(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-11
(45)【発行日】2025-03-19
(54)【発明の名称】表示物作成装置
(51)【国際特許分類】
B41J 11/00 20060101AFI20250312BHJP
B41J 11/26 20060101ALI20250312BHJP
B41J 11/66 20060101ALI20250312BHJP
B26D 5/00 20060101ALI20250312BHJP
B26D 7/22 20060101ALI20250312BHJP
【FI】
B41J11/00 A
B41J11/26
B41J11/66
B26D5/00 F
B26D7/22 A
(21)【出願番号】P 2021072154
(22)【出願日】2021-04-21
【審査請求日】2024-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006301
【氏名又は名称】マックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】岩下 鷹志
(72)【発明者】
【氏名】久保田 卓也
(72)【発明者】
【氏名】春田 雅己
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-059251(JP,A)
【文献】特開2013-043311(JP,A)
【文献】特開2017-047521(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0066152(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 11/00-11/70
B26D 5/00
B26D 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷ヘッドにより、印刷媒体に印刷を行う印刷部と、
切断ヘッドにより、前記印刷媒体における印刷部位又は該印刷部位の周囲を任意形状に切断する切断部と、
第1モータと、
前記印刷媒体を介して前記印刷部と対向する第1回転体と、
前記印刷媒体を介して前記切断部と対向する第2回転体と、
前記第1モータからの動力を前記第1回転体に伝達し、前記印刷媒体を搬送する第1動力伝達部と、
前記第1モータからの動力を前記第2回転体に伝達し、前記印刷媒体を搬送する第2動力伝達部と
を備え、
前記第1動力伝達部は、前記第1回転体を第1速度で回転させ、
前記第2動力伝達部は、前記第2回転体を前記第1速度よりも大きい第2速度で回転させ
、且つ、前記第2回転体が許容量以上の負荷を検出したときに、前記第1モータからの前記第2回転体への動力の伝達を制限、又は遮断する過負荷保護部を有する
表示物作成装置。
【請求項2】
前記第1動力伝達部は、前記第1モータの回転軸と、前記第1回転体の回転軸に同軸上に設けられた第1円筒部に架設されており、
前記第2動力伝達部は、前記第1モータの回転軸と、前記第2回転体の回転軸に同軸上に設けられた第2円筒部に架設されている
請求項
1記載の表示物作成装置。
【請求項3】
前記第2円筒部の周長は、前記第1円筒部の周長よりも短い
請求項
2記載の表示物作成装置。
【請求項4】
前記第1モータの回転軸、並びに、前記第1円筒部及び第2円筒部は、歯車状を成しており、
前記第1動力伝達部は、前記第1モータの回転軸及び前記第1円筒部にかみ合う歯が連設されており、
前記第2動力伝達部は、前記第1モータの回転軸及び前記第2円筒部にかみ合う歯が連設されており、
前記第2円筒部の歯数が、前記第1円筒部の歯数よりも少ない
請求項
2又は
3記載の表示物作成装置。
【請求項5】
前記過負荷保護部が前記第2円筒部を兼ねる
請求項2
から4の何れか記載の表示物作成装置。
【請求項6】
前記第1モータの回転速度よりも大きい回転速度を有する第2モータと、
前記印刷媒体の切断時、前記第2モータからの動力を前記第2回転体に伝達し、前記印刷媒体を搬送する第3動力伝達部と
を備える請求項1から
5の何れか記載の表示物作成装置。
【請求項7】
前記第2モータ又は前記第2回転体に設けられ、前記印刷媒体の搬送距離を測定する搬送距離測定部を備える
請求項
6記載の表示物作成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示物を作成する技術に関し、特に、印刷媒体に任意の文字、図形、画像等を印刷し、得られた印刷物を任意の形状に切断することにより、表示物を作成する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、これまで、ラベルや看板等の表示物の作成を行う表示物作成装置として、種々のサインプリンタ、プリンティングマシン、カッティングマシン、フリーカットラベルプリンタ等を、開発及び提案している。例えば、本出願人による特許文献1や特許文献2には、任意の文字や画像等を粘着シート等の印刷媒体に印刷する機能と、そうして得られた印刷物の輪郭等を任意の形状に切り抜いて表示物を得る機能とを一体化したいわゆるカット・アンド・プリントマシンが記載されている。このようなカット・アンド・プリントマシンでは、通常、印字ヘッド(プリンタヘッド)によりインクリボンをシート等の印刷媒体に押し当てて押圧し、且つ、そのシートを搬送しながら印刷し、印刷部位又はその周囲を切り抜きヘッド(カッティングヘッド)で切断するように構成されている。また、シートの搬送は、通常、印字ヘッドに対向配置されたプラテンと、切り抜きヘッドに対向配置されたスプロケットをモータで回転駆動することにより行う方式が用いられている。
【0003】
