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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-11
(45)【発行日】2025-03-19
(54)【発明の名称】台車
(51)【国際特許分類】
   B62B 3/00 20060101AFI20250312BHJP
   B60B 33/00 20060101ALI20250312BHJP
【FI】
B62B3/00 Z
B60B33/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021045384
(22)【出願日】2021-03-19
(65)【公開番号】P2022144393
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2024-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000010054
【氏名又は名称】岐阜プラスチック工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河合 陽
(72)【発明者】
【氏名】柴垣 和浩
【審査官】山▲崎▼ 歩美
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第10881040(US,B1)
【文献】実開平06-042448(JP,U)
【文献】実開平04-135802(JP,U)
【文献】特開2007-245794(JP,A)
【文献】特開2006-51861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 3/00
B60B 33/00
B65D 85/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製の台と、
導電性を有し、前記台を支持するように前記台の下面に取り付けられた四つのキャスターと、
導電性を有し、前記キャスターを前記台に固定するねじと、
導電性を有し、前記ねじを介して前記キャスターに電気的に接続され、前記台上に露出した導電性部材とを備え、
前記台は、台板部と、前記台板部の外周縁部から下方に突出するように前記台板部と一体に形成された環状の外周リブと、前記外周リブの内側に位置し、前記台板部から下方に突出するように前記台板部と一体に形成された格子状の補強リブと、を有し、
前記キャスターは、車輪と、フレームと、金属製の取付座と、を有し、
前記台の前記下面には、前記取付座を固定するための凹部が設けられており、
前記台板部において平面視で前記取付座が位置する範囲内に、前記ねじを貫通させるための貫通孔が形成されている、
台車。
【請求項2】
合成樹脂製の台と、
導電性を有し前記台を支持するように前記台の下面に取り付けられた四つのキャスターと、
導電性を有し、前記台上に露出した導電性部材と、
前記キャスターと前記導電性部材とを電気的に接続する接続部材とを備え、
前記台は、台板部と、前記台板部の外周縁部から下方に突出するように前記台板部と一体に形成された環状の外周リブと、前記外周リブの内側に位置し、前記台板部から下方に突出するように前記台板部と一体に形成された格子状の補強リブと、を有し、
前記キャスターは、車輪と、フレームと、金属製の取付座と、を有し、
前記台の前記下面には、前記取付座を固定するための掛止部を有する凹部が、設けられており、
前記台板部において平面視で前記取付座が位置する範囲内に、前記接続部材を収容するための貫通孔が形成されている、
台車。
【請求項3】
合成樹脂製の台と、
導電性を有し、前記台を支持するように前記台の下面に取り付けられた四つのキャスターと、
前記台と一体成形され、導電性を有し、前記キャスターに電気的に接続され、前記台上に露出した導電性部材とを備え、
前記台は、台板部と、前記台板部の外周縁部から下方に突出するように前記台板部と一体に形成された環状の外周リブと、前記外周リブの内側に位置し、前記台板部から下方に突出するように前記台板部と一体に形成された格子状の補強リブと、を有し、
前記キャスターは、車輪と、フレームと、金属製の取付座と、を有し、
前記台の前記下面には、前記取付座を固定するための凹部が設けられており、
前記導電性部材は、二色成形により前記台と一体に成形されている、
台車。
【請求項4】
前記ねじの頭部の上面は、前記台板部の上面と面一、又は前記台板部の前記上面から突出している、
請求項1の台車。
【請求項5】
前記凹部と前記取付座の間に、楔が挿入されている、
請求項2の台車。
【請求項6】
