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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-10
(45)【発行日】2025-03-18
(54)【発明の名称】残置方法、吊り上げ方法、及び残置設備
(51)【国際特許分類】
   B63B 21/22 20060101AFI20250311BHJP
   B63B 21/16 20060101ALI20250311BHJP
   B63H 25/42 20060101ALI20250311BHJP
【FI】
B63B21/22 A
B63B21/16
B63H25/42 G
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2024089873
(22)【出願日】2024-06-03
【審査請求日】2024-06-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】藤原 弘一
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第4637335(US,A)
【文献】特開2018-34650(JP,A)
【文献】特表2024-519052(JP,A)
【文献】米国特許第6350085(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2022/0169345(US,A1)
【文献】特開2012-201297(JP,A)
【文献】米国特許第6588985(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 21/00- 21/66
B63H 25/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1船から吊り下げられる第1チェーンを海底に残置する残置方法であって、
前記第1チェーンの一端であって前記第1船の側の一端の近傍に第1捻れ抑制部材を取り付ける第1取り付け工程と、
前記第1取り付け工程にて前記第1捻れ抑制部材が取り付けられた前記第1チェーンを前記第1船から海中に吊り下げる吊り下げ工程と、
前記吊り下げ工程にて吊り下げられた前記第1チェーンを海底に残置する残置工程と、を含
前記吊り下げ工程は、前記第1チェーンが前記第1船から海底まで延びる状態から開始される、
ことを特徴とする残置方法。
【請求項2】
第1船から吊り下げられる第1チェーンを海底に残置する残置方法であって、
前記第1チェーンの一端であって前記第1船の側の一端の近傍に第1捻れ抑制部材を取り付ける第1取り付け工程と、
前記第1取り付け工程にて前記第1捻れ抑制部材が取り付けられた前記第1チェーンを前記第1船から海中に吊り下げる吊り下げ工程と、
前記吊り下げ工程にて吊り下げられた前記第1チェーンを海底に残置する残置工程と、
前記残置工程にて海底に残置された前記第1チェーンを海底から吊り上げる吊り上げ工程と、
前記吊り上げ工程にて海底から吊り上げられた前記第1チェーンを、浮体構造物に接続する接続工程と、を含
前記接続工程にて前記第1チェーンが接続される浮体構造物は、前記吊り下げ工程にて使用される前記第1船とは異なる、
ことを特徴とする残置方法。
【請求項3】
第1船から吊り下げられる第1チェーンを海底に残置する残置方法であって、
前記第1チェーンの一端であって前記第1船の側の一端の近傍に第1捻れ抑制部材を取り付ける第1取り付け工程と、
前記第1取り付け工程にて前記第1捻れ抑制部材が取り付けられた前記第1チェーンを前記第1船から海中に吊り下げる吊り下げ工程と、
前記吊り下げ工程にて吊り下げられた前記第1チェーンを海底に残置する残置工程と、を含
前記第1取り付け工程は、前記第1船の上で行われる、
ことを特徴とする残置方法。
【請求項4】
第1船から吊り下げられる第1チェーンを海底に残置する残置方法であって、
前記第1チェーンの一端であって前記第1船の側の一端の近傍に第1捻れ抑制部材を取り付ける第1取り付け工程と、
前記第1取り付け工程にて前記第1捻れ抑制部材が取り付けられた前記第1チェーンを前記第1船から海中に吊り下げる吊り下げ工程と、
前記吊り下げ工程にて吊り下げられた前記第1チェーンを海底に残置する残置工程と、を含み、
前記第1捻れ抑制部材は、海水の抵抗を受けることにより、前記第1チェーンの捻れを抑制する、
ことを特徴とする残置方法。
【請求項5】
第1船から吊り下げられる第1チェーンを海底に残置する残置方法であって、
前記第1チェーンの一端であって前記第1船の側の一端の近傍に第1捻れ抑制部材を取り付ける第1取り付け工程と、
前記第1取り付け工程にて前記第1捻れ抑制部材が取り付けられた前記第1チェーンを前記第1船から海中に吊り下げる吊り下げ工程と、
前記吊り下げ工程にて吊り下げられた前記第1チェーンを海底に残置する残置工程と、を含み、
前記第1捻れ抑制部材の位置であって前記一端の近傍が取り付けられる位置は、前記第1捻れ抑制部材の部分であって前記位置よりも一方の側の部分が受ける海水の抵抗と、前記第1捻れ抑制部材の部分であって前記位置よりも他方の側の部分が受ける海水の抵抗と、が略等しくなる位置である、
ことを特徴とする残置方法。
【請求項6】
第1船から吊り下げられる第1チェーンを海底に残置する残置方法であって、
前記第1チェーンの一端であって前記第1船の側の一端の近傍に第1捻れ抑制部材を取り付ける第1取り付け工程と、
前記第1取り付け工程にて前記第1捻れ抑制部材が取り付けられた前記第1チェーンを前記第1船から海中に吊り下げる吊り下げ工程と、
前記吊り下げ工程にて吊り下げられた前記第1チェーンを海底に残置する残置工程と、を含み、
前記第1捻れ抑制部材に第1回転拘束治具を接続する第1接続工程、を更に備えることを特徴とする残置方法。
【請求項7】
前記第1回転拘束治具は、第2船に接続される、
ことを特徴とする請求項に記載の残置方法。
【請求項8】
第1船から吊り下げられる第1チェーンを海底に残置する残置方法であって、
前記第1チェーンの一端であって前記第1船の側の一端の近傍に第1捻れ抑制部材を取り付ける第1取り付け工程と、
前記第1取り付け工程にて前記第1捻れ抑制部材が取り付けられた前記第1チェーンを前記第1船から海中に吊り下げる吊り下げ工程と、
前記吊り下げ工程にて吊り下げられた前記第1チェーンを海底に残置する残置工程と、を含み、
前記第1船と前記第1捻れ抑制部材とは、ワイヤーロープを介して繋がっている、ことを特徴とする残置方法。
