(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-11
(45)【発行日】2025-03-19
(54)【発明の名称】遠心ファン
(51)【国際特許分類】
F04D 29/30 20060101AFI20250312BHJP
F04D 29/66 20060101ALI20250312BHJP
【FI】
F04D29/30 F
F04D29/66 M
(21)【出願番号】P 2023108410
(22)【出願日】2023-06-30
【審査請求日】2024-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087985
【氏名又は名称】福井 宏司
(72)【発明者】
【氏名】太田黒 竜佑
(72)【発明者】
【氏名】丸山 要
(72)【発明者】
【氏名】陳 作舟
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 明楠
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-054594(JP,A)
【文献】国際公開第2012/140690(WO,A1)
【文献】特開2005-240749(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/30
F04D 29/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心ファン(11)であって、
回転軸(12)に取り付けられる第1部材(13)と、前記第1部材(13)と対向する位置に設けられる第2部材(14)との間に配置される翼(21)を備え、
前記翼(21)は、中実部(22)と、
多孔質材によって形成される圧力変動抑制部(31)とによって形成され、
前記圧力変動抑制部(31)は、前記翼(21)の正圧面(25)または負圧面(26)に設けられ、
前記翼(21)は、径方向内側に位置する前縁(21a)と、径方向外側に位置する後縁(21b)と、を有し、
前記圧力変動抑制部(31)の面重心(G)の位置は、前記後縁(21b)よりも前記前縁(21a)に近
く、
前記回転軸(12)に垂直な翼断面において、前記前縁(21a)と、前記後縁(21b)と、を繋ぐ線の寸法を翼弦長(L)とする場合、前記面重心(G)は、前記前縁(21a)から前記翼弦長(L)の20%以内に位置する、
遠心ファン。
【請求項2】
前記中実部(22)は、前記前縁(21a)に設けられる、
請求項1に記載の遠心ファン。
【請求項3】
前記圧力変動抑制部(31)は、前記前縁(21a)に設けられる、
請求項1に記載の遠心ファン。
【請求項4】
前記圧力変動抑制部(31)は、前記正圧面(25)と、前記負圧面(26)と、を連通するように設けられる、
請求項1に記載の遠心ファン。
【請求項5】
前記圧力変動抑制部(31)は、前記負圧面(26)にのみ設けられる、
請求項1に記載の遠心ファン。
【請求項6】
前記翼(21)は、中空部(27)をさらに有し、
前記中空部(27)は、前記圧力変動抑制部(31)に隣接する、
請求項1に記載の遠心ファン。
【請求項7】
前記中空部(27)において、前記前縁(21a)と、前記後縁(21b)と、を繋ぐ線の寸法を翼弦長(L)とする場合、前記翼弦長(L)に垂直な方向における幅が、最も大きい部分の幅寸法(S)は、12mm以上である、
請求項6に記載の遠心ファン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遠心ファンに関する。
【背景技術】
【0002】
軸流ファンに関する技術として、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1では、送風機羽根車の翼の内部に中空層を設け、翼の全面または一部に中空層と外部とが連通する多孔質材を使用することによって、騒音の抑制を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
遠心ファンにおける騒音の抑制には、改善の余地がある。