前記導電性部材の上端部は、前記台板部の上面よりも上方に突出している、
請求項3の台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、台車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、静電気により損傷を受けやすい装置(例えば、マイクロチップ、回路ボード及びそれらに関する素子)を搬送するための静電気放散カートが開示されている。この静電気放散カートは、カートボディと、カートボディを支持する回転部材とを有している。カートボディは、静電気電荷を放散しやすくするため、静電気放散材料を使用して形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-182582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した静電気放散カートのカートボディは、静電気放散材料を使用して形成する必要があり、カートボディの材料選択の自由度が高くない。
【0005】
本開示は上記事由に鑑みてなされており、台の材料選択の自由度が高い台車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る台車は、台と、導電性を有し、前記台を支持するキャスターと、導電性を有し、前記キャスターを前記台に固定するねじと、導電性を有し、前記ねじを介して前記キャスターに電気的に接続され、前記台上に露出した導電性部材とを備える。
【0007】
本開示の他の一態様に係る台車は、台と、導電性を有し、前記台に固定され、前記台を支持するキャスターと、導電性を有し、前記台上に露出した導電性部材と、前記キャスターと前記導電性部材とを電気的に接続する接続部材とを備える。
【0008】
本開示の更に他の一態様に係る台車は、合成樹脂製の台と、導電性を有し、前記台を支持するキャスターと、前記台と一体成形され、導電性を有し、前記キャスターに電気的に接続され、前記台上に露出した導電性部材とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様に係る台車は、台の材料選択の自由度を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示の一実施形態の台車の斜視図である。
図2図2は、同上の台車の台及び複数のキャスターの斜視図である。
図3図3Aは、同上の台車が備えるキャスターの斜視図であり、図3Bは前記キャスターの別の斜視図である。
図4図4は、同上の台車の一部を模式的に示した断面図である。
図5図5は、変形例1の台車の一部を模式的に示した断面図である。
図6図6は、変形例2の台車の斜視図である。
図7図7は、変形例3の台車の斜視図である。
図8図8は、変形例4の台車の一部を模式的に示した断面図である。
図9図9は、同上の台車の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、台車に関し、詳しくは、導電性を有する台車に関する。
【0012】
(1)実施形態
図1に本実施形態の台車1を示す。なお、本開示では、台車1について、特に記載する場合を除き、台車1が水平な接地面(走行面)9上に置かれた状態における方向を用いて説明する。具体的には、図1に示すように、鉛直方向を下方とし、設計上、台車1を直進させる方向として設定された方向を前方とし、また、台車1を前方から見たときを基準として左右方向を規定する。
【0013】
台車1は、人力で搬送物を搬送するために用いられる運搬用台車であり、搬送物を支持する台2と、台2を支持する複数のキャスター3とを備えている。台車1は、各キャスター3の車輪31が接地面9に沿って回転することで、接地面9に沿って移動する。接地面9は、例えば、床又は地面等である。
【0014】
台2は、上方から見て矩形状で、厚み方向が上下方向と平行な板状に形成されている。本実施形態の台2は、上方から見て、前後方向の寸法が左右方向の寸法よりも長い矩形状に形成されている。なお、台2の形状は限定されず、例えば、アングルキャリーの台のように上方から見て矩形枠状に形成されてもよい。
【0015】
台2は、合成樹脂製であり、絶縁体である。台2は、例えば、ポリプロピレン等の硬質合成樹脂から形成される。なお、台2の材質は、限定されない。
【0016】
図2に示すように、台2は、台板部20、外周リブ21及び補強リブ22を有している。台板部20は、台2の上端部を構成し、台板部20の上面は、台2の上面を構成している。台板部20の上面は、略水平な面である。
【0017】
外周リブ21は、台板部20の外周縁部から下方に向かって突出している。外周リブ21は、台板部20と一体に形成されている。外周リブ21は、台板部20の全周にわたって形成されており、下方から見て連続した環状に形成されている。
