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  • 特許-鋼板およびほうろう製品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-11
(45)【発行日】2025-03-19
(54)【発明の名称】鋼板およびほうろう製品
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20250312BHJP
   C22C 38/60 20060101ALI20250312BHJP
   C23D 5/00 20060101ALI20250312BHJP
   C21D 9/46 20060101ALN20250312BHJP
【FI】
C22C38/00 301T
C22C38/60
C23D5/00 F
C21D9/46 L
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2024514803
(86)(22)【出願日】2022-12-26
(86)【国際出願番号】 JP2022047850
(87)【国際公開番号】W WO2023199555
(87)【国際公開日】2023-10-19
【審査請求日】2024-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2022064917
(32)【優先日】2022-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】吉川 伸麻
(72)【発明者】
【氏名】矢頭 久斉
(72)【発明者】
【氏名】楠見 和久
【審査官】川口 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/193953(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/038474(WO,A1)
【文献】特表2013-500391(JP,A)
【文献】特開平11-006030(JP,A)
【文献】特開2000-063985(JP,A)
【文献】国際公開第2019/221286(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00-38/60
C23D 5/00
C21D 9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、
C:0.0050%以下、
Si:0.050%以下、
Mn:0.007~1.00%、
P:0.020~0.200%、
S:0.005~0.050%、
Al:0.010%以下、
O:0.0100~0.1000%、
Cu:0.010~0.060%、
N:0.0050%以下、
Cr:0.010~1.00%、
Sn:0.010~1.00%およびSb:0.010~1.00%の1種または2種を合計で0.11%以上、
B、Ni、Nb、As、Ti、Mo、Se、Ta、W、La、Ce、Ca及びMgからなる群から選択される1種以上:合計で0~0.100%、および
残部:Feおよび不純物、
からなる化学組成を有し、
質量%での、Sn含有量を[Sn]、Sb含有量を[Sb]、P含有量を[P]としたとき、以下の式(1)を満足し、
JIS Z2241:2011に準じて行う引張試験で得られる引張強さが、340MPa以上である
ことを特徴とする鋼板。
2.0≦([Sn]+[Sb])/[P]≦11.5 (1)
【請求項2】
前記[Sn]、前記[Sb]、及び前記[P]が、以下の式(2)を満足する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の鋼板。
2.3≦([Sn]+[Sb])/[P]≦11.0 (2)
【請求項3】
前記引張試験で得られる、降伏応力または0.2%耐力が、240MPa以上である、ことを特徴とする、請求項1に記載の鋼板。
【請求項4】
前記引張試験で得られる、降伏応力または0.2%耐力が、240MPa以上である、ことを特徴とする、請求項2に記載の鋼板。
【請求項5】
冷延鋼板であることを特徴とする、請求項1~4の何れか1項に記載の鋼板。
【請求項6】
ほうろう用鋼板であることを特徴とする、請求項1~4の何れか1項に記載の鋼板。
【請求項7】
ほうろう用鋼板であることを特徴とする、請求項5に記載の鋼板。
【請求項8】
請求項1または2に記載の前記化学組成を有する鋼板を備え、JIS Z2241:2011に準じて行う引張試験における引張強さが310MPa以上であることを特徴とする、ほうろう製品
