(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-11
(45)【発行日】2025-03-19
(54)【発明の名称】軌道スラブの成形型枠及び成形型枠用アタッチメント
(51)【国際特許分類】
B28B 7/16 20060101AFI20250312BHJP
E01B 37/00 20060101ALI20250312BHJP
【FI】
B28B7/16 Z
E01B37/00 C
(21)【出願番号】P 2021016243
(22)【出願日】2021-02-04
【審査請求日】2024-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】303059071
【氏名又は名称】独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構
(73)【特許権者】
【識別番号】391010183
【氏名又は名称】極東興和株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000143765
【氏名又は名称】株式会社佐藤工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100178951
【氏名又は名称】長谷川 和家
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 満範
(72)【発明者】
【氏名】中山 浩道
(72)【発明者】
【氏名】野中 泰志
【審査官】大西 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-095775(JP,A)
【文献】実開昭58-084207(JP,U)
【文献】特開2006-322228(JP,A)
【文献】特開2020-041397(JP,A)
【文献】特開2000-317926(JP,A)
【文献】特許第6799243(JP,B1)
【文献】実開平02-101705(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第101254619(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 7/00- 7/46
E01B 27/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート道床に設けられる突起と嵌合する凹部を有するスラブ版を成形するための成形型枠において、
前記成形型枠は、軌間幅方向に配置される一対の第1側枠と、敷設方向に配置される一対の第2側枠と、を備え、型組み時にこれらの側枠を組み合わせて使用する型枠であって、
前記第2側枠には
、前記凹部を成形するための凸状成形部が設けられ
、
前記凸状成形部は、前記突起の突起間隔、突起位置及び突起寸法の違いに対応して、突出範囲と突出位置と突出量とを調整可能なものであり、
さらに、前記凸状成形部は、コンクリート道床の突起の標準的な突起間隔、突起位置及び突起寸法に対応した、前記第2側枠と一体の基準凸枠と、
前記基準凸枠に取り付けて使用する板状の調整アタッチメントと、を備えたものであることを特徴とする軌道スラブの成形型枠。
【請求項2】
前記調整アタッチメントは、コンクリート道床の突起の突起間隔、突起位置及び突起寸法の測量結果に基づいて製作されるものであることを特徴とする請求項1記載の軌道スラブの成形型枠。
【請求項3】
前記調整アタッチメントは、コンクリート道床の突起の突起間隔、突起位置及び突起寸法に想定されるずれに対応して予め複数組製作されており、これらを現場の状況に合わせて適宜選択して使用するものであることを特徴とする請求項1記載の軌道スラブの成形型枠。
【請求項4】
コンクリート道床に設けられる突起と嵌合する凹部を有するスラブ版を成形するための成形型枠用のアタッチメントにおいて、
前記アタッチメントは、コンクリート道床の突起の標準的な突起間隔、突起位置及び突起寸法に対応した凸状成形部の基準凸枠の表面に取り付けて使用する所定厚さの板状の調整アタッチメントであることを特徴とする軌道スラブの成形型枠用アタッチメント。
【請求項5】
