(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-11
(45)【発行日】2025-03-19
(54)【発明の名称】自動車車体の構造部材
(51)【国際特許分類】
B62D 25/04 20060101AFI20250312BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20250312BHJP
B60R 19/04 20060101ALI20250312BHJP
【FI】
B62D25/04 B
B62D25/20 F
B60R19/04 M
(21)【出願番号】P 2021034655
(22)【出願日】2021-03-04
【審査請求日】2023-11-20
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 利哉
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-048055(JP,A)
【文献】特開2006-097442(JP,A)
【文献】国際公開第2019/035185(WO,A1)
【文献】特許第5119477(JP,B2)
【文献】特開2002-264740(JP,A)
【文献】特許第4330652(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2013/0187409(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/04
B62D 25/20
B60R 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延びる天板部と、
前記天板部の幅方向の両端部に形成された第一コーナ部を介して延在する一対の側壁部と、
前記一対の側壁部における前記第一コーナ部とは反対側の端部に形成された第二コーナ部を介して延在する一対のフランジ部と、
を有するハット型部材と、
前記ハット型部材の前記一対のフランジ部に接合される一対の接合部と、
前記ハット型部材の前記天板部に対向する天板対向部と、
を有する接合部材と、
を備え、
前記天板部又は前記天板対向部に、前記長手方向に沿って延在する複合ビードが形成され、
前記複合ビードは、
前記天板部又は前記天板対向部から内方に向けて屈曲して延在する一対のビード側壁と、
前記一対のビード側壁から互いに向かい合う方向に向けて屈曲して延在する一対のビード底壁と、
前記一対のビード底壁の間に形成される膨出部と、
を備え、
前記長手方向に垂直な断面において、前記膨出部は、
前記一対のビード底壁における前記一対のビード側壁とは反対側の端部である第一端部から、高さ方向の外方に向かうに連れて互いに離間距離が増大するように延在する一対の傾斜部位と、
前記一対の傾斜部位における、前記一対のビード底壁とは反対側の端部である第二端部同士を繋ぐ中央部位と、
を備え
、前記膨出部の外方側の幅は、同じ高さ方向位置での前記一対のビード側壁同士の離間距離の80%以上である
ことを特徴とする自動車車体の構造部材。
【請求項2】
前記複合ビードが二本以上、前記幅方向に並列して形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の自動車車体の構造部材。
【請求項3】
前記複合ビードが前記ハット型部材の前記天板部に形成される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車車体の構造部材。
【請求項4】
前記長手方向に垂直な断面において、前記天板部と前記第一コーナ部との境界点から、前記幅方向に前記天板部の幅の1/4の離間距離となる点までの領域に、前記複合ビードの前記幅方向の中心が位置するように前記複合ビードが形成される
ことを特徴とする請求項3に記載の自動車車体の構造部材。
【請求項5】
前記長手方向に垂直な断面において、前記天板部と前記第一コーナ部との境界点から、20mmの離間距離となる点までの領域に、前記複合ビードと天板部との境界点が位置するように前記複合ビードが形成される
ことを特徴とする請求項3に記載の自動車車体の構造部材。
【請求項6】
前記天板部と前記ビード側壁との境界点同士を結ぶ仮想直線が、前記膨出部の前記中央部位の少なくとも一部に重なる
ことを特徴とする請求項3~5のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材。
【請求項7】
前記ハット型部材が板厚1.2mm以下の鋼板により形成されている
ことを特徴とする請求項3~6のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材。
【請求項8】
前記ハット型部材が引張強さ980MPa以上の鋼板により形成されている
ことを特徴とする請求項3~7のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材。
【請求項9】
前記ハット型部材が焼き入れ部材である
ことを特徴とする請求項3~8のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材。
【請求項10】
前記複合ビードが前記接合部材の前記天板対向部に形成される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車車体の構造部材。
【請求項11】
前記長手方向に垂直な断面において、前記接合部材の前記接合部の内側の端部から、前記幅方向に前記天板対向部の幅の1/4の離間距離となる点までの領域に、前記複合ビードの前記幅方向の中心が位置するように前記複合ビードが形成される
ことを特徴とする請求項10に記載の自動車車体の構造部材。
【請求項12】
前記長手方向に垂直な断面において、前記接合部材の前記接合部の内側の端部から、20mmの離間距離となる点までの領域に、前記複合ビードと前記接合部材との境界点が位置するように前記複合ビードが形成される
ことを特徴とする請求項10に記載の自動車車体の構造部材。
【請求項13】
前記天板対向部と前記ビード側壁との境界点同士を結ぶ仮想直線が、前記膨出部の前記中央部位の少なくとも一部に重なる
ことを特徴とする請求項10~12のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材。
【請求項14】
前記接合部材が板厚1.2mm以下の鋼板により形成されている
ことを特徴とする請求項10~13のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材。
【請求項15】
前記接合部材が引張強さ980MPa以上の鋼板により形成されている
ことを特徴とする請求項10~14のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材。
【請求項16】
前記接合部材が焼き入れ部材である
ことを特徴とする請求項10~15のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材。
【請求項17】
前記第一端部同士が接触している
ことを特徴とする請求項1~16のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材。
【請求項18】
前記第一端部同士が固定されている
ことを特徴とする請求項17に記載の自動車車体の構造部材。
【請求項19】
前記膨出部と前記ビード側壁とが接触している
ことを特徴とする請求項1~18のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材。
【請求項20】
前記膨出部と前記ビード側壁とが固定されている
ことを特徴とする請求項19に記載の自動車車体の構造部材。
【請求項21】
前記第二端部同士の離間距離は、前記第一端部同士の離間距離の1.2倍以上である
ことを特徴とする請求項1~20のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材。
【請求項22】
前記複合ビードの幅が5mm~20mmであり、
前記複合ビードの深さが5mm~20mmである
ことを特徴とする請求項1~21のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材。
【請求項23】
前記複合ビードの深さ/幅で算出されるアスペクト比が0.25~4.0である
ことを特徴とする請求項1~22のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材。
【請求項24】
前記側壁部に、前記高さ方向に沿って延在する高さ方向ビードが形成される、
ことを特徴とする請求項1~23のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材。
【請求項25】
前記高さ方向ビードは、前記第一コーナ部から延在する