【0018】
補強リブ22は、環状の外周リブ21の内側に位置し、台板部20から下方に向かって突出している。補強リブ22は、台板部20と一体に形成されている。補強リブ22は、下方から見て格子状のリブであり、複数の縦リブ220と、複数の横リブ221とを有している。各縦リブ220は、厚み方向が左右方向と平行で前後方向に延びた板状に形成されている。各横リブ221は、厚み方向が前後方向と平行で左右方向に延びた板状に形成されており、複数の縦リブ220と交差している。
【0019】
台車1は手押し台車であり、図1に示すように、手押し用の取手4を更に備えている。取手4は、台2の後端部から上方に向かって突出している。取手4は、例えば、U字状の金属製パイプである。台車1の使用者は、取手4の上端部を掴んで動かすことで、台車1を接地面9に沿って走行させることができる。なお、取手4の形状、大きさ及び材質等は限定されない。また、台車1は取手4を備えていなくてもよい。すなわち、台車1は、例えば、取手4の無い平台車であってもよい。また、台車1は、手押し台車に限定されず、アングルキャリー又は引き台車等であってもよい。
【0020】
図2に示すように、台2の下面には、複数のキャスター3が取り付けられている。本実施形態の台車1は、複数のキャスター3として、四つのキャスター3を備えている。四つのキャスター3は、それぞれ矩形状の台2の四つの角部に取り付けられている。
【0021】
各キャスター3は、キャスター3が有する車輪31の回転軸の向きを変更可能な自在キャスターである。なお、各キャスター3は、車輪31の回転軸の向きが変更不能な固定キャスターであってもよい。また、複数のキャスター3は、自在キャスターと、固定キャスターとを有してもよい。例えば、前側二つのキャスター3が自在キャスターであり、かつ、後側二つのキャスター3が固定キャスターであってもよい。また、台車1が有するキャスター3の数は、限定されず、四つ未満であってもよいし、五つ以上であってもよい。
【0022】
複数のキャスター3は、導電性を有する導電性キャスター30を含んでいる。台車1は、例えば、導電性キャスター30を一つだけ又は二つだけ備えており、複数のキャスター3のうち導電性キャスター30以外のキャスター3は、導電性キャスター30よりも導電性が低い非導電性キャスターである。つまり、複数のキャスター3は、導電性キャスター30と、非導電性キャスターとを含んでいる。
【0023】
なお、導電性キャスター30が台車1において取り付けられる箇所は限定されない。例えば、台車1の前側の角部に取り付けられたキャスター3が導電性キャスター30であってもよいし、台車1の後側の角部に取り付けられたキャスター3が導電性キャスター30であってもよい。また、台車1が備える導電性キャスター30の数は限定されない。例えば、台車1は、三つ以上の導電性キャスター30を備えてもよい。また、台車1は、導電性キャスター30及び非導電性キャスターのうち、導電性キャスター30のみを備えてもよい。
【0024】
図3に示すように、導電性キャスター30は、車輪31、フレーム32及び取付座33を有している。取付座33は、台2に取付けられる部分である。フレーム32は取付座33に対して上下方向と平行な回転軸を中心に回転可能に取り付けられており、車輪31はフレーム32に対して水平方向と平行な回転軸を中心に回転可能に取り付けられている。
【0025】
車輪31、フレーム32及び取付座33の各々は、導電性を有している。取付座33は、車輪31が接する接地面9に対し、フレーム32及び車輪31を介して導通する。なお、導電性キャスター30が固定キャスターである場合、取付座33は、例えば、フレーム32と一体に形成される、又はフレーム32に対して回転不能に取り付けられる。
【0026】
台車1は、複数のねじ5(図4参照)を備えている。各導電性キャスター30の取付座33は、複数のねじ(雄ねじ)5によって台2に固定されている。各導電性キャスター30の取付座33は、合計四つのねじ5で台2に固定されている。本実施形態のねじ5は、ナット52を用いて対象物を固定するボルトである。なお、本開示における「ねじ」は、ボルト及びビスを含む。また、台車1が備えるねじ5の数は限定されない。
【0027】
取付座33は、例えば、金属製である。なお、取付座33の材料は、導電性を有する材料であれば、金属以外の材料から形成されてもよい。取付座33は、上下方向に見て矩形状で、厚み方向が上下方向と平行な板状に形成されている。取付座33は、複数のねじ5にそれぞれ対応する複数のねじ用孔330を有している。本実施形態の取付座33は、複数のねじ用孔330として、矩形板状の取付座33の四つの角部にそれぞれ形成された四つのねじ用孔330を有している。各ねじ用孔330は、取付座33を上下方向に貫通している。