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鋼板およびほうろう製品に関する。
本願は、2022年04月11日に、日本に出願された特願2022-064917号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
ほうろう製品は、鋼板の表面にガラス質が焼き付けられたものである。ほうろう製品は、耐熱性、耐候性、耐薬品性、耐水性の機能を有するので、従来、鍋類、流し台等の台所用品や建材等の材料として広く利用されている。このようなほうろう製品は、一般に、鋼板を所定形状に加工後、溶接等により製品形状に組み立てられた後、ほうろう処理(焼成処理)が施されることで製造される。
【0003】
ほうろう製品の素材として用いられる鋼板(ほうろう用鋼板)には、その特性として、耐焼成ひずみ性、ほうろう処理後の耐爪飛び性、ほうろう密着性、ほうろう処理後の耐泡・黒点欠陥性等が求められる。
爪飛びとは、焼成後から一週間程度までの間にほうろう層が損傷し、三日月状の割片が剥離する現象である。爪飛びが発生する理由としては、ほうろう焼成などの過程において鋼板中に侵入し固溶していた水素が、冷却後に気体となって鋼板と釉薬との界面に集合し、水素ガスによる圧力でほうろう層が破壊されるためであると考えられる。
また、ほうろう製品では、一部の用途において、部品の軽量化を目的として、使用される鋼板の高強度化が求められている。軽量化することで、作業者の負担軽減や人数削減が可能となるため、コストの低減につながるからである。
【0004】
ほうろう製品の高強度化について、例えば特許文献1には、鋼中にTiを添加し、ほうろう焼成(ほうろう処理における焼成工程)中に、TiCを鋼板中に微細析出させることによって高強度化を図る技術が開示されている。また、特許文献2には、C、Mn、P、Nbの含有量を適正化することで、ほうろう焼成前およびほうろう焼成後の結晶粒径を微細化し、高強度化および高疲労強度化を図る技術が開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、鋼板にほうろう処理を施した場合に、泡または黒点と言われる表面欠陥が発生し易い。また、焼成中の短時間の熱処理では、TiCが十分に生成し難く、爪飛び欠陥が発生し易い。
また、特許文献2の技術は、酸洗、Ni処理等の前処理を施さない乾式ほうろうを前提としており、前処理が必要な湿式ほうろうでは、ほうろう密着性が低下し、爪飛び欠陥が発生し易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】日本国特開昭61-117246号公報
【文献】日本国特開昭58-31063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の通り、従来、高強度かつ優れたほうろう特性(耐爪飛び性、密着性、外観)を有するほうろう製品、及びそのほうろう製品の素材となるほうろう用鋼板については、開示されていなかった。
そのため、本発明は、ほうろう処理後に、高強度かつ優れたほうろう特性(耐爪飛び性、密着性、外観)が得られる鋼板を提供することを課題とする。また、本発明は、上記鋼板を備えほうろう特性に優れたほうろう製品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、従来のほうろう用鋼板と同等以上のほうろう特性(ほうろう処理後の、耐爪飛び性、密着性(ほうろう密着性)、外観)を備えつつ、ほうろう処理後の鋼板の引張強さを向上させる方法について、検討した。その結果、化学組成、製造条件の影響について、以下の知見を得た。
1)鋼板強度の向上には、Pによる固溶強化の活用が有効である。
2)一方で、Pを含有させると、酸洗減量が著しく増加し、ほうろう前処理の酸洗工程で、鋼板表面がスマットで覆われることで、ほうろう処理後の密着性及び耐爪飛び性が低下する。
3)これに対し、Sn及びSbは、酸洗工程で鋼板の表面に付着し、鋼板の表面の溶解を遅延させる効果を有する。
4)そのため、P含有量に対し、Sn含有量及び/またはSb含有量を所定の範囲に制御することで、Pによる固溶強化の効果を得つつ、酸洗減量の増加を抑制することができる。
【0009】
本発明は、上記の知見に基づいてなされた。本発明の要旨は以下の通りである。
