪みは、ステッパーモータの動きを一層粗くし、振動、可聴ノイズ、及び角度誤差の要因となる。この不均一な動きの例が、
図11Bグラフの1100Bに示されている。
【0044】
ステッパーモータのためのドライバのブランキング時間が、スイッチングノードのスルーレートに多分に依存する一方、オートモーティブ及び産業市場をサポートするステッパーモータのためのドライバは、一層少ない電磁干渉(EMI)、付加的に、最適の電力損等などの基準を満たすために、例えば、10V/μsから150V/μsまでの、広範囲のプログラム可能なスルーレートを提供するように予期される。こうしたスルーレートは、プロセス及び温度にわたり約30%変化し得る。
【0045】
ステッパーモータのための多くのドライバ回路が、或る一定のブランキング時間を用いる。このブランキング時間は、シミュレーションデータの最大値から導き出され、プロセス、温度、デバイスタイプに伴うスルーレートの変動に、及びある程度は、モータ供給電圧Vmに依存する。典型的に、このブランキング時間は、最悪のケースに対して選ばれ、それゆえ、多くの他の状況において必要以上に高い。最悪のケースのシナリオに従ってブランキング時間を選ぶことは、電流歪みの問題及び/又は電流暴走をもたらし得る。いくつかのドライバ回路は、一層低い及び一層高い電流に対して、ブランキング時間がプログラム可能である。一層低い電流レベルでは、つくられるノイズははるかに少なく、それゆえ、電流暴走を防止するためには低いブランキング時間が望ましい。しかし、ブランキング時間をプログラム可能とすることは、用いられるモータに基づきブラキング時間を選択するという負担を顧客に負わせる。
【0046】
異なるスルーレートオプションが異なるブランキング時間を必要とするので、或る一定のブランキング時間を有することを試みることによって、多くの問題が生じ得る。或る部品ファミリーに対して、設計時間及びデジタル論理修正は、複数のスルーレートのための異なるブランキング時間をサポートするために広範囲にわたる。いくつかのデバイスに対し、顧客は、或るピンに提供される抵抗を調節することによってスルーレートを変更し得る。そのような場合において、ブランキング時間をプログラムすることは困難である。ブランキング時間制限は、偽トリップを防止するために最悪のめったに発生しない場合に適合するように選択され得るが、この選択の結果は概して、ブランキング時間は必要以上に高くなり、上述の電流歪みの問題及び/又は電流暴走につながるおそれがある。
【0047】
また、デバイスモデリング制限に起因して、シリコンにおけるスルーレートが、シミュレートされたスルーレートに合致しない場合、結果は、電流感知の間の機能的欠陥になり得る。一層高いブランキング時間が選ばれるとき、ステッパーモータのための最大ステップ周波数及び最大回転速度に制限が課される。従って、ブランキング時間を最適化することが必須である。
【0048】
図1Aは、本開示の或る実施形態に従った、アダプティブブランキングを提供するFET線形検出回路112を有するHブリッジ及び電流感知回路100Aを示す。Hブリッジ及び電流感知回路100Aは、第1の出力ノードOUT1と第2の出力ノードOUT2との間に結合されるインダクタ103を有するHブリッジ回路102を含む。Hブリッジ及び電流感知回路100Aはさらに、マイクロステッピングインデクサ107と、DAC回路108と、V2I演算増幅器110と、駆動モード電流感知FET SNS-DRVと、電流感知コンパレータ104とを含む。電流感知回路100Aに具体的に図示しないが、モータ電圧Vmを受け取るHブリッジを除いて、インデクサ107、DAC108、V2I演算増幅器110、駆動モード電流感知FET SNS-DRV、電流感知コンパレータ104、及びFET線形検出回路112は、各々、一実施形態では5Vであるデジタル上側供給電圧DVDDによって給電される。マイクロステッピングインデクサ107及びアナログ基準電圧VREFは、DAC回路108に入力を提供するように結合される。DAC回路108の出力が、V2I演算増幅器110の入力に結合される。駆動モード電流感知FET SNS-DRVは、V2I演算増幅器110と下側供給電圧との間に結合され、駆動モード電流感知FET SNS-DRVのゲートは、第2のローサイドパワーFET Mls2のゲートに結合される。感知ノード111は、V2I演算増幅器110と駆動モード電流感知FET SNS-DRVとの間に位置する。電流感知コンパレータ104は、第2の出力ノードOUT2に結合される第1の入力と、感知ノード111に結合される第2の入力と、ドライバ制御回路(具体的に図示せず)に出力信号113を提供するように結合される出力とを有する。
