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特許7649032水素ガス中の硫化水素ガス計測方法、プログラム及び硫化水素ガス計測システム
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  • 特許-水素ガス中の硫化水素ガス計測方法、プログラム及び硫化水素ガス計測システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-11
(45)【発行日】2025-03-19
(54)【発明の名称】水素ガス中の硫化水素ガス計測方法、プログラム及び硫化水素ガス計測システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/04 20060101AFI20250312BHJP
【FI】
G01N27/04 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021078625
(22)【出願日】2021-05-06
(65)【公開番号】P2022172634
(43)【公開日】2022-11-17
【審査請求日】2024-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】509031899
【氏名又は名称】矢部川電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180921
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】阪本 一平
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-006762(JP,A)
【文献】特開平08-320312(JP,A)
【文献】特開2004-294446(JP,A)
【文献】特開2017-207322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00-27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガスの中の硫化水素ガスを計測する硫化水素ガス計測システムを用いた硫化水素ガス計測方法であって、
前記硫化水素ガス計測システムは、
前記水素ガスが流れる流路と、
ガスが前記流路を流れる速度を制御する流速制御部と、
前記水素ガスに含まれる硫化水素ガスを検出する検出セルと
前記硫化水素ガス計測システムは、校正された校正硫化水素ガスを含む硫化水素ガスボンベと、
あらかじめ不純物を除去されたゼロガスを含むゼロガスボンベとを備え、
前記流速制御部が、前記流路に硫化水素ガスを導入して前記流路に硫化水素ガスを付着させる硫化水素付着ステップと、
前記ゼロガスボンベから前記流路に前記ゼロガスを供給するパージステップと、
前記水素ガスを採取する採取ステップと、
前記水素ガスを計測する計測ステップとを含み、
前記硫化水素付着ステップにおいて、前記硫化水素ガスボンベから前記流路に前記校正硫化水素ガスを供給し、飽和状態に達するまで硫化水素ガスを前記流路に付着させる、硫化水素ガス計測方法。
【請求項2】
前記硫化水素ガス計測システムは、少なくとも一酸化炭素と硫化水素を分離する気体分離部をさらに備え、
前記計測ステップの前に、前記気体分離部が、前記水素ガスに含まれる一酸化炭素を分離して前記水素ガスから除去する一酸化炭素除去ステップをさらに含む、請求項1記載の硫化水素ガス計測方法。
【請求項3】
コンピュータを、請求項1又は2記載の前記流速制御部として機能させるためのプログラム。
【請求項4】
水素ガスの中の硫化水素ガスを計測する硫化水素ガス計測システムであって、
前記水素ガスが流れる流路と、
硫化水素ガスを含む硫化水素ガスボンベと、
ガスが前記流路を流れる速度を制御する流速制御部と、
前記水素ガスに含まれる硫化水素ガスを検出する検出セルと
あらかじめ不純物を除去されたゼロガスを含むゼロガスボンベとを備え、
前記硫化水素ガスボンベは、制御弁を介して前記流路に接続されている、硫化水素ガス計測システム。
【請求項5】
前記硫化水素ガスボンベは、校正された硫化水素ガスを有するものである、請求項記載の硫化水素ガス計測システム。
