(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】ポリイミドを含む半導体素子テストソケット用成形体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/32 20060101AFI20250311BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20250311BHJP
【FI】
H01L23/32 A
C08G73/10
(21)【出願番号】P 2023563282
(86)(22)【出願日】2022-04-07
(86)【国際出願番号】 KR2022005016
(87)【国際公開番号】W WO2022220484
(87)【国際公開日】2022-10-20
【審査請求日】2023-10-16
(31)【優先権主張番号】10-2021-0049509
(32)【優先日】2021-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519065318
【氏名又は名称】デリム カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジンモ
(72)【発明者】
【氏名】キム,サンヒョン
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-526163(JP,A)
【文献】特開2015-129277(JP,A)
【文献】特表2013-516508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/32
C08G 73/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアミン化合物及び酸二無水物化合物が重合されたポリイミド樹脂を含み、
200mJ~500mJのエネルギーを有するレーザーに5,000回以上露出時に、表面抵抗が1×10
9Ω/sq以上であ
り、
前記ジアミン化合物は、パラフェニレンジアミン(p-PDA)60重量%~80重量%、及びメタフェニレンジアミン(m-PDA)20重量%~40重量%を含み、
前記酸二無水物化合物は、ビフタル酸二無水物(BPDA)50重量%~60重量%、及びピロメリト酸二無水物(PMDA)40重量%~50重量%を含む、半導体素子テストソケット用成形体。
【請求項2】
水分吸収率が0.15%以下である、請求項1に記載の半導体素子テストソケット用成形体。
【請求項3】
屈曲モジュラスが5,000MPa~6,000MPa、ヤング率が3,000MPa~4,000MPa、引張強度が100~200MPa、伸び率が4%~10%である、請求項1に記載の半導体素子テストソケット用成形体。
【請求項4】
充填剤を含まないことを特徴とする、請求項1に記載の半導体素子テストソケット用成形体。
【請求項5】
ジアミン化合物と酸二無水物化合物とを重合してポリイミド樹脂を製造する段階;及び
前記ポリイミド樹脂を成形する段階;を含み、
200mJ~500mJのエネルギーを有するレーザーに5,000回以上露出時に、表面抵抗が1×10
9Ω/sq以上であ
り、
前記ジアミン化合物は、パラフェニレンジアミン(p-PDA)60重量%~80重量%、及びメタフェニレンジアミン(m-PDA)20重量%~40重量%を含み、
前記酸二無水物化合物は、ビフタル酸二無水物(BPDA)50重量%~60重量%、及びピロメリト酸二無水物(PMDA)40重量%~50重量%を含む、半導体素子テストソケット用成形体の製造方法。
【請求項6】
水分吸収率が0.15%以下である、請求項
5に記載の半導体素子テストソケット用成形体の製造方法。
【請求項7】
屈曲モジュラスが5,000MPa~6,000MPa、ヤング率が3,000MPa~4,000MPa、引張強度が100~200MPa、伸び率が4%~10%である、請求項
5に記載の半導体素子テストソケット用成形体の製造方法。
【請求項8】
前記ポリイミド樹脂を製造する段階は、
前記ジアミン化合物と前記酸二無水物化合物を含む溶液を2℃/分~6℃/分の速度で90℃~120℃の温度に昇温させて1次反応させる段階;及び