ことを特徴とする請求項24に記載の自動車車体の構造部材。
【請求項26】
前記高さ方向ビードは、前記第二コーナ部から延在する
ことを特徴とする請求項24に記載の自動車車体の構造部材。
【請求項27】
前記高さ方向ビードは、前記第一コーナ部から前記第二コーナ部まで延在する
ことを特徴とする請求項24に記載の自動車車体の構造部材。
【請求項28】
前記高さ方向ビードの幅が10mm~60mmであり、
前記高さ方向ビードの深さが2mm~10mmである
ことを特徴とする請求項24~27のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材。
【請求項29】
前記高さ方向ビードの深さ/幅で算出されるアスペクト比が0.05~1.0である
ことを特徴とする請求項24~28のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車車体の構造部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の衝突安全性能の向上および車体軽量化を目的として、自動車部品への高張力鋼板の適用が拡大している。高張力鋼板を適用することで、より優れた衝突安全性能を持つ部品を得ることができたり、または衝突安全性能と薄肉化による軽量化とを両立することが可能となる。
【0003】
しかしながら素材の板厚が薄くなると、加工前の鋼板の剛性が低下するだけなく、加工後の部品の剛性も低下するため、強度が高く、板厚の薄い鋼板を単純に使用するだけでは、衝突安全性能として十分な高強度化の効果が得られない場合がある。
【0004】
自動車車体部品の衝突安全性能として、側面衝突(側突)におけるサイドシルやBピラー、前面衝突(前突)におけるバンパー等の曲げ圧潰特性がある。これらの部品の曲げ圧潰特性として、局部座屈モードの3点曲げ特性を高め、薄い板厚の素材を用いてもより高い衝突安全性能を発揮することが希求されている。
【0005】
特許文献1には、本体部の長手方向に沿って本体部の幅方向中央に延在するように凹ビードを設けるように設計された、耐座屈性に優れた車両用耐衝突補強材が開示されている。
特許文献2には、上部ウェブ、下部ウェブの一方又は両方に、車両の前後方向に略平行な凹状又は凸状のビードを有する車両用金属製アブソーバが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5119477号公報
【文献】特許第4330652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1、2の技術では、要求される更に高い曲げ圧潰部品の局部座屈モードの3点曲げ特性を十分に発揮することができなかった。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、局部座屈モードの変形の、ストローク初期における耐荷重と、衝撃吸収エネルギとを向上させることでより優れた衝突安全性能を発揮することが可能な構造部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の具体的態様は以下のとおりである。
【0010】
(1)本発明の第一の態様は、長手方向に延びる天板部と、前記天板部の幅方向の両端部に形成された第一コーナ部を介して延在する一対の側壁部と、前記一対の側壁部における前記第一コーナ部とは反対側の端部に形成された第二コーナ部を介して延在する一対のフランジ部と、を有するハット型部材と、前記ハット型部材の前記一対のフランジ部に接合される一対の接合部と、前記ハット型部材の前記天板部に対向する天板対向部と、を有する接合部材と、
を備え、前記天板部又は前記天板対向部に、前記長手方向に沿って延在する複合ビードが形成され、前記複合ビードは、前記天板部又は前記天板対向部から内方に向けて屈曲して延在する一対のビード側壁と、前記一対のビード側壁から互いに向かい合う方向に向けて屈曲して延在する一対のビード底壁と、前記一対のビード底壁の間に形成される膨出部と、を備え、前記長手方向に垂直な断面において、前記膨出部は、前記一対のビード底壁における前記一対のビード側壁とは反対側の端部である第一端部から、高さ方向の外方に向かうに連れて互いに離間距離が増大するように延在する一対の傾斜部位と、前記一対の傾斜部位における、前記一対のビード底壁とは反対側の端部である第二端部同士を繋ぐ中央部位と、を備え、前記膨出部の外方側の幅は、同じ高さ方向位置での前記一対のビード側壁同士の離間距離の80%以上である自動車車体の構造部材である。
(2)上記(1)に記載の自動車車体の構造部材では、前記複合ビードが二本以上、前記幅方向に並列して形成されてもよい。
(3)上記(1)又は(2)に記載の自動車車体の構造部材では、前記複合ビードが前記ハット型部材の前記天板部に形成されてもよい。
(4)上記(3)に記載の自動車車体の構造部材では、前記長手方向に垂直な断面において、前記天板部と前記第一コーナ部との境界点から、前記幅方向に前記天板部の幅の1/4の離間距離となる点までの領域に、前記複合ビードの前記幅方向の中心が位置するように前記複合ビードが形成されてもよい。
(5)上記(3)に記載の自動車車体の構造部材では、前記長手方向に垂直な断面において、前記天板部と前記第一コーナ部との境界点から、20mmの離間距離となる点までの領域に、前記複合ビードと天板部との境界点が位置するように前記複合ビードが形成されてもよい。
(6)上記(3)~(5)のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材では、前記天板部と前記ビード側壁との境界点同士を結ぶ仮想直線が、前記膨出部の前記中央部位の少なくとも一部に重なってもよい。
(7)上記(3)~(6)のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材では、前記ハット型部材が板厚1.2mm以下の鋼板により形成されていてもよい。
(8)上記(3)~(7)のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材では、前記ハット型部材が引張強さ980MPa以上の鋼板により形成されていてもよい。
(9)上記(3)~(8)のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材では、前記ハット型部材が焼き入れ部材であってもよい。
(10)上記(1)又は(2)に記載の自動車車体の構造部材では、前記複合ビードが前記接合部材の前記天板対向部に形成されてもよい。
(11)上記(10)に記載の自動車車体の構造部材では、前記長手方向に垂直な断面において、前記接合部材の前記接合部の内側の端部から、前記幅方向に前記天板対向部の幅の1/4の離間距離となる点までの領域に、前記複合ビードの前記幅方向の中心が位置するように前記複合ビードが形成されてもよい。
(12)上記(10)に記載の自動車車体の構造部材では、前記長手方向に垂直な断面において、前記接合部材の前記接合部の内側の端部から、20mmの離間距離となる点までの領域に、前記複合ビードと前記接合部材との境界点が位置するように前記複合ビードが形成されてもよい。
(13)上記(10)~(12)のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材では、前記天板対向部と前記ビード側壁との境界点同士を結ぶ仮想直線が、前記膨出部の前記中央部位の少なくとも一部に重なってもよい。
(14)上記(10)~(13)のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材では、前記接合部材が板厚1.2mm以下の鋼板により形成されてもよい。
(15)上記(10)~(14)のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材では、前記接合部材が引張強さ980MPa以上の鋼板により形成されてもよい。
(16)上記(10)~(15)のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材では、前記接合部材が焼き入れ部材であってもよい。
(17)上記(1)~(16)のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材では、前記第一端部同士が接触していてもよい。
(18)上記(17)に記載の自動車車体の構造部材では、前記第一端部同士が固定されていてもよい。
(19)上記(1)~(18)のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材では、前記膨出部と前記ビード側壁とが接触していてもよい。
(20)上記(19)に記載の自動車車体の構造部材では、前記膨出部と前記ビード側壁とが固定されていてもよい。
(21)上記(1)~(20)のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材では、前記第二端部同士の離間距離は、前記第一端部同士の離間距離の1.2倍以上であってもよい。