【請求項6】
少なくとも一酸化炭素と硫化水素を分離する気体分離部をさらに備える、請求項4又は5記載の硫化水素ガス計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素ガス中の硫化水素ガス計測方法、プログラム及び硫化水素ガス計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料電池の実用化に向けて良質な水素気体を提供するニーズが高まっている。本願発明者は、これまでに燃料電池セルの保護装置、温湿度調整装置、流体移送装置等を開発してきた(特許文献1~3)。
【0003】
また、ガスクロマトグラフィ法により連続的にサンプルガスを分析するガスクロマトグラフィ装置が知られていた(特許文献4)。さらに、水素ポンプ型のセンサーセルで燃料水素中の各種の不純物を監視するセンサーセルが知られていた(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-092786号公報
【文献】特許第6684491号公報
【文献】特開2014-177892号公報
【文献】特開2002-181798号公報
【文献】特許第5597004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、水素ガス中の不純物の1つである硫化水素ガスを高精度にオンライン連続計測できる硫化水素ガス計測方法や硫化水素ガス計測システムは知られていない。
【0006】
そこで、本発明は、水素ガス中の不純物である硫化水素ガスを高精度に計測することを可能とする硫化水素ガス計測方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点は、水素ガスの中の硫化水素ガスを計測する硫化水素ガス計測システムを用いた硫化水素ガス計測方法であって、前記硫化水素ガス計測システムは、前記水素ガスが流れる流路と、ガスが前記流路を流れる速度を制御する流速制御部と、前記水素ガスに含まれる硫化水素ガスを検出する検出セルとを備え、前記流速制御部が、前記流路に硫化水素ガスを導入して前記流路に硫化水素ガスを付着させる硫化水素付着ステップと、前記水素ガスを採取する採取ステップと、前記水素ガスを計測する計測ステップとを含む、硫化水素ガス計測方法である。
【0008】
本発明の第2の観点は、第1の観点の硫化水素ガス計測方法であって、前記硫化水素付着ステップにおいて、飽和状態に達するまで硫化水素ガスを前記流路に付着させる。
【0009】
本発明の第3の観点は、第1又は第2の観点の硫化水素ガス計測方法であって、前記硫化水素ガス計測システムは、校正された校正硫化水素ガスを含む硫化水素ガスボンベをさらに備え、前記硫化水素付着ステップにおいて、前記硫化水素ガスボンベから前記流路に前記校正硫化水素ガスを供給する。
【0010】
本発明の第4の観点は、第1から第3のいずれかの観点の硫化水素ガス計測方法であって、前記硫化水素ガス計測システムは、あらかじめ不純物を除去されたゼロガスを含むゼロガスボンベをさらに備え、前記採取ステップの前に、前記ゼロガスボンベから前記流路に前記ゼロガスを供給するパージステップをさらに含む。
【0011】
本発明の第5の観点は、第1から第4のいずれかの観点の硫化水素ガス計測方法であって、前記計測対象ガスは、水素ガスであり、前記硫化水素ガス計測システムは、少なくとも一酸化炭素と硫化水素を分離する気体分離部をさらに備え、前記計測ステップの前に、前記気体分離部が、前記水素ガスに含まれる一酸化炭素を分離して前記水素ガスから除去する一酸化炭素除去ステップをさらに含む。
【0012】
本発明の第6の観点は、コンピュータを、第1から第5のいずれかの観点の前記流速制御部として機能させるためのプログラムである。
【0013】
本発明の第7の観点は、水素ガスの中の硫化水素ガスを計測する硫化水素ガス計測システムであって、前記水素ガスが流れる流路と、硫化水素ガスを含む硫化水素ガスボンベと、ガスが前記流路を流れる速度を制御する流速制御部と、前記水素ガスに含まれる硫化水素ガスを検出する検出セルとを備え、前記硫化水素ガスボンベは、制御弁を介して前記流路に接続されている、硫化水素ガス計測システムである。
