(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む組成物並びに組成物の製造方法及び使用方法
(51)【国際特許分類】
C09K 5/04 20060101AFI20250311BHJP
C07C 21/18 20060101ALI20250311BHJP
C07C 17/25 20060101ALI20250311BHJP
【FI】
C09K5/04 F
C09K5/04 E
C09K5/04 B
C09K5/04 C
C07C21/18
C07C17/25
(21)【出願番号】P 2022548142
(86)(22)【出願日】2021-02-05
(86)【国際出願番号】 US2021016693
(87)【国際公開番号】W WO2021158837
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2023-11-30
(32)【優先日】2020-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515269383
【氏名又は名称】ザ ケマーズ カンパニー エフシー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュエフイ スン
(72)【発明者】
【氏名】カール ロバート クラウス
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-222697(JP,A)
【文献】特表2011-520017(JP,A)
【文献】国際公開第2019/213004(WO,A1)
【文献】特表2012-509390(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0210945(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0210944(US,A1)
【文献】特表2016-519090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 5/00 - 5/20
F25B 1/00 - 7/00
C10M 101/00 - 177/00
C07B 31/00 - 63/04
C07C 1/00 - 409/44
CAplus/REGISTRY (STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1234yf、1225zc、1234ze、1243zf、1140、Z-1225ye、E-1225ye及びHFC134aを含む組成物。
【請求項2】
1131a、244bb、1233xf、244cc、1224yd、HFP、1122、1122a、12、E-1131、Z-1131、245cb、3,3,3-トリフルオロプロピン、124、142b、254eb、347異性体及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーを含む少なくとも1つの追加の化合物を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
HFC-245cb、CFC-12、HFC-254eb、HCFC-1122、HCFC-124、HCFC-142b、HCFC-151a、HFC-152a、3,3,3-トリフルオロプロピン、1122a-Z及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーを含む少なくとも1つの追加の化合物を更に含む、請求項1又は請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
HCFC-243db、HCFC-244db、HFC-245cb、HFC-245fa、HCFO-1233xf、HCFO-1233zd、HCFC-253fb、HCFC-234ab、HCFC-243fa、エチレン、HFC-23、CFC-13、HFC-143a、HFC-152a、HFC-236fa、HCO-1130、HCO-1130a、HFO-1336、HCFC-133a、HCFC-254fb、HCFC-1131、HFC-1141、HCFO-1242zf、HCFO-1223xd、HCFC-233ab、HCFC-226ba、HFC-227ca及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーを含む少なくとも1つの追加の化合物を更に含む、請求項1又は請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
1225zc、1234ze、1243zf、1140、Z-1225ye、E-1225ye及びHFC134aの総量が0重量%より大きく1重量%未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記347異性体が、347mpy及び347mefからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
32、125及び161からなる群から選択される少なくとも1つのメンバーを更に含み、前記組成物が、
5から70重量%の量の32、
1から10重量%の量の161、及び
5から70重量%の量の125のうちの少なくとも1つを含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
HCFC-244bbと、1120、1334、244cc、1233xf、1223xd、1224、225ba、226ca、233ab、233da、234bb、234da、235ca、235da、235ea、243ab、243db、244db、244eb、253db、253fb、1224yd-E、1233zd、235cb及び1224yd-Z、1326、1223異性体及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの追加の化合物とを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項9】
HCFC-244bbの量が、0重量パーセント超から
