IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

7648788加工形状モデル比較装置及び数値制御機械システム
<>
  • -加工形状モデル比較装置及び数値制御機械システム 図1
  • -加工形状モデル比較装置及び数値制御機械システム 図2
  • -加工形状モデル比較装置及び数値制御機械システム 図3
  • -加工形状モデル比較装置及び数値制御機械システム 図4
  • -加工形状モデル比較装置及び数値制御機械システム 図5
  • -加工形状モデル比較装置及び数値制御機械システム 図6
  • -加工形状モデル比較装置及び数値制御機械システム 図7
  • -加工形状モデル比較装置及び数値制御機械システム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】加工形状モデル比較装置及び数値制御機械システム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/4069 20060101AFI20250311BHJP
【FI】
G05B19/4069
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023554135
(86)(22)【出願日】2021-10-19
(86)【国際出願番号】 JP2021038648
(87)【国際公開番号】W WO2023067706
(87)【国際公開日】2023-04-27
【審査請求日】2024-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】羽田 裕明
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-071951(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0052882(US,A1)
【文献】特開2001-125613(JP,A)
【文献】国際公開第2016/027355(WO,A1)
【文献】特開2011-141673(JP,A)
【文献】特開平04-133104(JP,A)
【文献】特開2021-105825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18-19/416
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械によって被加工物を加工する場合の、少なくとも3つの直列的な工程の3つの加工位置データに基づいて生成された、少なくとも第1の加工形状モデル、第2の加工形状モデル及び第3の加工形状モデルを保存する加工形状モデル保存部と、
前記加工形状モデル保存部に保存された、前記第1及び第2の加工形状モデル、並びに前記第2及び第3の加工形状モデルを選択する加工形状モデル選択部と、
前記加工形状モデル選択部で選択された、前記第1及び第2の加工形状モデルを取得するとともに、前記第2及び第3の加工形状モデルを取得する加工形状モデル取得部と、
前記加工形状モデル取得部によって取得された、前記第1の加工形状モデルの加工面と前記第2の加工形状モデルの加工面との間の距離の集合を第1の差分値の集合として求めるとともに、前記第2の加工形状モデルの加工面と前記第3の加工形状モデルの加工面との間の距離の集合を第2の差分値の集合として求める差分算出部と、
前記第1の差分値の集合の統計量を第1の評価値として求め、前記第2の差分値の集合の統計量を第2の評価値として求める差分評価値算出部と、
を備える、加工形状モデル比較装置。
【請求項2】
前記第1の加工形状モデル上又は前記第2の加工形状モデル上に第1の差分値の集合の少なくとも一部を前記第1の差分値に応じて表示し、前記第2の加工形状モデル上又は前記第3の加工形状モデル上に第2の差分値の集合の少なくとも一部を前記第2の差分値に応じて表示する差分表示部を備える、請求項1に記載の加工形状モデル比較装置。
【請求項3】
前記第1の評価値は、前記第1の差分値の集合の平均値、分散値又は標準偏差であり、前記第2の評価値は、前記第2の差分値の集合の平均値、分散値又は標準偏差である、請求項1又は2に記載の加工形状モデル比較装置。
【請求項4】
前記第1の評価値及び前記第2の評価値に基づいて、前記少なくとも3つの直列的な工程のどの工程で異常が生じているかを判定する異常判定部を備える、請求項1から3のいずれか1項に記載の加工形状モデル比較装置。
【請求項5】
工作機械によって被加工物を加工する場合の、少なくとも2つの直列的な工程の2つの加工位置データに基づいて生成された、少なくとも第1の加工形状モデル及び第2の加工形状モデルを保存する加工形状モデル保存部と、
前記加工形状モデル保存部に保存された前記第1及び第2の加工形状モデルを選択する加工形状モデル選択部と、
前記加工形状モデル選択部で選択された、前記第1及び第2の加工形状モデルを取得する加工形状モデル取得部と、
前記加工形状モデル取得部によって取得された、前記第1の加工形状モデルの加工面と前記第2の加工形状モデルの加工面との間の距離の集合を差分値の集合として求める差分算出部と、
前記差分値の集合の統計量を評価値として求める差分評価値算出部を備える、加工形状モデル比較装置。
【請求項6】
請求項1からのいずれかに記載の加工形状モデル比較装置と、工作機械によって被加工物を加工する場合の、少なくとも3つの直列的な工程の3つの加工位置データに基づいて、少なくとも第1、第2及び第3の加工形状モデルを生成するシミュレーション部を有する数値制御装置と、を備える数値制御機械システム。
【請求項7】
コンピュータを、
工作機械によって被加工物を加工する場合の、少なくとも3つの直列的な工程の3つの加工位置データに基づいて生成された、少なくとも第1の加工形状モデル、第2の加工形状モデル及び第3の加工形状モデルを保存し、
保存された、前記第1及び第2の加工形状モデル、並びに前記第2及び第3の加工形状モデルを選択し、
選択された、前記第1及び第2の加工形状モデルを取得するとともに、前記第2及び第3の加工形状モデルを取得し、
