(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】堆積物水洗装置
(51)【国際特許分類】
B65G 45/26 20060101AFI20250311BHJP
B65G 45/22 20060101ALI20250311BHJP
B08B 3/02 20060101ALI20250311BHJP
【FI】
B65G45/26 Z
B65G45/22 C
B08B3/02 E
(21)【出願番号】P 2023191147
(22)【出願日】2023-11-08
【審査請求日】2023-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000253226
【氏名又は名称】濱田重工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 正則
(72)【発明者】
【氏名】大場 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】橋本 弘栄
(72)【発明者】
【氏名】中村 洋佑
【審査官】森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2023/210688(WO,A1)
【文献】特開平08-133452(JP,A)
【文献】特開平08-165016(JP,A)
【文献】特開2008-133058(JP,A)
【文献】特開2007-269443(JP,A)
【文献】特開2015-016959(JP,A)
【文献】特開平11-246029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 45/00 - 45/26
B08B 3/00 - 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放水銃と放水銃自動俯仰手段から構成され、コンベアの下方に堆積する堆積物を放水銃からの放水によって押し流す堆積物水洗装置であって、
前記放水銃自動俯仰手段は、前記コンベアの下方に設置される回転パイプと、該回転パイプを所定角度範囲で回動させる駆動手段を有し、
前記回転パイプの中心線は、前記コンベアの搬送方向に平行な線と直交し、かつ、前記コンベアの下にある床面と平行であり、
前記放水銃は、前記回転パイプ又は前記回転パイプと連動する連動部材に固定され、
前記駆動手段は、前記回転パイプに固定され上部開口が設けられている傾動式水溜と、該傾動式水溜に給水する補給水配管を有し、
前記放水銃の先端は、前記回転パイプの回動に伴って下端位置と上端位置との間で昇降し、前記放水銃の後端と先端を通る直線は、前記下端位置と上端位置との間において前記床面と交差
し、前記傾動式水溜が空の状態では前記下端位置、前記傾動式水溜が満水の状態では前記上端位置にあり、
前記傾動式水溜は、満水の状態となった直後に前記上部開口から水が排出されて空の状態となり、
前記回転パイプは、前記放水銃の先端を前記下端位置に下降させる方向に付勢する弾性体を備えている
ことを特徴とする堆積物水洗装置。
【請求項2】
前記放水銃は、前記回転パイプの中心線と平行な面に沿って首振り可能である
ことを特徴とする請求項1に記載の堆積物水洗装置。
【請求項3】
前記駆動手段は、前記下端位置を調整する下端位置調整部を有している
ことを特徴とする請求項
1又は2に記載の堆積物水洗装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベアから落下した鉱石、石炭、コークス、石灰などを洗い流す堆積物水洗装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所では、製銑原料などの搬送用としてベルトコンベアが多用されているが、無端ベルトを回転させる構造上、必然的にベルトコンベア下の床面には、裏ベルトに付着した粉の落下による落鉱粉が、ベルトの引回しに沿って帯のように堆積される。堆積した落鉱粉は、二次飛散して工場内の環境を悪化させる要因となるので、作業者によるスコップ作業又は小型ショベル車により回収し、トラックに積んでヤードまで搬送している。
しかしながら、この落鉱粉処理作業には、多くの作業者が必要で作業性が悪いために、従来これを解消する技術として、以下のような技術が特許出願されている。
例えば、特許文献1(特開平8-133452号公報)には、ベルトコンベアのヘッド側で裏ベルトを反転させ、その後、反転された裏ベルトをベルトコンベアのテール側で正転させる一方、裏ベルトのヘッド側の反転領域下及びテール側の正転領域下の床面に落ちた落鉱粉を、自動水洗により集水ピットに集め、塊粉分離後に各々回収するベルトコンベアの落鉱処理方法が記載されている(特に、請求項1及び