(22)上記(1)~(21)のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材では、前記複合ビードの幅が5mm~20mmであり、前記複合ビードの深さが5mm~20mmであってもよい。
(23)上記(1)~(22)のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材では、前記複合ビードの深さ/幅で算出されるアスペクト比が0.25~4.0であってもよい。
(24)上記(1)~(23)のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材では、前記側壁部に、前記高さ方向に沿って延在する高さ方向ビードが形成されてもよい。
(25)上記(24)に記載の自動車車体の構造部材では、前記高さ方向ビードは、前記第一コーナ部から延在してもよい。
(26)上記(24)に記載の自動車車体の構造部材では、前記高さ方向ビードは、前記第二コーナ部から延在してもよい。
(27)上記(24)に記載の自動車車体の構造部材では、前記高さ方向ビードは、前記第一コーナ部から前記二コーナ部まで延在してもよい。
(28)上記(24)~(27)のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材では、前記高さ方向ビードの幅が10mm~60mmであり、前記高さ方向ビードの深さが2mm~10mmであってもよい。
(29)上記(24)~(28)のいずれか一項に記載の自動車車体の構造部材では、前記高さ方向ビードの深さ/幅で算出されるアスペクト比が0.05~1.0であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、局部座屈モードの変形の、ストローク初期における耐荷重と、衝撃吸収エネルギとを向上させることで、より優れた衝突安全性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(a)は局部座屈モードの3点曲げ特性を説明するための模式図であり、(b)は壁面座屈モードの3点曲げ特性を説明するための模式図であり、(c)はモーメント曲げ特性を説明するための模式図である。
【
図2A】第一実施形態に係る構造部材を示す斜視図である。
【
図2B】第一実施形態に係る構造部材の概略断面図であって、
図2AのA1-A1’に沿う断面を示す。
【
図3】第一実施形態に係る構造部材の変形後の状態を示す斜視図である。
【
図5】変形後の複合ビードを示す概略断面図である。
【
図6A】成形方法の一例の第一ステップを示す図である。
【
図6B】成形方法の一例の第二ステップを示す図である。
【
図6C】成形方法の一例の第三ステップを示す図である。
【
図7】第一変形例に係る構造部材を示す概略断面図である。
【
図8】第二変形例に係る構造部材を示す斜視図である。
【
図9】第三変形例に係る構造部材の複合ビードを示す概略断面図である。
【
図10】第四変形例に係る構造部材の複合ビードを示す概略断面図である。
【
図11】第二実施形態に係る構造部材を示す斜視図である。
【
図12】第二実施形態に係る構造部材を示す平面図である。
【
図14】三点曲げ条件を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
自動車部品の曲げ圧潰特性は、衝突の衝撃が部品の圧潰部に直接的に加わって変形する場合の3点曲げ特性と、衝突の衝撃が部品の圧潰部に間接的に加わって変形する場合のモーメント曲げ特性と、に大別される。
このうち、3点曲げ特性は、局部座屈モードの3点曲げ特性と、壁面座屈モードの3点曲げ特性と、に分類される。
局部座屈モードの3点曲げ特性及び壁面座屈モードの3点曲げ特性は、
図1の(a)及び(b)に示すように、インパクタが部品に直接衝突する3点曲げ試験を行うことで得られる3点曲げ特性により評価することが多い。
局部座屈モードの3点曲げ特性では、
図1の(a)に示すように、3点曲げ試験において荷重を支持する支点間の距離が長い条件で、インパクタによる荷重負荷位置での屈曲変形が主体となる。
壁面座屈モードの3点曲げ特性では、
図1の(b)に示すように、3点曲げ試験において荷重を支持する支点間の距離が短い条件で、インパクタによる荷重負荷位置を中心に側壁が部品高さ方向に潰される変形が主体となる。
また、モーメント曲げ特性は、
図1の(c)に示すように、部品の圧潰部にインパクタ等が接触しないモーメント曲げ試験を行うことで得られるモーメント曲げ特性で評価することが多い。
【0014】
本発明者は、
図1の(a)に示すような局部座屈モードの変形に対する衝突安全性能を高めるための部品形状について検討し、下記の知見を得た。
(あ)圧潰部がインパクタに接触する3点曲げでは、部品の曲げ内側に生じる長手方向に沿う圧縮応力と、部品の側壁に生じる高さ方向に沿う圧縮応力と、部品の曲げ外側に生じる長手方向に沿う引張応力とが複合的に生じること。
(い)高さ方向に沿う圧縮応力は側壁に生じることから、特に素材の板厚が薄い場合には、高さ方向に沿う圧縮応力により側壁が容易に座屈変形してしまい、局部座屈モードを想定した部品であっても変形の初期において壁面座屈モードに近い変形状態になる場合があること。
(う)壁面座屈モードに近い変形状態になった場合、側壁の座屈変形が容易に生じると、壁面座屈モードとしての良好な3点曲げ特性が得られないだけでなく、側壁が潰れることで圧潰部の部品高さが減少して、長手方向に交差する断面の高さ方向の曲げ剛性が低下するため、その後の変形において局部座屈モードの変形状態になったとしても局部座屈モードとしての良好な3点曲げ特性も得られない場合があること。
(え)従って、長手方向に沿う圧縮応力に対する変形抵抗、高さ方向に沿う圧縮応力に対する変形抵抗、及び、長手方向に沿う引張応力に対する変形抵抗を同時に高めることができる部品形状とすることで、局部座屈モードの変形における、特にストローク初期における耐荷重を向上することができること。
(お)インパクタが接触する面に、ビード側壁とビード底壁と膨出部とから形成される複合ビードを形成すると、ビード側壁と膨出部の高さ方向の方向成分により変形抵抗を高める効果が得られると共に、変形時にビード側壁と膨出部とが干渉することにより衝撃吸収エネルギを高める効果を得ることができ、これにより更に優れた衝突安全性能を発揮することができること。
【0015】
以下、上記知見に基づき完成された本発明について、実施形態に基づき詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
以下の説明において、構造部材の軸方向、すなわち、軸線が延びる方向を長手方向Zと呼称する。
また、長手方向Zに垂直な面における、天板部に平行な方向を幅方向Xと呼称し、長手方向Zと幅方向Xに垂直な方向を高さ方向Yと呼称する。
構造部材の軸線から離れる方向を外方と呼称し、その反対方向を内方と呼称する。
【0017】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態に係る自動車車体の構造部材100(以下、構造部材100と呼称する)について説明する。
【0018】
まず、
図2A、
図2Bを参照して、構造部材100の概略構成について説明する。
図2Aは、構造部材100の斜視図であり、
図2Bは
図2AのA1-A1’断面図である。
図2A、
図2Bに示すように、構造部材100は、ハット型部材110と接合部材120とにより構成される閉断面構造の部材である。構造部材100の適用例としては、Bピラー、サイドシル、バンパリーンフォース等が挙げられる。
【0019】
本実施形態に係る構造部材100は、ハット型部材110が車外側に対向し、接合部材120が車内側に対向する姿勢で自動車に設置されることを想定した部品である。
【0020】
従って、車外側からの衝撃荷重がハット型部材110に入力されて構造部材100に曲げ変形が生じた際には、
図3に示すように、
ハット型部材110において長手方向Zに沿う圧縮応力(A)と、
ハット型部材110において高さ方向Yに沿う圧縮応力(B)と、
接合部材120において長手方向Zに沿う引張応力(C)と、
が複合的に発生することになる。
尚、「ハット型部材110において高さ方向Yに沿う圧縮応力(B)」は、「ハット型部材110において長手方向Zに垂直な方向に沿う圧縮応力(B)」と換言することもできる。
【0021】
図2A、
図2Bに示すように、ハット型部材110は、長手方向Zに沿って延びる天板部111と、一対の側壁部115,115と、一対のフランジ部119,119とを有する。
ハット型部材110は、鋼板、アルミ板、アルミ合金板、ステンレス板、チタン板などの金属板、更には、樹脂板、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic)板からなる部材であればよい。