その結果物を2℃/分~6℃/分の速度で140℃~180℃の温度に昇温させて2次反応させる段階;を含む、請求項
5に記載の半導体素子テストソケット用成形体の製造方法。
【請求項9】
前記ポリイミド樹脂は充填剤を含まないことを特徴とする、請求項
5に記載の半導体素子テストソケット用成形体の製造方法。
【請求項10】
成形されたポリイミド樹脂を焼成する段階をさらに含む、請求項
5に記載の半導体素子テストソケット用成形体の製造方法。
【請求項11】
前記焼成する段階は、成形されたポリイミド樹脂を窒素雰囲気で300℃~500℃の温度で5時間~15時間焼成することである、請求項
10に記載の半導体素子テストソケット用成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的物性に優れ、表面抵抗安定性が飛び抜けている半導体素子テストソケット用成形体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド樹脂は、芳香族テトラカルボキシル酸又はその誘導体と芳香族ジアミン又は芳香族ジイソシアネート(diisocyanate)とを反応させた後にイミド化して製造される高耐熱樹脂である。ポリイミド樹脂は、使用された単量体の種類によって様々な分子構造を有し得る。
【0003】
一方、半導体素子は、製造された後、製品の信頼性を確認するために各種テストを行う。半導体素子テストソケットは、テストソケットの非破壊状態で半導体素子の電気信号検査に用いられている。電気信号検査時に、半導体素子の導電部接触部位とソケットの上端部が適当な圧力で押され、ソケットの反復接触回数は数万回以上となる。すなわち、テストソケットの数十~数百個の導電性ピンが同時に接触して電気検査を行う。
【0004】
したがって、半導体素子テストソケットに使用される材料は、様々な応力作動状況下で発生する歪みなどの変形に強い必要があるため、屈曲モジュラスが高い、耐摩耗性に優れる、微細ホール加工のための加工性に優れる、ことが要求される。
【0005】
また、数回の半導体素子の性能特性評価後に、テストソケット表面から汚染物質を除去するためのレーザーを用いた乾式洗浄システムに適用されるためには、レーザーに対する表面抵抗安定性に優れていなければならない。
【0006】
そこで、上記のような高い屈曲モジュラス、優れた寸法安定性、及び高密度エネルギーに対する表面安定性と優れた加工性を有する半導体素子テストソケット用材料を開発し、半導体製造工程の収率向上とテストソケットの寿命向上のために努力しつつある現状である。
【0007】
しかしなから、上のような努力にもかかわらず、テストソケットの歪み又は破壊によって接触不良又は不安定な環境が持続しており、そのため、正常な半導体素子も不良として処理されるなどの問題点が発生している。また、乾式洗浄システムへの適用時にレーザーによってテストソケットの表面が損傷して寿命が短縮する問題点も依然として残っている。
【0008】
結果として、屈曲モジュラス、寸法安定性などの機械的物性が良く、高密度エネルギーに対する表面安定性及び優れた加工性を有する素材の開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、屈曲モジュラス、ヤング率、引張強度、伸び率などの機械的物性に優れ、レーザーに対する表面抵抗安定性が飛び抜けている半導体素子テストソケット用成形体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
本発明の目的は、以上に言及した目的に限定されない。本発明の目的は、以下の説明からより明らかになり、特許請求の範囲に記載された手段及びその組合せによって実現されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施例に係る半導体素子テストソケット用成形体は、ジアミン化合物及び酸二無水物化合物が重合されたポリイミド樹脂を含み、200mJ~500mJのエネルギーを有するレーザーに5,000回以上露出時に、表面抵抗が1×109Ω/sq以上であるものであってよい。
【0012】
前記成形体は、水分吸収率が0.15%以下であってよい。
【0013】