取得された、前記第1の加工形状モデルの加工面と前記第2の加工形状モデルの加工面との間の距離の集合を第1の差分値の集合として求めるとともに、前記第2の加工形状モデルの加工面と前記第3の加工形状モデルの加工面との間の距離の集合を第2の差分値の集合として求め
前記第1の差分値の集合の統計量を第1の評価値として求め、前記第2の差分値の集合の統計量を第2の評価値として求める、
ように実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工形状モデル比較装置及び数値制御機械システムに係り、特に、工作機械によって加工する被加工物の加工形状モデルの比較を行う加工形状モデル比較装置、及び加工形状モデル比較装置を含む数値制御機械システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被加工物の加工の問題の発生要因の特定、又は加工プログラム、位置指令等の制御指令、サーボ制御、機械動作等の調整の効果の確認を容易にできるようにするシミュレーション装置が記載されている。
このシミュレーション装置は、工作機械によって被加工物を加工する場合の、加工プログラム、工作機械を駆動するサーボモータのサーボ制御を行うための制御指令、及びサーボモータと工作機械からのフィードバック情報のうちの少なくとも2つから得られる複数の加工位置データを保存するための複数の保存部と、保存された複数の加工位置データを用いて複数の加工面のシミュレーションを行う加工面シミュレーション部と、複数の加工面のシミュレーションにより得られた複数の加工面の画像を並べて表示する表示部と、を備えている。
【0003】
特許文献2には、数値制御プログラムと駆動系特性から、加工が実行された時の被加工物(ワーク)の加工形状を推定することができる数値制御シミュレーション装置が記載されている。
この数値制御シミュレーション装置は、ワーク加工経路を指令する数値制御プログラムを読み込むプログラム読み込み部と、補正パラメータを用いて読み込まれた指令経路を補正し、補正された経路を求める前処理部と、補正された経路及び加減速パラメータに基づいて補間・加減速を行う補間・加減速部と、補間・加減速した結果に対して、サーボパラメータを用いて工具先端位置を推定する駆動系モデルと、工具先端位置を用いて3Dソリッドシミュレーションを行い、推定加工形状を計算する3Dソリッドシミュレーション部と、計算された推定加工形状を表示する形状表示部と、目標加工形状と推定加工形状を比較し、形状誤差を計算する形状誤差計算部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-071951号公報
【文献】特許第3399419号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、加工面のシミュレーションを用いて、加工プログラム、工作機械を駆動するサーボモータのサーボ制御を行うための制御指令、サーボ制御、機械動作の要素(工程)のうち、加工された被加工物(ワーク)の加工面の異常がどの要素によるものかを判断する場合、要素の特定を容易に行うことができるとされている。
上記特許文献2では、オペレータ(ユーザ)は形状誤差が大きい箇所がどのような原因で発生しているかを推定するのに役立てることができるとされている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、ユーザが、表示部に表示された、複数の加工面のシミュレーションにより得られた複数の加工面の画像を見て、加工された被加工物の加工面の異常を判断するのは、必ずしも容易でない。
特許文献2には、加工された被加工物の加工面の異常の要素が、特許文献1に記載されたように複数ある場合の記載はない。
【0007】
よって、加工された被加工物の加工面の異常を生じさせる要素(工程)が複数ある場合に、どの要素が加工された被加工物の加工面の異常が生じさせているのかを、ユーザが容易に特定できるようにすることが望ましい。
また、どの要素が加工された被加工物の加工面の異常が生じさせているのかを定量的に判定できるようにすることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本開示の第1の態様は、工作機械によって被加工物を加工する場合の、少なくとも3つの直列的な工程の3つの加工位置データに基づいて生成された、少なくとも第1の加工形状モデル、第2の加工形状モデル及び第3の加工形状モデルを保存する加工形状モデル保存部と、
前記加工形状モデル保存部に保存された、前記第1及び第2の加工形状モデル、並びに前記第2及び第3の加工形状モデルを選択する加工形状モデル選択部と、
前記加工形状モデル選択部で選択された、前記第1及び第2の加工形状モデルを取得するとともに、前記第2及び第3の加工形状モデルを取得する加工形状モデル取得部と、
前記加工形状モデル取得部によって取得された、前記第1の加工形状モデルの加工面と前記第2の加工形状モデルの加工面との間の距離の集合を第1の差分値の集合として求めるとともに、前記第2の加工形状モデルの加工面と前記第3の加工形状モデルの加工面との間の距離の集合を第2の差分値の集合として求める差分算出部と、
を備える、加工形状モデル比較装置である。
【0009】
(2) 本開示の第2の態様は、工作機械によって被加工物を加工する場合の、少なくとも2つの直列的な工程の2つの加工位置データに基づいて生成された、少なくとも第1の加工形状モデル及び第2の加工形状モデルを保存する加工形状モデル保存部と、
前記加工形状モデル保存部に保存された前記第1及び第2の加工形状モデルを選択する加工形状モデル選択部と、
前記加工形状モデル選択部で選択された、前記第1及び第2の加工形状モデルを取得する加工形状モデル取得部と、
前記加工形状モデル取得部によって取得された、前記第1の加工形状モデルの加工面と前記第2の加工形状モデルの加工面との間の距離の集合を差分値の集合として求める差分算出部と、
前記差分値の集合の統計量を評価値として求める差分評価値算出部を備える、加工形状モデル比較装置である。
