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  • 特許-積層チューブ容器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-11
(45)【発行日】2025-03-19
(54)【発明の名称】積層チューブ容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 35/08 20060101AFI20250312BHJP
   B65D 1/00 20060101ALI20250312BHJP
【FI】
B65D35/08
B65D1/00 111
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021003051
(22)【出願日】2021-01-12
(65)【公開番号】P2022108166
(43)【公開日】2022-07-25
【審査請求日】2023-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000206185
【氏名又は名称】大成化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 健司
(72)【発明者】
【氏名】松下 義弘
(72)【発明者】
【氏名】鍋田 宗明
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-321896(JP,A)
【文献】特開平08-151058(JP,A)
【文献】特開平07-290560(JP,A)
【文献】特開2010-126699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 35/02-35/08
B65D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低密度ポリエチレンを含むチューブ容器本体を有し、
該チューブ容器本体の外側に、該チューブ容器本体側から、カチオン重合性光硬化型組成物から形成された酸素バリア層、および、デジタルインク層をこの順で含む、積層チューブ容器。
【請求項2】
前記カチオン重合性光硬化型組成物が、脂環式エポキシ化合物を含むカチオン重合性成分(a)と、カチオン重合開始剤(b)とを含有する組成物である、請求項1に記載の積層チューブ容器。
【請求項3】
前記チューブ容器本体が、口部および肩部からなる頭部と、前記肩部と連接した胴部とを備えるチューブ容器であって、
前記頭部と胴部とが一体成形された射出成形チューブ容器である、請求項1または2に記載の積層チューブ容器。
【請求項4】
前記チューブ容器本体の胴部の厚みが1.0mm以下である、請求項3に記載の積層チューブ容器。
【請求項5】
前記酸素バリア層の厚みが7~12μmである、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層チューブ容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層チューブ容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、リキッド状やクリーム状などの医薬品、医薬部外品および化粧品等のための容器として、口部および肩部からなる頭部と、前記肩部と連接した胴部とを備えるチューブ容器が用いられている。
【0003】
このようなチューブ容器の本体(以下、印刷層等が形成されていないチューブ容器を「チューブ容器本体」ともいう。)としては、所望形状のチューブ容器本体を容易に形成することができる等の点から、押出成形により製造されている。
一方、チューブ容器本体としては、射出成形により製造することも知られている(例えば、特許文献1)。射出成形チューブ容器本体は、所定の金型を用いて、口部および肩部からなる頭部と、前記肩部と連接した胴部とを備える成形体を形成した後、胴部の頭部側とは反対側の端をシールすることで形成される。
【0004】
前記のようなチューブ容器本体は、外観の意匠性を向上させる目的や、内容物の表示を行うため、印刷層が設けられることが多く、このような印刷層として、近年、小ロット生産が可能となり、印刷版が不要であり、多彩なデザインに対応できる等の点から、デジタル印刷により印刷層を形成することが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5941459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
リキッド状やクリーム状などの医薬品、医薬部外品および化粧品等のために用いられるチューブ容器は、内容物を押し出すように該容器をスクイズして使用されることが通常であるため、柔軟性に優れることが求められる。このため、チューブ容器本体の胴部(内容物を収容する部分)の厚みは、通常1.0mm以下程度の薄厚にすることが求められている。
【0007】
なお、前記のようなデジタル印刷に用いられるデジタルインクは、通常、極小径のヘッドを通過する必要があり、極めて低粘度の組成物である。
このような低粘度のデジタルインクを薄厚のチューブ容器本体に印刷すると、該デジタルインク中の成分(特に重合開始剤であると考えられる)が、チューブ容器本体に移行し、さらに、該成分が、薄厚のチューブ容器を通過して、チューブ容器本体の内面に移行(マイグレーション)することが分かった。
【0008】
このようなマイグレーションが起こると、チューブ容器の内容物とデジタルインク中の成分が混ざることにより、内容物が汚染されるため、内容物の性能劣化の抑制や、内容物を使用する際の安全性等の点から、前記マイグレーションを抑制することが求められる。
【0009】
前記マイグレーションを抑制する方法として、デジタルインク中の重合開始剤(光開始剤)の量を低減した低マイグレーションインクを用いることが検討されているが、該低マイグレーションインクを用いた場合であっても、前記のような薄厚のチューブ容器本体の場合、該容器本体内面へのマイグレーションを十分に抑制することができないことが分かった。
【0010】