【0028】
図4に示すように、台2の台板部20は、複数のねじ用孔330にそれぞれ対応する複数の貫通孔200を有している。各貫通孔200には、ねじ5が貫通している。各ねじ5は、取付座33の対応するねじ用孔330にねじ込まれている。各ねじ5は、金属製であり、導電性を有している。
【0029】
各貫通孔200は、ざぐり孔であり、上端部にざぐり201を有している。ざぐり201の内径は、貫通孔200におけるざぐり201の下方部の内径よりも大きい。各ねじ5の頭部50は、対応する貫通孔200のざぐり201に収納されている。各ねじ5の頭部50の上面は、台板部20の上面と面一であり、台板部20の上方に露出している。
【0030】
なお、貫通孔200はざぐり孔に限定されず、ざぐり201を有さない孔であってもよい。また、ねじ5は、ナットを用いずに対象物を固定するボルトであってもよい。この場合、ねじ用孔330は、内周面に雌ねじが形成されたねじ孔であり、ねじ5はねじ用孔330にねじ込まれる。また、ねじ5は、ビス等、ボルト以外のねじであってもよい。また、取付座33が有するねじ用孔330の数は、限定されない。また、取付座33の形状も限定されない。
【0031】
フレーム32は、例えば、金属製である。なお、フレーム32の材料は、導電性を有する材料であれば、金属以外の材料から形成されてもよい。図3に示すように、フレーム32は、連結部320及び支持部321を有している。連結部320は、取付座33に対して上下方向と平行な回転軸を中心に回転可能に連結されている。支持部321は、連結部320に繋がっている。支持部321は、車輪31を水平な回転軸を中心に回転可能に支持している。フレーム32が取付座33に対して上下方向と平行な回転軸を中心に回転することで、車輪31の回転軸の向きが変わる。
【0032】
車輪31の材料は、例えば、導電性ゴム、金属又は導電性ゴムと金属との組み合わせ等である。なお、車輪31の材料は限定されない。車輪31は、フレーム32に対して、水平な回転軸を中心に回転可能に取り付けられている。
【0033】
なお、非導電性キャスターは、導電性を有さないキャスターであればよく、導電性の有する材料から形成されることを除いて、導電性キャスター30と同様の構成を有するキャスターであってもよいし、周知の非導電性キャスターであってもよい。
【0034】
図1に示すように、台車1は、導電性部材6を更に備えている。導電性部材6は、導電性を有し、台2上に露出している。本実施形態の導電性部材6は、台2の上に敷かれた平面状の導電性マットである。導電性部材6は、例えば、導電性ゴム等から形成される。なお、導電性部材6の材料は、導電性を有する材料であれば限定されず、例えば、導電性を有する材料を含む樹脂、又は金属等であってもよい。また、導電性部材6は、導電性シートであってもよいし、導電性フィルムであってもよい。
【0035】
導電性部材6は、上方から見て、台板部20よりも一回り小さく、前後方向の寸法が左右方向の寸法よりも長い矩形状に形成されている。導電性部材6は、下面が台板部20の上面に沿った状態で、台板部20に載置されている。上方から見て、導電性部材6は、外周縁が台板部20の外周縁の内側に位置し、台板部20の外側には突出しない。導電性部材6は、台板部20の上面の半分以上の部分にわたっている。なお、導電性部材6の大きさ及び形状は限定されない。
【0036】
図4に示すように、導電性部材6の一部の下面は、導電性キャスター30を台2に固定するためのねじ5の頭部50の上端部に接した状態で、台板部20上に敷かれている。
【0037】
導電性部材6は、ねじ5を介して導電性キャスター30の取付座33に導通している。すなわち、導電性部材6は、ねじ5を介して導電性キャスター30に電気的に接続されている。このため、導電性部材6は、図4の矢印で示すように、ねじ5及び導電性キャスター30を介して、導電性キャスター30の車輪31が接触する接地面9に導通する。すなわち、導電性部材6は、ねじ5並びに導電性キャスター30の取付座33、フレーム32及び車輪31を介して接地面9に導通する。
【0038】
なお、本実施形態では、各ねじ5の頭部50の上面が台板部20の上面と面一であるが、各ねじ5の頭部50は、台板部20の上面よりも上方に突出してもよい。このようにすると、各ねじ5の頭部50を導電性部材6に食い込ませて接触させ、各ねじ5と導電性部材6との電気的な接続を確実に行うことができる。この場合、各ねじ5の頭部5は、例えば、台板部20の上面よりも0.5mm上方に突出させる。なお、台板部20の上面よりも上方に突出する各ねじ5の頭部5の突出量は、限定されない。