[1]本発明の一態様に係る鋼板は、質量%で、C:0.0050%以下、Si:0.050%以下、Mn:0.007~1.00%、P:0.020~0.200%、S:0.005~0.050%、Al:0.010%以下、O:0.0100~0.1000%、Cu:0.010~0.060%、N:0.0050%以下、Cr:0.010~1.00%、Sn:0.010~1.00%およびSb:0.010~1.00%の1種または2種を合計で0.11%以上、B、Ni、Nb、As、Ti、Mo、Se、Ta、W、La、Ce、Ca及びMgからなる群から選択される1種以上:合計で0~0.100%、および残部:Feおよび不純物、からなる化学組成を有し、質量%での、Sn含有量を[Sn]、Sb含有量を[Sb]、P含有量を[P]としたとき、以下の式(1)を満足し、JIS Z2241:2011に準じて行う引張試験で得られる引張強さが、340MPa以上である。
2.0≦([Sn]+[Sb])/[P]≦11.5 (1)
[2]上記[1]に記載の鋼板は、前記[Sn]、前記[Sb]、及び前記[P]が、以下の式(2)を満足してもよい。
2.3≦([Sn]+[Sb])/[P]≦11.0 (2)
[3]上記[1]に記載の鋼板は、前記引張試験で得られる、降伏応力または0.2%耐力が、240MPa以上であってもよい。
[4]上記[2]に記載の鋼板は、前記引張試験で得られる、降伏応力または0.2%耐力が、240MPa以上であってもよい。
[5]上記[1]~[4]の何れか1つに記載の鋼板は、冷延鋼板であってもよい。
[6]上記[1]~[4]の何れか1つに記載の鋼板は、ほうろう用鋼板であってもよい。
[7]上記[5]の鋼板は、ほうろう用鋼板であってもよい。
[8]本発明の別の態様に係るほうろう製品は、上記[1]または[2]に記載の前記化学組成を有する鋼板を備え、JIS Z2241:2011に準じて行う引張試験における引張強さが310MPa以上である。

【発明の効果】
【0010】
本発明の上記態様によれば、ほうろう処理後に、高強度かつ優れたほうろう特性(耐爪飛び性、密着性、外観)が得られる鋼板を提供することができる。この鋼板は、ほうろう処理後の引張強さが、従来のほうろう用鋼板よりも高い。そのため、台所用品、建材、エネルギー分野等に適用されるほうろう製品の基材であるほうろう用鋼板として好適であり、製品の軽量化に寄与する。
また、本発明によれば、高強度かつほうろう特性に優れるほうろう製品を提供することができる。このほうろう製品は、台所用品、建材、エネルギー分野等の用途に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】密着性と([Sn]+[Sb])/[P]との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】

本発明の一実施形態に係る鋼板(本実施形態に係る鋼板)および本発明の一実施形態に係るほうろう製品(本実施形態に係るほうろう製品)について説明する。
【0013】
[鋼板]
本実施形態に係る鋼板は、後述する所定の化学組成を有し、質量%での、Sn含有量を[Sn]、Sb含有量を[Sb]、P含有量を[P]としたとき、2.0≦([Sn]+[Sb])/[P]≦11.5を満足し、JIS Z2241:2011に準じて行う引張試験で得られる引張強さが、340MPa以上である。
【0014】
<化学組成>
本実施形態に係る鋼板の化学組成(化学成分)について説明する。各元素の含有量に関する%は、断りがない限り質量%である。
【0015】
C:0.0050%以下
C含有量が0.0050%を超えるとほうろうの泡欠陥を生じる傾向があり、またプレス加工性も悪くなる。従ってC含有量は製品性能上、低いほど好ましい。しかしながら、Cを過度に低減するには製鋼段階での処理時間が長くかかり、製鋼コストも上昇する。そのため、コストと、特性のバランスを考慮し、C含有量は0.0050%以下とする。C含有量は、好ましくは0.0040%以下、より好ましくは0.0030%以下、さらに好ましくは0.0020%以下である。
C含有量は製品性能上、低いほど好ましいが、製鋼コストを考慮し、C含有量を0.0010%以上としてもよい。
【0016】
Si:0.050%以下
Siは、脱酸元素である。Si含有が0.050%を超えて過剰になると、耐爪飛び性に有効となる酸化物の制御が困難になる。そのため、Si含有量を0.050%以下とする。耐泡、耐黒点性などを向上させ、より良好なほうろう処理後の表面性状を得る点からは、Si含有量は、0.008%以下とすることが好ましい。
Si含有量は0%でもよいが、過剰な低減はコストの増加を伴うので、Si含有量は0.001%以上としてもよい。
【0017】
Mn:0.007~1.00%
Mnは、酸素を含有する介在物を生成し、ほうろう特性の向上に寄与する元素であり、Sによる熱間脆性を防止する作用を有する元素でもある。この効果を得るため、Mn含有量を0.007%以上とする。Mn含有量は、好ましくは0.010%以上、より好ましくは0.10%以上である。