【0049】
Hブリッジ及び電流感知回路100Aが駆動モードで動作しているとき、第1のハイサイドパワーFET Mhs1及び第2のローサイドパワーFET Mls2はオンにされ、インダクタ電流Ioutは矢印114によって示すように流れる。駆動モードでの動作は、マイクロステッピングインデクサ107が、電流波形の所望の形状に対応するDACコードのシーケンスであるインデクサビットを提供する状態で、前述のように継続する。DAC回路108は、これらのマイクロステッピングインデクサビットとアナログ基準電圧VREFとを受け取り、電流DACコードをアナログ電圧セットポイントVtripに変換し、アナログ電圧セットポイントVtripをV2I演算増幅器110に提供する。駆動モードの間、駆動モード電流感知FET SNS-DRVはオンにされ、そのため、V2I演算増幅器110は、電流マイクロステップに対応するピーク電流制限Itripを提供するように下側供給電圧に結合される。感知ノード111は、ピーク電流制限Itripの値を、電流感知コンパレータ104の第2の入力ノードに提供し、電流感知コンパレータ104は、第2の出力ノードOUT2上の電流をピーク電流制限Itripと比較する。電流感知コンパレータ104が、インダクタ電流Ioutがピーク電流制限Itripより大きいことを検出するとき、電流感知コンパレータ104は、高い値をドライバ制御回路に送り、そのため、駆動モードは終了し、減衰モードが開始する。
【0050】
FET線形検出回路は、Hブリッジ回路におけるアクティブローサイドパワーFETと共に、又は、両方のローサイドパワーFETがアクティブであるときには第2のローサイドパワーFETと共に動作する。ここでは、駆動モードの間のFET線形検出回路の動作が記載される。但し、さらに後述するように、FET線形検出回路の実施形態は、高速減衰モード又は低速減衰モードの間も動作し得る。Hブリッジ及び電流感知回路100Aにおいて、FET線形検出回路112は、第2のローサイドゲート制御信号LS2を入力として受け取るように、及び、コンパレータイネーブル信号CMP_ENを電流感知コンパレータ104に提供するように結合される。FET線形検出回路112は、第2のローサイドパワーFET Mls2の、「飽和領域」から「線形領域」への遷移の後、電流感知コンパレータ104における電流感知をイネーブルすることによって、アダプティブブランキングを提供する。一実施形態において、FET線形検出回路112は、第2のローサイドパワーFET LS2のゲートが、デジタル上側供給電圧DVDDを下回る一つの閾値電圧より大きくなるときを検出することによって、この判定をする。
【0051】
図1Cは、第2のローサイドパワーFET Mls2がオンにされているときの、第2のローサイドゲート制御信号LS2上の電圧及び第2の出力ノードOUT2上の電圧のグラフ100Cを示す。この短い期間は、3つの別個の時間期間に分割される。第1の時間期間において、第2のローサイドゲート制御信号LS2上の電圧は上昇し始め、閾値電圧Vthを通過し、そのため、第2のローサイドパワーFET Mls2は、ターンオンし始める。第2の時間期間において、第2のローサイドゲート制御信号LS2はミラープラトーにあり、上昇しない。第3の時間期間の間、第2のローサイドゲート制御信号LS2は再び上昇し始める。
【0052】
駆動モードにおいて、第1のハイサイドゲート制御信号HS1と第2のローサイドゲート制御信号LS2の両方の電圧は高になり、第2の出力ノードOUT2上の電圧は高から低に遷移する。グラフ100Cに見られるように、第2のローサイドゲート制御信号LS2は、第2の出力ノードOUT2の遷移の間、ミラープラトー領域にあるままである。FET線形検出回路112は、電圧がミラープラトーの終了を通過したことを検出する。これは、第2のローサイドパワーFET Mls2が線形領域入ること、それゆえ、ブランキング時間の必要性の終了を示す。
【0053】
図1Bは、コンパレータイネーブル信号CMP_ENをいつオンにするかを判定するためにグラフ100Cに示す知識を用い得る、FET線形検出回路100Bの一実施形態を示す。FET線形検出回路100Bにおいて、検出P型電界効果トランジスタ(PFET)M3が、デジタル上側供給電圧DVDDと下側供給電圧との間で電流シンク115と直列に結合される。駆動モードの間、アダプティブブランキングのために用いられるとき、検出PFET M3のゲートは、第2のローサイドゲート制御信号LS2を受け取るように第2のローサイドパワーFET Mls2のゲートに結合される。また、シュミットトリガ116が、デジタル上側供給電圧DVDDと下側供給電圧との間に結合される。シュミットトリガは、検出PFET M3と電流シンク115との間にあるゲート感知ノード118に結合される入力を有し、電流感知コンパレータ104をイネーブルするコンパレータイネーブル信号CMP_ENを提供するように結合される出力を有する。