【請求項9】
前記吊り下げ工程にて、前記第1チェーンは、前記ワイヤーロープを介し、前記第1船に設けられるウィンチを用いて吊り下げられる、
ことを特徴とする請求項に記載の残置方法。
【請求項10】
前記第1捻れ抑制部材と前記ワイヤーロープとは、スイベルを介して繋がっている、ことを特徴とする請求項に記載の残置方法。
【請求項11】
第1船から吊り下げられる第1チェーンを海底に残置する残置方法であって、
前記第1チェーンの一端であって前記第1船の側の一端の近傍に第1捻れ抑制部材を取り付ける第1取り付け工程と、
前記第1取り付け工程にて前記第1捻れ抑制部材が取り付けられた前記第1チェーンを前記第1船から海中に吊り下げる吊り下げ工程と、
前記吊り下げ工程にて吊り下げられた前記第1チェーンを海底に残置する残置工程と、を含み、
前記残置工程にて、前記吊り下げ工程にて吊り下げられた前記第1チェーンの前記一端を海底に残置する、
ことを特徴とする残置方法。
【請求項12】
第1船から吊り下げられる第1チェーンを海底に残置する残置方法であって、
前記第1チェーンの一端であって前記第1船の側の一端の近傍に第1捻れ抑制部材を取り付ける第1取り付け工程と、
前記第1取り付け工程にて前記第1捻れ抑制部材が取り付けられた前記第1チェーンを前記第1船から海中に吊り下げる吊り下げ工程と、
前記吊り下げ工程にて吊り下げられた前記第1チェーンを海底に残置する残置工程と、を含み、
前記残置工程の後、前記第1チェーンから前記第1捻れ抑制部材を取り外す取り外し工程、
を更に含むことを特徴とする残置方法。
【請求項13】
請求項12に記載の残置方法によって残置された前記第1チェーンを吊り上げる吊り上げ方法であって、
前記取り外し工程の後、前記一端の近傍に前記第1捻れ抑制部材又は第2捻れ抑制部材を取り付け、前記一端を吊り上げる吊り上げ工程、
を含むことを特徴とする吊り上げ方法。
【請求項14】
浮体構造物を係留チェーンにより洋上に係留するために、前記係留チェーンを海底に残置させる残置設備であって、
ウィンチを有する第1船と、
前記ウィンチに巻き回されるワイヤーロープと、
前記ワイヤーロープに接続される前記係留チェーンと、
前記係留チェーンに取り付けられる第1捻れ抑制部材と、
を備え
前記第1捻れ抑制部材は、海中に位置して、前記係留チェーンの捻れを抑制する、
ことを特徴とする残置設備。
【請求項15】
浮体構造物を係留チェーンにより洋上に係留するために、前記係留チェーンを海底に残置させる残置設備であって、
ウィンチを有する第1船と、
前記ウィンチに巻き回されるワイヤーロープと、
前記ワイヤーロープに接続される前記係留チェーンと、
前記係留チェーンに取り付けられる第1捻れ抑制部材と、
を備え
前記ワイヤーロープは、前記係留チェーンの一端であって前記第1船の側の一端の近傍に接続される、
ことを特徴とする残置設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、残置方法、吊り上げ方法、及び残置設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浮体構造物の係留等のために用いられるチェーンの捻れ、を抑制することが行われている。
特許文献1は、作業船に備えた専用のウインドラスを使用することにより、係留チェーンへの捻れの発生を抑制すること、を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-34650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
浮体構造物が設置場所に到着するまでの間、浮体構造物を係留するチェーンを海底に残置させることがある。チェーンを海底に残置させる際に、特許文献1とは異なる方法により、チェーンの捻れを抑制することが求められる。
【0005】
本開示は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、チェーンが捻れることを抑えつつ、チェーンを海底に残置し、あるいは海底から吊り上げることができる残置方法、吊り上げ方法、及び残置設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る残置方法は、第1船から吊り下げられる第1チェーンを海底に残置する残置方法であって、前記第1チェーンの一端であって前記第1船の側の一端の近傍に第1捻れ抑制部材を取り付ける第1取り付け工程と、前記第1取り付け工程にて前記第1捻れ抑制部材が取り付けられた前記第1チェーンを前記第1船から海中に吊り下げる吊り下げ工程と、前記吊り下げ工程にて吊り下げられた前記第1チェーンを海底に残置する残置工程と、を含む、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、チェーンが捻れることを抑えつつ、チェーンを海底に残置し、あるいは海底から吊り上げることができる残置方法、吊り上げ方法、及び残置設備を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】作業船によってチェーンの吊り下げ又は吊り上げを行う工程の模式図である。
図2】実施形態に係る残置設備の全体図である。
図3図2に示すIII部の拡大図である。
図4図3の変形例である。
図5】第1接続工程及び吊り下げ工程を示す図である。
図6】残置工程を示す図である。
図7】取り外し工程を示す図である。
図8】第1チェーンの残置が完了した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照し、本開示の一実施形態に係る残置方法、吊り上げ方法、及び残置設備を説明する。
本実施形態では、後述する残置設備を用いて、海底にチェーンを残置する。あるいは、後述する残置設備を用いて、海底に残置されたチェーンを吊り上げる。海底に残置されたチェーンは、例えば、海底から吊り上げられた後、浮体構造物を洋上に係留するために用いられる。具体的には、例えば、残置設備を用いて、浮体構造物の設置場所にチェーンを海底に残置する。その状態で、チェーンを、浮体構造物が設置場所に到着するまで待機させる。浮体構造物が到着した後、チェーンを海底から吊り上げる。そして、海底から吊り上げたチェーンを、浮体構造物に接続する。このことで、浮体構造物等の施工の工程を柔軟に決定しやすくすることに寄与する。
【0010】
図1は、作業船BによってチェーンCの吊り下げ又は吊り上げを行う工程の模式図である。