【0039】
また、本開示において、「電気的に接続される」とは、部材同士が直接又は他の部材を介して通電可能に接続された状態を意味し、常に電流が流れている状態を意味するものではない。また、導電性部材6は、任意の一つの導電性キャスター30を台2に固定するための複数のねじ5に接触してもよいし、一つの導電性キャスター30を台2に固定するための複数のねじ5のうちの一つのねじ5にのみ接触してもよい。また、台車1が複数の導電性キャスター30を備える場合、導電性部材6は、各導電性キャスター30を台2に固定するためのねじ5に接触してもよい。また、導電性部材6は、台2に対して接着剤、溶着又は固定具等を用いて固定された状態で台2上に設置されることが好ましいが、このような固定がなされない状態で台2上に設置されてもよい。導電性部材6は、例えば、台2上に置かれるだけで設置されてもよい。
【0040】
台車1で搬送される搬送物は、導電性部材6の上に置かれて、導電性部材6を介して台2によって支持される。この場合、搬送物は導電性部材6に接触することで、導電性部材6、ねじ5及び導電性キャスター30を介して接地面9に導通する。このため、搬送物が放電されやすくなり、例えば、搬送物が帯電して搬送物に塵や埃等が付着することが抑制される。また、この場合、台2を導電性を有さない材料から形成することができ、台2の材料選択の自由度が高い。例えば、台2を、特許文献1に示された静電気放散カートのカートボディのように、静電気放散材料を使用して形成した場合、台2の衝撃強度を高くすることが難しい。しかし、本実施形態では、台2の材料として耐衝撃性の高い材料を用いることができ、台車1の耐衝撃性を向上することができる。
【0041】
また、台2上に配置された導電性部材6を接地面9に導通させるには、例えば、特許文献1に示される静電気放散カートのように、台2を接地鎖を介して接地面9にアースすることが考えられる。しかし、この場合、利用者が台車1を動かすときに、接地鎖に足が引っかかったり、接地鎖によって接地面9が傷ついたり、接地鎖にごみや埃等が付着したりすることが懸念される。しかし、本実施形態の台車1では、導電性部材6を導電性キャスター30を介して接地面9に導通させることができ、接地鎖を設ける必要がなく、台車1の部品点数の増加も抑制することができる。
【0042】
(2)変形例
次に上記実施形態の変形例について説明する。なお、以下の各変形例の説明では、上記実施形態と共通する要素については同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0043】
(2-1)変形例1
変形例1の台車1は、導電性部材6と導電性キャスター30とが、導電性を有する接続部材7によって電気的に接続されている。具体的には、図5に示すように、導電性キャスター30がねじ以外の取付手段によって台2に取り付けられており、導電性部材6と導電性キャスター30とは、導電性キャスター30を台2に取り付けるためのねじとは別の部材であって導電性を有する接続部材7により電気的に接続されている。
【0044】
導電性キャスター30を台2に取り付けるための取付手段は、例えば、台2の下面に形成され、取付座33が嵌合されて固定される凹部23である。この場合、凹部23には、取付座33に引っ掛かって固定される掛止部が形成されてもよい。また、凹部23と取付座33の間に他の部材が楔のように挿入されることで、取付座33が凹部23に対して固定されてもよい。また、取付手段は、凹部23に限定されず、例えば、接着剤等であってもよい。
【0045】
接続部材7は、台2に取り付けられたねじ(詳しくはボルト)である。ただし、この接続部材7は、導電性キャスター30を台2に取り付けるためのねじではない。台2の台板部20には、上下方向に貫通するねじ孔24が形成されている。ねじ孔24は、下端部にざぐり240を有するざぐり孔であり、ねじ孔24のざぐり240よりも上方に位置する部分の内周面には雌ねじが形成されている。ねじである接続部材7は、頭部70がざぐり240に収納された状態で、軸部71がねじ孔24の雌ねじに嵌め合わされており、これにより、台2に取り付けられている。接続部材7の軸部71の上面は、台板部20の上面と面一であり、台板部20の上方に露出している。
【0046】
導電性部材6の下面は、台2に取り付けられた接続部材7の軸部71の上端部に接している。導電性部材6は、接続部材7を介して、導電性キャスター30の取付座33に導通している。このため、導電性部材6は、接続部材7及び導電性キャスター30を介して、導電性キャスター30の車輪31が接触する接地面9に導通する。
【0047】
本変形例では、導電性キャスター30がねじ以外の取付手段によって台2に取り付けられる台車1において、導電性部材6を導電性キャスター30を介して接地面9に導通させることができる。