99.99%未満である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
請求項2に記載の組成物を反応させることを含む、請求項1に記載の組成物を製造する方法。
【請求項11】
前記反応が、脱塩化水素反応を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1に記載の組成物と、少なくとも1つの潤滑剤とを含む冷媒組成物。
【請求項13】
伝熱システム内の作動流体として請求項12に記載の冷媒組成物を使用することを含む、熱を伝達する方法。
【請求項14】
前記伝熱システムが、空調機、冷凍庫、冷蔵庫、ヒートポンプ、水冷器、満液式蒸発器チラー、直接膨張式チラー、ウォークインクーラー、ヒートポンプ、移動式冷蔵庫、移動式空調ユニット、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つのメンバーを備える、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1に記載の組成物の気相及び液相を含むコンテナであって、前記気相及び液相中の酸素及び水の濃度の量が、
25℃の温度で
3体積ppmから3,000体積ppm未満の範囲である、コンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
本出願は、2020年2月7日に出願された出願番号62/971,347号の利益を主張する。出願番号62/971,347の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、熱伝達組成物、エアロゾル噴射剤、起泡剤、発泡剤、溶媒、洗浄剤、分散媒、置換乾燥剤、バフ研磨剤、重合媒体、ポリオレフィン及びポリウレタン用の膨張剤、気体誘電体、消火剤、及び液体又は気体形態の火災鎮静剤として有用であり得る組成物の分野に関する。本開示はまた、熱伝達剤を製造するのに有用な組成物及び方法に関する。詳細には、本開示は、熱伝達組成物として有用であり得る組成物、例えば、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf、又は1234yf)に関する。
【背景技術】
【0003】
米国特許出願公開第2017/0166500号は、不純物を実質的に含まない2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロプロパンの反応物流を脱ハロゲン化水素することによってHFO-1234yfを製造するためのプロセス及び方法を開示している。これらの開示は、参照により本明細書に援用される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一実施形態は、1234yf、1225zc、1234ze-E、1234ze-Z、1243zf、1140、Z-1225ye、E-1225ye、及びHFC134aを含む組成物を提供する。
【0005】
本発明の組成物は、少なくとも1つの追加の化合物を更に含むことができる。一実施形態では、追加の化合物は、1131a、244bb、1233xf、244cc、1224yd、HFP、1122、1122a、12、E-1131、Z-1131、245cb、3,3,3-トリフルオロプロピン、124、142b、254eb、347mpy及び347mefを含む347異性体、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーを含む。
【0006】
本発明の一実施形態では、少なくとも1つの追加の化合物又は前述の追加の化合物は、HFC-245cb、CFC-12、HCC-1140、HFC-254eb、HCFC-1122、HCFC-124、HCFC-142b、HCFC-151a、HFC-152a、及び3,3,3-トリフルオロプロピンからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーを更に含む。
【0007】
本発明の別の実施形態では、少なくとも1つの追加の化合物又は前述の追加の化合物は、HCFC-243db、HCFC-244db、HFC-245cb、HFC-245fa、HCFO-1233xf、HCFO-1233zd、HCFC-253fb、HCFC-234ab、HCFC-243fa、エチレン、HFC-23、CFC-13、HFC-143a、HFC-152a、HFC-236fa、HCO-1130、HCO-1130a、HFO-1336、HCFC-133a、HCFC-254fb、HCFC-1131、HFC-1141、HCFO-1242zf、HCFO-1223xd、HCFC-233ab、HCFC-226ba、及びHFC-227caからなる群から選択される少なくとも1つの追加の化合物を更に含む。
【0008】
本発明の一実施形態では、本組成物は、0より大きく約1未満の総重量パーセントの少なくとも1つの追加の化合物を含有する。
【0009】
本発明の別の実施形態では、本発明の組成物は1234yfを含み、1225zc、1234ze、1243zf、1140、Z-1225ye、E-1225ye、及びHFC134aの総量は0重量%より大きく1重量%未満である。この実施形態の一態様では、本発明の組成物は1234yfを含み、1225zc、1234ze、1243zf、1140、Z-1225ye、E-1225ye、HFC134a及び少なくとも1つの追加の化合物の総量が0重量%より大きく1重量%未満である。
【0010】
本発明の別の実施形態では、347異性体は、347mpy及び347mefからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーを含む。
【0011】
本発明の別の実施形態では、本発明の組成物は、32、125及び161からなる群から選択される少なくとも1つのメンバーを更に含む。
【0012】
