(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-11
(45)【発行日】2025-03-19
(54)【発明の名称】眼底画像の特徴の認識・追跡方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 3/14 20060101AFI20250312BHJP
【FI】
A61B3/14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024016285
(22)【出願日】2024-02-06
【審査請求日】2024-05-14
(32)【優先日】2024-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】524050877
【氏名又は名称】貞安有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】王悦安
【審査官】廣崎 拓登
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-213513(JP,A)
【文献】特開2016-140646(JP,A)
【文献】特開2019-041841(JP,A)
【文献】特開2021-184169(JP,A)
【文献】特開2010-181172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 - 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼底画像の特徴の認識・追跡方法であって、
複合照準点が設けられた画像取得ユニットを第1検査位置まで移動させ、前記第1検査位置は、個体の眼底を前記画像取得ユニットの焦点距離区間に位置可能とし、前記複合照準点には、更に、視神経乳頭陥凹網膜血管標的及び中心窩標的が設けられており、
前記視神経乳頭陥凹網膜血管標的により前記個体の眼底の第1基準座標を追跡・照準するとともに、前記中心窩標的により連携して前記個体の眼底の第2基準座標を追跡・照準し、前記第1基準座標は、前記個体の眼底の視神経乳頭、網膜静脈分枝又は網膜動脈分枝から選択され、前記第2基準座標は前記個体の眼底の中心窩であり、
眼底画像を取得し、前記眼底画像は、前記複合照準点による前記第1基準座標及び前記第2基準座標の追跡・照準に成功したときに得られる、
とのステップを含む方法
であって、
前記眼底画像のコントラスト比から得られる眼底境界を画定し、前記複合照準点により前記眼底画像から得られる眼底区間を丸で選択し、特徴識別比較ユニットにより、前記眼底区間と、以前に前記複合照準点で作成された前記眼底画像とが重複面積の基準値を満たしているか否かを計算し、前記重複面積の基準値は少なくとも72%である方法。
【請求項2】
前記視神経乳頭は、更に、視神経乳頭陥凹を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記網膜静脈分枝は、上外側静脈、上内側静脈、下内側静脈、下外側静脈から選択され、前記網膜動脈分枝は、上外側動脈、上内側動脈、下内側動脈、下外側動脈から選択される請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記視神経乳頭陥凹網膜血管標的及び前記中心窩標的は、リング形、十字リング形、楕円形、三角形、逆三角形、正方形、菱形、台形、逆台形、六角形、八角形又はX形である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記視神経乳頭陥凹網膜血管標的には、更に、円形標的照準器及び正逆フォーク形照準器が設けられており、前記正逆フォーク形照準器は、略X形をなして前記円形標的照準器から放射状に配置される請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記円形標的照準器は前記視神経乳頭陥凹を追跡・照準する請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記正逆フォーク形照準器には、更に、4つの分岐部が設けられており、これらの分岐部は、それぞれ、上外側静脈又は上外側動脈、上内側静脈又は上内側動脈、下内側静脈又は下内側動脈、下外側静脈又は下外側動脈を追跡・照準する請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記複合照準点による前記第1基準座標及び前記第2基準座標の追跡・照準に失敗した場合には、エラーメッセージを送信し、前記眼底画像との差分値を計算することで、眼底に対する焦点距離を評価したあと、前記画像取得ユニットを第2検査位置まで移動させ、前記第2検査位置は適切な焦点面位置であり、請求項1に記載のステップを繰り返して別の眼底画像を取得する請求項1に記載の方法。