一方、Mnには鋼の変態点を低下させる作用を有する元素である。Mn含有量が過剰になると、焼成温度範囲での変態が生じる。また、鋼の加工性も低下する。そのため、これらの点から、Mn含有量は1.00%以下とする。Mn含有量は、好ましくは0.50%以下である。
【0018】
P:0.020~0.200%
Pは、固溶強化により鋼板を高強度化する作用を有する元素である。P含有量が0.020%未満の場合、固溶強化による強度向上効果が小さい。そのため、P含有量を0.020%以上とする。P含有量は、好ましくは0.050%以上である。
一方、Pは、ほうろう前処理における酸洗の際に、鋼板の酸洗減量を大きくする元素でもある。また、鋼板の変形能を大きく低下させる元素でもある。そのため、P含有量が0.200%を超えるとこれらの悪影響が顕著になるので、P含有量を0.200%以下とする。P含有量は、好ましくは0.0150%以下である。
【0019】
S:0.005~0.050%
Sは酸洗速度を速め、酸洗後の鋼板の表面を粗くして、ほうろう密着性を向上させる効果を有する元素である。この効果を得るため、S含有量を0.005%以上とする。S含有量は、好ましくは0.010%以上である。
一方、S含有量が過剰になると、鋼中の酸化物の制御に必要なMnの効果が低下する場合がある。そのため、S含有量を0.050%以下とする。
【0020】
Al:0.010%以下
Alは、強脱酸元素である。Al含有量が0.010%を超えると、必要とする量のO(酸素)を鋼中に留めることが困難となり、耐爪飛び性に有効となる酸化物の制御が困難になる。そのため、Al含有量を0.010%以下とする。Al含有量は、好ましくは0.005%以下である。
Al含有量の下限は限定する必要はないが、酸素量の制御の観点から、Al含有量は、0.001%以上であってもよい。
【0021】
O:0.0100~0.1000%
Oは、鋼中の水素を捕捉して耐爪飛び性を向上させる微細な介在物の構成元素であり、ほうろう用鋼板では重要な元素である。本実施形態に係る鋼板においては、所望のほうろう特性を確保するために、O含有量は0.0100%以上とする。O含有量が0.0100%に満たない場合には、介在物が不十分に形成されず、耐爪飛び性が低下する。O含有量は、好ましくは0.0120%以上、より好ましくは0.0150%以上、さらに好ましくは0.0200%以上である。
一方、O含有量が過剰に高くなると、鋼板の延性が劣化する。そのため、O含有量を0.1000%以下とする。O含有量は、好ましくは0.0800%以下である。
【0022】
Cu:0.010~0.060%
Cuは酸洗減量を小さくするとともに、酸洗後の鋼板の表面に微細な凹凸を形成し、密着性(ほうろう密着性)を向上させる元素である。Cu含有量が0.010%未満の場合には密着性向上効果が十分でない。そのため、Cu含有量を0.010%以上とする。Cu含有量は、好ましくは0.015%以上、より好ましくは0.020%以上である。
一方、Cu含有量が0.060%を超えると鋼の溶解速度が低下しすぎ、上記凹凸が十分に形成されない。この場合、良好なほうろう密着性を得ることができない。したがってCu含有量は0.060%以下とする。Cu含有量は、好ましくは0.050%以下である。
【0023】
Sn:0.010%~1.00%およびSb:0.010%~1.00%の1種または2種を合計で0.11%以上
Sn、Sbは固溶強化によって鋼板の強度を向上させる効果と酸洗速度を低下させる効果を有する元素である。そのため、Sn、Sbの1種または2種を含有させる。しかしながら、それぞれの含有量が0.010%未満、または合計の含有量が0.11%未満の場合には鋼板強度の向上効果が十分得られない。そのため、含有させる場合、Sn含有量、Sb含有量をそれぞれ、0.010%以上とし、合計含有量を0.11%以上とする。Sn含有量は、Sb含有量は、好ましくは、それぞれ0.04%以上、または0.07%以上である。合計含有量は好ましくは0.14%以上である。
一方、Sn含有量、Sb含有量が1.00%を超えると鋼板の変形能が低下する。したがってSn含有量、Sb含有量はそれぞれ1.00%以下とする。Sn含有量、Sb含有量は、好ましくは、それぞれ0.80%以下である。合計含有量の上限は、Sn含有量、Sb含有量のそれぞれの上限の合計である2.00%である。
【0024】
N:0.0050%以下