図1を参照)。
そして、実施例においては、水洗ノズル(30)の設置位置を、通常、落鉱粉(16)の堆積場所から5mほど離れたところとする点、水洗ノズル(30)から吹き出される水の圧力を、5kg/cm
2とする(3~6kg/cm
2が好ましい)点及び良好な流し落としができるように、床面は集水ピット(31)側へ数度だけ下方傾斜させる点等が記載されている(特に、段落0013及び
図1を参照)。
【0003】
また、特許文献2(特開平8-165016号公報)には、ベルトコンベアの裏ベルトから床面に落下した落鉱粉の堆積状況を、作業者がカメラにより観察し又はコンピュータにより画像解析して落鉱量を判断し、落鉱量を[落鉱量(kg)×製鉄原料の比重係数×10
4]/[水洗水量(リットル/min)×水洗水流速(m/sec)
2]の式に代入して滞留指数REIを求め、得られたREIから、経験則により床面角度毎に作成した製鉄原料のREIと最適水洗時間との関係を示すグラフを用いて最適水洗時間を求め、その時間に基づいて、最適な水洗パターンと水洗ノズル(13)を指定して自動水洗する水洗式落鉱処理方法が記載されている(特に、請求項1、2及び段落0023を参照)。
そして、実施例においては、水洗ノズル(13)は、洗浄水パイプ(20)に電磁弁(21)を介して取り付けられており、そのノズル方向は集水ピット(12)側へ向けられている点、落鉱粉(22)が堆積する床面は、傾斜がなくても、または水洗性を良くするために5~10度前後の傾斜があってもよい点及び床材質はコンクリートでもSUSでもよい点等が記載されている(特に、段落0015及び
図1を参照)。
さらに、本出願人らの出願に係る特許文献3(特開2015-16959号公報)には、無端ベルトコンベアから落下し落下物受板(7)に堆積した堆積物の除去装置であって、回転軸を有する中空のローラー(14)を有し、ローラー(14)は上方が開放しており、水を注入し水面がローラー(14)の上面に達したら回転して水を排水し、その後注水開始時の位置に戻る自動ローラー傾動式水洗浄装置が記載されている(特に、要約及び
図3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-133452号公報
【文献】特開平8-165016号公報
【文献】特開2015-16959号公報(特許第6195751号公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載されているベルトコンベアの落鉱処理方法においては、水洗ノズル(30)の水平および垂直方向の角度は一定であり、吐出圧力を調整する機構もないため、限られた範囲の落鉱粉(16)しか水洗できず、また、床面は集水ピット(31)側に傾斜させるとされているため、既存の設備に導入する場合には使用範囲が限定される。
そして、特許文献2に記載されている水洗式落鉱処理方法においては、経験則により作成したグラフ(
図3)を用いて最適水洗時間を求めるとされているが、経験則がどのようなものか解らず、また、実施例には、求められた最適水洗時間に基づいて、電磁弁(21)の開閉サイクルと、最適な水洗パターンや水洗ノズル(13)を指定して自動水洗すると記載されているが(段落0020,0025を参照)、どのような方法で電磁弁(21)の開閉サイクル及び最適な水洗パターンや水洗ノズル(13)を指定しているのか不明である。
さらに、特許文献3に記載されている自動ローラー傾動式水洗浄装置は、ローラー(14)によって間歇的に水を排水するだけであるため、傾斜した落下物受板(7)が必要である。
本発明は、このような問題を解決するために、限られた範囲に留まらず、より広い範囲を繰り返し水洗することができる堆積物水洗装置の提供を第1の課題としており、電気配線や制御・監視機能が不要で、かつ、汎用タイプの放水銃を機械的に上下・左右方向へ動かせる、安価で使い勝手の良い堆積物水洗装置の提供を第2の課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための請求項1に係る発明は、
放水銃と放水銃自動俯仰手段から構成され、コンベアの下方に堆積する堆積物を放水銃からの放水によって押し流す堆積物水洗装置であって、
前記放水銃自動俯仰手段は、前記コンベアの下方に設置される回転パイプと、該回転パイプを所定角度範囲で回動させる駆動手段を有し、
前記回転パイプの中心線は、前記コンベアの搬送方向に平行な線と直交し、かつ、前記コンベアの下にある床面と平行であり、