【0010】
(3) 本開示の第3の態様は、上記(1)に記載の加工形状モデル比較装置と、工作機械によって被加工物を加工する場合の、少なくとも3つの直列的な工程の3つの加工位置データに基づいて、少なくとも第1、第2及び第3の加工形状モデルを生成するシミュレーション部を有する数値制御装置と、を備える数値制御機械システムである。
【0011】
(4) 本開示の第4の態様は、コンピュータを、
工作機械によって被加工物を加工する場合の、少なくとも3つの直列的な工程の3つの加工位置データに基づいて生成された、少なくとも第1の加工形状モデル、第2の加工形状モデル及び第3の加工形状モデルを保存し、
保存された前記第1及び第2の加工形状モデル、並びに前記第2及び第3の加工形状モデルを選択し、
選択された、前記第1及び第2の加工形状モデルを取得するとともに、前記第2及び第3の加工形状モデルを取得し、
取得された、前記第1の加工形状モデルの加工面と前記第2の加工形状モデルの加工面との間の距離の集合を第1の差分値の集合として求めるとともに、前記第2の加工形状モデルの加工面と前記第3の加工形状モデルの加工面との間の距離の集合を第2の差分値の集合として求める、
ように実行させるプログラムを記憶した、コンピュータ読み取り可能な情報記憶媒体である。
【発明の効果】
【0012】
本開示の態様によれば、工作機械によって被加工物を加工するときに、少なくとも3つの直列的な工程がある場合に、加工された被加工物の加工面の異常の原因が、どの工程にあるのかを、ユーザが容易に特定できる。
また、本開示の態様によれば、どの工程が加工された被加工物の加工面の異常が生じさせているのかを定量的に判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態の加工形状モデル比較装置を含む数値制御機械システムの一構成例を示すブロック図である。
図2】被加工物の加工形状モデルを示す斜視図である。
図3】本発明の第1実施形態の加工形状モデル比較装置の一構成例を示すブロック図である。
図4】2つの加工形状モデルの加工面間の距離を差分値として求める方法を示す模式的説明図である。
図5】加工形状モデル比較装置の動作を示すフローチャートである。
図6】本発明の第2実施形態の加工形状モデル比較装置の一構成例を示すブロック図である。
図7】差分表示部の表示画面を示す図である。
図8】本発明の第3実施形態の加工形状モデル比較装置の一構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態の加工形状モデル比較装置を含む数値制御機械システムの一構成例を示すブロック図である。図1に示す数値制御機械システム(以下、NC機械システムという)10は、数値制御装置(以下、NC装置という)100、サーボ制御部200、サーボモータ300、機械400及び加工形状モデル比較装置500を備えている。機械400は切削加工等を行う工作機械である。NC装置100は機械400に含まれてもよい。また、サーボモータ300は、機械400に含まれてもよい。また、加工形状モデル比較装置500は、NC装置100に含まれてもよい。
機械400が複数の軸、例えばX軸、Y軸、及びZ軸の3軸を有する場合、サーボ制御部200及びサーボモータ300は軸ごとに設けられる。
【0016】
NC装置100は、保存部101、スムージング制御部102、加減速制御部103、機械座標換算部104、シミュレーション用データ出力部105、座標変換部106、及びシミュレーション部110を備えている。
加工形状モデル比較装置500を除くNC機械システム10の構成及び動作の詳細については、特許文献1に記載されているので、以下の説明では簡単に構成及び動作について説明する。なお、特許文献1のシミュレーション部は、加工面シミュレーションの結果を表示する加工面シミュレーション表示部及びその表示設定を行う表示設定指定部を備えている点が、後述するシミュレーション部110と異なる。
【0017】
NC装置100に含まれる機能ブロックを実現するために、NC装置100は、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置、アプリケーションソフトウェア又はOS(Operating System)等の各種の制御用プログラムを格納したHDD(Hard Disk Drive)等の補助記憶装置、及び演算処理装置がプログラムを実行する上で一時的に必要とされるデータを格納するためのRAM(Random Access Memory)等の主記憶装置を備えるコンピュータで構成することができる。そして、NC装置100において、演算処理装置が補助記憶装置からアプリケーションソフトウェア又はOSを読み込み、読み込んだアプリケーションソフトウェア又はOSを主記憶装置に展開させながら、これらのアプリケーションソフトウェア又はOSに基づいた演算処理を行うことで、NC装置100に含まれる機能ブロックは実現される。
【0018】
<NC装置100及びサーボ制御部200>
保存部101は、入力される、加工経路を示す指令経路(指令点の配置)を含む加工プログラム及び工具情報を保存する。加工実行指示に基づいて、加工プログラム及び工具情報が保存部101から読みだされ、スムージング制御部102及びシミュレーション用データ出力部105に入力される。加工プログラムは加工位置データとなる、加工経路を示す指令経路を含んでいる。
【0019】
スムージング制御部102は、加工プログラムが示す移動指令に基づく移動経路のスムージング制御を行う。具体的には、スムージング制御部102は、移動指令を滑らかな経路に補正した後、補正後の移動経路上の点を補間周期で補間する(経路補正)。
【0020】
加減速制御部103は、スムージング制御部102で補間された移動指令、加減速時定数に基づく加減速度、最大速度に基づいて移動速度パターンを生成し、移動速度パターンに基づいて位置指令を生成し、機械座標換算部104へ出力する。位置指令は工作機械を駆動するサーボモータ300のサーボ制御を行うための制御指令となる。
【0021】