【0054】
Hブリッジ及び電流感知回路100Aの動作の間、Hブリッジ回路102が高速減衰モードにあるとき、第2のローサイドゲート制御信号LS2は低なので、検出PFET M3はオンにされ、ゲート感知ノード118上の電圧を高に保つ電流を電流シンク115に提供する。シュミットトリガ116は、コンパレータイネーブル信号CMP_EN上で低信号を生成し、そのため、電流感知コンパレータ104はイネーブルされない。Hブリッジ回路102が駆動モードを開始するとき、第2のローサイドゲート制御信号LS2は上昇し始め、デジタル供給電圧DVDDを下回る閾値電圧Vtに到達するとき、検出PFET M3はオフになる。電流シンク115がゲート感知ノード118から電流をシンクし続けるので、ゲート感知ノード118上の電圧は低くなり、シュミットトリガ116はコンパレータイネーブル信号CMP_EN上に高信号を提供し、インダクタ電流Ioutとピーク電流制限Itripとの比較をトリガする。
【0055】
図1Dは、駆動モードの間の第2のローサイド制御信号LS2及びコンパレータイネーブル信号CMP_ENを示す。初め、第2のローサイド制御信号LS2とコンパレータイネーブル信号CMP_ENの両方が低であるが、第2のローサイドパワーFET Mls2がオンにされると、第2のローサイド制御信号LS2は上方に向かってランプする。第2のローサイド制御信号LS2がDVDD-Vtの値より大きくなるとき、コンパレータイネーブル信号CMP_ENは高になり、ブランキングを終了し、電流感知を開始する。駆動モードが終了するとき、第2のローサイド制御信号LS2はDVDD-Vtより下に降下し、コンパレータイネーブル信号CMP_ENはオフになり、電流感知コンパレータ104は、次に第2のローサイドパワーFET Mls2がオンにされるときまでディセーブルされる。このように、FET線形検出回路112の一例としてのFET線形検出回路100Bは、スルーレートに依存しないアダプティブブランキング期間を提供する。ブランキング時間は最適であり得、早まった感知或いは電流暴走を防止する。
【0056】
図1Eは、FET線形検出回路112がHブリッジ回路102と共に用いられるときの、インダクタ電流Ioutの例示のグラフ100Eを示す。グラフ1100Aに示したような長過ぎるブランキング期間を有する代わりに、グラフ100Eにおけるインダクタ電流Ioutは、縮小されたブランキング期間Tblankを有する。この一層短いブランキング期間は、インダクタ電流Ioutがピーク電流制限Itripに達したことを検出し、高速減衰モードの開始をトリガするために、電流感知コンパレータ104を適時にイネーブルする。それゆえ、電流暴走などの問題が防止され得る。
【0057】
図2Aは、本開示の或る実施形態に従った、ステッパーモータを動作させる方法200を示す。この方法は、Hブリッジ回路における第1の出力ノードを、インダクタのハイサイド端子に取り付けること(205)、及び、Hブリッジ回路における第2の出力ノードをインダクタのローサイド端子に取り付けること(210)で始まる。第1の出力ノードは、モータ供給電圧に結合される第1のハイサイドパワーFETと、下側供給電圧に結合される第1のローサイドパワーFETとの間にある。第2の出力ノードは、モータ供給電圧に結合される第2のハイサイドパワーFETと、下側供給電圧に結合される第2のローサイドパワーFETとの間にある。Hブリッジ回路が駆動モードで動作しているとき、第2のローサイドパワーFET上のゲート電圧が、第2のローサイドパワーFETが線形領域で動作しているときを判定するために追跡される(215)。第2のローサイドパワーFETが線形領域で動作しているとき、第1の電流感知コンパレータがイネーブルされる(220)。第1の電流感知コンパレータは、第2の出力ノードOUT2におけるインダクタ電流Ioutをピーク電流制限Itripと比較するように結合される。
【0058】
駆動モードにおける動作に関して上述したが、アダプティブブランキングは、低速減衰モードと高速減衰モードの両方においても利用され得る。低速減衰モードにおける動作を