また、前記マイグレーションを抑制する方法として、チューブ容器本体とデジタルインク層との間に、他の層を設けることも考えられるが、このような他の層が存在すると、前記のようなスクイズの際に、該他の層にクラックが生じ、このクラックにより、デジタルインク層にもクラックが生じ、結果として、該他の層およびデジタルインク層が剥がれ落ちるであろうことが一般に考えられている。
【0011】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであり、デジタルインク中の成分が、チューブ容器本体の内面に移行(マイグレーション)することが抑制された積層チューブ容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは前記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、下記構成例によれば、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の構成例は以下のとおりである。
【0013】
[1] 低密度ポリエチレンを含むチューブ容器本体を有し、
該チューブ容器本体の外側に、該チューブ容器本体側から、カチオン重合性光硬化型組成物から形成された酸素バリア層、および、デジタルインク層をこの順で含む、積層チューブ容器。
【0014】
[2] 前記カチオン重合性光硬化型組成物が、脂環式エポキシ化合物を含むカチオン重合性成分(a)と、カチオン重合開始剤(b)とを含有する組成物である、[1]に記載の積層チューブ容器。
【0015】
[3] 前記チューブ容器本体が、口部および肩部からなる頭部と、前記肩部と連接した胴部とを備えるチューブ容器であって、
前記頭部と胴部とが一体成形された射出成形チューブ容器である、[1]または[2]に記載の積層チューブ容器。
【0016】
[4] 前記チューブ容器本体の胴部の厚みが1.0mm以下である、[3]に記載の積層チューブ容器。
【0017】
[5] 前記酸素バリア層の厚みが7~12μmである、[1]~[4]のいずれかに記載の積層チューブ容器。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、デジタルインク中の成分が、チューブ容器本体の内面にマイグレーションすることが抑制された積層チューブ容器を提供することができる。
特に、本発明によれば、胴部の厚みが1.0mm以下であり、柔軟性に優れるチューブ容器本体に、デジタルインク層を形成しても、該デジタルインク中の成分がチューブ容器本体の内面にマイグレーションすることが抑制された積層チューブ容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明に係る積層チューブ容器(またはチューブ容器本体)の側面図の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
≪積層チューブ容器≫
本発明に係る積層チューブ容器(以下「本容器」ともいう。)は、低密度ポリエチレンを含むチューブ容器本体を有し、
該チューブ容器本体の外側に、該チューブ容器本体側から、カチオン重合性光硬化型組成物から形成された酸素バリア層、および、デジタルインク層をこの順で含む。
【0021】
本容器の用途は特に制限されないが、リキッド状やクリーム状などの、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品、建築用・土木用・農業用材料などを使用、保存、輸送等する用途などが挙げられ、より好適には、リキッドファンデーション、クリーム、洗顔フォームなどを使用、保存、輸送等する用途が挙げられる。
【0022】
<チューブ容器本体>
前記チューブ容器本体は、低密度ポリエチレンを含めば特に制限されない。
前記低密度ポリエチレンとしては、バイオマス由来の樹脂であってもよく、化石燃料由来の樹脂であってもよいが、射出成形可能な樹脂であることが好ましい。
前記チューブ容器本体に含まれる低密度ポリエチレンは、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0023】
前記チューブ容器本体は、必要に応じて、熱可塑性樹脂、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐光安定剤、耐候安定剤などの安定剤、紫外線散乱剤、スリップ防止剤、防曇剤、着色剤、分散剤、充填剤、帯電防止剤、滑剤、柔軟剤、可塑剤、加工助剤等の成分を、本発明の効果を損なわない範囲で含んでいてもよい。
前記チューブ容器本体は、これらの他の成分を、それぞれ1種単独で含んでもよく、2種以上を含んでもよい。
【0024】
前記チューブ容器本体としては、特に制限されないが、所望形状の容器本体を容易に形成することができる等の点から、射出成形により形成された射出成形チューブ容器本体であることが好ましい。
前記チューブ容器本体は、通常、図1に示すように、肩部3および口部1からなる頭部と、該肩部3と連接した胴部2とを備える。
【0025】
前記チューブ容器本体の胴部の厚さは、所望の用途により適宜選択すればよいが、内容物を押し出すように本容器をスクイズして使用する際に、スクイズを容易に行うことができ、柔軟性に優れる本容器を容易に得ることができる等の点から、好ましくは1.0mm以下、より好ましくは0.5~1.0mm、さらに好ましくは0.5~0.9mm、特に好ましくは0.5~0.8mmである。
低密度ポリエチレンを含むチューブ容器本体は、胴部がこのような厚さの射出成形チューブ容器本体とすることが容易であり、また、胴部がこのような厚さであっても、射出成形性、柔軟性および耐ストレスクラッキング性に優れる射出成形チューブ容器本体となるため好ましい。
【0026】
前記チューブ容器本体の胴部の長さも、所望の用途により適宜選択すればよいが、好ましくは10cm以上、より好ましくは11~20cm、特に好ましくは14~16cmである。
低密度ポリエチレンを含むチューブ容器本体は、このような長さの射出成形チューブ容器本体とすることが容易であり、また、胴部がこのような長さであっても、射出成形性、柔軟性および耐ストレスクラッキング性に優れる射出成形チューブ容器本体となるため好ましい。