なお、図1においては、状態S1、S2、S3、S4の作業船Bが示されている。これらの各状態の作業船Bは、いずれも同一の作業船Bである。すなわち、図1においては、作業船Bの状態が、状態S1からS4にかけて、あるいは状態S4からS1にかけて、それぞれ経時的に変化する過程を示している。
図1に示すように、チェーンCの吊り下げ又は吊り上げは、例えば、作業船Bから吊り下ろされるロープRに、チェーンCの一端が接続されて行われる。すなわち、本実施形態において、チェーンCの吊り下げ又は吊り上げとは、チェーンCの一端を吊り下げ又は吊り上げることをいう。なお、チェーンCの吊り下げ又は吊り上げは、予めチェーンCの他端が不図示のアンカー等によって海底SBに支持された状態で行われる。
【0011】
本実施形態において、チェーンCの吊り下げは、図1に示す状態S1、すなわち、チェーンCの一端が作業船Bに位置する状態から開始される。状態S1から状態S2及び状態S3にかけて示すように、ロープRを作業船Bから繰り出すことでチェーンCの一端を下方に移動させつつ、作業船BをチェーンCの他端から離れるように移動させる。このことで、チェーンCの吊り下げは、チェーンCが海底SBにおいて一の方向に延びるようにしつつ行われる。そして、状態S4に示すように、チェーンCの全体が海底SBに沿って延びた状態とされる。チェーンCは、この状態で海底SBに残置される。
【0012】
本実施形態において、チェーンCの吊り上げは、図1に示す状態S4、すなわち、チェーンCの全体が海底SBに沿って延びた状態から開始される。状態S4から状態S3及び状態S2にかけて示すように、ロープRを作業船Bによって引き上げることでチェーンCの一端を上方に移動させつつ、作業船BをチェーンCの他端に近づくように移動させる。このことで、チェーンCの吊り上げは、吊り下げ後のチェーンCが上述の状態S1に戻るようにしつつ行われる。換言すれば、チェーンCの吊り上げは、チェーンCの吊り下げの逆手順で行われる。
【0013】
本実施形態において、チェーンCの吊り下げ又は吊り上げを行う際、チェーンCに捻れが生じないようにすることが好ましい。
ここで、チェーンCに接続されるロープRには、例えばワイヤーロープが用いられる。ワイヤーロープは、例えば、らせん状の編み構造を有するものが用いられる。チェーンCの吊り下げ又は吊り上げを行う際、チェーンCの重さや、ワイヤーロープの自重によって、ワイヤーロープに引張力が付加される。このことでワイヤーロープの編み構造が伸ばされ、ワイヤーロープが長手方向を回転軸として捻れるように回転することがある。このワイヤーロープの回転がチェーンCに伝わると、チェーンCが捻れる原因となる。
【0014】
本実施形態では、上述のような原因によってチェーンCが捻じれることを抑えるため、チェーンCの吊り下げ又は吊り上げを、以下のようにして行う。
まずは、本実施形態において、チェーンCの吊り下げ又は吊り上げに用いる残置設備について説明する。
【0015】
(残置設備)
図2は、実施形態に係る残置設備1の全体図である。
図2に示す残置設備1は、例えば、浮体構造物を係留チェーン30により洋上に係留するために、係留チェーン30を海底SBに残置させる。なお、本実施形態において、浮体構造物を係留チェーン30により洋上に係留する構造は、例えば、いわゆるカテナリー係留構造である。本実施形態における係留チェーン30は、チェーンCのうち、浮体構造物の係留に用いられるものをいう。
図2に示すように、残置設備1は、第1船10と、ワイヤーロープ20と、係留チェーン30と、第1捻れ抑制部材40と、を備える。
【0016】
第1船10は、例えば、公知の作業船である。本実施形態において、第1船10は、ウィンチ10aを有する。ウィンチ10aは公知の構成である。ウィンチ10aは、残置設備1においてワイヤーロープ20の巻き上げ又は繰り出しを行う。
ワイヤーロープ20は、第1船10に設けられたウィンチ10aに巻き回される。ワイヤーロープ20は、係留チェーン30に接続される。このことで、ワイヤーロープ20は、係留チェーン30の吊り下げ又は吊り上げを行うために用いられる。本実施形態において、ワイヤーロープ20は、例えば、らせん状の編み構造を有する。
【0017】
係留チェーン30は、ワイヤーロープ20に接続される。具体的には、ワイヤーロープ20は、係留チェーン30の一端又は一端の近傍に接続される。本実施形態において、係留チェーン30の一端の近傍とは、係留チェーン30の一端から係留チェーン30の真ん中までの範囲をいう。
第1捻れ抑制部材40は、ワイヤーロープ20及び係留チェーン30に取り付けられる。すなわち、本実施形態において、係留チェーン30とワイヤーロープ20とは、第1捻れ抑制部材40を介して接続される。このことで、ワイヤーロープ20が捻れた場合であっても、ワイヤーロープ20の捻れが係留チェーン30に伝わらないようにする。このことで、係留チェーン30が捻れることが抑えられる。
以下、第1捻れ抑制部材40の詳細について説明する。
【0018】
(第1捻れ抑制部材の詳細)
図3は、図2に示すIII部の拡大図である。
図4は、図3の変形例である。
図3に示すように、第1捻れ抑制部材40は、例えば、水平バー41と、第1回転拘束治具42と、を備える。
【0019】
図3に示すように、水平バー41は、水平方向に沿って延びる棒状あるいは板状の部材である。水平バー41には、ワイヤーロープ20及び係留チェーン30が接続される。すなわち、本実施形態において、第1船10と第1捻れ抑制部材40とは、ワイヤーロープ20を介して繋がっている。また、ワイヤーロープ20と係留チェーン30とは、水平バー41を介して接続される。
【0020】
図3に示すように、水平バー41とワイヤーロープ20とは、例えば、スイベルSWを介して繋がっている。すなわち、第1捻れ抑制部材40とワイヤーロープ20とは、スイベルSWを介して繋がっている。スイベルSWは公知の構成である。スイベルSWは、水平バー41に設けられた第1取付部41aに取り付けられる。
水平バー41とワイヤーロープ20とがスイベルSWを介して繋がることで、例えば、ワイヤーロープ20がチェーンCの重さや自重によって捻れるように回転した場合であっても、ワイヤーロープ20の回転をスイベルSWによって吸収することができる。よって、ワイヤーロープ20の回転が水平バー41に伝わることを抑えることができる。このことで、ワイヤーロープ20が回転した場合であっても、係留チェーン30が捻じれることを抑えることができる。なおスイベルSWは無くてもよい。
【0021】