【0014】
本発明の第8の観点は、第7の観点の硫化水素ガス計測システムであって、前記硫化水素ガスボンベは、校正された硫化水素ガスを有するものである。
【0015】
本発明の第9の観点は、第7又は第8の観点の硫化水素ガス計測システムであって、少なくとも一酸化炭素と硫化水素を分離する気体分離部をさらに備える。
【0016】
なお、本発明を、計測対象ガスに含まれる硫化水素ガスの有無や量をオンライン連続分析する分析方法、プログラム及び分析システムと捉えてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の各観点によれば、水素ガスの中の硫化水素ガスを反応性良く高精度にオンライン連続計測することが可能となる。
【0018】
本発明者は、硫化水素ガスを高精度に計測することが困難な理由の1つは、計測の応答性が悪いことにあると考えた。応答性が悪い計測方法等は実用に適さない。さらに、応答性が悪い原因を、硫化水素が配管ステンレス部等の一部に付着してセンサーセルに到達しない特性があるためであると特定した。
【0019】
さらに、本発明者は、あえて流路全体に硫化水素を付着させることで、硫化水素の計測精度を高めることができるとの独自の技術的思想に想到した。
【0020】
特に、本発明の第2の観点によれば、流路全体に硫化水素を最大限付着させることにより、その後に流路に流れる水素ガスに含まれる硫化水素を反応性良く高精度に計測することが容易となる。
【0021】
さらに、本発明の第3又は第8の観点によれば、校正された硫化水素を付着させることにより、毎回のサイクルにおいて確実に硫化水素を最大限付着させることが容易となる。このため、水素ガスに含まれる硫化水素を高精度に計測することがさらに容易となる。
【0022】
さらに、本発明の第4の観点によれば、流路全体に硫化水素を付着させることを含めて、計測前後で同じ環境を整えることが可能となる。そのため、繰り返し安定して反応性良く高精度に計測することが容易となる。
【0023】
また、本発明の第5又は第9の観点によれば、水素ガスに含まれる硫化水素ガス以外の不純物をあらかじめ除去することができる。そのため、水素ガスに含まれる硫化水素を高精度に計測することがさらに容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施例に係る硫化水素ガス計測システムの概要を示すブロック図である。
図2】本発明の実施例に係る硫化水素ガス計測システムの概要の一例を示すシステム構成図である。
図3】本発明の実施例に係る硫化水素ガス計測装置の概要の一例を示す装置構成図である。
図4】本発明の実施例に係る硫化水素ガス計測方法における計測処理フローの概要の一例を示すフロー図である。
図5】本発明の実施例に係る硫化水素ガス計測方法における硫化水素ガス計測装置の運用フローの一例を示すフロー図である。
図6】本実施例に係る硫化水素ガス計測システムが実際に分析した水素ガス中の硫化水素ガス不純物濃度の経時変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、本発明の実施例は、以下に記載する内容に限定されるものではない。また、同種の装置や部材が複数ある場合、添え字を省略して集合的に記載する場合がある。
【0026】
まず、本発明者が見出した硫化水素ガス計測の難点について説明する。硫化水素ガスは、ステンレスに吸着する特性がある。パイプの内側がガラスコーティングされていれば吸着しにくいが、継手等はステンレス製であることが多く、硫化水素が吸着してしまう。このため、計測対象ガス中に硫化水素ガスが混入しても検出が遅れてしまう。また、検出されたとしても硫化水素濃度を高精度に測定することが困難であった。
【0027】
図1は、硫化水素の計測が困難であることを示す経時変化グラフの一例を示す図である。縦軸は硫化水素濃度[ppb]、横軸は経過時間を表す。図1を参照して、水素ガスに一定濃度の硫化水素ガスの混入を開始して12時間経っても検出される硫化水素濃度が安定していないことが示されている。硫化水素濃度の測定にこれほど長時間がかかるようでは計測方法として不適切である。
【0028】