【0048】
なお、本変形例のねじである各接続部材7の上端面は、台板部20の上面と面一であるが、各接続部材7の上端部は、台板部20の上面よりも上方に突出してもよい。このようにすることで、各接続部材7を導電性部材6に確実に接触させることができる。この場合、各接続部材7の上端部は、例えば、台板部20の上面よりも0.5mm上方に突出させる。なお、台板部20の上面よりも上方に突出する各接続部材7の突出量は、限定されない。また、接続部材7はねじに限定されず、導電性を有する部材であれば、ねじ以外の部材であってもよい。また、接続部材7は、後述する変形例4のように、台2と一体成形された部材であってもよい。また、接続部材7は、一つの部材で構成されるものに限定されず、複数の部材であってもよい。例えば、接続部材7は、台2に取り付けられた複数のねじであり、導電性部材6及び導電性キャスター30が、複数のねじによって電気的に接続されてもよい。
【0049】
(2-2)変形例2
変形例2の台車1は、導電性部材6の形状が実施形態と異なる。本変形例の導電性部材6は、図6に示すように、導電性ネット(網状のシート)である。導電性部材6は、例えば、導電性ゴム等から形成される。なお、導電性部材6の材料は、導電性を有する材料であれば限定されず、例えば、金属等であってもよい。また、導電性部材6は、網状の導電性マットであってもよいし、網状の導電性フィルムであってもよい。
【0050】
導電性部材6は、上方から見て一方向に間隔をあけて並んだ複数の直線状部60と、上方から見て前記一方向と交差する方向に間隔をあけて並んだ複数の直線状部61とを有している。複数の直線状部60と複数の直線状部61とは交差しており、互いに繋がっている。導電性部材6の一部は、実施形態の導電性部材6と同様に、導電性キャスター30を台2に取り付けるためのねじ5と接触し、ねじ5を介して導電性キャスター30に導通している。
【0051】
なお、導電性部材6は、変形例1のように、導電性キャスター30を台2に取り付けるためのねじ5とは別の部材であって導電性を有する接続部材7により、導電性キャスター30に電気的に接続されてもよい。また、この場合、導電性キャスター30は、変形例1と同様に、ねじ5以外の取付手段によって台2に取り付けられてもよい。
【0052】
(2-3)変形例3
変形例3の台車1は、導電性部材6の形状が実施形態と異なる。本変形例の導電性部材6は、図7に示すように、複数の帯状部材62,63を有している。各帯状部材62,63は、例えば、導電性ゴム等から形成される。なお、導電性部材6の材料は、導電性を有する材料であれば限定されず、例えば、金属等であってもよい。
【0053】
導電性部材6は、複数の帯状部材として、一つの帯状部材62と、複数の帯状部材63とを有している。帯状部材62は、台板部20の後端部の上面に設けられている。帯状部材62は、左右方向に延びている。複数の帯状部材63は、左右方向に間隔をあけて並んでいる。複数の帯状部材63の各々は、前後方向に延びている。各帯状部材63の後端部は、帯状部材62と接触している、または帯状部材62の近傍に位置している。なお、各帯状部材62,63の形状及び大きさ、導電性部材6が有する帯状部材62,63の数並びに各帯状部材62,63の位置等は限定されない。
【0054】
導電性部材6の一部は、実施形態の導電性部材6と同様に、導電性キャスター30を台2に取り付けるためのねじ5と接触し、ねじ5を介して導電性キャスター30に導通している。
【0055】
なお、複数の帯状部材62,63は、一体に形成されてもよい。また、導電性部材6は、変形例1のように、導電性キャスター30を台2に取り付けるためのねじ5とは別の部材であって導電性を有する接続部材7により、導電性キャスター30に電気的に接続されてもよい。また、この場合、導電性キャスター30は、変形例1と同様に、ねじ以外の取付手段によって台2に取り付けられてもよい。
【0056】
(2-4)変形例4
図8及び図9に示す変形例4の台車1は、導電性部材6が台2と一体成形されている。導電性部材6は、複数の導電部64を有している。本変形例の台車1は、四つのキャスター3の全てが導電性キャスター30であり、導電性部材6は、四つの導電性キャスター30にそれぞれ対応する四つの導電部64を有している。各導電部64は、台2において、対応する導電性キャスター30の取付座33に対応する部分である。
【0057】
各導電部64は、例えば、導電性ゴム等から形成され、二色成形により台2と一体に成型される。各導電部64の上面は、台板部20の上面と面一であり、台2の上方に露出している。例えば、各導電部64は、水平な一方向に延びた帯状に形成される。各導電部64の下面は、台2の下方に露出している。