機械座標換算部104は加減速制御部103から出力される位置指令についてワーク座標を機械座標に換算して、機械座標に換算された位置指令をサーボ制御部200及びシミュレーション用データ出力部105へ出力する。
【0022】
シミュレーション用データ出力部105は、保存部101から出力される加工プログラムの加工位置データ、機械座標換算部104から出力される位置指令(加工位置データとなる)、サーボモータ300から出力される第1のフィードバック情報となるモータフィードバック情報(モータFBとして図示する)である加工位置データ、機械400から出力される第2のフィードバック情報となるスケールフィードバック情報(スケールFBとして図示する)である加工位置データを座標変換部106に出力する。
【0023】
座標変換部106は、シミュレーション用データ出力部105から出力される4つの加工位置データを共通の座標系の加工位置データに変換し、変換した加工位置データを保存部111~保存部114に出力する。
【0024】
サーボ制御部200は、入力される位置指令と、モータフィードバック情報とスケールフィードバック情報の少なくとも一方の位置検出値との差となる位置偏差を求め、位置偏差を用いて速度指令を作成し、更に速度指令に基づいてトルク指令を生成してサーボモータ300に出力する。モータフィードバック情報はサーボモータ300に関連付けられたロータリエンコーダからの位置検出値であり、スケールフィードバック情報は機械400に取り付けられたリニアスケールからの位置検出値である。
サーボ制御部200は、サーボモータ300から出力されるモータフィードバック情報と、機械400から出力されるスケールフィードバック情報の2つを用いてフィードバック制御を行う必要なく、例えば、スケールフィードバック情報はサーボ制御部200に入力されず、座標変換部106のみに出力されてもよい。
【0025】
サーボモータ300の回転角度位置は、サーボモータ300に関連付けられた、位置検出部となるロータリエンコーダによって検出され、検出された信号は積分することでモータフィードバック情報としてサーボ制御部200及びシミュレーション用データ出力部105へ出力される。
スケールフィードバック情報は、機械400のボールねじの端部に取り付けられたリニアスケールから位置検出値である。リニアスケールは、ボールねじの移動距離を検出し、その出力をスケールフィードバック情報としてサーボ制御部200へ出力し、また機械400の可動部となるボールねじの位置情報としてシミュレーション用データ出力部105に入力する。
【0026】
シミュレーション部110は、保存部111、保存部112、保存部113、保存部114、シミュレーション開始指令部115、形状シミュレーション部116、形状シミュレーション表示部117、確認場所指定部118、及び加工面シミュレーション部119を備えている。
【0027】
保存部111、保存部112、保存部113、保存部114は、上述したように、それぞれ加工プログラムの加工位置データ、機械座標換算部104から出力される加工位置データ、サーボモータ300から出力される加工位置データ、機械400から出力される加工位置データを保存する。保存部111、保存部112、保存部113、及び保存部114に保存される加工位置データは、共通の座標系の加工位置データである。
なお、加工位置データの数Nは、4つに限定されず、2つ、3つ又は5つ以上(N>2)であってもよい。
【0028】
シミュレーション開始指令部115は、NC装置100にシミュレーション開始要求が入力されると、まず、保存部111から加工プログラムの加工位置データを読み出し、加工プログラムの加工位置データとともにシミュレーション開始指令を形状シミュレーション部116に送る。なお、最初に読み出す加工位置データは保存部111に保存された加工位置データに限られず、保存部111~114のうちのいずれの加工位置データを読み出してもよい。
【0029】
形状シミュレーション部116は、シミュレーション開始指令を受けると、加工プログラムの加工位置データを用いて形状シミュレーションを行い、形状シミュレーションによって得られた被加工物(以下、ワークという)の形状を示す画像情報を形状シミュレーション表示部117に送る。
【0030】
形状シミュレーション表示部117は、ワークの形状を示す画像情報に基づいて画面にワークの形状を表示する。形状シミュレーション表示部117は、例えば、タッチパネル付き液晶表示装置である。ユーザは、機械400によって実際に加工されたワークを観察して、ワークに異常を発見した場合に、異常の発生原因を検出するためにワークにおいて確認したい場所を、タッチパネルを用いて特定する。
【0031】
確認場所指定部118は、タッチパネルで特定された確認場所を指定するための座標情報を加工面シミュレーション部119に送る。ここでは、ワークの全体を確認場所として指定する。
【0032】
加工面シミュレーション部119はシミュレーション開始指令部115と協働して、以下のように加工面のシミュレーション(以下、加工面シミュレーションという)を行う。
【0033】
加工面シミュレーション部119は、座標情報に基づいて確認場所の加工位置データを特定して、まず第1の加工面シミュレーションを実行する。
【0034】
加工面シミュレーション部119は、加工位置データを保存部111から読み出し、又はシミュレーション開始指令部115から受け、第1の加工面シミュレーションのために用いる。第1の加工面シミュレーションは、位置データと工具情報に基づいて、削り取られる部分を計算して行われる。
【0035】
加工面シミュレーション部119は、加工プログラムの加工位置データを用いた第1の加工面シミュレーションが終了すると、第1の加工面シミュレーションの終了通知をシミュレーション開始指令部115に送る。加工面シミュレーション部119は確認場所を示す座標情報を記憶しておく。加工面シミュレーション部119は、第1の加工面シミュレーションにより得られる第1の加工形状モデルを後述する加工形状モデル保存部501に保存する。例えば、ワークの第1の加工形状モデルの加工形状は、図2の斜視図に示す加工形状である。図2の3つの凹凸部分20-1の形状は、3つの凹凸部分20-2の形状に対して逆の凹凸形状である。図2に示すワークは、特開2019-040586号公報に記載された評価用ワークである。