図3に示すように、水平バー41と係留チェーン30とは、例えば、カラビナCB及びラウンドスリングRSを介して繋がっている。カラビナCB及びラウンドスリングRSは公知の構成である。カラビナCBは、水平バー41に設けられた第2取付部41bにシャックルSHを介して取り付けられる。ラウンドスリングRSは、カラビナCBに取り付けられる。これにより、係留チェーン30に取り付けられたラウンドスリングRSを、カラビナCBに引っかけるようにすることで、水平バー41と係留チェーン30とを接続することができる。
ラウンドスリングRSは、例えば図3に示すように、係留チェーン30の一端に取り付けられる。このことで、第1船10のウィンチ10aによってワイヤーロープ20に接続された水平バー41を上下に移動させることで、係留チェーン30の吊り下げ又は吊り上げを可能にする。
あるいは、ラウンドスリングRSは、例えば図4に示すように、係留チェーン30の一端の近傍に取り付けられてもよい。この場合、係留チェーン30の一端は、例えば図4に示すように、係留チェーン30と水平バー41との接続部から吊り下げられた状態とされてもよい。
なおカラビナCB、ラウンドスリングRSは無くてもよい。すなわち、係留チェーン30と水平バー41とは、カラビナCB、ラウンドスリングRSとは異なる構造により接続されてもよい。
【0022】
図3に示すように、水平バー41は、海中に位置する時、海水の抵抗を受ける。このことで、水平バー41は、鉛直方向を回転軸とした回転が抑えられる。また、水平バー41の鉛直方向を回転軸とした回転が抑えられることで、水平バー41に接続された係留チェーン30が捻じれることをより確実に抑えることができる。
すなわち、本実施形態において、第1捻れ抑制部材40は、例えば、海水の抵抗を受けることにより、第1チェーンC1の捻れを抑制する。
【0023】
上述のように、係留チェーン30の一端又は一端の近傍は、図3又は図4に示すように、第2取付部41bに取り付けられたカラビナCB及びラウンドスリングRSに接続される。第2取付部41bは、例えば、水平バー41における水平方向の中央に設けられている。第1取付部41aは、水平バー41を間に挟んだ第2取付部41bの反対側に位置している。
ここで、図3及び図4に示すように、水平方向において、第2取付部41bを基準とした水平バー41の一方の側を、一方側41Aといい、他方の側を他方側41Bという。
この時、本実施形態において、一方側41Aが鉛直軸まわりに受ける水の抵抗と、他方側41Bが鉛直軸まわりに受ける水の抵抗と、は略等しい。すなわち、一方側41Aが鉛直軸まわりに受ける水の抵抗と、他方側41Bが鉛直軸まわりに受ける水の抵抗とは、互いの誤差が90%以下である。このことで、より確実に水平バー41が鉛直軸まわりに回転することを抑えることができる。また、水平バー41において、一方側41A及び他方側41Bの形状が同じであれば、一方側41A及び他方側41Bの表面積が一致することから、一方側41Aの水の抵抗と他方側41Bの水の抵抗とは等しいとしてもよい。なお、水の抵抗は、例えば、水平バー41の表面に水圧計を取り付けることにより測定することができる。
すなわち、本実施形態において、第1捻れ抑制部材40の位置であって係留チェーン30の一端又は一端の近傍が取り付けられる位置は、第1捻れ抑制部材40の部分であって係留チェーン30の一端又は一端の近傍が取り付けられる位置よりも一方の側の部分が受ける海水の抵抗と、第1捻れ抑制部材40の部分であって係留チェーン30の一端又は一端の近傍が取り付けられる位置よりも他方の側の部分が受ける海水の抵抗と、が略等しくなる位置である。
【0024】
第1回転拘束治具42は、水平バー41の端部に取り付けられるロープである。あるいは、第1回転拘束治具42にはチェーンが用いられてもよい。図2に示すように、第1回転拘束治具42は、第2船11に接続される。このことで、第2船11及び第1回転拘束治具42によって水平バー41を支持することができる。よって、更に確実に水平バー41が鉛直軸まわりに回転することを抑えることができる。
本実施形態において、第1回転拘束治具42は、例えば図2に示すように、水平バー41の両端に接続される。又は、第1回転拘束治具42は水平バー41の一端にのみ設けられてもよい。あるいは、第1回転拘束治具42は、設けられなくてもよい。
以上の各構成により、本実施形態に係る残置設備1は構成される。
【0025】
(残置方法)
次に、本実施形態に係るチェーンの残置方法を説明する。上記の残置設備1は係留チェーン30を残置するものとして説明したが、係留チェーン30に限らず、その他任意の目的で用いられるチェーンを、以下の方法によって残置してもよい。
図5は、第1接続工程及び吊り下げ工程を示す図である。
図6は、残置工程を示す図である。
図7は、取り外し工程を示す図である。
図8は、第1チェーンC1の残置が完了した状態を示す図である。
以下の説明においては、本実施形態に係る残置設備1を用いて、係留チェーン30に代えて第1チェーンC1を海底SBに残置するものとする。本実施形態において、第1チェーンC1とは、例えば、海底SBに複数残置されるチェーンCのうち1つである。なお、係留チェーン30を以下の方法によって残置してもよい。また、チェーンCは、海底SBに1つのみ残置されてもよい。
以下の残置方法は、第1船10から吊り下げられる第1チェーンC1を海底SBに残置するものとして説明する。
【0026】
本実施形態に係る残置方法は、第1取り付け工程と、第1接続工程と、吊り下げ工程と、残置工程と、取り外し工程と、を含む。
第1取り付け工程は、図2図3又は図4に示すように、第1チェーンC1の一端であって第1船10の側の一端、又は一端の近傍に第1捻れ抑制部材40を取り付ける工程である。本実施形態において、第1チェーンC1の一端の近傍とは、第1チェーンC1の一端から第1チェーンC1の真ん中までの範囲をいう。
具体的には、第1取り付け工程においては、図3又は図4に示すように、第1チェーンC1の一端又は一端の近傍に取り付けられたラウンドスリングRSを、第1捻れ抑制部材40の水平バー41に取り付けられたカラビナCBに取り付ける。本実施形態において、第1取り付け工程は、例えば、第1船10の上で行われる。第1取り付け工程を行うことで、ワイヤーロープ20によって第1チェーンC1を吊り下げることができるようにする。