特に印刷時のシート搬送の際には、スプロケットの外周面に等間隔で設けられたピンが、シートの幅方向の両端に穿設された送り孔(スプロケットホール)に係合し、主としてスプロケットがシートを引っ張り、プラテンはシートが弛まないようにシートに張力(バックテンション)を与える補助的な言わばブレーキの役割を担っている。より具体的には、通常、プラテンはスプロケットよりも小径であり、プラテンの1回転あたりのシート搬送量は、スプロケットの1回転あたりのシート搬送量よりも少ない。そこで、プラテンのシート搬送量をスプロケットのシート搬送量に合致させるために、プラテンをスプロケットよりも高速で回転させつつ、所定の負荷でプラテンを空転させて減速する(プラテンとスプロケットの速度差を吸収する)ことにより、シートへの適度な張力の付与が維持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-52156号公報
【文献】特開平11-198424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなカット・アンド・プリントマシンは、比較的大型の表示物の作成に適しており、最近では、更に幅広のシートを用いた更に大型の表示物を作成することへの要求・需要が高まっている。しかし、シートサイズが大型になって重量が増大すると、シートを搬送するためのスプロケットによる送り負荷も不可避的に増大する。こうなると、シートの送り孔が、スプロケットによる送り負荷に耐えられず、シートの送り孔とスプロケットのピンとの係合が外れてしまったり、送り孔が潰れてシートが損傷したりするおそれがある。その結果、シート搬送時の搬送精度(送り精度)が悪化してしまい、印刷不良が生じることが懸念される。
【0006】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、従来よりも大型の印刷媒体(例えば、幅広のシート)を用いても、印刷媒体への印刷時における搬送精度の悪化に起因し得る印刷不良の発生を抑止することが可能な表示物作成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。
【0008】
〔1〕本開示に係る表示物作成装置の一例は、印刷ヘッドにより、シート等の印刷媒体に印刷を行う印刷部と、切断ヘッドにより、前記印刷媒体における印刷部位又は該印刷部位の周囲を任意形状に切断する切断部と、第1モータと、前記印刷媒体を介して前記印刷部と対向する第1回転体と、前記印刷媒体を介して前記切断部と対向する第2回転体と、前記第1モータからの動力を前記第1回転体に伝達し、前記印刷媒体を搬送する第1動力伝達部と、前記第1モータからの動力を前記第2回転体に伝達し、前記印刷媒体を搬送する第2動力伝達部とを備える。また、前記第1動力伝達部は、前記第1回転体を第1速度で回転させ、前記第2動力伝達部は、前記第2回転体を前記第1速度よりも大きい第2速度で回転させる。
【0009】
かかる構成では、印刷用モータとして機能する第1モータによって第1回転体及び第2回転体を回転させて印刷媒体を搬送しながら、その第1回転体の上で又は上方から、印刷媒体に任意の文字、図形、画像等の印刷を行い得る。このとき、第1動力伝達部が、第1回転体を比較的低速の第1速度で(つまり高トルクで)回転させるので、従来、印刷媒体が弛まないようにブレーキの役割を担っていた第1回転体が印刷媒体を主として搬送する機能が発現される。また、第2動力伝達部が、第2回転体を比較的高速の第2速度で回転させるので、第2回転体に所定の負荷が印加されたときに第2回転体を空転させて減速させれば、第1回転体と第2回転体の速度差を吸収して、印刷媒体に適度な張力を付与することができる。これにより、印刷媒体が大型になって重量が増大したとしても、第2回転体によって印刷媒体へ付与される送り負荷が軽減される。その結果、印刷媒体が第2回転体から外れてしまったり、印刷媒体が第2回転体に過度に引っ張られて破損したりしてしまうことが抑止される。
【0010】
このとおり、実際の印刷時には、第1回転体と第2回転体の速度差が適度に吸収されることから、本開示における第2回転体の「第2速度」とは、第2回転体が空転していない場合、つまり、外部要因によって速度が規制されていない場合の速度を示す。
【0011】
〔2〕そこで、上記構成において、より具体的には、前記第2動力伝達部は、前記第2回転体が許容量以上の負荷を検出したときに、前記第1モータからの前記第2回転体への動力の伝達を制限、又は遮断する過負荷保護部を有すると好ましい。これにより、第2回転体に所定の負荷が印加されたとき、第2回転体が有効に減速され、第1回転体と第2回転体の速度差を吸収することができる。なお、前述のとおり、第2回転体は第1回転体よりも速く回転されるところ、この場合、「許容量」としては、例えば、第1回転体及び第2回転体の双方の回転速度が同等となるような「負荷」値を設定すると好適である。
【0012】
〔3〕また、上記構成において、前記第1動力伝達部は、前記第1モータの回転軸と、前記第1回転体の回転軸に同軸上に設けられた第1円筒部に架設されており、前記第2動力伝達部は、前記第1モータの回転軸と、前記第2回転体の回転軸に同軸上に設けられた第2円筒部に架設されているように構成してもよい。この場合、第1動力伝達部及び第2動力伝達部の好ましい例としては、ベルト部材又はチェーン部材等が挙げられる。このような簡便な機構により、第1モータの回転動力が、第1動力伝達部から第1円筒部を介して第1回転体に伝達され、且つ、第2動力伝達部から第2円筒部を介して第2回転体に伝達される。
【0013】
〔4〕また、上記構成において、前記第2円筒部の周長が、前記第1円筒部の周長よりも短くなるように構成してもよい。かかる構成では、第1モータの回転軸の周長に対する第2円筒部の周長の比(ギヤ比、歯車比)が、第1モータの回転軸の周長に対する第1円筒部の周長の比よりも小さくなるので、単一の第1モータで、第2回転体を第1回転体よりも速く回転させることができる。
【0014】
〔5〕或いは、上記構成において、前記第1モータの回転軸、並びに、前記第1円筒部及び第2円筒部は、歯車状を成しており、前記第1動力伝達部は、前記第1モータの回転軸及び前記第1円筒部にかみ合う歯が連設されており、前記第2動力伝達部は、前記第1モータの回転軸及び前記第2円筒部にかみ合う歯が連設されており、前記第2円筒部の歯数が、前記第1円筒部の歯数よりも少なくなるように構成してもよい。この場合も、前記〔4〕と同様に、第1モータの回転軸の歯数に対する第2円筒部の歯数の比(ギヤ比、歯車比)が、第1モータの回転軸の歯数に対する第1円筒部の歯数の比よりも小さくなるので、単一の第1モータで、第2回転体を第1回転体よりも速く回転させることができる。