【0027】
〔チューブ容器本体の製造方法〕
前記チューブ容器本体は、該チューブ容器本体を構成する各成分を射出成形することで製造することができる。
なお、複数種類の成分を用いる場合には、これら配合成分を混合し、組成物を形成した後、または、組成物を形成しながら、該組成物を射出成形することが好ましい。
【0028】
前記組成物を形成する方法としては特に制限されないが、前記各成分を従来公知の装置、具体的には、単軸押出機、2軸押出機、ニーダー、ミキサー、2本ロールミル等を用いて溶融混練する方法が好ましい。
【0029】
チューブ容器本体の原料の、JIS K 7210(190℃、21.18N荷重)に基づいて測定したMFRは、成形性、特に射出成形性に優れ、耐衝撃性などの機械的強度に優れる射出成形チューブ容器本体が得られる等の点から、好ましくは15~80g/10分である。
【0030】
前記射出成形の条件としては、射出速度が、好ましくは60mm/s以下、より好ましくは50mm/s以下であり、射出温度(シリンダ温度)が、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下、特に好ましくは230℃以下の条件が挙げられる。
このような条件下で、前記形状のチューブ容器本体を射出成形できるということは、実用に供する程度の射出成形性を有するといえる。なお、チューブ容器本体の原料のMFRが1.0g/10分以上であれば、このような条件下で、前記形状のチューブ容器本体を射出成形できる。
低密度ポリエチレンを含むチューブ容器本体は、このような射出成形条件下で製造しても、前記形状を有し、しかも、耐ストレスクラッキング性に優れる。
【0031】
前記チューブ容器本体は、前記頭部と胴部とが一体成形された射出成形チューブ容器本体であることが好ましい。
一体成形することによって、前記頭部と胴部とを組み合わせる工程を省略することができ、複雑で煩雑な工程が不要で、コストを低減することができるとともに、異物が付着したり、前記頭部と胴部との溶着強度が低下するなどの品質低下が起こり難いため好ましい。
【0032】
このような一体成形された射出成形チューブ容器本体は、具体的には以下の方法で製造することができる。
具体的には、口部、肩部および胴部を一体に形成可能な射出成形金型を用い、例えば、前記チューブ容器本体を構成する各成分または前記組成物を射出することで、一体成形された射出成形チューブ容器本体を得ることができる。
【0033】
前記射出の際には、少なくとも2箇所以上の湯口を通じて、前記チューブ容器本体を構成する各成分または前記組成物をキャビティに射出することが好ましい。2箇所以上の湯口を用いることで、均一な圧力で射出することができるため、所望形状のチューブ容器本体を容易に得ることができる。
【0034】
以上のようにして得られた前記頭部と胴部との一体成形体は、胴部の頭部側とは反対側の端を溶着することにより、チューブ容器本体とすることができる。
溶着方法としては、ホットエアー、超音波溶着、熱シール等の従来公知の溶着方法を制限なく採用することができる。
【0035】
<酸素バリア層>
前記酸素バリア層は、カチオン重合性光硬化型組成物から形成された層であれば特に制限されない。
このようなカチオン重合性光硬化型組成物から形成された酸素バリア層は、光照射による硬化後においても、経時において硬化反応が進むと考えられる。従って、本容器において、チューブ容器本体と、デジタルインク層との間に、このような酸素バリア層を設けることで、デジタルインク層から酸素バリア層への重合開始剤等のデジタルインク中の成分のマイグレーションが起こったとしても、該成分が、酸素バリア層での硬化反応に使用されることで、チューブ容器本体の内面へのデジタルインク中の成分のマイグレーションを十分に抑制できると考えられる。
【0036】
酸素バリア層は、通常、本容器の胴部上に形成される。この場合、酸素バリア層は、胴部の全面に形成してもよく、胴部の一部上に形成してもよい。
本容器に含まれる酸素バリア層は、2層以上であってもよいが、通常は1層である。
【0037】
前記酸素バリア層は、酸素バリア性、チューブ容器本体との密着性に優れ、クラックが生じ難い等の点から、脂環式エポキシ化合物を含むカチオン重合性成分(a)と、カチオン重合開始剤(b)とを含有するカチオン重合性光硬化型組成物を光硬化した層であることが好ましい。
【0038】
〔カチオン重合性成分(a)〕
前記カチオン重合性成分(a)は、脂環式エポキシ化合物(以下「化合物(a1)」ともいう。)を含む。該成分(a)は、化合物(a1)のみからなる成分であってもよく、脂肪族エポキシ樹脂(a2)等のその他の成分を含んでいてもよい。
【0039】
[脂環式エポキシ化合物]
前記化合物(a1)としては、例えば、少なくとも1個の脂肪族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル、シクロヘキセンやシクロペンテン環含有化合物を酸化剤でエポキシ化することによって得られるシクロヘキセンオキサイドやシクロペンテンオキサイド含有化合物が挙げられる。
前記化合物(a1)の具体例としては、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-1-メチルシクロヘキシル-3,4-エポキシ-1-メチルヘキサンカルボキシレート、6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-3-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタジオキサン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルカルボキシレート、メチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ-2-エチルヘキシル、1-エポキシエチル-3,4-エポキシシクロヘキサン、1,2-エポキシ-2-2エポキシエチルシクロヘキサン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレートが挙げられる。