【0022】
(天板部)
天板部111は、
図1に示す局部座屈モードの3点曲げ試験における、インパクタが直接接触する部位に相当する。
本実施形態に係る構造部材100は、ハット型部材110が車外側に対向する姿勢で自動車に設置されるため、車外側からの衝撃荷重が天板部111に入力されて構造部材100に曲げ変形が生じると、天板部111には長手方向Zに沿う圧縮応力(A)が発生する。
【0023】
天板部111の幅Wは、40mm以上200mm以下であればよい。天板部111の幅Wは、
図2Bに示すように、構造部材100の長手方向Zに垂直な断面における、天板部111とその両端の第一コーナ部113,113との境界点の間の、幅方向Xの離間距離である。
【0024】
(側壁部)
一対の側壁部115,115は、天板部111の幅方向Xの両端部に形成された第一コーナ部113,113を介して延在する。尚、第一コーナ部113,113は、構造部材100の長手方向Zに垂直な断面において、例えば1mm~10mmの曲率半径のR部を有する。
本実施形態に係る構造部材100は、ハット型部材110が車外側に対向する姿勢で自動車に設置されるため、車外側からの衝撃荷重が天板部111に入力されて構造部材100に曲げ変形が生じると、一対の側壁部115,115には、高さ方向Yに沿う圧縮応力(B)が発生する。
【0025】
側壁部115の高さHは、20mm以上150mm以下であればよい。側壁部115の高さHは、
図2Bに示すように、構造部材100の長手方向Zに垂直な断面における、側壁部115と第一コーナ部113との境界点と、側壁部115と第二コーナ部117との境界点との間の、高さ方向Yの離間距離である。尚、第二コーナ部117,117は、構造部材100の長手方向Zに垂直な断面において、例えば1mm~10mmの曲率半径のR部を有する。
【0026】
(フランジ部)
図2Aに示すように、一対の側壁部115,115における、第一コーナ部113,113とは反対側の端部には、第二コーナ部117,117が形成される。一対のフランジ部119,119は、第二コーナ部117,117を介して外方に向けて延在する。
フランジ部119には、接合部材120に接合するためのスポット溶接部170が長手方向Zに所定のピッチで形成されている。なお、スポット溶接は接合するための手段の一例であり、レーザ溶接やろう付けであってもよい。
【0027】
(複合ビード)
本実施形態に係る構造部材100では、天板部111において、幅方向Xの中央部分に長手方向Zに沿って一本の複合ビード150が形成される。
図4は、複合ビード150を示す概略断面図である。
図4に示すように、複合ビード150は、一対のビード側壁151,151と、一対のビード底壁153,153と、膨出部155とにより形成される。
【0028】
(ビード側壁とビード底壁)
一対のビード側壁151,151は、天板部111の幅方向Xの中央において、天板部111から高さ方向Yの内方に向けて屈曲するように形成される。本実施例に係る構造部材100においては、ビード側壁151と天板部111との内方側の角度θが略90度であるが、角度θは90度以上であってもよい。
また、一対のビード底壁153,153は、一対のビード側壁151,151における天板部111とは反対側の端部から、互いに向かい合う方向に向けて屈曲するように形成される。
【0029】
(膨出部)
膨出部155は、一対のビード底壁153,153の間において、一対のビード底壁153,153における一対のビード側壁151,151とは反対側の端部から、外方に向けて膨出するように形成される。
より具体的には、膨出部155は、一対の傾斜部位155a,155aと、中央部位155bとにより形成される。
一対の傾斜部位155a,155aは、第一端部Q1,Q1から、高さ方向Yの外方に向かうに連れて互いに離間距離が増大するように、第二端部Q2,Q2まで延在する部位である。
第一端部Q1,Q1は、一対のビード底壁153,153における一対のビード側壁151,151とは反対側の端部である。
第二端部Q2,Q2は、一対の傾斜部位155a,155aにおける一対のビード底壁153,153とは反対側の端部である。 膨出部155がこれらの一対の傾斜部位155a,155aを有することにより、第一端部Q1,Q1同士の離間距離D1は、第二端部Q2,Q2同士の離間距離D2よりも小さくなる。
尚、本願の図面において第一端部Q1,Q1、及び、第二端部Q2,Q2は、膨出部の板厚と同等の直径を有する黒点で示す。従って、
図4に示すように、離間距離D1は第一端部Q1,Q1の内方の端点同士の距離であり、離間距離D2は第二端部Q2,Q2の内方の端点同士の距離である。
中央部位155bは、第二端部Q2,Q2同士を繋ぐ部位である。
【0030】
図5は、複合ビード150が変形した後の状態を示す概略断面図である。
上述の通り、天板部111には長手方向Zに沿う圧縮応力(A)が発生する。この圧縮応力は、天板部111に長手方向Zに沿って形成される複合ビード150の断面全体にも作用する。複合ビード150は通常の凹ビード(膨出部を有さない凹形状のビード)と比較して断面内における稜線および高さ方向の壁の数が多いため、長手方向Zに沿う圧縮応力(A)に対する変形抵抗が大きくなり、ストローク初期の耐荷重を向上することができる。
また、通常の凹ビードの場合は一対のビード側壁の間に空間があり、一対のビード側壁同士が大きく離間しているため、ビード側壁が内側に倒れ込みやすい。一方、複合ビード150が形成されている構造部材100によれば、第二端部Q2がビード側壁151に近接しており、また、第二端部Q2,Q2同士は中央部位155bにより繋がっているためビード側壁151が倒れにくい。このため、天板部111の変形が相対的に小さく、ハット型部材110の断面形状も崩れにくくなることから、最大荷重ストロークを過ぎた後も長手方向Zに沿う圧縮応力(A)に対する変形抵抗を高い状態で保持することができる。
従って、複合ビード150が形成されている構造部材100によれば、局部座屈モードの変形の、ストローク初期における耐荷重を向上させることができるとともに、高い衝撃吸収エネルギを発揮することができる。
【0031】
更に、
図4に示すように、第二端部Q2,Q2同士の離間距離D2は、第一端部Q1,Q1同士の離間距離D1よりも大きくなるように構成されている。この構成によれば、膨出部155の傾斜部位155a,155aは、一対のビード側壁151,151に向かって傾斜した状態となるため、構造部材100に衝撃荷重が入力された後には、膨出部155の傾斜部位155aの第二端部Q2の近傍が一対のビード側壁151,151に干渉しながら構造部材100の変形が進行する。第二端部Q2,Q2同士を繋ぐ中央部位155bは、第二端部Q2,Q2を介して、内側に倒れ込む一対のビード側壁151,151を支えるように作用する。これにより、最大荷重を過ぎた後にも耐荷重を高く維持し、衝撃吸収エネルギを向上させることができる。
この効果をより確実に得るためには、膨出部155の第二端部Q2,Q2同士の離間距離D2は、第一端部Q1,Q1同士の離間距離D1の1.2倍以上であることが好ましく、1.5倍以上であることがより好ましい。
【0032】
また、膨出部155の外方側の幅(すなわち、第二端部Q2,Q2の幅方向外方の端点同士の距離)は、同じ高さ方向位置での一対のビード側壁151,151同士の離間距離の60%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。このような構成によれば、構造部材100に衝撃荷重が入力された後に、より確実に、第二端部Q2の近傍が一対のビード側壁151,151に干渉しながら構造部材100の変形を進行させることができる。
同様の効果を得るために、第二端部Q2と、同じ高さ方向位置でのビード側壁151との幅方向Xの離間距離(すなわち、第二端部Q2の幅方向外方の端点とビード側壁151との間の距離)は2mm以下であることが好ましく、1mm以下であることがより好ましい。
【0033】
膨出部155の中央部位155bの形状は特に限定されるものではなく、第二端部Q2,Q2同士を繋いでいればよい。例えば、長手方向Zに垂直な断面において、高さ方向Yの外方に突出する形状であってもよく、高さ方向Yの内方に突出する形状であってもよい。
ただし、膨出部155の中央部位155bの形状は、天板部111とビード側壁151との境界点同士を結ぶ仮想直線が、膨出部155の中央部位155bの少なくとも一部に重なる形状であることが好ましい。
このような構成によれば、構造部材100に衝撃荷重が入力された後に、より確実に、膨出部155が一対のビード側壁151,151に干渉しながら構造部材100の変形を進行させることができる。従って、衝撃吸収エネルギを更に向上させることができる。
【0034】
更には、本実施形態に係る構造部材100のように、膨出部155の中央部位155bが平面状に形成されるとともに、この平面状の中央部位155bが、その全長において、天板部111とビード側壁151との境界点同士を結ぶ仮想直線に重なっていることがより好ましい。