前記調整アタッチメントは、厚さを段階的に異ならせた複数種類のものが予め用意されており、コンクリート道床の突起の突起間隔、突起位置及び突起寸法のずれに応じて、対応する種類の調整アタッチメントを選択して使用するものであることを特徴とする請求項4記載の軌道スラブの成形型枠用アタッチメント。
【請求項6】
前記調整アタッチメントは、取り付ける基準凸枠表面の全部又はその一部の範囲に取り付ける複数種類のものが予め用意されており、コンクリート道床の突起の突起間隔、突起位置及び突起寸法のずれに応じて、対応する種類の調整アタッチメントを選択して使用するものであることを特徴とする請求項4又は5記載の軌道スラブの成形型枠用アタッチメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円柱形状の突起を有するコンクリート道床上に設置されるプレキャスト製のコンクリート板であるスラブ版を有する軌道スラブを成形する場合に使用される成形型枠及び成形型枠用のアタッチメントに関する。
【背景技術】
【0002】
新幹線等の軌道を敷設する場合、列車通過に伴う軌道の沈下が生じにくく、保守コストを大幅に低減することができる軌道スラブを使用したバラストレス軌道が開発され多くの現場で採用されている。軌道スラブを使用したバラストレス軌道には、円柱形状の突起を有するコンクリート道床と組み合わせて使用する軌道スラブがあり、この軌道スラブの水平方向の移動は、軌道スラブの底面摩擦力と、軌道スラブの敷設方向両端部に設けられている凹部と嵌合する、円柱形状の突起による支持力と、によって規制されている。
【0003】
軌道スラブは、例えば、敷設方向両端部に凹部を有するプレキャスト製のコンクリート板であるスラブ版と、このスラブ版とコンクリート道床との間に設けられる填充層と、を有することによって構成されている(特許文献1及び特許文献2等参照)。このような軌道スラブは、コンクリート道床に設けられる突起間隔を一定にすることで、軌道スラブのサイズも可能な限り統一化するように製作が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-41397号公報
【文献】特開2019-148120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コンクリート道床に設けられる突起の突起間隔、突起位置及び突起寸法には許容値の範囲が定められているが、実際にはその許容値を超えるようなずれが発生している現場も少なくない。このような場合、スラブ版側は切削できないことになっているため、微量なずれは、突起側の切削加工又は再構築によって対応するか、ずれに対応した端尺スラブ版を別途専用の成形型枠を作成して成形しているのが現状である。
【0006】
しかしながら、許容値を超えるずれが発生している個所ごとにその個所に合った専用の端尺スラブ版を別途の専用の成形型枠を新規に製作しなければならず、このことが施工工期の長大化と多大な材料ロスの発生とを生じさせる大きな要因になっている。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであって、コンクリート道床に設けられる突起の突起間隔や突起位置あるいは突起寸法にずれが発生している場合でも、効率的かつ経済的な軌道スラブの成形が可能な成形型枠及び成形型枠用アタッチメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を解決する本発明における軌道スラブの成形型枠は、コンクリート道床に設けられる突起と嵌合する凹部を有するスラブ版を成形するための成形型枠において、
前記成形型枠は、軌間幅方向に配置される一対の第1側枠と、敷設方向に配置される一対の第2側枠と、を備え、型組み時にこれらの側枠を組み合わせて使用する型枠であって、
前記第2側枠には、前記凹部を成形するための凸状成形部が設けられ、
前記凸状成形部は、前記突起の突起間隔、突起位置及び突起寸法の違いに対応して、突出範囲と突出位置と突出量とを調整可能なものであり、
さらに、前記凸状成形部は、コンクリート道床の突起の標準的な突起間隔、突起位置及び突起寸法に対応した、前記第2側枠と一体の基準凸枠と、