図2Bに示す。Hブリッジ回路が低速減衰モードで動作しているとき、第2のローサイドパワーFET上のゲート電圧が、第2のローサイドパワーFETが線形モードで動作しているときを判定するために追跡される(225)。第2のローサイドパワーFETが線形モードで動作しているとき、第1の電流感知コンパレータがイネーブルされる(230)。第1の電流感知コンパレータは、ここでは、第2の出力ノードにおける電流を第1のバレー電流制限と比較するように結合されている。
【0059】
図2Cに示すように、Hブリッジ回路が高速減衰モードで動作しているとき、第1のローサイドパワーFET上のゲート電圧が、第1のローサイドパワーFETが線形モードで動作しているときを判定するために追跡される(235)。第1のローサイドパワーFETが線形モードで動作しているとき、第2の電流感知コンパレータがイネーブルされる(240)。第2の電流感知コンパレータは、第1のバレー電流制限と組み合わされる第1の出力ノードにおける電流を下側供給電圧と比較するように結合される。コンパレータによって用いられる基準電流が、ピーク電流制限Itripとバレー電流制限Ivalleyの両方を搬送するヒステリシス基準電流であるときに、
図2B及び
図2Cに示す方法が動作可能であることが理解されよう。
【0060】
開示されるFET線形検出回路、及び、ステッパーモータを動作させることに関連する方法は、以下の利点の一つ又は複数を提供し得る。
・ドライバのスルーレートに関知しない(agnostic)。
・電流レギュレーションのために用いられるアルゴリズム、例えば、一定のオフ時間、一定の周波数、リップル制御等に依存しない。
・複数の異なるスルーレートの各々のための固定タイマが除かれ、簡略化された回路、省面積化、デジタル的な複雑性の縮小、及び製品群のための設計時間の短縮を可能にする。
・悲観的なブランキング時間が選択されないので、平均的モータ電流の誤差及び電流暴走の問題が防止される。
・出力電流を用いて最小駆動時間を自動で調整する。低電流ステップにおける駆動時間を制限することによって、ゼロ交差歪みを軽減させることを助け得る。
・Hブリッジ回路が駆動モードから低速減衰モードに遷移するとき、第2の出力ノードOUT2は既にゼロの値を有し、それゆえ、第2の出力ノードOUT2の傾きをもった変化(slew)がない。この場合、FET線形検出回路112は或る高い値を既に提供しており、その結果、ブランキング時間がない。この応答は理想的である。従来技術はゲート電圧を追跡しないので、従来技術の回路は、遷移に関係なくブランキング時間を付加する。
【0061】
高速減衰モードにおける電流感知
所望の波形がステップを低減することを必要とするとき、インダクタ電流Ioutは、各ステップにおいて次に低いレベルに降下される必要がある。リップル制御方式では、ステップの低減が生じるとき、一層低いレベルに可能な限り早く到達するために高速減衰モードが開始される。しかし、既存の設計は、高速減衰モードの間、電流感知を有さない。その代わりに、高速減衰モードにおける一定の時間の後、ドライバは電流を感知するために駆動モードに入る。
【0062】
図12Aは、高インダクタンスを有するモータにおけるこの問題を図示するグラフ1200Aを示す。グラフ1200Aは、ピーク電流制限Itrip、インダクタ電流Iout、及びステッピングインジケータStepを示す。まず、インダクタ電流Ioutは、連続する駆動モードがピーク電流制限Itripの値まで電流を駆動し、その後、一定の時間量の間電流を減衰させ得るときの電流を示す。時間Taにおいて、ステッピングインジケータStepは、新たなステップが所望されることを示すために、パルスを提供する。この新たなステップは、示される実施形態では、下方に向かうステップである。ピーク電流制限Itripの値が下方に向かって下がるので、インダクタ電流Ioutは、2μsの一定時間期間の間、高速減衰モードで減衰するように設定され、その後、ブランキング時間を経過し、インダクタ電流Ioutを測定するのに充分に長い時間期間の間、Hブリッジ回路を駆動モードに置く。このように、次に低いレベルへの所望の敏速な降下ではなく、高速減衰サイクルを駆動モードと交互にすることは、次に低いレベルに到達するまでにかかる全体的な時間を増加させる。これが、トルクリップルを生じさせる。
【0063】
図12Bにおけるグラフ1200Bによって示されるように、異なる問題が、低インダクタンスモータに対して生じ得る。この状況において、2μsの高速減衰期間が再び利用される。しかし、次のレベルまで減衰するために長い期間がかかる代わりに、ステッピングインジケータStepがパルスを提供してピーク電流制限Itripの値が降下するたびに、インダクタ電流Ioutは、高速減衰モードの間、所望されるよりさらに降下する。この過度の降下は、電流波形を歪ませる大規模な電流リップルとなる。グラフ1200A及び1200Bによって示すように、高速減衰時間に対する遅延ベースのアプローチは、モータパラメータにわたって最適化され得ない。