前記放水銃は、前記回転パイプ又は前記回転パイプと連動する連動部材に固定され、
前記駆動手段は、前記回転パイプに固定され上部開口が設けられている傾動式水溜と、該傾動式水溜に給水する補給水配管を有し、
前記放水銃の先端は、前記回転パイプの回動に伴って下端位置と上端位置との間で昇降し、前記放水銃の後端と先端を通る直線は、前記下端位置と上端位置との間において前記床面と交差し、前記傾動式水溜が空の状態では前記下端位置、前記傾動式水溜が満水の状態では前記上端位置にあり、
前記傾動式水溜は、満水の状態となった直後に前記上部開口から水が排出されて空の状態となり、
前記回転パイプは、前記放水銃の先端を前記下端位置に下降させる方向に付勢する弾性体を備えていることを特徴としている。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の堆積物水洗装置において、
前記放水銃は、前記回転パイプの中心線と平行な面に沿って首振り可能であることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明の堆積物水洗装置において、
前記駆動手段は、前記下端位置を調整する下端位置調整部を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明の堆積物水洗装置は、放水銃と放水銃自動俯仰手段から構成され、
放水銃自動俯仰手段は、コンベアの下方に設置される回転パイプと、該回転パイプを所定角度範囲で回動させる駆動手段を有し、回転パイプの中心線は、コンベアの搬送方向に平行な線と直交し、かつ、コンベアの下にある床面と平行であり、
放水銃は回転パイプ又は回転パイプと連動する連動部材に固定され、放水銃の先端は、回転パイプの回動に伴って下端位置と上端位置との間で昇降し、放水銃の後端と先端を通る直線は、下端位置と上端位置との間において床面と交差するので、限られた範囲に留まらず、より広い範囲を繰り返し水洗することができる。
また、駆動手段は回転パイプに固定され上部開口が設けられている傾動式水溜と、該傾動式水溜に給水する補給水配管を有し、放水銃の先端は傾動式水溜が空の状態では下端位置、傾動式水溜が満水の状態では上端位置にあり、傾動式水溜は、満水の状態となった直後に上部開口から水が排出されて空の状態となり、回転パイプは、放水銃の先端を下端位置に下降させる方向に付勢する弾性体を備えている。すなわち、駆動手段を動作させるための電気配線や制御・監視機能無しで、放水銃の先端を機械的に昇降させることができるので、安価で使い勝手の良い堆積物水洗装置を提供できる。
【0011】
請求項2に係る発明の堆積物水洗装置は、請求項1に係る発明の堆積物水洗装置が奏する上記の効果に加え、放水銃が回転パイプの中心線と平行な面に沿って首振り可能となっており、放水銃の先端を左右方向へ所定角度範囲で往復旋回させることができるので、さらに広い範囲を繰り返し水洗することができる。
【0013】
請求項3に係る発明の堆積物水洗装置は、請求項1又は2に係る発明の堆積物水洗装置が奏する上記の効果に加え、駆動手段が下端位置を調整する下端位置調整部を有しているので、傾動式水溜が満水の状態となった直後に上部開口から水が排出されて空の状態となり、放水銃の先端が下端位置に戻る際に下端位置を超えて移動することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】実施例1に係る堆積物水洗装置の動作説明図。
【
図4】実施例2に係る堆積物水洗装置の動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施例によって、本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は実施例1に係る堆積物水洗装置の正面図である。
図1に示すように、実施例1に係る堆積物水洗装置は、ベルトコンベアから落下しコンベア下の床面に堆積した落鉱粉(図示せず)を、放水によって押し流す放水銃1と、放水銃1を自動的に俯仰させ、ノズル2の先端を下端位置と上端位置との間で昇降させる放水銃自動俯仰手段4から構成されている。
そして、放水銃1は、
図1の中央下側に示すように、コンベア下の床面に向かって比較的高圧の水を放水するノズル2と、ノズル2に給水する給水管3からなり、給水管3内の水圧は通常0.5mPa程度である。
【0017】
放水銃自動俯仰手段4は、
図1に示すように、以下の構成を備えている。
(A)ベルトコンベア下の床面に設置される架台5(幅40cm、高さ50cm、奥行40cm)。
(B)架台5に固定される回転パイプ6(長さ40cm)。