【0015】
〔6〕また、上記構成において、前記過負荷保護部が前記第2円筒部を兼ねるように構成してもよい。このようにすれば、部品点数を軽減しつつ、過負荷保護部を介して、第1モータの回転動力が第2回転体に伝達され、許容量以上の負荷が検出された場合、その動力の伝達が有効に制限、又は遮断される。
【0016】
〔7〕また、上記構成において、前記第1モータの回転速度よりも大きい回転速度を有する第2モータと、前記印刷媒体の切断時、前記第2モータからの動力を前記第2回転体に伝達し、前記印刷媒体を搬送する第3動力伝達部とを備えてもよい。かかる構成では、印刷媒体の切断ひいては表示物の切り抜きを、第1モータの回転速度よりも大きい回転速度を有する第2モータを用いて高速で行うことが可能となる。また、このとき、第2回転体が、印刷媒体の切断時に第1モータからの動力の伝達が遮断されるように構成すれば、印刷媒体の切断中に、第2モータの動力が第2回転体を介して第1モータに伝わらないので、第2モータの駆動時に第1モータが供回りしてしまうこと、ひいては、第1モータが第2モータの負荷となってしまうことが防止される。これにより、印刷媒体の切断時の高速搬送を適正に行うことが可能となり、印刷媒体の送り速度の低下を防止することができる。
【0017】
〔8〕また、上記構成において、前記第2モータ(の回転軸)又は前記第2回転体(の回転軸)に設けられ、前記印刷媒体の搬送距離を測定する搬送距離測定部(例えばエンコーダ)を備えてもよい。これにより、印刷媒体の搬送距離を正確に測定して、印刷媒体の印刷と切断を適正に行うことができる。
【0018】
また、第2回転体への動力の伝達が第2動力伝達部によって遮断される第1モータは、それ自体に滑りが発生し得るので、印刷媒体の実際の動きと、第1モータの実際の回転量(ステップ数)との関係にズレが生じてしまう。よって、第1モータに印刷媒体の搬送距離を測定する搬送距離測定部を取り付けても、印刷媒体の搬送距離を正確に測定することができないおそれがある。一方、第2モータは、第2回転体への動力の伝達が遮断されないので、第2モータ自体に滑りが発生してしまう懸念がなく、印刷媒体を搬送する第2回転体の回転と第2モータの回転が確実に連動する。従って、かかる第2モータ又は第2回転体に搬送距離測定部を設けてステップ数を計測することにより、第2回転体の回転量、すなわち、印刷媒体の搬送距離を正確に測定することができる。
【0019】
なお、本開示において、1つの「部」、「機(器)」、「機構」、「装置」、及びそれらの構成部品や構成要素が有する機能が、2つ以上の物理的手段や装置等によって実現されてもよく、或いは、2つ以上の「部」、「機(器)」、「機構」、「装置」、及びそれらの構成部品や構成要素の機能が1つの物理的手段や装置等によって実現されてもよい。さらに、「部」、「機(器)」、「機構」、及び「装置」とは、例えば「手段」や「システム」等と言い換えることも可能な概念である。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、第1動力伝達部が、第1回転体を比較的低速の第1速度で回転させるので、主として第1回転体が印刷媒体を搬送することができる。また、第2動力伝達部が、第2回転体を比較的高速の第2速度で回転させるので、第2回転体に所定の負荷が印加されたときに空転させて減速させれば、第1回転体と第2回転体の速度差を吸収して、印刷媒体への適度な張力の付与を維持することができる。これにより、従来よりも大型(長尺大幅)の印刷媒体を用いてその重量が増大したとしても、第2回転体によって印刷媒体へ付与される送り負荷が軽減される。よって、印刷媒体が第2回転体から外れてしまったり、印刷媒体が第2回転体に過度に引っ張られて破損したりしてしまうことが抑止される。その結果、印刷媒体の搬送精度の悪化が防止され、それに起因し得る印刷不良の発生を抑止することができ、大型の印刷媒体を用いて従来よりも大型の表示物を作成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本開示の一実施形態に係る表示物作成装置の一例の構成を示す斜視図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る表示物作成装置の一例の構成を示す斜視図(プリンタのカバーを開けた状態)である。
【
図3】本開示の一実施形態に係る表示物作成装置の一例の構成の一部を概念的に示す模式平面図である。
【
図4】本開示の一実施形態に係る表示物作成装置の一例のより実際的な構成の一部を示す平面図である。
【
図5】
図1におけるV-V線に沿って、シートロール側に向かってプリンタの内部を視認した状態を示す断面斜視図である。
【
図6A】スプロケットの外観を模式的に示す斜視図である。
【
図7】本開示の一実施形態に係る表示物作成装置の一例における制御系のハードウェア構成の一例を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示の一例に係る実施形態について、図面を参照して説明する。但し、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、以下に明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図ではない。すなわち、本開示の一例は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付しており、図面は模式的なものであって、必ずしも実際の寸法や比率等とは一致しない。さらに、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることがある。また、以下に説明する実施形態は本開示の一部の実施形態であって、全ての実施形態ではないことは言うまでもない。さらに、本開示の実施形態に基づいて、当業者が創造性のある行為を必要とせずに得られる他の実施形態は、いずれも本開示の保護範囲に含まれる。
【0023】
[表示物作成装置の構成例]