なお、第1取り付け工程を行う際、第1捻れ抑制部材40とワイヤーロープ20とは、スイベルSWを介して繋がっていることが好ましい。すなわち、第1取り付け工程を行う際、第1捻れ抑制部材40の水平バー41とワイヤーロープ20とが、予めスイベルSWを介して接続されていることが好ましい。このとき、水平バー41には、第1回転拘束治具42は取り付けられていない。水平バー41と第1回転拘束治具42との接続は、後述する第1接続工程において行われる。
第1取り付け工程によって、第1船10と第1捻れ抑制部材40とが、図2図3又は図4に示すように、ワイヤーロープ20を介して繋がっている状態とされる。
【0027】
第1接続工程は、図5に示すように、第1捻れ抑制部材40に第1回転拘束治具42を接続する工程である。すなわち、第1接続工程において、第1捻れ抑制部材40の水平バー41の一端又は両端に、第1回転拘束治具42の一端を接続する。本実施形態では、水平バー41の両端に、第1回転拘束治具42の一端を接続する。本実施形態において、第1接続工程は、例えば、第1船10の上で行われる。
第1接続工程において、第1回転拘束治具42のそれぞれの他端は、第2船11に接続される。このことで、第1回転拘束治具42及び第2船11によって、水平バー41乃至第1捻れ抑制部材40を支持できるようにする。
【0028】
吊り下げ工程は、図5から図6にかけて示すように、第1取り付け工程にて第1捻れ抑制部材40が取り付けられた第1チェーンC1を第1船10から海中に吊り下げる工程である。すなわち、吊り下げ工程において、第1船10に設けられたウィンチ10aから、ワイヤーロープ20を繰り出す。このことで、第1チェーンC1は、ワイヤーロープ20を介し、第1船10に設けられるウィンチ10aによって吊り下げられる。
この時、吊り下げ工程において、第1捻れ抑制部材40は、海水の抵抗を受けることにより、及び、第1回転拘束治具42によって支持されることにより、鉛直軸まわりに回転しないようにされる。このことで、第1チェーンC1の捻れが抑制される。
また、吊り下げ工程において、ウィンチ10aからワイヤーロープ20を繰り出すことに合わせて、図1の状態S1から状態S2及びS3にかけて示すように、第1船10は、アンカー等によって海底SBに支持された第1チェーンC1の他端から離れるように移動することが好ましい。また、第1船10の移動に合わせて、第2船11も同様に移動することが好ましい。
【0029】
残置工程は、吊り下げ工程にて吊り下げられた第1チェーンC1を海底SBに残置する工程である。すなわち、図5から図6にかけて示すように、第1チェーンC1の一端、すなわち第1チェーンC1における水平バー41の側の端、又は、第1チェーンC1の一端の近傍、すなわち第1チェーンC1と水平バー41との接続部分、が、海底SBに接するまで第1チェーンC1を吊り下げる。このことで、残置工程にて、吊り下げ工程にて吊り下げられた第1チェーンC1の一端を海底SBに残置する。なお、第1チェーンC1の一端又は一端の近傍が海底SBに接したか否かの判定は、例えば、水中ロボットROV(Remotely Operated Vehicle:遠隔操作型の無人潜水機)を用いて、海底SBの周辺の状況を計測することや、海底SBの周辺の遠隔画像を確認すること等によって行ってもよい。また、例えば、第1チェーンC1を吊り下げるウィンチ10aの吊荷重が小さくなった際に、第1チェーンC1の一端又は一端の近傍が海底SBに接したと判定されてもよい。この場合、海の上に位置する第1船10が波などによって上下動することによる海底での作業への影響を抑えるために、第1チェーンC1に加えて第1捻れ抑制部材40が海底SBに接するようにしてもよい。
【0030】
取り外し工程は、図7及び図8にかけて示すように、残置工程の後、第1チェーンC1から第1捻れ抑制部材40を取り外す工程である。本実施形態において、取り外し工程は、海中で行われる。
本実施形態において、第1接続工程や取り外し工程をはじめとする水中における各作業は、例えば、図5図8に示すように、水中ロボットROVによって行われてもよい。
以上の各工程により、第1チェーンC1の残置は行われる。
【0031】
(吊り上げ方法)
次に、上述の残置方法によって海底SBに残置された第1チェーンC1を吊り上げる吊り上げ方法について説明する。
本実施形態に係る吊り下げ方法は、上述した残置方法の逆手順である。本実施形態に係る吊り下げ方法は、少なくとも吊り上げ工程を含む。
すなわち、まず、上述の取り外し工程の後、第1チェーンC1が海底SBに残置された状態から、第1チェーンC1の一端又は一端の近傍に第1捻れ抑制部材40又は第2捻れ抑制部材を取り付ける。当該作業は、例えば、上述の取り外し工程と同様に、図8に示すように、水中ロボットROVによって行われる。
そして、第1船10のウィンチ10aによってワイヤーロープ20を巻き上げることで、第1チェーンC1の一端を吊り上げる。
【0032】
第2捻れ抑制部材は、例えば、第1捻れ抑制部材40と同様の構成である。すなわち、吊り下げ工程においては、上述の残置方法において用いられた第1捻れ抑制部材40をそのまま用いてもよいし、第1捻れ抑制部材40とは異なるものである第2捻れ抑制部材が用いられてもよい。
また、吊り上げ工程において、ウィンチ10aによってワイヤーロープ20を巻き上げることに合わせて、図1の状態S4から状態S3及びS2にかけて示すように、第1船10は、アンカー等によって海底SBに支持された第1チェーンC1の他端に接近するように移動することが好ましい。また、第1船10の移動に合わせて、第2船11も同様に移動することが好ましい。
以上のようにして、第1チェーンC1の吊り上げは行われる。第1チェーンC1が吊り上げられた後、第1チェーンC1の一端は、例えば、浮体構造物に接続される。
なお、第1チェーンC1の一端をより浮体構造物に接続しやすくするため、第1チェーンC1の一端には、ワークチェーンが設けられてもよい。ワークチェーンは、例えば、第1チェーンC1の余長部分であってもよい。ワークチェーンは、第1チェーンC1が浮体構造物に接続された後、切断の上除去されてもよい。
【0033】
以上説明したように、本実施形態に係る残置方法によれば、第1取り付け工程において、第1チェーンC1の一端の近傍に第1捻れ抑制部材40を取り付ける。吊り下げ工程において、第1捻れ抑制部材40が取り付けられた第1チェーンC1を、第1船10から海中に吊り下げる。そして、残置工程において、第1チェーンC1を海底SBに残置する。このように、第1チェーンC1に予め第1捻れ抑制部材40を取り付けることで、第1チェーンC1を海中に吊り下げる際に、第1チェーンC1が捻れることを抑えることができる。よって、第1チェーンC1が捻じれることを抑えつつ、第1チェーンC1を海底SBに残置することができる。