【0064】
グラフ1200A及び1200Bに示す問題は、インダクタ電流Ioutが高速減衰モードで感知され得ないという事実に起因する。モータを介する電流が、高速減衰モードで確実に感知され得る場合、時間ベースのアプローチの使用をなくすことができ、電流は一層正確にレギュレートされ得る。高速減衰モードの間、インダクタ電流Ioutを感知することに伴う問題は、インダクタの電圧が負であることであり、これが、電流検出に対して問題を提起する。
【0065】
図3Aは、モータ供給電圧Vmを上側供給電圧として受け取るHブリッジ回路301と、デジタル供給電圧DVDDを上側供給電圧として受け取る電流感知回路303とを含む、Hブリッジ及び電流感知回路300Aを示す。電流感知回路303は、高速減衰モードの間、バレー電流制限を検出するように結合され、マイクロステッピングインデクサ307と、DAC回路308と、V2I演算増幅器310と、高速減衰モード電流感知FET SNS-FDと、電流感知コンパレータ304とを含む。マイクロステッピングインデクサ307及びアナログ基準電圧VREFは、DAC回路308への入力を提供するように結合される。DAC回路308は、V2I演算増幅器310の入力に結合される。高速減衰モード電流感知FET SNS-FDは、V2I演算増幅器310と第1の出力ノードOUT1との間に結合され、高速減衰モード電流感知FET SNS-FDのゲートは、第1のローサイドパワーFET Mls1のゲートに結合される。感知ノード311は、V2I演算増幅器310と高速減衰モード電流感知FET SNS-FDとの間に位置する。電流感知コンパレータ304は、感知ノード311に結合される第1の入力と、下側供給電圧に結合される第2の入力と、出力信号313をドライバ制御回路(具体的に図示せず)に送るように結合される出力とを有する。
【0066】
高速減衰モードの間、第1の出力ノードOUT1における電流が負であるので、第1の出力ノードOUT1における電流は、バレー電流制限Ivalleyに付加され、電流感知コンパレータ304の第1の入力に提供される。感知ノード311上で感知される組み合わされた電流は、この組み合わされた電流がゼロを交差するときを検出するために、下側供給電圧、例えば、0Vと比較される。一実施形態において、Hブリッジ及び電流感知回路300Aは、電流レギュレーション回路800と組み合わされ得、そのため、電流感知コンパレータ804が、駆動モードの間、電流をレギュレートするために用いられる第1の電流感知コンパレータであり、電流感知コンパレータ304が、高速減衰モードの間、電流をレギュレートするために用いられる第2の電流感知コンパレータである。また、ピーク電流制限Itripとバレー電流制限Ivalleyの両方が利用される状況において、電流感知コンパレータ804は、第1のローサイドパワーFET Mls1と第2のローサイドパワーFET Mls2の両方がオンである低速減衰モードの間、電流を感知するために利用され得る。
【0067】
Hブリッジ及び電流感知回路300Bの別の実施形態を
図3Bと
図3Cの両方に示す。Hブリッジ及び電流感知回路300B1が、駆動モードの設定で、
図3Bに図示され、Hブリッジ及び電流感知回路300B2が、高速減衰モードの設定で、
図3Cに図示される。Hブリッジ及び電流感知回路300Bを用いると、電流感知は、駆動モードと高速減衰モードの両方において、単一電流感知コンパレータ320を用いて行われ得る。
図3B及び
図3Cに示されるように、Hブリッジ及び電流感知回路300Bは、Hブリッジ回路322と電流感知回路324とを含む集積回路(IC)チップ321の一部である。ICチップ321上の4つのピン、すなわちピンP1~P4が、Hブリッジ及び電流感知回路300Bに図示されている。第1のピンP1が、モータ供給電圧をHブリッジに提供するようにモータ供給電圧Vmに結合され得る。第2のピンP2が、第1の出力ノードOUT1に結合され、ステッパーモータ328の第1のインダクタ326のハイサイド端子に結合され得る。第3のピンP3が、第2の出力ノードOUT2に結合され、第1のインダクタ326のローサイド端子に結合され得る。第4のピンP4が、下側供給電圧を提供するように結合され、一実施形態では、地面に結合され得る。Hブリッジ及び電流感知回路300Bの第2のコピー(具体的に図示せず)が、典型的にICチップ321上にあり、ステッパーモータ328における第2のインダクタ330の端子に結合され得るが、Hブリッジ及び電流感知回路300Bの波形からオフセットされる波形を提供する制御信号を受け取る。