【0035】
尚、複合ビード150は、必ずしも天板部111の長手方向Zの全長に亘り形成される必要はなく、天板部111の全長の一部において形成されていてもよい。複合ビード150が形成される位置としては、構造部材100の曲げ圧潰特性として最も強化すべき位置、例えば、インパクタが接触する位置及びその近傍が選択されてもよい。また、複合ビード150は、長手方向Zの複数個所に形成されていてもよい。
【0036】
図2Bに示すように、複合ビード150は、所定の深さd1と所定の幅w1を有する。
【0037】
複合ビード150の深さd1は、複合ビード150における、天板部111の外方の表面からビード底壁153の外方の表面までの高さ方向Yの離間距離である。複合ビード150が長手方向Zに沿って深さが変化する形状である場合、天板部111からビード底壁153までの高さ方向Yの離間距離の最大値を深さd1とする。
【0038】
複合ビード150の深さd1が大きいほど、天板部111に発生する長手方向Zに沿う圧縮応力(A)に対する変形抵抗を高めることができ、天板部111での早期の座屈変形が抑制される。これにより、ストローク初期における耐荷重を向上させることができる。
従って、複合ビード150の深さd1は5mm以上であることが好ましく、8mm以上であることが更に好ましい。
【0039】
一方、複合ビード150の深さd1が大き過ぎると、複合ビード150の幅w1が相対的に小さくなり、複合ビード150の成形加工が困難になる場合がある。従って、複合ビード150の深さd1は20mm以下であることが好ましく、16mm以下であることが更に好ましい。
【0040】
複合ビード150の幅w1は、長手方向Zに垂直な断面における、複合ビード150の一方のビード側壁151の外方の表面を延長した仮想直線と、天板部111の外方の表面を延長した仮想直線との交点と、複合ビード150の他方のビード側壁151の外方の表面を延長した仮想直線と、天板部111の外方の表面を延長した仮想直線との交点との間の離間距離である。
複合ビード150が長手方向Zに沿って幅が変化する形状である場合、上記離間距離が最大となる断面における離間距離を幅w1とする。
【0041】
複合ビード150の幅w1が小さいほど、天板部111に発生する長手方向Zに沿う圧縮応力(A)に対する変形抵抗を高めることができ、天板部111での早期の座屈変形が抑制されて最大荷重が増加する。従って、複合ビード150の幅w1は20mm以下であることが好ましく、15mm以下であることが更に好ましい。
【0042】
一方、複合ビード150の幅w1が小さ過ぎると、複合ビード150の深さd1が相対的に大きくなり、複合ビード150の成形加工が困難になる場合がある。
このため、複合ビード150の幅w1は5mm以上であることが好ましく、8mm以上であることが更に好ましい。
【0043】
上述のように、複合ビード150の深さd1と幅w1は、天板部111に発生する長手方向Zに沿う圧縮応力(A)に対する変形抵抗に影響する。複合ビード150の幅w1に対する深さd1(深さd1/幅w1)で算出されるアスペクト比A1が0.25以上4.0以下である場合、天板部111に発生する長手方向Zに沿う圧縮応力(A)に対する変形抵抗を高める効果をより確実に発揮できるため好ましい。アスペクト比A1は0.5以上2.0以下であることが更に好ましい。
【0044】
ハット型部材110は、例えば、板材に冷間プレス加工又は温間プレス加工を施すことにより成形され得る。
また、ハット型部材110は、鋼板をオーステナイト域の高温まで加熱した後に金型でプレス成形を実施すると同時に、その金型内において焼入れ処理を実施するホットスタンプ加工により成形されてもよい。従って、ハット型部材110は、焼き入れ部材であってもよい。
【0045】
ここで、ハット型部材110を冷間プレス加工により成形する方法の例を
図6A、
図6B、及び、
図6Cを参照して説明する。
まず、
図6Aに示すように、一対の溝が形成された下型1001に板材を載置し、一対の溝に対応する一対の凸部が形成された上型1002を下死点まで押し込む。これにより第一中間成形体M1を得る。
次に、
図6Bに示すように、第一中間成形体M1を下型2001と上型2002とにより挟み込んだ状態で、上型2002を下型2001に向けて押込みつつ、第一中間成形体M1の両側面に配置した一対のスライド金型2003,2003を中央に向けて押し込む。これにより、複合ビード150を有する第二中間成形体M2を得る。
最後に、
図6Cに示すように、第二中間成形体M2を、下型3001と上型3002とにより略ハット型形状にプレス成形することにより、複合ビード150を有するハット型部材110を得ることができる。
【0046】
ハット型部材110は、軽量化の観点から、板厚1.2mm以下の鋼板により形成されていることが好ましく、板厚1.0mm以下の鋼板により形成されていることがより好ましい。
ハット型部材110の板厚の下限は特に限定されるものではなく、0.3mm以上であればよい。
更に、衝突安全性能の観点からは、ハット型部材110は、引張強さが980MPa以上の鋼板により形成されていることが好ましく、引張強さが1470MPa以上の鋼板で形成されていることがより好ましい。
【0047】
(接合部材)
以下、接合部材120について説明する。
接合部材120は、ハット型部材110に接合される部材である。本実施形態に係る構造部材100は、接合部材120が車内側に対向する姿勢で自動車に設置されるため、車外側からの衝撃荷重が天板部111に入力されて構造部材100に曲げ変形が生じると、接合部材120には長手方向Zに沿う引張応力(C)が発生する。
従って、接合部材120がハット型部材110に接合されることにより、長手方向Zに沿う引張応力(C)に対する変形抵抗を高めることができる。これにより、ストローク初期における耐荷重を向上させることが可能となる。
また、接合部材120は、ハット型部材110に接合されることにより、構造部材100に曲げ変形が生じた際に側壁部115が幅方向Xに開くことを防ぐことができる。従って、側壁部115における、高さ方向Yに沿う圧縮応力(B)に対する変形抵抗を十分に高めることができ、ストローク初期における耐荷重を向上させることができる。
【0048】
図2A、
図2Bに示すように、本実施形態に係る構造部材100では、一枚の平板材を接合部材120として用いる。ただし、平板材の代わりに、例えばハット型の部材を用いてもよい。
接合部材120は、鋼板、アルミ板、アルミ合金板、ステンレス板、チタン板などの金属板、更には、樹脂板、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic)板からなる部材であればよい。
接合部材120の引張強さ及び板厚は、特に限定されるものではない。前述のように車外側からの衝撃荷重が天板部111に入力されて構造部材100に曲げ変形が生じると、接合部材120には長手方向Zに沿う引張応力(C)が発生する。仮に圧縮応力が発生する場合、圧縮応力による座屈変形には部材の板厚や強度が大きく影響するが、引張応力の場合は、引張変形により部材が破断しない範囲で薄い板厚や低い強度の素材を使用することができる。このため、例えば接合部材120の引張強さ及び板厚は、ハット型部材110よりも低い引張強さであったり、薄い板厚であってもよい。
また、接合部材120は、焼き入れ部材であってもよい。
【0049】
図2Bに示すように、接合部材120は、幅方向Xの両端に設けられる一対の接合部121,121と、幅方向Xの中央に設けられる天板対向部123とを有する。
一対の接合部121,121は、ハット型部材110の一対のフランジ部119,119がスポット溶接等により接合される部位である。
天板対向部123は、接合部材120の接合部121を除く部位であって、ハット型部材110の天板部111に対向する部位である。
本実施形態に係る構造部材100では、接合部材120は一枚の平板状の鋼板で構成されるため、接合部121と天板対向部123は同一面内で互いに隣接する領域である。
【0050】
天板対向部123の幅は40mm以上200mm以下であればよい。天板対向部123の幅は、天板部111の幅Wよりも大きいことが好ましい。この場合、一対の側壁部115,115は、第一コーナ部113,113から第二コーナ部117,117にかけて外方へ広がる方向に傾斜する。車外側からの衝撃荷重が天板部111に入力された場合、一対の側壁部115,115は、第一コーナ部113,113が互いに接近する方向に倒れやすくなる。これにより、複合ビード150の一対のビード側壁151,151も膨出部155に向かう方向に倒れやすくなるが、倒れ込みが生じると膨出部155に干渉する。一対のビード側壁151,151が膨出部155と干渉することでそれ以上の倒れ込みが抑制され、それに伴って一対の側壁部115,115の倒れ込みも抑制される。その結果、ハット型部材110の断面形状の崩れを抑えることができるため、衝撃吸収エネルギを更に向上させることができる。また、一対の側壁部115,115が第一コーナ部113,113から第二コーナ部117,117にかけて外方へ広がる方向に傾斜していることで、ハット型部材110をプレス成形する場合、高さ方向Yをプレス方向とした時の負角を無くすことができるため、成形加工が容易になるという効果も得られる。