前記成形体は、屈曲モジュラスが5,000MPa~6,000MPa、ヤング率が3,000MPa~4,000MPa、引張強度が100~200MPa、伸び率が4%~10%であってよい。
【0014】
前記成形体は、充填剤を含まないものであってよい。
【0015】
前記ジアミン化合物は、パラフェニレンジアミン(p-PDA)60重量%~80重量%及びメタフェニレンジアミン(m-PDA)20重量%~40重量%を含んでよい。
【0016】
前記酸二無水物化合物は、ビフタル酸二無水物(BPDA)50重量%~60重量%及びピロメリト酸二無水物(PMDA)40重量%~50重量%を含んでよい。
【0017】
本発明の一実施例に係る半導体素子テストソケット用成形体の製造方法は、ジアミン化合物と酸二無水物化合物とを重合してポリイミド樹脂を製造する段階;及び、前記ポリイミド樹脂を成形する段階;を含んでよい。
【0018】
前記ポリイミド樹脂を製造する段階は、前記ジアミン化合物と前記酸二無水物化合物を含む溶液を2℃/分~6℃/分の速度で90℃~120℃の温度に昇温させて1次反応させる段階;及び、その結果物を2℃/分~6℃/分の速度で140℃~180℃の温度に昇温させて2次反応させる段階;を含んでよい。
【0019】
前記製造方法は、成形されたポリイミド樹脂を焼成する段階をさらに含んでよい。
【0020】
前記焼成する段階は、成形されたポリイミド樹脂を窒素雰囲気で300℃~500℃の温度で5時間~15時間焼成することであってよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、屈曲モジュラス、ヤング率、引張強度、伸び率などの機械的物性に優れ、レーザーに対する表面抵抗安定性が飛び抜けている半導体素子テストソケット用成形体を得ることができる。
【0022】
本発明の効果は、以上で言及した効果に限定されない。本発明の効果は、以下の説明から推論可能ないかなる効果も含むものと理解できよう。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以上の本発明の目的、他の目的、特徴及び利点は、添付の図面と関連した以下の好ましい実施例から容易に理解されよう。ただし、本発明は、ここで説明される実施例に限定されず、他の形態で具体化されてもよい。むしろ、ここで紹介される実施例は、開示された内容が徹底且つ完全になり得るように、そして通常の技術者に本発明の思想が十分に伝達され得るようにするために提供されるものである。
【0024】
各図を説明しながら類似の参照符号を類似の構成要素に対して使用した。添付の図面において、構造物の寸法は、本発明の明確性のために実際よりも拡大して示される。第1、第2などの用語は、様々な構成要素を説明するために使われてよいが、これらの構成要素は当該用語によって限定されてはならない。これらの用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的で使われるだけである。例えば、本発明の権利範囲を逸脱しない範囲で第1構成要素は第2構成要素と命名されてよく、類似に、第2構成要素も第1構成要素と命名されてよい。単数の表現は、文脈において特に断らない限り、複数の表現を含む。
【0025】
本明細書において、「含む」又は「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つ又はそれ以上の他の特徴、数字、段階、動作、構成要素、部分品又はこれらを組み合わせたものの存在又は付加の可能性をあらかじめ排除しないものと理解されるべきである。また、層、膜、領域、板どの部分が他の部分の「上に」あるとする場合に、これは、他の部分の「真上に」ある場合だけでなく、その中間にさらに他の部分がある場合も含む。類似に、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「下部に」あるとする場合に、これは、他の部分の「真下に」ある場合だけでなく、その中間にさらに他の部分がある場合も含む。
【0026】