本開示の目的の1つは、好適に騒音を抑制できる遠心ファンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する第1観点の遠心ファンは、回転軸に取り付けられる第1部材と、前記第1部材と対向する位置に設けられる第2部材との間に配置される翼を備え、前記翼は、中実部と、圧力変動抑制部とによって形成され、前記圧力変動抑制部は、前記翼の正圧面または負圧面に設けられ、前記翼は、径方向内側に位置する前縁と、径方向外側に位置する後縁と、を有し、前記圧力変動抑制部の面重心の位置は、前記後縁よりも前記前縁に近い。
この構成によれば、遠心ファンの翼に圧力変動抑制部を設けることによって、翼面付近において騒音の原因になる圧力変動が除去されるため、翼面付近における渦の発達が抑制される。したがって、翼に干渉する渦の乱れに起因する騒音を低減できる。よって、遠心ファンは、好適に騒音を抑制できる。また、遠心ファンは、圧力変動抑制部が翼の前縁側に配置されるため、好適に騒音を低減できる。
【0006】
第2観点の遠心ファンは、第1観点の遠心ファンにおいて、前記回転軸に垂直な翼断面において、前記前縁と、前記後縁と、を繋ぐ線の寸法を翼弦長とする場合、前記面重心は、前記前縁から前記翼弦長の40%以内に位置する。
この構成によれば、面重心が前縁から翼弦長の40%より大きい位置に設けられる場合よりも、翼に干渉する渦の乱れに起因する騒音を低減できる。
【0007】
第3観点の遠心ファンは、第2観点の遠心ファンにおいて、前記面重心は、前記前縁から前記翼弦長の20%以内に位置する。
この構成によれば、面重心が前縁から翼弦長の20%より大きい位置に設けられる場合よりも、翼に干渉する渦の乱れに起因する騒音を低減できる。
【0008】
第4観点の遠心ファンは、第1から第3観点のいずれか1つの遠心ファンにおいて、前記中実部は、前記前縁に設けられる。
この構成によれば、中実部が前縁に設けられるため、翼の強度および剛性を高くできる。
【0009】
第5観点の遠心ファンは、第1から第3観点のいずれか1つの遠心ファンにおいて、前記圧力変動抑制部は、前記前縁に設けられる。
この構成によれば、圧力変動抑制部が前縁に設けられるため、前縁に圧力変動抑制部が設けられない場合よりも翼に干渉する渦の乱れに起因する騒音を低減できる。
【0010】
第6観点の遠心ファンは、第1から第5観点のいずれか1つの遠心ファンにおいて、前記圧力変動抑制部は、前記正圧面と、前記負圧面と、を連通するように設けられる。
この構成によれば、正圧面と、負圧面と、が連通することによって、気流の乱れの圧力変動を十分に抑制できるため、翼に干渉する渦の乱れに起因する騒音を低減できる。
【0011】
第7観点の遠心ファンは、第1から第5観点のいずれか1つの遠心ファンにおいて、前記圧力変動抑制部は、前記負圧面にのみ設けられる。
この構成によれば、負圧面にのみ圧力変動抑制部を設けることによって、コストが低減し、かつ、翼に干渉する渦の乱れに起因する騒音を低減できる。
【0012】
第8観点の遠心ファンは、第1から第7観点のいずれか1つの遠心ファンにおいて、前記翼は、中空部をさらに有し、前記中空部は、前記圧力変動抑制部に隣接する。
この構成によれば、翼面付近で生じる気流の乱れの圧力変動を翼面から遠ざかる翼内部方向に透過できるため、翼に干渉する渦の乱れに起因する騒音を低減できる。
【0013】
第9観点の遠心ファンは、第8観点の遠心ファンにおいて、前記中空部において、前記前縁と、前記後縁と、を繋ぐ線の寸法を翼弦長とする場合、前記翼弦長に垂直な方向における幅が、最も大きい部分の幅寸法は、12mm以上である。
この構成によれば、翼面付近で生じる気流の乱れの圧力変動を翼面から遠ざかる翼内部方向に透過できるため、翼に干渉する渦の乱れに起因する騒音を低減できる。
【0014】
第10観点の遠心ファンは、第1から第9観点のいずれか1つの遠心ファンにおいて、前記圧力変動抑制部は、多孔質材によって形成される。
この構成によれば、翼面付近において騒音の原因になる圧力変動が多孔質材の内部を透過することによって除去されるため、翼面付近における渦の発達が抑制される。したがって、翼に干渉する渦の乱れに起因する騒音を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】
図1の遠心ファンの翼の断面の模式図である。