【0036】
シミュレーション開始指令部115は、第1の加工面シミュレーションの終了通知を受けると、保存部112から機械座標換算部104から出力される加工位置データを読み出し、機械座標換算部104から出力される加工位置データを加工面シミュレーション部119に送る。なお、確認場所を示す座標情報は加工面シミュレーション部119に記憶されているので、形状シミュレーション及び確認場所の指定は不要となり、シミュレーション開始指令部115は直接、機械座標換算部104から出力された加工位置データを加工面シミュレーション部119に送る。
【0037】
加工面シミュレーション部119は、機械座標換算部104から出力される加工位置データを用いた第2の加工面シミュレーションを実行し、第2の加工面シミュレーションが終了すると、第2の加工面シミュレーション終了通知をシミュレーション開始指令部115に送る。加工面シミュレーション部119は第2の加工面シミュレーションより得られる第2の加工形状モデルを加工形状モデル保存部501に保存する。
【0038】
以上説明した、第2の加工面シミュレーションに関する動作は第3及び第4の加工面シミュレーションについても同様に行なわれ、加工面シミュレーション部119は、第3及び第4の加工面シミュレーションもより得られる第3及び第4の加工形状モデルを加工形状モデル保存部501に保存する。
【0039】
<加工形状モデル比較装置500>
図3は本発明の第1実施形態の加工形状モデル比較装置の一構成例を示すブロック図である。
図3に示すように、加工形状モデル比較装置500は、加工形状モデル保存部501、加工形状モデル選択部502、加工形状モデル取得部503、及び差分算出部504を備えている。
【0040】
加工形状モデル保存部501には、加工プログラムの加工位置データを用いて加工面シミュレーションを行うことで得られた第1の加工形状モデル、機械座標換算部104から出力される加工位置データを用いて加工面シミュレーションを行うことで得られた第2の加工形状モデル、サーボモータ300から出力される加工位置データを用いて加工面シミュレーションを行うことで得られた第3の加工形状モデル、及び機械400から出力される加工位置データを用いて加工面シミュレーションを行うことで得られた第4の加工形状モデルが保存されている。なお、保存される加工形状モデルの数は4つに限定されず、上述した加工位置データの数N(N>2)と同じとなる。
【0041】
加工形状モデル選択部502は、加工形状モデル保存部501に保存された第1~第4の加工形状モデルから、隣接する2つの工程の加工形状モデルのペアを少なくとも2つ選択する。ペアを2つ選択する場合、2つのペア間で共通の加工形状モデルが含まれるように選択する。ワークの時系列的な複数の工程のどの工程が、ワークの加工面の異常を生じさせているのかを把握するためである。
【0042】
加工形状モデル比較装置500を除くNC機械システム10は、加工プログラムの読み出し、位置指令の生成、サーボモータ300からモータフィードバック情報の出力、及びサーボモータ300により駆動される機械400からスケールフィードバック情報の出力からなる、4つの直列的な工程を含む複数の工程で動作し、第1~第4の加工形状モデルを生成する。
【0043】
そのため、隣接する2つの工程の加工形状モデルのペアは、第1の加工形状モデルと第2の加工面形状モデルとのペア、第2の加工形状モデルと第3の加工面形状モデルとのペア、又は第3の加工形状モデルと第2の加工面形状モデルとのペアが該当する。加工形状モデルのペアを少なくとも2つ選択する方法は、予め決めれていてもよいし、ユーザが指定してもよい。
【0044】
以下の説明では、加工形状モデル選択部502が、第1の加工形状モデルと第2の加工面形状モデルとのペア、第2の加工形状モデルと第3の加工面形状モデルとのペア、及び第の加工形状モデルと第の加工面形状モデルとのペアを選択するものとする。
【0045】
加工形状モデル取得部503は、加工形状モデル選択部502で選択された第1の加工形状モデルと第2の加工形状モデルとを、加工形状モデル保存部501から取得する。
【0046】
差分算出部504は、加工形状モデル取得部503から出力された第1の加工形状モデルの加工面と第2の加工形状モデルの加工面との間の距離を差分値として求める。
図4は2つの加工形状モデルの加工面間の距離を差分値として求める方法を示す模式的説明図である。図4では、簡略化のために、2つの加工形状モデルを曲面で示し、2つの加工形状モデルのうちの1つを基準となる加工形状モデルとし、他方を比較対象となる加工形状モデルとしている。例えば、基準となる加工形状モデルは第1の加工面形状モデル、比較対象となる加工形状モデルは第1の加工面形状モデルである。図4において、基準となる加工形状モデルを実線で示し、比較対象となる加工形状モデルを破線で示す。
【0047】
図4に示すように、基準となる加工形状モデルの加工面をメッシュで細分化する。
基準となる加工形状モデルと、比較対象の加工形状モデルとを比較し、基準となる加工形状モデルの加工面上の各メッシュの法線が、比較対象の加工形状モデルの加工面と交差した距離をそのメッシュの差分値とする。
差分算出部504は、メッシュごとに差分値を求め、メシュごとの差分値の集合(以下、第1の差分値の集合という)を出力する。
【0048】
加工形状モデル取得部503は、加工形状モデル選択部502で選択された第2の加工形状モデルと第3の加工形状モデルとを、加工形状モデル保存部501から取得する。なお、加工形状モデル取得部503は、第1の差分値の集合を求めるために第2の加工形状モデルを既に読み出しているので、読み出した第2の加工形状モデルを記憶部に記憶しておけば、再度第2の加工形状モデルを読み出さなくともよい。
差分算出部504は、第1の差分値の集合を求める方法と同様に、第2の加工形状モデルの加工面と第3の加工形状モデルの加工面との間の距離をメッシュごとに差分値として求めて、メッシュごとの差分値の集合(以下、第2の差分値の集合という)を出力する。