図1及び
図2は、それぞれ本開示の一実施形態に係る表示物作成装置の一例の構成を示す斜視図である。プリンタ(表示物作成装置)1は、側壁部110a,110bを有するプリンタ本体110と、側壁部110a,110bの間の上方部分に開閉可能に設けられたカバー120を備える。また、側壁部110a,110bの間の下方部分には、長尺大幅(例えば300mm幅)の印刷用シートSが着脱可能に収納される。この印刷用シートSとしては、例えば、長尺状の剥離紙に長尺状のシートが貼着されたものが挙げられ、印刷用シートSの印刷面が外向きとなる外巻と称される形態で巻かれたシートロールRとして提供され得る。また、印刷用シートSの幅方向の両端には、スプロケットホールと称する複数の貫通孔(図示せず)が、長手方向に一定の間隔で形成されている。なお、印刷用シートS及びそれが巻回されたシートロールRが、印刷媒体の一例に相当する。
【0024】
以上のような外観構成により、プリンタ1は、カバー120が閉じられた状態で、全体として例えば略直方体状をなす。さらに、プリンタ本体110の例えば一方の側壁部110aには、ユーザからの印刷用シートSの搬送操作等を受け付ける操作パネルPが設けられている。また、プリンタ1は、カバー120の内部にインクリボンカセット130が着脱可能に収納されるように構成されている。
【0025】
ここで、
図3は、本開示の一実施形態に係る表示物作成装置の一例の構成の一部を概念的に示す模式平面図であり、
図4は、本開示の一実施形態に係る表示物作成装置の一例のより実際的な構成の一部を示す平面図である。なお、
図3は、
図1及び
図2におけるプリンタ本体110の内部構造を側壁部110a側から視認した図であり、
図4は、
図1及び
図2におけるプリンタ本体110の内部構造を、反対側の側壁部110b側から視認した図である。また、
図5は、
図1におけるV-V線に沿って、シートロールR側に向かってプリンタ1の内部を視認した状態を示す断面斜視図である。これらの
図3及び
図4に示すように、プリンタ1は、その主要機能として、印刷部10、切断部20、印刷用モータ(第1モータ)M1、切断用モータ(第2モータ)M2、プラテン(第1回転体)31、及びスプロケット(第2回転体)32を備える。
【0026】
(印刷部10)
印刷部10は、カバー120の内部に設けられており、主として、印刷ヘッド11により、印刷用シートSに任意の文字、図形、画像等の印刷を行う機能を有し、印刷ヘッド11に接続された印刷ヘッド駆動部12を備える。また、カバー120にインクリボンカセット130が収納された状態で、インクリボンカセット130から引き出されたインクリボンBが、印刷ヘッド11の図示下方に配置される。なお、インクリボンBは、インクリボンカセット130の繰り出し芯部131にロール状に収められており、そこから繰り出されて、インクリボンカセット130の巻き取り芯部132に巻き取られるように構成されている。また、インクリボンBとしては、一例として、熱及び圧力で印刷用シートSに転写可能なインクが、薄膜状で長尺の媒体に塗布されて構成されたものが挙げられる。
【0027】
ここで、印刷ヘッド11は、一例として、サーマルヘッド(熱転写方式)で構成され、且つ、長手方向の長さが、印刷用シートSの印刷可能な幅とほぼ同じ長さ、又は、印刷用シートSの幅よりも長く構成されている。また、印刷ヘッド11は、
図4に示すように、印刷ヘッド11に対してインクリボンBの繰り出し側(繰り出し芯部131寄り)に設けられた第1ガイドローラ131gと、インクリボンBの巻き取り側(巻き取り芯部132寄り)に設けられた第2ガイドローラ132gを有する図示しない支持部材に取り付けられる。
【0028】
さらに、印刷ヘッド駆動部12は、例えば、印刷ヘッド11の昇降動作、すなわち、印刷用シートSへ印刷ヘッド11を押し付ける動作と印刷用シートSから印刷ヘッド11を退避させる(離間させる)動作を行う例えば昇降用ソレノイド又はモータ(ともに図示せず)と、インクリボンBをインクリボンカセット130から引き出すための巻き取り芯部132に接続されたインクリボン搬送モータ133を有する。この印刷ヘッド駆動部12により、印刷ヘッド11、第1ガイドローラ131g、及び第2ガイドローラ132gが、後述するプラテン31に対して適切な位置に位置決めされる。また、なお、印刷ヘッド11とプラテン31は、インクリボンBと印刷用シートSを挟んで互いに対向配置されている。
【0029】
(切断部20)
切断部20は、プリンタ本体110の側壁部110a,110bの内部、及び、両側壁部110a,110bに亘って設けられており、切断ヘッド21により、印刷用シートSにおける印刷部位又はその周囲を任意形状に、例えば、所望の輪郭を有する表示物のラベルとして剥離紙を残して切り抜いたり(半切り、ハーフカット等と称される)する機能を有し、切断ヘッド21に接続された切断ヘッド駆動部22を備える。
【0030】
切断ヘッド21は、印刷用シートSの搬送方向(
図3における矢印Ya)における印刷ヘッド11の下流側において、印刷用シートSの幅方向に沿って延在するガイドレール23に走行自在に組み付けられている。このガイドレール23としては、平板状レールでもよく、複数のワイヤを用いたもの等でもよい(
図3においては平板状レールを示す)。さらに、切断ヘッド21は、例えば、後述するスプロケット32の周面に対してほぼ垂直となるペン先状のカッタを有する。
【0031】
切断ヘッド駆動部22は、例えば、ガイドレール23の一端に内蔵又は接続されたステッピングモータ及び送り機構(ともに図示せず)と、切断ヘッド21のカッタの昇降動作、すなわち、印刷用シートSへカッタを押し付ける動作と印刷用シートSからカッタを退避させる(離間させる)動作を行う例えば昇降用ソレノイド又はモータ(ともに図示せず)を有する。印刷用シートSに印刷された文字、図形、画像等の切り抜きは、切断ヘッド駆動部22により、切断ヘッド21をガイドレール23に沿って前進・後退させる制御と、後述する切断用モータM2によりスプロケット32を正転・逆転させる制御との協働によって行なうことができる。なお、切断ヘッド21とスプロケット32は、印刷用シートSを挟んで互いに対向配置されている。