【0051】
本実施形態に係る構造部材100によれば、車外側からの衝撃荷重が天板部111に入力されて構造部材100に曲げ変形が生じた際に、長手方向Zに沿う圧縮応力(A)に対する変形抵抗と、高さ方向Yに沿う圧縮応力(B)に対する変形抵抗と、長手方向Zに沿う引張応力(C)に対する変形抵抗と、を複合的に発揮することができる。
特に、複合ビード150が形成されていることにより、長手方向Zに沿う圧縮応力(A)に対する変形抵抗がより効果的に発生する。従って、天板部111での早期の座屈変形が抑制され、ストローク初期における耐荷重を向上させることができる。
更には、構造部材100に衝撃荷重が入力された後には、膨出部155が一対のビード側壁151,151に干渉しながら構造部材100の変形が進行する。これにより、最大荷重を過ぎた後にも耐荷重を高く維持し、衝撃吸収エネルギを向上させることができる。
【0052】
(第一変形例)
図7は、第一変形例に係る構造部材100Aの断面図を示す。上述の構造部材100では、ハット型部材110は、一本の複合ビード150が形成された天板部111を有するが、第一変形例に係る構造部材100Aでは、ハット型部材110Aは、二本の複合ビード150A,150Aが天板部111Aの幅方向Xの両側に形成されている。
【0053】
このように、天板部111Aに長手方向Zに沿って二本の複合ビード150A,150Aが幅方向Xに並列して形成される場合、
図7に示すように、それぞれの複合ビード150A,150Aは、天板部111Aの幅方向Xの両端の近傍部分Pにおいて複合ビード150Aの幅方向の中心(すなわち、複合ビード150Aの幅w1の中央位置)が配置されるように形成される。
【0054】
より具体的には、近傍部分Pは、構造部材100Aの長手方向Zに垂直な断面における、天板部111Aと第一コーナ部113との境界点から、幅方向Xに天板部111Aの幅Wの1/4の離間距離となる点までの領域である。
【0055】
別の観点からは、それぞれの複合ビード150A,150Aは、長手方向Zに垂直な断面において、天板部111Aと第一コーナ部113との境界点から、20mmの離間距離となる点までの領域に、複合ビード150Aと天板部111Aとの境界点が位置するように、天板部111Aから内方に向けてビード側壁151が突出するように形成されてもよい。
【0056】
このように、二本の複合ビード150A,150Aが天板部111Aの幅方向Xの両側に形成される場合、第一コーナ部113と複合ビード150Aとが近い距離で配置される。従って、第一コーナ部113から複合ビード150Aまでの領域において、長手方向Zに交差する断面の高さ方向Yの曲げ剛性を効果的に向上することができる。従って、ストローク初期における耐荷重および衝撃吸収エネルギをより確実に向上させることができる。
【0057】
(第二変形例)
図8は、第二変形例に係る構造部材100Bの斜視図である。上述の構造部材100では、複合ビード150がハット型部材110の天板部111に形成されているが、この構造部材100Bでは、複合ビード150Bがハット型部材110Bの天板部111Bに形成されず、接合部材120Bの天板対向部123Bに形成されている。
【0058】
この構造部材100Bは、構造部材100とは異なり、ハット型部材110Bが車内側に対向し、接合部材120Bが車外側に対向する姿勢で自動車に設置されることを想定した部品である。
この構造部材100Bによれば、ハット型部材110Bが車内側に対向し、接合部材120Bが車外側に対向する姿勢で自動車に設置した場合において、構造部材100と同様の効果を得ることができる。
また、構造部材100Bにおいて、二本の複合ビードを天板対向部123Bの幅方向Xの両側に形成する場合、ストローク初期における耐荷重および衝撃吸収エネルギをより確実に向上させることができる。
従って、複合ビード150Bが接合部材120Bの天板対向部123Bに形成される場合においては、下記の態様が好ましい。
(1)長手方向Zに垂直な断面において、接合部材120Bの接合部121の内側の端部から、幅方向Xに天板対向部123Bの幅の1/4の離間距離となる点までの領域に、複合ビード150Bの幅方向Xの中心が位置するように複合ビード150Bが形成される態様。
(2)長手方向Zに垂直な断面において、接合部材120Bの接合部121の内側の端部から、20mmの離間距離となる点までの領域に、複合ビード150Bと接合部材120Bとの境界点が位置するように複合ビードが形成される態様。
【0059】
また、この変形例に係る構造部材100Bにおいては、天板対向部123Bと複合ビード150Bのビード側壁との境界点同士を結ぶ仮想直線は、膨出部の中央部位の少なくとも一部に重なることが好ましい。
また、接合部材120Bが、板厚1.2mm以下の鋼板により形成されていることが好ましい。
また、接合部材120Bが、引張強さ980MPa以上の鋼板により形成されていることが好ましい。
接合部材120Bが、焼入れ部材であることが好ましい。
【0060】
図9は、第三変形例に係る構造部材100Cの複合ビード150Cを示す断面図である。この複合ビード150Cでは、膨出部155の第二端部Q2,Q2は一対のビード側壁151,151に接触した状態となっている。
この構成によれば、膨出部155とビード側壁151とが予め接触しているため、構造部材100Cに衝撃荷重が入力された後に、より確実に、膨出部155とビード側壁151とが干渉した状態で構造部材100Cの変形を進行させることができる。これにより、より早いタイミングで長手方向Zに沿う圧縮応力(A)に対する変形抵抗を高めることができるとともに、最大荷重ストロークを過ぎた後にも耐荷重を高く維持し、衝撃吸収エネルギを向上させることができる。
更に、膨出部155は一対のビード側壁151,151に接触且つ固定された状態であってもよい。接触且つ固定するための手段としては、レーザ溶接やろう付け、更には接着剤塗布が採用できる。このように形状を固定する場合、ハット型部材110の断面形状の崩れを効果的に抑えることができるため、衝撃吸収エネルギを向上させる効果をより安定して得ることができる。
一方、構造部材100Cの電着塗装性を考慮すると、複合ビード150Cの膨出部155の第二端部Q2,Q2は一対のビード側壁151,151から離間していることが好ましい場合もある。膨出部155の第二端部Q2,Q2が一対のビード側壁151,151から離間していることで、膨出部155の一対の傾斜部位155a,155aと一対のビード側壁151,151と一対のビード底壁153,153で囲まれる一対の領域への電着塗装性を向上することができる。衝撃吸収エネルギの向上と電着塗装性とを両立させるため、膨出部155と一対のビード側壁151,151が接触する範囲と離間する範囲を交互に設けたり、混在させたりしても良い。
【0061】
図10は、第四変形例に係る構造部材100Dの複合ビード150Dを示す断面図である。この複合ビード150Dでは、第一端部Q1,Q1同士が接触している。すなわち、複合ビード150Dの、第一端部Q1,Q1同士の離間距離D1は、0mmである。
この場合、構造部材100Dに衝撃荷重が入力された後には、一対のビード側壁151,151が早期に膨出部155に接触することにより、より確実に、膨出部155とビード側壁151とが干渉した状態で構造部材100Dの変形を進行させることができる。これにより、最大荷重ストロークを過ぎた後にも耐荷重を高く維持し、衝撃吸収エネルギを向上させることができる。
更に、複合ビード150Dの第一端部Q1,Q1同士が互いに接触且つ固定された状態であってもよい。接触且つ固定するための手段としては、レーザ溶接やろう付け、更には接着剤塗布が採用できる。このように形状を固定する場合、ハット型部材110の断面形状の崩れを効果的に抑えることができるため、衝撃吸収エネルギを向上させる効果をより安定して得ることができる。
一方、構造部材100Dの電着塗装性を考慮すると、複合ビード150Dの第一端部Q1,Q1同士は離間していることが好ましい場合もある。複合ビード150Dの第一端部Q1,Q1同士が離間していることで、膨出部155の一対の傾斜部位155a,155aと中央部位155bで囲まれる領域への電着塗装性を向上することができる。衝撃吸収エネルギの向上と電着塗装性とを両立させるため、複合ビード150Dの第一端部Q1,Q1同士が接触する範囲と離間する範囲を交互に設けたり、混在させたりしても良い。
【0062】
(第二実施形態)
以下、本発明の第二実施形態に係る構造部材200について説明する。
本実施形態に係る構造部材200は、側壁部において高さ方向Yに延びるビードが形成される点で、第一実施形態に係る構造部材100と異なる。
複合ビード150や接合部材120など、第一実施形態での説明と重複する構成については同一符号を用いて説明を省略する。