前記基準凸枠に取り付けて使用する板状の調整アタッチメントと、を備えたものであることを特徴とする。
【0009】
本発明の軌道スラブの成形型枠によれば、第2側枠に設けられる凸状成形部が、コンクリート道床の突起の突起間隔、突起位置及び突起寸法の違いに対応して、その突出範囲と突出位置と突出量とを調節可能に構成されているため、従来のように現場での突起の切削加工又は再構築を行う必要がない。また、従来のように現場に対応した専用の成形型枠を一から作成する必要もない。従って、既存の標準的な成形金枠の凸状成形部の構成のみを一部調整することで対応でき、軌道スラブの設置工事の工期の短縮と材料ロスの削減とを図って、効率的かつ経済的な軌道スラブの成形と設置が可能になる。
【0011】
このような態様の軌道スラブの成形型枠を採用すれば、標準的な既存の成形型枠をそのまま使用し、この成形型枠の基準凸枠に板状の調整アタッチメントを取り付けるだけで現場に合った端尺スラブ版を容易に成形できる。このため、端尺スラブ版を成形するために専用の成形型枠を新たに作成する手間と費用を省略して軌道スラブの設置工事の一層の工期の短縮を図ることが可能となる。
【0014】
また、本発明の軌道スラブの成形型枠において、前記調整アタッチメントは、コンクリート道床の突起の突起間隔、突起位置、及び突起寸法の測量結果に基づいて製作するものである態様も好ましい。
【0015】
このような態様の軌道スラブの成形型枠を採用すれば、現場が進行中であっても、例えば、測量結果の指示により、軌道スラブのスラブ版を工場において短時間で製作することができ、軌道スラブの円滑な設置工事が可能になる。
【0016】
また、本発明の軌道スラブの成形型枠において、前記調整アタッチメントは、コンクリート道床の突起の突起間隔、突起位置及び突起寸法に想定されるずれに対応して予め複数組製作されており、これらを現場の状況に合わせて適宜選択して使用するものであってもよい。
【0017】
このような態様の軌道スラブの成形型枠を採用すれば、軌道スラブの設置工事に先立って、予めずれに対応した複数組の端尺スラブ版を製作して用意することができる。このため、現場に合った端尺スラブ版を選んで設置すればよく、前記態様と同様、軌道スラブの円滑な設置工事が可能になる。なお、本態様は、コンクリート道床の突起の突起間隔、突起位置及び突起寸法のずれに一定の傾向が見られる場合に有効である。
【0018】
また、上記目的を解決する本発明における軌道スラブの成形型枠用アタッチメントは、コンクリート道床に設けられる突起と嵌合する凹部を有するスラブ版を成形するための成形型枠用のアタッチメントにおいて、
前記アタッチメントは、コンクリート道床の突起の標準的な突起間隔、突起位置及び突起寸法に対応した凸状成形部の基準凸枠の表面に取り付けて使用する所定厚さの板状の調整アタッチメントであることを特徴とする。
【0019】
本発明の軌道スラブの成形型枠用アタッチメントによれば、アタッチメントは、コンクリート道床の突起の標準的な突起間隔、突起位置及び、突起寸法に対応した凸状成形部の基準凸枠の表面に取り付けて使用する所定厚さの板状の調整アタッチメントによって構成されているため、既存の標準的な成形金型をそのまま使用して、本発明の成形型枠用アタッチメントを取り付けるだけで現場に合った端尺スラブ版を容易に成形することができる。従って、既存の標準的な成形金型の有効利用を図ることができ、より少ないコストで短時間に目的とする端尺スラブ版を成形できる。
【0020】
また、本発明の軌道スラブの成形型枠用アタッチメントにおいて、前記調整アタッチメントは、厚さを段階的に異らせた複数種類のものが予め用意されており、コンクリート道床の突起の突起間隔、突起位置及び突起寸法のずれに応じて、対応する種類の調整アタッチメントを選択して使用するものであってもよい。
【0021】
このような態様の軌道スラブの成形型枠用アタッチメントを採用すれば、例えば突起間隔のずれの大小によって適合する厚さの調整アタッチメントを選択して取り付けることで大まかな突出量等の調整を行い、更なる突出量の微調整は施工許容値ないし取付け時の微調整によって対応可能となる。従って、厚さを段階的に異ならせた数種類の調整アタッチメントを用意するだけで、想定されるほとんどの突起間隔のずれ等に対応することが可能になる。