【
図4】翼における圧力変動抑制部の設置位置に対する低騒音効果の大きさを示すグラフである。
【
図5】第2実施形態の遠心ファンの翼の断面の模式図である。
【
図6】中空部の幅寸法に応じた低騒音効果の大きさを示すグラフである。
【
図7】第3実施形態の遠心ファンの翼の断面の模式図である。
【
図8】圧力変動抑制部が翼の正圧面のみ、負圧面のみ、または、正圧面および負圧面に設けられる場合、および、翼に設けられない場合の、風量に対する送風音を示すグラフである。
【
図9】第1変形例の遠心ファンの翼の断面の模式図である。
【
図10】第2変形例の遠心ファンの翼の断面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
図1から
図4を参照して、第1実施形態の遠心ファン11について説明する。
【0017】
<遠心ファン>
遠心ファン11は、室内の空気を循環させるための装置である。遠心ファン11は、例えば、ターボファンまたはシロッコファンを含む。本実施形態では、遠心ファン11をターボファンとして説明する。遠心ファン11は、遠心ファン11の回転方向Rに回転することによって、空気の吸込口14aから吸い込んだ空気を径方向外側に吹き出すように構成される。回転方向Rは、例えば、反時計回り方向である。回転方向Rは、時計回り方向であってもよい。
【0018】
遠心ファン11は、例えば、モータによって回転される。遠心ファン11の回転軸12と、モータの回転軸は一致する。回転軸12は、回転中心軸心C1を有する。
【0019】
遠心ファン11は、回転軸12に取り付けられる第1部材13を備える。第1部材13は、回転軸12と一体回転する。第1部材13は、例えば、円形の板である。第1部材13の中心には、回転軸12が設けられる孔が形成される。第1部材13の材質は、例えば、金属または樹脂である。
【0020】
遠心ファン11は、第1部材13と対向する位置に設けられる第2部材14を備える。第2部材14は、例えば、ファンシュラウドである。第2部材14の形状は、円形である。第2部材14の中央部分には、空気を吸い込む吸込口14aが形成される。第2部材14の材質は、例えば、金属または樹脂である。
【0021】
遠心ファン11は、遠心ファン11の軸方向において、第1部材13と、第2部材14との間に配置される翼21を備える。第1部材13と、第2部材14との間には、複数の翼21が、回転軸12の周囲を囲むように、所定間隔をあけて配置される。複数の翼21は、10枚以下である。好ましくは、複数の翼21は、6枚である。複数の翼21は、10枚から7枚のいずれか、または、5枚から2枚のいずれかであってもよい。複数の翼21のそれぞれは、同一形状である。
【0022】
翼21は、前縁21aと、後縁21bと、を有する。前縁21aは、回転方向Rの下流側に位置する。前縁21aは、回転軸12側に位置する。前縁21aは、後縁21bよりも遠心ファン11の径方向内側に位置する。前縁21aは、回転方向Rの下流側に向かって湾曲する。例えば、軸方向における前縁21aの中間部分が回転方向Rの下流側に向けて最も突出するように湾曲する。
【0023】
後縁21bは、回転方向Rの上流側に位置する。後縁21bは、前縁21aよりも遠心ファン11の径方向外側に位置する。後縁21bは、例えば、凹凸部21cおよび切欠部21dを含む。凹凸部21cは、例えば、のこぎりの歯のような形状を有する。凹凸部21cは、後縁21bの第2部材14側に設けられる。切欠部21dは、後縁21bの第1部材13側に設けられる。凹凸部21cおよび切欠部21dは、省略されてもよい。
【0024】
翼21は、後縁21bから前縁21aに向けて徐々に厚くなる。周方向に隣接する2つの翼21のうちの、一方の翼21の前縁21aと、他方の翼21の後縁21bとの間には、吹出口21eが設けられる。遠心ファン11は、回転方向Rに回転する場合、第2部材14の吸込口14aから空気を吸い込む。遠心ファン11は、吸い込んだ空気を翼21の前縁21aから後縁21bに案内するとともに、吹出口21eから遠心ファン11の径方向外側に空気を吹き出す。
【0025】