成分(a)に含まれる化合物(a1)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0040】
前記化合物(a1)として好適に使用できる市販品としては、セロキサイド2021、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2083、セロキサイド2085、セロキサイド2000、セロキサイド3000、サイクロマーA200、サイクロマーM100、サイクロマーM101、エポリードGT-301、エポリードGT-302、エポリード401、エポリード403、ETHB、エポリードHD300(以上、(株)ダイセル製);KRM-2110、KRM-2199(以上、(株)ADEKA製);等が挙げられる。
【0041】
前記化合物(a1)は、シクロヘキセンオキシド構造を有するエポキシ化合物であることが硬化性(硬化速度)の点で好ましい。
【0042】
前記化合物(a1)の含有量は、酸素バリア性、チューブ容器本体との密着性に優れ、クラックが生じ難い酸素バリア層を容易に得ることができる等の点から、前記成分(a)100質量%に対し、好ましくは97~100質量%、より好ましくは98~99質量%である。
【0043】
[脂肪族エポキシ化合物(a2)]
前記成分(a)は、脂肪族エポキシ化合物(a2)を含んでいてもよい。前記化合物(a1)と該化合物(a2)とを併用することで、得られる組成物を低粘度にすることが可能となり、塗工性に優れるカチオン重合性光硬化型組成物を容易に得ることができる。
【0044】
前記化合物(a2)としては、例えば、脂肪族多価アルコールまたはそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル;脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル;グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートのホモポリマー;グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートとその他のビニルモノマーとのコポリマー;が挙げられる。
前記化合物(a2)の具体例としては、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ソルビトールのテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテルなどの多価アルコールのグリシジルエーテル;プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル;脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル、フェノール、クレゾール、ブチルフェノール、これらにアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル;高級脂肪酸のグリシジルエステル;エポキシ化大豆油;エポキシステアリン酸オクチル;エポキシステアリン酸ブチル;エポキシ化ポリブタジエン;が挙げられる。
成分(a)が化合物(a2)を含む場合、該含まれる化合物(a2)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0045】
前記化合物(a2)として好適に使用できる市販品としては、ED-505、ED-506(以上、(株)ADEKA製);エポライトM-1230、エポライトEHDG-L、エポライト40E、エポライト100E、エポライト200E、エポライト400E、エポライト70P、エポライト200P、エポライト400P、エポライト1500NP、エポライト1600、エポライト80MF、エポライト100MF、エポライト4000、エポライトFR-1500(以上、共栄社化学(株)製);サントートST0000、YD-716、YH-300、PG-202、PG-207、YD-172、YDPN638(以上、日鉄ケミカル&マテリアル(株)製);デナコールEX321、デナコールEX313、デナコール314、デナコールEX-411、EM-150(以上、ナガセケムテックス(株)製);EPPN-201、EOCN-1020、EPPN-501H(以上、日本化薬(株)製);EHPE-3150、EHPE-3150CE(以上、ダイセル(株)製);等が挙げられる。
【0046】
[他の化合物]
前記成分(a)としては、前記化合物(a1)および(a2)の他に、光照射により高分子化または架橋反応を起こす他の化合物を含んでいてもよい。
このような他の化合物としては、例えば、少なくとも1個の芳香族環を有する多価フェノール(例:ビスフェノールA、ビスフェノールF)またはそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテルなどの芳香族エポキシ化合物;アロンオキセタンOXT-101、OXT-121、OXT-221、OXT-212、OXT-211(以上、東亞合成(株)製)、エタナコールEHO、OXBP、OXTP、OXMA(以上、宇部興産(株)製)などのオキセタン化合物;テトラヒドロフラン、2,3-ジメチルテトラヒドロフランなどのオキソラン化合物;トリオキサン、1,3-ジオキソラン、1,3,6-トリオキサンシクロオクタンなどの環状アセタール化合物;β-プロピオラクトン、ε-カプロラクトンなどの環状ラクトン化合物;エチレンスルフィド、チオエピクロルヒドリンなどのチイラン化合物;1,3-プロピンスルフィド、3,3-ジメチルチエタンなどのチエタン化合物、テトラヒドロチオフェン誘導体などの環状チオエーテル化合物;エチレングリコールジビニルエーテル、アルキルビニルエーテル、2-クロロエチルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、プロピレングリコールのプロペニルエーテルなどのビニルエーテル化合物;エポキシ化合物とラクトンとの反応によって得られるスピロオルトエステル化合物;スチレン、ビニルシクロヘキセン、イソブチレン、ポリブタジエンなどのエチレン性不飽和化合物およびその誘導体;が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