【0022】
また、本発明の軌道スラブの成形型枠用アタッチメントにおいて、前記調整アタッチメントは、取り付ける基準凸枠表面の全部又はその一部の範囲に取り付ける複数種類のものが予め用意されており、コンクリート道床の突起の突起間隔、突起位置及び突起寸法のずれに応じて、対応する種類の調整アタッチメントを選択して使用するものであってもよい。
【0023】
このような態様の軌道スラブの成形型枠用アタッチメントを採用すれば、例えば突起位置や突起寸法のずれに対応して適合する位置と範囲の調整アタッチメントを選択して取り付けることで大まかな位置と範囲の調整を行い、更なる位置と範囲の微調整は施工許容値ないし取付け時の微調整によって対応可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、従来現場において行っていた突起の切削加工又は再構築と、ずれに対応した専用の成形金型の新規の作成とが不要になり、ずれに対応した端尺スラブ版の成形を比較的簡単な作業で短時間かつ低コストで行えるようになる。これにより、軌道スラブの設置工事の工期の短縮と材料ロスの削減とが図れ、効率的かつ経済的な軌道スラブの成形と設置が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図2】コンクリート道床に対する軌道スラブの設置状態を示す平面図である。
【
図3】コンクリート道床に対する軌道スラブの設置状態を示す模式的な側断面図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る軌道スラブの成形型枠の型組み状態を示す平面図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る軌道スラブの成形型枠の型ばらし状態を示す平面図である。
【
図6】調整アタッチメントの成形に使用されるマスター型と調整アタッチメントを示す平面図である。
【
図9】調整アタッチメントの種々の態様を示す平面図である。
【
図10】全面タイプの調整アタッチメントを示す正面図(a)と背面図(b)である。
【
図11】全面タイプの調整アタッチメントを示す右側面図(a)と左側面図(b)である。
【
図12】全面タイプの調整アタッチメントを示す平面図(a)と底面図(b)である。
【
図13】全面タイプの調整アタッチメントを示す斜視図である。
【
図14】全面タイプの調整アタッチメントを示す
図10(a)中のC-C断面図である。
【
図15】全面タイプの調整アタッチメントの使用状態を示す参考斜視図である。
【
図16】本発明の他の実施形態に係る軌道スラブの成形型枠を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について具体的に説明する。なお、以下の説明では最初に、
図1~
図3に基づいてスラブ軌道の構成と軌道スラブの設置状態について説明する。次に、
図4及び
図5に基づいて本発明の実施の形態に係る軌道スラブの成形型枠の基本的構成について説明する。
【0027】
次に、
図6~
図8に基づいて本発明の軌道スラブの成形型枠用アタッチメントを製作する場合に使用するマスター型の構成とこのマスター型を使用した軌道スラブの成形型枠用アタッチメントの製作の手順について説明する。続いて、
図10~
図15に示す実施の形態を例にとって、本発明の軌道スラブの成形型枠の要部である本発明の軌道スラブの成形型枠用アタッチメントの具体的構成について説明し、更に
図9に基づいて軌道スラブの成形型枠用アタッチメントの種々の態様にについて言及する。最後に、
図16を参照して上記実施の形態とは部分的構成を異にする本発明の他の実施形態に係る軌道スラブの成形型枠について簡単に説明する。
【0028】
(1)スラブ軌道の構成と軌道スラブの設置状態(
図1~
図3参照)
スラブ軌道1は、バラストや枕木を使用しない新しい軌道で、新幹線等において多く採用されている軌道である。そして、列車通過に伴う軌道の沈下が生じにくく、保守コストを大幅に低減することができることがスラブ軌道1の特徴になっている。具体的には、上面に突起3が設けられたコンクリート道床5と、レール21の敷設方向Yの両端部に凹部13、13が形成されたスラブ版9と、コンクリート道床5の上面とスラブ版9の底面との間に介在される填充層15と、所定の軌間幅Wでスラブ版9に設置される一対のレール21と、を基本的に備えることによってスラブ軌道1は構成されている。