以下、本発明者が発明した、計測対象ガス中の硫化水素濃度を感度よく高精度に測定するための硫化水素ガス計測システム及び硫化水素ガス計測方法について説明する。
【実施例
【0029】
図2は、本実施例に係る硫化水素ガス計測システム(本願請求項における「硫化水素ガス計測システム」の一例)の概要の一例を示す図である。硫化水素ガス計測システム1は、硫化水素ガス計測装置盤3と、気体供給部5とを備える。硫化水素ガス計測装置盤3は、硫化水素ガス計測装置7と、燃料ガス流路9(本願請求項に記載の「流路」の一例)と、ゼロガス流路9と、硫化水素流路9と、調節弁11と、逆流弁13と、接続点15とを有する。気体供給部5は、ゼロガスボンベ17(本願請求項に記載の「ゼロガスボンベ」の一例)と、バックアップボンベ19と、硫化水素ガスボンベ21と、接続点23とを有する。
【0030】
硫化水素ガス計測装置盤3は、各種のボンベ以外の硫化水素ガス計測システム1の主要な装置をパッケージとして屋外にも設置できるように金属製の容器に入れたものである。硫化水素ガス計測装置7には、複数の流路9が接続されている。流路9には、計測対象となる水素燃料ガス(本願請求項に記載の「計測対象ガス」の一例)が供給される燃料ガス流路9、ゼロガスとしてあらかじめ不純物が除去された工業用水素ガス(本願請求項に記載の「ゼロガス」の一例)が供給されるゼロガス流路9、校正された硫化水素ガスが供給される硫化水素流路9が含まれる。外部の水素燃料供給装置31に接続された水素燃料供給流路33は、途中にある接続点35で流路が分岐している。分岐した流路は、調節弁11及び逆流防止弁13を介して接続点15において燃料ガス流路9に接続されている。燃料ガス流路9は、接続点15においてゼロガス流路9と接続されている。
【0031】
気体供給部5は、硫化水素ガス計測装置に各種の気体を供給する。気体供給部5のゼロガスボンベ17及びバックアップボンベ19は、ゼロガスとしてあらかじめ不純物が除去された工業用水素ガスを有する。硫化水素ガスボンベ21は、校正された硫化水素ガスを有する。本実施例では、硫化水素ガスボンベ21は、1.5ppmの硫化水素を10L有する。ゼロガスボンベ17は、仕切弁と、調節弁11と、接続点15と、逆流防止弁13と接続点15を順に介して燃料ガス流路9に接続されている。バックアップボンベ19は、仕切弁を介して接続点23においてゼロガスボンベ17に接続された流路に接続されている。硫化水素ガスボンベ21は、仕切弁を介して硫化水素流路9に接続されている。
【0032】
硫化水素ガス計測システム1は、外部の水素燃料供給装置31から0.2~0.8MPaで供給された水素燃料ガスの一部を計測対象ガスとしてサンプリングして計測する。硫化水素ガス計測装置7は、供給された水素燃料ガスに含まれる硫化水素の濃度を計測する。硫化水素ガス計測装置7は、外部のコンピュータ37と通信可能である。硫化水素ガス計測装置7は、コンピュータ37による制御が可能であり、計測結果をコンピュータ37に表示可能である。流路9は、各種の気体の流路である。調節弁11は、流路に流れる気体の流量を調節する。調節弁11は、サンプリングされる水素燃料ガスの流量を0.20MPaに調節する。調節弁11は、ゼロガスボンベ17及び/又はバックアップボンベ19から供給されるゼロガスの流量を0.15MPaに調節する。
【0033】
図3は、本実施例に係る硫化水素ガス計測システム1の概要を示すブロック図である。図3を参照して、硫化水素ガス計測システム1は、気体供給部5と、硫化水素ガス計測装置7と、流路9と、弁部10と、カラム25(本願請求項に記載の「気体分離部」の一例)と、換算部27と、表示部29と、制御部51とを備える。気体供給部5は、ゼロガスボンベ17と、バックアップガスボンベ19と、硫化水素ガスボンベ21とを有する。硫化水素ガス計測装置7は、電磁弁71と、フローコントローラ73と、蒸留水タンク74と、計測ユニット75とを有する。計測ユニット75は、センサーセル77(本願請求項に記載の「検出セル」の一例)と、電源79と、電圧計81と、温湿センサー83と、加湿ポット85とを有する。制御部51は、弁制御部53と、流速制御部55(本願請求項に記載の「流速制御部」の一例)と、電源制御部57と、表示制御部59とを有する。
【0034】