Nは、歪時効を生じる原因となる元素である。歪時効が生じると、鋼板の加工性が損なわれる。そのため、N含有量は少ないほうがよいが、Nは不純物として混入する場合があり、N含有量を過度に低減するには製鋼段階での処理時間が長くかかり、製鋼コストも上昇する。そのため、コストと特性のバランスを考慮し、N含有量は0.0050%以下とする。N含有量は、好ましくは0.035%以下である。製鋼コストの観点から、N含有量は0.0005%以上または0.0010%以上としてもよい。
【0025】
Cr:0.010~1.00%
Crは、Oを含有する介在物を生成し、耐爪飛び性の向上に寄与する元素である。Cr含有量が、0.010%未満では、十分な効果が得られない。そのため、Cr含有量を0.010%以上とする。Cr含有量は、好ましくは0.03%以上である。
一方、Cr含有量が1.00%を超えると、加工性が劣化し、耐黒点性が低下する。そのため、Cr含有量を1.00%以下とする。Cr含有量は、好ましくは0.50%以下、より好ましくは0.30%以下、さらに好ましくは0.08%以下である。
【0026】
([Sn]+[Sb])/[P]:2.0~11.5
本実施形態に係る鋼板では、化学組成において、Sn含有量、Sb含有量、P含有量を、それぞれ上記範囲とした上で、質量%で、Sn含有量を[Sn]、Sb含有量を[Sb]、P含有量を[P]としたとき、([Sn]+[Sb])/[P]が、2.0~11.5を満足するように制御する。
脱脂、酸洗、Ni処理からなるほうろう前処理工程において、酸洗により鋼板の表面にCuを析出させ、Ni処理でCuを析出核としてNiを析出させて、鋼板素地とNiとの間の電位差により局部電池を形成することにより、釉薬を塗布後、焼成して形成されるほうろう層が母相に刺さり込むアンカー効果を得て、ほうろう密着性を向上させることができる。ほうろう密着性は、酸洗における鋼板の表面の酸洗減量に影響を受けるので、酸洗減量の制御は重要となる。
SnおよびSbは酸洗減量を低減させるのに対し、Pは酸洗減量を増加させる作用がある。それら相互の影響を踏まえて密着性を向上させるために、SnおよびSbの合計含有量とP含有量との比である、([Sn]+[Sb])/[P]が2.0以上、11.5以下になるようにSn含有量、Sb含有量、P含有量を調整する。
([Sn]+[Sb])/[P]が2.0未満の場合には、ほうろう前処理時の酸洗減量が小さいため、鋼板表面に置換めっきされるCu量が少なく、Ni処理時にCuを核として析出するNi量が少なくなる。その結果、焼成時にほうろう層の地鉄への食い込みによる、アンカー効果が得られない。([Sn]+[Sb])/[P]は、好ましくは2.3以上、より好ましくは2.5以上、さらに好ましくは3.0以上、一層好ましくは3.5以上である。
一方、([Sn]+[Sb])/[P]が11.5超以上の場合には、酸洗減量が多くなり、鋼板の表面を、Cuを含むスマットが覆ってしまう。その結果、焼成時にほうろう層の地鉄への食い込みによる、アンカー効果が得られない。([Sn]+[Sb])/[P]は、好ましくは11.0以下、より好ましくは10.0以下である。
図1は密着性(ほうろう密着性)と([Sn]+[Sb])/[P]との関係を示す図である。
【0027】
B、Ni、Nb、As、Ti、Se、Ta、W、Mo、La、Ce、Ca、Mgの1種以上の合計:0.100%以下
B、Ni、Nb、As、Ti、Se、Ta、W、Mo、La、Ce、CaおよびMgは、酸化物形成元素と反応する元素である。これらの元素の合計含有量は0.100%超であると、酸化物をほうろう特性に好ましい状態に制御することが困難になる。また、これらの元素は脱酸元素として作用する場合には、フリー酸素の値に影響してフリー酸素の調整が困難になる場合がある。そのため、各々の元素の上限は鋳造段階でのフリー酸素の値に影響が出ない範囲にすることが好ましい。
そのため、これらの元素の含有量を0.100%以下とする。合計含有量は、好ましくは0.050%以下、より好ましくは0.010%以下である。
これらの元素は、積極的に含有させる必要がない元素であり、不純物として混入する場合がある元素であるが、上記の上限以下の範囲であれば許容される。これらの元素は、一般に、単独で混入することは少なく、例えばMo及びNiの様に2以上の元素で混入することが多い。
【0028】
残部:Fe及び不純物
本実施形態に係る鋼板の化学組成は、上記を含有し、残部がFe及び不純物からなる。不純物とは、母材鋼板を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、又は、製造環境などから混入するものであり、本実施形態に係る鋼板の作用に悪影響を及ぼさない含有量で含有することを許容される元素を意味する。
【0029】
<金属組織>