本発明の別の実施形態では、HCFC-244bbと、1120、1334、244cc、1233xf、1223xd、1224、225ba、226ca、233ab、233da、234bb、234da、235ca、235da、235ea、243ab、243db、244db、244eb、253db、253fb、1224yd-E、1233zd、235cb及び1224yd-Z、1326、1223異性体及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの追加の化合物とを含む組成物が提供される。この実施形態の一態様では、本組成物は、0重量パーセント超から99.99重量パーセントの範囲でHCFC-244bbを含有し得る。
【0013】
本発明の一実施形態では、244bbを含む組成物を、本発明の1234yf組成物を製造するために使用することができる。この実施形態の一態様は、前述の244bb含有組成物の任意の組み合わせを反応させることによって本発明の1234yf含有組成物を製造する方法を含む。この実施形態の特定の1つとして、反応は、脱塩化水素反応を含む。
【0014】
一実施形態では、本発明の組成物は、前述の組成物と少なくとも1つの潤滑剤との任意の組み合わせを含む冷媒を含む。
【0015】
本発明の一実施形態は、前述の冷媒組成物の任意の組み合わせを伝熱システム内の作動流体として使用することを含む、熱を伝達する方法を含む。一態様では、本方法は、空調機、冷凍庫、冷蔵庫、ヒートポンプ、水冷器、満液式蒸発器チラー、直接膨張式チラー、ウォークインクーラー、ヒートポンプ、移動式冷蔵庫、移動式空調ユニット、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも一つのメンバーを備える伝熱システムに関する。
【0016】
本発明の別の実施形態は、前述の1234yf含有組成物のうちのいずれかを含むコンテナを含む。
【0017】
本発明の実施形態は、単独で、又は互いに組み合わせて使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
HFO-1234yfは、他の用途の中でも、冷媒、伝熱流体、エアロゾル噴射剤、発泡剤として有用である。HFO-1234yfはまた、参照により本明細書に組み込まれる、V.C.Papadimitriou,et al.in Physical Chemistry Chemical Physics,2007、第9巻、1~13頁に報告されているように、地球温暖化係数(GWP)も低い。HFO-1234yfは、より高いGWPの飽和HFC冷媒を置き換えるのに有用である。
【0019】
本明細書で使用するとき、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」という用語、又はこれらの他の任意の変化形は、非排他的な包含を網羅することを意図する。例えば、列挙する要素を含む、組成物、プロセス、方法、物品、若しくは機器は、必ずしもそれらの要素のみに限定されるものではなく、明示的に列挙されない他の要素、又はそのような組成物、プロセス、方法、物品、若しくは機器などに伴われる他の要素を包含し得る。更に、明示的にこれに反する記載がない限り、「又は」は、包括的な「又は」を指し、排他的な「又は」を指すものではない。例えば、条件A又はBは、以下、すなわち、Aが真であり(又は存在し)かつBが偽である(又は存在しない)、Aが偽であり(又は存在しない)かつBが真である(又は存在する)、並びにA及びBの両方が真である(又は存在する)のいずれか1つにより満たされる。
【0020】
移行句「からなる(consisting of)」は、特定されていないあらゆる要素、工程、又は成分を除外する。特許請求の範囲における場合には、このような語句は、材料に通常付随する不純物を除き、列挙された材料以外の材料の包含を特許請求項から締め出すものである。語句「からなる」がプリアンブルの直後ではなく請求項の本文の節内で現れる場合、この語句はその節の中に示される要素のみを限定するものであり、その他の要素が特許請求の範囲全体から除外されるわけではない。
【0021】
移行句「から本質的になる(consisting essentially of)」は、文字どおり開示されているものに加えて、材料、工程、特徴、成分、又は要素を含む、組成物、方法を定義するために使用されるが、ただし、これらの追加的に含まれる材料、工程、特徴、成分、又は要素は、請求される発明の基本的及び新規の特徴、特に本発明のプロセスのいずれかの所望の結果を達成するための行動様式に実質的に影響を及ぼす。用語「から本質的になる」は、「含む」と「からなる」との間の中間の意味をもつ。
【0022】
出願人らが、発明又はその一部を、「含む」などの非限定的な用語で定義していた場合、(特に明記しない限り)その記載は、用語「から本質的になる」又は「からなる」を使用する発明もまた含むと解釈すべきであることが容易に理解されるべきであろう。
【0023】
また、「a」又は「an」の使用は、本明細書に記載された要素及び成分を説明するために用いられる。これは、単に便宜上なされるものであり、本発明の範囲の全般的な意味を与えるためのものである。この記載は、1つ又は少なくとも1つを含むものと解釈されるべきであり、単数形は、別の意味を有することが明白でない限り、複数形も含む。
【0024】
本発明の一実施形態は、1234yfと、最大1重量%の134a、場合によっては0重量%より大きく約0.5重量%未満の134aを含む残部と、最大100ppmwの1140、場合によっては0ppmwより大きく約60ppmw未満の1140と、それぞれが最大500ppmwの1225zc、1234ze、1243zf、Z-1225ye、及びE-1225ye、場合によってはそれぞれが0ppmwより大きく約250ppmw未満の1225zc、1234ze、1243zf、Z-1225ye、及びE-1225yeとを含む組成物を提供する。この実施形態の一態様では、本組成物は、i)1234yf、134a、1140及び1225zcと、ii)1234yf、134a、1140、並びに1234ze-E及び1234ze-Zの少なくとも1つと、iii)1234yf、134a、1140及び1243zfと、iv)1234yf、134a、1140、並びにZ-1225ye及びE-1225yeの少なくとも1つと、v)i)~iv)の任意の組み合わせとを含み、少なくとも1つの追加の化合物(以下に記載)、又はvi)v)の組み合わせであって、134a、1140、1225zc、1234ze-E及び1234ze-Z、1243zf、Z-1225ye、E-1225ye並びに追加の化合物の総量が0重量%より大きく1重量%未満である、組み合わせを更に含む。