【0049】
同様に、加工形状モデル取得部503は、加工形状モデル選択部502で選択された第3の加工形状モデルと第4の加工形状モデルとを、加工形状モデル保存部501から取得する。
差分算出部504は、第1の差分値の集合を求める方法と同様に、第3の加工形状モデルの加工面と第4の加工形状モデルの加工面との間の距離をメッシュごとに差分値として求めて、メシュごとの差分値の集合(以下、第3の差分値の集合という)を出力する。
【0050】
ユーザは、差分算出部504から出力された、第1の差分値の集合、第2の差分値の集合、第3の差分値の集合から、どの工程で異常が生じている可能性が高いかを判断できる。
例えば、第1の差分値の集合の分布が正常な範囲で、第2の差分値の集合の分布が正常な範囲を超えた範囲にある場合は、ユーザは、ワークの加工面の異常が、サーボ制御部200のサーボ制御に基づくものであることが分かる。
【0051】
また、例えば、第1及び第2の差分値の集合の分布が正常な範囲で、第3の差分値の集合の分布が正常な範囲を超えた範囲にある場合は、ユーザは、ワークの加工面の異常が、機械動作に基づくものであることが分かる。
【0052】
なお、本実施形態では、第1~第4の加工形状モデルから加工形状モデルのペアを少なくとも2つ選択して2つの差分値の集合を求めればよく、例えば、ワークの加工面の異常が機械動作に基づくものでないことが分かっている場合には、第1の差分値の集合、第2の差分値の集合のみを求めてもよい。
【0053】
図3に示した加工形状モデル比較装置500に含まれる機能ブロックを実現するために、加工形状モデル比較装置500は、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置を備えるコンピュータで構成することができる。また、加工形状モデル比較装置500は、アプリケーションソフトウェア又はOS(Operating System)等の各種の制御用プログラムを格納したHDD(Hard Disk Drive)等の補助記憶装置及び、演算処理装置がプログラムを実行する上で一時的に必要とされるデータを格納するためのRAM(Random Access Memory)といった主記憶装置も備える。
【0054】
そして、加工形状モデル比較装置500において、演算処理装置が補助記憶装置からアプリケーションソフトウェア又はOSを読み込み、読み込んだアプリケーションソフトウェア又はOSを主記憶装置に展開させながら、これらのアプリケーションソフトウェア又はOSに基づいた演算処理を行なう。また、この演算結果に基づいて、加工形状モデル比較装置500が備える各種のハードウェアを制御する。これにより、本実施形態の機能ブロックは実現される。つまり、本実施形態は、ハードウェアとソフトウェアが協働することにより実現することができる。
【0055】
次に、加工形状モデル比較装置500の動作について図5のフローチャートを用いて説明する。
ステップS10において、加工形状モデル選択部502は、加工形状モデル保存部501に保存された第1~第4の加工形状モデルから、隣接する2つの工程の加工形状モデルのペアを少なくとも2つ選択する。ペアを2つ選択する場合、2つのペア間で共通の加工形状モデルが含まれるように選択する。
【0056】
ステップS11において、加工形状モデル取得部503は、加工形状モデル選択部502で選択された、加工形状モデルのペアの一つに含まれる2つの加工形状モデルを、加工形状モデル保存部501から取得する。
【0057】
ステップS12において、差分算出部504は、加工形状モデル取得部503から取得した2つの加工形状モデルのメッシュごとの差分値を求めて、差分値の集合を出力する。各差分値は、一方の加工形状モデルの各メッシュの法線が、他方の加工形状モデルの加工面と交差した距離である。
【0058】
ステップS13において、他の加工形状モデルのペアについても差分値を求めるかどうかの判断を行う。他の2つの加工形状モデルのペアについても差分値を求める場合には(ステップS14の「YES」)、処理はステップS11に戻る。他の加工形状モデルのペアについて差分値を求めない場合には(ステップS14の「NO」)、処理を終了する。なお、加工形状モデルのペアは少なくとも2つ選択されるので、ステップS11からステップS13は少なくとも2回繰り返される。
【0059】
(第2実施形態)
本実施形態では、差分算出部504から出力された差分値の集合を、色を用いて加工形状モデル上に表示する実施形態について説明する。
図6は本発明の第2実施形態の加工形状モデル比較装置の一構成例を示すブロック図である。加工形状モデル比較装置を除くNC機械システム構成は、図1に示したNC機械システム10と同じである。
本実施形態の加工形状モデル比較装置500Aは、図3に示した加工形状モデル比較装置500に差分表示部505が追加されている。図7は差分表示部の表示画面を示す図である。
【0060】
差分表示部505は、液晶表示装置等の表示装置の表示画面に第1の画像を表示する。第1の画像は、加工形状モデル取得部503から出力される第1の加工形状モデルの加工面に、第1の加工形状モデルと第2の加工形状モデルのメッシュごとの差分値を、その差分値に応じた色で描画した画像である。
【0061】
また、差分表示部505は、液晶表示装置等の表示装置の表示画面に第2の画像を表示する。第2の画像は、加工形状モデル取得部503から出力される第2の加工形状モデルの表面に、第2の加工形状モデルと第3の加工形状モデルのメッシュごとの差分値を、その差分値に応じた色で描画した画像である。
【0062】
差分表示部505は、液晶表示装置等の表示装置の表示画面に第3の画像を表示する。第3の画像は、加工形状モデル取得部503から出力される第3の加工形状モデルの表面に、第3の加工形状モデルと第4の加工形状モデルのメッシュごとの差分値を、その差分値に応じた色で描画した画像である。
第1の画像、第2の画像及び第3の画像は、表示画面において横方向に並べて配置される。なお、第1から第3の画像を並べる方向は、特に横方向に限定されず、例えば縦方向であってもよい。