別に断りのない限り、本明細書で使われる成分、反応条件、ポリマー組成物及び配合物の量を表す全ての数字、値及び/又は表現は、これらの数字が本質的に異なる物からこのような値を得る上で発生する測定の様々な不確実性が反映された近似値である点で、全ての場合において「約」という用語で修飾されるものと理解されるべきである。また、本記載において数値範囲が開示される場合に、このような範囲は連続的であり、特記しない限り、このような範囲の最小値から最大値を含む該最大値までの全ての値を含む。さらに、このような範囲が整数を示す場合に、特記しない限り、最小値から最大値を含む該最大値までの全ての整数が含まれる。
【0027】
本発明に係る半導体素子テストソケット用成形体は、ジアミン化合物及び酸二無水物化合物が重合されたポリイミド樹脂を含み、200mJ~500mJのエネルギーを有するレーザーに5,000回以上露出時に、表面抵抗が1×109Ω/sq以上であることを特徴とする。
【0028】
前記成形体の表面抵抗を測定し、その表面の損傷無が確認できる。成形体の表面が損傷すると表面抵抗が低くなる。前記成形体が所定のエネルギーを有するレーザーへの露出時に表面抵抗が1×109Ω/sq以上であるということは、表面の損傷が少ないため、半導体素子テストソケットとして再び使用可能であることを意味する。前記成形体の表面抵抗の上限値は特に限定されず、例えば、1×1010Ω/sq以下、又は1×1011Ω/sq以下、又は1×1012Ω/sq以下であってよい。
【0029】
また、前記成形体は、水分吸収率が0.15%以下であることを特徴とする。表面抵抗の安定性及び水分吸収率は相容れない関係(Trade-off)にあるが、本発明は、ポリイミドを構成する成分の含有量を適切に調節し、表面抵抗の安定性及び水分吸収率がバランスよく向上し得るようにした。前記水分吸収率の下限値は特に限定されず、例えば、0.01%以上、又は0.05%以上、又は0.10%以上であってよい。
【0030】
一方、前記成形体は、屈曲モジュラスが5,000MPa~6,000MPa、ヤング率が3,000MPa~4,000MPa、引張強度が100~200MPa、伸び率が4%~10%であることを特徴とする。前記成形体は、このような機械的物性に非常に優れており、様々な応力作動状況下でも飛び抜けた寸法安定性を示す。
【0031】
以下、前記成形体に含まれたポリイミド樹脂について具体的に説明する。
【0032】
前記ポリイミド樹脂は、ジアミン化合物及び酸二無水物化合物が重合されたものであってよい。
【0033】
前記ジアミン化合物は、芳香族ジアミン単量体が1種以上含まれた混合物であり、4,4-オキシジアニリン(ODA)、パラフェニレンジアミン(p-PDA)、メタフェニレンジアミン(m-PDA)、4,4-メチレンジアニリン(MDA)、2,2-ビスアミノフェニルヘキサフルオロプロパン(HFDA)、メタビスアミノフェノキシジフェニルスルホン(m-BAPS)、パラビスアミノフェノキシジフェニルスルホン(p-BAPS)、1,4-ビスアミノフェノキシベンゼン(TPE-Q)、ビスアミノフェノキシベンゼン(TPE-R)、2,2-ビスアミノフェノキシフェニルプロパン(BAPP)、2,2-ビスアミノフェノキシフェニルヘキサフルオロプロパン(HFBAPP)、4,4-ベンズアニリド(DABA)及びこれらの組合せからなる群から選ばれる少なくともいずれか一つを含んでよい。
【0034】
具体的には、前記ジアミン化合物は、パラフェニレンジアミン(p-PDA)60重量%~80重量%、及びメタフェニレンジアミン(m-PDA)20重量%~40重量%を含んでよい。このように前記ジアミン化合物の各成分の含有量にすると、表面抵抗、水分吸収率及び機械的物性が均一に向上し得る。
【0035】
前記酸二無水物化合物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物単量体が1種以上含まれた混合物であり、ピロメリト酸二無水物(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボキシル酸二無水物(BTDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、ビフタル酸二無水物(BPDA)、ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物(6-FDA)及びこれらの組合せからなる群から選ばれる少なくともいずれか一つを含んでよい。
【0036】