本実施形態に係る鋼板のミクロ組織(金属組織)は、従来のほうろう用鋼板と同様に、フェライトを主体(例えば98%以上)とする。そのため、引張強さを向上させるには固溶強化を利用することが有効である。
本実施形態に係る鋼板を加工してほうろう製品とする場合、熱処理(ほうろう処理)によりフェライトの粒成長が生じて結晶粒径が大きくなり、降伏応力および引張強さが低下する。そのため、Pによる固溶強化を利用することが、熱処理後(ほうろう処理後)の鋼板の引張強さを確保するには有効である。
一方で、Pを含有する場合にはほうろう前処理時の酸洗減量が過大となり、優れたほうろう特性(耐爪飛び性、密着性、外観)を得ることが困難となる。そのため、上述したように、酸洗減量を低減する元素としてSn、Sbを含有させ、酸洗減量を調整する。
【0030】
<機械的特性>
本実施形態に係る鋼板は、ほうろう処理後の鋼板(ほうろう製品)において310MPa以上の引張強さを得るため、引張強さを340MPa以上とする。ほうろう処理後の引張強さが310MPa以上であれば、ほうろう製品において、部品の軽量化に寄与する。
引張強さの上限は限定されないが、加工性の点から、引張強さは600MPa以下であってもよい。
本実施形態において、引張強さは、JIS Z2241:2011に準じて行う引張試験によって得られる。
本実施形態に係る鋼板は、さらに、降伏応力(YS)または0.2%耐力(0.2%PS)が、240MPa以上であることが好ましい。この場合、ほうろう製品として使用される際の塑性変形が抑制されるため、鋼板の薄板化が可能となる。
【0031】
冷間圧延を行うことで、酸化物と母材との界面にボイドが生成し、ほうろう処理後の耐爪飛び性が向上する。そのため、本実施形態に係る鋼板は、冷延鋼板であることが好ましい。
また、本実施形態に係る鋼板は、ほうろう特性に優れる。そのため、ほうろう製品の素材であるほうろう用鋼板とすることが好ましい。
【0032】
[ほうろう製品]
本実施形態に係るほうろう製品は、上述した化学組成を有する鋼板を備える。例えば、本実施形態に係る鋼板にほうろう処理を行って、必要に応じて加工されて得られるほうろう製品である。
【0033】
[鋼板の製造方法]
本実施形態に係る鋼板は、製造方法によらず、上記の特徴を有していれば効果が得られるが、以下のような工程を含む製造方法によれば安定して製造できるので好ましい。
(I)溶解、精錬、鋳造によって上述した化学組成を有する鋼片を製造する、製鋼・鋳造工程、
(II)得られた鋼片を加熱し、熱間圧延し、巻き取って、鋼板(熱延鋼板)とする熱間圧延工程、
(III)熱間圧延工程後の鋼板を、必要に応じて冷間圧延して鋼板(冷延鋼板)を得る冷間圧延工程、
(IV)冷間圧延工程後の鋼板(冷延鋼板)を、必要に応じて焼鈍する焼鈍工程、
(V)焼鈍工程後の鋼板に対し、必要に応じて調質圧延を行う調質圧延工程。
各工程について好ましい条件を説明する。説明しない条件、説明しない工程については、公知の条件を適用できる。
【0034】
<製鋼・鋳造工程>
製鋼・鋳造工程では、溶解、精錬、鋳造によって上述した化学組成を有する鋼片を製造する。その条件については特に限定されない。例えば、鋼片としては、連続鋳造スラブや、薄スラブキャスターなどで製造したもの用いることができ、鋳造後、直ちに熱間圧延を行う連続鋳造-直接圧延(CC-DR)のようなプロセスにも適合する。また、ストリップキャスターとインライン圧延機により、直接薄鋼板を製造するプロセスも適用可能である。
【0035】
<熱間圧延工程>
熱間圧延工程では、得られた鋼片を加熱し、熱間圧延し、巻き取って、鋼板(熱延鋼板)とする。
熱間圧延に先立って行う鋼片の加熱に際し、加熱温度は1150~1250℃とすることが好ましい。加熱温度が1250℃超では一次スケールの生成量が多くて歩留まりが低下する。一方、1150℃未満では圧延中の温度低下のために圧延負荷が高くなる。
熱間圧延工程では、製鋼・鋳造工程で生成したFe及びMnを含む酸化物が熱間圧延により延伸される。熱間圧延の仕上げ圧延におけるにおける累積圧下率を30%以上にすることで、鋼中のFe及びMnを含む酸化物を十分延伸させることが可能となる。累積圧下率が90%を超えると鋼中の酸化物が延伸しすぎて良好な耐爪飛び性を得られなくなる場合がある。そのため、仕上げ圧延の累積圧下率を30~90%とすることが好ましい。
また、熱間圧延の仕上げ温度(仕上げ圧延完了温度)は900~950℃とすることが好ましい。熱間圧延の仕上げ温度が、900℃では変態点以下での圧延となり製品としての延性等の機械的特性が劣化すると同時に鋼板の強度変化が大きくなるため圧延が不安定となりやすくなる。また、仕上げ温度が900℃になった場合、熱延鋼板のミクロ組織が粗大粒を含む混粒となり、この熱延鋼板を用いた冷延焼鈍板において加工後にリジングが発生することも懸念される。そのため、仕上げ温度は、900℃以上が好ましい。一方、仕上げ温度が950℃を超えると結晶粒径が粗大となり、所望の強度を確保することが困難となる。そのため、仕上げ温度は950℃以下が好ましい。