これらの中では、入手が容易であり、取り扱いに便利な芳香族エポキシ化合物およびオキセタン化合物が好ましい。
【0047】
〔カチオン重合開始剤(b)〕
前記重合開始剤(b)としては、光照射により活性化することが可能な化合物であれば特に制限されないが、紫外線の照射によってルイス酸を放出するオニウム塩である複塩またはその誘導体が好ましい。
カチオン重合性光硬化型組成物に含まれる重合開始剤(b)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0048】
前記重合開始剤(b)の具体例としては、式[A]m+[B]m-で表される陽イオンと陰イオンとの塩が挙げられる。
【0049】
前記陽イオン[A]m+はオニウムであることが好ましく、その構造は、例えば、式[(R20aQ]m+で表すことができる。
ここで、R20は炭素数が1~60であり、炭素原子以外の原子をいくつ含んでいても構わない有機基である。aは1~5の整数である。a個のR20は、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよく、少なくとも1つは芳香環を有する有機基であることが好ましい。Qは、S,N,Se,Te,P,As,Sb,Bi,O,I,Br,Cl,F,N=Nからなる群より選ばれる原子または原子団である。また、陽イオン[A]m+中のQの原子価をqとしたとき、m=a-qとなる(但し、N=Nは原子価0として扱う)。
【0050】
前記陰イオン[B]m-はハロゲン化物錯体であることが好ましく、その構造は、例えば、式[LXbm-で表すことができる。
ここで、Lはハロゲン化物錯体の中心原子である金属または半金属(Metalloid)であり、具体的には、B,P,As,Sb,Fe,Sn,Bi,Al,Ca,In,Ti,Zn,Sc,V,Cr,Mn,Co等である。Xはハロゲン原子である。bは3~7の整数である。また、陰イオン[B]m-中のLの原子価をpとしたとき、m=b-pとなる。
【0051】
前記陰イオン[LXbm-の具体例としては、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(BF4-、テトラフルオロボレート(BF4-、ヘキサフルオロホスフェート(PF6-、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF6-、ヘキサフルオロアルセネート(AsF6-、ヘキサクロロアンチモネート(SbCl6-が挙げられる。
【0052】
また、前記陰イオン[B]m-の他の好適例としては、式[LXb-1(OH)]m-で表されるイオンが挙げられる。L,X,bは前記と同様である。
【0053】
前記陰イオン[B]m-のその他の例としては、過塩素酸イオン(ClO4-等の無機イオン;フルオロスルホン酸イオン(FSO3-、トルエンスルホン酸イオン、トリニトロベンゼンスルホン酸イオン、カンファースルホン酸イオン、ノナフルオロブタンスルホン酸イオン、ヘキサデカフルオロオクタンスルホン酸イオン等のスルホン酸イオン;テトラアリールホウ酸イオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン等のホウ酸イオン;メタンカルボン酸イオン、エタンカルボン酸イオン、プロパンカルボン酸イオン、ブタンカルボン酸イオン、オクタンカルボン酸イオン、トリフルオロメタンカルボン酸イオン、ベンゼンカルボン酸イオン、p-トルエンカルボン酸イオン等のカルボン酸イオン;トリフルオロメチル亜硫酸イオン(CF3SO3-;メチル硫酸イオン(CH3OSO3-;ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン;トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドイオン;が挙げられる。
【0054】
前記重合開始剤(b)としては、下記の(イ)~(ハ)の芳香族オニウム塩を使用することが特に好ましい。これらの中から、その1種を単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0055】
(イ)フェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、4-メトキシフェニルジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-メチルフェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート等のアリールジアゾニウム塩
【0056】
(ロ)ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジ(4-メチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、トリルクミルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等のジアリールヨードニウム塩
【0057】
(ハ)下記群Iまたは群IIで表されるスルホニウムカチオンと、ヘキサフルオロアンチモンイオンまたはテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオン等とからなるスルホニウム塩
【0058】
【化1】
【0059】
【化2】
【0060】
前記重合開始剤(b)のその他の好適例としては、(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)〔(1,2,3,4,5,6-η)-(1-メチルエチル)ベンゼン〕-アイアン-ヘキサフルオロホスフェート等の鉄-アレーン錯体、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム、トリス(エチルアセトナトアセタト)アルミニウム、トリス(サリチルアルデヒダト)アルミニウム等のアルミニウム錯体とトリフェニルシラノール等のシラノール類との混合物が挙げられる。
【0061】