回転パイプ6は、架台5に回転しないように固定される一端側保持部7及び他端側保持部8と、一端側保持部7と他端側保持部8との間に回動可能に保持される回動筒9から構成されている。また、回動筒9の中央部は大径部13、両端部は一端側保持部7及び他端側保持部8において回動可能に保持される小径部(
図1には現れていない。)となっており、その中心線は、ベルトコンベアの搬送方向に平行な線と直交し、かつ、ベルトコンベア下の床面と平行になるように配置される。
(C)回動筒9の一端側に配置されるねじりバネ10(直径2cm、長さ7.5cm)。
ねじりバネ10の一端側は、バネ固定部11の他端側12に溶接され、バネ固定部11は、一端側保持部7の周囲のいずれかの位置に固定できるようになっている。
また、ねじりバネ10の他端側は、回動筒9の大径部13の端部に溶接され、回動筒9を基準位置に戻す方向(回動筒9の正面側を下降させる方向)に付勢する。
(D)回動筒9の正面側にノズル2の先端を堆積物水洗装置の正面側に突出する状態で放水銃1を固定する放水銃固定具14。
【0018】
(E)回動筒9を所定角度範囲で回動させる駆動手段15。
駆動手段15は、回動筒9の大径部13に固定され堆積物水洗装置の背面側に突出する一端側リンク部材16及び他端側リンク部材17と、一端側リンク部材16及び他端側リンク部材17の背面側端部に固定保持される傾動式水溜18(幅26cm、高さ14cm、奥行19cm)と、傾動式水溜18の上部に設けてある上部開口19(幅20cm、奥行15cm)から給水する補給水配管20等から構成されている。
そして、一端側リンク部材16及び他端側リンク部材17は、それぞれ長さを調整するための一端側長さ調整部21及び他端側長さ調整部22を有し、傾動式水溜18の正面側には、傾動式水溜18に溜まった水が排出され始める角度、すなわち、傾動式水溜18が満水の状態になる角度を調整するためのカウンターウェイト23が設けられ、補給水配管20は、給水管3の途中から枝分かれして先端部が上部開口19の真上に位置しているとともに、基部には給水量を調整するためのバルブ24が設けられている。
(F)ノズル2の先端の下端位置を調整する下端位置調整部。
下端位置調整部は、他端側保持部8の周囲のいずれかの位置に固定できノズル2の先端の下端位置を決定するストッパ25と、回動筒9の他端側保持部8側に設けられ傾動式水溜18が上昇したときにストッパ25にぶつかる突起部26からなっている。
【0019】
図2は実施例1に係る堆積物水洗装置の動作説明図である。
実施例1に係る堆積物水洗装置は、鹿威しと同じ原理で
図2(A)~(C)の状態を繰り返すことにより、回動筒9を所定角度範囲で回動させて放水銃1を俯仰させ、ノズル2の先端が
図2(A)に示す下端位置と
図2(C)に示す上端位置の間を往復させることができるようになっている。
そして、
図2(A)~(C)の各状態に関する詳しい説明は以下のとおりである。
<
図2(A)の状態>傾動式水溜18が空又はほぼ空の状態(以下「空の状態」という。)となり、ねじりバネ10の付勢力(回動筒9の正面側を下降させる方向)によって上昇し、突起部26がストッパ25にぶつかって停止している状態である。そして、この状態では、ノズル2の先端が下端位置となるので、ノズル2から放水される水は、コンベア下の床面における架台5に最も近い位置に散らばっている落鉱粉を押し流す。
<
図2(B)の状態>補給水配管20から上部開口19を通して傾動式水溜18に給水され、溜まった水の重量が増加することによって、ねじりバネ10の付勢力に抗して傾動式水溜18が下降し、一端側リンク部材16及び他端側リンク部材17が水平になっている状態である。そして、この状態では、ノズル2の先端が中間位置となるので、ノズル2から放水される水は、コンベア下の床面における架台5から少し離れた位置に散らばっている落鉱粉及びノズル2からの放水により押し流された落鉱粉を押し流す。
<
図2(C)の状態>補給水配管20からさらに給水され、傾動式水溜18が満水となっている状態である。そして、この状態では、ノズル2の先端が上端位置となるので、ノズル2から放水される水は、コンベア下の床面における架台5から離れた位置に散らばっている落鉱粉及びノズル2からの放水により押し流された落鉱粉をさらに押し流す。
そして、
図2(C)の状態となった直後に、傾動式水溜18に溜まっていた水は、上部開口19から排出され始め、回動筒9の回転軸にかかる背面側のモーメントが正面側のモーメントを超える状態となって、傾動式水溜18は一時的にさらに下降し、溜まっていた水が上部開口19から流出して空の状態となる。そうすると、回動筒9の回転軸にかかる正面側のモーメントが背面側のモーメントを超える状態となるので、傾動式水溜18は急速に上昇し、突起部26がストッパ25にぶつかって