【0029】
軌道スラブ7は、スラブ版9と填充層15とから成っており、スラブ版9は、内部に図示を省略する構造用鉄筋が配置されたプレキャスト製矩形平板状のコンクリート板である。スラブ版9の敷設方向Yの両端部の一例として、中央には、コンクリート道床5の突起3と嵌合する凹部13、13が上述したように形成されている。なお、
図3は、スラブ版9とコンクリート道床5に配置される構造用鉄筋が省略された模式的な側断面図である。
【0030】
本実施形態では、一例として直径520mm、高さ240mmの短寸円柱形状の突起3に対して樹脂を注入する樹脂厚40mmの空間25を隔てて半径300mmの平面視半円形状の凹部13が嵌合するように構成されている。なお、本実施形態では、一例として幅2220mm、長さ4900mm、厚さ190mm(トンネル内は160mmの場合がある)の矩形平板状のスラブ版9を敷設方向Yに5000mmピッチで設置している。
【0031】
填充層15は、例えば、ロングチューブ17と呼ばれる帯状の不織布製の袋にセメントアスファルトモルタル(以下CAモルタルという)19を充填することによって構成されている。CAモルタル19を充填した填充層15の厚さは50mmで、スラブ版9の厚さ190mmを加えた高さ240mmは、上述したコンクリート道床5に設けられている突起3の高さ260mmと略同じ高さになるように設定されている。
【0032】
また、本発明の軌道スラブの成形型枠31で成形するスラブ版9は、上述した寸法のものを基準とするが、実際にはコンクリート道床5に設けられる突起3の突起間隔、突起位置及び突起寸法にずれが生じ、施工許容値を超過する場合は、凹部13の大きさや形状を調整しなければならず、このように凹部13の大きさや形状を調整したスラブ版を上記基準寸法の標準のスラブ版9と区別する場合、端尺スラブ版11という。
【0033】
(2)軌道スラブの成形型枠の基本的構成(
図4及び
図5参照)
本発明の軌道スラブの成形型枠31は、コンクリート道床5に設けられる突起3と嵌合する凹部13を有するスラブ版9を成形するための成形型枠である。具体的には、軌間幅方向Xに配置される一対の第1側枠33、33と、敷設方向Yに配置される一対の第2側枠35、35と、を備えることによって軌道スラブの成形型枠31は構成されている。なお、第2側枠35は、妻枠と称される場合もある。
【0034】
本発明の軌道スラブの成形型枠31の特徴的構成として、第2側枠35には、突起3の突起間隔、突起位置及び突起寸法の違いに対応して、その突出範囲と突出位置と突出量とを調整可能な、凹部13を成形するための凸状成形部37が設けられている。
【0035】
また、本実施形態では、凸状成形部37は、コンクリート道床5の突起3の標準的な突起間隔、突起位置及び突起寸法に対応した、第2側枠35と一体の基準凸枠39と、基準凸枠39に取り付けて使用する板状の調整アタッチメント41と、を備えることによって構成されている。
【0036】
このように構成される本発明の軌道スラブの成形型枠31は、
図4及び
図5に示すようにスラブ版9の底面を形作る定盤43に対して、一対ずつ設けられる第1側枠33、33と第2側枠35、35とを、スライドレール45を図示しないスライドユニットを介して、
図4に示す型組み状態と
図5に示す型ばらし状態とを採れるようにスライド可能な状態で接続されている。
【0037】
(3)マスター型の構成と軌道スラブの成形型枠用アタッチメントの製作手順(
図6~
図8参照)
図6~
図8は、所定厚さtの板状の調整アタッチメント41を製作する場合に使用するマスター型61と、マスター型61によって製作される全面タイプの調整アタッチメント41Aを示している。全面タイプの調整アタッチメント41Aは、調整アタッチメント41の一例であり、凹部13の内面の全面に取り付けて使用するものである。
【0038】