前記重合開始剤(b)としては、これらの中でも、実用面と光感度の観点から、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、鉄-アレーン錯体を用いることが好ましく、下記式(V)で表される芳香族スルホニウム塩が、感度の点からさらに好ましい。
【0062】
【化3】
(R101~R110はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基または炭素数2~10のエステル基を表し、R111~R114はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1~10のアルキル基を表し、R115は、下記(α)~(γ)より選択されるいずれかの置換基を表し、Anq-はq価の陰イオンを表し、pは電荷を中性にする係数を表す。)
【0063】
【化4】
(R21~R30およびR45~R49はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10の有機基を表し、R31~R34およびR36~R44はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1~10の有機基を表す。また、*は、*で隣接する基と結合していることを表す。)
【0064】
21~R34およびR36~R49で表されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0065】
21~R34およびR36~R49で表される炭素数1~10の有機基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s-ブチル、t-ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、t-アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、エチルオクチル、2-メトキシエチル、3-メトキシプロピル、4-メトキシブチル、2-ブトキシエチル、メトキシエトキシエチル、メトキシエトキシエトキシエチル、3-メトキシブチル、2-メチルチオエチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、ブロモメチル、ジブロモメチル、トリブロモメチル、ジフルオロエチル、トリクロロエチル、ジクロロジフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、ノナフルオロブチル、デカフルオロペンチル、トリデカフルオロヘキシル、ペンタデカフルオロヘプチル、ヘプタデカフルオロオクチル、メトキシメチル、1,2-エポキシエチル、メトキシエトキシメチル、メチルチオメチル、エトキシエチル、ブトキシメチル、t-ブチルチオメチル、4-ペンテニルオキシメチル、トリクロロエトキシメチル、ビス(2-クロロエトキシ)メチル、メトキシシクロヘキシル、1-(2-クロロエトキシ)エチル、1-メチル-1-メトキシエチル、エチルジチオエチル、トリメチルシリルエチル、t-ブチルジメチルシリルオキシメチル、2-(トリメチルシリル)エトキシメチル、t-ブトキシカルボニルメチル、エチルオキシカルボニルメチル、エチルカルボニルメチル、t-ブトキシカルボニルメチル、アクリロイルオキシエチル、メタクリロイルオキシエチル、2-メチル-2-アダマンチルオキシカルボニルメチル、アセチルエチル、2-メトキシ-1-プロペニル、ヒドロキシメチル、2-ヒドロキシエチル、1-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシプロピル、3-ヒドロキシプロピル、3-ヒドロキシブチル、4-ヒドロキシブチル、1,2-ジヒドロキシエチル、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、s-ブチルオキシ、t-ブチルオキシ、イソブチルオキシ、ペンチルオキシ、イソアミルオキシ、t-アミルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、シクロヘキシルメチルオキシ、テトラヒドロフラニルオキシ、テトラヒドロピラニルオキシ、2-メトキシエチルオキシ、3-メトキシプロピルオキシ、4-メトキシブチルオキシ、2-ブトキシエチルオキシ、メトキシエトキシエチルオキシ、メトキシエトキシエトキシエチルオキシ、3-メトキシブチルオキシ、2-メチルチオエチルオキシ、トリフルオロメチルオキシ、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、フェノキシカルボニル、アセトキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、クロロアセチルオキシ、ジクロロアセチルオキシ、トリクロロアセチルオキシ、トリフルオロアセチルオキシ、t-ブチルカルボニルオキシ、メトキシアセチルオキシ、ベンゾイルオキシ等が挙げられる。
【0066】
前記重合開始剤(b)として好適に使用できる市販品としては、サイラキュアUVI-6970、サイラキュアUVI-6974、サイラキュアUVI-6976、サイラキュアUVI-6990、サイラキュアUVI-6992、サイラキュアUVI-950(以上、米国ユニオンカーバイド社製);イルガキュア250、イルガキュア261、イルガキュア270、イルガキュアPAG103、イルガキュアPAG121、イルガキュアPAG203、イルガキュアPAG290、イルガキュアCGI725、イルガキュアCGI1380、イルガキュアCGI1907およびイルガキュアGSID26-1(以上、BASF社製);SP-150、SP-151、SP-170、SP-171、SP-172(以上、ADEKA(株)製);DAICATII(ダイセル(株)製);UVAC1591(ダイセル・オルネクス(株)製);CI-2481、CI-2734、CI-2823、CI-2758(以上、日本曹達(株)製);FFC509(3M社製);サンエイドSI-45L、サンエイドSI-60L、サンエイドSI-80L、サンエイドSI-100L、サンエイドSI-110L、サンエイドSI-150LおよびサンエイドSI-180L(以上、三新化学(株)製);BBI-102、BBI-103、BBI-105、BBI-106