【0025】
前述の本発明の組成物は、少なくとも1つの追加の化合物を更に含むことができる。一実施形態では、追加の化合物が、i)0ppmwより大きく最大25ppmw、最大250ppmw、場合によっては最大500ppmwの、1131a、1233xf、1224yd、1225zc、HFP、1122、1122a、E-1131、Z-1131、及び3,3,3-トリフルオロプロピンのうちの1つ以上、並びに、ii)最大1%の244bb、244cc、12、245cb、124、142b、254eb、347異性体(347mpy、347mef及びそれらの組み合わせを含む)のうちの1つ以上、からなる群から選択される少なくとも1つのメンバーを含む。この実施形態の一態様では、追加の化合物の量は、0ppmwより大きく約250ppmw未満の、1131a、1233xf、1224yd、HFP、1122、1122a、E-1131、Z-1131、及び3,3,3-トリフルオロプロピンのうちの1つ以上を含む。この実施形態の別の態様において、追加の化合物の量は、244bb、244cc、12、245cb、124、142b、254eb、347mpy及び347mefを含む347異性体のうちの1つ以上を0%より大きく約0.5%未満含む。
【0026】
本発明の一実施形態では、前述の組成物は、HFC-245cb、CFC-12、HFC-254eb、HCFC-1122、HCFC-124、HCFC-142b、HCFC-151a、HFC-152a、3,3,3-トリフルオロプロピン、1122a-Z及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーを含む追加の化合物を更に含む。この実施形態の一態様では、追加の化合物の量は、フルオロオレフィン化合物を0ppmwより大きく500ppmw未満含む。この実施形態の別の態様では、1140を含む追加の化合物の量は、0ppmwより大きく100ppmw未満である。この実施形態の更なる態様では、飽和化合物を含む追加の化合物の量は、0%より大きく1%未満、場合によっては0%より大きく0.5%未満である。
【0027】
本発明の別の実施形態では、前述の追加の化合物は、HCFC-243db、HCFC-244db、HFC-245cb、HFC-245fa、HCFO-1233xf、HCFO-1233zd、HCFC-253fb、HCFC-234ab、HCFC-243fa、エチレン、HFC-23、CFC-13、HFC-143a、HFC-152a、HFC-236fa、HCO-1130、HCO-1130a、HFO-1336、HCFC-133a、HCFC-254fb、HCFC-1131、HFC-1141、HCFO-1242zf、HCFO-1223xd、HCFC-233ab、HCFC-226ba、及びHFC-227caからなる群から選択される少なくとも1つの追加の化合物を含む追加の化合物を更に含む。この実施形態の一態様では、追加の化合物の量は、フルオロオレフィン化合物を0ppmwより大きく500ppmw未満含む。この実施形態の別の態様では、飽和化合物を含む追加の化合物の量は、0%より大きく1%未満、場合によっては0%より大きく0.5%未満である。
【0028】
本発明の一実施形態では、前述の組成物は、0より大きく約1未満の総重量パーセントの少なくとも1つの追加の化合物を含有する。本発明の別の実施形態では、前述の組成物は、0より大きく0.5未満、0より大きく0.2未満、及び場合によっては0より大きく0.1未満の総重量パーセントの少なくとも1つの追加の化合物を含む。
【0029】
前述の1234yf含有組成物の実施形態では、追加の化合物は様々な利点をもたらし得る。そのような利点の例としては、例えば、347異性体、1224yd、1233xf、244bb、244cc、245cb、HFP134a、1225ye及び1225zcなどの追加の化合物を使用する場合の可燃性の低下が挙げられる。追加の化合物が塩素化化合物を含む場合、追加の化合物は、金属表面に結合して不動態化することにより、改善された潤滑性を付与し、圧縮機を保護することを可能にする。更に、1224yd、1233xf、244bb及び244ccなどの特定の塩素化化合物は、改善された化学的安定性を付与することができ、連鎖移動剤として作用する重合を減少させることによって、1234yfの安定性を増加させることができる。更に、特定の追加の化合物は、潤滑油との改善された混和性を付与し、漏れ検出を助けることができる。特定の追加の化合物はまた、1234yfより低い沸点を有するトリフルオロプロピンなどの改善された冷凍性能を付与することができる。
【0030】
本発明の別の実施形態では、HCFC-244bbと、1120、1334、244cc、1233xf、1223xd、1224、225ba、226ca、233ab、233da、234bb、234da、235ca、235da、235ea、243ab、243db、244db、244eb、253db、253fb、1224yd-E、1233zd、235cb及び1224yd-Z、1326、1223異性体(1223xdを含む)及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの追加の化合物とを含む組成物が提供される。この実施形態の一態様では、本組成物は、0重量パーセント超から99.99重量パーセントの範囲でHCFC-244bbを含有し得る。この実施形態の一態様では、追加の化合物の量は、0重量%超から1重量%未満、場合によっては0重量%超から0.5重量%未満の範囲である。この実施形態の別の態様では、1224ydを含む追加の化合物の量は、0重量%超2重量%未満であり、場合によっては0重量%超1%重量%未満である。この実施形態の更なる態様では、1233xfを含む追加の化合物の量は、0重量%超5重量%未満であり、場合によっては0重量%超2.5%重量%未満である。
【0031】