【0034】
また、第1捻れ抑制部材40は、海水の抵抗を受けることにより、第1チェーンC1の捻れを抑制する。これにより、例えば、第1チェーンC1の捻れを抑えるために必要な、第1捻れ抑制部材40を支持する力を抑えることができる。したがって、第1捻れ抑制部材40の構造を簡素なものにすることができる。よって、例えば、第1捻れ抑制部材40の費用を抑えることができる。
【0035】
また、第1捻れ抑制部材40の位置であって第1チェーンC1の一端の近傍が取り付けられる位置は、第1捻れ抑制部材40の部分であって第1チェーンC1の一端の近傍が取り付けられる位置よりも一方の側の部分が受ける海水の抵抗と、第1捻れ抑制部材40の部分であって第1チェーンC1の一端の近傍が取り付けられる位置よりも他方の側の部分が受ける海水の抵抗と、が略等しくなる位置である。これにより、第1チェーンC1を海中に吊り下げる際に、海水の抵抗によって第1捻れ抑制部材40が回転することをより確実に抑えることができる。したがって、より確実に第1チェーンC1が捻れることを抑えることができる。
【0036】
また、第1接続工程において、第1捻れ抑制部材40に第1回転拘束治具42を接続する。これにより、第1チェーンC1を海中に吊り下げる際に、海中で第1捻れ抑制部材40が回転することを更に確実に抑えることができる。したがって、第1捻れ抑制部材40によって、更に確実に第1チェーンC1が捻れることを抑えることができる。
【0037】
また、第1接続工程において第1捻れ抑制部材40に接続される第1回転拘束治具42は、第2船11に接続される。これにより、第1回転拘束治具42の有する、第1捻れ抑制部材40が海中で回転することを抑える機能を、より確実に担保することができる。よって、更に確実に第1チェーンC1が捻れることを抑えることができる。
【0038】
また、第1船10と第1捻れ抑制部材40とは、ワイヤーロープ20を介して繋がっている。これにより、海中における第1捻れ抑制部材40の位置を、ワイヤーロープ20によって操作することができる。また、ワイヤーロープ20を用いることで、例えば、第1船10と第1捻れ抑制部材40とがチェーン等を介して繋がっている場合と比較して、作業を容易にすることができる。
【0039】
また、吊り下げ工程にて、第1チェーンC1は、ワイヤーロープ20を介し、第1船10に設けられるウィンチ10aを用いて吊り下げられる。このように、第1チェーンC1の吊り下げを、ワイヤーロープ20を介してウィンチ10aを用いて行うことで、第1チェーンC1の吊り下げの作業を容易に行うことができる。
【0040】
また、第1捻れ抑制部材40とワイヤーロープ20とは、スイベルSWを介して繋がっている。これにより、例えば、吊り下げ工程等を行う際にワイヤーロープ20が捻じれた場合であっても、ワイヤーロープ20の捻れに連動して第1捻れ抑制部材40が海中で回転することを抑えることができる。したがって、ワイヤーロープ20の捻れが第1チェーンC1に伝わることを抑えることができる。よって、更に確実に第1チェーンC1が捻れることを抑えることができる。
【0041】
ここで、第1チェーンC1が、例えば、浮体構造物等の係留索に用いられることがある。
そこで、残置工程にて、吊り下げ工程にて吊り下げられた第1チェーンC1の一端を海底SBに残置する。例えば、第1チェーンC1を前記浮体構造物等の設置場所に残置することで、前記浮体構造物等が設置場所に到着するまでの間、第1チェーンC1を海底SBで待機させることができる。よって、第1チェーンC1を予め設置するタイミングを任意に決定しやすくすることができる。よって、浮体構造物等の施工の工程を柔軟に決定しやすくすることができる。
【0042】
また、残置工程の後、取り外し工程において、第1チェーンC1から第1捻れ抑制部材40を取り外す。これにより、例えば、第1捻れ抑制部材40に第1回転拘束治具42及びスイベルSW等が取り付けられている場合であっても、第1チェーンC1から第1捻れ抑制部材40を取り外すことのみによって、第1チェーンC1を海底SBに残置することができる。よって、第1チェーンC1を海底SBに残置する作業の手間を削減することができる。
【0043】
また、上記の吊り上げ方法によれば、取り外し工程の後、吊り上げ工程において、第1チェーンC1の一端の近傍に第1捻れ抑制部材40又は第2捻れ抑制部材を取り付け、第1チェーンC1の一端を吊り上げる。このように、第1チェーンC1に予め第1捻れ抑制部材40又は第2捻れ抑制部材を取り付けることで、第1チェーンC1の端部を海底SBから吊り上げる際に、第1チェーンC1が捻れることを抑えることができる。よって、第1チェーンC1が捻じれることを抑えつつ、第1チェーンC1を海底SBから吊り上げることができる。
【0044】
また、上記の残置設備1によれば、浮体構造物を係留チェーン30により洋上に係留するために、係留チェーン30を海底SBに残置させる。これにより、浮体構造物が係留場所に到着するまでの間、係留チェーン30を海底SBに待機させることができる。よって、係留チェーン30を予め設置するタイミングを任意に決定しやすくすることができる。よって、浮体構造物の施工の工程を柔軟に決定しやすくすることができる。
また、残置設備1は、ウィンチ10aを有する第1船10と、ウィンチ10aに巻き回されるワイヤーロープ20と、ワイヤーロープ20に接続される係留チェーン30と、係留チェーン30に取り付けられる第1捻れ抑制部材40と、を備える。第1船10がウィンチ10aを備え、ウィンチ10aにワイヤーロープ20が巻き回されていることで、ワイヤーロープ20及びウィンチ10aを用いて、係留チェーン30を海底SBに吊り下ろすことができる。よって、例えば、チェーン及びウインドラスを用いて係留チェーン30を吊り下ろす場合、すなわち、ウィンチ10a及びワイヤーロープ20を用いて係留チェーン30を吊り下ろすことに代えて、例えば、係留チェーン30に第1船10のチェーンロッカーに収納されたアンカーチェーンを接続し、このアンカーチェーンによって係留チェーン30を吊り下ろす場合や、クレーン及びウインドラスを用いて係留チェーン30を吊り下ろす場合、すなわち、アンカーチェーンに接続された係留チェーン30を、クレーンを用いて吊り下ろす場合と比較して、係留チェーン30の吊り下ろしに伴う海底作業を容易にすることができる。更に、第1捻れ抑制部材40が係留チェーン30に取り付けられることで、例えば、ワイヤーロープ20の回転が係留チェーン30に伝わることを抑えることができる。よって、係留チェーン30が捻じれることを抑えつつ、係留チェーン30を海底SBに残置することができる。