【請求項9】
異なる期間に取得した前記眼底画像を比較し、特に、前記個体における眼底の視神経乳頭、網膜静脈分枝又は網膜動脈分枝及び中心窩の画像を比較する請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記眼底画像を取得する際には、まず、光線により前記個体の目に照準を合わせて位置決め及び照準を補助することで、前記個体の眼球の方向を標準化可能とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
眼底画像の特徴の認識・追跡システムであって、
画像取得ユニットを含み、前記画像取得ユニットには複合照準点が設けられており、前記複合照準点には、更に、視神経乳頭陥凹網膜血管標的及び中心窩標的が設けられており、前記画像取得ユニットは第1検査位置まで移動し、前記第1検査位置は、個体の眼底を画像取得ユニットの焦点距離区間に位置可能とし、前記視神経乳頭陥凹網膜血管標的は前記個体の眼底の第1基準座標を追跡・照準し、前記中心窩標的は連携して前記個体の眼底の第2基準座標を追跡・照準し、前記第1基準座標は、前記個体の眼底の視神経乳頭、網膜静脈分枝又は網膜動脈分枝から選択され、前記第2基準座標は前記個体の眼底の中心窩であり、
眼底画像は、前記複合照準点による前記第1基準座標及び前記第2基準座標の追跡・照準に成功したときに取得され
、
前記眼底画像のコントラスト比から得られる眼底境界を画定し、前記複合照準点により前記眼底画像から得られる眼底区間を丸で選択し、特徴識別比較ユニットにより、前記眼底区間と、以前に前記複合照準点で作成された前記眼底画像とが重複面積の基準値を満たしているか否かを計算し、前記重複面積の基準値は少なくとも72%であるシステム。
【請求項12】
前記視神経乳頭陥凹網膜血管標的には、更に、円形標的照準器及び正逆フォーク形照準器が設けられており、前記正逆フォーク形照準器は、略X形をなして前記円形標的照準器から放射状に配置され、前記円形標的照準器は前記視神経乳頭陥凹を追跡・照準し、前記正逆フォーク形照準器には、更に、4つの分岐部が設けられており、これらの分岐部は、それぞれ、上外側静脈又は上外側動脈、上内側静脈又は上内側動脈、下内側静脈又は下内側動脈、下外側静脈又は下外側動脈を追跡・照準する請求項
11に記載のシステム。
【請求項13】
更に、特徴識別比較ユニットを含み、前記特徴識別比較ユニットは、異なる期間に取得した前記眼底画像における視神経乳頭、網膜静脈分枝又は網膜動脈分枝及び中心窩を識別及び比較するために用いられる請求項
11に記載のシステム。
【請求項14】
更に、異なる期間に取得した前記眼底画像を蓄積するための眼底画像データベースを含む請求項
13に記載のシステム。
【請求項15】
更に、前記画像取得ユニット及び前記眼底画像データベースに電気的に接続され、前記画像取得ユニットから前記眼底画像が伝送及び表示され、又は、前記眼底画像データベースから前記眼底画像が伝送及び表示される表示ユニットを含む請求項
14に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼底画像の特徴の認識・追跡方法及びシステム、特に、個体の眼底経時画像の特徴の認識・追跡方法及びシステムを提供することに関し、とりわけ、網膜病変患者に対し、携帯式・家庭用の眼底経時画像の特徴の認識・追跡方法及びシステムを提供することに関する。
【背景技術】
【0002】