一実施形態では、HCFC-244bb含有組成物は、組成物の成分をブレンドすることによって調製することができる。別の実施形態では、HCFC-244bb含有組成物は、i)アンチモン触媒を使用して液相中で1233xfをフッ化水素化し、ii)未反応のHF及びいくつかの有機副生成物を除去するために精製され、iii)任意選択で、組成物の追加の成分を244bb含有反応生成物にブレンドすること、によって製造される。
【0032】
発明の一実施形態では、244bbを含む組成物を、本発明の1234yf組成物を製造するために使用することができる。244bb含有組成物は、1234yfを製造するための任意の適切なプロセスで使用することができるが、そのようなプロセスの一例は、米国特許公開第20150315108号に開示されている。これらの開示は、参照により本明細書に援用される。
【0033】
前述の244bb含有組成物では、追加の化合物は様々な利点をもたらし得る。例えば、1120、1334、244cc、1223xd、1224、225ba、226ca、233ab、233da、234bb、234da、235ca、235da、235ea、243ab、243db、244db、244eb、253db、253fb、1224yd-E、1233zd、235cb、及び1224yd-Z、1326、1223異性体(1223xdを含む)のうちの少なくとも1つを含む追加の化合物は、溶媒として機能することができ、例えば、244bbの苛性による脱塩酸を増加させる溶媒として機能することができる。一態様では、少なくとも1つの追加の化合物を含む組成物は、更なる処理に使用するための費用効果の高い中間体を提供するか、又は別の化合物の担体として機能する(例えば、1233xfを含む追加の化合物を244bbと一緒に使用することができ、2.5重量%未満の1233xfは244bbの気相脱塩化に悪影響を及ぼさない)。
【0034】
HFO-1234yfを含む本明細書に開示される組成物は、低地球温暖化係数(GWP)熱伝達組成物、エアロゾル噴射剤、起泡剤、発泡剤、溶媒、洗浄剤、分散媒、置換乾燥剤、バフ研磨剤、重合媒体、ポリオレフィン及びポリウレタン用の膨張剤、気体誘電体、消火剤、並びに液体又は気体形態の火災鎮静剤として有用である。低GWP組成物とは、組成物の全体的なGWPが750未満、150未満、10未満、場合によっては約1未満であることを意味する。開示する組成物は、熱源からヒートシンクに熱を運ぶために使用される作動流体として作用することができる。そのような熱伝達組成物はまた、流体が相転移するサイクルにおける冷媒、つまり、液体から気体及びその逆に変化するサイクル内の冷媒としても有用であってよい。例示的な伝熱システムとしては、空調機、冷凍庫、冷蔵庫、ヒートポンプ、水冷器、満液式蒸発器チラー、直接膨張式チラー、ウォークインクーラー、ヒートポンプ、移動式冷蔵庫、移動式空調ユニット、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
本明細書で使用される場合、移動式冷凍装置、移動式空調又は移動式加熱装置は、道路、鉄道、海又は空気用の輸送ユニットに組み込まれた任意の冷凍、空調、又は加熱装置を指す。更に、可動式冷却又は空調装置ユニットは、任意の移動キャリアから独立しており、かつ「インターモーダル」システムとして知られている装置を含む。このようなインターモーダルシステムとしては、「コンテナ」(複合海上/陸上輸送)並びに「スワップボディ」(複合道路/鉄道輸送)が挙げられる。
【0036】
本明細書で使用される場合、定置型伝熱システムは、任意の種類の建物内に関連付けられた、又はその建物に取り付けられたシステムである。これらの定置型の用途は、定置型の空調及びヒートポンプであり得る(限定するものではないが、チラー、高温ヒートポンプ、住宅用、商業用、若しくは工業用の空気調節システムが挙げられ、また、窓用、ダクトレス、ダクト付き、パッケージ型端末、チラー、及び、屋上システムなどの外部にあるが建物に接続されているものが挙げられる)。固定型冷却用途において、開示される組成物は、商業用、工業用、又は住宅用冷却庫及び冷凍庫、製氷機、内蔵型クーラー及び冷凍庫、満液式蒸発器チラー、直接膨張式チラー、ウォークイン及びリーチインクーラー及び冷凍庫、並びに組み合わせシステムを含む設備において有用であり得る。いくつかの実施形態では、開示する組成物は、スーパーマーケットの冷蔵庫システムにおいて使用され得る。
【0037】
本発明の一実施形態では、1234yf含有組成物は、冷媒として使用され、少なくとも1つの潤滑剤を更に含む。冷媒組成物の潤滑剤成分は、冷蔵又は空調装置と共に使用するのに好適なものを含むことができる。これらの潤滑剤の中でも、クロロフルオロカーボン冷媒を利用する圧縮冷蔵装置において従来用いられているものである。このような潤滑剤及びその特性は、参照により本明細書に援用される1990 ASHRAE Handbook,Refrigeration Systems and Applications、第8章、表題「Lubricants in Refrigeration Systems」、8.1~8.21頁で論じられている。本発明の潤滑剤は、圧縮冷蔵潤滑の分野において「鉱油」として一般的に知られているものを含んでもよい。鉱油は、パラフィン(すなわち、直鎖状及び分枝状炭素鎖の飽和炭化水素)、ナフテン(すなわち、環状又は環構造飽和炭化水素、パラフィンであってもよい)、並びに芳香族(すなわち、交互二重結合を特徴とする1つ以上の環を含有する不飽和環状炭化水素)を含む。本発明の潤滑剤は、圧縮冷蔵潤滑の分野において「合成油」として一般的に知られているものを更に含む。合成油は、アルキルアリール(すなわち、直鎖状及び分枝状アルキルアルキルベンゼン)、合成パラフィン及びナフテン、シリコーン、並びにポリ-アルファ-オレフィンを含む。本発明の代表的な従来の潤滑剤は、市販されているBVM 100 N(BVA Oilsによって販売されているパラフィン系鉱油)、Crompton Co.によって商標名Suniso(登録商標)3GS及びSuniso(登録商標)5GSとして市販されているナフテン系鉱油、商標名Sontex(登録商標)372LTとしてPennzoilから市販されているナフテン系鉱油、商標名Calumet(登録商標)RO-30としてCalumet Lubricantsから市販されているナフテン系鉱油、商標名Zerol(登録商標)75、Zerol(登録商標)150、及びZerol(登録商標)500としてShrieve Chemicalsから市販されている直鎖状アルキルベンゼン、並びにHAB 22としてNippon Oilによって販売されている分枝状アルキルベンゼンである。