【0032】
(印刷用シートSの搬送系)
プリンタ1における印刷用シートSの搬送は、主として、印刷用モータM1、切断用モータM2、プラテン31、及びスプロケット32によって行われる。これらの各構成要素も、プリンタ本体110の側壁部110a,110bの内部、及び、両側壁部110a,110bに亘って設けられている。
【0033】
例えばステッピングモータ等の印刷用モータM1は、印刷用シートSの印刷時に、ローラ形状のプラテン31及びローラ形状のスプロケット32を回転させ、印刷用シートSを
図3において矢印Yaで示す正方向(給紙方向、排紙方向、所定方向)に搬送する。また、例えばステッピングモータ等の切断用モータM2は、印刷用シートSの切断時に、スプロケット32を回転させ、印刷用シートSを
図3において矢印Yaで示す正方向及びその逆方向に(所定方向及びその反対方向)に搬送する。なお、切断用モータM2の回転軸M2aには、印刷用シートSの搬送距離を測定するためのエンコーダ(搬送距離測定部)60が同軸上に設けられている。
【0034】
より具体的には、プラテン31は、その回転軸31aにおける側壁部110a側の一端部に設けられたプラテン駆動用プーリー31bを有している。また、プラテン駆動用プーリー31bの外周部の内側(プリンタ1の内部側)には、円筒状を成すベルト掛部(第1円筒部)31cが、回転軸31aと同軸上に形成されている。そして、印刷用モータM1の回転軸M1aと、プラテン31におけるベルト掛部31cとの間に、無端ベルト(第1動力伝達部)EB1が架設されている。これにより、印刷用シートSの印刷時に、プラテン31に印刷用モータM1の動力が伝達されて、プラテン31が回転する。また、スプロケット32は、その回転軸32aと同軸上に、円筒状を成すトルクリミッタ(過負荷保護部)50(後述)を有している。そして、印刷用モータM1の回転軸M1aとトルクリミッタ50との間に、無端ベルト(第2動力伝達部)EB2が架設されている。これにより、印刷用シートSの印刷時に、プラテン31のみならずスプロケット32にも印刷用モータM1の動力が伝達されて、スプロケット32がプラテン31とともに回転する。このとおり、プリンタ1では、トルクリミッタ50が、本開示における「第2円筒部」を兼ねている。
【0035】
さらに、スプロケット32における無端ベルトEB2が掛けられるベルト掛部としてのトルクリミッタ50の周長は、プラテン31における無端ベルトEB1が掛けられるベルト掛部31cの周長よりも短くされている。これにより、印刷用モータM1の回転軸M1aの周長に対するトルクリミッタ50の周長の比(ギヤ比、歯車比)が、印刷用モータM1の回転軸M1aの周長に対するベルト掛部31cの周長の比よりも小さくなる。その結果、印刷用モータM1の動力を伝達する無端ベルトEB1によって回転されるプラテン31の回転速度(第1速度)31vと、無端ベルトEB2によって回転されるスプロケット32の回転速度(第2速度)32vは、以下の式(1)で表される関係を有することとなる。
・プラテン31の回転速度31v<スプロケット32の回転速度32v …(1)
【0036】
すなわち、印刷用シートSの印刷時、無端ベルトEB1は、プラテン31を回転速度31vで回転させ、無端ベルトEB2は、スプロケット32を回転速度31vよりも大きい回転速度32vで回転させる。ここで、既に述べたように、スプロケット32の回転速度32vとは、スプロケット32が、外部要因としてのトルクリミッタ50によって空転していない場合(速度が規制されていない)場合の速度であり、一例として、スプロケット32の回転速度32vは、プラテン31の回転速度31vの約3~6倍程度を挙げることができる。換言すれば、この場合、印刷用モータM1の回転軸M1aの周長に対するトルクリミッタ50の周長のギヤ比は、印刷用モータM1の回転軸M1aの周長に対するベルト掛部31cの周長のギヤ比の約1/6~1/3程度となる。
【0037】
また、印刷用モータM1の回転軸M1a、並びに、ベルト掛部31c及びトルクリミッタ50は、歯車状を成していてもよい。この場合、無端ベルトEB1には、印刷用モータM1の回転軸M1a及びベルト掛部31cにかみ合う歯を連設し、無端ベルトEB2には、印刷用モータM1の回転軸M1a及びトルクリミッタ50にかみ合う歯を連設するように構成すると好ましい。そして、トルクリミッタ50の歯数が、ベルト掛部31cの歯数よりも少なくなるように構成すれば、印刷用モータM1の回転軸M1aの歯数に対するトルクリミッタ50の歯数の比(ギヤ比、歯車比)が、印刷用モータM1の回転軸M1aの歯数に対するベルト掛部31cの歯数の比よりも小さくなる。よって、この場合も、無端ベルトEB1が、プラテン31を比較的低速の回転速度31vで回転させ、無端ベルトEB2が、スプロケット32を回転速度31vよりも大きい回転速度32vで回転させることができる。
【0038】
ここで、
図6Aは、スプロケット32の外観を模式的に示す斜視図であり、
図6Bは、
図6Aの分解斜視図である。
図5並びに
図6A及び
図6Bに示すように、スプロケット32の回転軸32aにおける側壁部110a側の一端部に、前述したトルクリミッタ50が同軸上に設けられている。このトルクリミッタ50は、印刷用モータM1からトルクリミッタ50の許容量以上の負荷(回転負荷)を検出したときに、印刷用モータM1の動力をトルクリミッタ50の許容量以上にスプロケット32に伝達しないように構成されている。前述のとおり、無端ベルトEB2は、スプロケット32を比較的高速の回転速度32vで回転させるところ、スプロケット32に所定の負荷が印加されたときには、トルクリミッタ50が機能し、スプロケット32を空転させて減速させれることで、プラテン31とスプロケット32の速度差を吸収して、印刷用シートSに対して適度な張力(バックテンション)が付与される。
【0039】
また、スプロケット32には、トルクダイオード(登録商標:以下省略する。一般に「逆入力防止機構」等と呼ばれる)40も同軸上に設置されている。このトルクダイオード40は、互いに同軸上に一体化された動力伝達部41及び動力非伝達部42を有している。印刷用モータM1の動力は、動力伝達部41によってスプロケット32に伝達される一方、切断用モータM2の動力は、動力非伝達部42によって印刷用モータM1には伝達されないように構成されている。