具体的には、前記酸二無水物化合物は、ビフタル酸二無水物(BPDA)50重量%~60重量%、及びピロメリト酸二無水物(PMDA)40重量%~50重量%を含んでよい。このように前記酸二無水物化合物の各成分の含有量にすると、充填剤を使用しなくとも成形品の屈曲モジュラス、伸び率などの機械的物性を向上させることができる。
【0037】
前記ポリイミド樹脂は、下記の化学式1で表現されてよい。
[化学式1]
【化1】
【0038】
上記の化学式1において、
【化2】
からなる群から選ばれるものであってよい。
【0039】
【化3】
からなる群から選ばれるものであり、前記nは、170~680であってよい。
【0040】
具体的には、前記ポリイミド樹脂は、下記の化学式2~化学式5で表現されるもののうち少なくともいずれか一つを含んでよい。
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
前記a~dはそれぞれ、100~550であってよい。
【0046】
前記ポリイミド樹脂は、固有粘度が0.7dl/g~2.5dl/g、結晶化度が20%~30%、比表面積(粉末状態のポリイミド樹脂基準)が50m2/g~400m2/g、イミド化度は98%~99%であってよい。前記ポリイミド樹脂は、低い結晶化度、高いイミド化度及び比表面積を有するため、成形性に優れ、効果的に圧縮成形可能である。
【0047】
本発明に係る半導体素子テストソケット用成形体の製造方法は、ジアミン化合物と酸二無水物化合物とを重合してポリイミド樹脂を製造する段階、及び前記ポリイミド樹脂を成形する段階を含んでよい。
【0048】
本発明は、前記ポリイミド樹脂を製造するとき、ジアミン化合物と酸二無水物化合物を含む溶液を徐々に昇温させてイミド化重合を行うことによって、成形体の耐熱性、屈曲モジュラスなどの機械的物性、表面抵抗安定性を大きく向上させたことを特徴とする。
【0049】
具体的には、前記ポリイミド樹脂を製造する段階は、ジアミン化合物を溶媒に溶解させる段階、ここに酸二無水物を提供して溶液を得る段階、前記溶液を所定の温度で1次反応させる段階、及び1次反応の結果物を、1次反応に比べて高い温度で2次反応させる段階を含んでよい。
【0050】
まず、撹拌器、温度調節装置及び窒素注入装置などが備えられている反応器にジアミン化合物を入れ、溶媒に完全に溶解させる。その後、室温で前記溶解液に窒素ガスを通過させて30分間撹拌する。
【0051】
このとき、前記溶媒は極性溶媒を含んでよい。前記極性溶媒は、高沸点の有機極性溶媒であれば特に限定されない。例えば、混合クレゾール、混合キシレン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジエチルアセテート(DEA)及び3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド(DMPA)からなる群から選ばれる少なくともいずれか一つを含んでよい。
【0052】
前記ジアミン化合物を溶解させた後、それを1時間~2時間加熱してその温度を60℃~80℃に上げ、ここに酸二無水物を提供して溶液を得ることができる。このとき、前記溶液の固形分含有量は、6重量%~16重量%、又は8重量%~12重量%であってよい。
【0053】
その後、前記溶液を2℃/分~6℃/分の速度で90℃~120℃の温度に昇温させて2時間~3時間1次反応させ、その結果物を2℃/分~6℃/分の速度で140℃~180℃の温度に昇温させて1時間~2時間2次反応させてポリイミド樹脂を得ることができる。好ましくは、前記溶液を3℃/分~5℃/分の速度で90℃~120℃の温度に昇温させて2時間~3時間1次反応させ、その結果物を3℃/分~5℃/分の速度で160℃~180℃の温度に昇温させて1時間~2時間2次反応させてポリイミド樹脂を得ることができる。
【0054】
このとき、イミド化反応の反応性を高めるために、前記溶液に触媒を供給することができる。前記触媒は、本発明の目的に反しなく、効果を顕著に損傷させない範囲で反応性を向上させ得るものであれば、特に限定されない。例えば、前記触媒は、トリメチルアミン(Trimethylamine)、キシレン(Xylene)、ピリジン(Pyridine)、キノリン(Quinoline)及びこれらの組合せからなる群から選ばれてよい。本発明では、前記触媒に加えて、可塑剤、酸化防止剤、難燃化剤、分散剤、粘度調節剤、レベリング剤及びこれらの組合せからなる群から選ばれるいずれか一つをさらに含んでよく、これも、本発明の目的及び効果を顕著に損傷させない範囲内で必要によって選択して使用することができる。