【0038】
別の実施形態では、本発明の冷媒組成物の潤滑剤成分は、ヒドロフルオロカーボン冷媒と共に使用するために設計されており、かつ圧縮冷蔵及び空調装置の動作条件下で本発明の冷媒及び阻害剤と混和できるものを含むことができる。このような潤滑剤及びその特性は、「Synthetic Lubricants and High-Performance Fluids」、R.L.Shubkin、Marcel Dekker編、1993年で論じられている。このような潤滑剤としては、Castrol(登録商標)100(Castrol、英国)などのポリオールエステル(POE)、Dow(Dow Chemicals、ミッドランド、ミシガン州)製のRL-488Aなどのポリアルキレングリコール(PAG)、及びポリビニルエーテル(PVE)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の潤滑剤は、所与の圧縮器の要件、及び潤滑剤が曝されるであろう環境を考慮することによって選択される。潤滑剤の量は、約1重量%から約50重量%、約1重量%から約20重量%、場合によっては約1重量%から約3重量%の範囲であり得る。具体的な一実施形態では、前述の冷媒組成物は、内燃機関を有する自動車用A/Cシステムで使用するためのPAG潤滑剤と組み合わされる。別の具体的な実施形態では、前述の冷媒組成物は、電気駆動系又はハイブリッド電気駆動系を有する自動車用ヒートポンプシステムで使用するためにPOE潤滑剤と組み合わされる。
【0039】
本発明の一実施形態では、1234yf含有組成物は、有効量の少なくとも1つの阻害剤を更に含む。「阻害剤」とは、ヒドロフルオロオレフィンのオリゴマー又はポリマーへの変換を排除とはいかないまでも低減する、本発明による少なくとも1つの化合物を指すことを意味する。オリゴマー化又はホモ重合反応は比較的高い温度により加速され得るが、このような反応はまた、反応開始剤(例えば、汚染物質)の濃度及び種類に応じて周囲条件下で発生し得る。阻害剤は、冷媒を安定化させるためのラジカル阻害剤として機能することができ、冷凍性能又は冷媒組成物の冷凍機油及び部品に対する適合性に影響を与えない。安定化された冷媒組成物は、冷却システムにおいて、そして、より高い地球温暖化係数を有する既存の冷媒の代替品として有用であり得る。適切な阻害剤の例は、環状モノテルペンを含む炭化水素、テルペン、α-トコフェロールを含むトコフェロールを含む親油性有機化合物、フェノール、ベンゼン-1,4-ジオールなどの化学式C6H4(OH)2を有する芳香族有機化合物からなる群から選択される少なくとも1つのメンバーを含む。本発明の別の実施形態では、1234yf含有組成物を冷媒として使用する場合、国際公開第2019213004号、国際公開第2020222864号及び国際公開第2020222865号に記載されているように、液体1234yf含有組成物及び潤滑剤中に阻害剤が存在する。そして、これらの開示は、参照により本明細書に援用される。本組成物は、先に列挙したいずれかの安定剤の0.001重量%から1重量%の任意の量の阻害剤を含み得、ほとんどの場合、好ましくはd-リモネンを含み得る。
【0040】
本発明の別の実施形態では、本発明の1234yf含有組成物は、冷媒組成物を得るために、ヒドロフルオロオレフィン、ヒドロフルオロ炭素、炭化水素及び二酸化炭素のうちの少なくとも1つとブレンドされる。一態様では、冷媒組成物は、本発明の前述のHFO-1234yf含有組成物のいずれかと、HFO-1234ze;HFC-32;HFC-125;HFC-32及びHFC-125;HFC-134a;HFC-152a;HFC-161、HFC-236fa;HFC-227ea;HFO-1225ye及びHFC-32;HFO-1225ye及びHFC-134a;HFO-1225ye、HFC-134a、及びHFC-32;HFO-1225ye及びHFO-1234yf;及びHFO-1225ye、HFO-1225ye、HFO-1225ye及びHFC-125からなる群から選択される少なくとも1つのメンバーと、を含む。別の態様では、冷媒組成物は、米国特許第10533120号に開示されている組成物を含み、本発明の前述のHFO-123yf含有組成物のいずれかが、米国特許第10533120号に開示されている組成物の1234yf成分として使用される。そして、これらの開示は、参照により本明細書に援用される。ブレンドされるヒドロフルオロオレフィン、炭化水素、炭化水素及び二酸化炭素の量は、約1重量%から約90重量%、約5重量%から約75重量%の範囲であり得、いくつかの場合、約10重量%から約50重量%の範囲であり得る。1つの特定の態様では、本発明の組成物は、1225zc、1234ze、1243zf、1140、Z-1225ye、E-1225ye及びHFC134aからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーであって、メンバーの総量が0重量%より大きく1重量%未満である、メンバーと、約1重量%から約60重量%の範囲、約5重量%から70重量%の範囲、及び約20重量%から40重量%の範囲の量の32と、残部である1234yfと、を含む。別の特定の態様では、本発明の組成物は、1225zc、1234ze、1243zf、1140、Z-1225ye、E-1225ye及びHFC134aからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーであって、メンバーの総量が0重量%より大きく1重量%未満である、メンバーと、約1重量%から約70重量%の範囲、約5重量%から70重量%の範囲、及び約20重量%から40重量%の範囲の量の32と、1重量%から約70重量%の範囲、約5重量%から70重量%の範囲、及び約20重量%から50重量%の範囲の量の125と、残部である1234yfと、を含む。別の特定の態様では、本発明の組成物は、1225zc、1234ze、1243zf、1140、Z-1225ye、E-1225ye及びHFC134aからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーであって、メンバーの総量が0重量%より大きく1重量%未満である、メンバーと、約1重量%から約40重量%の範囲、約1重量%から25重量%の範囲、及び約1重量%から10重量%の範囲の量の161と、残部である1234yfと、を含む。