電磁弁71は、2方電磁弁又は3方電磁弁であり、ON及びOFFで気体が流れる方向や開閉を切り替えられる。フローコントローラ73は、流路9の特定の箇所における気体の流量を調節する。蒸留水タンク74は、加湿ポット85に供給する蒸留水を保持する。計測ユニット75は、供給されたガスに含まれる不純物濃度を計測する。
【0035】
計測ユニット75において、センサーセル77は、水素ポンプ型のセンサーセルである。センサーセル77は、不純物濃度に応じて抵抗値が変化する。センサーセル77は、水素中の硫化水素が付着した時には高感度に反応し、硫化水素が減少した時には素早く硫化水素を剥離する特性を持っている。電源79は、センサーセル77に電流を供給する。電圧計81は、センサーセル77の電圧を計測する。温湿センサー83は、計測ユニット75の温度及び湿度を計測する。加湿ポット85は、センサーセル77に供給される気体を加湿する。
【0036】
弁10は、仕切弁、調節弁、逆流防止弁等の弁を有し、硫化水素ガス計測システム1における気体の移動を制御する。カラム25は、水素ガスに含まれる不純物を分離する。特に、本実施例では、水素ガス中の一酸化炭素を分離して除去することに用いられる。センサーセル77は、硫化水素だけでなく一酸化炭素にも反応するため、カラム25で一酸化炭素を除去することにより、硫化水素の検出精度を高めることがさらに容易となる。
【0037】
換算部27は、電圧計81が検出する測定電圧の変化を硫化水素濃度に換算する。表示部29は、換算された硫化水素濃度を表示する。
【0038】
制御部51において、弁制御部53は、弁部10の各種の弁の流れる方向や調節量や開閉を制御する。流速制御部55は、フローコントローラ73を制御して所定の箇所における流速を制御する。電源制御部57は、電源79を制御する。表示制御部59は、表示部29を制御する。
【0039】
図4は、本実施例に係る硫化水素ガス計測システム1の構成の一例を示す図である。以下、電磁弁SVのうち3方電磁弁SV1~SV5について、入力バルブを「IN」、OFFで開いている出力バルブを「NO」、ONで開いている出力バルブを「NC」と表記する。また、電磁弁SVを、単に「SV」と表記することがある。SV6は、2方電磁弁である。
【0040】
図4において、計測対象ガスである水素ガスを供給する外部の水素燃料供給装置31は、水素燃料供給流路33、仕切弁V4、調節弁R4、逆流防止弁G1、接続点C1、元栓V1、調節弁R1、接続点C2、SV2のINバルブからNOバルブ、接続点C3を順に経由してSV3のNCバルブに接続されている。また、SV1のNCバルブとSV2のNCバルブは接続されている。逆流防止弁G2は、接続点C1から水素燃料供給装置31の方向への気体の流れを防止する。
【0041】
ゼロガスボンベ17は、接続点C4、仕切弁V5、調節弁R5、接続点C5、調節弁R2、接続点C6、SV3のINバルブからNOバルブ、SV5のNOバルブからINバルブ、SV1のNOバルブからINバルブ、カラム25、フローコントローラ73を順に経由して計測ユニット75に接続されている。また、バックアップボンベ19は、接続点C4に接続されている。
【0042】
硫化水素ガスボンベ21は、元弁V3、調節弁R3、フローコントローラ733、分岐B1、SV6を順に経由して接続点C6に接続されている。分岐B1は、SV4のINバルブからNOバルブを経由して、SV5のNCバルブにも接続されている。
【0043】
さらに、接続点C5は、逆流防止弁G2を経由して、接続点C1に接続されている。逆流防止弁G2は、接続点C1から接続点C5への気体の流れを防止する。接続点C2は、元弁V2を経て計測対象ガスの出口にも接続されている。SV4のNCバルブは、接続点C3、フローコントローラ73を経由して、排ガス出口にも接続されている。
【0044】
計測ユニット75に供給された気体は、加湿ポット85で加湿されて検出ポットに至り、計測される。計測が終わったガスは、外に排気される。
【0045】
水素燃料供給装置は、0.2~0.8MPaで水素燃料を供給する。ゼロガスボンベ17は、0.2~0.8MPaでゼロガスとしてあらかじめ不純物を除去された工業用水素ガスを供給する。バックアップボンベ19は、電気的な制御に依存することなくバックアップガスが間断なく連続的に接続点C4にゼロガスを供給するため、濃度計測の欠測を生じさせない。また、センサーセル77が有する電極素子を空気に曝露させて損傷することを防止可能となる。硫化水素ガスボンベ21は、0.1MPaで校正された硫化水素ガス(本願請求項に記載の「校正硫化水素ガス」の一例)を供給する。