翼21は、中実部22と、圧力変動抑制部31とによって形成される。中実部22は、稠密である。中実部22の材質は、特に限定されない。中実部22の材質は、例えば、金属または樹脂である。中実部22は、圧力変動抑制部31よりも密度が高い。圧力変動抑制部31の詳細については後述する。
【0026】
図3には、回転軸12に垂直な翼断面が示される、翼断面は、例えば、翼21の回転軸12に垂直な方向の断面である。翼断面は、例えば、翼21における第1部材13からの距離が等しい断面である。翼断面において、前縁21aと、後縁21bと、を繋ぐ線を仮想線Xと定義する。仮想線Xの寸法を、翼弦長Lと定義する。
【0027】
翼21は、前縁部23と、後縁部24とを含む。前縁21aから翼弦長Lの50%の位置にある点を通り、かつ、翼弦長Lに直交する中心境界線Yを定義する。前縁部23は、翼21のうちの中心境界線Yよりも前縁21a側の部分である。後縁部24は、翼21のうちの中心境界線Yよりも後縁21b側の部分である。前縁部23は、後縁部24よりも翼弦長Lに垂直な方向における幅が厚い。
【0028】
翼21は、正圧面25と、負圧面26と、を有する。正圧面25は、遠心ファン11を回転させる場合に、空気の流れによって隣接する空間が正圧となる翼面である。負圧面26は、遠心ファン11を回転させる場合に、空気の流れによって隣接する空間が負圧となる翼面である。
【0029】
<圧力変動抑制部>
圧力変動抑制部31は、翼21に生じる圧力変動を低減するように構成される。圧力変動抑制部31は、例えば、前縁21aに設けられる。さらに、圧力変動抑制部31は、前縁部23のうちの前縁21aとは異なる部分にも設けられる。圧力変動抑制部31は、インサート成形、接着または嵌め込みによって中実部22と一体に形成される。
図1から
図3、
図5、
図7、
図9、および、
図10では、圧力変動抑制部31は、ドットによって表示されている。
【0030】
圧力変動抑制部31は、翼21の正圧面25または負圧面26に設けられる。圧力変動抑制部31は、翼21の正圧面25および負圧面26の両方に設けられる。圧力変動抑制部31は、翼21の正圧面25と、負圧面26と、を連通するように設けられる。圧力変動抑制部31は、翼21の正圧面25にのみ設けられてもよく、負圧面26にのみ設けられてもよい。
【0031】
圧力変動抑制部31の材質は特に制限されない。圧力変動抑制部31の材質は、例えば、樹脂、セラミックス、金属等である。例えば、樹脂は、発泡樹脂である。例えば、セラミックスまたは金属は、多孔質焼結体である。金属は、メッシュともいう網状体であってもよい。
【0032】
圧力変動抑制部31は、例えば、多孔質材によって形成される。多孔質材は、翼21の正圧面25と、負圧面26と、を連通する。多孔質材は、翼21の正圧面25と、負圧面26と、を連通する気孔を有する。圧力変動抑制部31によって、翼21の正圧面25と、負圧面26と、が連通する場合において、正圧面25は、遠心ファン11を回転させる場合に、圧力変動抑制部31から空気が流出する側の面である。圧力変動抑制部31によって、翼21の正圧面25と、負圧面26と、が連通する場合において、負圧面26は、遠心ファン11を回転させる場合に、圧力変動抑制部31から空気が流入する側の面である。
【0033】
圧力変動抑制部31は、面重心Gを有する。面重心Gは、圧力変動抑制部31の比重が均一な場合の、圧力変動抑制部31の断面の重心である。圧力変動抑制部31の面重心Gの位置は、後縁21bよりも前縁21aに近い。
【0034】
仮想線Xにおいて、前縁21aから翼弦長Lの10%の位置にある点を通り、かつ、仮想線Xに直交する第1境界線Y1を定義する。仮想線Xにおいて、前縁21aから翼弦長Lの20%の位置にある点を通り、かつ、仮想線Xに直交する第2境界線Y2を定義する。仮想線Xにおいて、前縁21aから翼弦長Lの40%の位置にある点を通り、かつ、仮想線Xに直交する第3境界線Y3を定義する。仮想線Xにおいて、前縁21aから翼弦長Lの60%の位置にある点を通り、かつ、仮想線Xに直交する第4境界線Y4を定義する。仮想線Xにおいて、前縁21aから翼弦長Lの100%の位置にある点を通り、かつ、仮想線Xに直交する第5境界線Y5を定義する。
【0035】