図2(A)の状態に戻る。
【0020】
図3は実施例1に係る堆積物水洗装置で利用する放水銃1の外観を示す図である。
放水銃1は一般に市販されているものであるため詳細な説明は省略するが、給水管3の中心線を軸として左右に所定角度範囲で往復旋回するように動き、概ね回転パイプ6の中心線と平行な面に沿って首振り可能であるので、放水銃自動俯仰手段4によるノズル2の先端の昇降と放水銃1の往復旋回が組み合わさって、ノズル2の先端からの放水範囲を従来の堆積物水洗装置より大幅に拡大できる。
【実施例2】
【0021】
図4は実施例2に係る堆積物水洗装置の動作説明図である。
実施例2に係る堆積物水洗装置は、実施例1に係る堆積物水洗装置における放水銃自動俯仰手段4を放水銃自動俯仰手段34としたものであり、以下の構成を備えている。
(G)ベルトコンベア下の床面に設置される架台5(実施例1と同様の構造)。
(H)架台5に固定される回転パイプ6(実施例1と同様の構造だが、実施例2ではねじりバネ10及び下端位置調整部が不要なので、一端側保持部7及び他端側保持部8に対して回動可能に保持される小径部の長さは短くても良い)。
(I)回動筒9の正面側に、ノズル2の先端を堆積物水洗装置の正面側に突出する状態で放水銃1を固定する放水銃固定具14(実施例1と同様の構造)。
(J)回動筒9を所定角度範囲で回動させる駆動手段35。
駆動手段35は、
図4に示すように、回動筒9に固定され堆積物水洗装置の背面側に突出するリンク部材36と、リンク部材36の背面側端部に回動可能に接続される接続部材37と、接続部材37の背面側端部に回動可能に接続されるロッド38を往復動させるロッド式油圧シリンダ39から構成されている。
すなわち、実施例2の放水銃自動俯仰手段34は、実施例1の放水銃自動俯仰手段4における傾動式水溜18等を用いる駆動手段15に代えて、ロッド式油圧シリンダ39等を用いる駆動手段35とした点が主な相違点であり、その他の構成は、ねじりバネ10及び下端位置調整部(ストッパ25と突起部26)を備えていないものの、基本的な構造は実施例1に係る堆積物水洗装置と同様なので、駆動手段35以外の構成については、
図4でも
図1、2と同じ番号を用いて説明する。
【0022】
実施例2に係る堆積物水洗装置は、実施例1に係る堆積物水洗装置と同様に、
図4(A)~(C)の状態を繰り返すことにより、回動筒9を所定角度範囲で回動させて放水銃1を俯仰させ、ノズル2の先端が
図4(A)に示す下端位置と
図4(C)に示す上端位置の間を往復させることができるようになっている。
そして、
図4(A)~(C)の各状態に関する詳しい説明は以下のとおりである。
<
図4(A)の状態>ロッド38が最も背面側に移動した状態であって、リンク部材36の背面側端部が最も上昇している状態(以下「第1の状態」という。)である。そして、第1の状態では、ノズル2の先端が下端位置となるので、ノズル2から放水される水は、コンベア下の床面における架台5に最も近い位置に散らばっている落鉱粉を押し流す。
なお、第1の状態において、リンク部材36の両端部を結ぶ直線と接続部材37の両端部を結ぶ直線の交差する角度は上方側が180度未満になるように設定してある。
<
図4(B)の状態>ロッド式油圧シリンダ39の作動によってロッド38が少し正面側に移動し、リンク部材36が水平になっている状態(以下「第2の状態」という。)である。そして、第2の状態では、ノズル2の先端が中間位置となるので、ノズル2から放水される水は、コンベア下の床面における架台5から少し離れた位置に散らばっている落鉱粉及びノズル2からの放水により押し流された落鉱粉を押し流す。
<
図4(C)の状態>ロッド式油圧シリンダ39の作動によってロッド38が最も正面側に移動し、リンク部材36の背面側端部が最も下降している状態(以下「第3の状態」という。)である。そして、第3の状態では、ノズル2の先端が上端位置となるので、ノズル2から放水される水は、コンベア下の床面における架台5から離れた位置に散らばっている落鉱粉及びノズル2からの放水により押し流された落鉱粉を押し流す。
そして、
図4(C)の状態となった後に、ロッド38を背面側に移動させると、リンク部材36の背面側端部は上昇に転じ、
図2(B)の状態を経て
図2(A)の状態に戻る。
したがって、実施例2に係る堆積物水洗装置においても、放水銃自動俯仰手段34によるノズル2の先端の昇降と放水銃1の往復旋回が組み合わさって、ノズル2の先端からの放水範囲を従来の堆積物水洗装置より大幅に拡大できる。
【0023】
実施例1及び2の変形例を列記する。