【0068】
電流感知回路324は、電流源CS1を含み、電流源CS1は、デジタル上側供給電圧DVDDと第1の切り替え可能ノードSW1との間で感知ノードSNS-DUALと直列に結合される。第1の切り替え可能ノードSW1は、第1の出力ノードOUT1或いは下側供給電圧に切り替え可能に結合され得る。感知ノード332が、電流源CS1と第1の切り替え可能ノードSW1との間にあり、電流感知コンパレータ320の第1の入力に結合される。電流感知コンパレータ320の第2の入力が、第2の切り替え可能ノードSW2に結合される。第2の切り替え可能ノードSW2は、下側供給電圧或いは第2の出力ノードOUT2に切り替え可能に結合され得る。更に後述されるように、電流源CS1は、ヒステリシス基準電流を提供する。所望の波形における各ステップで、電流源CS1は、対応するピーク電流制限と、対応するバレー電流制限の両方を提供し得る。
【0069】
図3Bに示すように、Hブリッジ及び電流感知回路300B1は、駆動モードで動作しており、電流は、矢印334によって示すように、Hブリッジ回路322及び第1のインダクタ326を介して移動している。第2の出力ノードOUT2は、Iout×Rds(on)と等しい第2の出力電圧V2を提供し、ここで、Ioutはインダクタ電流であり、Rds(on)はメインFETのためのソース-ドレインオン抵抗であり、メインFETは、駆動モードでは、第2のローサイドパワーFET Mls2である。駆動モードにおいて、第2の出力ノードOUT2は、第2の切り替え可能ノードSW2を介して電流感知コンパレータ320の第2の入力に結合され、第1の切り替え可能ノードSW1は、下側供給電圧に結合される。駆動モードの間、電流源CS1はピーク電流制限Itripを提供する。このように、電流感知コンパレータ320は、第2の出力ノードOUT2上の電流をピーク電流制限Itripと比較し、第2の出力ノードOUT2上の電流がピーク電流制限Itripより大きくなるとき、出力信号319が、駆動モードを終了させるためにドライバ回路(具体的に図示せず)に送られる。具体的に図示しないが、第1のローサイドFET Mls1と第2のローサイドFET Mls2の両方がアクティブのとき、Hブリッジ及び電流感知回路300B1における設定は、低速減衰モードの間にアダプティブブランキングを提供するためにも利用され得る。この事例において、電流源CS1は、バレー電流制限を表す電流を提供する。
【0070】
図3Cに示すように、Hブリッジ及び電流感知回路300B2は、高速減衰モードで動作しており、電流は、矢印336によって示すように、Hブリッジ回路322及び第1のインダクタ326を介して移動している。第1の出力ノードOUT1は、-Iout×Rds(on)と等しい第1の出力電圧V1を提供し、ここでも、Ioutはインダクタ電流であり、Rds(on)はメインFETのためのソース-ドレインオン抵抗であり、メインFETは、高速減衰モードでは、第1のローサイドパワーFET Mls1である。高速減衰モードにおいて、第1の出力ノードOUT1は、第1の切り替え可能ノードSW1を介して感知ノード332及び電流感知コンパレータ320の第1の入力に結合され、第2の切り替え可能ノードSW2は、下側供給電圧に結合される。高速減衰モードの間、電流源CS1は、バレー電流制限Ivalleyを提供して、電流感知コンパレータ320がバレー電流制限Ivalleyと組み合わされる第1の出力ノードOUT1上の電流をゼロと比較し、組み合わされた電流がゼロを交差するとき、出力信号319が、高速減衰モードを終了させるためにドライバ回路(具体的に図示せず)に送られる。
【0071】
これらの図面に具体的に図示しないが、Hブリッジ及び電流感知回路300A、300Bの各々は、それぞれの電流感知コンパレータ304、320をいつイネーブルするかを判定するためのFET線形検出回路を含み得る。
図3Aにおいて、FET線形検出回路が、第1のローサイドパワーFET Mls1上のゲート電圧を受け取るように結合され得、コンパレータイネーブル信号を提供するようにコンパレータ304に結合され得る。
図3Bにおいて、FET線形検出回路が、高速減衰モードの間、第1のローサイドパワーFET Mls1上のゲート電圧を受け取るように、並びに、駆動モードの間及び低速減衰モードの間、第2のローサイドパワーFET Mls2上のゲート電圧を受け取るように切り替え可能に結合され得る。
【0072】
図12A及び
図12Bは、高速減衰モードにおいて電流を感知することができないときに生じ得る問題を示している。