面重心Gは、前縁21aから翼弦長Lの40%以内に位置する。具体的には、面重心Gは、翼断面において、第3境界線Y3よりも前縁21a側の領域にある。好ましくは、面重心Gは、前縁21aから翼弦長Lの20%以内に位置する。具体的には、面重心Gは、翼断面において、第2境界線Y2よりも前縁21a側の領域にある。
【0036】
図4には、仮想線Xに沿う翼弦方向において、圧力変動抑制部31が設けられる領域に応じて得られる低騒音効果の一例が示される。
図3に示されるように、前縁21aから第1境界線Y1までの領域A、第1境界線Y1から第3境界線Y3までの領域B、第3境界線Y3から第4境界線Y4までの領域C、および、第4境界線Y4から第5境界線Y5までの領域Dを定義する。
【0037】
領域Aに圧力変動抑制部31が設けられる場合、領域BからDに圧力変動抑制部31が設けられる場合よりも、低騒音効果が大きい。領域Bに圧力変動抑制部31が設けられる場合、領域CおよびDに圧力変動抑制部31が設けられる場合よりも、低騒音効果が大きい。領域Cに圧力変動抑制部31が設けられる場合、領域Dに圧力変動抑制部31が設けられる場合よりも、低騒音効果が大きい。
【0038】
<第1実施形態の効果>
第1実施形態の効果について説明する。
【0039】
(1-1)遠心ファン11は、回転軸12に取り付けられる第1部材13と、第1部材13と対向する位置に設けられる第2部材14との間に配置される翼21を備え、翼21は、中実部22と、圧力変動抑制部31とによって形成され、圧力変動抑制部31は、翼21の正圧面25または負圧面26に設けられ、翼21は、径方向内側に位置する前縁21aと、径方向外側に位置する後縁21bと、を有し、圧力変動抑制部31の面重心Gの位置は、後縁21bよりも前縁21aに近い。
この構成によれば、遠心ファン11の翼21に圧力変動抑制部31を設けることによって、翼面付近において騒音の原因になる圧力変動が除去されるため、翼面付近における渦の発達が抑制される。したがって、翼21に干渉する渦の乱れに起因する騒音を低減できる。よって、遠心ファン11は、好適に騒音を抑制できる。
また、遠心ファン11において、翼21の後縁21b側は、前縁21a側よりも厚さが薄いため、後縁21b側は、前縁21a側よりも強度および剛性が低くなる。したがって、翼21の後縁21b側は、前縁21a側よりも、変形しやすい。特にターボファンの場合は、送風量に対する昇圧量の割合が大きく、翼21の負荷が大きい。強度および剛性が中実部22よりも低い圧力変動抑制部31を後縁21bに設ける場合、翼21の変形による悪影響のほうが大きく、低騒音効果が得られにくい。遠心ファン11は、圧力変動抑制部31が翼21の前縁21a側に配置されるため、好適に騒音を低減できる。
【0040】
(1-2)回転軸12に垂直な翼断面において、前縁21aと、後縁21bと、を繋ぐ線の寸法を翼弦長Lとする場合、面重心Gは、前縁21aから翼弦長Lの40%以内に位置する。
この構成によれば、面重心Gが前縁21aから翼弦長Lの40%より大きい位置に設けられる場合よりも、翼21に干渉する渦の乱れに起因する騒音を低減できる。
【0041】
(1-3)面重心Gは、前縁21aから翼弦長Lの20%以内に位置する。
この構成によれば、面重心Gが前縁21aから翼弦長Lの20%より大きい位置に設けられる場合よりも、翼21に干渉する渦の乱れに起因する騒音を低減できる。
【0042】
(1-3)圧力変動抑制部31は、前縁21aに設けられる。
この構成によれば、圧力変動抑制部31が前縁21aに設けられるため、前縁21aに圧力変動抑制部31が設けられない場合よりも翼21に干渉する渦の乱れに起因する騒音を低減できる。
【0043】
(1-4)圧力変動抑制部31は、正圧面25と、負圧面26と、を連通するように設けられる。
この構成によれば、正圧面25と、負圧面26と、が連通することによって、気流の乱れの圧力変動を十分に抑制できるため、翼21に干渉する渦の乱れに起因する騒音を低減できる。
【0044】
(1-5)圧力変動抑制部31は、多孔質材によって形成される。
この構成によれば、翼面付近において騒音の原因になる圧力変動が多孔質材の内部を透過することによって除去されるため、翼面付近における渦の発達が抑制される。したがって、翼21に干渉する渦の乱れに起因する騒音を低減できる。
【0045】
<第2実施形態>
図1、
図2、
図5、および、