【0063】
図7では、差分表示部505は、第2の画像において、メッシュごとの差分値が所定の閾値を超えた箇所を黒で示し、第1及び第3の画像において、メッシュごとの差分値が所定の閾値以下の箇所を着色しない(黒で着色をしない)としている。なお、「差分値に応じて表示する」とは、差分値が所定の閾値以下の場合に無色とする場合も含まれる。
ユーザは、図7の表示画面を見ることで、第2の画像に、メッシュごとの差分値が所定の閾値を超えた箇所が多く、ワークの加工面の異常がサーボ制御部200のサーボ制御に基づくものであることが分かる。
【0064】
差分値の判定を行う閾値を2つ設け、メッシュごとの差分値が、第1の閾値値d1以下である場合には青色、第1の閾値d1を超え第2の閾値d2(d2>d1)以下の場合は緑色、第2の閾値d2を超える場合は赤色としてもよい。この場合、一つの画像の中で、青色、緑色、赤色に描画された箇所を確認することで、差分値のバラツキを判断することが可能となる。また、閾値は3つ以上設けてもよい。
以上の説明では、メッシュごとの差分値の範囲に応じて色を用いて表示したが、濃淡、塗りつぶしパターンなどを用いて表示してもよい。また、差分値が所定の閾値を超えた箇所にピンを立てることも可能である。
【0065】
(第3実施形態)
第1及び第2の実施形態では、加工形状モデル保存部501に保存された第1~第4の加工形状モデルから加工形状モデルのペアを少なくとも2つ選択して、加工形状モデルの加工面間の距離をメッシュごとに差分値として求める例について説明した。第1及び第2の実施形態では、ワークの加工面の異常がどの工程で生じているかどうかを判定することができる。
【0066】
本実施形態では、第1~第4の加工形状モデルから加工形状モデルのペアを少なくとも1つ選択して、加工形状モデルの加工面間の距離をメッシュごとに差分値として求め、更に差分値の集合の統計量を評価値として求める。統計量とはデータの集合の特徴を表す数値であり、例えば、平均値、分散値、標準偏差値等である。
【0067】
図8は本発明の第3実施形態の加工形状モデル比較装置の一構成例を示すブロック図である。加工形状モデル比較装置を除くNC機械システム構成は、図1に示したNC機械システム10と同じである。
本実施形態の加工形状モデル比較装置500Bは、図3に示した加工形状モデル比較装置500に差分評価値算出部506及び異常判定部507が追加されている。異常判定部507は、異常判定を行わない場合には設けなくともよい。
【0068】
加工形状モデル選択部502は、加工形状モデル保存部501に保存された第1~第4の加工形状モデルから、隣接する2つの工程の加工形状モデルのペアを少なくとも1つ選択する。加工形状モデルのペアを選択する方法は、予め決めれていてもよいし、ユーザが指定してもよい。
以下の説明では、加工形状モデル選択部502が、第1の加工形状モデルと第2の加工面形状モデルとのペアを選択するものとする。
【0069】
加工形状モデル取得部503は、加工形状モデル選択部502で選択された、第1の加工形状モデルと第2の加工形状モデルとを、加工形状モデル保存部501から取得する。
【0070】
差分算出部504は、第1の実施形態と同様に、加工形状モデル取得部503から出力された第1の加工形状モデルの加工面と第2の加工形状モデルの加工面との間の距離を差分値として求める。差分算出部504は、メッシュごとに差分値を求め、メシュごとの差分値の集合(第1の差分値の集合)を出力する。
【0071】
差分評価値算出部506は、第1の差分値の集合の平均値を、メッシュごとの差分値の絶対値を積算し、メッシュの数で割ることで求めて、第1の評価値として出力する。
異常判定部507は、第1の差分値の集合の平均値が所定の閾値を超えた場合には、加工プログラムに基づく制御指令によってワークの加工面の異常が生じていると判定できる。
【0072】
本実施形態において、第1の実施形態と同様にして、差分算出部504は第1の差分値の集合の他に、第2の差分値の集合、第3の差分値の集合を算出してもよい。その場合、差分評価値算出部506は、上述したように、第1の差分値の集合の平均値を求めて出力し、第2の差分値の集合の平均値を、メッシュごとの差分値の絶対値を積算し、メッシュの数で割ることで求めて出力し、第3の差分値の集合の平均値を、メッシュごとの差分値の絶対値を積算し、メッシュの数で割ることで求めて出力する。
【0073】
異常判定部507は、第1の差分値の集合の平均値、第2の差分値の集合の平均値、及び第3の差分値の集合の平均値から、どの工程で異常が生じている可能性が高いかを判定できる。
例えば、標準的な差分値の集合の平均値を1としたとき、第1の差分値の集合の平均値が1.01倍、第2の差分値の集合の平均値が3.85倍、第3の差分値の集合の平均値が0.98倍であるとする。その場合、異常判定部507は、ワークの加工面の異常が、サーボ制御部200のサーボ制御に基づくものであると判定できる。
【0074】
以上本発明に係る各実施形態について説明したが、上記の加工形状モデル比較装置の各構成部は、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせにより実現することができる。ここで、ソフトウェアによって実現されるとは、コンピュータがプログラムを読み込んで実行することにより実現されることを意味する。
【0075】
プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、例えば、磁気記録媒体(例えば、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。
【0076】
上述した実施形態は、本発明の好適な実施形態ではあるが、上記実施形態のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。
【0077】
本開示による加工形状モデル比較装置及び数値制御機械システムは、上述した実施形態を含め、次のような構成を有する各種各様の実施形態を取ることができる。
【0078】