【0046】
調節弁R1は、気体の圧力を0.05MPaに調節する。調節弁R2は、気体の圧力を0.05MPaに調節する。調節弁R3は、気体の圧力を0.06MPaに調節する。調節弁R4は、気体の圧力を0.20MPaに調節する。調節弁R5は、気体の圧力を0.15MPaに調節する。
【0047】
図5は、本実施例に係る硫化水素ガス計測方法の一例を示すフロー図である。図5を参照して、配管全体、特にステンレス製の部分にあらかじめ硫化水素が飽和するまで付着させられている(本願請求項に記載の「硫化水素付着ステップ」の一例)。配管のステンレス製の部分に付着した硫化水素は、長時間剥離しない。フローが開始されるとき、元弁V1、V2、V3は開かれている。また、電磁弁SV1~SV6はOFFである。
【0048】
ステップS11において、SV1~SV6をOFFのままとし、ゼロガスボンベ17から流路9にゼロガスを供給し、パージを100秒行う(本願請求項に記載の「パージステップ」の一例)。
【0049】
続いて、ステップS12において、SV1、SV2、SV3をON、SV4、SV5、SV6をOFFとし、計測対象ガスとして水素発生装置31から水素燃料ガスを10秒間採取して流路9に供給する(本願請求項に記載の「採取ステップ」の一例)。
【0050】
続いて、ステップS13において、SV2、SV4、SV6をON、SV1、SV3、SV5をOFFとし、ゼロガスボンベ17からゼロガスを流路9に供給しつつ、35秒かけてカラム25で一酸化炭素を水素ガスから除去する(一酸化炭素除去ステップ)。また、硫化水素ガスボンベ21から校正された流路水素ガスを流路9に供給する。ただし、SV4は、NCバルブが開いて排気されているため、校正流路水素ガスが計測対象ガスと混合することはない。フローコントローラ3は、硫化水素濃度を20ppbに制御する。
【0051】
続いて、ステップS14において、SV2、SV5、SV6をON、SV1、SV3、SV4をOFFとし、硫化水素ガスボンベ21から校正された流路水素ガスを10秒かけて流路9に供給する。フローコントローラ3は、硫化水素濃度を20ppbに制御する。これにより、あらためて硫化水素ガスが流路9及び電磁弁に飽和状態まで吸着する。このため、計測対象ガス中に硫化水素が含まれていても感度よく高精度に硫化水素を測定することが可能となる。
【0052】
続いて、ステップS15において、SV1~SV6をOFFとし、ゼロガスボンベ17から流路9にゼロガスを供給しつつ、25秒かけて計測を行う(本願請求項に記載の「計測ステップ」の一例)。
【0053】
続いて、ステップS16において、制御部が計測対象ガスの計測を継続するか否かを判定する。継続する場合には、ステップS11に戻る。継続しない場合には、フローを終了する。
【0054】
図6は、本実施例に係る硫化水素ガス計測システム1が実際に計測した水素ガス中の硫化水素濃度の経時変化の一例を示すグラフである。縦軸は硫化水素濃度[ppb]を表し、横軸は経過時間を表す。計測において、校正された硫化水素ガス20ppbを水素ガスで希釈することで0ppb、5ppb、10ppb、15ppb、20ppbの硫化水素濃度の水素ガスを用意した。
【0055】
図6に示されるように、図1のグラフとは異なり、本実施例の硫化水素ガス計測システム1を用いることにより、水素燃料ガスに含まれるごく微量の硫化水素ガスを応答性よく高精度に計測できていることが分かる。
【0056】
なお、カラム25は、硫化水素ガス計測装置7の内部に含まれるものであってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1; 硫化水素ガス計測システム、5;気体供給部、7;硫化水素ガス計測装置、9;流路、17;ゼロガスボンベ、19;バックアップボンベ、21;硫化水素ガスボンベ、25;カラム、31;水素燃料供給装置、71;電磁弁、73;フローコントローラ、SV;電磁弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6