【0055】
前記イミド化反応が終了すると、前記ポリイミド樹脂を濾過し、有機溶媒で洗浄することができる。このとき、使用される有機溶媒は、沸点が低い有機溶媒であれば特に限定されない。例えば、アセトン、メチルアルコールなどが挙げられる。
【0056】
前記ポリイミド樹脂を洗浄した後、洗浄したポリイミド樹脂を10-1Torr以下の圧力、窒素ガス雰囲気及び100℃~250℃の温度で乾燥させることができる。好ましくは、前記乾燥温度は160℃~220℃、より好ましくは170℃~200℃であってよい。
【0057】
乾燥したポリイミド樹脂を10-1~103Torrの圧力、窒素ガス雰囲気、及び250℃~400℃の温度で再乾燥させることができる。好ましくは、再乾燥温度及び圧力は280℃~370℃及び10~103Torr、より好ましくは300℃~350℃及び102~103Torrであってよい。
【0058】
その後、前記ポリイミド樹脂を所定の形状に成形することができる。また、本発明に係る成形体の製造方法は、成形されたポリイミド樹脂を焼成する段階をさらに含んでよい。具体的には、前記ポリイミド樹脂を50,000psi~100,000psiの圧力で圧縮成形し、圧縮成形したポリイミド樹脂を窒素雰囲気で300℃~500℃の温度で5時間~15時間焼成できる。これにより、耐熱性及び機械的物性に優れた成形品を製造することができる。一方、前記圧縮成形及び焼成を同時に加えて成形品を製造してもよい。
【0059】
本発明に係る成形品は、半導体素子テストソケットの他にも、電気電子産業、自動車産業、半導体産業及び宇宙航空産業など、様々な先端産業分野の核心耐熱部品として使用することができる。
【0060】
以下、具体的な実施例を用いて本発明をより具体的に説明する。下記の実施例は、本発明の理解を助けるための例示に過ぎず、本発明の範囲がこれに限定されるものではない。
【0061】
実施例1:p-PDA(80%)/m-PDA(20%)+BPDA(50%)/PMDA(50%)
撹拌器、温度調節装置、窒素注入装置が取り付けられた2リットルの反応器に、29.59gのパラフェニレンジアミン(p-PDA)と7.39gのメタフェニレンジアミン(m-PDA)を入れ、672.4gのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に溶解させる。その後、448.3gの混合キシレン(mixed xylene)を投入後に室温で窒素ガスを通過させる。室温で60~80℃に1~2時間徐々に温度を上げながら37.31gのピロメリト酸二無水物(PMDA)、50.32gのビフタル酸二無水物(BPDA)を注入する。この時、固形分の濃度は10重量%と固定し、60~80℃で1~2時間反応させ、反応溶液の温度を90~120℃に3℃/分の速度で徐々に上昇させて2~3時間撹拌し、160~180℃温度まで3℃/分の速度で昇温させた後、1~2時間撹拌してイミド化反応させる。反応が終了すると、沈殿したポリイミド重合体を濾過し、2リットルのアセトンで洗浄した後、190℃、10-1torrの真空状態及び窒素気流下で16時間乾燥させる。乾燥後に、成形前の再乾燥は、温度300℃、103Torrの窒素気流下で8時間乾燥する。製造されたポリイミド樹脂粉末は、濃い硫酸を溶媒にして0.2g/dlの濃度で30℃で測定した固有粘度が1.7dl/gであり、イミド化度は99%であった。前記の粉末を100,000psiの圧力で成形し、400℃で11時間焼結して成形品を製造した。
【0062】
実施例2:p-PDA(75%)/m-PDA(25%)+BPDA(60%)/PMDA(40%)
ジアミン化合物と酸二無水物化合物の組成を下記表1のように調節した以外は、実施例1と同じ方法でポリイミド樹脂を製造した。実施例2によるポリイミド樹脂粉末は、濃い硫酸を溶媒にして0.2g/dlの濃度で30℃で測定した固有粘度が1.7dl/gであり、イミド化度は99%であった。前記の粉末を100,000psiの圧力で成形し、400℃で11時間焼結して成形品を製造した。