網膜病変の原因には、強度近視のほか、トリプルリスク(高血圧・高血糖・高血中脂質)や糖尿病があり、黄斑変性症を遺伝性疾患として持つ集団も存在する。網膜の毛細血管は病変を生じやすく、それに伴う網膜の出血や浮腫又は壊死によって視覚機能が損なわれる。糖尿病患者に生じる糖尿病網膜症(diabetic retinopathy)の場合、初期には何の症状も見られないことがある。一般的には、糖尿病の発症から10年以上を経過した患者の30%に眼底病変が現れ始め、病歴25年以上の患者では発症率が80%にも達する。糖尿病網膜症は、主として、糖尿病が全身性疾患であるために、長期的な高血糖環境が網膜の血管内皮を損傷させて、一連の眼底病変を引き起こすことで発症する。糖尿病網膜症は、初期には何の症状も見られないことがある。しかし、血糖コントロール不良や、インスリン依存型糖尿病、高血圧、高血中脂質及び腎臓病変がある場合には、いずれも糖尿病網膜症の発症を加速させ、眼底病変の発生をいっそう早める恐れがある。現在のところ、1型糖尿病の場合には、15~20年後にほぼ全ての患者に網膜病変が発生し、そのうち20~30%の患者が失明に至ることが知られている。また、2型糖尿病患者の60%以上に網膜病変が見られ、これが20~65歳人口における最大の失明原因となっている。
【0003】
例えば、糖尿病網膜症の診断といった従来の網膜病変の診断では、主に眼底の網膜の変化を観察するため、眼底検査が必須となる。一般的に、従来の眼底検査では、まず、散瞳薬を用いて瞳孔を拡大させたあと、検眼鏡及び細隙灯を用いて眼底における血管の増殖又はその他の病変の有無を検査せねばならない。しかし、この場合には、やや時間を要し、検査結果の記録が比較的難しく、かつ、治療前後の状況を客観的に比較できないとの欠点がある。そのため、患者は概してこれらを受け入れ難く、結果として検査率が低下している。
【0004】
以上に鑑みて、医療関係者が網膜病変患者の検査又は診断を実施可能であり、或いは、網膜病変患者が在宅環境で容易に操作可能であり、かつ、操作過程で不快感がなく、定期的に眼底画像の特徴の認識及び追跡を実施して容易に検査可能であり、高精細画質の標準化された網膜画像を有し、網膜の画質を向上させ、画像ファイルの作成が容易であり、一定期間の経過後に異なる時点の画像の変化とみなすことができる、というものを如何にして開発し、従来技術の欠点を解決して診断の正確さを確保するかが、現在、まさに当業者にとって切実に解決を要する課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、医療関係者又は他人が従来技術よりも容易に協力して操作することが可能であり、或いは、個人が自力で容易に操作することが可能であり、使用者が一定の期間を開けて両目の眼底画像の特徴の認識及び追跡と検査を容易に実施可能であり、かつ、標準化された高精細眼底画像を容易に作成して有効に比較するのに都合がよく、使用者にとっての利便性を向上させる、というものを提供して、従来技術の課題を更に改善することである。
【0006】
本発明のもう一つの目的は、個人の眼底の微小出血、硬性白斑(hard exudates)、点状出血、新生血管形成、綿花状白斑(cotton wool spot)等を早期警告及びモニタリング可能な方法を提供して、従来技術の課題を有効に解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明における眼底画像の特徴の認識・追跡方法は、ステップとして以下を含む。すなわち、複合照準点が設けられた画像取得ユニットを第1検査位置まで移動させる。当該第1検査位置は、個体の眼底を画像取得ユニットの焦点距離区間に位置可能とする。前記複合照準点には、更に、視神経乳頭陥凹網膜血管標的及び中心窩標的が設けられている。視神経乳頭陥凹網膜血管標的により前記個体の眼底の第1基準座標を追跡・照準するとともに、中心窩標的により連携して前記個体の眼底の第2基準座標を追跡・照準する。第1基準座標は、前記個体の眼底の視神経乳頭(Optic disc)、網膜静脈分枝(branch retinal vein/retinal vein)又は網膜動脈分枝(branch retinal artery/retinal artery)から選択され、第2基準座標は前記個体の眼底の中心窩(Fovea)である。次に、眼底画像を取得する。当該眼底画像は、前記複合照準点による前記第1基準座標及び前記第2基準座標の追跡・照準に成功したときに得られる。
【0008】
本発明の一実施例において、視神経乳頭(Optic disc)は、更に、視神経乳頭陥凹(Optic cup)を含む。
【0009】