図6を参照して、第2実施形態の遠心ファンについて説明する。第2実施形態では、第1実施形態と異なる点について説明する。第1実施形態と同様の部材については、同一の名称を付すことによって説明を省略する。
【0046】
図5に示すように、翼21は、中空部27をさらに有する。中空部27は、圧力変動抑制部31に隣接する。圧力変動抑制部31は、中空部27の周囲を囲むように隣接する。
【0047】
中空部27は、翼21の前縁部23に設けられる。中空部27は、圧力変動抑制部31によって、正圧面25と、負圧面26と、連通する。中空部27は、圧力変動抑制部31によって、正圧面25のみと連通してもよい。中空部27は、圧力変動抑制部31によって、負圧面26のみと連通してもよい。
【0048】
中空部27は、仮想線Xに沿う翼弦方向において、中実部22と隣接する。中実部22は、後縁部24に設けられる部分を含む。中実部22は、前縁部23に設けられる部分を含んでもよい。
【0049】
面重心Gは、翼断面において、中空部27にある。中空部27において、翼弦長Lに垂直な方向における幅が、最も大きい部分の幅寸法Sは、12mm以上である。
【0050】
図6には、幅寸法Sの大きさに応じて得られる、低騒音効果の一例が示される。幅寸法Sが12mm以上の場合、幅寸法Sが12mm未満の場合よりも低騒音効果が大きくなる。幅寸法Sが12mm以上の場合、幅寸法Sが大きくなるほど、低騒音効果が大きくなる。一例では、幅寸法Sが12mmの場合、幅寸法Sが6mmの場合よりも低騒音効果が大きい。
【0051】
<第2実施形態の効果>
第2実施形態の効果について説明する。第2実施形態では、第1実施形態の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
【0052】
(2-1)翼21は、中空部27をさらに有し、中空部27は、圧力変動抑制部31に隣接する。
この構成によれば、翼面付近で生じる気流の乱れの圧力変動を翼面から遠ざかる翼内部方向に透過できるため、翼21に干渉する渦の乱れに起因する騒音を低減できる。
【0053】
(2-2)中空部27において、前縁21aと、後縁21bと、を繋ぐ線の寸法を翼弦長Lとする場合、翼弦長Lに垂直な方向における幅が、最も大きい部分の幅寸法Sは、12mm以上である。
この構成によれば、翼面付近で生じる気流の乱れの圧力変動を翼面から遠ざかる翼内部方向に透過できるため、翼21に干渉する渦の乱れに起因する騒音を低減できる。また、幅寸法Sを12mm以上とすることによって、更に低騒音効果が大きくできる。
【0054】
<第3実施形態>
図1、
図2、
図7、および、
図8を参照して、第3実施形態の遠心ファンについて説明する。第3実施形態では、第1実施形態および第2実施形態と異なる点について説明する。第1実施形態および第2実施形態と同様の部材については、同一の名称を付すことによって説明を省略する。
【0055】
図7に示すように、翼21は、中空部27を有する。中空部27は、圧力変動抑制部31に隣接する。中空部27は、翼21の前縁部23に設けられる。
【0056】
圧力変動抑制部31は、負圧面26のみに設けられる。中空部27は、圧力変動抑制部31によって、負圧面26のみと連通する。
【0057】
中実部22は、第1中実部22aおよび第2中実部22bを含む。第1中実部22aは、前縁21aに設けられる。第2中実部22bは、後縁部24に設けられる。第2中実部22bの一部は、前縁部23に設けられる。中空部27は、第1中実部22aおよび第2中実部22bに隣接する。仮想線Xに沿う翼弦方向において、中空部27は、第1中実部22aと、第2中実部22bとの間に設けられる。
【0058】
翼21は、蓋部28をさらに有する。中実部22は、蓋部28を含む。蓋部28は、仮想線Xに沿う翼弦方向において、第1中実部22aと、第2中実部22bとの間に設けられる。蓋部28は、正圧面25に設けられる。蓋部28は、翼21に設けられる凹部29を覆うように構成される。中空部27は、蓋部28が凹部29を覆うことによって形成される。
【0059】