【0063】
実施例3:p-PDA(75%)/m-PDA(25%)+BPDA(50%)/PMDA(50%)
ジアミン化合物と酸二無水物化合物の組成を下記表1のように調節した以外は、実施例1と同じ方法でポリイミド樹脂を製造した。実施例3によるポリイミド樹脂粉末は、濃い硫酸を溶媒にして0.2g/dlの濃度で30℃で測定した固有粘度が1.8dl/gであり、イミド化度は99%であった。前記の粉末を100,000psiの圧力で成形し、400℃で11時間焼結して成形品を製造した。
【0064】
実施例4:p-PDA(70%)/m-PDA(30%)+BPDA(60%)/PMDA(40%)
ジアミン化合物と酸二無水物化合物の組成を下記表1のように調節した以外は、実施例1と同じ方法でポリイミド樹脂を製造した。実施例4によるポリイミド樹脂粉末は、濃い硫酸を溶媒にして0.2g/dlの濃度で30℃で測定した固有粘度が1.7dl/gであり、イミド化度は99%であった。前記の粉末を100,000psiの圧力で成形し、400℃で11時間焼結して成形品を製造した。
【0065】
実施例5:p-PDA(70%)/m-PDA(30%)+BPDA(55%)/PMDA(45%)
ジアミン化合物と酸二無水物化合物の組成を下記表1のように調節した以外は、実施例1と同じ方法でポリイミド樹脂を製造した。実施例5によるポリイミド樹脂粉末は、濃い硫酸を溶媒にして0.2g/dlの濃度で30℃で測定した固有粘度が1.7dl/gであり、イミド化度は99%であった。前記の粉末を100,000psiの圧力で成形し、400℃で11時間焼結して成形品を製造した。
【0066】
実施例6:p-PDA(70%)/m-PDA(30%)+BPDA(50%)/PMDA(50%)
ジアミン化合物と酸二無水物化合物の組成を下記表1のように調節した以外は、実施例1と同じ方法でポリイミド樹脂を製造した。実施例6によるポリイミド樹脂粉末は、濃い硫酸を溶媒にして0.2g/dlの濃度で30℃で測定した固有粘度が1.7dl/gであり、イミド化度は99%であった。前記の粉末を100,000psiの圧力で成形し、400℃で11時間焼結して成形品を製造した。
【0067】
実施例7:p-PDA(60%)/m-PDA(40%)+BPDA(50%)/PMDA(50%)
ジアミン化合物と酸二無水物化合物の組成を下記表1のように調節した以外は、実施例1と同じ方法でポリイミド樹脂を製造した。実施例7によるポリイミド樹脂粉末は、濃い硫酸を溶媒にして0.2g/dlの濃度で30℃で測定した固有粘度が1.7dl/gであり、イミド化度は99%であった。前記の粉末を100,000psiの圧力で成形し、400℃で11時間焼結して成形品を製造した。
【0068】
比較例1
ジアミン化合物と酸二無水物化合物の組成を下記表1のように調節した以外は、実施例1と同じ方法でポリイミド樹脂を製造した。比較例1によるポリイミド樹脂粉末は、濃い硫酸を溶媒にして0.2g/dlの濃度で30℃で測定した固有粘度が1.1dl/gであり、イミド化度は99%であった。前記の粉末を100,000psiの圧力で成形し、400℃で11時間焼結して成形品を製造した。
【0069】
比較例2
ジアミン化合物と酸二無水物化合物の組成を下記表1のように調節した以外は、実施例1と同じ方法でポリイミド樹脂を製造した。具体的には、メタフェニレンジアミン(m-PDA)に代えて4,4-オキシジアニリン(ODA)を添加するが、その含有量を調節し、酸二無水物化合物としてビフタル酸二無水物(BPDA)のみを使用した。比較例2によるポリイミド樹脂粉末は、濃い硫酸を溶媒にして0.2g/dlの濃度で30℃で測定した固有粘度が1.2dl/gであり、イミド化度は99%であった。前記の粉末を100,000psiの圧力で成形し、400℃で11時間焼結して成形品を製造した。
【0070】
比較例3
ジアミン化合物と酸二無水物化合物の組成を下記表1のように調節した以外は、実施例1と同じ方法でポリイミド樹脂を製造した。具体的には、ジアミン化合物として4,4-オキシジアニリン(ODA)のみを使用し、酸二無水物化合物としてピロメリト酸二無水物(PMDA)のみを使用した。比較例3によるポリイミド樹脂粉末は、濃い硫酸を溶媒にして0.2g/dlの濃度で30℃で測定した固有粘度が1.4dl/gであり、イミド化度は99%であった。前記の粉末を100,000psiの圧力で成形し、400℃で11時間焼結して成形品を製造した。