、BBI-109、BBI-110、BBI-201、BBI、301、BI-105、DPI-105、DPI-106、DPI-109、DPI-201、DTS-102、DTS-103、DTS-105、NDS-103、NDS-105、NDS-155、NDS-159、NDS-165、TPS-102、TPS-103、TPS-105、TPS-106、TPS-109、TPS-1000、MDS-103、MDS-105、MDS-109、MDS-205、MPI-103、MPI-105、MPI-106、MPI-109、DS-100、DS-101、MBZ-101、MBZ-201、MBZ-301、NAI-100、NAI-101、NAI-105、NAI-106、NAI-109、NAI-1002、NAI-1003、NAI-1004、NB-101、NB-201、NDI-101、NDI-105、NDI-106、NDI-109、PAI01、PAI-101、PAI-106、PAI-1001、PI-105、PI-106、PI-109、PYR-100、SI-101、SI-105、SI-106およびSI-109(以上、みどり化学(株)製);カヤキュアーPCI-204、カヤキュアーPCI-205、カヤキュアーPCI-615、カヤキュアーPCI-625、Kayarad220、Kayarad620、PCI-061T、PCI-062T、PCI-020T、PCI-022T(以上、日本化薬(株)製);等が挙げられる。
【0067】
前記重合開始剤(b)の含有量は、得られるカチオン重合性光硬化型組成物を十分に硬化させることができ、強度に優れる酸素バリア層を容易に得ることができる等の点から、カチオン重合性光硬化型組成物100質量%に対し、好ましくは0.1~10質量%である。
【0068】
〔添加剤〕
前記カチオン重合性光硬化型組成物には、本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて、フェノール系、硫黄系、リン系の酸化防止剤;ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾエート系の紫外線吸収剤;カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤等の帯電防止剤;ハロゲン系化合物、リン酸エステル系化合物、リン酸アミド系化合物、メラミン系化合物、フッ素樹脂または金属酸化物、(ポリ)リン酸メラミン、(ポリ)リン酸ピペラジン等の難燃剤;炭化水素系、脂肪酸系、脂肪族アルコール系、脂肪族エステル系、脂肪族アマイド系または金属石けん系の滑剤;顔料、カーボンブラック等の着色剤;シリカ(フュームドシリカ、微粒子シリカ等を含む)、珪石、珪藻土類、クレー、カオリン、シリカゲル、珪酸カルシウム、セリサイト、カオリナイト、フリント、長石粉、蛭石、アタパルジャイト、タルク、マイカ、ミネソタイト、パイロフィライト等の珪酸系無機添加剤;ガラス繊維、炭酸カルシウム等の充填剤;造核剤、結晶促進剤等の結晶化剤;シランカップリング剤;可撓性ポリマー等のゴム弾性付与剤;キレート化剤;増感剤;他のモノマー;消泡剤;増粘剤;レベリング剤;可塑剤;重合禁止剤;静電防止剤;流動調整剤;カップリング剤;接着促進剤;防腐・防かび剤;pH調整剤;等の各種添加剤を添加してもよい。
これら各種添加剤はそれぞれ独立に、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
これら各種添加剤の合計含有量は、カチオン重合性光硬化型組成物100質量%に対し、好ましくは50質量%以下である。
【0069】
〔カチオン重合性光硬化型組成物の調製方法〕
前記カチオン重合性光硬化型組成物は、前記各成分を混合することにより製造することができる。混合方法は特に制限されず、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、3本ロール等の混合機を用いて混合する方法が挙げられる。
【0070】
〔酸素バリア層〕
前記酸素バリア層の厚みは、デジタルインク層からのマイグレーションをより抑制することができ、酸素バリア層、さらにはデジタルインク層に生じ得るクラックをより抑制することができる等の点から、好ましくは7~12μm、より好ましくは8~11μmである。
【0071】
前記酸素バリア層は、カチオン重合性光硬化型組成物を、チューブ容器本体上に塗布し、硬化することによって形成することができる。チューブ容器本体上への塗布は、例えば、ロールコーター、カーテンコーター、各種の印刷、浸漬等の公知の手段で行うことができる。
また、一旦、支持基体上にカチオン重合性光硬化型組成物を塗布してフィルムを形成した後、該フィルムをチューブ容器本体上に転写してもよい。
【0072】
なお、前記チューブ容器本体に、酸素バリア層を形成する前に、チューブ容器本体を、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の処理をしておいてもよい。
【0073】
前記カチオン重合性光硬化型組成物は、光、好ましくは、紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより、通常は0.1秒~数分後に、指触乾燥状態または溶媒不溶性の状態に硬化することができる。
前記光照射の際には、超高、高、中、低圧水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、蛍光灯、タングステンランプ、エキシマランプ、殺菌灯、エキシマレーザー、窒素レーザー、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザー、ヘリウムネオンレーザー、クリプトンイオンレーザー、各種半導体レーザー、YAGレーザー、発光ダイオード、CRT光源等から得られる2000~7000Åの波長を有する電磁波エネルギーや電子線、X線、放射線等の高エネルギー線を利用することが好ましい。
【0074】
前記光照射の時間は、光の強度、形成する酸素バリア層の厚みや用いる組成物にもよるが、通常は0.1秒~10秒程度である。
なお、カチオン重合を促進するために、必要により、加熱してもよい。
【0075】
<デジタルインク層>