本発明の一実施例において、網膜静脈分枝は、上外側静脈(venula temporalis retinae superior)、上内側静脈(venula nasalis retinae superior)、下内側静脈(venula nasalis retinae inferior)、下外側静脈(venula temporalis retinae inferior)から選択される。網膜動脈分枝は、上外側動脈(arteriola temporalis retinae superior)、上内側動脈(arteriola nasalis retinae superior)、下内側動脈(arteriola nasalis retinae inferior)、下外側動脈(arteriola temporalis retinae inferior)から選択される。
【0010】
本発明の一実施例において、視神経乳頭陥凹網膜血管標的及び中心窩標的は、リング形、十字リング形、楕円形、三角形、逆三角形、正方形、菱形、台形、逆台形、六角形、八角形又はX形である。
【0011】
本発明の一実施例において、視神経乳頭陥凹網膜血管標的には、更に、円形標的照準器及び正逆フォーク形照準器が設けられている。正逆フォーク形照準器は、略X形をなして円形標的照準器から放射状に配置される。
【0012】
本発明の一実施例において、円形標的照準器は視神経乳頭陥凹を追跡・照準可能である。
【0013】
本発明の一実施例において、正逆フォーク形照準器には、更に、4つの分岐部が設けられている。これらの分岐部は、それぞれ、上外側静脈又は上外側動脈、上内側静脈又は上内側動脈、下内側静脈又は下内側動脈、下外側静脈又は下外側動脈を追跡・照準する。
【0014】
本発明の一実施例では、複合照準点による前記第1基準座標及び第2基準座標の追跡・照準に失敗した場合、エラーメッセージを送信する。そして、眼底画像との差分値を計算することで、眼底に対する焦点距離を評価したあと、画像取得ユニットを第2検査位置まで移動させる。第2検査位置は適切な焦点面位置である。かつ、以下を含むステップを繰り返す。すなわち、複合照準点が設けられた画像取得ユニットを第1検査位置まで移動させる。当該第1検査位置は、個体の眼底を画像取得ユニットの焦点距離区間に位置可能とする。複合照準点には、更に、視神経乳頭陥凹網膜血管標的及び中心窩標的が設けられている。視神経乳頭陥凹網膜血管標的により個体の眼底の第1基準座標を追跡・照準するとともに、中心窩標的により連携して個体の眼底の第2基準座標を追跡・照準する。これにより、別の眼底画像を取得する。
【0015】
本発明の一実施例では、異なる期間に取得した眼底画像を比較する。特に、個体における眼底の視神経乳頭、網膜静脈分枝又は網膜動脈分枝及び中心窩の画像を比較する。
【0016】
本発明の一実施例において、前記眼底画像を取得する際には、まず、光線(aiming beam)により前記個体の目に照準を合わせて位置決め及び照準を補助することで、当該個体の眼球の方向を標準化可能とする。
【0017】
本発明の一実施例では、前記眼底画像のコントラスト比から得られる眼底境界を画定し、前記複合照準点により前記眼底画像から得られる眼底区間を丸で選択する。そして、特徴識別比較ユニットにより、前記眼底区間と、以前に複合照準点で作成された眼底画像とが重複面積の基準値を満たしているか否かを計算する。前記重複面積の基準値は少なくとも72%である。
【0018】
本発明における眼底画像の特徴の認識・追跡システムは、画像取得ユニットを含む。画像取得ユニットには複合照準点が設けられている。複合照準点には、更に、視神経乳頭陥凹網膜血管標的及び中心窩標的が設けられている。画像取得ユニットは第1検査位置まで移動する。第1検査位置は、個体の眼底を画像取得ユニットの焦点距離区間に位置可能とする。視神経乳頭陥凹網膜血管標的は個体の眼底の第1基準座標を追跡・照準し、中心窩標的は連携して前記個体の眼底の第2基準座標を追跡・照準する。第1基準座標は、個体の眼底の視神経乳頭、網膜静脈分枝又は網膜動脈分枝から選択され、第2基準座標は個体の眼底の中心窩である。眼底画像は、複合照準点による第1基準座標及び第2基準座標の追跡・照準に成功したときに取得される。
【0019】
本発明の一実施例において、視神経乳頭陥凹網膜血管標的には、更に、円形標的照準器及び正逆フォーク形照準器が設けられている。正逆フォーク形照準器は、略X形をなして円形標的照準器から放射状に配置される。円形標的照準器は前記視神経乳頭陥凹を追跡・照準する。正逆フォーク形照準器には、更に、4つの分岐部が設けられている。これらの分岐部は、それぞれ、上外側静脈又は上外側動脈、上内側静脈又は上内側動脈、下内側静脈又は下内側動脈、下外側静脈又は下外側動脈を追跡・照準する。