(1)工作機械によって被加工物を加工する場合の、少なくとも3つの直列的な工程の3つの加工位置データに基づいて生成された、少なくとも第1の加工形状モデル、第2の加工形状モデル及び第3の加工形状モデルを保存する加工形状モデル保存部(例えば、加工形状モデル保存部501)と、
前記加工形状モデル保存部に保存された、前記第1及び第2の加工形状モデル、並びに前記第2及び第3の加工形状モデルを選択する加工形状モデル選択部(例えば、加工形状モデル選択部502)と、
前記加工形状モデル選択部で選択された、前記第1及び第2の加工形状モデルを取得するとともに、前記第2及び第3の加工形状モデルを取得する加工形状モデル取得部(例えば、加工形状モデル取得部503)と、
前記加工形状モデル取得部によって取得された、前記第1の加工形状モデルの加工面と前記第2の加工形状モデルの加工面との間の距離の集合を第1の差分値の集合として求めるとともに、前記第2の加工形状モデルの加工面と前記第3の加工形状モデルの加工面との間の距離の集合を第2の差分値の集合として求める差分算出部(例えば、差分算出部504)と、
を備える、加工形状モデル比較装置(加工形状モデル比較装置500、500A、500B)。
この加工形状モデル比較装置によれば、工作機械によって被加工物を加工するときに、少なくとも3つの直列的な工程がある場合に、加工された被加工物の加工面の異常の原因が、どの工程にあるのかを、ユーザが容易に特定できる。
【0079】
(2) 前記第1の加工形状モデル上又は前記第2の加工形状モデル上に第1の差分値の集合の少なくとも一部を前記第1の差分値に応じて表示し、前記第2の加工形状モデル上又は前記第3の加工形状モデル上に第2の差分値の集合の少なくとも一部を前記第2の差分値に応じて表示する差分表示部(例えば、差分表示部505)を備える、上記(1)に記載の加工形状モデル比較装置。
この加工形状モデル比較装置によれば、差分が生じている箇所を視覚的に特定することが可能となる。
【0080】
(3) 前記第1の差分値の集合の統計量を第1の評価値として求め、前記第2の差分値の集合の統計量を第2の評価値として求める差分評価値算出部(例えば、差分評価値算出部506)を備える、上記(1)又は(2)に記載の加工形状モデル比較装置。
この加工形状モデル比較装置によれば、第1の差分値の集合と第2の差分値の集合との比較を定量的に行うことが可能となる。
【0081】
(4) 前記第1の評価値は、前記第1の差分値の集合の平均値、分散値又は標準偏差であり、前記第2の評価値は、前記第2の差分値の集合の平均値、分散値又は標準偏差である、上記(3)に記載の加工形状モデル比較装置。
【0082】
(5) 前記第1の評価値及び前記第2の評価値に基づいて、前記少なくとも3つの直列的な工程のどの工程で異常が生じているかを判定する異常判定部(例えば、異常判定部507)を備える、上記(3)又は(4)に記載の加工形状モデル比較装置。
この加工形状モデル比較装置によれば、少なくとも3つの直列的な工程のどの工程が、被加工物の異常を生じさせているの判定を自動的に行うことができる。
【0083】
(6) 工作機械によって被加工物を加工する場合の、少なくとも2つの直列的な工程の2つの加工位置データに基づいて生成された、少なくとも第1の加工形状モデル及び第2の加工形状モデルを保存する加工形状モデル保存部と、
前記加工形状モデル保存部に保存された前記第1及び第2の加工形状モデルを選択する加工形状モデル選択部と、
前記加工形状モデル選択部で選択された、前記第1及び第2の加工形状モデルを取得する加工形状モデル取得部と、
前記加工形状モデル取得部によって取得された、前記第1の加工形状モデルの加工面と前記第2の加工形状モデルの加工面との間の距離の集合を差分値の集合として求める差分算出部と、
前記差分値の集合の統計量を評価値として求める差分評価値算出部を備える、加工形状モデル比較装置。
この加工形状モデル比較装置によれば、どの工程が加工された被加工物の加工面の異常が生じさせているのかを定量的に判定できる。
【0084】
(7) 上記(1)から(5)のいずれかに記載の加工形状モデル比較装置と、工作機械によって被加工物を加工する場合の、少なくとも3つの直列的な工程の3つの加工位置データに基づいて、少なくとも第1、第2及び第3の加工形状モデルを生成するシミュレーション部を有する数値制御装置と、を備える数値制御機械システム。
【0085】
(8) コンピュータを、
工作機械によって被加工物を加工する場合の、少なくとも3つの直列的な工程の3つの加工位置データに基づいて生成された、少なくとも第1の加工形状モデル、第2の加工形状モデル及び第3の加工形状モデルを保存し、
保存された前記第1及び第2の加工形状モデル、並びに前記第2及び第3の加工形状モデルを選択し、
選択された、前記第1及び第2の加工形状モデルを取得するとともに、前記第2及び第3の加工形状モデルを取得し、
取得された、前記第1の加工形状モデルの加工面と前記第2の加工形状モデルの加工面との間の距離の集合を第1の差分値の集合として求めるとともに、前記第2の加工形状モデルの加工面と前記第3の加工形状モデルの加工面との間の距離の集合を第2の差分値の集合として求める、
ように実行させるプログラムを記憶した、コンピュータ読み取り可能な情報記憶媒体。
このコンピュータ読み取り可能な情報記憶媒体によれば、記憶したプログラムにより、工作機械によって被加工物を加工するときに、少なくとも3つの直列的な工程がある場合に、加工された被加工物の加工面の異常の原因が、どの工程にあるのかを、ユーザが容易に特定できるようにすることができる。
【符号の説明】
【0086】
10 NC機械システム
100 NC装置
110 シミュレーション部
200 サーボ制御部
300 サーボモータ
400 機械
500、500A、500B 加工形状モデル比較装置
501 加工形状モデル保存部
502 加工形状モデル選択部
503 加工形状モデル取得部
504 差分算出部
505 差分表示部
506 差分評価値算出部
507 異常判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8