【0063】
まず、
図11~
図13を参照して、本実施形態に係る構造部材200の概略構成について説明する。
図11は、構造部材200の斜視図である。
図12は、概略平面図であり、
図13は、
図12の部分Bの拡大図である。
図11~
図13に示すように、構造部材200は、ハット型部材210と接合部材120とにより構成される閉断面構造の部材である。
【0064】
図11に示すように、ハット型部材210は、長手方向Zに沿って延びる天板部111と、天板部111の幅方向Xの両端に形成された第一コーナ部113,113を介して延在する一対の側壁部215,215と、一対の側壁部215,215における第一コーナ部113,113とは反対側の端部に形成された第二コーナ部117,117を介して延在する一対のフランジ部119,119とを有する。
【0065】
(高さ方向ビード)
側壁部215には長手方向Zに交差する方向に沿って複数の高さ方向ビード260が並列して形成される。
図11に示す例では、側壁部215の高さ方向の全高に亘り高さ方向ビード260が形成されているが、高さ方向の全長の一部のみに高さ方向ビード260が形成されていてもよい。
高さ方向ビード260は、側壁部215から内方に向けて突出するように形成されている。
高さ方向ビード260は、側壁部215側の端部に所定の曲率半径のR部を有する場合がある。その場合、高さ方向ビード260は、高さ方向ビード260のR部を介して側壁部215に繋がる。
このような高さ方向ビード260が設けられることにより、側壁部215に発生する高さ方向Yに沿う圧縮応力(B)に対する変形抵抗を高めることができる。これにより、側壁部215での早期の座屈変形が抑制されて最大荷重が増加する。
【0066】
本実施形態に係る構造部材200では、高さ方向ビード260は、第一コーナ部113から第二コーナ部117まで延在するように形成されている。
高さ方向ビード260が、第一コーナ部113から延在するように形成されていることにより、高さ方向ビード260が第一コーナ部113の高さ方向Yに沿う圧縮応力(B)に対する変形抵抗にも寄与し、第一コーナ部113が潰れにくくなる。第一コーナ部113が潰れにくくなることで、第一コーナ部113と繋がる側壁部215の上部も更に潰れにくくなる。第一コーナ部113及び側壁部215が潰れにくくなることで、構造部材200の高さ減少に伴う、長手方向Zに交差する断面の高さ方向Yの曲げ剛性の低下を抑制し、局部座屈モードの3点曲げ特性の低下を防ぐことができるため、好ましい。尚、このように、高さ方向ビード260が、第一コーナ部113から延在するように形成されている場合には、第一コーナ部113は、長手方向Zに沿って、高さ方向ビード260のビード底壁262の部位と、高さ方向ビードが形成されていない側壁部215の部位とによる段差が形成されることになる。
【0067】
更に、高さ方向ビード260が、第一コーナ部113から第二コーナ部117まで延在するように形成されていることにより、高さ方向ビード260は第二コーナ部117の高さ方向Yに沿う圧縮応力(B)に対する変形抵抗にも寄与し、第二コーナ部117も潰れにくくなる。よって、第一コーナ部113、側壁部215、及び第二コーナ部117が潰れにくくなるため、構造部材200の高さ減少に伴う、長手方向Zに交差する断面の高さ方向Yの曲げ剛性の低下を更に抑制し、局部座屈モードの3点曲げ特性の低下を更に防ぐことができるため、好ましい。
【0068】
高さ方向ビード260は、複合ビード150と同様に、天板部111、側壁部215、及びフランジ部119をプレス成形する際に同一金型で同時成形してもよく、天板部111、側壁部215、及びフランジ部119をプレス成形する前に別の金型や工具で成形してもよい。
【0069】
図13に示すように、高さ方向ビード260は、一対のビード側壁261,261と、ビード底壁262により形成されている。
一対のビード側壁261,261は、側壁部215から屈曲して内方に向かって延在する。
ビード底壁262は、一対のビード側壁261,261における側壁部215とは反対側の端部間を繋ぐように延在する。
【0070】
図13に示すように、高さ方向ビード260は所定の深さd2と所定の幅w2を有する。
【0071】
高さ方向ビード260の深さd2は、高さ方向ビード260における、側壁部215の外方の表面からビード底壁262の外方の表面までの幅方向Xの離間距離である。高さ方向ビード260が高さ方向Yに沿って深さが変化する形状である場合、側壁部215からビード底壁262までの幅方向Xの離間距離の最大値を深さd2とする。
【0072】
高さ方向ビード260の深さd2が大きいほど、側壁部215に発生する高さ方向Yに沿う圧縮応力(B)に対する変形抵抗をより高めることができる。従って、高さ方向ビード260の深さd2は2mm以上であることが好ましく、4mm以上であることが更に好ましい。
【0073】
一方、高さ方向ビード260の深さd2が大き過ぎると、構造部材200の幅方向Xの寸法が局所的に小さい値になり、長手方向Zに交差する断面における曲げ剛性が小さくなり過ぎて、所望の3点曲げ特性が得られなくなることがある。また、複合ビード150を天板部111の幅方向Xの端部近傍部分に形成する構成では、高さ方向ビード260の深さd2が大き過ぎると、所望の位置に複合ビード150を形成できなくなる場合がある。更に、高さ方向ビード260の深さd2が大き過ぎると、高さ方向ビード260の幅w2が相対的に小さい場合、高さ方向ビード260の成形加工が困難になることもある。従って、高さ方向ビード260の深さd2は10mm以下であることが好ましく、8mm以下であることが更に好ましい。
【0074】
複数の高さ方向ビード260は、側壁部215の長手方向Zに50mm以下のビード間距離で形成されていることが好ましく、30mm以下のビード間距離で形成されていることが更に好ましい。この場合、側壁部215に発生する高さ方向Yに沿う圧縮応力(B)に対する変形抵抗をより高めることができる。尚、ビード間距離とは、
図13に示すように、高さ方向ビード260の一方の端部と、隣接する高さ方向ビード260の他方の端部との間の離間距離を意味する。
【0075】
尚、複数の高さ方向ビード260は、側壁部215の長手方向Zの全長に亘り形成される必要はなく、側壁部215の長手方向Zの全長の一部において形成されていればよい。複数の高さ方向ビード260が形成される位置としては、構造部材200の曲げ圧潰特性として最も強化すべき位置、例えば、インパクタが接触する位置及びその近傍が選択されてもよい。
また、複数の高さ方向ビード260は、側壁部215に均等のビード間距離で並んで形成される必要はなく、例えば、三本の高さ方向ビード260が形成される場合、二つのビード間距離は異なる値であってよい。
更に、複数の高さ方向ビード260は、一対の側壁部215,215において、必ずしも長手方向Zの同じ位置に形成される必要はない。例えば一方の側壁部215に形成された高さ方向ビード260と同じ長手方向Zの位置において、他方の側壁部215には高さ方向ビード260が形成されていなくてもよい。
【0076】
高さ方向ビード260の幅w2は、高さ方向Yに垂直な断面における、高さ方向ビード260の一方のビード側壁261の外方の表面を延長した仮想直線と、側壁部215の外方の表面を延長した仮想直線との交点と、高さ方向ビード260の他方のビード側壁261の外方の表面を延長した仮想直線と、側壁部215の外方の表面を延長した仮想直線との交点との間の離間距離である。
高さ方向ビード260が長手方向Zに交差する方向に沿って幅が変化する形状である場合、上記離間距離が最大となる断面における離間距離を幅w2とする。
【0077】
高さ方向ビード260の幅w2が小さいほど、側壁部215に発生する高さ方向Yに沿う圧縮応力(B)に対する変形抵抗をより高めることができる。従って、高さ方向ビード260の幅w2は60mm以下であることが好ましく、40mm以下であることが更に好ましい。
【0078】
一方、高さ方向ビード260の幅w2が小さ過ぎると、高さ方向ビード260の深さd2が相対的に大きい場合、高さ方向ビード260の成形加工が困難になる場合がある。従って、高さ方向ビード260の幅w2は10mm以上であることが好ましく、15mm以上であることが更に好ましい。
【0079】
上述のように、高さ方向ビード260の深さd2と幅w2は、側壁部215に発生する高さ方向Yに沿う圧縮応力(B)に対する変形抵抗に影響する。高さ方向ビード260の幅w2に対する深さd2(深さd2/幅w2)で算出されるアスペクト比A2が0.05以上1.0以下である場合、側壁部215に発生する高さ方向Yに沿う圧縮応力(B)に対する変形抵抗を高める効果をより確実に発揮できるため好ましい。アスペクト比A2は0.1以上0.5以下であることが更に好ましい。
【0080】