例えば、マスター型61は、第2側枠35を利用し、第2側枠35の基準凸枠39周辺の部分を切り出したものを母材として製作される。マスター型61は、上板63、前板65、下板67、側板69から構成され、上板63と下板67の先端部には一例として45°のテーパ面64とテーパ面68とが形成されている。また、下板67の先端部はマスター型61としては不要であり、例えば突出量20mmの位置でカットされている。
【0039】
このようなマスター型61を使用して調整アタッチメント41を製作する場合には、突起3の突起間隔、突起位置及び突起寸法のずれに応じて、所定厚さtの鋼板を用意し、図示のようにマスター型61に合わせて曲げ加工を施し、所定サイズでカットする。また、調整アタッチメント41Aの円周方向左右の端面は、
図7に示すようにマスター型61のコーナ部のアールに合わせて現合にて斜めにカットする。更に、調整アタッチメント41Aの上下の端面も、
図8に示すようにマスター型61の上板63のテーパ面64と下板67のテーパ面68に合わせて45°にカットする。
【0040】
(4)軌道スラブの成形型枠用アタッチメントの具体的構成(
図10~
図15参照)
本発明の軌道スラブの成形型枠用アタッチメント51は、コンクリート道床5に設けられる突起3と嵌合する凹部13を有するスラブ版9を成形するための成形型枠31用のアタッチメントである。本実施形態では、コンクリート道床5の突起3の標準的な突起間隔、突起位置及び突起寸法に対応した凸状成形部37の基準凸枠39の表面に取り付けて使用する所定厚さtの板状の調整アタッチメント41によって軌道スラブの成形型枠用アタッチメント51が構成されている。
【0041】
また、
図10~
図15では、第2側枠35の基準凸枠39における表面全体に貼り付ける全面タイプの一例として厚さt=5mmの調整アタッチメント41Aが示されており、
図10(a)がその正面図、
図10(b)がその背面図、
図11(a)がその右側面図、
図11(b)がその左側面図、
図12(a)がその平面図、
図12(b)がその底面図、
図13がその斜視図、
図14が
図10(a)中のC-C断面図、
図15がその使用状態を示す参考斜視図になっている。
【0042】
このようにして構成される調整アタッチメント41Aは、平面視半円形状の湾曲した板状の部材で、その円周方向左右の端面と、上下の端面とが前述した所定角度で斜めにカットされている。また、調整アタッチメント41Aの厚さtが基準凸枠39の表面からの突出量になり、この突出量によって凹部13の形状を微調整してコンクリート道床5の突起3の突起間隔、突起位置及び突起寸法のずれを吸収するように構成されている。このようにして構成される調整アタッチメント41Aは、比較的重量が軽い板状の部材であり、例えば、両面テープ等の簡易な取付け手段を使用しても基準凸枠39に対して十分に取り付けることが可能である。
【0043】
また、このようにして構成される調整アタッチメント41Aは、測量結果(コンクリート道床5の突起3の突起間隔、突起位置及び突起寸法の実際のずれデータでもよい)に基づいて製作することが可能である。このようにすれば、現場が進行中であっても、例えば、測量結果の指示により、スラブ版9を工場において短時間で製作することが可能になる。また、このようにして構成される調整アタッチメント41Aは、コンクリート道床5の突起3の突起間隔、突起位置及び突起寸法に想定されるずれに対応して予め複数組製作しておくことが可能であり、これらを現場の状況に合わせて適宜選択して使用することも可能である。また、このようにすれば軌道スラブ7の設置工事に先立って、予めずれに対応した複数組の端尺スラブ版11を製作して用意しておくことが可能となる。このため、現場に合った端尺スラブ版11を選んで設置するだけでよく、前記と同様、軌道スラブ7の円滑な設置工事に寄与することができる。
【0044】
(5)軌道スラブの成形型枠用アタッチメントの種々の態様(
図9参照)