蓋部28と、第1中実部22aとの間には、圧力変動抑制部31が設けられてもよい。蓋部28と、第1中実部22aとの間に、圧力変動抑制部31が設けられる場合、圧力変動抑制部31は、例えば、蓋部28と、第1中実部22aとの間の隙間である。蓋部28と、第2中実部22bとの間には、圧力変動抑制部31が設けられてもよい。蓋部28と、第2中実部22bとの間に、圧力変動抑制部31が設けられる場合、圧力変動抑制部31は、例えば、蓋部28と、第2中実部22bとの間の隙間である。
【0060】
蓋部28は、圧力変動抑制部31に含まれてもよい。蓋部28が圧力変動抑制部31に含まれる場合、蓋部28は多孔質材によって構成される。
【0061】
面重心Gは、翼断面において、中空部27にある。中空部27において、翼弦長Lに垂直な方向における幅が、最も大きい部分の幅寸法Sは、12mm以上である。
【0062】
図8には、第1パターン、第2パターン、第3パターン、および、第4パターンの場合の風量に対する送風音のグラフが示される。第1パターンは、負圧面26にのみ圧力変動抑制部31が設けられる場合である。第2パターンは、正圧面25にのみ圧力変動抑制部31が設けられる場合である。第3パターンは、正圧面25および負圧面26に圧力変動抑制部31が設けられる場合である。第4パターンは、翼21に圧力変動抑制部31が設けられない場合である。
【0063】
第3パターンの場合、第1パターン、第2パターン、および、第4パターンよりも、風量に対する送風音が小さい。第1パターンの場合、第2パターンおよび第4パターンよりも風量に対する送風音が小さい。第2パターンの場合、第4パターンよりも風量に対する送風音が小さい。
【0064】
図8によると、正圧面25または負圧面26に圧力変動抑制部31が設けられる場合、翼21に圧力変動抑制部31が設けられない場合よりも低騒音効果がある。また、正圧面25にのみ圧力変動抑制部31が設けられる場合よりも、負圧面26にのみ圧力変動抑制部31が設けられる場合のほうが、低騒音効果が大きい。
【0065】
<第3実施形態の効果>
第3実施形態の効果について説明する。第3実施形態では、第1実施形態および第2実施形態の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
【0066】
(3-1)中実部22は、前縁21aに設けられる。
この構成によれば、中実部22が前縁21aに設けられるため、翼21の強度および剛性を高くできる。
【0067】
(3-2)圧力変動抑制部31は、負圧面26にのみ設けられる。
この構成によれば、負圧面26にのみ圧力変動抑制部31を設けることによって、コストが低減し、かつ、翼21に干渉する渦の乱れに起因する騒音を低減できる。
【0068】
(3-3)翼21は、蓋部28および凹部29をさらに有し、中空部27は、蓋部28および凹部29によって形成される。
この構成によれば、翼21が蓋部28と中実部22とに分割されて、組み立てることによって、中空部27を好適に形成できる。
【0069】
<変更例>
本開示の遠心ファン11は、上記の各実施形態以外に、例えば、以下に示される変更例および相互に矛盾しない少なくとも二つの変更例を組み合わせた形態としてもよい。
【0070】
・
図9に示されるように、翼21が中空に形成され、かつ、圧力変動抑制部31が負圧面26のみに設けられてもよい。この場合、中実部22および圧力変動抑制部31は、中空部27を囲むように構成される。翼21が中空に形成される場合、圧力変動抑制部31は正圧面25のみに設けられてもよい。翼21が中空に形成される場合、蓋部28が凹部29を覆うことによって中空部27が形成される。
【0071】
・
図10に示されるように、圧力変動抑制部31は、正圧面25のみに設けられてもよい。圧力変動抑制部31が正圧面25のみに設けられる場合、中空部27は、圧力変動抑制部31によって、正圧面25のみと連通する。
【0072】
・以上、遠心ファン11の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された遠心ファン11の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0073】
11…遠心ファン、12…回転軸、13…第1部材、14…第2部材、21…翼、21a…前縁、21b…後縁、22…中実部、25…正圧面、26…負圧面、27…中空部、31…圧力変動抑制部、G…面重心、L…翼弦長、S…幅寸法。