【0045】
なお、本開示の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、第1捻れ抑制部材40は、海水の抵抗によらず、第1回転拘束治具42によって支持されることのみによって、第1チェーンC1の捻れを抑制してもよい。この場合、第1捻れ抑制部材40の位置であって第1チェーンC1の一端又は一端の近傍が取り付けられる位置は、任意に決定されてもよい。
また、第1捻れ抑制部材40に、第1回転拘束治具42は設けられなくてもよい。
また、第1回転拘束治具42の一端が第1捻れ抑制部材40の水平バー41に設けられる場合、第1回転拘束治具42の他端は、例えば、第2船11に接続されず、不図示のアンカー等に接続されてもよい。
また、第1船10と第1捻れ抑制部材40とは、ワイヤーロープ20以外の任意の綱状の部材や、チェーン等によって繋がっていてもよい。
また、第1捻れ抑制部材40とワイヤーロープ20とは、スイベル以外の任意の構成を介して繋げられてもよい。
また、より海水の抵抗を受けやすくするために、水平バー41における水平方向に面する面の表面積であって、水平バー41が延びる方向に直交する方向に面する面の表面積をより大きくしてもよい。例えば、後述する一方側41A及び他方側41Bの幅を、水平バー41における第1取付部41a及び第2取付部41bが設けられた部分よりも大きくしてもよい。
【0046】
その他、本開示の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0047】
(付記)
前記実施形態に係る残置方法、吊り上げ方法、及び残置設備は、例えば以下のように把握される。
【0048】
<1>本開示の一態様に係る残置方法は、第1船から吊り下げられる第1チェーンを海底に残置する残置方法であって、前記第1チェーンの一端であって前記第1船の側の一端の近傍に第1捻れ抑制部材を取り付ける第1取り付け工程と、前記第1取り付け工程にて前記第1捻れ抑制部材が取り付けられた前記第1チェーンを前記第1船から海中に吊り下げる吊り下げ工程と、前記吊り下げ工程にて吊り下げられた前記第1チェーンを海底に残置する残置工程と、を含む、ことを特徴とする。
【0049】
上記の残置方法によれば、第1取り付け工程において、第1チェーンの一端の近傍に第1捻れ抑制部材を取り付ける。吊り下げ工程において、第1捻れ抑制部材が取り付けられた第1チェーンを、第1船から海中に吊り下げる。そして、残置工程において、第1チェーンを海底に残置する。このように、第1チェーンに予め第1捻れ抑制部材を取り付けることで、第1チェーンを海中に吊り下げる際に、第1チェーンが捻れることを抑えることができる。よって、第1チェーンが捻じれることを抑えつつ、第1チェーンを海底に残置することができる。
【0050】
<2>上記<1>に係る残置方法では、前記第1捻れ抑制部材は、海水の抵抗を受けることにより、前記第1チェーンの捻れを抑制する、ことを特徴とする構成を採用してもよい。
【0051】
また、第1捻れ抑制部材は、海水の抵抗を受けることにより、第1チェーンの捻れを抑制する。これにより、例えば、第1チェーンの捻れを抑えるために必要な、第1捻れ抑制部材を支持する力を抑えることができる。したがって、第1捻れ抑制部材の構造を簡素なものにすることができる。よって、例えば、第1捻れ抑制部材の費用を抑えることができる。
【0052】
<3>上記<1>または<2>に係る残置方法では、前記第1捻れ抑制部材の位置であって前記一端の近傍が取り付けられる位置は、前記第1捻れ抑制部材の部分であって前記位置よりも一方の側の部分が受ける海水の抵抗と、前記第1捻れ抑制部材の部分であって前記位置よりも他方の側の部分が受ける海水の抵抗と、が略等しくなる位置である、ことを特徴とする構成を採用してもよい。
【0053】
また、第1捻れ抑制部材の位置であって第1チェーンの一端の近傍が取り付けられる位置は、第1捻れ抑制部材の部分であって第1チェーンの一端の近傍が取り付けられる位置よりも一方の側の部分が受ける海水の抵抗と、第1捻れ抑制部材の部分であって第1チェーンの一端の近傍が取り付けられる位置よりも他方の側の部分が受ける海水の抵抗と、が略等しくなる位置である。これにより、第1チェーンを海中に吊り下げる際に、海水の抵抗によって第1捻れ抑制部材が回転することをより確実に抑えることができる。したがって、より確実に第1チェーンが捻れることを抑えることができる。
【0054】
<4>上記<1>から<3>のいずれか一態様に係る残置方法では、前記第1捻れ抑制部材に第1回転拘束治具を接続する第1接続工程、を更に備えることを特徴とする構成を採用してもよい。
【0055】
また、第1接続工程において、第1捻れ抑制部材に第1回転拘束治具を接続する。これにより、第1チェーンを海中に吊り下げる際に、海中で第1捻れ抑制部材が回転することを更に確実に抑えることができる。したがって、第1捻れ抑制部材によって、更に確実に第1チェーンが捻れることを抑えることができる。
【0056】
<5>上記<4>に係る残置方法では、前記第1回転拘束治具は、第2船に接続される、ことを特徴とする構成を採用してもよい。
【0057】
また、第1接続工程において第1捻れ抑制部材に接続される第1回転拘束治具は、第2船に接続される。これにより、第1回転拘束治具の有する、第1捻れ抑制部材が海中で回転することを抑える機能を、より確実に担保することができる。よって、更に確実に第1チェーンが捻れることを抑えることができる。
【0058】
<6>上記<1>から<5>のいずれか一態様に係る残置方法では、前記第1船と前記第1捻れ抑制部材とは、ワイヤーロープを介して繋がっている、ことを特徴とする構成を採用してもよい。
【0059】
また、第1船と第1捻れ抑制部材とは、ワイヤーロープを介して繋がっている。これにより、海中における第1捻れ抑制部材の位置を、ワイヤーロープによって操作することができる。また、ワイヤーロープを用いることで、例えば、第1船と第1捻れ抑制部材とがチェーン等を介して繋がっている場合と比較して、作業を容易にすることができる。
【0060】
<7>上記<6>に係る残置方法では、前記吊り下げ工程にて、前記第1チェーンは、前記ワイヤーロープを介し、前記第1船に設けられるウィンチを用いて吊り下げられる、ことを特徴とする構成を採用してもよい。
【0061】
また、吊り下げ工程にて、第1チェーンは、ワイヤーロープを介し、第1船に設けられるウィンチを用いて吊り下げられる。このように、第1チェーンの吊り下げを、ワイヤーロープを介してウィンチを用いて行うことで、第1チェーンの吊り下げの作業を容易に行うことができる。