【0071】
比較例4
ジアミン化合物と酸二無水物化合物の組成を下記表1のように調節した以外は、実施例1と同じ方法でポリイミド樹脂を製造した。比較例4によるポリイミド樹脂粉末は、濃い硫酸を溶媒にして0.2g/dlの濃度で30℃で測定した固有粘度が1.3dl/gであり、イミド化度は99%であった。前記の粉末を100,000psiの圧力で成形し、400℃で11時間焼結して成形品を製造した。
【0072】
比較例5
ジアミン化合物と酸二無水物化合物の組成を下記表1のように調節した以外は、実施例1と同じ方法でポリイミド樹脂を製造した。比較例5によるポリイミド樹脂粉末は、濃い硫酸を溶媒にして0.2g/dlの濃度で30℃で測定した固有粘度が1.9dl/gであり、イミド化度は99%であった。前記の粉末を100,000psiの圧力で成形し、400℃で11時間焼結して成形品を製造した。
【0073】
比較例6
ジアミン化合物と酸二無水物化合物の組成を下記表1のように調節した以外は、実施例1と同じ方法でポリイミド樹脂を製造した。比較例6によるポリイミド樹脂粉末は、濃い硫酸を溶媒にして0.2g/dlの濃度で30℃で測定した固有粘度が1.7dl/gであり、イミド化度は99%であった。前記の粉末を100,000psiの圧力で成形し、400℃で11時間焼結して成形品を製造した。
【0074】
比較例7
ジアミン化合物と酸二無水物化合物の組成を下記表1のように調節した以外は、実施例1と同じ方法でポリイミド樹脂を製造した。比較例7によるポリイミド樹脂粉末は、濃い硫酸を溶媒にして0.2g/dlの濃度で30℃で測定した固有粘度が1.7dl/gであり、イミド化度は99%であった。前記の粉末を100,000psiの圧力で成形し、400℃で11時間焼結して成形品を製造した。
【0075】
比較例8
ジアミン化合物と酸二無水物化合物の組成を下記表1のように調節した以外は、実施例1と同じ方法でポリイミド樹脂を製造した。比較例8によるポリイミド樹脂粉末は、濃い硫酸を溶媒にして0.2g/dlの濃度で30℃で測定した固有粘度が1.5dl/gであり、イミド化度は99%であった。前記の粉末を100,000psiの圧力で成形し、400℃で11時間焼結して成形品を製造した。
【0076】
【0077】
上記の実施例1~実施例7及び比較例1~比較例8による成形品に対するレーザー露出試験から、表面抵抗安定性を評価した。具体的には、エネルギー強度200mJ、秒当たり露出回数5回の条件で各成形品をレーザーに露出させ、その表面抵抗が1×109Ω/sq以上に維持された露出回数を測定した。その結果は表2の通りである。
【0078】
また、前記実施例1~実施例7及び比較例1~比較例8による成形品の引張強度、伸び率、屈曲モジュラス、水分吸収率をASTM D1708、ASTM D790及びASTM D570に準じて測定した。その結果は表2の通りである。
【0079】
【0080】
表2を参照すると、比較例1及び比較例2は、機械的物性、水分吸収率には優れているが、表面安定性に非常に劣る。一方、比較例3は、表面安定性には優れているが、屈曲モジュラス、ヤング率、伸び率が目的するレベルに至っていない。
【0081】
また、比較例4~比較例8は、実施例1~実施例7と比較して表面安定性に多少劣っていることが分かる。
【0082】
結果として、本発明は、充填剤を使用せずに、高い屈曲モジュラス、優れた寸法安定性及び高密度エネルギーに対する表面安定性と優れた加工性を有するポリイミド樹脂粉末を製造する上で効果的な組成を発見し、従来の技術に比べて簡易であり、経済的にも競争力があり、優れた物性の製品を生産する新しい製造方法であることが分かる。
【0083】
以上、本発明の実施例について詳しく説明したが、本発明の権利範囲は上述の実施例に限定されず、添付する特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を用いた当業者の様々な変形及び改良形態も本発明の権利範囲に含まれる。