【0020】
本発明の一実施例では、更に、特徴識別比較ユニットを含む。特徴識別比較ユニットは、異なる期間に取得した眼底画像における視神経乳頭、網膜静脈分枝又は網膜動脈分枝及び中心窩を識別及び比較するために用いられる。
【0021】
本発明の一実施例では、更に、異なる期間に取得した眼底画像を蓄積するための眼底画像データベースを含む。
【0022】
本発明の一実施例では、更に、画像取得ユニット及び眼底画像データベースに電気的に接続され、画像取得ユニットから眼底画像が伝送及び表示され、又は、眼底画像データベースから眼底画像が伝送及び表示される表示ユニットを含む。
【0023】
本発明における上記の特徴及び利点をより明瞭簡潔とすべく、以下に、実施例を挙げるとともに、図面を組み合わせて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の方法に基づく操作の概略図である。
【
図2】
図2は、本発明のもう一つの方法における操作の概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の更なる方法における操作の概略図である。
【
図4】
図4は、本発明の追跡・照準方法における操作の概略図である。
【
図5】
図5は、本発明の別の追跡・照準方法における操作過程の概略図である。
【
図6】
図6は、本発明における視神経乳頭陥凹網膜血管標的と中心窩標的が連携して眼底の第1基準座標及び第2基準座標を追跡・照準し、ターゲティングに成功した場合の概略図である。
【
図7】
図7は、本発明のもう一つの実施例における第1基準座標及び第2基準座標を追跡・照準し、ターゲティングに失敗した場合の概略図である。
【
図8】
図8は、本発明におけるシステムの概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、特定の具体的実施形態によって本発明の技術内容につき説明する。当業者であれば、本明細書に開示した内容から本発明の利点及び効果を理解可能である。ただし、本発明の精神を逸脱しなければ、本発明は、複数の異なる形式の態様で実践又は応用してもよい。
【0026】
明細書で記載する本発明の「一実施例」は、特定の機能、構造又は特徴が本発明に含まれることを説明し、示すために用いられる。明細書に見られる「一実施例」との用語は、必ずしも全てが同じ実施例を示しているとは限らず、その他の実施例を排除する個別の又は代替的な実施例でもない。つまり、いくつかの実施例は、その他の実施例では説明していないいくつかの具体的特徴を説明可能である。そのほか、本発明における新規かつ特有の特徴が不明瞭となるのを回避するために、関連分野において周知の構造、部材又は接続については特に詳細には説明しない。
【0027】
本発明の一実施例において、本文中で使用する「個体」との用語は、使用者や操作者を意味し、例えば、網膜病変患者、特に、糖尿病網膜症患者を意味する。別の実施例において、本発明は、医療関係者により操作してもよいし、他人が網膜病変患者に協力して在宅環境で操作してもよいし、網膜病変患者自身が在宅環境において自分で操作してもよい。そのほか、個体は、両目のうちの片方の目について眼底画像の特徴の認識及び追跡を実施し、眼底画像の取得及び確認を行ったあと、もう片方の目に切り替えて眼底画像の取得及び確認を行ってもよい。
【0028】
図1~
図8を参照して、本発明における眼底画像の特徴の認識・追跡方法の一実施例では、画像取得ユニット1を検査位置まで移動させて、その個体の眼底の画像取得を行う。前記検査位置は当該個体の目の前方に位置する。また、これと同時に、まず、光源5から発せられる光線(aiming beam)51により当該個体に照準を合わせ、位置決め及び照準を補助してもよい。光源5は、ハンドヘルドモバイルデバイス101に設置可能である。換言すると、当該個体の目Eは、本発明のハンドヘルドモバイルデバイス101(すなわち、携帯型スマートデバイスや携帯電話)の画像取得ユニット1(例えば、レンズ)から発せられるターゲットライト(target light)を直視すればよい。こうして、当該個体の目が前記ターゲットライトを直視し得るよう確実に保証することで、当該個体の眼球の方向を標準化する。そして、これと同時に、個体の目の画像とターゲットライトの画像を表示ユニット3に伝送してもよい。換言すると、ターゲットライトは、表示ユニット3において個体の眼球の方向を標準化可能である。