以上説明した本実施形態に係る構造部材200によれば、車外側からの衝撃荷重が天板部111に入力されて構造部材200に曲げ変形が生じた際には、天板部111に発生する長手方向Zに沿う圧縮応力(A)に対する変形抵抗と、側壁部215に発生する高さ方向Yに沿う圧縮応力(B)に対する変形抵抗と、接合部材120に発生する長手方向Zに沿う引張応力(C)に対する変形抵抗と、を複合的に発揮することができる。特に、側壁部215に発生する高さ方向Yに沿う圧縮応力(B)に対する変形抵抗を高めることができる。これにより、特にストローク初期における耐荷重が向上し、衝突安全性能を高めることができる。
【0081】
尚、変形抵抗は板材が薄いほど低くなるため、従来は、薄肉化による変形抵抗の減少が、薄肉高強度の材料利用による軽量化の障壁の一つになっていた。即ち、例えば天板部において長手方向Zに沿う圧縮応力(A)に対する変形抵抗を高強度化や部品形状の工夫等により高めたとしても、薄肉化により側壁部が撓み変形等で容易に座屈変形してしまうと、構造部材は良好な3点曲げ特性を発揮できない。また、逆に側壁部の長手方向Zに交差する方向における変形抵抗を高強度化や部品形状の工夫等により高めたとしても、薄肉化により天板部が撓み変形等で容易に座屈変形してしまうと、構造部材は良好な3点曲げ特性を発揮できない。
本実施形態に係る構造部材200によれば、上記のように、それぞれの部位における変形抵抗を複合的に発揮することができるため、薄肉高強度の材料を利用しても優れた衝突安全性能を発揮することが可能となる。
【0082】
(実施例)
以下、本発明の効果を実施例により具体的に説明する。なお、以下に説明する実施例は、あくまでも本発明の一例であって、本発明を限定するものではない。
【0083】
板厚1.6mm、引張強さ1.5GPa級の鋼板を適用したハット型部材と、板厚0.8mm、引張強さ440MPa級、または板厚1.6mm、引張強さ1.5GPa級の鋼板を適用した接合部材により構成された構造部材のシミュレーションモデルを準備した。
構造部材のシミュレーションモデルについて、複合ビードと高さ方向ビードを適宜付与し、3点曲げを想定したシミュレーションによりストローク初期の最大荷重およびストローク100mmまでの吸収エネルギーを評価した。また、基準又は比較例として複合ビードに代えて従来の凹ビードを付与した3点曲げのシミュレーションも一部実施した。基本条件は下記の通りである。尚、本実施例では、天板部または天板対向部に配置した長手方向ビードである複合ビードおよび凹ビードのビード側壁の傾斜角は、天板部に対して90°とした。また、3点曲げのシミュレーションで、ハット型部材をインパクタ側に向けて配置する場合は接合部材に板厚0.8mm、引張強さ440MPa級の鋼板を適用し、接合部材をインパクタ側に向けて配置する場合は接合部材に板厚1.6mm、引張強さ1.5GPa級の鋼板を適用した。
天板部の幅W:90mm
側壁部の高さH:60mm
第一コーナ部の曲率半径(曲げ内側):5mm
第二コーナ部の曲率半径(曲げ内側):5mm
構造部材の全長L:800mm
スポット溶接:40mmピッチ
天板対向部の幅:130mm
長手方向ビードの深さd1:10mm
長手方向ビードの幅w1:10mm
高さ方向ビードの深さd2:5mm
高さ方向ビードの幅w2:24mm
高さ方向ビードのビード間距離:16mm
【0084】
3点曲げ条件は、
図14に示すように、インパクタの曲率半径を50mm、支持台の離間距離を700mmに設定した。
ビード付与条件とストローク初期の最大荷重の評価結果を表1~表4に示す。
【0085】
【0086】
実験No.1、実験No.1A、及び実験No.1Bは、ハット型部材をインパクタ側に向けて配置する3点曲げ条件において、ハット型部材に複合ビードを形成することによる効果を確認するための実験データである。
実験No.1は評価基準であり、長手方向に延びるビードを形成しない実験例である。
実験No.1Aは、ハット型部材の天板部中央に従来形状の凹ビードを1本形成する実験例である。
実験No.1Bは、ハット型部材の天板部中央に本発明の複合ビードを1本形成する実験例である。
【0087】
実験No.1Aによれば、実験No.1と比較すると最大荷重は126%に向上し、エネルギ吸収量は116%に向上した。
一方、実験No.1Bによれば、実験No.1と比較すると最大荷重は132%に向上し、エネルギ吸収量は128%に向上した。
従って、本発明の複合ビードにより、従来の凹ビードと比較して優れた衝突安全性能を発揮することが確認できた。
【0088】
【0089】
実験No.2及び実験No.2Aは、ハット型部材の天板部稜線側に2本の複合ビードを形成することによる効果を確認するための実験データである。
実験No.2は評価基準であり、ハット型部材の天板部稜線側に従来凹ビードを2本形成する実験例である。
実験No.2Aは、ハット型部材の天板部稜線側に本発明の複合ビードを2本形成する実験例である。
【0090】
実験No.2Aによれば、実験No.2と比較すると最大荷重は110%に向上し、エネルギ吸収量は111%に向上した。
従って、本発明の複合ビードを天板部稜線側に2本形成することにより、従来の凹ビードを天板部稜線側に2本形成する場合と比較して優れた衝突安全性能を発揮することが確認できた。
【0091】
更に、実験No.2Bは、ハット型部材の天板部稜線側に本発明の複合ビードを2本形成し、これに加え、ハット型部材の側壁部に高さ方向ビードを形成する実験例である。
実験No.2Bによれば、実験No.2と比較すると最大荷重は149%に向上し、エネルギ吸収量は146%に向上した。
従って、ハット型部材の天板部稜線側に本発明の複合ビードを2本形成することに加え、ハット型部材の側壁部に高さ方向ビードを形成する場合においては、更に優れた衝突安全性能を発揮することが確認できた。
【0092】
【0093】
実験No.3、実験No.3A、及び実験No.3Bは、接合部材をインパクタ側に向けて配置する3点曲げ条件において、接合部材の天板対向部に複合ビードを形成することによる効果を確認するための実験データである。
実験No.3は評価基準であり、長手方向に延びるビードを形成しない実験例である。
実験No.3Aは、接合部材の天板対向部中央に従来形状の凹ビードを1本形成する実験例である。
実験No.3Bは、接合部材の天板対向部中央に本発明の複合ビードを1本形成する実験例である。
【0094】
実験No.3Aによれば、実験No.3と比較すると最大荷重は127%に向上し、エネルギ吸収量は129%に向上した。
一方、実験No.3Bによれば、実験No.3と比較すると最大荷重は130%に向上し、エネルギ吸収量は139%に向上した。
従って、本発明の複合ビードにより、従来の凹ビードと比較して優れた衝突安全性能を発揮することが確認できた。
【0095】
【0096】
実験No.4及び実験No.4Aは、接合部材の天板対向部の両側に2本の複合ビードを形成することによる効果を確認するための実験データである。
実験No.4は評価基準であり、接合部材の天板対向部の両側に従来凹ビードを2本形成する実験例である。
実験No.4Aは、接合部材の天板対向部の両側に本発明の複合ビードを2本形成する実験例である。
【0097】
実験No.4Aによれば、実験No.4と比較すると最大荷重は111%に向上し、エネルギ吸収量は105%に向上した。
従って、本発明の複合ビードを接合部材の天板対向部の両側に2本形成することにより、従来の凹ビードを接合部材の天板対向部の両側に2本形成する場合と比較して優れた衝突安全性能を発揮することが確認できた。
【0098】
更に、実験No.4Bは、接合部材の天板対向部の両側に本発明の複合ビードを2本形成することに加え、ハット型部材の側壁部に高さ方向ビードを形成する実験例である。
実験No.4Bによれば、実験No.4と比較すると最大荷重は125%に向上し、エネルギ吸収量は190%に向上した。
従って、接合部材の天板対向部の両側に本発明の複合ビードを2本形成することに加え、ハット型部材の側壁部に高さ方向ビードを形成する場合においては、更に優れた衝突安全性能を発揮することが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明によれば、局部座屈モードの変形の、ストローク初期における耐荷重と、衝撃吸収エネルギとを向上させることでより優れた衝突安全性能を発揮することが可能な構造部材を提供することができる。
【符号の説明】
【0100】
100,100A,100B,100C,100D,200 構造部材
110,210 ハット型部材
111 天板部
113 第一コーナ部
115,215 側壁部
117 第二コーナ部
119 フランジ部
120,120B 接合部材
121 接合部
123,123B 天板対向部
150,150A,150B,150C,150D 複合ビード
151 ビード側壁
153 ビード底壁
155 膨出部
155a 傾斜部位
155b 中央部位
260 高さ方向ビード
261 ビード側壁
262 ビード底壁
A1,A2 アスペクト比
D1 第一端部同士の離間距離
D2 第二端部同士の離間距離
X 幅方向
Y 高さ方向
Z 長手方向