【0062】
<8>上記<6>又は<7>に係る残置方法では、前記第1捻れ抑制部材と前記ワイヤーロープとは、スイベルを介して繋がっている、ことを特徴とする構成を採用してもよい。
【0063】
また、第1捻れ抑制部材とワイヤーロープとは、スイベルを介して繋がっている。これにより、例えば、吊り下げ工程等を行う際にワイヤーロープが捻じれた場合であっても、ワイヤーロープの捻れに連動して第1捻れ抑制部材が海中で回転することを抑えることができる。したがって、ワイヤーロープの捻れが第1チェーンに伝わることを抑えることができる。よって、更に確実に第1チェーンが捻れることを抑えることができる。
【0064】
<9>上記<1>から<8>のいずれか一態様に係る残置方法では、前記残置工程にて、前記吊り下げ工程にて吊り下げられた前記第1チェーンの前記一端を海底に残置する、ことを特徴とする構成を採用してもよい。
【0065】
ここで、第1チェーンが、例えば、浮体構造物等の係留索に用いられることがある。
そこで、残置工程にて、吊り下げ工程にて吊り下げられた第1チェーンの一端を海底に残置する。例えば、第1チェーンを前記浮体構造物等の設置場所に残置することで、前記浮体構造物等が設置場所に到着するまでの間、第1チェーンを海底で待機させることができる。よって、第1チェーンを予め設置するタイミングを任意に決定しやすくすることができる。よって、浮体構造物等の施工の工程を柔軟に決定しやすくすることができる。
【0066】
<10>上記<1>から<9>のいずれか一態様に係る残置方法では、前記残置工程の後、前記第1チェーンから前記第1捻れ抑制部材を取り外す取り外し工程、を更に含むことを特徴とする構成を採用してもよい。
【0067】
また、残置工程の後、取り外し工程において、第1チェーンから第1捻れ抑制部材を取り外す。これにより、例えば、第1捻れ抑制部材に第1回転拘束治具及びスイベル等が取り付けられている場合であっても、第1チェーンから第1捻れ抑制部材を取り外すことのみによって、第1チェーンを海底に残置することができる。よって、第1チェーンを海底に残置する作業の手間を削減することができる。
【0068】
<11>本開示の一態様に係る吊り上げ方法は、上記<10>に係る残置方法によって残置された前記第1チェーンを吊り上げる吊り上げ方法であって、前記取り外し工程の後、前記一端の近傍に前記第1捻れ抑制部材又は第2捻れ抑制部材を取り付け、前記一端を吊り上げる吊り上げ工程、を含むことを特徴とする。
【0069】
上記の吊り上げ方法によれば、取り外し工程の後、吊り上げ工程において、第1チェーンの一端の近傍に第1捻れ抑制部材又は第2捻れ抑制部材を取り付け、第1チェーンの一端を吊り上げる。このように、第1チェーンに予め第1捻れ抑制部材又は第2捻れ抑制部材を取り付けることで、第1チェーンの端部を海底から吊り上げる際に、第1チェーンが捻れることを抑えることができる。よって、第1チェーンが捻じれることを抑えつつ、第1チェーンを海底から吊り上げることができる。
【0070】
<12>本開示の一態様に係る残置設備は、浮体構造物を係留チェーンにより洋上に係留するために、前記係留チェーンを海底に残置させる残置設備であって、ウィンチを有する第1船と、前記ウィンチに巻き回されるワイヤーロープと、前記ワイヤーロープに接続される前記係留チェーンと、前記係留チェーンに取り付けられる第1捻れ抑制部材と、を備えることを特徴とする。
【0071】
上記の残置設備によれば、浮体構造物を係留チェーンにより洋上に係留するために、係留チェーンを海底に残置させる。これにより、浮体構造物が係留場所に到着するまでの間、係留チェーンを海底に待機させることができる。よって、係留チェーンを予め設置するタイミングを任意に決定しやすくすることができる。よって、浮体構造物の施工の工程を柔軟に決定しやすくすることができる。
また、残置設備は、ウィンチを有する第1船と、ウィンチに巻き回されるワイヤーロープと、ワイヤーロープに接続される係留チェーンと、係留チェーンに取り付けられる第1捻れ抑制部材と、を備える。第1船がウィンチを備え、ウィンチにワイヤーロープが巻き回されていることで、ワイヤーロープ及びウィンチを用いて、係留チェーンを海底に吊り下ろすことができる。よって、例えば、チェーン及びウインドラスを用いて係留チェーンを吊り下ろす場合、すなわち、ウィンチ及びワイヤーロープを用いて係留チェーンを吊り下ろすことに代えて、例えば、係留チェーンに第1船のチェーンロッカーに収納されたアンカーチェーンを接続し、このアンカーチェーンによって係留チェーンを吊り下ろす場合や、クレーン及びウインドラスを用いて係留チェーンを吊り下ろす場合、すなわち、アンカーチェーンに接続された係留チェーンを、クレーンを用いて吊り下ろす場合と比較して、係留チェーンの吊り下ろしに伴う海底作業を容易にすることができる。更に、第1捻れ抑制部材が係留チェーンに取り付けられることで、例えば、ワイヤーロープの回転が係留チェーンに伝わることを抑えることができる。よって、係留チェーンが捻じれることを抑えつつ、係留チェーンを海底に残置することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 残置設備
10 第1船
10a ウィンチ
11 第2船
20 ワイヤーロープ
30 係留チェーン
40 第1捻れ抑制部材
41 水平バー
41a 第1取付部
41A 一方側
41b 第2取付部
41B 他方側
42 第1回転拘束治具
B 作業船
C チェーン
C1 第1チェーン
CB カラビナ
R ロープ
RS ラウンドスリング
ROV 水中ロボット
SW スイベル
【要約】
【課題】チェーンが捻れることを抑えつつ、チェーンを海底に残置し、あるいは海底から吊り上げることができる残置方法、吊り上げ方法、及び残置設備を提供することを目的とする。
【解決手段】第1船10から吊り下げられる第1チェーンC1を海底に残置する残置方法であって、第1チェーンC1の一端であって第1船10の側の一端の近傍に第1捻れ抑制部材40を取り付ける第1取り付け工程と、第1取り付け工程にて第1捻れ抑制部材40が取り付けられた第1チェーンC1を第1船10から海中に吊り下げる吊り下げ工程と、吊り下げ工程にて吊り下げられた第1チェーンC1を海底に残置する残置工程と、を含む、ことを特徴とする。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8