【0029】
本発明は、更に、眼底画像の特徴の認識・追跡方法を提供する。当該方法のステップは、以下を含む。すなわち、複合照準点が設けられた画像取得ユニット1を第1検査位置まで移動させる。当該第1検査位置は、個体の眼底を画像取得ユニット1の焦点距離区間に位置可能とする。前記複合照準点には、更に、視神経乳頭陥凹網膜血管標的T1a及び中心窩標的T2aが設けられている。視神経乳頭陥凹網膜血管標的T1aにより個体の眼底の第1基準座標R1を追跡・照準し、中心窩標的T2aにより連携して個体の眼底の第2基準座標R2を追跡・照準する。第1基準座標R1は、個体の眼底の視神経乳頭、網膜静脈分枝又は網膜動脈分枝から選択され、第2基準座標R2は中心窩である。視神経乳頭、網膜静脈分枝又は網膜動脈分枝及び中心窩は、眼底において3点が共面であるとみなし得る。また、前記追跡・照準には、自動追跡・照準、半自動追跡・照準又は人為的な手動追跡・照準を採用可能である。前記視神経乳頭は、更に、視神経乳頭陥凹を含む。また、前記網膜静脈分枝は、上外側静脈、上内側静脈、下内側静脈、下外側静脈から選択され、前記網膜動脈分枝は、上外側動脈、上内側動脈、下内側動脈、下外側動脈から選択される。第1基準座標R1は第2基準座標R2よりも鼻側に近接している。つまり、第2基準座標R2は第1基準座標R1よりも側頭部側に近接している。次に、眼底画像を取得する。この眼底画像は、複合照準点による第1基準座標R1及び第2基準座標R2の追跡・照準に成功したときに得られる。
【0030】
本発明の一実施例において、視神経乳頭陥凹網膜血管標的T1a及び中心窩標的T2aは、リング形、十字リング形、楕円形、三角形、逆三角形、正方形、菱形、台形、逆台形、六角形、八角形又はX形としてもよいが、これらに限らない。例えば、X形をなすX形視神経乳頭陥凹網膜血管標的T1bの場合を例示すると、X形視神経乳頭陥凹網膜血管標的T1bには、更に、円形標的照準器T11及び正逆フォーク形照準器T12が設けられている。
【0031】
本発明の一実施例において、円形標的照準器T11は視神経乳頭陥凹を追跡・照準する。また、正逆フォーク形照準器T12には4つの分岐部が更に設けられており、略X形をなして円形標的照準器から放射状に配置される。4つの分岐部は、網膜静脈分枝又は網膜動脈分枝を追跡・照準する。換言すると、4つの分岐部のうちの1つ目である第1分岐部は上外側静脈又は上外側動脈を追跡・照準可能であり、4つの分岐部のうちの2つ目である第2分岐部は上内側静脈又は上内側動脈を追跡・照準可能であり、4つの分岐部のうちの3つ目である第3分岐部は下内側静脈又は下内側動脈を追跡・照準可能であり、4つの分岐部のうちの4つ目である第4分岐部は下外側静脈又は下外側動脈を追跡・照準可能である。
【0032】
本発明のもう一つの実施例では、複合照準点による第1基準座標R1及び第2基準座標R2の追跡・照準に失敗した場合、エラーメッセージを送信する。そして、眼底画像との差分値を計算することで、眼底に対する焦点距離を評価したあと、前記画像取得ユニットを第2検査位置まで移動させる。当該第2検査位置は適切な焦点面位置である。かつ、上記のステップを繰り返して、別の眼底画像を取得する。
【0033】
更に、本発明の更なる実施例では、異なる期間に取得した眼底画像を比較可能である。特に、個体における眼底の視神経乳頭、網膜静脈分枝又は網膜動脈分枝及び中心窩の画像を比較する。このようにして、異なる期間の眼底画像を比較することで、医療従事者又は患者は、高価な医療用検査機器や複雑な操作手順を排除して、手軽な方式又は簡単な操作手順により、異なる期間の眼底の血管に変異が発生したか否かを取得できる。
【0034】