【0040】
なお、スプロケット32の外周面には、先に述べた印刷用シートSの幅方向の両端に設けられたスプロケットホールから突出して、印刷用シートSに係合するピン32tが、スプロケットホールと同間隔で複数形成されており、プラテン31による送り出しとスプロケット32による案内により、印刷用シートSが印刷時及び切断時に搬送される。また、印刷用シートSを送る際にスプロケット32のピン32tと印刷用シートSのスプロケットホールとの係合が外れないように、
図4に示す1対の押えローラ34,35が、スプロケット32の上方で且つ印刷用シートSの上流側と下流側に配置されている。この押えローラ34,35は、一対の回転軸に配設されおり、両軸端部が適宜のホルダに上下動可能に保持されている。
【0041】
[制御系のハードウェア構成例]
図7は、本開示の一実施形態に係る表示物作成装置の一例における制御系のハードウェア構成の一例を模式的に示す平面図である。プリンタ1は、主として、印刷部10、切断部20、印刷用モータM1、及び切断用モータM2に接続された制御部70を備える。この制御部70は、制御演算部71、通信インタフェース(I/F)部72、記憶部73、入力部74、及び出力部75を含み、各部はバスライン76を介して相互に通信可能に接続され得る。
【0042】
制御演算部71は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を含み、情報処理に応じて、印刷用シートSの印刷、切断、及び搬送を行うために必要となる各構成要素の制御及び各種演算を行う。また、通信I/F部72は、例えば、有線又は無線により他の構成要素である「部」及び「装置」と通信するための通信モジュールである。通信I/F部72が通信に用いる通信方式は任意であり、例えば、LAN(Local Area Network)やUSB(Universal Serial Bus)等が挙げられ、バスライン76と同等の適宜の通信線を適用することもできる。印刷部10及び切断部20ともに、通信I/F部72を介して、制御演算部71等と通信可能に構成することができる。
【0043】
記憶部73は、例えばハード・ディスク・ドライブ(HDD)、ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)等の補助記憶装置であり、制御演算部71で実行される各種プログラム(印刷用シートSの印刷、切断、及び搬送処理を実行するための演算プログラム、並びに、各種センサによる監視プログラム、それらの動作の制御処理を行うための制御プログラム等)、印刷用シートSに印刷される表示物の座標情報及び色情報等を記憶する。
【0044】
入力部74は、プリンタ1を利用するユーザからの各種入力操作を受け付けるためのインタフェースデバイスであり、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、タッチボタンを有する操作パネルP(
図1及び
図2)、音声マイク、外部メモリ等で実現し得る。また、出力部75は、プリンタ1を利用するユーザ等へ、各種情報を、その表示、音声出力、印刷出力等により報知するためのインタフェースデバイスであり、例えば、ディスプレイ、スピーカ、プリンタ1自体等で実現し得る。
【0045】
以上の構成により、制御部70は、例えば、通信I/F部72に外部接続された情報処理装置、記憶部73、又は入力部74から表示物の描画データ等を取得し、印刷ヘッド11、印刷用モータM1、インクリボン搬送モータ133、及び、印刷ヘッド11の昇降用ソレノイド又はモータを駆動させ、プラテン31及びスプロケット32で印刷用シートSを搬送しながら、印刷用シートSに印刷を行う。また、制御部70は、切断ヘッド21、切断用モータM2、スプロケット32、及び、印刷ヘッド11の昇降用ソレノイド又はモータを駆動させて、印刷後の印刷用シートSを所定の形状での切り抜く切断を行い、また必要に応じて、印刷用シートSを指定位置で全幅に亘って切断する。
【0046】
[表示物作成装置の動作例]
以上の構成を有するプリンタ1の動作例について、以下に説明する。まず、印刷用シートSをプリンタ1に装填するため、
図2に示すようにカバー120を開くと、カバー120内部に収納されたインクリボンカセット130及び印刷部10が上方に退避して、印刷用シートSの搬送経路が露呈する。この状態で、
図2に示すように、シートロールRを装填し、印刷用シートSを、プラテン31の上方からスプロケット32と押えローラ34,34との間に挿通することで、印刷用シートSに形成されたスプロケットホールにスプロケット32のピン32tが嵌入して係合する。それから、カバー120を閉じると、スプロケット32による印刷用シートSの搬送が可能な状態となる。
【0047】
(印刷用シートSの印刷)
次に、プリンタ1の運転を開始すると、プリンタ1の制御部70は、通信I/F部72に外部接続された情報処理装置、記憶部73、又は入力部74から表示物の描画データ、及び、表示物の印刷部位の切り抜き形状データ等を取得し、それらの描画データ及び切り抜き形状データ等を制御演算部71へ転送又は入力する。制御演算部71は、まず、その描画データに基づいて、印刷部10、切断部20、及び印刷用モータM1へ印刷指令を送信する。
【0048】
制御演算部71からの指令を受信した印刷部10の印刷ヘッド駆動部12は、印刷ヘッド11の昇降用ソレノイド又はモータの駆動により、印刷ヘッド11を、プラテン31と非接触になる退避位置からプラテン31に当接する印刷位置へ移動させるとともに、第1ガイドローラ131g及び第2ガイドローラ132gを所定位置に位置決めする。これにより、印刷ヘッド11とプラテン31で、印刷用シートS及びインクリボンBを挟持し、印刷用シートSにインクリボンBが押圧された状態となる。また、同時に、印刷部10の印刷ヘッド駆動部12は、押えローラ34を下方に移動させ、スプロケット32と非接触になる退避位置からに当接する位置に位置決めする。一方、切断部20の切断ヘッド駆動部22は、切断ヘッド21の昇降用ソレノイド又はモータを駆動させ、切断ヘッド21を、印刷用シートSと非接触になる退避位置(離間位置)に位置決めする。