本発明の軌道スラブの成形型枠用アタッチメント51として調整アタッチメント41を使用する場合、厚さtを段階的に異ならせた複数種類の調整アタッチメント41を予め用意しておき、コンクリート道床5の突起3の突起間隔、突起位置及び突起寸法のずれに応じて、対応する種類の調整アタッチメント41を選択して使用することが可能である。本実施形態では、例えば、厚さtが3mm、5mm、10mm、15mmの4種類の調整アタッチメント41を用意した。なお、この4種類の調整アタッチメント41は、近年の敷設時のデータ等を元に設定した、あくまで一例であり、この中でも、特に、3mm、5mm、10mmの調整アタッチメント41を用いる場合が多いと想定される。また、取り付ける基準凸枠39の表面の全部又はその一部の範囲に取り付ける複数種類の調整アタッチメント41を予め用意しておき、コンクリート道床5の突起3の突起間隔、突起位置及び突起寸法のずれに応じて、対応する種類の調整アタッチメント41を選択して使用することが可能である。
【0045】
図9は、コンクリート道床5の突起3の突起間隔、突起位置及び突起寸法の想定されるずれに対応した調整アタッチメント41の種々の態様を示している。具体的には、
図9(a)では、前述した基準凸枠39表面の全面に取り付ける所定厚さtの全面タイプの調整アタッチメント41Aを示しており、
図9(b)、(c)では、敷設方向Yのずれに対応する場合に使用できる90°の範囲と120°の範囲に取り付けて使用する部分取付けタイプの調整アタッチメント41B、41Cをそれぞれ示している。
【0046】
また、
図9(d)、(e)では、軌間幅方向Xの左方のずれに対応する場合に使用できる45°の範囲と90°の範囲に取り付けて使用する部分取付けタイプの調整アタッチメント41D、41Eをそれぞれ示している。また、
図9(f)、(g)では、軌間幅方向Xの右方のずれに対応する場合に使用できる45°の範囲と90°の範囲に取り付けて使用する部分取付けタイプの調整アタッチメント41F、41Gをそれぞれ示している。更に、
図9(a)~(g)に示すこれらの調整アタッチメント41は、前述したように厚さt=3mmのもの、5mmのもの、10mmのもの、15mmのものの4種類を一例として用意しておき、使用する現場の状況に合わせて最適な厚さtのものを使用するようにする。
【0047】
このようにして構成される本発明による軌道スラブの成形型枠31及び成形型枠用アタッチメント51によれば、従来現場において行っていた突起3の切削加工又は再構築、あるいは、ずれに対応した成形型枠の新規の作成が不要になり、ずれに対応した端尺スラブ版11の成形を比較的簡単な作業で短時間かつ低コストで行うことができる。これにより、軌道スラブ7の設置工事の工期の短縮と材料ロスの削減が図れ、効率的かつ経済的な軌道スラブの成形とスラブ軌道1の敷設とが可能になる。
【0048】
[他の実施の形態]
本発明の軌道スラブの成形型枠31及び成形型枠用アタッチメント51は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。例えば、軌道スラブの成形型枠31の第2側枠35に対して設けられる凸状成形部37は、コンクリート道床5の突起3の突起間隔、突起位置及び突起寸法のずれを想定して予め製作される、基準凸枠39のない第2側枠35Aに取り付けて使用する別体の凸状アタッチメント47によって構成してもよい。
【0049】
図16は、凸状アタッチメント47の一例を示しており、凸状アタッチメント47を鋼材で構成し、コンクリート道床5の突起3の突起間隔、突起位置及び突起寸法のずれに対応して半径Rや形状の違うものを複数組用意し、ずれに対応した凸状アタッチメント47を選択して、例えば、図の後ろ側からボルト締め等によって基準凸枠39のない第2側枠35Aに対して取り付けるようにしている。この他、調整アタッチメント41や凸状アタッチメント47の材料は、鋼材に限らず必要な機械的強度が得られる場合には、樹脂材料やゴム材料等、他の材料を使用することが可能である。また、調整アタッチメント41の基準凸枠39への取付け手段は両面テープに限らず、接着剤やネジ止め等の他の取付け手段を採用することが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 スラブ軌道
3 突起
5 コンクリート道床
7 軌道スラブ
9 スラブ版
11 端尺スラブ版
13 凹部
31 (軌道スラブの)成形型枠
33 第1側枠
35 第2側枠
37 凸状成形部
39 基準凸枠
41 調整アタッチメント
47 凸状アタッチメント
51 (軌道スラブの)成形型枠用アタッチメント
61 マスター型
X 軌間幅方向
Y 敷設方向
W 軌間幅
t 厚さ
R 作用半径