図4A及び
図4Bは、高速減衰モードにおいて電流感知を用いるときのインダクタ電流Ioutを示す。
図4Aは、
図12Aに類似する状況を示し、
図4Bは、
図12Bに類似する状況を示す。
図4Aと
図12Aの両方で、モータは高インダクタンスを有する。各高速減衰期間のために2μsが用いられ、その後、駆動モードへの切り替えが続いたとき、新たな設定への低速の降下が生じる。
図4Aでは、高速減衰モードにおいて電流感知が用いられたので、インダクタ電流Ioutは、バレー電流制限Ivalleyが到達されるまで高速減衰モードのままであり得、その結果、新たなレベルへの一層高速な降下となる。
【0073】
図4Bと
図12Bの両方において、モータは低インダクタンスを有する。電流感知が、一定の高速減衰期間の間利用可能でないとき、モータが、インダクタ電流Ioutの値を判定するために駆動モードに切り替わる前に、インダクタ電流Ioutはピーク電流制限Itripよりはるかに下に下がり得る。
図4Bにおいて、高速減衰モードでバレー電流制限及び電流感知を用いることによって、インダクタ電流Ioutは、所望の値より下に降下せず、一層スムーズな動作を提供し得る。
【0074】
図5Aは、本開示の或る実施形態に従ったステッパーモータを動作させる方法500Aを示す。方法500Aは、Hブリッジ回路における第1の出力ノードをインダクタのハイサイド端子に取り付けること(505)、及び、Hブリッジ回路における第2の出力ノードをインダクタのローサイド端子に取り付けること(510)で開始する。第1の出力ノードは、モータ供給電圧に結合される第1のハイサイドパワーFETと、下側供給電圧に結合される第1のローサイドパワーFETとの間にあり、第2の出力ノードは、モータ供給電圧に結合される第2のハイサイドパワーFETと、下側供給電圧に結合される第2のローサイドパワーFETとの間にある。
【0075】
方法500Aはさらに、高速減衰モードの間、バレー電流制限を提供するように電流源を結合すること(515)を含み、電流源は電流感知ノードに結合され、また、電流感知ノードは電流感知コンパレータの第1の入力に結合される。方法はさらに、電流感知ノードを第1の出力ノードに結合すること、及び、電流感知コンパレータの第2の入力を下側供給電圧に結合すること(520)を含む。
【0076】
方法500Aは、Hブリッジ及び電流感知回路が、Hブリッジ及び電流感知回路300Aにおけるように、又はHブリッジ及び電流感知回路300Bにおけるように構成されるときに利用され得る。
図5B及び
図5Cは、方法500Aに付加的な要素を付加する。但し、
図5B及び
図5Cは、駆動モードと高速減衰モードの両方の間の電流感知が、単一電流感知コンパレータを用いて行われるときにのみ利用され得る。この場合、駆動モードの間、電流源は、ピーク電流制限を提供するように結合される(525)。電流感知ノードは下側供給電圧に結合され、電流感知コンパレータの第2の入力は、第2の出力ノードに結合される(530)。低速減衰モードの間、電流源は、バレー電流制限を提供するように結合され(535)、電流感知ノードは、第2の出力ノードに結合され、電流感知コンパレータの第2の入力は、下側供給電圧に結合される(540)。
【0077】
高速減衰電流感知の使用により、モータ供給電圧Vm及びインダクタンスLの全ての変動にわたり良好な電流レギュレーションが提供され得る。また、ピーク電流制限とバレー電流制限の両方を測定するための単一コンパレータの使用により、リップルの精度の向上が提供され得る。
【0078】
図6は、Hブリッジ及び電流感知回路100A、300A、300B1、300B2の一つ又は複数を含み得るシステム600を示す。システム600は、ICチップ602を含み、ICチップ602は、第1のインダクタ606及び第2のインダクタ608を介してインダクタ電流を制御することによって、ステッパーモータ604を駆動するように結合される。代替として、ICチップは、2つの外部負荷を介して双方向電流を駆動するように用いられ得る。一つの代替の実施形態において、2つの外部負荷は、第1のブラシ付きDCモータ603及び第2のブラシ付きDCモータ605である。
【0079】
多くのピンが、ICチップ602への入力及び出力を提供するが、本願では、そうしたピンのうちの幾つかのみを述べる。幾つかの第1のピンP1が、モータ供給電圧Vmに結合され、幾つかの第4のピンP4が、下側供給電圧を提供するように地面に結合される。第2のピンP2が、第1のインダクタ606のハイサイド端子に結合され、ピンP3が、第1のインダクタ606のローサイド端子に結合される。同様に、第5のピンP5が、第2のインダクタ608のハイサイド端子に結合され、第6のピンP6が、第2のインダクタ608のローサイド端子に結合される。