また、本実施形態に係る鋼板は、P、Sb及びSnの固溶強化を利用しているので、熱間圧延の完了から巻取開始までを平均冷却速度が15℃/秒以上となるように冷却することが好ましい。巻き取りまでの平均冷却速度が15℃/秒未満であると、十分な固溶量が得られず、強度が低下する。
巻取り温度は500~600℃が好ましい。巻取温度が500℃未満では、冷間圧延、連続焼鈍後の組織形態が加工に必要な延性、r値を確保し難くなる。一方、巻取温度が600℃超では、Fe・P化物が多量に析出するため、所望の鋼板強度を確保することが困難となる。
【0036】
<冷間圧延工程>
本実施形態に係る鋼板を、冷延鋼板とする場合、熱間圧延後の鋼板(熱延鋼板)に対し、必要に応じて酸洗を行った後、冷間圧延を行う。
冷間圧延における冷延率(冷間圧延工程での累積圧下率)は製品の特性を決定するために重要であり、65~85%であることが好ましい。製鋼・鋳造工程で形成されたFe及びMnを含む酸化物は、熱間圧延工程にて累積圧下率に応じて延伸される。その後、冷間圧延工程においてさらに延伸されるが、冷間圧延は最大でも150℃程度での加工であり、上記の酸化物は硬質であるため延伸されにくい。したがって、適度に延伸させるために、65%以上の冷延率で冷間圧延を行うことが好ましい。このとき、酸化物の圧延方向の両端部には空隙が生じる。この空隙の存在は耐爪飛び性に対しては有効に作用するものの延性に対しては不利に働く。そのため、必要以上の空隙の存在は延性の低下、ひいては加工性の低下の原因となる。このため、冷延率を90%以下とする。
【0037】
<焼鈍工程>
冷延鋼板に対して、焼鈍を行ってもよい。焼鈍を行う場合、焼鈍温度は、650~850℃とするのが好ましい。焼鈍温度が650℃未満の場合には、回復・再結晶が未完了となるため、焼鈍温度がばらついた際に機械的特性が大きく変化することが懸念される。また、強度が高くなることで、延性が低くなり、加工性に劣る。一方で、強度等の機械的特性に特徴を持たせる目的で、焼鈍温度を650℃未満としても良い。
また、焼鈍温度が850℃超となると、機械的特性に対しては、延性等が向上するので好ましいが、冷間圧延工程で生成した空隙が拡散により消滅しやすくなり、耐爪飛び性が劣化する。このため、焼鈍温度は850℃以下が好ましい。
焼鈍は、生産性の点で、連続焼鈍とすることが好ましい。
【0038】
<調質圧延工程>
焼鈍工程後、形状制御を主目的として調質圧延を施してもよい。調質圧延においては形状制御と同時に調質圧延率により鋼板に導入されるひずみ量が変化する。このとき、調質圧延率が大きくなる、すなわち鋼板に導入されるひずみ量が多くなると、ほうろう処理時の異常粒成長を助長することとなる。このため、調質圧延率は形状制御が可能な圧延率を上限として必要以上にひずみを付与することは望ましくない。形状制御の観点から、調質圧延の圧延率は1.5%以下が望ましい。
【0039】
[ほうろう製品の製造方法]
また、本実施形態に係るほうろう製品は、本実施形態に係る鋼板(例えば、上記熱間圧延工程後の熱延鋼板、または上記焼鈍工程後の冷延鋼板、または、上記調質圧延後の冷延鋼板)が、所定形状に加工後、溶接等により製品形状に組み立てられ、ほうろう処理(焼成処理)が施されることにより、得られる。
ほうろう処理については、例えば、釉薬を塗布した鋼板を、所定の温度に加熱して所定時間保持することによって、釉薬のガラス質と鋼板とを密着させればよい。本実施形態に係る鋼板についての好ましい焼成処理条件は、例えば、焼成温度700~900℃、焼成時間1.5~20分(在炉)の範囲がよい。また2回塗りおよび補修のために焼成を数回繰り返しても良い。このような条件で焼成処理を行うことにより、酸化物及び鉄炭化物によりほうろう処理中の粒成長を抑制し、強度低下を抑制できるようになる。ここに示した焼成処理の条件はあくまで例示であり、本実施形態に係る鋼板のほうろう処理の条件を限定するものではない。
【実施例
【0040】
表1A、表1Bに示す化学成分を有する化学組成(残部はFe及び不純物)の鋼を転炉で溶製し、その後、連続鋳造によってスラブとした。
これらのスラブを1200℃に加熱後、表2に記載の条件の仕上げ圧延を含む熱間圧延を行い、表2の巻取温度まで表2の平均冷却速度で冷却して、巻き取り、熱延鋼板とした。
そして、熱延鋼板を酸洗後、80%の累積圧下率で冷間圧延を行い冷延鋼板とした。