【0049】
その状態で、制御演算部71は、印刷用モータM1を駆動し、その動力が、無端ベルトEB1及び無端ベルトEB2並びにトルクダイオード40を介して、それぞれプラテン31及びスプロケット32に伝達される。これにより、プラテン31及びスプロケット32は、印刷用シートSが矢印Yaで示す方向に搬送されるように正転方向に回転し、押えローラ34,35が印刷用シートSに当接し、印刷用シートSの動きに従動して回転する。
【0050】
ここで、プラテン31及びスプロケット32は、印刷用モータM1の回転速度M1v、及び、無端ベルトEB1側のギヤ比と無端ベルトEB2側のギヤ比の違いに応じた速度でそれぞれ回転される。すなわち、無端ベルトEB1がプラテン31を所定の回転速度31vで回転させ、無端ベルトEB2がスプロケット32を回転速度31vよりも大きい回転速度32vで回転させる。その際、印刷用モータM1から許容量以上の負荷がスプロケット32に検出された場合には、トルクリミッタ50により、プラテン31とスプロケット32の搬送速度が同等となるようにトルク調整され、これにより、印刷用シートSも比較的低速で搬送される。
【0051】
なお、印刷時において、制御演算部71は、切断用モータM2を駆動させないが、切断用モータM2は、スプロケット32の回転動力により、無端ベルトEB3を介して回転することとなる。よって、切断用モータM2の回転のステップ数をエンコーダ60で計測することにより、印刷時のスプロケット32の回転量、すなわち、印刷時の印刷用シートSの搬送距離が測定される。
【0052】
また、印刷ヘッド駆動部12は、同時に、インクリボン搬送モータ133を駆動して巻き取り芯部132を回転させて、印刷用シートSの搬送に合わせてインクリボンBを搬送する。これにより、プラテン31上に、印刷用シートS及びインクリボンBが矢印Yaで示す正方向に重なり状態で供給及び搬送されながら、描画データに応じた文字、図形、画像等が、印刷ヘッド11によって印刷用シートSに熱転写印刷される。
【0053】
(印刷用シートSの切断)
印刷が終了すると、制御演算部71は、切り抜き形状データに基づいて、印刷部10、切断部20、及び切断用モータM2へ切断指令を送信する。制御演算部71からの指令を受信した印刷部10の印刷ヘッド駆動部12は、印刷ヘッド11の昇降用ソレノイド又はモータの駆動により、印刷ヘッド11を、プラテン31に当接する印刷位置からプラテン31と非接触になる退避位置(離間位置)に移動させるとともに、それに合わせて第1ガイドローラ131g及び第2ガイドローラ132gを所定位置に位置決めする。これにより、印刷ヘッド11とプラテン31で挟持していた印刷用シートS及びインクリボンBを解放する。また、同時に、印刷部10の印刷ヘッド駆動部12は、印刷ヘッド11を上方に移動させ、押えローラ34を、スプロケット32に当接する位置からスプロケット32と非接触になる退避位置(離間位置)に位置決めする。
【0054】
一方、切断部20の切断ヘッド駆動部22は、切断ヘッド21の昇降用ソレノイド又はモータを駆動させ、切断ヘッド21を、スプロケット32と非接触になる退避位置から、スプロケット32に当接する切断位置に位置決めする。これにより、切断ヘッド21のカッタが印刷用シートSに接触した状態となる。さらに、切断ヘッド駆動部22は、切り抜き形状データに対応して、切断ヘッド21をガイドレール23に沿って、印刷用シートSの幅方向に前進・後退させる。
【0055】
また、制御演算部71は、切断用モータM2を駆動し、その動力が、無端ベルトEB3を介してスプロケット32に伝達される。これにより、スプロケット32は、表示物の印刷部位の切り抜き形状に対応して、印刷用シートSが矢印Yaで示す正方向及びその逆方向に搬送されるように、正転方向及び逆転方向に回転する。また、切断用モータM2の回転速度M2vは、印刷用モータM1の回転速度M1vよりも大きくされており、スプロケット32は、その切断用モータM2の回転速度M2vに応じた比較的高速で回転され、これにより、印刷用シートSも比較的高速で搬送される。
【0056】
このように、印刷用シートSに印刷された文字、図形、画像等の印刷部位の切り抜きは、切断ヘッド駆動部22により、切断ヘッド21をガイドレール23に沿って前進・後退させる制御と、切断用モータM2によってスプロケット32を正転・逆転させる制御との協働によって、高速で行なわれる。
【0057】
なお、切断時において、制御演算部71は、印刷用モータM1を駆動させず(無端ベルトEB1,EB2も停止する)、且つ、切断用モータM2によって回転されるスプロケット32の回転動力は、トルクダイオード40によって遮断されて印刷用モータM1には伝達されない。すなわち、印刷用モータM1は、動力的にスプロケット32及び切断用モータから切り離される。これにより、印刷用シートSの切断時には、印刷用モータM1が、切断用モータM2によるスプロケット32の回転の負荷抵抗となることはない。さらに、切断用モータM2の回転量がエンコーダ60で測定され、切断時の印刷用シートSの搬送距離を計測することも可能である。
【0058】
そして、表示物の切り抜きによる切断が終了後、制御演算部71は、必要に応じて、別の表示物の印刷・切断を繰り返し実施し、及び/又は、切断用モータM2を停止させた状態で、例えば、
図4に示す切断手段24により印刷用シートSを指定位置で全幅に亘って切断した後、プリンタ1の運転を終了する。
【0059】
このように構成されたプリンタ1によれば、通常よりも高トルク且つ低速で回転する印刷用モータM1に、無端ベルトEB1を介して接続されたプラテン31によって、印刷用シートSを正方向に搬送しながら、印刷ヘッド11、インクリボンB、及びプラテン31で、任意の文字、図形、画像等の印刷を行うことができる。このとき、無端ベルトEB1が、プラテン31を比較的低速の回転速度31vで(つまり高トルクで)回転させるので、従来、印刷用シートSが弛まないようにブレーキの役割を担っていたプラテン31が、主として、印刷用シートSを搬送することができる。
【0060】