また、本発明は、眼底画像の特徴の認識・追跡システム100を提供する。例えば、医療関係者、他人又は網膜病変患者が医療機関や自宅等の任意の場所で眼底画像の特徴を認識及び追跡可能ないずれかの簡単、便利かつ有効なハンドヘルドモバイルシステムを提供する。前記システム100は、ハンドヘルドモバイルデバイス101に適用可能である。ハンドヘルドモバイルデバイス101はスマートモバイルデバイスを含むが、これに限らない。当該システム100は、少なくとも、画像取得ユニット1、眼底画像データベース2、表示ユニット3及び特徴識別比較ユニット4を含む。特徴識別比較ユニット4は、異なる期間に取得した眼底画像における視神経乳頭、網膜静脈分枝又は網膜動脈分枝及び中心窩を識別及び比較するために用いられる。眼底画像データベース2は、異なる期間に取得した眼底画像を蓄積するために用いられる。換言すると、表示ユニット3は、画像取得ユニット1及び眼底画像データベース2に電気的に接続可能であり、画像取得ユニット1からの眼底画像の伝送及び表示、又は、眼底画像データベース2からの眼底画像の伝送及び表示が可能である。前記画像取得ユニット1、眼底画像データベース2、表示ユニット3及び特徴識別比較ユニット4は、ハンドヘルドモバイルに設けられて互いに電気的に接続可能である。
【0035】
当然ながら、本発明は上記に限らず、眼底画像のコントラスト比から得られる眼底境界を画定し、画像取得ユニット1に設けられるリング形の照準点Cにより眼底画像から得られる眼底区間を丸で選択する。そして、特徴識別比較ユニット4により、眼底区間と、以前にリング形の照準点Cで作成された眼底画像とが重複面積の基準値を満たしているか否かを計算する。重複面積の基準値は少なくとも72%とする。そして、満たしていない場合には、ハンドヘルドモバイルデバイスからエラーメッセージを送信可能である。例えば、前記表示ユニット3により、例えば画像エラーメッセージといったエラーメッセージを提示してもよいし、ハンドヘルドモバイルデバイス101により音声エラーメッセージを送信してもよいが、これらに限らない。換言すると、本発明で更に提供する補助方法は、眼底画像のコントラスト比から眼底境界を画定して、眼底区間を丸で選択する。そして、当該眼底区間と、以前にリング形の照準点Cで作成された眼底画像とが重複面積の基準値を満たしているか否かを計算及び比較する。すなわち、リング形の照準点Cのカバー率は、前記眼底画像の取得時に照準点のずれの有無を示し得るほか、適切な焦点面が画像取得ユニット1から個体の眼底までの距離の間に存在するか否かも示す。
【実施例1】
【0036】
図5、
図6を参照する。視神経乳頭陥凹網膜血管標的T1b及び中心窩標的T2bを用い、連携して第1基準座標R1及び第2基準座標R2を追跡・照準した。この場合、追跡・照準に成功してターゲティングを完了し、眼底画像を取得した。
【実施例2】
【0037】
図7を参照する。視神経乳頭陥凹網膜血管標的T1b及び中心窩標的T2bを用い、連携して第1基準座標R1及び第2基準座標R2を追跡・照準した。しかし、追跡・照準に失敗し、ターゲティングを完了し得なかったため、有効に眼底画像を取得することはできなかった。なお、前記追跡・照準には、自動追跡・照準、半自動追跡・照準又は人為的な手動追跡・照準を採用可能であった。
【0038】
上記では、特定の具体的実施形態によって本発明の技術内容につき説明した。当業者であれば、本明細書に開示した内容から本発明の利点及び効果を理解可能である。ただし、本発明の精神を逸脱しなければ、本発明は、複数の異なる形式の態様で実践又は応用してもよい。
【符号の説明】
【0039】
100 眼底画像の特徴の認識・追跡システム
101 ハンドヘルドモバイルデバイス
1 画像取得ユニット
2 眼底画像データベース
3 表示ユニット
4 特徴識別比較ユニット
5 光源
51 光線
C リング形の照準点
E 目
R1 第1基準座標
R2 第2基準座標
T1a 視神経乳頭陥凹網膜血管標的
T1b 視神経乳頭陥凹網膜血管標的
T11 円形標的照準器
T12 正逆フォーク形照準器
T2a 中心窩標的
T2b 中心窩標的
【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、網膜病変個体が自宅で眼底画像をモニタリング可能なシステム及び方法を提供する。前記システムは、ハンドヘルドモバイルデバイスに適用可能である。
【解決手段】視神経乳頭陥凹網膜血管標的により個体の眼底の第1基準座標を追跡・照準するとともに、中心窩標的により連携して前記個体の眼底の第2基準座標を追跡・照準し、前記第1基準座標は、前記個体の眼底の視神経乳頭、網膜静脈分枝又は網膜動脈分枝から選択され、前記第2基準座標は前記個体の眼底の中心窩であり、眼底画像を取得し、前記眼底画像は、前記複合照準点による前記第1基準座標及び前記第2基準座標の追跡・照準に成功したときに得られる、
【選択図】
図4