その後、焼鈍温度を750℃として連続焼鈍を施した。
連続焼鈍後、0.5%の圧延率で調質圧延を施し、板厚0.7mmの鋼板(冷延鋼板)とした。
【0041】
得られた鋼板に対し、引張特性を、以下の要領で評価した。
【0042】
[鋼板の引張特性]
JIS Z2241:2011に準じて、圧延方向に5号試験片を採取して引張試験を行い、引張強さ(TS)及び、降伏応力(YS)または0.2%耐力(0.2%PS)を求めた。
引張強さが340MPa以上であれば、高強度であると判断した。
【0043】
また、得られた鋼板のほうろう処理後の特性(ほうろう製品の特性に相当)を評価するために、以下の要領で、引張特性及びほうろう特性(耐爪飛び性、ほうろう密着性、ほうろう処理後の外観)を評価した。
【0044】
[ほうろう処理後の引張特性]
得られた鋼板に対し、炉温860℃にて5分間のほうろうを模擬した熱処理を施した。
この熱処理後の鋼板に対し、JIS Z2241:2011に準じて、圧延方向に5号試験片を採取して引張試験を行い、引張強さ(TS)及び、降伏応力(YS)または0.2%耐力(0.2%PS)を求めた。
引張強さが310MPa以上であれば、高強度であると判断した。
【0045】
[耐爪飛び性]
得られた鋼板から、150mm×100mmのサイズのサンプルを採取し、前処理として、サンプルに対し、アルカリ脱脂後、70℃の15g/L硫酸ニッケル液に7分間浸漬し、その後、中和処理を行った。
その後、日本フェロー製102#釉薬を両面に100μm施釉し、露点35℃の雰囲気で、860℃で5分間焼成した。
焼成後のサンプルに、150℃で20時間保持する加熱を行い、爪飛び発生状況を目視で観察し、評価した。
評価基準は以下の通りとし、S:特に優れる、A:優れる、B:通常、C:問題ありとして、Cを不合格とした。
S:爪飛びの発生が、5個以下/面
A:爪飛びの発生が、6~10個/面
B:爪飛びの発生が、11~20個/面
C:爪飛びの発生が、21個以上/面
【0046】
[ほうろう密着性]
得られた鋼板から、150mm×100mmのサイズのサンプルを採取し、前処理として、サンプルに対し、アルカリ脱脂後、70℃の10%硫酸溶液に10分間浸漬した後、70℃の15g/L硫酸ニッケル液に7分間浸漬し、その後、中和処理を行った。
その後、日本フェロー製102#釉薬を両面に100μm施釉し、露点35℃の雰囲気で、860℃で5分間焼成した。
焼成後のサンプルに、2kgの球頭の重りを1m高さから落下させ、変形部のほうろう剥離状況を169本の触診針で計測し、未剥離部の面積率で評価した。
評価基準は以下の通りとし、A:優れる、B:通常、C:問題ありとして、Cを不合格とした。
A:未剥離部の面積率が90%以上
B:未剥離部の面積率が85%以上、90%未満
C:未剥離部の面積率が85%未満
【0047】
[外観]
鋼板から、150mm×100mmサイズのサンプルを採取し、前処理として、サンプルに対し、アルカリ脱脂後、70℃の15g/L硫酸ニッケル液に7分間浸漬し、その後、中和処理を行った。
その後、日本フェロー製102#釉薬を両面に100μm施釉し、露点35℃の雰囲気で、860℃で5分間焼成した。
焼成後のサンプルに対し、外観を目視で観察し、泡・黒点の状況を評価した。
泡・黒点が1つでも発生している場合は泡・黒点発生、泡・黒点が発生していない場合を問題なしとした。
【0048】
【表1A】
【0049】
【表1B】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3A】
【0052】
【表3B】
【0053】
表1A~表3Bから分かるように、本発明例であるC1~C24では、化学組成が好ましい範囲にあり、引張強さが340MPa以上であって、かつ、耐爪飛び性、密着性、外観に優れていた。
これに対し、比較例であるc1~c23、c27では、化学組成が本発明範囲外にあり、引張強さが340MPa未満である、または耐爪飛び性、密着性、外観の1種以上が目標を達成しなかった。
また、比較例であるc24~c26では、化学組成は本発明範囲にあったものの、製造条件が好ましい条件を外れたため、引張強さが340MPa未満となった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明によれば、ほうろう処理後に、高強度かつ優れたほうろう特性(耐爪飛び性、密着性、外観)が得られる鋼板を提供することができる。この鋼板は、ほうろう処理後の引張強さが、従来のほうろう用鋼板よりも高い。そのため、台所用品、建材、エネルギー分野等に適用されるほうろう製品の基材であるほうろう用鋼板として好適であり、製品の軽量化に寄与する。
図1