また、無端ベルトEB2が、スプロケット32を比較的高速の回転速度32vで回転させ、且つ、スプロケット32に許容量以上の負荷が入力又は検出されたときに、トルクリミッタ50によってスプロケット32を空転させて減速させる。これにより、過負荷がスプロケット32に伝達されず、プラテン31とスプロケット32の速度差を吸収して、印刷用シートSへの適度な張力(バックテンション)の付与を維持することができる。よって、従来よりも大型(長尺大幅)の印刷用シートSを用いてシートロールRの重量が増大したとしても、スプロケット32によって印刷用シートSへ付与される送り負荷を軽減させることができる。その結果、印刷用シートSがスプロケット32から外れてしまったり、スプロケット32のピン32tが印刷用シートSのスプロケットホールの部位を過度に引っ張って印刷用シートSが破損したりしてしまうことが抑止される。従って、印刷用シートSの搬送精度(送り精度)の悪化を防止し、それに起因する印刷不良の発生を防止することが可能となり、印刷用シートSを適正に搬送しながら印刷を確実に行うことができる。
【0061】
さらに、印刷用モータM1の回転軸M1aの周長又は歯数に対するトルクリミッタ50の周長又は歯数の比(ギヤ比、歯車比)が、印刷用モータM1の回転軸M1aの周長又は歯数に対するベルト掛部31cの周長又は歯数の比よりも小さくされているので、かかる簡便な構成と1基の印刷用モータM1を用いて、スプロケット32の回転速度32vをプラテン31の回転速度31vよりも大きくすることができる。またさらに、無端ベルトEB2が、スプロケット32の回転軸32aに設けられた過負荷保護部であるトルクリミッタ50に架設されているので、トルクリミッタ50が「第2円筒部」を兼ねることができる。これにより、部品点数を軽減しつつ、トルクリミッタ50を介して、印刷用モータM1の回転動力がスプロケット32に伝達され、許容量以上の負荷が検出された場合、その動力の伝達が有効に制限、又は遮断される。
【0062】
さらに、印刷用シートSの切断時、印刷用モータM1よりも低トルク且つ高速で回転する印刷用モータM2に、無端ベルトEB2を介して接続されたスプロケット32によって、印刷用シートSを正方向・逆方向に高速で搬送することができる。よって、その切断時の印刷用シートSの送り速度の低下を防止して、表示物の切り抜きを高速で行うことができる。
【0063】
さらにまた、スプロケット32の回転軸32aにトルクダイオード40が設けられており、印刷用シートSの印刷中に、印刷用モータM1からの駆動力を、動力伝達部41によりスプロケット32に確実に伝えることができる一方、印刷用シートSの切断中には、切断用モータM2の動力は、動力非伝達部42により印刷用モータM1には伝わらない。これにより、切断用モータM2の駆動時に印刷用モータM1が供回りしてしまうことを防止することができる。これにより、印刷用モータM1が切断用モータM2の負荷抵抗とならないので、切断時の印刷用シートSの高速搬送を適正に且つ確実に行うことができる。
【0064】
また、印刷用モータM1は、トルクリミッタ50といった「滑る部品」に接続されているため、それ自体に滑りが発生して、印刷用シートSの実際の動きと、印刷用モータM1の実際の回転量(ステップ数)との関係にズレが生じてしまい、印刷用シートSの搬送距離を正確に測定することができないおそれがある。一方、切断用モータM2は、そのような「滑る部品」に接続されていないので、切断用モータM2自体に滑りが発生してしまう懸念がなく、印刷用シートSを搬送するスプロケット32の回転と切断用モータM2の回転が確実に連動する。そこで、プリンタ1では、かかる切断用モータM2にエンコーダ60を設けてステップ数を計測することにより、スプロケット32の回転量、すなわち、印刷用シートSの搬送距離を正確に測定して、印刷用シートSの印刷と切断を適正に行うことができる。
【0065】
以上、本開示の一例としての上記実施形態について詳細に説明してきたが、上述したとおり、前述した説明はあらゆる点において本開示の一例を示すに過ぎず、本開示の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。また、上記実施形態は、部分的に置換、削除、又は組み合わせて構成することも可能であり、さらに、先に適宜言及したような変更が可能である。例えば、印刷ヘッド11は、インクリボンBとともに用いられるサーマルヘッドに代えて、インクジェット方式を用いてもよい。エンコーダ60は、スプロケット32に設けてもよい。また、スプロケット32の回転と切断用モータM2の回転が確実に連動するので、スプロケット32の回転軸32aにエンコーダ60を設けてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1…プリンタ(表示物生成措置)、10…印刷部、11…印刷ヘッド、12…印刷ヘッド駆動部、20…切断部、21…切断ヘッド、22…切断ヘッド駆動部、23…ガイドレール、24…切断手段、31…プラテン(第1回転体)、31a…回転軸、31b…プラテン駆動用プーリー、31c…ベルト掛部(第1円筒部)、32…スプロケット(第2回転体)、32a…回転軸、32b…スプロケット駆動用プーリー、32t…ピン、34…押えローラ、40…トルクダイオード、41…動力伝達部、42…動力非伝達部、50…トルクリミッタ(過負荷保護部、第2円筒部)、60…エンコーダ(搬送距離測定部)、70…制御部、71…制御演算部、72…通信インタフェース(I/F)部、73…記憶部、74…入力部、75…出力部、76…バスライン、110…プリンタ本体、110a,110b…側壁部、120…カバー、130…インクリボンカセット、131…繰り出し芯部、131g…第1ガイドローラ、132…巻き取り芯部、132g…第2ガイドローラ、133…インクリボン搬送モータ、B…インクリボン、EB1…無端ベルト(第1動力伝達部)、EB2…無端ベルト(第2動力伝達部)、EB3…無端ベルト、M1…印刷用モータ(第1モータ)、M1a…回転軸、M2…切断用モータ(第2モータ)、M2a…回転軸、P…操作パネル、R…シートロール(印刷媒体)、S…印刷用シート(印刷媒体)、Ya…矢印(正方向)。