(1)実施例1及び2においては、ベルトコンベアから落下し堆積した落鉱粉を自動水洗する水洗装置について説明したが、ベルトコンベアから落下し堆積した落鉱粉に限らず、チェーンコンベアやローラーコンベア等のコンベアから落下し堆積した堆積物の水洗装置として利用することもできる。そして、実施例1についての説明で示した寸法は、コンベアの種類や大きさに応じて、適宜変更する必要がある。
(2)実施例1及び2においては、放水銃1に左右に首振りする市販品を利用したが、幅の狭いコンベア下の床面に適用する場合、首振りできない市販品を利用しても良い。
(3)実施例1及び2においては、放水銃1を回動筒9の正面側に直接固定したが、回動筒9から前方又は上下方向に延び、回動筒9と連動する連動部材に固定しても良い。
【0024】
(4)実施例1においては、ねじりバネ10の付勢力、一端側リンク部材16及び他端側リンク部材17の長さ並びにカウンターウェイト23の重量によって、傾動式水溜18に溜まった水が排出され始める角度が決まるが、ねじりバネ10の付勢力、一端側リンク部材16及び他端側リンク部材17の長さ並びにカウンターウェイト23の重量ともに調整可能なので、いずれか1つ又は2つだけを設けても良い。
ただし、長さを調整できる一端側リンク部材16及び/又は他端側リンク部材17又は重量を調整できるカウンターウェイト23だけを設けた場合、回動筒9の正面側にある放水銃1と背面側にある傾動式水溜18との重量バランスをとることが困難で、溜まっていた水が上部開口19から流出した後に傾動式水溜18を上昇させ、
図2(A)の状態に戻す速度を調整することが容易ではないため、ねじりバネ10は設けた方が良い。
また、ねじりバネ10の付勢力は変更しにくいので、ねじりバネ10とともに、長さを調整できる一端側リンク部材16及び他端側リンク部材17か、重量を調整できるカウンターウェイト23のいずれかを設けるとより良い。
(5)実施例1においては、回動筒9の正面側を下降させる方向に付勢するために、ねじりバネ10を利用したが、回動筒9に巻き付けた紐状の弾性体や回動筒9から前後又は上下方向に延びる棒状体の先端に固定した弾性体を架台5の適当な箇所と連結して、回動筒9の正面側を下降させる方向に付勢するようにしても良い。
(6)実施例1においては、上部開口19を通して傾動式水溜18に給水したが、補給水配管20をフレキシブルな管とし、補給水配管20を傾動式水溜18に直接接続して給水できるようにしても良い。
【0025】
(7)実施例2においては、リンク部材36、接続部材37及びロッド38を有するロッド式油圧シリンダ39によって駆動手段35を構成したが、回動筒9を所定角度範囲で回動させることができる駆動手段であれば、回動筒9に直接的又は間接的に作用するとともに、回転方向や回転速度を制御可能なモータを用いても良い。
また、ロッド38を往復動させる機構としては、ロッド式油圧シリンダ39に限らず、回転運動を往復運動に変換する機構を利用しても良い。さらに、そのような変換機構を利用する場合、給水管3への送水に伴う水流によって回転運動を得る水モータを利用すれば、実施例1と同様に電気配線や制御・監視機能が不要となるのでより良い。
【符号の説明】
【0026】
1 放水銃 2 ノズル 3 給水管 4 放水銃自動俯仰手段
5 架台 6 回転パイプ 7 一端側保持部 8 他端側保持部
9 回動筒 10 ねじりバネ 11 バネ固定部
12 バネ固定部11の他端側 13 大径部 14 放水銃固定具
15 駆動手段 16 一端側リンク部材 17 他端側リンク部材
18 傾動式水溜 19 上部開口 20 補給水配管
21 一端側長さ調整部 22 他端側長さ調整部 23 カウンターウェイト
24 バルブ 25 ストッパ 26 突起部
34 放水銃自動俯仰手段 35 駆動手段 36 リンク部材
37 接続部材 38 ロッド 39 ロッド式油圧シリンダ
【要約】
【課題】限られた範囲に留まらず、より広い範囲を繰り返し水洗することができる堆積物水洗装置の提供及び電気配線や制御・監視機能が不要で、かつ、放水銃を機械的に上下・左右方向へ動かせる、安価で使い勝手の良い堆積物水洗装置の提供。
【解決手段】コンベア下の床面に堆積した落鉱粉を放水によって押し流す放水銃1と、放水銃1を自動的に俯仰させノズル2の先端を下端位置と上端位置との間で昇降させる放水銃自動俯仰手段4から構成される堆積物水洗装置であって、放水銃自動俯仰手段4は、架台5に固定される回転パイプ6、回動筒9の一端側に配置されるねじりバネ10、放水銃固定具14、鹿威しと同じ原理により回動筒9を所定角度範囲で回動させる駆動手段15並びにノズル2の先端の下端位置を調整するストッパ25及び突起部26等を備えている。
【選択図】
図1