前記デジタルインク層としては、具体的には、インクをデジタル印刷することで形成された層が挙げられる。
【0076】
デジタルインク層は、前記酸素バリア層上に形成される。この場合、デジタルインク層は、該酸素バリア層の全面に形成してもよく、酸素バリア層の一部上に形成してもよい。
本容器に含まれるデジタルインク層は、2層以上であってもよいが、通常は1層である。
【0077】
前記デジタルインク層の厚みは、クラックが生じ難いデジタルインク層を容易に得ることができる等の点から、好ましくは2~16μm、より好ましくは3~6μmである。
【0078】
前記デジタルインク層を形成する際に用いられるインクとしては特に制限されず、従来公知のインクを用いることができるが、本発明の効果がより発揮される等の点から、粘度の低い溶剤系のインクが好ましい。
前記インクには、通常、光などにより重合する重合性化合物、重合開始剤、着色剤(例:染料、顔料)、溶媒が含まれ、必要により、水や、前記酸素バリア層に記載の添加剤等を含んでいてもよい。
【0079】
なお、前記インクは、重合開始剤の量が調整されていないスタンダードタイプのインクであっても、重合開始剤の量が低減された低マイグレーションタイプのインクであってもよいが、チューブ容器本体の内面へのマイグレーション量を考慮すると、後者が好ましい。
低マイグレーションタイプのインクとしては、例えば、該インク中の重合開始剤の含有量が5質量%以下であるインクが挙げられる。
【実施例
【0080】
以下、本発明について実施例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0081】
[実施例1]
低密度ポリエチレン(射出成形用、(株)プライムポリマー製)を射出成形機に投入し、図1に示すような口部、肩部および胴部を一体に形成可能な射出成形金型を用い、200℃で射出成形し、胴部の頭部側とは反対側の端を350℃で溶着することにより前記頭部と胴部とが一体成形された、図1に示す射出成形チューブ容器本体を得た。
なお、得られた射出成形チューブ容器本体の胴部の厚さは0.7mmであり、胴部の長さは14.5cmであった。
【0082】
得られた射出成形チューブ容器本体の胴部に、得られる酸素バリア層の膜厚が8μmとなるように、ロールコーターを用いて、カチオン重合性紫外線硬化型組成物(PPG4511-801/A(ピーピージー・ジャパン(株)製、脂環式エポキシ化合物およびカチオン重合開始剤を含む)を塗装した。その後、該組成物の塗布面を、UV露光機を用いて、積算光量が500mJ/cm2(強度:600mW/cm2)となるように紫外線を照射することで、前記射出成形チューブ容器本体上に、酸素バリア層を形成した。
【0083】
次いで、得られた酸素バリア層の上に、黒色デジタルインク(TRITRON社製、低マイグレーションタイプ)を、得られるデジタルインク層の膜厚が5μmとなるように、デジタル印刷機を用いてデジタル印刷することで、前記酸素バリア層上に、デジタルインク層を形成し、積層チューブ容器を作製した。
【0084】
[比較例1]
実施例1と同様にして得られた射出成形チューブ容器本体上に、黒色デジタルインク(TRITRON社製、スタンダードタイプ)を、得られるデジタルインク層の膜厚が5μmとなるように、デジタル印刷機を用いてデジタル印刷することで、前記射出成形チューブ容器本体上に、デジタルインク層を形成し、積層チューブ容器を作製した。
【0085】
[比較例2]
実施例1と同様にして得られた射出成形チューブ容器本体上に、実施例1で用いた黒色デジタルインクを、得られるデジタルインク層の膜厚が5μmとなるように、デジタル印刷機を用いてデジタル印刷することで、前記射出成形チューブ容器本体上に、デジタルインク層を形成し、積層チューブ容器を作製した。
【0086】
[比較例3]
実施例1と同様にして得られた射出成形チューブ容器本体上に、黒色デジタルインク(AGFA社製、低マイグレーションタイプ)を、得られるデジタルインク層の膜厚が5μmとなるように、デジタル印刷機を用いてデジタル印刷することで、前記射出成形チューブ容器本体上に、デジタルインク層を形成し、積層チューブ容器を作製した。
【0087】
<マイグレーション試験>
実施例1および比較例1~3で得られた積層チューブ容器を用い、該チューブ容器の内面(デジタルインク層から最も遠い層の表面)にマイグレーションした成分を、該マイグレーションを測定する専門機関であるsqts(swiss quality testing services)にて測定した。結果を表1に示す。
具体的には、マイグレーションに関する規格である、Swiss Regulation on Food Contact Materials SR 817.023.21 of 01.05.2017、Commission Regulation (EU) No 10/2011 of 14.01.2011、および、EN 1186 Materials and articles in contact with foodstuffs - Plastics, May 2002に準拠して、実施例1および比較例1~3で得られた積層チューブ容器の内面に、95%のエタノールを60℃で10日間暴露し、マイグレーション量(主に、該エタノール中に含まれる、前記デジタルインク層を形成する際に用いた重合開始剤の量であると考えられる)[mg/dm2およびmg/kg food]を測定した。なお、6dm2当たりのマイグレーション量(mg/dm2)が、食物1kg当たりに対するマイグレーション量(mg/kg food)に相当する。
EUでは、マイグレーション量は、10mg/dm2以下であること、また、60mg/kg food以下であることが求められている。
【0088】
【表1】
【0089】
黒色のデジタルインクは、その色のため、硬化しにくく、得られるデジタルインク層中に、最も重合開始剤が残存しやすいと考えられるが、本発明によれば、このような黒色のデジタルインクを用いた場合であっても、十分にマイグレーションを抑制することができた。
なお、実施例1で得られた積層チューブ容器は、内容物を押し出すように押しつぶした際であっても、クラックが生じなかった。
【符号の説明】
【0090】
1:口部
2:胴部
3:肩部
図1