【0058】
各導電性キャスター30は、取付座33の上面が対応する導電部64の下面に接した状態で、台2に取り付けられている。各導電性キャスター30は、変形例1と同様に、ねじ以外の取付手段によって台2に取り付けられている。なお、各導電性キャスター30は、実施形態と同様、ねじ5によって台2に取り付けられてもよい。
【0059】
本変形例の台車1は、導電性部材6を台2と一体成形することにより、容易に製造することができる。なお、前記実施形態及び変形例1~3の台車1では、台車1を廃棄の際、導電性部材6を再利用できるという利点がある。
【0060】
なお、本変形例の各導電部6の上面は、台板部20の上面と面一であるが、各導電部6の上端部(導電性部材6の上端部)は、台板部20の上面よりも上方に突出してもよい。このようにすることで、導電性部材6を台2上の搬送物に確実に接触させることができる。この場合、各導電部6の上端部は、例えば、台板部20の上面よりも0.5mm上方に突出させる。なお、台板部20の上面よりも上方に突出する各導電部6の突出量は、限定されない。また、本変形例の導電性キャスター30は、直接導電部64に接触して導電部64と電気的に接続されているが、例えば、実施形態のように導電性キャスター30を台2に固定するねじ5を介して導電部64に電気的に接続されてもよい。また、本変形例の導電性キャスター30は、変形例1のように接続部材7を介して導電部64に電気的に接続されてもよい。また、本変形例の各導電部64の形状及び大きさ並びに導電性部材6が有する導電部64の数等は限定されない。また、導電部64の材料は、導電性を有するものであれば限定されず、例えば、金属等であってもよい。
【0061】
(3)態様
前述の実施形態、変形例2及び変形例3から明らかなように、第1の態様の台車1は、以下に示す構成を有する。台車1は、キャスター(導電性キャスター)30、ねじ5及び導電性部材6を備える。キャスター30は、導電性を有し、台2を支持する。ねじ5は、導電性を有し、キャスター30を台2に固定する。導電性部材6は、導電性を有し、ねじ5を介してキャスター30に電気的に接続される。導電性部材6は、台2上に露出する。
【0062】
この態様によれば、台車1によって搬送される搬送物は、導電性部材6に接触することで、導電性部材6、ねじ5及びキャスター30を介して接地面9に導通する。このため、搬送物が放電されやすくなり、例えば、搬送物が帯電して搬送物に塵や埃等が付着することが抑制される。また、台2を導電性を有さない材料から形成することができ、台2の材料選択の自由度が高い。
【0063】
前述の変形例1~変形例3から明らかなように、第2の態様の台車1は、以下に示す構成を有する。台車1は、台2、キャスター30、導電性部材6及び接続部材7を備える。キャスター30は、導電性を有し、台2に固定され、台2を支持する。導電性部材6は、導電性を有し、台2上に露出する。接続部材7は、キャスター30と導電性部材6とを電気的に接続する。
【0064】
この態様によれば、台車1によって搬送される搬送物は、導電性部材6に接触することで、導電性部材6、接続部材7及び導電性キャスター30を介して接地面9に導通する。このため、搬送物が放電されやすくなる。また、この場合、台2を導電性を有さない材料から形成することができ、台2の材料選択の自由度が高い。
【0065】
前述の変形例4から明らかなように、第3の態様の台車1は、以下に示す構成を有する。台車1は、台2、キャスター30及び導電性部材6を備える。台2は、合成樹脂製である。キャスター30は、導電性を有し、台2を支持する。導電性部材6は、台2と一体成形され、導電性を有し、キャスター30に電気的に接続され、台2上に露出する。
【0066】
この態様によれば、台車1によって搬送される搬送物は、導電性部材6に接触することで、導電部64及び導電性キャスター30を介して接地面9に導通する。このため、搬送物が放電されやすくなる。また、この場合、台2を導電性を有さない合成樹脂材料から形成することができる。
【0067】
第4の態様の台車1は、第1~第3のいずれか一つの態様との組み合わせにより実現され得る。第4の態様の台車1は、導電性を有するキャスター(導電性キャスター)30を一つだけ又は二つだけ備える。
【0068】
この態様によれば、導電性を有するキャスター30の数の増加を抑制することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 台車
2 台
30 キャスター(導電性キャスター)
5 ねじ
6 導電性部材
7 接続部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9