【0080】
ICチップ602内で、電力供給回路610が、モータ電圧Vmを受け取り、電力を、ICチップ602上の他の回路に分配する。電力供給回路610は、例えば、デジタル上側供給電圧DVDDのためのチャージポンプ及びレギュレータを含み得る。制御入力回路612が、Hブリッジ回路を制御するために用いられる論理制御信号を受け取る。これらの論理制御信号は、例えば、イネーブル信号及びパルス幅変調(PWM)制御を含み得る。電力供給回路610と制御入力回路612の両方が、デジタルコア回路616に結合される。デジタルコア回路616は、第1のゲートドライバ回路620及び第2のゲートドライバ回路622に制御信号を送るように結合される。
【0081】
第1のゲートドライバ620は、HブリッジFETのための制御信号を提供するように、及び、電流感知情報を受け取るように、Hブリッジ及び電流感知回路624に結合される。Hブリッジ及び電流感知回路624は、第2のピンP2を介して第1のインダクタ606のハイサイド端子に結合され、第3のピンP3を介して第1のインダクタ606のローサイド端子に結合される。また、Hブリッジ及び電流感知回路624における電流感知要素は、第1の基準電圧Vref1との比較のため、電流感知コンパレータ625に結合される。
【0082】
同様に、第2のゲートドライバ622は、関連するHブリッジFETのための制御信号を提供するように、及び、電流感知情報を受け取るように、Hブリッジ及び電流感知回路626に結合される。Hブリッジ及び電流感知回路626は、第5のピンP5を介して第2のインダクタ608のハイサイド端子に結合され、第6のピンP6を介して第2のインダクタ608のローサイド端子に結合される。また、Hブリッジ及び電流感知回路626における電流感知要素は、第2の基準電圧Vref2との比較のため、電流感知コンパレータ627に結合される。
【0083】
また、ICチップ602は、各ゲートドライバのための電圧基準信号を受け取るように結合されるアナログ電圧基準入力回路614と、例えば、過電流、不足電圧、及び温度過昇状況を監視する保護回路628と、保護回路628によって検出される任意の故障の通知を提供する故障出力回路630とを含む。ICチップ602は、より具体的には、Hブリッジ及び電流感知回路624、626は、アダプティブブランキングを提供するためのFET線形検出回路、例えばFET線形検出回路100Bを組み込み得る。また、ICチップは、高速減衰モードの間、電流感知を、単独で或いはアダプティブブランキングと組み合わせて組み込み得る。高速減衰モードの間の電流感知のために用いられるコンパレータは、電流感知回路303に示すように、高速減衰モードにおいて電流感知専用とされ得、又は、電流感知回路324に示すように、駆動モードと高速減衰モードとで共有され得る。
【0084】
出願人は、ドライバのスルーレートに関知せず、電流レギュレーションのために用いられるアルゴリズムとは独立したアダプティブブランキングを提供する方法、回路、システム、及びICチップを開示してきた。また出願人は、所望されるよりも低く降下することなく、一層低いステップに一層高速に降下することを可能にする高速減衰モードにおける電流感知を提供する方法、回路、システム及びICチップを開示してきた。高速減衰モードにおけるアダプティブブランキング及び電流感知は、個別に、又は、一層堅牢な電流感知を提供するために互いと関連して利用され得る。これらのツールを用いると、モータ動作は一層スムーズになり得、騒音が小さくなり得る。
【0085】
種々の実施形態を詳細に示し、説明してきたが、特許請求の範囲は、任意の特定の実施形態又は例に限定されない。上述の詳細な説明の如何なるものも、任意の特定の構成要素、要素、ステップ、行為、又は機能が必須であり、そのためそれらが特許請求の範囲に含まれるべきであることを示唆する、と解釈すべきでない。単数の要素に対する参照は、明示的にそうであると述べられない限り、「一つ及び一つのみ」を意図するものではなく、むしろ「一つ又は複数」を意味する。当業者に既知の、上述の実施形態の要素の全ての構造的及び機能的均等物が、参照により本願に明確に組み込まれ、本願の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。従って、本願で説明される例示の実施形態は、下記の添付の特許請求の範囲の精神及び範囲内で、種々の改変及び修正と共になされ得ることを、当業者であれば認識し得る。