【0041】
別の実施形態では、前述の本発明の1234yf組成物のいずれかを1234zeとブレンドする。一態様では、本組成物は1重量%から99.5重量%の1234yf又は1234zeと、0重量%より大きく1重量%未満の、1225zc、1243zf、1140、Z-1225ye、E-1225ye及びHFC134aからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーとを含む。特定の一態様では、本組成物は、少なくとも98重量%から99.9重量%の1234zeであって、典型的には、少なくとも約99.5重量%の1234zeと、1234yf、1225zc、1234ze、1243zf、1140、Z-1225ye、E-1225ye及びHFC134aを含む残部と、を含む。本開示の組成物を構成する化合物を表1に定義する。
【0042】
【0043】
【0044】
HCFC-244bb含有組成物の脱塩化水素
いくつかの実施形態では、HCFC-244bbの脱塩化水素を使用して、HFO-1234yfを調製する。本発明の一態様では、本発明の244bb含有組成物を脱塩酸して、HFO1234yf含有組成物を生成する。
【0045】
一実施形態では、本発明のHCFC-244bb含有組成物のHFO1234yfへの脱塩化水素は、気相中で行われる。
【0046】
一実施形態では、気相脱塩化水素は、触媒の存在下で行われる。一実施形態では、触媒は、炭素及び/又は金属系触媒から選択される。一実施形態では、触媒は、活性炭、ニッケル系触媒、パラジウム系触媒、又はこれらの触媒の任意の組み合わせから選択することができる。一実施形態では、触媒は、Niメッシュ、パラジウム炭素、パラジウム酸化アルミニウム、又はそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0047】
一実施形態では、本発明のHFO-1234yf含有組成物は、本発明のHCFC-244bb含有組成物の熱脱塩化水素によって調製される。一実施形態では、この反応は触媒の非存在下で起こる。一実施形態では、HCFC-244bbは、HCFC-244bbの熱脱塩化水素に影響を及ぼすのに十分高い温度に維持される1つ以上の反応容器に導入される。一実施形態では、国際公開第2020018764(A1)号に記載されているように、複数の反応器を使用することができる。そして、これらの開示は、参照により本明細書に援用される。一実施形態では、温度は、HCFC-244bbの熱脱塩化水素に、少なくとも5%、場合によっては少なくとも10%、典型的には少なくとも15%、また場合によっては少なくとも25%の転化率(例えば、複数の反応器を使用する場合、各反応器で5から10%の転化率)をもたらすのに十分高い。別の実施形態では、温度は、HCFC-244bbの熱脱塩化水素に少なくとも40%の転化率をもたらすのに十分高い。更に別の実施形態では、温度は、HCFC-244bbの熱脱塩化水素に少なくとも80%の転化率をもたらすのに十分高い。更に別の実施形態では、温度は、HCFC-244bbの熱脱塩化水素に、少なくとも12時間の連続運転の間、少なくとも15%、場合によっては少なくとも30%、50%及び80%の転化率をもたらすのに十分高い。一実施形態では、未転化の244bbを1234yf生成物から分離し、反応器にリサイクルすることができる。
【0048】
一実施形態において、本発明のHCFC-244bb含有組成物は、約350から約550℃の範囲、場合によっては約420から約520℃の範囲の温度に維持される反応容器内に反応容器内に導入される。別の実施形態において、反応容器の温度は、約500℃から約650℃の範囲に維持される。更に別の実施形態では、反応容器の温度は、80%以上の選択性をもってHCFC-244bbをHFO-1234yfへと熱分解するのに十分高い温度に維持される。更に別の実施形態では、反応容器の温度は、85%の選択性、場合によっては約95から約99%の選択性をもって、HCFC-244bbをHFO-1234yfへと熱分解するのに十分高い温度に維持される。
【0049】
一実施形態では、反応ゾーンは、耐腐食性の材料から構成された反応容器である。一実施形態では、これらの材料は、合金、例えば、Hastelloy(登録商標)などのニッケル基合金、Special Metals Corp.からInconel(登録商標)の商標で市販されているニッケル-クロム合金(以下、「Inconel(登録商標)」)、若しくはSpecial Metals Corp.(ニューハートフォード、ニューヨーク州)からMonel(登録商標)の商標で市販されているニッケル-銅合金を含み、又は容器は、フルオロポリマーライニングを有する。
【0050】
一実施形態では、本発明のHCFC-244bb含有組成物を予熱し、気化器内で約30℃から約100℃の温度まで気化させる。別の実施形態では、HCFC-244bbは、気化器内で約60℃から約90℃の温度に予熱する。圧力は、約50から約150psigであり得、場合によっては約60から約110psigの範囲であり得る。244bbの蒸気は、1つ以上の熱交換器内で、かつ/又は電気ヒータを用いて反応器温度まで加熱することができる。本実施形態の一態様では、反応器からの高温流出ガスを使用して、244bbの供給ガスを加熱することができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、希釈ガスがHCFC-244bbのキャリアガスとして使用される。一実施形態では、キャリアガスは、窒素、アルゴン、ヘリウム、又は二酸化炭素から選択される。この実施形態の一態様では、反応生成物として提供されたHClが希釈ガスとして使用される。
【0052】
本発明の別の実施形態は、気相及び/又は液相中の酸素及び/又は水濃度が約25℃の温度で約3体積ppmから約3,000体積ppm未満、約5体積ppmから約150体積ppm未満、場合によっては約5体積ppmから約75体積ppm未満の範囲である密閉コンテナ内で気相及び/又は液相中に前述の1234yf含有組成物を保管することに関する。この実施形態の一態様では、冷媒は、本発明の1234yf含有組成物を含み、更なる態様では、冷媒組成物は、約0重量%より大きく1重量%未満の前述の追加の化合物の任意の組み合わせを更に含む。
【0053】
前述の組成物を保管するためのコンテナは、気相及び液相を維持しながら組成物を密封することができる任意の好適な材料及び設計で構築することができる。好適なコンテナの例は、タンク、充填シリンダー、及び二次充填シリンダーなどの耐圧コンテナを含む。コンテナは、炭素鋼、マンガン鋼、クロム-モリブデン鋼、特に低合金鋼、ステンレス鋼、場合によってはアルミニウム合金などの任意の好適な材料から構築することができる。これらのコンテナに貯蔵された1234yf含有組成物は、伝熱システムに移送され、作動流体として使用され得る。
【0054】
いかなる理論又は説明にも拘束されることを望むものではないが、当業者は、本明細書の説明を用いて、本発明を最大限に利用することができると考えられる。したがって、以下の特定の実施形態は、単なる例示であると解釈され、どのような形であれ本開示のその余の部分又は添付する特許請求の範囲を拘束するものではない。以下の実施例は、本発明の特定の実施形態及び態様を例示するものであり、添付の特許請求の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0055】
製品分析の一般手順
以下の一般的な手順は、フッ素化反応の生成物を分析するために使用される方法を例示するものである。その方法が、本組成物の成分を適切に分離し、分離された成分を検出し、かつ検出された成分について潜在的に重複するシグナルを分解することができる限り、他の方法をフッ素化学組成物を分析するために使用することができる。全反応器流出物の一部を、水素炎イオン化型検出器(FID)及び/又は質量分析計検出器(GC/MS)検出器を備えたガスクロマトグラフを使用して有機生成物分析のためにサンプリングした。ガスクロマトグラフィーでは、2つのGCカラム、RTX-1及びGasproカラムを利用した。
【0056】
(実施例1)
244bb組成物を、前述の生成物分析を使用して分析した。分析結果を以下の表1に示す。
【0057】
【0058】
本実施例のHCFC-244bb含有組成物は、i)アンチモン触媒を用いて液相中で1233xfをフッ化水素化し、ii)未反応のHF及び有機副生成物を除去するために精製することによって生成される。精製された生成物244bbを容器に貯蔵し、分析のために容器から試料を取り出した。
【0059】
(実施例2)
貯蔵容器から得た液体244bbを気化させ、更に気化した244bbを反応温度まで加熱し、次いで、反応器システムに供給して脱塩化水素を行ってHFO-1234yf含有組成物を生成することによって、実施例1の組成物をHFO-1234yfに変換した。液体244bbをリサイクルし、気化器の前に貯蔵容器から得られた244bbと合わせた。前述の生成物分析に従ってこの組成物を分析した。このプロセスを連続的に実施し、表1及び表2の供給原料及び生成物の組成をそれぞれ同時に分析した。HFO-1234yf含有組成物の分析の結果を以下の表2に示す。
【0060】
【0061】
(実施例3)
実施例2で生成したHFO-1234yf含有組成物の冷凍性能を、ThermPyサイクル条件(ThermPyはRefprop10に基づく冷媒性能プログラム)を用いて評価した。評価結果を下記表3に示す。
【0062】
ThermPyサイクル条件-中温冷凍
凝縮器の温度=40℃
蒸発器の温度=-7℃
サブクール量=0K
戻りガス温度=18℃
等エントロピー効率=70%
【0063】
【0064】
【0065】
表3は、本発明の組成物が冷媒としての使用に適していることを示している。表3は、更に、本発明の組成物がHFO-1234yfに相当する冷凍性能を有することを示している。したがって、本発明の組成物は、比較的純粋なHFO-1234yfを代替するのに適している。
【0066】
(実施例4)
32をブレンドした実施例2で生成したHFO-1234yf含有組成物の冷凍性能を、ThermPyサイクル条件(ThermPyはRefprop10に基づく冷媒性能プログラム)を用いて評価した。評価結果を表4、表5及び表6に示す。
【0067】
ThermPyサイクル条件-空調
凝縮器の温度=46.1℃
蒸発器の温度=10℃
サブクール量=8.3K
過熱量=11.1K
等エントロピー効率=70%
【0068】
【0069】
【0070】
ThermPyサイクル条件-中温冷凍
凝縮器の温度=40℃
蒸発器の温度=-7℃
サブクール量=0K
戻りガス温度=18℃
等エントロピー効率=70%
【0071】
【0072】
【0073】
ThermPyサイクル条件-中温冷凍
凝縮器の温度=40℃
蒸発器の温度=-7℃
サブクール量=0K
戻りガス温度=18℃
等エントロピー効率=70%
【0074】
【0075】
【0076】
表4、表5及び表6は、本発明の組成物が、有用な冷媒を得るにあたって32とブレンドするのに適していることを示している。
【0077】
本発明を好ましい実施形態を参照して説明してきたが、当業者には、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更を行うことができ、その要素の代わりに同等物を使用することができることが理解されるであろう。加えて、特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させるために、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく多くの修正を行うことができる。したがって、本発明は、本発明を実施するために企図される最良の形態として開示されている特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、添付の特許請求の範囲内に含まれる全ての実施形態を含むことが意図される。